説明

防水カバー及びその製造方法

【課題】吸音性及び遮音性がともに優れた防水カバー及びその簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】自動車ドア2のインナパネル4とドアトリム6の間に介装される防水カバー1であって、該防水カバーが、第1フィルム7、第2フィルム8及び吸音材10からなり、第1フィルム7と第2フィルム8の間に前記吸音材10が挟持され、第1フィルム7の厚さが第2フィルム8の厚さより薄く、第1フィルム7とドアトリム6とが対向し、第2フィルム8とインナパネル4とが対向するようにして介装される防水カバー1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車ドアのインナパネルとドアトリムの間に介装され、車室内に水が浸入するのを防止する防水カバー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車ドアから車室内への水の浸入を防止するため、自動車ドアのインナパネルとドアトリムとの間には防水カバーが配置される。このような防水カバーとしては、従来、ポリエチレンシートなどが用いられてきた。ポリエチレンシートは裁断された後に、必要に応じて、立体形状に成形されたり、キャップが取り付けられたりした後に、インナパネルにブチルテープなどを用いて固定されることにより配置される。
【0003】
さらに、近年、車室内の静粛性を向上させるため、遮音性や吸音性を有する防水カバーが求められている。これまでに、厚肉のシートを使用することにより遮音性を向上させた防水シートや、ポリエチレンシートに不織布や発泡ウレタンを張り付けることにより吸音性を向上させた防水シートなどが知られている。しかしながら、これらの多くは遮音性又は吸音性のどちらか一方のみの特性が高められたものであった。自動車ドア内に用いられる防水カバーは、重量及びスペースの制限があるため、遮音性及び吸音性をともに向上させることが難しかった。
【0004】
特許文献1には、開放セルウレタンフォームの対向する側面に、第1層及び第2層の高強度の線状の低密度ポリエチレンフィルムが結合した遮音特性を有する防水シート(水デフレクタシート)が記載されている。また、第1層及び第2層の低密度ポリエチレンフィルムの厚さを1〜10mil(25.4〜254μm)とすることが好適であることや、開放セルウレタンフォームの厚さを50〜500mil(1270〜12700μm)とすることが好適であることが記載されている。当該防水シートにおいては、中央層として開放セルウレタンフォームを使用することによって、当該防水シートの吸音性が向上するとされている。また、第1層及び第2層の低密度ポリエチレンフィルムは、開放セルウレタンフォームへの水分の侵入を防止する作用を有するとされている。しかしながら、重量やスペースの制限のもとで当該防水シートの吸音性と遮音性をともに良好なものとすることは難しかった。
【0005】
特許文献2には、セル膜が除去された発泡体の小片をバインダーで結合した基体の両面に樹脂フィルムを積層してなる吸音材が記載されている。ここで、前記発泡体が軟質ポリウレタン発泡体からなるものであることが好適であると記載されている。また、前記樹脂フィルムにより前記発泡体の小片の脱落が防止されるとともに、該樹脂フィルムが膜振動することにより吸音性が向上すると記載されている。実施例には、厚さ10mmの前記基体の両面に、厚さ30μmのポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムがラミネート加工により接着されてなる吸音材が記載されていて、この吸音材は、低周波数(500Hz、1000Hz)における吸音性が良好であったとされている。しかしながら、当該吸音材は遮音性が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−58378号公報
【特許文献2】特開2008−32977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、吸音性及び遮音性がともに優れた防水カバー及びその簡便な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、自動車ドアのインナパネルとドアトリムの間に介装される防水カバーであって、該防水カバーが、第1フィルム、第2フィルム及び吸音材からなり、第1フィルムと第2フィルムの間に前記吸音材が挟持され、第1フィルムの厚さが第2フィルムの厚さより薄く、第1フィルムとドアトリムとが対向し、第2フィルムとインナパネルとが対向するようにして介装されることを特徴とする防水カバーを提供することによって解決される。
【0009】
このとき、前記吸音材が配置されていない余白部において、第1フィルムと第2フィルムが接着されることにより、前記吸音材が挟持されることが好適である。
【0010】
本発明の防水カバーは、第1フィルムの厚さが20〜100μmであり、第2フィルムの厚さが50〜300μmであり、かつ、第1フィルムと第2フィルムの厚さの比(第1/第2)が0.8以下であることが好適である。前記吸音材が多孔質材であることも好適であり、なかでも、前記多孔質材が繊維集合体又は発泡体からなるものであることがより好適である。
【0011】
上記課題は、第1フィルムと第2フィルムとを熱融着させる防水カバーの製造方法を提供することによっても解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防水カバーは、軽量かつ薄肉であるうえに、吸音性及び遮音性がともに優れる。したがって、このような防水カバーは、重量やスペースに対する制限が厳しい自動車ドア用の防水カバーとして好適に用いられるとともに、当該防水カバーが配置された自動車は、車室内の静粛性が向上する。さらに、本発明の製造方法によれば、このような防水カバーが簡便に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の防水カバーを含む自動車ドアの概略を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の防水カバーの斜視図である。
【図3】実施例1及び2、並びに、比較例1〜4の防水カバーにおける、入射音の周波数と吸音率との関係を示す図である。
【図4】実施例1及び2、並びに、比較例1〜4の防水カバーにおける、入射音の周波数と透過損失との関係を示す図である。
【図5】実施例3及び4、並びに、比較例5〜7の防水カバーにおける、入射音の周波数と吸音率との関係を示す図である。
【図6】実施例3及び4、並びに、比較例5〜7の防水カバーにおける、入射音の周波数と透過損失との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の防水カバー1を含む自動車ドア2の概略を示す分解斜視図である。これを用いて、本発明の防水カバー1の使用態様の一例を簡単に説明する。自動車ドア2は、鋼板製のアウタパネル3とインナパネル4とからなるドア本体5と、上記インナパネル4の窓開口より下方部分の車室内側の側面に装着される化粧用のドアトリム6とから構成される。インナパネル4とドアトリム6の間に防水カバー1が介装されて、車室内に水が浸入するのを防止する。このとき、防水カバー1は、第1フィルム7とドアトリム6とが対向し、第2フィルム8とインナパネル4とが対向するようにして介装される。上記アウタパネル3とインナパネル4との間の空間内には、窓ガラスを昇降させるウィンドウレギュレータやスピーカ9等の装備部品が収容される。
【0015】
上記防水カバー1は、第1フィルム7、第2フィルム8及び吸音材10からなる。第2フィルム8は、インナパネル4と対向するように配置され、車室内に水が侵入するのを防止する。吸音材10は、第1フィルム7と第2フィルム8の間に配置される。吸音材10が配置されていない余白部11において、第1フィルム7と第2フィルム8とが接着されることなどにより、吸音材10が挟持される。
【0016】
また、上記防水カバー1には、通常、スピーカ挿入孔12が開けられており、スピーカ挿入孔12にスピーカ9を挿入し、スピーカ9と防水カバー1との間で水が漏れないように密着させる。当該スピーカ9は、上記インナパネル4に設けられた開口部13内に装着され、スピーカ9内に水が浸入するのを防止できるように防水手段が設けられている。また、防水カバー1には、必要に応じて、キャップ挿入孔14、15が開けられる。当該キャップ挿入孔14、15に、キャップ16、17を挿入して、水が漏れないように接着させる。当該キャップ16、17内には、側方からの衝撃を吸収するための緩衝材18、19などが挿入される。ここで、キャップ16、17を用いる代わりに、第2フィルム8を成形して凹部を形成し、当該凹部に緩衝材18、19を挿入してもよい。その他、配線などが貫通するスリットが必要に応じて設けられている。
【0017】
本発明の防水カバーは、第1フィルム、第2フィルム及び吸音材からなり、第1フィルムと第2フィルムの間に前記吸音材が挟持され、第1フィルムの厚さが第2フィルムの厚さより薄く、第1フィルムとドアトリムとが対向し、第2フィルムとインナパネルとが対向するようにして介装されることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の防水カバーは、第1フィルムと第2フィルムが吸音材を挟んで配置されている。このような、第1フィルムと第2フィルムによる二重壁構造が形成されることにより、本発明の防水カバーは、質量則により予測される遮音性よりも優れた遮音性を有する。また、本発明の防水カバーは、2つのフィルムのうち、厚さがより薄い第1フィルムがドアトリムと対向する。すなわち、第1フィルムが車室側に配置される。厚さが薄い第1フィルムは、音の反射が少ないうえに優れた吸音性を有する。したがって、本発明の防水カバーは、車室内の騒音に対する吸音性が優れている。このような構成にすることによって、車外からの騒音に対する遮音性が優れているうえに、一旦車室内に入った騒音に対する吸音性も優れている防水シートを提供することができる。
【0019】
第1フィルムの材料である樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリアミド;ポリエステル;ポリウレタン;アクリル樹脂などが挙げられる。なかでも、耐水性が優れ、かつ安価なポリエチレンが好適であり、柔軟性及び強度がともに優れるLLDPEが特に好適である。第1フィルムが柔軟であることにより、スピーカ振動に由来するビビリ音や、運転中の風による振動音が低減する。
【0020】
前記樹脂は、さらに他の樹脂を含有していてもよい。前記樹脂に含有させる他の樹脂としては、前記樹脂の弾性率より低い弾性率を有する柔軟樹脂が好適である。このような柔軟樹脂を含有させることにより、第1フィルムが柔軟になり、スピーカ振動に由来するビビリ音や、運転中の風による振動音が低減する。このような柔軟樹脂は、エラストマーであってもよく、なかでも、熱可塑性エラストマーが好適である。第1フィルムの材料である樹脂がポリオレフィンである場合に含有させる柔軟樹脂としては、柔軟なポリオレフィン又はポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好適であり、この場合には、相容性が良好である。なかでも、エチレン−α−オレフィン共重合体又はエチレン−α−オレフィン−ジエン共重合体が特に好適である。第1フィルムの材料である樹脂に含有させる、柔軟樹脂の含有量は、2〜50重量%であることが好適である。柔軟樹脂の含有量が2重量%未満の場合には、第1フィルムを柔軟にさせる効果が得られないおそれがある。一方、柔軟樹脂の含有量が50重量%を超える場合には、第1フィルムの強度が低下するおそれがある。
【0021】
第1フィルムの材料である樹脂は、さらに無機フィラーを含有することが好適である。これにより、第1フィルム相互間の滑り性が改善され、第1フィルムを重ねて保存する場合のブロッキングを防止することができる。無機フィラーとしては、タルク、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウムなどを使用することが可能である。前記樹脂中の無機フィラーの含有量は、0.1〜10重量%であることが好適である。前記樹脂中の無機フィラーの含有量が0.1重量%未満の場合には、第1フィルム相互間の滑り性を改善させる効果が得られないおそれがあり、より好適には0.3重量%以上である。一方、無機フィラーの含有量が10重量%を超えた場合には、第1フィルムの強度が低下するおそれがあり、より好適には5重量%以下である。
【0022】
前記樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、滑剤などが挙げられる。このような添加剤の含有量は、通常10重量%以下である。
【0023】
前記樹脂を用いて、第1フィルムを成形する。このときの成形方法は特に限定されないが、通常、Tダイを使用した押出し成形、インフレーション成形などにより成形する。得られた第1フィルムは、通常、吸音材の外形に対応した形状に切断する。前記吸音材を、余白部において、第1フィルムと第2フィルムとを接着させることにより、挟持させる場合には、第1フィルムを吸音材と重ね合わせた際に、吸音材の外周の外側に第1フィルムのみが配置された余白部ができるように切断する必要がある。また、第1フィルムに対し、配線貫通などのためのスリットも同時に設けることができる。
【0024】
第1フィルムの厚さは、20〜100μmであることが好適である。第1フィルムの厚さがこのような範囲であれば、音波が到達した際に第1フィルムが強く膜振動する。このとき、音のエネルギーの一部が熱エネルギーに変換されることにより吸音効果が得られる。特に、2500Hz以下の周波数の音に対する吸音性が向上する。車室内の騒音の多くが、このような周波数領域に入るため、車室内の静粛性が向上する。また、第1フィルムの厚さが上記の範囲であれば、車室内から到達する音の反射がより低減される。第1フィルムの厚さが20μm未満の場合には、スピーカ振動に由来するビビリ音が大きくなるおそれがあるとともに、第1フィルムの強度が低下するおそれもある。第1フィルムの厚さは、25μm以上であることがより好適である。一方、第1フィルムの厚さが100μmを超える場合には、膜振動による吸音効果が低下するおそれや車室内から到達する音の反射が大きくなるおそれがあり、防水カバーの吸音性が低下するおそれがある。第1フィルムの厚さは、80μm以下であることがより好適である。
【0025】
第2フィルムは、インナパネルと対向する。すなわち、第2フィルムが車外側に配置される。防水カバーを構成する2つのフィルムのうち、より厚い第2フィルムは第1フィルムより優れた遮音性を有する。そのため、第2フィルムにより、車外からの騒音に対する防水カバーの遮音性が向上する。また、第2フィルムがインナパネルを覆うことにより、車室内への水の侵入が防止される。
【0026】
第2フィルムの材料である樹脂としては、第1フィルムの材料として上述したものを用いることができる。なかでも、耐水性が優れ、かつ安価なポリエチレンが好適であり、柔軟性及び強度がともに優れるLLDPEが特に好適である。第2フィルムが柔軟であることにより、スピーカ振動に由来するビビリ音や、運転中の風による振動音が低減する。また、LLDPEは、成形性も優れている。
【0027】
前記樹脂は、さらに他の樹脂を含有していてもよい。前記樹脂に含有させる他の樹脂としては、前記樹脂の弾性率より低い弾性率を有する柔軟樹脂が好適である。このような柔軟樹脂を含有させることにより、第2フィルムが柔軟になり、スピーカ振動に由来するビビリ音や、運転中の風による振動音が低減する。第2フィルムの材料である樹脂に含有させる、柔軟樹脂としては、第1フィルムの材料として上述したものを使用することができる。第2フィルムの材料である樹脂に含有させる、柔軟樹脂の含有量は、2〜50重量%であることが好適である。柔軟樹脂の含有量が2重量%未満の場合には、第2フィルムを柔軟にさせる効果が得られないおそれがある。一方、柔軟樹脂の含有量が50重量部を超えた場合には、第2フィルムの強度が低下するおそれがある。
【0028】
第2フィルムの材料である樹脂は、さらに無機フィラーを含有することが好適である。これにより、第2フィルム相互間の滑り性が改善され、第2フィルムを重ねて保存する場合のブロッキングを防止することができる。無機フィラーとしては、第1フィルムの材料として上述したものを用いることができる。前記樹脂中の無機フィラーの含有量は、0.1〜10重量%であることが好適である。前記樹脂中の無機フィラーの含有量が0.1重量%未満の場合には、第2フィルム相互間の滑り性を改善させる効果が得られないおそれがあり、より好適には0.3重量%以上である。一方、無機フィラーの含有量が10重量%を超える場合には、第2フィルムの強度が低下するおそれがあり、より好適には5重量%以下である。
【0029】
前記樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、その他の添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、滑剤などが挙げられる。このような添加剤の含有量は、通常10重量%以下である。
【0030】
前記樹脂を用いて、第2フィルムを成形する。このときの成形方法は特に限定されないが、第1フィルムを成形する方法として上述した方法などにより第2フィルムを成形する。
【0031】
得られた第2フィルムは、ドアの寸法などに対応して切断される。切断寸法は、乗用車用ドアであれば、通常、縦が500〜600mmで、横が600〜800mm程度である。また、防水カバーにスピーカ挿入孔やキャップ挿入孔を設ける場合には、切断と同時にこれらの挿入孔を打ち抜くことが好ましい。スピーカ挿入孔の寸法は、通常、直径100〜200mm程度であり、キャップ挿入孔の寸法は、通常、縦が50〜300mm、横が50〜300mm程度である。第2フィルムに対し、その他の配線貫通などのための小孔も同時に設けることができる。
【0032】
こうして切断された第2フィルムには、必要に応じて、凹凸が形成される。凹凸が形成される位置は特に限定されないが、通常、吸音材が配置されていない部分である。凹凸の形成は、第2フィルムを成形した後に行ってもよいし、第2フィルムを成形し、得られた第2フィルムと第1フィルムとで吸音材を挟持させた後に行ってもよい。凹凸の形成方法は特に限定されず、熱成形と冷間成形のいずれも採用できる。熱成形としては、真空成形や圧空成形などが例示される。冷間成形としては、冷延伸やプレス成形などが例示される。このようにして形成した凹凸には、側方からの衝撃を吸収するための緩衝材などを挿入することができる。
【0033】
第2フィルムの厚さは、50〜300μmであることが好適である。第2フィルムの厚さがこのような範囲に含まれることにより、本発明の防水カバーは優れた遮音性を有する。第2フィルムの厚さが50μm未満の場合には、第2フィルムの強度が不十分になるおそれや遮音性が低下するおそれがある。第2フィルムの厚さは、60μm以上であることがより好適である。一方、第2フィルムの厚さが300μmを超える場合には、防水カバーが重くなるおそれやコスト高になるおそれがある。第2フィルムの厚さは、200μm以下であることがより好適であり、170μm以下であることがさらに好適である。
【0034】
本発明の防水カバーにおいては、第1フィルムの厚さが第2フィルムの厚さより薄いことが必要である。これにより、吸音性と遮音性がともに優れた防水カバーを得ることができる。厚さが薄い第1フィルムがドアトリムと対向していることにより、車室内側から入射する音が第1フィルムの膜振動により効果的に吸音される。また、第1フィルムは薄いため、膜振動により吸音されなかった音もその大部分が透過して、吸音材により吸音される。一方、厚さがより厚い第2フィルムがインナパネルと対向していることにより、防水カバーの遮音性が良好になる。しかも本発明の防水カバーは、二重壁構造を有するため、遮音性がさらに良好になる。このような構成を有することにより、本発明の防水カバーは、軽量でかつ薄肉であっても、優れた吸音性及び遮音性を有する。
【0035】
このとき、第1フィルムと第2フィルムの厚さの比(第1/第2)が0.8以下であることが好適である。第1フィルムと第2フィルムの厚さの比(第1/第2)が0.8より大きい場合には、防水カバーの吸音性と遮音性を両立させることが困難になるおそれがある。第1フィルムと第2フィルムの厚さの比(第1/第2)は、0.7以下であることがより好適であり、0.5以下であることがさらに好適である。一方、第1フィルムと第2フィルムの厚さの比(第1/第2)は、通常、0.1以上である。
【0036】
前記吸音材は、特に限定されないが、多孔質材であることが好適である。多孔質材は、吸音性に優れるとともに、軽量であるため、本発明の吸音材として好適に用いられる。当該多孔質材が、繊維集合体又は発泡体からなるものであることがより好適である。
【0037】
前記吸音材として用いられる前記繊維集合体は、特に限定されず、例えば、不織布やフェルトなどが挙げられる。なかでも、不織布が好適であり、メルトブローン不織布がより好適である。メルトブローン不織布は、繊維径が極めて微細であるために吸音性に優れている。また、リサイクル性の観点からは、メルトブローン不織布が、ポリオレフィン繊維からなるものであること好適である。このとき、ポリオレフィン以外の他の熱可塑性樹脂からなる繊維が含まれていても構わない。他の熱可塑性樹脂からなる繊維を含む場合の好適な含有率は、ポリオレフィン繊維が50〜90重量部で、他の熱可塑性樹脂からなる繊維が10〜50重量部である。他の熱可塑性樹脂からなる繊維としては、ポリエステル繊維やポリアミド繊維が例示されるが、弾性率が高く、不織布の嵩高さを維持できる点からはポリエステル繊維を配合することが好ましい。当該不織布の厚さは、1.37×10−3N/cmの荷重下で測定した厚さが3〜30mmであることが好ましい。吸音性を高めるためには、より好適には5mm以上である。一方、車体重量やドア内の空間の寸法などを考慮すれば、より好適には20mm以下である。
【0038】
前記吸音材として用いられる前記発泡体の材料は、特に限定されず、ゴム又は樹脂の発泡体を用いることができる。吸音性の観点からは、ゴムの発泡体が好ましく、特にポリウレタンの発泡体が好ましい。前記発泡体の厚さが、3〜30mmであることが好適である。吸音性を高めるためには、より好適には5mm以上である。一方、車体重量やドア内の空間の寸法などを考慮すれば、より好適には20mm以下である。
【0039】
前記吸音材が覆う面積は、防水カバーの面積の50%以上であることが、吸音性の観点からは好適である。一方、防水カバーはインナパネルに位置合わせしながら貼り付けることが多く、各種配線の位置なども確認しながら貼り付けることを可能にするために、周辺部を中心に、吸音材が貼り付けられていない部分が残る方が好ましい。したがって、吸音材が覆う面積が防水シートの面積の90%以下であることが好ましい。
【0040】
前記吸音材は、第1フィルムと第2フィルムの間に挟持される。これにより、第1フィルム、第2フィルム及び前記吸音材が一体化される。前記吸音材を挟持する方法は、特に限定されないが、前記吸音材が配置されていない余白部において、第1フィルムと第2フィルムが接着されることにより、前記吸音材が挟持されることが好適である。
【0041】
このとき、第1フィルムとして、当該第1フィルムを吸音材と重ね合わせた際に、吸音材の外周の外側に第1フィルムのみが配置された余白部ができるように切断されたものを用いる。このような第1フィルムと第2フィルムの間に前記吸音材を挟持させた場合には、余白部において、第1フィルムと第2フィルムとが接する。当該余白部において、第1フィルムと第2フィルムを接着させることにより、吸音材を挟持する。当該余白部は、吸音材の外周の外側に、吸音材を一周するようにして形成することが好適であり、このときの余白部の幅は、1〜5cmであることが好適である。
【0042】
このような方法によれば、前記吸音材を、第1フィルム又は第2フィルムに接着させなくても、当該吸音材が固定されるため、工程数を削減することができる。また、この場合には第1フィルムと前記吸音材とが接着されていないため、第1フィルムに音が到達した際に、第1フィルムがより強く膜振動する。したがって、防水カバーの吸音性がより向上する。第1フィルムと第2フィルムを接着するに際して、吸音材の外周の外側を一周隙間なく接着させて、吸音材を第1フィルムと第2フィルムにより封止してもよい。また、第1フィルムと第2フィルムとを部分的に接着させてもよい。吸音材を水の浸入やゴミの付着から保護する観点からは、吸音材が封止されていることがより好適である。
【0043】
第1フィルムと第2フィルムの接着の方法は特に限定されない。接着剤や接着シートを使用する方法や第1フィルムと第2フィルムとを熱融着させる方法などが挙げられる。
【0044】
なかでも、第1フィルムと第2フィルムとを熱融着させて防水シートを製造することが好適である。このような方法によれば、第1フィルムと第2フィルムとを短時間で、かつ強固に接着できるうえに、コストも低い。具体的には、接着部分に対応するように熱源が配置された熱板の上に第1フィルムを載置し、さらにその上に吸音材、第2フィルムをこの順で載置した後に、第2フィルムの上から軽く押圧する方法が好ましい。
【0045】
また、第1フィルムと前記吸音材とが接着され、第2フィルムと前記吸音材とが接着されることにより、前記吸音材が挟持されることも好適である。このとき、第1フィルムと前記吸音材とが局所的に接着していることが好適である。具体的には、吸音材の周縁部分において、線状又は点状に接着していることが好適である。吸音材の全面が第1フィルムと接着している場合には、音が到達した場合に、第1フィルムが膜振動しにくくなるおそれがある。一方、第2フィルムと前記吸音材とは、局所的に接着していてもよいし、吸音材の全面が第2フィルムと接着していてもよい。第1フィルムと前記吸音材との接着及び第2フィルムと前記吸音材との接着は、接着剤を用いたり、熱融着させることなどにより行うことができ、吸音材や各フィルムの材質などに応じて適宜選択される。
【0046】
こうして製造された本発明の防水カバーは、自動車ドアのインナパネルとドアトリムとの間に介装される。具体的には、ブチルゴム製の両面粘着テープをインナパネルに貼り付けて、それに本発明の防水カバーを押し付けて、防水カバーの周囲を粘着テープで接着する態様などが好適である。このとき、配線などが防水カバーを貫通することもあり、その場合には、配線の貫通部をシールして水が浸入しないようにすることが好ましい。防水カバーをインナパネルに接着してからドアトリムが装着される。
【0047】
車室内の静粛性を向上させるためには、防水カバーは、車外からの騒音に対する遮音性とともに、一旦車室内に入った騒音に対する吸音性も優れていることが必要である。さらに、自動車ドア内に配置される防水カバーは、重量や厚さが制限される。軽量かつ薄肉であるうえに、吸音性及び遮音性がともに優れている本発明の防水カバーは、自動車ドア用の防水カバーとして優れた特性を有している。また、第1フィルムと第2フィルムとを熱融着させて接着することにより、このような防水カバーを簡便に製造することができる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0049】
[吸音特性の測定]
防水カバーの吸音特性の測定には、ブリューエル・ケアー社製4206型インピーダンス管を使用し、JIS:A1405−2に基づいて測定した。
【0050】
[透過損失特性の測定]
防水カバーの透過損失特性を測定することにより、防水カバーの遮音性を評価した。透過損失特性の測定には、ブリューエル・ケアー社製4206T型インピーダンス管を使用した。測定は4マイクロホン伝達係数法により行った。測定サンプルには、防水カバーの吸音材が配置されている部分を円状(φ29mm)に打ち抜いたものを用いた。音源管と受音管の間に配置されたサンプルホルダーに測定サンプルを取付けた。音源管の端(サンプルホルダーが接続されていないほうの端)に取り付けられた音源(ラウドスピーカ)から音を発し、4箇所の測定位置(音源管に2箇所、受音管に2箇所)における音圧を測定した。得られた測定値から透過損失を計算した。
【0051】
実施例1
【0052】
第1フィルム7の原料[直鎖状低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、「ノバテックLL UH410」):100重量部、タルク入り直鎖状低密度ポリエチレン(タルク含有量20重量%):3重量部]を、インフレーション成形機に投入して、インフレーション成形を行った。このときの成形条件は、樹脂温度210℃、押出量50〜60kg/hrとした。得られた第1フィルム7の厚さは70μmであった。
【0053】
第1フィルム7を、図2に示す第1フィルム7の外形にしたがって、トムソン刃で打ち抜いた。このときの第1フィルム7の外形は、吸音材の外形に対応し、かつ全周において、吸音材の外形より2cm大きい形状とした。
【0054】
インフレーション成形時のフィルム厚さの設定を変えたこと以外は、第1フィルム7と同様の原料及び成形方法により第2フィルム8を得た。得られた第2フィルム8の厚さは150μmであった。
【0055】
第2フィルム8を、図2に示す第2フィルム8の外形にしたがって、トムソン刃で打ち抜いた。
【0056】
吸音材10には、表面にスキン層を有しないポリウレタン発泡体(厚さ:10mm、見掛け密度:22kg/m)を使用した。当該ポリウレタン発泡体を、図2に示す吸音材10の外形にしたがって、トムソン刃で打ち抜いた。
【0057】
図2に示す、第1フィルム7の外周から約1cm内側(吸音材10の外周から約1cm外側)の接着部分20に対応する位置に熱線を配置した熱板の上に、第1フィルム7を載置した。さらに、吸音材10を、当該吸音材10の外周の外側に、第1フィルム7のみが配置された幅約2cmの余白部11ができるようにして、吸音材10を第1フィルム7の上に載置した。さらにその上に第2フィルム8を載置した。第2フィルム8の上に板を載せ、エアー圧により当該板を軽く押し下げることによって、接着部分20において、第1フィルム7と第2フィルム8を融着させた。図2において、接着部分20を破線で示してあるが、実際は線状に接着され、吸音材10は、第1フィルム及び第2フィルムによって、封止されている。
【0058】
こうして得られた防水カバー1の吸音特性及び透過損失特性を測定した。吸音特性を測定する場合には、第1フィルム7側に音を入射した。透過損失特性を測定する場合には、第2フィルム8側に音を入射した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図3に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図4に示す。防水カバー1の吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0059】
実施例2
第1フィルム7として厚さ30μmのフィルムを用い、第2フィルム8として厚さ70μmのフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防水カバー1を作製した。このとき、第1フィルム7及び第2フィルム8の厚さは、インフレーション成形時のフィルム厚さの設定を変えることにより調節した。得られた防水カバー1の吸音特性及び透過損失特性を実施例1の場合と同様にして測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図3に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図4に示す。防水カバー1の吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0060】
比較例1
第1フィルム7(厚さ70μm)の代わりに、厚さが150μmのフィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして防水カバーを作製した。得られた防水カバーの吸音特性及び透過損失特性を実施例1の場合と同様にして測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図3に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図4に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0061】
比較例2
第1フィルム7及び第2フィルム8の代わりに、厚さが30μmのフィルムをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして防水カバーを作製した。得られた防水カバーの吸音特性及び透過損失特性を実施例1の場合と同様にして測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図3に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図4に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0062】
比較例3
実施例1の防水カバー1に使用したポリウレタン発泡体からなる吸音材10(トムソン刃で打ち抜いたもの)の周囲に接着剤を塗布し、該吸音材10を、実施例1の防水カバー1に使用した第2フィルム8と同様のフィルム(トムソン刃で打ち抜いたもの)に接着することにより、防水カバーを作製した。得られた防水カバーの吸音特性及び透過損失特性を測定した。吸音特性を測定する場合には、吸音材側に音を入射した。透過損失特性を測定する場合には、フィルム側に音を入射した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図3に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図4に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0063】
比較例4
実施例1の防水カバーに使用したポリウレタン発泡体からなる吸音材10(トムソン刃で打ち抜いたもの)の吸音特性及び透過損失特性を測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図3に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図4に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0064】
実施例1及び実施例2の防水カバー1は、吸音材10としてポリウレタン発泡体を用いたものの例である。図3に示されるように、実施例1[第1フィルム:70μm、第2フィルム:150μm]及び実施例2[第1フィルム:30μm、第2フィルム:70μm]の防水カバー1は、2500Hz以下の周波数領域において、第1フィルム7を有さない防水カバー(比較例3)及びポリウレタン発泡体からなる吸音材のみのもの(比較例4)よりも優れた吸音性を有していた。また、図4に示されるように、実施例1及び2の防水カバー1は、全周波数領域において、第1フィルム7を有さない防水カバー(比較例3)及びポリウレタン発泡体からなる吸音材のみのもの(比較例4)よりも優れた遮音性を有していた。一方、厚さが150μmのフィルムと厚さが150μmのフィルムの間に吸音材が挟持された防水カバー(比較例1)は、遮音性(図4)は優れていたが、吸音性(図3)が低かった。また、厚さが30μmのフィルムと厚さが30μmのフィルムの間に吸音材が挟持された防水カバー(比較例2)は、吸音性(図3)は優れていたが、遮音性(図4)が低かった。
【0065】
実施例3
ポリウレタン発泡体の代わりに、メルトブローン不織布を吸音材10として用いたこと以外は、実施例1と同様にして防水カバー1を作製した。このとき使用したメルトブローン不織布は、住友スリーエム株式会社製メルトブローン不織布「シンサレート エンボスタイプTAI−2047」である。当該不織布は、ポリプロピレンを65重量%、ポリエステルを35重量%含有する、メルトブローン法によって製造された不織布で、1.37×10−3N/cmの荷重下で測定した厚さが10mmのものである。得られた防水カバー1の吸音特性及び透過損失特性を実施例1の場合と同様にして測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図5に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図6に示す。防水カバー1の吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0066】
実施例4
第1フィルム7として厚さ30μmのフィルムを用い、第2フィルム8として厚さ70μmのフィルムを用い、ポリウレタン発泡体の代わりに、メルトブローン不織布を吸音材10として用いたこと以外は、実施例1と同様にして防水カバー1を作製した。このとき使用したメルトブローン不織布は、実施例3の防水カバー1に使用したものと同様のものである。得られた防水カバー1の吸音特性及び透過損失特性を実施例1の場合と同様にして測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図5に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図6に示す。防水カバー1の吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0067】
比較例5
第1フィルム7(厚さ70μm)の代わりに、厚さが150μmのフィルムを用い、ポリウレタン発泡体の代わりに、メルトブローン不織布を吸音材として用いたこと以外は、実施例1と同様にして防水カバーを作製した。このとき使用したメルトブローン不織布は、実施例3の防水カバー1に使用したものと同様のものである。得られた防水カバー1の吸音特性及び透過損失特性を実施例1の場合と同様にして測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図5に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図6に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0068】
比較例6
実施例3の防水カバー1に使用したメルトブローン不織布からなる吸音材10と同様の吸音材(トムソン刃で打ち抜いたもの)を、吸音材の周囲に対応する位置に熱線を配置した熱板の上に載置し、さらにその上に実施例1の防水カバーに使用した第2フィルム8と同様のフィルム(トムソン刃で打ち抜いたもの)を載置した。当該フィルムの上に板を載せ、エアー圧により当該板を軽く押し下げることによって、フィルムと吸音材を融着させた。得られた防水カバーの吸音特性及び透過損失特性を測定した。吸音特性を測定する場合には、吸音材側に音を入射した。透過損失特性を測定する場合には、フィルム側に音を入射した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図5に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図6に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0069】
比較例7
実施例3の防水カバー1に使用したルトブローン不織布からなる吸音材(トムソン刃で打ち抜いたもの)の吸音特性及び透過損失特性を測定した。測定により得られた入射音の周波数と吸音率との関係を図5に示し、入射音の周波数と透過損失との関係を図6に示す。防水カバーの吸音性及び遮音性の評価を表1に示す。
【0070】
実施例3及び実施例4の防水カバー1は、吸音材10としてメルトブローン不織布を用いたものの例である。図5に示されるように、実施例3[第1フィルム:70μm、第2フィルム:150μm]及び実施例4[第1フィルム:30μm、第2フィルム:70μm]の防水カバー1は、2500Hz以下(実施例3)又は3500Hz以下(実施例4)の周波数領域において、第1フィルム7を有さない防水カバー(比較例6)及びメルトブローン不織布からなる吸音材のみのもの(比較例7)よりも優れた吸音性を有していた。また、図6に示されるように、実施例3及び4の防水カバーは、全周波数領域において、第1フィルム7を有さない防水カバー(比較例6)及びメルトブローン不織布からなる吸音材のみのもの(比較例7)よりも優れた遮音性を有していた。一方、厚さが150μmのフィルムと厚さが150μmのフィルムの間に吸音材が挟持された防水カバー(比較例5)は、遮音性(図6)は優れていたが、吸音性(図5)が低かった。
【0071】
吸音材10がポリウレタン発泡体であるかメルトブローン不織布であるかに関わらず、防水カバー1の吸音性及び遮音性は、第1フィルム7及び第2フィルム8の厚さを変えることにより大きく変化した。
【0072】
【表1】

【符号の説明】
【0073】
1 防水カバー
2 自動車ドア
3 アウタパネル
4 インナパネル
5 ドア本体
6 ドアトリム
7 第1フィルム
8 第2フィルム
9 スピーカ
10 吸音材
11 余白部
12 スピーカ挿入孔
13 開口部
14、15 キャップ挿入孔
16、17 キャップ
18、19 緩衝材
20 接着部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車ドアのインナパネルとドアトリムの間に介装される防水カバーであって、
該防水カバーが、第1フィルム、第2フィルム及び吸音材からなり、
第1フィルムと第2フィルムの間に前記吸音材が挟持され、
第1フィルムの厚さが第2フィルムの厚さより薄く、
第1フィルムとドアトリムとが対向し、第2フィルムとインナパネルとが対向するようにして介装されることを特徴とする防水カバー。
【請求項2】
前記吸音材が配置されていない余白部において、第1フィルムと第2フィルムが接着されることにより、前記吸音材が挟持される請求項1に記載の防水カバー。
【請求項3】
第1フィルムの厚さが20〜100μmであり、第2フィルムの厚さが50〜300μmであり、かつ、第1フィルムと第2フィルムの厚さの比(第1/第2)が0.8以下である請求項1又は2に記載の防水カバー。
【請求項4】
前記吸音材が多孔質材である請求項1〜3のいずれかに記載の防水カバー。
【請求項5】
前記多孔質材が繊維集合体又は発泡体からなる請求項4に記載の防水カバー。
【請求項6】
第1フィルムと第2フィルムとを熱融着させる請求項2に記載の防水カバーの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−61940(P2012−61940A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207150(P2010−207150)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(000157278)丸五ゴム工業株式会社 (25)