説明

防曇剤

【課題】透明で、ガラス、プラスチック等の表面への密着性に優れ、防曇性、塗膜硬度に優れた防曇剤を提供。
【解決手段】キシリトールモノ(メタ)アクリレート〔A〕と、下記一般式(1)


(RはH原子またはメチル基、RはH原子またはC1〜4の炭化水素基、Zは2〜6個の水酸基を有する化合物の脱水酸基残基、AOはC2〜4のオキシアルキレン基。)で表される化合物〔B〕を共重合して得られる共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇剤に関する。さらに詳しくは、透明な外観を保ち、ガラス、鏡、プラスチック等の基材表面に対する密着性に優れ、且つ防曇性能および塗膜硬度に優れた防曇剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成形品、ガラスや鏡の表面は、高温高湿の雰囲気や、温度差や湿度差の大きい雰囲気下で使用した場合、その表面に結露や曇りが発生し、透明性が失われて視認性が損なわれやすい欠点がある。これらの問題点を解消するため、基材表面に防曇性を付与する種々の検討が行われている。
例えば、非反応性の界面活性剤を主成分とする組成物を基材表面に塗布し、防曇皮膜を形成する方法が提案されている。しかしながら、塗工直後は防曇効果が発揮されるものの、界面活性剤が水と接触するだけで容易に溶出し、防曇性が短期間で低下してしまうため、防曇持続性や耐久性の点において実用性の無いものであった。
また、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマーを塗布する方法(例えば、特許文献1および2参照)も提案されているが、防曇持続性や耐久性の向上は見られるものの十分な防曇性能とはいえず、さらに耐擦傷性などの塗膜硬度が実用上不足している。さらに、鏡やガラス基板など適用する基材によっては密着性が非常に低く、剥離が起きやすいなどの問題点があった。
耐擦傷性や鏡やガラス基板に対する密着性などを向上させるため、親水性ポリマーと無機微粒子を含有する組成物を塗布・乾燥して成膜する方法(例えば、特許文献3参照)も検討されているが、高温で基材を乾燥する工程が必要であった。また、無機微粒子を含有するため、乾燥後に白化や粒子跡が残り、塗布後の表面および乾燥後の外観不良が起きやすいという課題があった。
【0003】
一方、活性エネルギー線硬化型の防曇性組成物(例えば、特許文献4〜7参照)も提案されている。例えば、特許文献4にはヒドロキシエチルメタクリレートとポリエチレングリコールジメタクリレートから成る組成物が開示され、特許文献5にはヒドロキシエチルメタクリレートとエチレン性不飽和結合を2個以上有する架橋剤および重クロム酸アンモニウムから成る組成物が開示されている。これらは、短時間の光照射で硬化塗膜が形成できるため生産性の点で非常に優れ、各種基材に対する密着性および塗膜硬度の両特性については比較的良好であるが、防曇性は実用上十分では無いものであった。また、特許文献6には多価アルコールのモノ(メタ)アクリレート、多価アルコールのジまたはトリ(メタ)アクリレートとN−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから成る組成物が開示され、特許文献7には多価アルコールのモノ(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーから成る組成物が開示されているが、基材がポリカーボネート樹脂やポリメチルメタクリレート樹脂などのプラスチック成形品に限定され、適用する基材によっては密着性が不十分であるという問題があった。このように、防曇性、塗膜硬度および密着性の各特性をバランス良く発揮させることは困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−88298号公報
【特許文献2】特開昭60−223885号公報
【特許文献3】特開2002−173633号公報
【特許文献4】特開昭51−63382号公報
【特許文献5】特開昭52−48578号公報
【特許文献6】特開平2−302488号公報
【特許文献7】特開平3−152181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、透明な外観を保ち、ガラス、鏡、プラスチック等の基材表面に対する密着性に優れ、且つ防曇性能および塗膜硬度に優れた防曇剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、キシリトール(メタ)アクリレートと多価アルコールの分子内に少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を共重合して得られる共重合体が防曇剤として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明はキシリトールモノ(メタ)アクリレート〔A〕と、
下記一般式(1)
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、Zは2〜6個の水酸基を有する化合物の脱水酸基残基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nおよびmはオキシアルキレン基の平均付加モル数、nおよびmはそれぞれ0〜10で同一であっても異なっていてもよく、aは2〜6、bは0〜4を表す。)で表される化合物〔B〕を共重合して得られる共重合体であって、成分〔A〕/成分〔B〕の質量比が90/10〜50/50の範囲であることを特徴とする防曇剤である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防曇剤は、親水性モノマーとしてキシリトールモノ(メタ)アクリレート、架橋成分として多価アルコールの多官能(メタ)アクリレート化合物を共重合して得られる共重合体である。キシリトールモノ(メタ)アクリレートは、分子内に4個の水酸基を有しており、架橋成分との共重合により得られる硬化被覆膜は従来一般的に用いられている2−ヒドロキシエチルメタクリレートやグリセロールモノ(メタ)アクリレートと比較して密着性および防曇性の向上が認められる。また、多官能(メタ)アクリレート化合物を共重合させることにより、密着性、防曇性、塗膜硬度をさらに向上させる役割を果たしている。このため、本発明の組成物を共重合して得られた被覆膜は、プラスチック、ガラス、金属等の基材表面に対する密着性に優れ、且つ防曇性および塗膜硬度に優れているため、浴室内のミラーや窓、自動車のウィンドウ、眼鏡等の防曇性能を必要とする分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
キシリトールモノ(メタ)アクリレートは、キシリトール分子内のいずれか1つの水酸基に(メタ)アクリロイル基を導入した化合物である。キシリトールモノ(メタ)アクリレート〔A〕は、公知の方法に従って製造することができる。例えば、キシリトールに対して2当量のアセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物や2,2−ジメトキシプロパン等のアセタール化合物を反応させてケタール化した後、1個の水酸基に(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸クロライド等の化合物を反応させて(メタ)アクリロイル基を導入する。次いで加水分解により脱ケタール化すると目的の生成物が得られる。上記の方法で得られたキシリトールモノ(メタ)アクリレートの構造は、具体的には、1−O−(メタ)アクリロイルキシリトールと3−O−(メタ)アクリロイルキシリトールの混合物である。このまま用いても、精製を行っても良い。好ましくは1−O−(メタ)アクリロイルキシリトールである。
キシリトールモノ(メタ)アクリレートは、分子内に4個の水酸基を有していることから、硬化被覆膜と基材との間に生じる、キシリトールモノ(メタ)アクリレート中の水酸基に由来する水素結合が親水性モノマーの水酸基数に比例する以上に強固となり、各種基材に対する密着性と防曇性能を飛躍的に高めているものと考えられる。
【0011】
一般式(1)で表される化合物〔B〕において、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基を表し、好ましくはメチル基、エチル基である。Rの炭素数が5以上であると、疎水性が高くなるため防曇性が低下するので好ましくない。
一般式(1)で表される化合物〔B〕において、Zは2〜6個の水酸基を有する化合物の脱水酸基残基である。
2〜6個の水酸基を有する化合物としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ビスフェノールF、ビスフェノールA、ネオペンチルグリコールなど2価のアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールなど多価アルコールが挙げられ、好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、より好ましくはエチレングリコール、プロピレングリコールである。
【0012】
一般式(1)で表される化合物〔B〕において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基であり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシテトラメチレン基が挙げられ、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。これらのオキシアルキレン基は1種または2種以上用いることができ、2種以上用いる場合は、ランダム状またはブロック状に付加していてもよい。
また、オキシエチレン基の含有量はオキシアルキレン基の合計量に対して質量比で60質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは70質量%以上を含有する。オキシエチレン基の含有量が60質量%未満であると、硬化被覆膜の親水性が十分でなく疎水性が高くなるため防曇性が低下するので好ましくない。
nおよびmはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、それぞれ独立に0〜10、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。10モルを超えると硬化被覆膜が軟らかくなり、塗膜硬度が低下するので好ましくない。
aは末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリオキシアルキレン基の本数であり、2〜6、好ましくは2〜3、より好ましくは2である。aが2未満の場合、硬化被覆膜の架橋密度が低くなり、塗膜硬度が低下するので好ましくない。
bは末端に水素原子または炭素数2〜4の炭化水素基を有するポリオキシアルキレン基の本数であり、0〜4、好ましくは0〜3、より好ましくは0である。
また、一般式(1)で表される化合物〔B〕は、2種以上の異なる化合物を用いてもよい。
【0013】
成分〔A〕と成分〔B〕を共重合する場合の比率は、成分〔A〕/成分〔B〕の質量比で90/10〜50/50の範囲、好ましくは80/20〜60/40の範囲、さらに好ましくは70/30〜60/40の範囲である。成分〔A〕が90質量%を超えると硬化被覆膜が柔らかくなるため塗膜硬度が低下し、50質量%未満では防曇性および密着性が低下するので好ましくない。
【0014】
本発明は、成分〔A〕と成分〔B〕を共重合する際に粘度を低減し作業性を向上させる等の目的で、本発明の効果を損なわない範囲で、成分〔A〕と成分〔B〕と共重合可能な、成分〔A〕以外の単官能モノマーを共重合してもよい。
【0015】
成分〔A〕以外の単官能モノマーの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクロイルモルホリン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミドである。単官能モノマーの添加量は、成分〔A〕と成分〔B〕との合計量に対して、0.05〜20質量%の範囲が好ましく、0.1〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0016】
本発明の共重合体を製造する方法は、公知の方法で行うことができる。通常、熱または紫外線、可視光線、電子線などの活性エネルギー線を用いて共重合する。また、熱および活性エネルギー線の両方を併用して共重合してもよい。
紫外線または可視光線を用いて共重合する場合は、通常使用されている光重合開始剤を使用することができ、さらに光増感剤を添加することもできる。
【0017】
光重合開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインまたはベンゾインアルキルエーテル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸等の芳香族ケトン、ベンジル等のα−ジカルボニル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール、アセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン等のアントラキノン、2,4−ジメチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントンを使用することができる。これらのうち、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのアセトフェノン、ベンゾフェノンなどの芳香族ケトンが特に好ましい。
【0018】
光重合開始剤の使用量は、成分〔A〕および成分〔B〕の合計量に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましく、0.5〜10質量%の範囲がより好ましい。0.1質量%未満では硬化が十分に進行せず、20質量%を越えると重合性成分の量が相対的に減少するため、硬化被覆膜の目標とする特性が低下するため好ましくない。
上記光重合開始剤と併用する光増感剤の具体例としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4−ジメチルアミノベンゾフェノン及び4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン等が挙げられる。
【0019】
本発明の共重合体を製造する場合は、必要に応じて水または有機溶媒などを用いることができる。
有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素などが挙げることができる。これらは、それぞれ単独または2種以上組み合わせて使用することができる。溶媒の使用量は、重合性成分10質量部に対して1〜100質量部とすることが好ましい。
【0020】
本発明の共重合体を製造する場合は、初期の防曇性能を高める目的で界面活性剤を添加することも可能である。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤などから選ばれる1種または2種以上を使用することができる。これらのうち、防曇性の効果の持続性などの点から、ノニオン界面活性剤が好ましい。
ノニオン界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタンエステルなどが挙げられる。
【0021】
本発明は、耐候性の向上を目的として、紫外線吸収剤または酸化防止剤等を配合することもできる。
紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン、フェニルサリチレート、4−t−ブチルフェニルサリチレート等のサリチレート、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレート、2’−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルシアノアクリレート等のシアノアクリレートが挙げられる。
酸化防止剤としては、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メチルフェノール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリオン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系、チオジエチレン−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等の硫黄系、アスコルビン酸、トコフェロール等のビタミン誘導体が挙げられる。
【0022】
紫外線吸収剤または酸化防止剤は共重合する際に添加しても、または共重合した後に添加してもよい。添加量としては、成分〔A〕および成分〔B〕の合計量に対して、好ましくは0.1〜5質量%である。0.1質量%未満では配合した効果が不十分である可能性があり、5質量%を超えると重合反応性が低下し、得られた硬化被覆膜の塗膜硬度が低下する可能性があるため好ましくない。
【0023】
本発明の防曇剤は、成分〔A〕および成分〔B〕の組成物を共重合することにより得られる。共重合する方法は特に制限はなく、通常、熱または活性エネルギー線を用いて重合反応を行うことができ、両者を併用してもよい。
【0024】
熱を用いて共重合する場合には特に制限はなく、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の一般的な方法を用いることができ、例えば、成分〔A〕および成分〔B〕の組成物にラジカル重合開始剤を添加して行うことができる。
ラジカル重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル等のアゾ系化合物、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物などが挙げられる。
【0025】
活性エネルギー線を用いる場合には、例えば、適用される基材に対して通常の塗装方法により塗布した後、紫外線、可視光線または電子線などの活性エネルギー線を照射することにより硬化させることができる。活性エネルギー線の照射方法は、活性エネルギー線硬化型組成物の硬化方法として知られている一般的な方法を採用すれば良い。例えば、紫外線を照射する場合は、波長200〜400nm、照射光源として低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプなどを用い、照射量は積算光量として100〜3000mJ/cmで行うことができ、空気中での照射や酸素による硬化阻害を低減させるため不活性ガス雰囲気下、または透明プラスチックフィルム等でラミネートして照射を行うことができる。
【0026】
本発明の防曇剤が適用できる基材としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などのプラスチック、ガラス、金属が挙げられる。基材へ塗装する方法としては、スピンコート法、フローコート法、ロールコート法、スプレーコート法、ディップコート法など通常の塗布方法のいずれも採用することができる。塗膜の厚さは、1〜100μmが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。100μmを超えると塗膜の硬化性が低下し、塗膜硬度や密着性が低下する恐れがあり、1μm未満では十分な防曇性能が得られない恐れがあるため好ましくない。
【実施例】
【0027】
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
<実施例1>
キシリトールモノメタクリレート60質量部に、ポリエチレングリコールジメタクリレート(オキシエチレン基の平均付加モル数4モル)40重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)3質量部を均一に溶解して組成物を得た。
次に、ガラス基板(松浪硝子工業(株)製、サイズ75mm×50mm、厚さ2mm)上に、得られた組成物を膜厚が100μmとなるようにスペーサーを使用して塗布した後、PETフィルム(フィルム厚30μm)でラミネートした。その上側から、超高圧水銀ランプを用いて照射距離15cm、積算光量2000mJ/cmの条件にて硬化させた。得られた硬化被覆膜について、以下のような性能を評価した。
【0028】
<塗膜外観>
得られた硬化被覆膜の外観を目視で観察し、次の3段階により評価した。
◎ : 無色透明であり、光沢も良好である
○ : 着色や濁りがわずかにある
× : 不透明で濁りがある
<防曇性>
得られた硬化被覆膜面を40℃の恒温槽上に5cm離して設置し、曇り始めるまでの時間を次の4段階により評価した。
◎ : 360秒間経過しても曇らない
○ : 240秒〜360秒以内で曇る
△ : 120秒〜240秒以内で曇る
× : 120秒以内で曇る
【0029】
<密着性>
密着性試験はJIS K 5600に準拠して行った。硬化被覆膜をカッターで2mm四方の碁盤目を25個作製し、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製)を貼付けて接着面と垂直方向に引き離し、剥離しなかった碁盤目の数を次の4段階により評価した。
◎ : 碁盤目の剥離が5%以下である
○ : 碁盤目の剥離が5〜10%である
△ : 碁盤目の剥離が10〜50%である
× : 碁盤目の剥離が50%以上である
<鉛筆硬度>
鉛筆硬度はJIS K 5400に準拠して行った。1kgの荷重をかけた鉛筆でガラス基板上に作製した硬化被覆膜を引っ掻き、傷付かない最も硬い鉛筆硬度により評価した。
【0030】
<実施例2〜3、比較例1〜6>
表1に示した組成物を用いる以外は、実施例1と同様にして硬化被覆膜を作製し、その性能を評価した結果を表1に示した。
なお、表1における略号は以下の意味を示す。
・ XYM : キシリトールモノメタクリレート(成分〔A〕)
・ PEGDMA : ポリエチレングリコールジメタクリレート(成分〔B〕)
(オキシエチレン基の平均付加モル数4モル)
・ GMA : グリセリンモノメタクリレート
・ HEMA : 2−ヒドロキシエチルメタクリレート、(株)日本触媒製メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
・ PEGMA : ポリエチレングリコールモノメタクリレート
(オキシエチレン基の平均付加モル数4.5モル)
・ Irg184 : 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製イルガキュア184
【0031】
【表1】

【0032】
表1に示したように、実施例1〜3の組成物を共重合して得られた硬化塗膜は、基材表面に対する密着性に優れ、且つ防曇性および塗膜硬度に優れている。成分〔A〕のキシリトールモノ(メタ)アクリレートを含まず、代わりに水酸基を有するモノマーを含有する比較例1〜4の組成物を共重合して得られた硬化塗膜は、防曇性、密着性および鉛筆硬度の各特性を同時に満足しない。比較例5のように、成分〔A〕の親水性モノマーを含まず、成分〔B〕のみを重合して得られた硬化塗膜は、鉛筆硬度は良好であるが、防曇性および密着性が不十分である。一方、比較例6のように成分〔B〕の架橋剤を含まず、成分〔A〕のみを重合して得られた硬化塗膜は、防曇性および密着性は優れているが、鉛筆硬度は低い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトールモノ(メタ)アクリレート〔A〕と、
下記一般式(1)
【化1】

(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rは水素原子または炭素数1〜4の炭化水素基、Zは2〜6個の水酸基を有する化合物の脱水酸基残基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、nおよびmはオキシアルキレン基の平均付加モル数、nおよびmはそれぞれ0〜10で同一であっても異なっていてもよく、aは2〜6、bは0〜4を表す。)で表される化合物〔B〕を共重合して得られる共重合体であって、成分〔A〕/成分〔B〕の質量比が90/10〜50/50の範囲であることを特徴とする防曇剤。

【公開番号】特開2011−213904(P2011−213904A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84159(P2010−84159)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】