説明

防曇塗料組成物

【課題】ポリオレフィン系樹脂フィルム/シート等に透明性、防曇性、耐水性および密着性に優れ、長期的にその性能を発現する防曇塗膜を形成する防曇塗料組成物を提供すること。

【解決手段】下記一般式(A)に示す反応性重合基を有する乳化剤を使用して製造される(メタ)アクリル酸系共重合体と親水性物質を含有する防曇塗料組成物をポリオレフィン系樹脂フィルムまたはシートに塗布する。
【化1】


(但し、Rは炭素数6〜22のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基、Aはエチレン基および/またはプロピレン基であり、エチレン基の数≧プロピレン基の数となる範囲、aは0または1〜20の整数、bは1〜20の整数。n+m=3であり且つm=1または2、n=1または2、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアミン残基またはアルカノールアミン残基である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリオレフィン系樹脂フィルムまたはシート(以下フィルム/シートと省略)等に透明性、防曇性、耐水性および密着性に優れ、長期的にその性能を維持する防曇塗膜を形成する防曇塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の熱可塑性樹脂が工業的に製造され、広い分野に使用されている。これら熱可塑性樹脂より製造された成形品の多くは、その表面が疎水性であるため、成形品を使用する条件によっては、成形品の表面に凝集水による曇りを生じ、種々の不都合をきたしている。例えば、食品包装用フィルムでは、食品から放出される水蒸気が低温下に置かれることでフィルム表面に凝集し、それが曇りとして内容物を見え難くする。農業用フィルムでは、ハウス内の温度が上昇することで土壌から水蒸気が放出し、曇りとしてフィルム表面に凝集することで太陽光の透過を悪くし、植物の生育が遅延する。また、この凝集水がさらに集まることで水滴となって植物に落下することで病害の発生原因になる。
【0003】
このような不都合を解消するために、熱可塑性樹脂成形品の表面に防曇性を付与する事が一般的に知られている。その方法としては、熱可塑性樹脂中に界面活性剤のような親水性物質(防曇剤)を練り込んで成形する方法、成形品の表面に対して親水性物質または水溶性高分子物質を塗布する方法が採用されている。
【0004】
前者の方法では、熱可塑性樹脂に練り込まれた親水性物質が成形品より噴出して防曇性を付与するが、水と一緒に流出するために防曇性能が低下してしまう。また、後者では、親水性高分子と界面活性剤等からなる組成物を塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、耐水性に乏しいだけではなく、熱可塑性樹脂との密着性に劣るため、多湿条件下では親水性物質に由来する塗膜が樹脂成形品表面から剥離し易く、防曇性能を十分発揮しない。
【0005】
これを改良するために、ヒドロキシル基を含有する親水性アクリルエステル共重合体を架橋剤で水不溶性にする方法(例えば、特許文献2参照)、界面活性剤に無機コロイドであるシリカゾルを加える方法(例えば、特許文献3参照)等が開示されている。しかし、前述の方法では防曇性能の低下を抑えることができるが、熱可塑性樹脂との密着性に乏しいために、形成塗膜は時間の経過とともに脱落して、長期にわたって防曇効果を持続することができなかった。そこで、上記の方法の長所を活かしたアクリル系樹脂−無機微粒子併用系が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかし、比較的強いイオン性を示すモノマーを含むために塗膜の防曇性は向上しても長期使用すれば吸水白化によって透明性が低下することから未だ改良の余地がある。
【0006】
【特許文献1】特公昭50−6437 (2頁)
【特許文献2】特公昭56−34219 (1頁)
【特許文献3】特公昭50−11348 (1頁)
【特許文献4】特開平2003−82272 (2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ポリオレフィン系樹脂フィルム/シート等に透明性、防曇性、耐水性および密着性に優れ、長期的にその性能を発現する防曇塗膜を形成する防曇塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、分子中に長鎖アルキル基と親水性の(ポリ)オキシアルキレン鎖を有した反応性重合基とを併せもった燐酸エステル型乳化剤を使用して製造される(メタ)アクリル酸系共重合体と親水性物質を含む防曇塗料組成物を塗布することで、透明性、耐水性および密着性に優れ、長期的に防曇性能を発現する防曇塗膜が形成された防曇性フィルム/シートを得ることが出来ることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は下記一般式(A)に示す反応性重合基を有する乳化剤を使用して製造される(メタ)アクリル酸系共重合体と親水性物質を含有することを特徴とする防曇塗料組成物である。
【化1】

(但し、Rは炭素数6〜22のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基、Aはエチレン基および/またはプロピレン基であり、エチレン基の数≧プロピレン基の数となる範囲、aは0または1〜20の整数、bは1〜20の整数。n+m=3であり且つm=1または2、n=1または2、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアミン残基またはアルカノールアミン残基である。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の防曇塗料をポリオレフィン系樹脂フィルム/シート等に塗布することで、透明性、耐水性、密着性に優れ、長期的に防曇性能が持続する塗膜を形成することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係わる前記一般式(A)で示される乳化剤は、例えば長鎖α−オレフィンオキサイドとポリオキシアルキレンアリルエーテルとを縮合させ、縮合反応によって生成する2級のヒドロキシル基に、公知の方法を用いてアルキレンオキサイドを付加させた後、燐酸エステル化することにより容易に得ることが出来る。
【0012】
本発明に係わる前記一般式(A)においてRで示したアルキル基は、例えばヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル基等が挙げられるが、効果的には炭素数8〜18のアルキル基であることが好ましく、炭素数10〜14のアルキル基であることがより好ましい。
【0013】
また、前記一般式(A)における−(AO)−部および−(AO)−部はエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドをエチレンオキサイドの付加数≧プロピレンオキサイドの付加数の範囲で付加重合させて得られるポリオキシアルキレン鎖を示し、−(AO)−部および−(AO)−部の組成はそれぞれ同じでも異なっていてもかまわない。効果的にはエチレンオキサイドのみであることが好ましいが、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合の場合は、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=5/1〜2/1のモル比の範囲で共重合していることが好ましい。また、共重合方法は、ランダムでもブロックでも効果的には変わらない。重合数はa=0〜20、b=1〜20の範囲であり、効果的にはa=0〜8、b=5〜15およびa+b=8〜16の範囲が好ましい。
【0014】
本発明の防曇塗料組成物は、(メタ)アクリル酸系共重合体と親水性物質を含有することを特徴とする。
【0015】
(メタ)アクリル酸系共重合体を構成するモノマーは、一般式(A)に示す乳化剤とラジカル重合可能なモノマーであり、(メタ)アクリル酸やそのアルキルエステル類、アルケニルベンゼン類、アクリルアミド類から選ばれる1種または2種以上である。また、他の共重合可能なモノマーを用いてもよいが、(メタ)アクリル酸系モノマー由来の構成単位を5〜90重量%含むことが本発明の期待する性能を得る上で好ましい。
【0016】
(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類としてはアクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸プロピルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、アクリル酸シクロヘキシルエステル、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、ポリオキシエチレンメトキシエチルアクリレート、ポリオキシプロピレンメトキシプロピルアクリレート、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸プロピルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−t−ブチルエステル、メタクリル酸−2−エチルヘキシルエステル、メタクリル酸シクロヘキシルエステル、2−メトキシエチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、ポリオキシエチレンメトキシエチルメタクリレート、ポリオキシプロピレンメトキシプロピルメタクリレート等アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルまたはその誘導体が挙げられる。
【0017】
アルケニルベンゼン類としてはスチルベンゼン、α−メチルスチルベンゼン、ビニルトルエン等が挙げられ、(メタ)アクリル酸系共重合体を構成する全モノマー比で10〜80重量%含有することが耐水性、密着性の向上の面で好ましい。また、アクリルアミド類としてはN−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等が挙げられ、重合性、塗膜の透明性、ベタツキ等を考慮すると全モノマー比で10重量%以下が好ましい。
【0018】
また、さらに塗膜強度の向上および濡れ性能の向上を目的としてシランカップリング剤として共重合可能なトリメトキシ/エトキシビニルシラン等ビニルシラン系誘導体を共重合することも出来る。その添加量としてはモノマー比で7重量%以下が架橋度と塗膜強度の向上において好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0019】
(メタ)アクリル酸系共重合体は、本発明の乳化剤を単独で、または公知の乳化剤との混合物として用い、常法の乳化重合により得ることができる。その添加量としては0.05〜15重量%の範囲内で使用することが望ましく、重合物の安定性、重合速度の調整面からは添加量が0.1〜10重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0020】
乳化重合の際に用いられる重合開始剤としては、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸の塩、クメンヒドロキシパーオキサイド、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物等のラジカル生成触媒が挙げられ、分子量調節剤としては、ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。また、重合の際に用いられる媒質は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、n−ヘキシルアルコール等のアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘキサノン等のケトン類、3−酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類が挙げられ、作業環境を考慮すると水またはアルコール類が主であることが好ましく、これらは1種もしくは2種類以上を混合して使用することが出来る。
【0021】
また、乳化重合に用いることができる公知の乳化剤としては一般的に使用される陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を使用でき、この中から選ばれる単独または2種以上の混合物として添加することが出来る。
【0022】
陰イオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸カリウム、オレイン酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、アルケニルコハク酸カリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N−ラウロイルメチルタウリンナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0023】
陽イオン性界面活性剤としては、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ラウリルアミンアセテート等が挙げられる。
【0024】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノール、ポリオキシエチレンノニルフェノール、ポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノココレート、ジグリセリンモノステアレート等が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル酸系共重合体のガラス転移温度は30〜100℃の範囲のものが良く、好ましくは30〜80℃の範囲のものである。該共重合体のガラス転移温度が前述の範囲より低い場合ではフィルムの表面がべたつき、フィルム同士の融着が起こり易くなるだけではなく、親水性無機物の凝集により分散系が不均一になるために防曇性能が経時で低下してしまう。また、高い場合では塗膜の柔軟性が極端に低下するためにフィルム/シートを折り曲げた際に皹が入って剥離してしまうため外観を損なうだけではなく、それが原因で塗膜が剥離し、防曇性能が低下するために実用性に乏しい。
【0026】
本発明にかかる親水性物質の好ましい態様の一つである無機コロイドゾルとは、シリカ、アルミナ、酸化チタン、水酸化鉄、水酸化錫、硫酸バリウム等の無機物を水系分散媒に分散した水性ゾルのことである。その粒子径または粒子長は塗膜の透明性、防曇性から考慮すると10〜200nmが望ましい。これら水性ゾルは正または負に帯電しているものが好ましく、塗布液の安定性やコスト、塗膜の防曇性能安定性の点を考慮するとシリカ・アルミナがより好ましい。さらにこれらは単独または混合、その他との併用系でも良い。
【0027】
また、本発明にかかる親水性物質の好ましい態様の一つであるアニオン性ポリウレタン系樹脂とはアニオン性ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂であり、水系溶媒に溶解または分散しているエマルションとして用いられる。これらのうち、フィルム/シートへの密着性、塗膜の耐水性および耐傷付き性の点でポリエーテル系、ポリカーボネート系アニオン性ポリウレタン樹脂エマルションが好ましく、コロイド状無機物との親和性、濡れ性の向上の点でシラノール基を有する変性ポリウレタンがより好ましい。
【0028】
本発明の防曇塗料組成物は(メタ)アクリル酸系共重合体と親水性物質を含有するが、その組成比は固形分換算で(親水性物質)/(共重合体)=0.2〜15の範囲にあることが好ましい。これを下回れば防曇性能が十分に発揮されず、これを超えても防曇性能が組成比の増加に比例して性能の向上が見られない、塗膜が白濁して透明性を損なうために好ましくない。
【0029】
また、親水性物質として無機コロイドゾルおよびアニオン性ポリウレタン系樹脂を用いる場合、その組成比は固形分換算の重量比で(無機コロイドゾル)/(ポリウレタン系樹脂)=1〜50の範囲にあることが望ましい。これを下回れば防曇性能不足になり、これを超えても傷付き易くなるだけでなく、防曇性能が組成比の増加に比例して性能の向上が見られない、塗膜が白濁して透明性を損なうために好ましくない。
【0030】
本発明が対象とするポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィン系の単独重合体、α−オレフィンを主成分とする異種のモノマーとの共重合体であり、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン−ポリプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等に挙げられる樹脂のことであり、これらは公知の重合法・重合触媒により製造される樹脂である。
【0031】
本発明のかかるフィルム/シートの形態としては、単一樹脂からなる単層フィルム/シート、2種類以上の樹脂を積層してなる積層フィルム/シートのどちらでもよく、使用用途によってその形態を選ぶことができる。例えば、農業ハウス用フィルムでは柔軟性および強度等の面から3層の積層フィルムが良く使用され、その構成としてはポリエチレン外層、酢酸ビニル含有量10〜20重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体中間層、酢酸ビニル含有量3〜12重量%エチレン−酢酸ビニル共重合体内層といったものが挙げられる。
【0032】
本発明の防曇塗料組成物由来の塗膜を形成してなるフィルム/シートは公知の方法で製造される。例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等の混練機、1または2軸押出し機を用いて原料樹脂の加熱溶融混練時に酸化防止剤、光安定剤等樹脂添加剤を添加・混合し、従来から知られている溶融押出成形法(Tダイ法、インフレーション法等)等により製造される。
【0033】
また、該フィルム又はシートには、防曇塗膜の透明性、密着性等を阻害しない程度で必要に応じて任意成分を配合することができる。その任意成分としては、帯電防止剤、防霧剤、防曇剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、滑剤、造核剤、アンチブロッキング剤、保温剤、各種安定剤等の添加剤や、炭酸カルシュウム、シリカ、酸化チタン、タルク等の無機充填剤、及び顔料等を挙げることが出来る。
【0034】
基材フィルム/シート等の表面に本発明の防曇塗料組成物由来の防曇塗膜を形成する方法としては防曇塗料をドクターブレードコート法、ロールコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法等公知の塗布方法を採用し、塗布後乾燥する方法がよい。乾燥方法としては熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法があり、乾燥速度等を考慮すると熱風乾燥が適していると考えられる。
【0035】
また、本発明の防曇塗料組成物由来の塗膜の密着性をさらに高めるために塗布前にアルコールまたは水による洗浄、プラズマ放電、コロナ放電による表面処理を施しておいてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はその趣旨を越えない限り、これらの例に制約されるものではない。はじめに、本発明に係る乳化剤の合成例、フィルムの作製、防曇塗料用樹脂の合成、評価方法を提示し、最後に本発明の実施例、比較例について表にまとめる。
【0037】
A.本発明に係る乳化剤の合成例
攪拌機、還流冷却器、温度計を備えた反応容器にポリ(12モル)オキシエチレンアリルエーテル586g(1モル)、三フッ化ホウ素エチルエーテル錯体1.5gを加えた後、40±5℃に保ちながら、α−オレフィンオキサイド(炭素数12と14の混合物)205g(1モル)を2時間滴下し、同温度にて2時間熟成した。その後、昇温して60℃以下を保持しながら無水燐酸71g(0.5モル)を投入し、その後60℃で3時間熟成し、イオン交換水11.3g(0.63モル)を加え、さらに80℃で3時間熟成を行い、本発明の燐酸エステル型反応性乳化剤を得た。
【0038】
B.基材フィルムの作製
日本ポリケム(株)製ノバテックEVA(品番:LV440)ペレットをインフレーションダイが備えられた(株)東洋精機製インフレーション成形機に供給して、ダイ温度180℃、ブロー比2.0、引取速度12m/分で成形することで、厚さ約100μmの基材フィルムを作製した。
【0039】
C.防曇塗料用樹脂の合成
四つ口のセパラブルフラスコ下部に水354g、表1に示す組成のモノマー240g、過硫酸アンモニウム1.2g、上記合成例に示した本発明の乳化剤4.8gを仕込み、上部と合わせて温度計、冷却管、N導入管、スリーワンモーターを配し、Nブロー下、攪拌速度200rpmにて混合した。1時間N置換した後に昇温し、80℃で3時間反応、2時間熟成させた。冷却後、アンモニア中和して200メッシュでろ過し、防曇塗料用樹脂エマルションを得た。固形分は40%、ろ過残渣は1%以下であった。
【0040】
D.防曇フィルムの作製
表2に記載の配合よりなる防曇塗料組成物を固形分が10%になるように溶媒で希釈し、上記フィルムにバーコーターで塗布した後、100℃に温度調節した温風乾燥機に1分間放置して溶媒を飛散させて防曇塗膜を形成させた。この時の塗膜の厚さは約2μmであった。
【0041】
E.防曇性能の評価
各防曇性フィルムの防曇性を評価し、表3に示す結果を得た。
評価基準
◎ :一面に均一に濡れ透明
○ :ほぼ一面に均一に濡れ透明
× :一部透明部分もあるが全体に不透明
××:完全に不透明
低温濡れ性:上部傾斜箱にフィルムを張り、外気温:5℃、水温:15℃、
傾斜角10度でフィルムの濡れ状態を評価。
高温持続性:上部傾斜箱にフィルムを張り、外気温:20℃、水温:50℃、
傾斜角10度でフィルムの濡れ状態を評価。
【0042】
F.塗膜の密着性評価
JIS D0202 「碁盤目セロファンテープ」試験にて評価した。
○ :残存個数が80〜100個
△ :残存個数が50〜80個
× :残存個数が 0〜50個
【0043】
G.フィルムの吸水白化評価
作製した防曇性フィルムを水温40℃の水に浸漬させ、任意の期間毎に切取り、東京電色(株)製ヘーズメーターTC−H3DPKを用いて曇価を測定し、測定値からフィルムの吸水白化度を評価した。この値の増加が小さい程、吸水性に優れていることを示す。つまり、耐水性が良好であることが分かる。
目安基準:1ヵ月後において20以下であれば、実用範囲内とした。
また、浸漬後にフィルムを乾燥し、防曇塗膜表面のべたつきについても評価を行った。
【0044】
H.本発明の防曇塗料における実施例および比較例
【表1】

【表2】

【0045】
作製した防曇性フィルムの評価結果を表3に示す。
【表3】

【0046】
表3の結果より、本発明の防曇塗料組成物を用いることでポリオレフィン系樹脂フィルム/シート等に透明性、防曇性、耐水性および密着性に優れ、長期的にその性能を維持する防曇塗膜を形成することが出来る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)に示す反応性重合基を有する乳化剤を使用して製造される(メタ)アクリル酸系共重合体と親水性物質を含有することを特徴とする防曇塗料組成物。
【化1】

(但し、Rは炭素数6〜22のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基、Aはエチレン基および/またはプロピレン基であり、エチレン基の数≧プロピレン基の数となる範囲、aは0または1〜20の整数、bは1〜20の整数。n+m=3であり且つm=1または2、n=1または2、Mは水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアミン残基またはアルカノールアミン残基である。)
【請求項2】
(メタ)アクリル酸系共重合体が(メタ)アクリル酸系モノマー由来の構成単位を5〜90重量%含むことを特徴とする請求項1記載の防曇塗料組成物。
【請求項3】
(メタ)アクリル酸系共重合体のガラス転移温度が30〜100℃の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の防曇塗料組成物。
【請求項4】
親水性物質が正・負に帯電した無機コロイドゾルとアニオン性ポリウレタン系樹脂の混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防曇塗料組成物。
【請求項5】
ポリオレフィン系樹脂成形品に請求項1〜4のいずれか1項に記載の防曇塗料組成物由来の防曇性被膜が形成されてなる樹脂成形品。








【公開番号】特開2006−16578(P2006−16578A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198477(P2004−198477)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000221797)東邦化学工業株式会社 (188)
【Fターム(参考)】