説明

防曇性被膜物品

【課題】優れた防曇性、耐久性を示すとともに、防曇持続性を有し、また防曇機能発現中の干渉縞を抑制する防曇性被膜物品を提供する。
【解決手段】ガラス板1と、前記ガラス板上に形成された防曇膜2とを備えた防曇性被膜物品であって、防曇膜が、酸化ケイ素を主成分とするとともに、それぞれの炭素数が6以上である2本の炭素鎖を親水基から見て分岐した位置に有する2本鎖型の陰イオン性界面活性剤と、ポリオール化合物とを含み、防曇膜の内部に複数の閉じた孔3が形成されており、防曇膜の膜厚が500〜3000nmであり、波長550nmにおける屈折率が1.25〜1.45である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防曇性被膜物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の防曇ガラスとして、表面に結露した水分を膜中に吸収する「吸水タイプ」と、表面に薄い水膜を形成させる「親水タイプ」とが知られている。
吸水タイプは、膜中に水分を蓄える必要があるため、実用的な防曇性を発現させるためには数μm以上の膜厚となり、膜強度、特に耐傷付き性が親水タイプより劣っている。
一方、親水タイプは、表面に水膜が形成されるため、水膜の厚みにより、干渉縞が目立つことが問題として挙げられる。
また、ガラス物品表面の光の反射による透視性の低下を抑えることを目的として、ガラス表面に低反射膜を形成する技術が知られている。例えば、特許文献1には、鎖状シリカ微粒子およびシリカからなり、110〜250nmの厚み及び1.25〜1.40の屈折率を有する膜がガラス基板表面の少なくとも一方に被覆され、その膜表面に防曇性被膜が被覆されている反射防止ガラス板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−292568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された反射防止ガラス板は、膜の屈折率が水の屈折率(n=1.33)に近く、前記干渉縞が起きにくいことが考えられるが、防曇持続性が低いという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の状況を鑑み、優れた防曇性、耐久性を示すとともに、防曇持続性を有し、また防曇機能発現中の干渉縞を抑制する防曇性被膜物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ガラス板上に、特定の範囲の膜厚及び屈折率を有する防曇膜を備える防曇性被膜物品により、上記課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、ガラス板と、前記ガラス板上に形成された防曇膜とを備えた防曇性被膜物品であって、防曇膜の膜厚が500〜3000nmであり、波長550nmにおける屈折率が1.25〜1.45である防曇性被膜物品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた防曇性、耐久性を示すとともに、防曇持続性を有し、また防曇機能発現中の干渉縞を抑制する防曇性被膜物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の防曇膜における閉じた孔の分散状態を説明するための断面図である。
【図2】実施例1により得た防曇膜を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した状態を示す図である。
【図3】比較例1により得た防曇膜をSEMで観察した状態を示す図である。
【図4】比較例2により得た防曇膜をSEMで観察した状態を示す図である。
【図5】防曇膜の膜厚500nmにおける屈折率、水膜厚を変化させたときの反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
【図6】防曇膜の膜厚1000nmにおける屈折率、水膜厚を変化させたときの反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
【図7】防曇膜の膜厚1500nmにおける屈折率、水膜厚を変化させたときの反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
【図8】防曇膜の膜厚2000nmにおける屈折率、水膜厚を変化させたときの反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
【図9】防曇膜の膜厚2500nmにおける屈折率、水膜厚を変化させたときの反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
【図10】防曇膜の膜厚3000nmにおける屈折率、水膜厚を変化させたときの反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の防曇性被膜物品は、ガラス板と、前記ガラス板上に形成された防曇膜とを備えた防曇性被膜物品である。
前記防曇膜の膜厚は、500〜3000nmである。膜が薄すぎると、防曇持続性が低下することがある。膜が厚すぎると、膜の透過率が低下して物品の透明性を損なうことがあり、耐摩耗性が低下することがある。以上の観点から、防曇膜の膜厚は、500〜2500nmが好ましく、500〜2000nmがより好ましく、500〜1000nmがさらに好ましい。
前記防曇膜の波長550nmにおける屈折率が1.25〜1.45である。前記屈折率が上記の範囲であれば、水の屈折率(n=1.33)に近づけることにより、水/防曇膜界面の反射が少なくなり、水膜表面との干渉が減少するために、干渉縞が起きにくくなる。以上の観点から、前記屈折率は、1.31〜1.43が好ましく、1.33〜1.41がより好ましく、1.35〜1.39がさらに好ましい。
【0010】
前記防曇膜の内部には、複数の閉じた孔が形成されることが好ましい。また、前記防曇膜が、酸化ケイ素を主成分とするとともに、それぞれの炭素数が6以上である2本の炭素鎖を親水基から見て分岐した位置に有する2本鎖型の陰イオン性界面活性剤と、ポリオール化合物とを含むことが好ましく、前記酸化ケイ素が、酸化ケイ素微粒子と、シリコンアルコキシドの加水分解反応および縮重合反応により生成した酸化ケイ素成分とを含むことが好ましい。
上記で用いた用語の意味について、「閉じた孔」とは、膜表面に開口していない孔である。「主成分」とは、慣用のとおり、最も多い成分を意味し、具体的には、50質量%以上を占める成分を指す。「ポリオール化合物」は、ジオール、トリオールなど多価のアルコールである。
【0011】
本発明の防曇性被膜物品は、ガラス板の表面に、シリコンアルコキシドと酸化ケイ素微粒子とを含む防曇膜の形成溶液を塗布して塗布膜を形成し、この塗布膜を乾燥させて防曇膜とすることにより、得ることができる。防曇膜の形成溶液は、少なくとも、1)2本鎖型の陰イオン性界面活性剤、2)ポリオール化合物、3)酸化ケイ素微粒子(シリカ微粒子)、4)少なくともそのー部がシリコンテトラアルコキシドであるシリコンアルコキシド、5)水、6)有機溶媒、7)加水分解触媒、を混合して調製することができる。
【0012】
2本鎖型の陰イオン性界面活性剤は、防曇膜における閉じた孔の形成に重要な役割を果たす。疎水基として機能する2本の炭素鎖を有する界面活性剤はしばしば「2本鎖」型と呼ばれるため、本明細書でもこの呼称を用いている。2本鎖型の陰イオン性界面活性剤は、親水基から見て分岐した位置に2本の炭素鎖を有する。2本の炭素鎖は、炭素数が6以上、好ましくは6〜30、より好ましくは6〜20、であり、直鎖であっても分岐を有する鎖であってもよい。炭素鎖は、直鎖のまたは分岐鎖を有するアルキル基であるが、フルオロアルキル基のように、置換されたアルキル基であっても構わない。2本鎖型の陰イオン性界面活性剤が有する親水基としては、アルカリ金属原子をMと表示したときにSO3Mとして表示される基が好適である。Mは、好ましくはNaおよび/またはKである。
【0013】
実験により確認された限り、「1本鎖」型の陰イオン性界面活性剤を用いたのでは閉じた孔は形成されない。2本鎖型の陰イオン性界面活性剤は、1本鎖型の陰イオン性界面活性剤と比較して、相分離を誘発して逆ミセルを形成する能力が高く、この能力が閉じた孔の出現をもたらしたものと考えられる。ただし、2本鎖型の陰イオン性界面活性剤を用いたとしても、シリコンアルコキシドの加水分解が進行して親水性が強くなり過ぎた形成溶液からは、孔を有する膜が得られないことには注意する必要がある。
【0014】
前記2本鎖型の陰イオン性界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましく、下記式(1)で示されるジアルキルスルホコハク酸ナトリウムがより好ましい。
【0015】
【化1】

【0016】
ここで、R1およびR2は、それぞれ互いに独立して、炭索数6〜20の直鎖または分岐鎖を有するアルキル基である。
その他の2本鎖型の陰イオン性界面活性剤としては、ジアルキルリン酸塩などが挙げられる。
【0017】
2本鎖型の陰イオン性界面活性剤は、防曇膜における含有量が膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、好ましくは1〜25質量%、より好ましくは5〜15質量%となるように、形成溶液に添加することが好ましい。膜中の酸化ケイ素成分は、酸化ケイ素微粒子およびシリコンテトラアルコキシドに由来することから、上記の比率は形成溶液に添加するシリコンテトラアルコキシドに含まれるシリコン原子をSiO2に換算した上で算出する。2本鎖型の陰イオン性界面活性剤の添加量が多すぎると、膜にしたときにブリードアウトを引き起こす原因となり、逆に少なすぎると防曇持続性能や防曇性能が十分に得られないことがある。
【0018】
ポリオール化合物は、膜のマトリックス構造を緻密にして膜の耐摩耗性を向上させると共に、陰イオン性界面活性剤の分散性の向上に寄与する成分である。ポリオール化合物は、トリオール化合物であることが好ましく、グリセリン骨格およびオキシアルキレン基を有するトリオール化合物が特に好ましい。グリセリン骨格およびオキシアルキレン基を有し、適切な分子量を有するトリオール化合物は、防曇膜の親水性の向上に寄与してこの膜の防曇持続性能の向上に貢献する。上記オキシアルキレン基に含まれるアルキレン基の炭素数は3以下が好ましい。なお、「グリセリン骨格」とは、グリセリンからその酸素原子に結合した水素原子を取り除いた残部を指す。
好ましいトリオール化合物の構造を式(2)に示す。
【0019】
【化2】

【0020】
ここで、R3、R4、R5は、それぞれ互いに独立して、炭素数が1〜3の直鎖のまたは分岐を有するアルキル基である。また、L、M、Nは、互いに独立して1〜5、好ましくは1〜2の整数である。
【0021】
膜の防曇性を高める観点から、グリセリン骨格およびオキシアルキレン基を有するトリオール化合物の平均分子量は、800以下が好ましく、500以下がより好ましく、400以下が更に好ましい。有機溶媒および水に対する相溶性を併せて考慮すると、上記トリオール化合物の平均分子量は、200以上400以下が特に好ましい。
【0022】
ポリオール化合物は、膜中の酸化ケイ素(SiO2換算)に対し、好ましくは10〜50質量%、より好ましくは15〜30質量%となるように、形成溶液に添加することが好ましい。ポリオール化合物の添加量が多すぎると膜の硬度が低下することがあり、逆に少なすぎると膜にクラックが発生したり膜の外観を良好に保持できなかったりすることがある。
【0023】
酸化ケイ素微粒子およびシリコンテトラアルコキシドは、防曇膜の主成分である酸化ケイ素を供給する。酸化ケイ素微粒子は、膜の表面硬度の維持に貢献する成分である。シリコンテトラアルコキシドは、加水分解および縮重合して酸化ケイ素成分となる。シリコンテトラアルコキシドに由来する酸化ケイ素は、酸化ケイ素微粒子を互いに接合する「糊」としての役割も果たす。
【0024】
酸化ケイ素微粒子の添加量が多くなるにつれて、膜に形成される孔は「閉じた孔」から「開いた孔」(表面に開口した孔)へと変化する傾向を示す。形成溶液中の酸化珪素微粒子が凝集体を形成すると、膜中においてこの凝集体の内部および周囲に比較的大きい空隙が形成されやすくなり、この空隙が膜中に形成された孔を互いに連続させ、膜表面に開ロさせることになるためである。
【0025】
他方、酸化ケイ素微粒子の添加量が少なすぎると、防曇持続性能が低下する。膜中において酸化ケイ素微粒子の周囲に形成されるごく狭い空隙が界面活性剤の膜表面への染み出しの経路として機能し、防曇性の持続に貢献していると考えられる。このように、酸化ケイ素微粒子は、膜の表面硬度を維持するばかりでなく、防曇性の持続にも寄与する。
【0026】
SiO2換算による質量基準により表示して、防曇膜の形成溶液中の酸化ケイ素微粒子の量は、シリコンテトラアルコキシドの量以下とするとよい、具体的には、シリコンテトラアルコキシド(酸化ケイ素換算)と酸化ケイ素微粒子との質量比〔シリコンテトラアルコキシド(酸化ケイ素換算):酸化ケイ素微粒子〕が1:1〜1:0.1の範囲が好ましく、1:0.9〜1:0.2の範囲がより好ましく、1:0.8〜1:0.5の範囲が更に好ましい。
【0027】
酸化ケイ素微粒子の平均粒径は100nm以下の範囲が好ましい。酸化ケイ素微粒子の平均粒径が大きすぎると、膜のヘイズ率が高くなって膜が白濁することがある。酸化ケイ素微粒子の平均粒径は、10〜50nmの範囲がより好ましく、10〜30nmの範囲が更に好ましい。
【0028】
シリコンアルコキシドは、少なくともその一部をシリコンテトラアルコキシドにより構成することが好ましく、そのすべてがシリコンテトラアルコキシドであることがより好ましい。シリコンテトラアルコキシドとしては、特に制限はないが、シリコンテトラメトキシド、シリコンテトラエトキシド、シリコンテトライソプロポキシドなどが挙げられる。
【0029】
形成溶液におけるシリコンテトラアルコキシドの濃度は、シリコンテトラアルコキシドをSiO2換算したときのSiO2濃度により表示して、3〜10質量%が好ましく、3〜8質量%がより好ましい。この濃度が高すぎると、防曇膜にクラックが発生することがある。
また、シリコンテトラアルコキシドは、SiO2換算して酸化ケイ素微粒子との合計量から算出したときの形成溶液におけるSiO2濃度が5〜15質量%となるように添加することが好ましい。
【0030】
シリコンアルコキシドは、シリコンテトラアルコキシドと、親水基により水素原子の一部が置換されたアルキル基がシリコン原子に結合したシリコンアルコキシド(以下、単に「親水基含有シリコンアルコキシド」ということがある)とを含むことが好ましい。親水基は、膜の親水性を高め、膜の防曇性の持続に貢献する。
親水基は、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ウレイド基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
アルキル基としては、炭素数3〜6の直鎖のまたは分岐を有するアルキル基が好適である。親水基含有シリコンアルコキシドとしてはシリコントリアルコキシドが好ましい。このシリコントリアルコキシドは、親水基により置換されたアルキル基を1つ有することになる。親水基含有シリコンアルコキシドのアルコキシル基は、例えば、上記に例示したンリコンテトラアルコキシドに含まれるアルコキシル基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基)とするとよい。
【0031】
親水基含有シリコンアルコキシドは、SiO2に換算したシリコンテトラアルコキシドに対し、RxSiOyへの換算値に基づく質量%により表示して、0.1〜10%、特に1〜6%の範囲内で添加することが好ましい。ここで、Rは、当該親水基含有シリコンアルコキシドに含まれる、親水基により水素原子の一部が置換されたアルキル基を指し、x、yは、当該親水基含有シリコンアルコキシドに含まれるアルコキシル基および上記アルキル基の数により定まる数値である(親水基含有シリコントリアルコキシドの場合、X=1、y=3/2)。親水基含有シリコンアルコキシドの比率が高くなり過ぎると、膜の強度、特に耐摩耗性が低下する、
【0032】
水は、シリコンアルコキシドの加水分解を促すためのみならず、逆ミセルを形成するめに必要な成分として形成溶液に添加される。水の量は、シリコンアルコキシドの総量に対し、モル比により表示して、4倍以上、具体的には4〜21倍、好ましくは4〜12倍特に4〜8倍、とりわけ5〜7.5倍が好適である。
【0033】
有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなど炭素数1〜3の低級アルコールが適しているが、防曇膜の形成に必要な各成分を溶解できるものであれば特に制限はない。
【0034】
加水分解触媒としては、酸触媒、特に塩酸、硝酸、硫酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などの強酸を用いることが好ましい。酸触媒に由来する有機物は膜硬度を低下させることがあるため、酸触媒としては無機酸が好ましい、塩酸は、揮発性が高く、膜に残存しにくいため、最も好ましい。
酸触媒の濃度は、酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度により表示して0.001〜2mo1/kgの範囲とすることが好ましい。
【0035】
防曇膜の形成溶液は、所定時間攪拌しながらシリコンアルコキシドの加水分解をある程度進行させ、その後、ガラス板の上に塗布する。塗布された形成溶液(塗布膜)を乾燥させると、塗布膜からは有機溶媒が徐々に蒸発する。この蒸発に伴って、塗布膜を構成する残りの成分は相溶性を失い、界面活性剤の作用によって逆ミセルが形成される。さらに乾燥が進むにつれて逆ミセルを構成している水が膜から失われ、膜中に閉じた孔が現れる。
【0036】
シリコンアルコキシドの加水分解が進行するにつれて形成溶液に存在するシラノール基は増加し、それに応じて液は親水性に傾いていく。このため、塗布前の形成溶液においてシリコンアルコキシドの加水分解を過度に進行させると、逆ミセルが形成されにくくなる。実験により確認されたところでは、室温(25℃)下で丸一日(24時間)攪拌した形成溶液からは、その溶液の組成が閉じた孔の形成に極めて適したものであったとしても、閉じた孔が存在しない緻密な構造を有する膜が得られた。
【0037】
シリコンアルコキシドの加水分解が進行するにつれて得られる膜に存在する孔の径が大きくなることも、実験により確認された。加水分解の時間が短いと、小径の孔が多数形成される傾向にあり、加水分解の時間を長くするにつれて孔径は大きく、孔の数は少なくなる。孔の径は、加水分解の時間を適宜調整することにより、制御することができる。
【0038】
孔の径は、防曇膜の透明性を確保する観点からは可視光域の波長よりも小さいことが望ましく、孔によるクッション効果を得るためにはある程度大きいことが望ましい。室温(25℃)あるいはそれに近い温度環境(例えば20〜30℃)であれば、望ましい大きさの孔を得るために適切な攪拌時間は、通常0.5〜8時間である。ただし、所望の径の孔を形成するために適切な攪拌時間は、形成溶液の温度に加え、形成溶液を構成する成分の比率などに応じてシフトすることがあるので、この点には注意する必要がある。
【0039】
形成溶液の塗布工程では、雰囲気の相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持することが好ましい。相対湿度を低く保持すると、膜が雰囲気から水分を過剰に吸収することを防止できる。雰囲気から水分が多量に吸収されると、膜のマトリックス内に入り込んで残存した水が膜の強度を低下させるおそれがある。
【0040】
形成溶液の乾燥工程は、塗布環境下における風乾工程と、加熱を伴う加熱乾燥工程とを含むように実施することが好ましい。風乾工程では、有機溶媒を主とする液体成分の膜からの除去が進行し、形成溶液の塗布膜内に逆ミセルが形成される。風乾工程は、相対湿度を40%未満、さらには30%以下に保持した雰囲気に塗布膜を曝すことにより、1分間以上、例えば1〜60分間、実施するとよい。加熱乾燥工程では、加水分解により生成したシラノール基の縮重合反応が進行するとともに、膜に残存する液体成分の除去、特に水の除去が進行し、酸化ケイ素マトリックスが発達する。加熱乾燥工程では、300℃以下、例えば50〜200℃、好ましくは80〜175℃の雰囲気に、10分間以上、例えば20〜120分間、塗布膜を曝すことにより、実施するとよい。
【0041】
以上説明した一連の工程、すなわち、a)上記1)〜7)を含む形成溶液の調製工程、b)形成溶液のガラス板上への塗布工程、c)形成溶液の乾燥工程を順次実施することにより、本発明の防曇性被膜物品を得ることができる。
【0042】
図1に、本発明により得られる防曇性被膜物品の一例の断面を示す。この図は、防曇膜2の膜表面に垂直な断面(以下、「膜縦断面」という)を示している。
【0043】
ガラス板1の表面上に形成された防曇膜2の内部には、複数の閉じた孔3が形成されている。孔3は、その各々が防曇膜2の固体部分4によって囲まれ、膜表面に開口することなく「閉じた」状態で、互いに接触することなく独立した状態で分散している。孔3は、基本的にその内部が空洞となっている空孔であるが、その一部に水や界面活性剤が含まれていてもよい。形成した防曇膜は、特にその初期段階においてヘイズ率が十分に低い場合がある。このような膜には水や界面活性剤で満たされている孔がその一部に含まれている可能性があるが、このような孔が含まれていても差し支えはない。
また、その複数の閉じた孔の存在により、膜全体としての屈折率の値はシリカの屈折率(約1.45)よりも小さくなって1.25〜1.45の範囲とすることが容易である。理論的に反射率がゼロとなる防曇膜の屈折率の値は、ガラス板の屈折率(1.50)の平方根値、すなわち1.225であるが、本発明における防曇膜の屈折率をこの値に近づけることができる。
【0044】
孔3は、防曇膜2の表面に加えられた応力(押圧力)6の分散に寄与する。応力6は、図1に示したように、膜中の孔3の変形によってその一部が吸収され、その存在によって伝搬方向が変えられたり分散したりしながら伝わるため、弱まりながら広い領域に拡散しておくことになる。現実には図示したようなごく狭い領域のみに応力6が加えられることはないが、膜表面の広い領域に応力が加わったときにも、図示したメカニズムにより、その応力が、弱まり、分散され、平均化されながら伝わっていく、このような応力分散のメカニズムは、膜の耐摩耗性の向上に寄与すると考えられる。
【0045】
膜縦断面に現れる孔3の輪郭は、概ね円形または楕円形である。この膜縦断面に現れている輪郭から、実際には紙面厚さ方向に奥行きを有する孔3の径を見積もることはできない、しかし、多数の孔3すべてについて個々の孔の最大径が反映された輪郭が現れるように断面を個別に設定することは現実には困難であるため、ここでは、1つの断面に基づいて多数の孔3の径を同時に記述することにより、孔3の適切な大きさを述べることとする。本明細書では、便宜上、膜縦断面に表れる孔3の輪郭に基づく最大径5をその孔の膜縦断面における径として取り扱う。
【0046】
膜縦断面を観察したときにこの断面に現れる孔3の大半、具体的には80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくはそのすべてが、膜厚の30%未満、好ましくは20%未満、であって、300nm以下、好ましくは200nm以下、の径を有することが好ましい。膜厚に対して孔の径が大きすぎると、互いに独立した孔が多数分散した望ましい構造が得られにくくなる。また、膜縦断面における径が300nmを超える孔が多くなると、孔により可視光線が散乱して膜のヘイズ率が高くなるおそれがある。ヘイズ率が高くなると、その物体は白く曇って見える。ヘイズ率のような光学特性には、大径の孔が少数存在しても実質的には影響が及ばないから、上記程度の割合(80%以上)をもって径を規定することには合理性がある。なお、前記径は、断面に現れる孔の輪郭に基づく最大内径を指す。
【0047】
防曇膜2には、上記程度の径を有する孔が膜中に多数存在することが望ましく、具体的には、膜縦断面を観察したときに、断面1μm2あたり、閉じた孔3が、5個以上、さらには7個以上、特に10個以上、存在することが好ましい。また、膜縦断面を観察したときに、断面1μm2あたり、膜縦断面における径が10nm以上(好ましくは30nm以上)である閉じた孔3が、5個以上、さらには7個以上、特に10個以上、存在することがより好ましい。さらに、膜厚が1μmを超える防曇膜については、膜縦断面に任意に設定した1辺1μmの正方形の微小区画7において、閉じた孔3が5個以上、さらには7個以上、特に10個以上、存在することが好ましい。
【0048】
閉じた孔3は、防曇膜2の広い領域に分散していることが好ましい。具体的には、膜縦断面を観察したときに、この断面において膜表面を示す線分(膜表面に対応する線分)の50%を超える部分、好ましくは70%を超える部分、より好ましくは90%を超える部分、特に好ましくはそのすべてにおいて、その下方に閉じた孔3が存在することが好ましい。図1に示した膜縦断面において、膜表面の一部を示す線分12の下方には孔3が存在しないが、膜表面の残部を示す線分11の下方には孔3が存在する。図1では、下方に孔3が存在する線分11の比率が90%を超えている。
【0049】
また、閉じた孔3は、防曇膜2の広い領域において膜の厚さ方向について重複するように存在することが好ましい。具体的には、膜縦断面を観察したときに、この断面において膜表面を示す線分の50%を超える部分、好ましくは70%を超える部分、より好ましくは90%を超える部分において、その下方に、膜表面に垂直な方向について重複する2以上の閉じた孔が存在することが好ましい。図1に示した膜縦断面において、下方に孔3が存在する膜表面を示す線分11に垂直に防曇膜2を横断する線分8を引いたときに、線分8が通過する2以上の閉じた孔3は、膜表面に垂直な方向について互いに重複していることになる。
【実施例】
【0050】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。まず、各実施例、比較例で作製した防曇性被膜物品の特性を評価するために実施した試験の内容を説明する。以下においても上記と同様、室温は25℃を指す。
【0051】
<屈折率>
防曇膜の屈折率;エリプソメーターにより550nmの波長の光での値を求めた。
<膜厚>
防曇膜の膜厚;防曇膜が被覆されたガラス板の断面を電子顕微鏡で倍率10万倍にて観察し、防曇膜が被覆されたガラス板表面から防曇膜の頂上までの高さを膜厚とした。
【0052】
<干渉縞の有無>
防曇膜の干渉縞の有無は、ガラス板に対して、60°の角度から目視により評価した。
<初期特性>
室温において、防曇性を評価した。防曇性は、防曇膜の表面に呼気を吹きつけたときに、その表面において、全く曇りが生じなかった場合を「A」、一部に曇りが生じた場合を「B」、水滴は付着したものの透過像の歪みが少なかった場合を「C」、ガラス板と同程度またはそれ以上に曇った場合を「D」、と評価した。また、ヘイズ率(%)をスガ試験機社製HZ−1Sを用いて測定した。
【0053】
<耐摩耗性>
耐摩耗性試験としてテーバー摩耗試験を実施した。テーバー摩耗試験は、JIS R3212に準拠した摩耗試験によって行った。すなわち、市販のテーバー摩耗試験機(TABER INDUSTRIES社製5150 ABRASER)を用い、荷重250g、500回転の試験を防曇膜に適用した。テーパー摩耗試験の後、ヘイズ率をスガ試験機社製HZ−1Sを用いて測定し、上記と同様にして、防曇性を評価した。
【0054】
<耐水性及び防曇持続性>
耐水試験は、防曇膜が形成されたガラス板を40℃の水中に100時間浸潰することにより行った。その後、水中から引き上げて室温で12時間以上乾燥させ、その後、上記と同様にして防曇性を防曇持続性として評価するとともに、目視により外観変化を評価した。外観は、クラックが発生せず透明な場合を「A」、クラックは発生しないが一部白っぽく変化しているものを「B」、クラックが発生している、又は白く変化したものを「C」と評価した。
【0055】
実施例1
アルコール溶媒(日本アルコール工業製ソルミックスAP−7;エタノール85.5質量%、n−プロピルアルコ―ル9.6質量%、イソプロピルアルコール4.9質量%の混合溶媒)、ポリオール化合物(アデカポリエーテルG−300(ADEKA製;グリセリンにプロピレンオキシドが付加したトリオール、平均分子量300)、テトラエトキシシラン(信越化学製KBE−04)、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(信越化学製LS−3415)、コロイダルシリカゾル(オルガノシリカゾル:日産化学工業製IPA−ST−MS;酸化ケイ素微粒子の平均粒子径17〜23nm)、濃塩酸(35質量%、双葉化学薬品製)、水、1,4−ビス(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(日本油脂製ラピゾールA−30)を混合し、室温下で約4時間撹拌することにより防曇膜の形成溶液を得た。なお、濃塩酸は、酸からプロトンが完全に解離したと仮定したときのプロトンの質量モル濃度が0.005mo1/kgとなるように添加した。
【0056】
形成溶液におけるシリコンテトラアルコキシド(酸化ケイ素換算)の濃度、形成溶液におけるコロイダルシリカゾルに含まれる酸化ケイ素微粒子(シリカ微粒子)の濃度(含有率)、親水基含有シリコンアルコキシドの含有率、さらにはポリオール化合物、水、有機溶媒(アルコール)、界面活性剤の添加量を表1に示す。なお、水の含有量は、各種試薬中に含まれる水分を加えて算出した。以降の実施例および比較例において用いた形成溶液についても、表1に形成溶液の組成を併せて示す。
【0057】
洗浄したソーダ石灰珪酸塩ガラス板(100×100mm、厚さ3.1mm)上に、相対湿度20%、温度20℃の雰囲気下で、形成溶液をフローコート法により塗布した。続いて、形成溶液を塗布環境下で約5分間乾燥させた後、175℃の雰囲気下で25分間さらに乾燥させ、ガラス板上に、有機物と無機物とが複合化した防曇膜を設けてなる防曇性被膜物品を得た。
【0058】
実施例1で得られた防曇膜の膜厚は700nm、屈折率は1.37であった。また、こうして得られた防曇膜は、クラックのない透明度の高い単層の膜であった。この膜について測定した各種特性を表2に示す。以降の比較例において作製した防曇膜についても、表2に特性を併せて示す。実施例1により得られた防曇膜の断面のSEM写真を図2として示す。
【0059】
図5〜図10は、実施例1と同じ構成を有する防曇膜において、防曇膜の膜厚を500nm、1000nm、1500nm、2000nm、2500nm、3000nm、屈折率を1.25〜2.1、水膜厚0nm、200nm、400nm、800nm、1000nmとしたときの防曇膜の反射色△Eの挙動をシミュレーションにより計算した結果を表すグラフである。
図5〜10の結果から、防曇膜の膜厚が500〜3000nm、屈折率1.25〜1.45の範囲、特に1.33〜1.45の範囲は、水膜厚が変化したときの△Eの値が小さく、かつ△Eの変化が小さいことから、防曇機能発現中に干渉縞が目立たないことが分かる。
【0060】
比較例1
比較例1では、親水基含有シリコンアルコキシドを添加せず、酸化ケイ素微粒子の添加量を増やし、さらにポリオールの添加量を減らした以外は、実施例1と同様にして、防曇膜を形成した。この防曇膜は、形成した初期状態においてはクラックが認められない透明な膜であり、初期特性は良好であったが、耐摩耗試験後のヘイズ率の上昇幅が大きくなり、耐水試験後には白化した。
【0061】
比較例1により得られた防曇膜の断面のSEM写真を図3として示す。この防曇膜に形成されている孔が、連続して膜表面に開口していることが確認できる。これは、酸化ケイ素微粒子の添加量が多すぎたためである。孔が開口した膜構造は、実施例で確認されたような孔が閉じた膜構造と比較して、耐摩耗性および耐水性に劣ることがわかる、酸化ケイ素微粒子の添加量を増やし過ぎると孔が膜表面に開口することは、他の実験結果からも確認されている。
【0062】
比較例2
比較例2では、界面活性剤として、ココイルエーテルサルフェートナトリウム(ADEKA製アデカホープYES−25;1本鎖型の界面活性剤)を用いた以外は比較例1と同様にして、防曇膜を形成した。この防曇膜は、形成した初期状態においてはクラックが認められない透明な膜であり、初期特性は良好であったが、耐摩耗試験後のヘイズ率の上昇幅が大きくなり、耐水試験後にはクラックが発生した。
【0063】
比較例2により得られた防曇膜の断面のSEM写真を図4として示す。この防曇膜が孔のない緻密な構造を有することが確認できる。これは、1本鎖の界面活性剤では塗布膜に十分な逆ミセルを形成できなかったことを示している。閉じた孔が生じた形成溶液において界面活性剤を2本鎖型から1本鎖型に変えただけで閉じた孔が形成されなくなることは、他の実験結果からも確認されている。
【0064】
実施例1から得た防曇膜のSEM写真(図2)は、膜の縦断面に垂直な方向から撮影されたものではないが、このSEM写真からは、孔の実質的にすべてが膜厚の20%未満であって300nm以下の径を有すること(孔の90%以上は200nm以下の径を有する)、断面1μm2あたり30nm以上の径を有する孔が10個以上存在すること、断面における膜表面に対応する部分(線分として現れる境界)の実質的にすべてにおいてその下方に孔が膜厚方向に重複するように存在すること、が確認できる。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によれば、優れた防曇性、耐久性(特に、耐摩耗性や耐水性)を示すとともに、防曇持続性を有し、また防曇機能発現中の干渉縞を抑制する防曇性被膜物品を提供できる。この防曇性被膜物品は、鏡、自動車の窓ガラスなどとして大きな利用価値を有する。
【符号の説明】
【0068】
1 ガラス板
2 防曇膜
3 閉じた孔
4 膜の固体部分
5 膜縦断面における孔の径(最大径)
6 応力
7 膜縦断面に設定した正方形の微小区画
8 膜縦断面における膜表面に垂直な線分
11 膜縦断面において下方に孔が存在する膜表面部分を示す線分
12 膜縦断面において下方に孔が存在しない膜表面部分を示す線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板上に形成された防曇膜とを備えた防曇性被膜物品であって、防曇膜の膜厚が500〜3000nmであり、波長550nmにおける屈折率が1.25〜1.45である、防曇性被膜物品。
【請求項2】
前記防曇膜が、その内部に複数の閉じた孔が形成されており、前記防曇膜が、酸化ケイ素を主成分とするとともに、それぞれの炭素数が6以上である2本の炭素鎖を親水基から見て分岐した位置に有する2本鎖型の陰イオン性界面活性剤と、ポリオール化合物とを含む、請求項1に記載の防曇性被膜物品。
【請求項3】
前記酸化ケイ素が、酸化ケイ素微粒子と、シリコンアルコキシドの加水分解反応および縮重合反応により生成した酸化ケイ素成分とを含む、請求項2に記載の防曇性被膜物品。
【請求項4】
前記陰イオン性界面活性剤がジアルキルスルホコハク酸塩であって、前記ジアルキルスルホコハク酸に含まれるアルキル基は、炭素数が6以上の直鎖のまたは分岐を有するアルキル基である、請求項2又は3に記載の防曇性被膜物品。
【請求項5】
前記陰イオン性界面活性剤の前記防曇膜中における含有量が、膜中の前記酸化ケイ素成分(SiO2換算)に対し、1〜25質量%である、請求項2〜4のいずれかに記載の防曇性被膜物品。
【請求項6】
前記ポリオール化合物が、グリセリン骨格およびオキシアルキレン基を有するトリオール化合物である、請求項2〜5のいずれかに記載の防曇性被膜物品。
【請求項7】
前記ポリオール化合物の平均分子量が800以下である、請求項6に記載の防曇性被膜物品。
【請求項8】
前記シリコンアルコキシドが、シリコンテトラアルコキシドと、親水基により水素原子の一部が置換されたアルキル基がシリコン原子に結合したシリコンアルコキシドとを含む、請求項3〜7のいずれかに記載の防曇性被膜物品。
【請求項9】
前記親水基が、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、ウレイド基およびイソシアネート基から選ばれる少なくとも1種である、請求項8に記載の防曇性被膜物品。
【請求項10】
前記防曇膜の膜表面に垂直な前記防曇膜の断面を観察したときに、前記断面に現れる前記複数の閉じた孔の80%以上が、膜厚の30%未満であるとともに300nm以下の径を有する、請求項2又は3に記載の防曇性被膜物品。
ただし、前記径は、前記断面に現れる孔の輪郭に基づく最大内径を指す。
【請求項11】
前記防曇膜の膜表面に垂直な前記防曇膜の断面を観察したときに、前記断面1μm2あたり前記閉じた孔が5個以上存在する、請求項10に記載の防曇性被膜物品。
【請求項12】
前記防曇膜の膜表面に垂直な前記防曇膜の断面を観察したときに、前記断面において前記膜表面を示す線分の50%を超える部分において、その下方に閉じた孔が存在する、請求項2又は3に記載の防曇性被膜物品。
【請求項13】
前記防曇膜の膜表面に垂直な前記防曇膜の断面を観察したときに、前記断面において前記膜表面を示す線分の50%を超える部分において、その下方に、前記膜表面に垂直な方向について重複する2以上の閉じた孔が存在する、請求項12に記載の防曇性被膜物品。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−213555(P2011−213555A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84279(P2010−84279)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】