防水コネクタ
【課題】ホットメルトが端子に付着することを抑制することが可能な防水コネクタを提供する。
【解決手段】防水コネクタ1は、端子61,62が取り付けられた接続端部12,22をそれぞれ有する複数のフレキシブル基板10,20を一括して挟み込み、フレキシブル基板10,20と対向する面にホットメルト51を収容する収容部31,41が形成されたリテーナ30,40と、収容部31,41に注入したホットメルト51を硬化させてなるシール部材50と、を備え、リテーナ30,40は、接続端部12,22同士の間にスペースSを空けた状態で並べられた複数のフレキシブル基板10,20を挟み込み、さらにリテーナ30,40には、スペースSを介して収容部31,41から先端に向かって流出したホットメルト51を受け入れる溜め部33がスペースSに対応する部分に形成されている。
【解決手段】防水コネクタ1は、端子61,62が取り付けられた接続端部12,22をそれぞれ有する複数のフレキシブル基板10,20を一括して挟み込み、フレキシブル基板10,20と対向する面にホットメルト51を収容する収容部31,41が形成されたリテーナ30,40と、収容部31,41に注入したホットメルト51を硬化させてなるシール部材50と、を備え、リテーナ30,40は、接続端部12,22同士の間にスペースSを空けた状態で並べられた複数のフレキシブル基板10,20を挟み込み、さらにリテーナ30,40には、スペースSを介して収容部31,41から先端に向かって流出したホットメルト51を受け入れる溜め部33がスペースSに対応する部分に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板の電気的接続に用いられる防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子が取り付けられたフレキシブル基板をリテーナで挟み込み、その外周に環状シール部材を取り付けてハウジングに収容するとともに、フレキシブル基板とリテーナの間にホットメルトを充填したフレキシブル基板用防水コネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/090998号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフレキシブル基板用防水コネクタでは、複数のフレキシブル基板をリテーナで一括して挟み込み、フレキシブル基板とリテーナとの間にホットメルトを充填しようとすると、複数のフレキシブル基板の隙間からホットメルトが流出して、ホットメルトが端子に付着してしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ホットメルトが端子に付着することを抑制する防水コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防水コネクタは、端子が取り付けられた接続端部をそれぞれ有する複数のフレキシブル基板を一括して挟み込み、前記フレキシブル基板と対向する面にホットメルトを収容する収容部が形成されたリテーナと、前記収容部に注入したホットメルトを硬化させてなるシール部材と、を備え、前記リテーナは、前記接続端部同士の間にスペースを空けた状態で並べられた複数の前記フレキシブル基板を挟み込み、さらに前記リテーナには、前記スペースを介して前記収容部から先端に向かって流出した前記ホットメルトを受け入れる溜め部が前記スペースに対応する部分に形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記発明において、前記端子は、前記フレキシブル基板を挟み込む上板及び下板と、前記下板の側部に立設されたバレルと、を有する圧着端子であってもよい。
【0008】
上記発明において、前記溜め部は、前記リテーナにおいて前記フレキシブル基板に対向する面に形成された凹部であってもよい。
【0009】
上記発明において、前記溜め部は、前記リテーナを貫通する貫通孔であってもよい。
【0010】
上記発明において、前記溜め部の幅は、前記スペースの幅よりも広くてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各接続端部同士の間にスペースを空けた状態で並べた複数のフレキシブル基板を一括して挟み込むリテーナに、前記スペースを介して流出したホットメルトを受け入れる溜め部が形成されているので、ホットメルトが端子に付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態における防水コネクタの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における防水コネクタのコネクタ本体の分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における防水コネクタの圧着端子の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における防水コネクタの第1のリテーナの斜視図である。
【図5】図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における防水コネクタの第1変形例に係る第1のリテーナの断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における防水コネクタの第2のリテーナの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態における防水コネクタの第2変形例に係る第2のリテーナの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態における防水コネクタの作用を示す斜視図である。
【図10】図10は、図9のX−X線に沿った断面図である。
【図11】図11は、図9のXI部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本実施形態における防水コネクタの斜視図、図2は本実施形態における防水コネクタのコネクタ本体の分解斜視図、図3は本実施形態における防水コネクタの圧着端子の斜視図、図4は本実施形態における防水コネクタの第1のリテーナの斜視図、図5は図4のV−V線に沿った断面図、図6は本実施形態における防水コネクタの第1変形例に係る第1のリテーナの断面図、図7は本実施形態における防水コネクタの第2のリテーナの斜視図、図8は本実施形態における防水コネクタの第2変形例に係る第2のリテーナの斜視図である。
【0015】
本実施形態における防水コネクタ1は、例えば自動車におけるシートの下部に組み込まれ、複数のフレキシブル基板にそれぞれ接続された複数の電子部品(例えば着座センサや静電容量センサ等)とECU(electronic control unit)等との間を一括して電気的に接続するコネクタである。
【0016】
本実施形態における防水コネクタ1は、図1に示すように、コネクタ本体2と、コネクタ本体2を収容するハウジング3と、コネクタ本体2の外周に取り付けられる環状シール部材4と、を備えている。環状シール部材4は、コネクタ本体2の外周面とハウジング3の内周面とに密着し、その間の防水を図るものである。
【0017】
コネクタ本体2は、図2に示すように、第1のフレキシブル基板10と、第2のフレキシブル基板20と、第1のリテーナ30と、第2のリテーナ40と、後述するシール部材50(図9参照)と、を備えている。なお、本実施形態における第1および第2のフレキシブル基板10,20が、本発明の複数のフレキシブル基板の一例に相当し、第1および第2のリテーナ30,40の一対が、本発明のリテーナの一例に相当する。
【0018】
第1のフレキシブル基板10は、可撓性を有する絶縁性基板に電気回路パターン(配線)が形成された回路基板である。第1のフレキシブル基板10としては、メンブレン回路やフレキシブルプリント回路(FPC:flexible printed circuit)を例示できる。
【0019】
この第1のフレキシブル基板10は、図2に示すように、第1の本体部11と、第1の接続端部12と、で構成されている。
【0020】
第1の本体部11は、特に図示しないが、第1の電子部品(例えば着座センサ)に接続されている。この第1の本体部11は、図2に示すように、図中左側に曲がって第1の接続端部12(後述)と繋がっている。
【0021】
第1の接続端部12は、図2に示すように、第1のフレキシブル基板10において第1の本体部11から延在した部分であり、第1のフレキシブル基板10の端部に位置している。
【0022】
この第1の接続端部12には、3つの第1の圧着端子61が取り付けられている。なお、このように取り付けられた第1の圧着端子61は、第1のフレキシブル基板10の電気回路パターンに接続され、電気回路パターンを介して、第1の電子部品(不図示)に電気的に接続されている。なお、第1のフレキシブル基板10に取り付けられる第1の圧着端子61の数は、特に限定されない。
【0023】
第1の圧着端子61は、図2に示すように、レセクタプル型の端子でありECU等に電気的に接続されたピン型の端子と嵌合するようになっている。これにより、第1の電子部品がECU等に電気的に接続される。
【0024】
第1の圧着端子61は、図3に示すように、下板61aと、上板61bと、バレル61cと、を有している。
【0025】
下板61a及び上板61bは、第1のフレキシブル基板10を挟み込む部材である。バレル61cは、下板61aの側部に立設されており、このバレル61cを上板61bに向かって折り曲げることで、下板61aと上板61bの間に第1のフレキシブル基板10が固定(圧着)される。
【0026】
なお、本実施形態では、第1の圧着端子61にレセクタプル型の端子を用いたが、特に限定されない。例えば、防水コネクタ1に接続されるコネクタの端子がレセクタプル型であれば、第1の圧着端子61を、ピン型の端子で構成してもよい。
【0027】
この第1の接続端部12には、図2に示すように、後述する第1及び第2のリテーナ30,40の第1及び第2のホットメルト収容部31,41と対応する位置に、第1の貫通孔12aが形成されている。
【0028】
第2のフレキシブル基板20も、第1のフレキシブル基板10と同様に、絶縁性基板に電気回路パターンが形成された回路基板である。第2のフレキシブル基板20としては、メンブレン回路やフレキシブルプリント回路を例示できる。
【0029】
この第2のフレキシブル基板20は、図2に示すように、第2の本体部21と、第2の接続端部22と、で構成されている。
【0030】
第2の本体部21は、特に図示しないが、第1の電子部品とは異なる第2の電子部品(例えば静電容量センサ)に接続されている。この第2の本体部21は、図2に示すように、図中右側に曲がって第2の接続端部22と繋がっている。また、この第2の本体部21は、第1のフレキシブル基板10の第1の本体部11の下側に積層され、第1の本体部11にテープ等(不図示)で固定されている。
【0031】
第2の接続端部22は、図2に示すように、第2のフレキシブル基板20において第2の本体部21から延在した部分であり、第2のフレキシブル基板20の端部に位置している。
【0032】
この第2の接続端部22には、第1のフレキシブル基板10の第1の接続端部12と同様に、第2の圧着端子62が取り付けられている。このように取り付けられた第2の圧着端子62は、第2のフレキシブル基板20の電気回路パターンに接続され、電気回路パターンを介して、第2の電子部品(不図示)に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、第2の接続端部22に2つの第2の圧着端子62が取り付けられているが、第2の圧着端子62の数は、特に限定されない。
【0033】
第2の圧着端子62は、第1の圧着端子61と同一の構成(レセクタプル型の端子)となっており、下板と、上板と、バレルと、を有している。この第2の圧着端子62も、下板と上板の間に第2のフレキシブル基板20を挟み込んだ状態で、バレルが折り曲げられて、第2のフレキシブル基板20に圧着されている。
【0034】
なお、本実施形態では、第2の圧着端子62にレセクタプル型の端子を用いたが、特に限定されない。例えば、防水コネクタ1に接続されるコネクタの端子がレセクタプル型であれば、第2の圧着端子62を、ピン型の端子で構成してもよい。
【0035】
また、第2の接続端部22には、後述する第1及び第2のリテーナ30,40の第1及び第2のホットメルト収容部31,41に対応する位置に、第2の貫通孔22aが形成されている。
【0036】
そして、第2の接続端部22は、第1のフレキシブル基板10の第1の接続端部12と重ならないように、第1の接続端部12との間にスペースSを空けた状態で隣り合うように配置されている。なお、第1の接続端部12に取り付けられた第1の圧着端子61と、第2の接続端部22に取り付けられた第2の圧着端子62とが一列に並ぶように、第2の接続端部22は、第1の接続端部12と同一平面上に隣り合うようにして配置されている。
【0037】
第1のリテーナ30は、図2に示すように、第2のリテーナ40(後述)との間に第1及び第2のフレキシブル基板10,20を挟み込む部材である。
【0038】
この第1のリテーナ30は、後述するホットメルト51の溶融温度よりも高い耐熱性を有する材料で構成されている。例えばホットメルト51をポリアミド(polyamide)で構成する場合には、第1のリテーナ30として、ポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)を用いることができる。
【0039】
この第1のリテーナ30は、後述する第2のリテーナ40の第2の当接面40aと対向する第1の当接面30a(上面)で、第1及び第2のフレキシブル基板10,20と対向し当接している。この第1の当接面30aには、図4に詳細に示すように、第1のホットメルト収容部31と、第1の端子収容部32と、第1の溜め部33と、が形成されている。
【0040】
第1のホットメルト収容部31は、後述するホットメルト51を収容する溝であり、図4に示すように、図中Y方向に沿って形成されている。この第1のホットメルト収容部31は、同図に示すように、図中Y方向の両端が開口しており、この開口を介して溶融したホットメルト51を受け入れるようになっている。なお、第1のホットメルト収容部31は、ホットメルト51を収容できればよく、溝に限定されない。例えば、第1のホットメルト収容部31を、凹部で構成してもよい。
【0041】
第1の端子収容部32は、図4に示すように、図中X方向に沿って形成された凹部であり、第1及び第2の接続端部12,22における第1及び第2の圧着端子61,62の取り付け部位(端子圧着部)をそれぞれ収容する。なお、第1の当接面31aには、同図に示すように、複数の第1の端子収容部32(複数の凹部)が、図中Y方向に沿って間隔をあけて配設されている。
【0042】
本実施形態では、第1のリテーナ30の図中左側の部分に、3つの第1の圧着端子61をそれぞれ収容する3つの第1の端子収容部32aが形成され、これらに対して第1の間隔L1離れた図中右側の部分に、2つの第2の圧着端子62をそれぞれ収容する2つの第1の端子収容部32bが形成されている。
【0043】
ここで、第1の当接面30aにおいて、3つの第1の圧着端子61をそれぞれ収容する3つの第1の端子収容部32aと、2つの第2の圧着端子61をそれぞれ収容する2つの第1の端子収容部32bとの間の部分は、第1及び第2のフレキシブル基板10,20の第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSと対応しており、その間の第1の間隔L1は、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSよりも若干広くなっている(L1>S)。
【0044】
また、第1の端子収容部32は、同図に示すように、図中X方向において第1のホットメルト収容部31から第2の間隔L2離れており、第1のホットメルト収容部31と連通しないようになっている。
【0045】
第1の溜め部33は、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSを介して第1及び第2のホットメルト収容部31,41(第2のホットメルト収容部41については後述する。)から先端に向かって流出したホットメルト51を受け入れる凹部である。この第1の溜め部33は、図4に示すように、第1の当接面30aにおける第1の端子収容部32a,32bの間の部分に形成されており、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSよりも先端側に位置している。なお、本実施形態における「先端」とは、防水コネクタ1において、他のコネクタとの接続側(第1及び第2の圧着端子61,62側)の端部を意味する。
【0046】
ここで、第1の溜め部33の幅W1(図4中Y方向)は、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSよりも相対的に広くなっていることが好ましい(S<W1)。一方、第1の溜め部33の幅W1の最大値は、第1の端子収容部32a,32bの第1の間隔L1よりも相対的に狭くなっており(W1<L1)、第1の端子収容部32a,32bと連通しないようになっている。
【0047】
また、この第1の溜め部33は、図4及び図5に示すように、第1のホットメルト収容部31から第3の間隔L3離れている。なお、この第3の間隔L3は、ゼロでないこと(すなわち、第1の溜め部33が第1のホットメルト収容部31に連通していないこと)を条件として、より小さい方が好ましい。これにより、スペースSを介して第1及び第2のホットメルト収容部31,41から流出したホットメルト51を、第1の溜め部33に確実に収容することができ、ホットメルト51が第1及び第2の圧着端子61,62に付着することを効果的に抑制することができる。
【0048】
なお、第1の溜め部33は、上述のようにホットメルト51を受け入れることができればよく、凹部に限定されない。例えば、図6に示すように、第1の溜め部33が、第1のリテーナ30を貫通する貫通孔であってもよい。
【0049】
第2のリテーナ40は、図1及び図2に示すように、第1のリテーナ30と対応し、第1のリテーナ30との間で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を挟み込む部材である。本実施形態では、第2のリテーナ40が第1のリテーナ30と分離しているが、特に限定されない。例えば、第2のリテーナ40を、ヒンジ等を介して第1のリテーナ30に接続させてもよい。
【0050】
この第2のリテーナ40は、第1のリテーナ30と同様に、ホットメルト51の溶融温度よりも高い耐熱性を有する材料で構成されている。例えばホットメルト51をポリアミドで構成する場合には、第2のリテーナ40として、ポリブチレンテレフタレートを用いることができる。
【0051】
この第2のリテーナ40は、第2の当接面40a(図2に示す第2のリテーナ40の下面)で、第1及び第2のフレキシブル基板10,20と対向し当接している。この第2の当接面40aには、図7に示すように、第2のホットメルト収容部41と、第2の端子収容部42と、が形成されている。なお、図7は、図2に示す第2のリテーナ40を反転させた状態を示している。
【0052】
第2のホットメルト収容部41は、後述するホットメルト51を収容する溝であり、図7に示すように、第1のリテーナ30の第1のホットメルト収容部31と対応するように図中Y方向に沿って形成されている。この第2のホットメルト収容部41は、同図に示すように、図中Y方向の両端が開口しており、この開口を介して溶融したホットメルト51を受け入れるようになっている。なお、第2のホットメルト収容部41は、ホットメルト51を収容できればよく、溝に限定されない。例えば、第2のホットメルト収容部41を、凹部で構成してもよい。
【0053】
第2の端子収容部42は、図7に示すように、図中X方向に沿って形成された凹部である。この第2の端子収容部42は、第1のリテーナ30の第1の端子収容部32と対応しており、第1及び第2の接続端部12,22における第1及び第2の圧着端子61,62の取り付け部位(端子圧着部)を、第1の端子収容部32との間に挟み込んでそれぞれ収容する。
【0054】
本実施形態では、第2のリテーナ40において、図7中右側の部分に、第1の圧着端子61をそれぞれ収容する3つの第2の端子収容部42aが形成され、これらに対して第4の間隔L4離れた図中左側の部分に、第2の圧着端子62をそれぞれ収容する2つの第2の端子収容部42bが形成されている。なお、この第4の間隔L4は、第1のリテーナ30の第1の間隔L1と実質的に同一となっている(L4≒L1)。
【0055】
また、第2の端子収容部42は、同図に示すように、図中X方向において第2のホットメルト収容部41から第5の間隔L5離れており、第2のホットメルト収容部41と連通しないようになっている。なお、この第5の間隔L5も、第1のリテーナ30の第2の間隔L2と実質的に同一となっている(L5≒L2)。
【0056】
ここで、図8に示すように、第2のリテーナ40にも第2の溜め部43を形成してもよい。具体的には、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSに対応する部分(スペースSよりも先端側)に、第1のリテーナ30の第1の溜め部33と同様の凹部や貫通孔を形成してもよい。
【0057】
シール部材50は、図9に示すように、第1及び第2のリテーナ30,40の外周を取り囲んでいると共に、第1及び第2のリテーナ30,40の第1及び第2のホットメルト収容部31,41内で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を被覆している。このシール部材50は、ホットメルト51で構成されている。なお、このホットメルト51には、金型(後述)との離型に優れている材料を用いることが好ましく、例えばポリアミドを材料として用いることができる。
【0058】
次に、本実施形態における防水コネクタ1の作用について説明する。
【0059】
図9は本実施形態における防水コネクタの作用を示す斜視図、図10は図9のX−X線に沿った断面図、図11は図9のXI部の拡大斜視図である。
【0060】
まず、第1及び第2のリテーナ30,40の間に第1及び第2のフレキシブル基板10,20を挟み込む。この際に、第1及び第2の接続端部12,22の間にスペースSを空けた状態で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を並べ、第1及び第2の貫通孔12a,22aをホットメルト収容部31,41内に位置させる。また、第1及び第2の圧着端子61,62を、端子収容部32,42内に収容する。なお、本実施形態におけるホットメルト収容部31,41が、本発明の収容部の一例に相当する。
【0061】
この状態で、第1及び第2のリテーナ30,40と、第1及び第2のフレキシブル基板10,20とを、特に図示しない金型にセットし、加熱され溶融したホットメルト51を流し込む。ホットメルト51がポリアミドで構成されている場合には、ホットメルト51の加熱温度として、185℃を例示できる。
【0062】
溶融したホットメルト51は、金型内に形成された流路(不図示)を通って、図9に示すように、ゲート部52からオーバーフロー部53に至るまで流れる。この間に、ホットメルト51は、第1及び第2のリテーナ30,40のホットメルト収容部31,41内に注入され、充填される。なお、図9では、第2のリテーナ40を透過した状態を図示している。
【0063】
本実施形態では、図10に示すように、スペースS以外の部分では、第1及び第2の当接面30a,40aと第1及び第2の接続端部12,22が当接(密着)しているため、ホットメルト収容部31,41内のホットメルト51が防水コネクタ1の先端に向かって流出しないように堰止められている。
【0064】
この状態でホットメルト51を冷却・固化することで、ホットメルト収容部31,41内を封止したシール部材50が形成され、第1及び第2のリテーナ30,40と第1及び第2のフレキシブル基板10,20が固定される。この後に、シール部材50におけるゲート部53及びオーバーフロー部53が切断されて、防水コネクタ1が完成する。
【0065】
ここで、本実施形態では、第1及び第2の接続端部12,22に第1及び第2の貫通孔12a,22aが形成されており、これらの第1及び第2の貫通孔12a,22a内にもシール部材50が進入しているため、第1及び第2のフレキシブル基板10,20が強固に固定される。
【0066】
また、ホットメルト収容部31,41内がシール部材50で封止されることで、第1及び第2のフレキシブル基板10,20の第1及び第2の本体部11,21から先端(第1及び第2の圧着端子61,62)に向かう浸水経路が遮断され、コネクタ同士の接続部分(第1及び第2の圧着端子61,62)における防水が図られる。
【0067】
ここで、仮に、接続端部同士が互いに重なった状態(スペースSがゼロの状態)になっていると、接続端部同士が重なった部分ではホットメルトが入り込みにくいために隙間が生じ、その隙間から、コネクタ内(圧着端子)に水が入り込む恐れがある。また、接続端部同士の一部が重なっていると、リテーナで挟み込まれる箇所の厚みが均一でないため、第1及び第2の当接面30a,40aと第1及び第2の接続端部12,22の間に隙間ができ、ホットメルト収容部31,41内のホットメルト51が先端側に流出する恐れがある。
【0068】
これに対して、本実施形態における防水コネクタ1では、第1及び第2の接続端部12,22間にスペースSを空けた状態で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を並べ、第1及び第2の接続端部12,22同士が互いに重ならないようになっている。これにより、ホットメルト収容部31,41内においてホットメルト51が入り込みにくい部分がなく、第1及び第2の接続端部12,22と第1及び第2のリテーナ30,40の間が隙間なくシール部材50で塞がれるため、上記浸水経路が遮断され、防水コネクタ1が確実に防水された状態となる。
【0069】
一方、第1及び第2の接続端部12,22間にスペースSが形成されることで、図10及び図11に示すように、溶融したホットメルト51が、このスペースSを介してホットメルト収容部31,42から流出し易くなる。
【0070】
ここで、スペースSから流出したホットメルトが圧着端子に付着して接続端部との間(電気的接点)に入り込むと、圧着端子と接続端部の間の電気抵抗値が大きくなり、防水コネクタにおける電気的接続の信頼性が損なわれる恐れがある。
【0071】
これに対し、本実施形態における防水コネクタ1では、第1のリテーナ30に第1の溜め部33が形成され、この第1の溜め部33が第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSに対応する部分に配置されている。これにより、図11に示すように、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSから流出したホットメルト51が、この第1の溜め部33に入り込むため、第1及び第2の圧着端子61,62(特に、第1及び第2の接続端部12,22との接点部分)へのホットメルト51の付着が抑制されている。
【0072】
本実施形態では、第1の溜め部33が凹部となっていることで、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSから流出したホットメルト51が第1のリテーナ30の外部に流れ込まないようになっている。
【0073】
また、第1の溜め部33が、図6に示すような貫通孔となっていることで、多くのホットメルト51を受け入れることができる。なお、この場合には、ホットメルト51を充填させる際に用いられる金型で、当該貫通孔の開口(下方に位置する開口)を塞ぐようにし、ホットメルト51が外部へ流出することを防止する。
【0074】
また、本実施形態では、図11に示すように、第1の溜め部33の幅W1が、スペースSの幅よりも広くなっている(W1>S)。これにより、スペースSから流出したホットメルト51が確実に第1の溜め部33内に収容され、第1及び第2の圧着端子61,62へのホットメルト51の付着が効果的に抑制されている。
【0075】
このように、第1及び第2の圧着端子61,62へのホットメルト51の付着が抑制されていることで、ホットメルト51を流し込む際の成形条件の幅を広げることができる。例えば、ホットメルト51を流し込む際の圧力を大きくすることができ、これによりホットメルト51の充填不足を解消することができる。
【0076】
ここで、本実施形態では、一対のリテーナの間に、2枚のフレキシブル基板を挟み込んでいるが、特に限定されない。例えば、一対のリテーナの間に、3枚以上のフレキシブル基板を挟み込み、ホットメルト収容部に注入したホットメルトを硬化させてなるシール部材で、それらフレキシブル基板とリテーナとの間の隙間を塞いでもよい。この場合にも、それぞれの接続端部間にスペースを空けた状態でフレキシブル基板を並べ、一方のリテーナには、それぞれのスペースに対応する部分に溜め部を形成する。
【0077】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0078】
1…防水コネクタ
2…コネクタ本体
3…ハウジング
4…環状シール部材
10,20…フレキシブル基板
11,21…本体部
12,22…接続端部
30,40…リテーナ
30a,40a…当接面
31,41…ホットメルト収容部
32,42…端子収容部
33,43…溜め部
50…シール部材
51…ホットメルト
61,62…圧着端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板の電気的接続に用いられる防水コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子が取り付けられたフレキシブル基板をリテーナで挟み込み、その外周に環状シール部材を取り付けてハウジングに収容するとともに、フレキシブル基板とリテーナの間にホットメルトを充填したフレキシブル基板用防水コネクタが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/090998号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のフレキシブル基板用防水コネクタでは、複数のフレキシブル基板をリテーナで一括して挟み込み、フレキシブル基板とリテーナとの間にホットメルトを充填しようとすると、複数のフレキシブル基板の隙間からホットメルトが流出して、ホットメルトが端子に付着してしまうという問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ホットメルトが端子に付着することを抑制する防水コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防水コネクタは、端子が取り付けられた接続端部をそれぞれ有する複数のフレキシブル基板を一括して挟み込み、前記フレキシブル基板と対向する面にホットメルトを収容する収容部が形成されたリテーナと、前記収容部に注入したホットメルトを硬化させてなるシール部材と、を備え、前記リテーナは、前記接続端部同士の間にスペースを空けた状態で並べられた複数の前記フレキシブル基板を挟み込み、さらに前記リテーナには、前記スペースを介して前記収容部から先端に向かって流出した前記ホットメルトを受け入れる溜め部が前記スペースに対応する部分に形成されていることを特徴とする。
【0007】
上記発明において、前記端子は、前記フレキシブル基板を挟み込む上板及び下板と、前記下板の側部に立設されたバレルと、を有する圧着端子であってもよい。
【0008】
上記発明において、前記溜め部は、前記リテーナにおいて前記フレキシブル基板に対向する面に形成された凹部であってもよい。
【0009】
上記発明において、前記溜め部は、前記リテーナを貫通する貫通孔であってもよい。
【0010】
上記発明において、前記溜め部の幅は、前記スペースの幅よりも広くてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、各接続端部同士の間にスペースを空けた状態で並べた複数のフレキシブル基板を一括して挟み込むリテーナに、前記スペースを介して流出したホットメルトを受け入れる溜め部が形成されているので、ホットメルトが端子に付着することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施形態における防水コネクタの斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における防水コネクタのコネクタ本体の分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における防水コネクタの圧着端子の斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における防水コネクタの第1のリテーナの斜視図である。
【図5】図5は、図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態における防水コネクタの第1変形例に係る第1のリテーナの断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態における防水コネクタの第2のリテーナの斜視図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態における防水コネクタの第2変形例に係る第2のリテーナの斜視図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態における防水コネクタの作用を示す斜視図である。
【図10】図10は、図9のX−X線に沿った断面図である。
【図11】図11は、図9のXI部の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本実施形態における防水コネクタの斜視図、図2は本実施形態における防水コネクタのコネクタ本体の分解斜視図、図3は本実施形態における防水コネクタの圧着端子の斜視図、図4は本実施形態における防水コネクタの第1のリテーナの斜視図、図5は図4のV−V線に沿った断面図、図6は本実施形態における防水コネクタの第1変形例に係る第1のリテーナの断面図、図7は本実施形態における防水コネクタの第2のリテーナの斜視図、図8は本実施形態における防水コネクタの第2変形例に係る第2のリテーナの斜視図である。
【0015】
本実施形態における防水コネクタ1は、例えば自動車におけるシートの下部に組み込まれ、複数のフレキシブル基板にそれぞれ接続された複数の電子部品(例えば着座センサや静電容量センサ等)とECU(electronic control unit)等との間を一括して電気的に接続するコネクタである。
【0016】
本実施形態における防水コネクタ1は、図1に示すように、コネクタ本体2と、コネクタ本体2を収容するハウジング3と、コネクタ本体2の外周に取り付けられる環状シール部材4と、を備えている。環状シール部材4は、コネクタ本体2の外周面とハウジング3の内周面とに密着し、その間の防水を図るものである。
【0017】
コネクタ本体2は、図2に示すように、第1のフレキシブル基板10と、第2のフレキシブル基板20と、第1のリテーナ30と、第2のリテーナ40と、後述するシール部材50(図9参照)と、を備えている。なお、本実施形態における第1および第2のフレキシブル基板10,20が、本発明の複数のフレキシブル基板の一例に相当し、第1および第2のリテーナ30,40の一対が、本発明のリテーナの一例に相当する。
【0018】
第1のフレキシブル基板10は、可撓性を有する絶縁性基板に電気回路パターン(配線)が形成された回路基板である。第1のフレキシブル基板10としては、メンブレン回路やフレキシブルプリント回路(FPC:flexible printed circuit)を例示できる。
【0019】
この第1のフレキシブル基板10は、図2に示すように、第1の本体部11と、第1の接続端部12と、で構成されている。
【0020】
第1の本体部11は、特に図示しないが、第1の電子部品(例えば着座センサ)に接続されている。この第1の本体部11は、図2に示すように、図中左側に曲がって第1の接続端部12(後述)と繋がっている。
【0021】
第1の接続端部12は、図2に示すように、第1のフレキシブル基板10において第1の本体部11から延在した部分であり、第1のフレキシブル基板10の端部に位置している。
【0022】
この第1の接続端部12には、3つの第1の圧着端子61が取り付けられている。なお、このように取り付けられた第1の圧着端子61は、第1のフレキシブル基板10の電気回路パターンに接続され、電気回路パターンを介して、第1の電子部品(不図示)に電気的に接続されている。なお、第1のフレキシブル基板10に取り付けられる第1の圧着端子61の数は、特に限定されない。
【0023】
第1の圧着端子61は、図2に示すように、レセクタプル型の端子でありECU等に電気的に接続されたピン型の端子と嵌合するようになっている。これにより、第1の電子部品がECU等に電気的に接続される。
【0024】
第1の圧着端子61は、図3に示すように、下板61aと、上板61bと、バレル61cと、を有している。
【0025】
下板61a及び上板61bは、第1のフレキシブル基板10を挟み込む部材である。バレル61cは、下板61aの側部に立設されており、このバレル61cを上板61bに向かって折り曲げることで、下板61aと上板61bの間に第1のフレキシブル基板10が固定(圧着)される。
【0026】
なお、本実施形態では、第1の圧着端子61にレセクタプル型の端子を用いたが、特に限定されない。例えば、防水コネクタ1に接続されるコネクタの端子がレセクタプル型であれば、第1の圧着端子61を、ピン型の端子で構成してもよい。
【0027】
この第1の接続端部12には、図2に示すように、後述する第1及び第2のリテーナ30,40の第1及び第2のホットメルト収容部31,41と対応する位置に、第1の貫通孔12aが形成されている。
【0028】
第2のフレキシブル基板20も、第1のフレキシブル基板10と同様に、絶縁性基板に電気回路パターンが形成された回路基板である。第2のフレキシブル基板20としては、メンブレン回路やフレキシブルプリント回路を例示できる。
【0029】
この第2のフレキシブル基板20は、図2に示すように、第2の本体部21と、第2の接続端部22と、で構成されている。
【0030】
第2の本体部21は、特に図示しないが、第1の電子部品とは異なる第2の電子部品(例えば静電容量センサ)に接続されている。この第2の本体部21は、図2に示すように、図中右側に曲がって第2の接続端部22と繋がっている。また、この第2の本体部21は、第1のフレキシブル基板10の第1の本体部11の下側に積層され、第1の本体部11にテープ等(不図示)で固定されている。
【0031】
第2の接続端部22は、図2に示すように、第2のフレキシブル基板20において第2の本体部21から延在した部分であり、第2のフレキシブル基板20の端部に位置している。
【0032】
この第2の接続端部22には、第1のフレキシブル基板10の第1の接続端部12と同様に、第2の圧着端子62が取り付けられている。このように取り付けられた第2の圧着端子62は、第2のフレキシブル基板20の電気回路パターンに接続され、電気回路パターンを介して、第2の電子部品(不図示)に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、第2の接続端部22に2つの第2の圧着端子62が取り付けられているが、第2の圧着端子62の数は、特に限定されない。
【0033】
第2の圧着端子62は、第1の圧着端子61と同一の構成(レセクタプル型の端子)となっており、下板と、上板と、バレルと、を有している。この第2の圧着端子62も、下板と上板の間に第2のフレキシブル基板20を挟み込んだ状態で、バレルが折り曲げられて、第2のフレキシブル基板20に圧着されている。
【0034】
なお、本実施形態では、第2の圧着端子62にレセクタプル型の端子を用いたが、特に限定されない。例えば、防水コネクタ1に接続されるコネクタの端子がレセクタプル型であれば、第2の圧着端子62を、ピン型の端子で構成してもよい。
【0035】
また、第2の接続端部22には、後述する第1及び第2のリテーナ30,40の第1及び第2のホットメルト収容部31,41に対応する位置に、第2の貫通孔22aが形成されている。
【0036】
そして、第2の接続端部22は、第1のフレキシブル基板10の第1の接続端部12と重ならないように、第1の接続端部12との間にスペースSを空けた状態で隣り合うように配置されている。なお、第1の接続端部12に取り付けられた第1の圧着端子61と、第2の接続端部22に取り付けられた第2の圧着端子62とが一列に並ぶように、第2の接続端部22は、第1の接続端部12と同一平面上に隣り合うようにして配置されている。
【0037】
第1のリテーナ30は、図2に示すように、第2のリテーナ40(後述)との間に第1及び第2のフレキシブル基板10,20を挟み込む部材である。
【0038】
この第1のリテーナ30は、後述するホットメルト51の溶融温度よりも高い耐熱性を有する材料で構成されている。例えばホットメルト51をポリアミド(polyamide)で構成する場合には、第1のリテーナ30として、ポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)を用いることができる。
【0039】
この第1のリテーナ30は、後述する第2のリテーナ40の第2の当接面40aと対向する第1の当接面30a(上面)で、第1及び第2のフレキシブル基板10,20と対向し当接している。この第1の当接面30aには、図4に詳細に示すように、第1のホットメルト収容部31と、第1の端子収容部32と、第1の溜め部33と、が形成されている。
【0040】
第1のホットメルト収容部31は、後述するホットメルト51を収容する溝であり、図4に示すように、図中Y方向に沿って形成されている。この第1のホットメルト収容部31は、同図に示すように、図中Y方向の両端が開口しており、この開口を介して溶融したホットメルト51を受け入れるようになっている。なお、第1のホットメルト収容部31は、ホットメルト51を収容できればよく、溝に限定されない。例えば、第1のホットメルト収容部31を、凹部で構成してもよい。
【0041】
第1の端子収容部32は、図4に示すように、図中X方向に沿って形成された凹部であり、第1及び第2の接続端部12,22における第1及び第2の圧着端子61,62の取り付け部位(端子圧着部)をそれぞれ収容する。なお、第1の当接面31aには、同図に示すように、複数の第1の端子収容部32(複数の凹部)が、図中Y方向に沿って間隔をあけて配設されている。
【0042】
本実施形態では、第1のリテーナ30の図中左側の部分に、3つの第1の圧着端子61をそれぞれ収容する3つの第1の端子収容部32aが形成され、これらに対して第1の間隔L1離れた図中右側の部分に、2つの第2の圧着端子62をそれぞれ収容する2つの第1の端子収容部32bが形成されている。
【0043】
ここで、第1の当接面30aにおいて、3つの第1の圧着端子61をそれぞれ収容する3つの第1の端子収容部32aと、2つの第2の圧着端子61をそれぞれ収容する2つの第1の端子収容部32bとの間の部分は、第1及び第2のフレキシブル基板10,20の第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSと対応しており、その間の第1の間隔L1は、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSよりも若干広くなっている(L1>S)。
【0044】
また、第1の端子収容部32は、同図に示すように、図中X方向において第1のホットメルト収容部31から第2の間隔L2離れており、第1のホットメルト収容部31と連通しないようになっている。
【0045】
第1の溜め部33は、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSを介して第1及び第2のホットメルト収容部31,41(第2のホットメルト収容部41については後述する。)から先端に向かって流出したホットメルト51を受け入れる凹部である。この第1の溜め部33は、図4に示すように、第1の当接面30aにおける第1の端子収容部32a,32bの間の部分に形成されており、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSよりも先端側に位置している。なお、本実施形態における「先端」とは、防水コネクタ1において、他のコネクタとの接続側(第1及び第2の圧着端子61,62側)の端部を意味する。
【0046】
ここで、第1の溜め部33の幅W1(図4中Y方向)は、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSよりも相対的に広くなっていることが好ましい(S<W1)。一方、第1の溜め部33の幅W1の最大値は、第1の端子収容部32a,32bの第1の間隔L1よりも相対的に狭くなっており(W1<L1)、第1の端子収容部32a,32bと連通しないようになっている。
【0047】
また、この第1の溜め部33は、図4及び図5に示すように、第1のホットメルト収容部31から第3の間隔L3離れている。なお、この第3の間隔L3は、ゼロでないこと(すなわち、第1の溜め部33が第1のホットメルト収容部31に連通していないこと)を条件として、より小さい方が好ましい。これにより、スペースSを介して第1及び第2のホットメルト収容部31,41から流出したホットメルト51を、第1の溜め部33に確実に収容することができ、ホットメルト51が第1及び第2の圧着端子61,62に付着することを効果的に抑制することができる。
【0048】
なお、第1の溜め部33は、上述のようにホットメルト51を受け入れることができればよく、凹部に限定されない。例えば、図6に示すように、第1の溜め部33が、第1のリテーナ30を貫通する貫通孔であってもよい。
【0049】
第2のリテーナ40は、図1及び図2に示すように、第1のリテーナ30と対応し、第1のリテーナ30との間で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を挟み込む部材である。本実施形態では、第2のリテーナ40が第1のリテーナ30と分離しているが、特に限定されない。例えば、第2のリテーナ40を、ヒンジ等を介して第1のリテーナ30に接続させてもよい。
【0050】
この第2のリテーナ40は、第1のリテーナ30と同様に、ホットメルト51の溶融温度よりも高い耐熱性を有する材料で構成されている。例えばホットメルト51をポリアミドで構成する場合には、第2のリテーナ40として、ポリブチレンテレフタレートを用いることができる。
【0051】
この第2のリテーナ40は、第2の当接面40a(図2に示す第2のリテーナ40の下面)で、第1及び第2のフレキシブル基板10,20と対向し当接している。この第2の当接面40aには、図7に示すように、第2のホットメルト収容部41と、第2の端子収容部42と、が形成されている。なお、図7は、図2に示す第2のリテーナ40を反転させた状態を示している。
【0052】
第2のホットメルト収容部41は、後述するホットメルト51を収容する溝であり、図7に示すように、第1のリテーナ30の第1のホットメルト収容部31と対応するように図中Y方向に沿って形成されている。この第2のホットメルト収容部41は、同図に示すように、図中Y方向の両端が開口しており、この開口を介して溶融したホットメルト51を受け入れるようになっている。なお、第2のホットメルト収容部41は、ホットメルト51を収容できればよく、溝に限定されない。例えば、第2のホットメルト収容部41を、凹部で構成してもよい。
【0053】
第2の端子収容部42は、図7に示すように、図中X方向に沿って形成された凹部である。この第2の端子収容部42は、第1のリテーナ30の第1の端子収容部32と対応しており、第1及び第2の接続端部12,22における第1及び第2の圧着端子61,62の取り付け部位(端子圧着部)を、第1の端子収容部32との間に挟み込んでそれぞれ収容する。
【0054】
本実施形態では、第2のリテーナ40において、図7中右側の部分に、第1の圧着端子61をそれぞれ収容する3つの第2の端子収容部42aが形成され、これらに対して第4の間隔L4離れた図中左側の部分に、第2の圧着端子62をそれぞれ収容する2つの第2の端子収容部42bが形成されている。なお、この第4の間隔L4は、第1のリテーナ30の第1の間隔L1と実質的に同一となっている(L4≒L1)。
【0055】
また、第2の端子収容部42は、同図に示すように、図中X方向において第2のホットメルト収容部41から第5の間隔L5離れており、第2のホットメルト収容部41と連通しないようになっている。なお、この第5の間隔L5も、第1のリテーナ30の第2の間隔L2と実質的に同一となっている(L5≒L2)。
【0056】
ここで、図8に示すように、第2のリテーナ40にも第2の溜め部43を形成してもよい。具体的には、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSに対応する部分(スペースSよりも先端側)に、第1のリテーナ30の第1の溜め部33と同様の凹部や貫通孔を形成してもよい。
【0057】
シール部材50は、図9に示すように、第1及び第2のリテーナ30,40の外周を取り囲んでいると共に、第1及び第2のリテーナ30,40の第1及び第2のホットメルト収容部31,41内で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を被覆している。このシール部材50は、ホットメルト51で構成されている。なお、このホットメルト51には、金型(後述)との離型に優れている材料を用いることが好ましく、例えばポリアミドを材料として用いることができる。
【0058】
次に、本実施形態における防水コネクタ1の作用について説明する。
【0059】
図9は本実施形態における防水コネクタの作用を示す斜視図、図10は図9のX−X線に沿った断面図、図11は図9のXI部の拡大斜視図である。
【0060】
まず、第1及び第2のリテーナ30,40の間に第1及び第2のフレキシブル基板10,20を挟み込む。この際に、第1及び第2の接続端部12,22の間にスペースSを空けた状態で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を並べ、第1及び第2の貫通孔12a,22aをホットメルト収容部31,41内に位置させる。また、第1及び第2の圧着端子61,62を、端子収容部32,42内に収容する。なお、本実施形態におけるホットメルト収容部31,41が、本発明の収容部の一例に相当する。
【0061】
この状態で、第1及び第2のリテーナ30,40と、第1及び第2のフレキシブル基板10,20とを、特に図示しない金型にセットし、加熱され溶融したホットメルト51を流し込む。ホットメルト51がポリアミドで構成されている場合には、ホットメルト51の加熱温度として、185℃を例示できる。
【0062】
溶融したホットメルト51は、金型内に形成された流路(不図示)を通って、図9に示すように、ゲート部52からオーバーフロー部53に至るまで流れる。この間に、ホットメルト51は、第1及び第2のリテーナ30,40のホットメルト収容部31,41内に注入され、充填される。なお、図9では、第2のリテーナ40を透過した状態を図示している。
【0063】
本実施形態では、図10に示すように、スペースS以外の部分では、第1及び第2の当接面30a,40aと第1及び第2の接続端部12,22が当接(密着)しているため、ホットメルト収容部31,41内のホットメルト51が防水コネクタ1の先端に向かって流出しないように堰止められている。
【0064】
この状態でホットメルト51を冷却・固化することで、ホットメルト収容部31,41内を封止したシール部材50が形成され、第1及び第2のリテーナ30,40と第1及び第2のフレキシブル基板10,20が固定される。この後に、シール部材50におけるゲート部53及びオーバーフロー部53が切断されて、防水コネクタ1が完成する。
【0065】
ここで、本実施形態では、第1及び第2の接続端部12,22に第1及び第2の貫通孔12a,22aが形成されており、これらの第1及び第2の貫通孔12a,22a内にもシール部材50が進入しているため、第1及び第2のフレキシブル基板10,20が強固に固定される。
【0066】
また、ホットメルト収容部31,41内がシール部材50で封止されることで、第1及び第2のフレキシブル基板10,20の第1及び第2の本体部11,21から先端(第1及び第2の圧着端子61,62)に向かう浸水経路が遮断され、コネクタ同士の接続部分(第1及び第2の圧着端子61,62)における防水が図られる。
【0067】
ここで、仮に、接続端部同士が互いに重なった状態(スペースSがゼロの状態)になっていると、接続端部同士が重なった部分ではホットメルトが入り込みにくいために隙間が生じ、その隙間から、コネクタ内(圧着端子)に水が入り込む恐れがある。また、接続端部同士の一部が重なっていると、リテーナで挟み込まれる箇所の厚みが均一でないため、第1及び第2の当接面30a,40aと第1及び第2の接続端部12,22の間に隙間ができ、ホットメルト収容部31,41内のホットメルト51が先端側に流出する恐れがある。
【0068】
これに対して、本実施形態における防水コネクタ1では、第1及び第2の接続端部12,22間にスペースSを空けた状態で第1及び第2のフレキシブル基板10,20を並べ、第1及び第2の接続端部12,22同士が互いに重ならないようになっている。これにより、ホットメルト収容部31,41内においてホットメルト51が入り込みにくい部分がなく、第1及び第2の接続端部12,22と第1及び第2のリテーナ30,40の間が隙間なくシール部材50で塞がれるため、上記浸水経路が遮断され、防水コネクタ1が確実に防水された状態となる。
【0069】
一方、第1及び第2の接続端部12,22間にスペースSが形成されることで、図10及び図11に示すように、溶融したホットメルト51が、このスペースSを介してホットメルト収容部31,42から流出し易くなる。
【0070】
ここで、スペースSから流出したホットメルトが圧着端子に付着して接続端部との間(電気的接点)に入り込むと、圧着端子と接続端部の間の電気抵抗値が大きくなり、防水コネクタにおける電気的接続の信頼性が損なわれる恐れがある。
【0071】
これに対し、本実施形態における防水コネクタ1では、第1のリテーナ30に第1の溜め部33が形成され、この第1の溜め部33が第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSに対応する部分に配置されている。これにより、図11に示すように、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSから流出したホットメルト51が、この第1の溜め部33に入り込むため、第1及び第2の圧着端子61,62(特に、第1及び第2の接続端部12,22との接点部分)へのホットメルト51の付着が抑制されている。
【0072】
本実施形態では、第1の溜め部33が凹部となっていることで、第1及び第2の接続端部12,22間のスペースSから流出したホットメルト51が第1のリテーナ30の外部に流れ込まないようになっている。
【0073】
また、第1の溜め部33が、図6に示すような貫通孔となっていることで、多くのホットメルト51を受け入れることができる。なお、この場合には、ホットメルト51を充填させる際に用いられる金型で、当該貫通孔の開口(下方に位置する開口)を塞ぐようにし、ホットメルト51が外部へ流出することを防止する。
【0074】
また、本実施形態では、図11に示すように、第1の溜め部33の幅W1が、スペースSの幅よりも広くなっている(W1>S)。これにより、スペースSから流出したホットメルト51が確実に第1の溜め部33内に収容され、第1及び第2の圧着端子61,62へのホットメルト51の付着が効果的に抑制されている。
【0075】
このように、第1及び第2の圧着端子61,62へのホットメルト51の付着が抑制されていることで、ホットメルト51を流し込む際の成形条件の幅を広げることができる。例えば、ホットメルト51を流し込む際の圧力を大きくすることができ、これによりホットメルト51の充填不足を解消することができる。
【0076】
ここで、本実施形態では、一対のリテーナの間に、2枚のフレキシブル基板を挟み込んでいるが、特に限定されない。例えば、一対のリテーナの間に、3枚以上のフレキシブル基板を挟み込み、ホットメルト収容部に注入したホットメルトを硬化させてなるシール部材で、それらフレキシブル基板とリテーナとの間の隙間を塞いでもよい。この場合にも、それぞれの接続端部間にスペースを空けた状態でフレキシブル基板を並べ、一方のリテーナには、それぞれのスペースに対応する部分に溜め部を形成する。
【0077】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0078】
1…防水コネクタ
2…コネクタ本体
3…ハウジング
4…環状シール部材
10,20…フレキシブル基板
11,21…本体部
12,22…接続端部
30,40…リテーナ
30a,40a…当接面
31,41…ホットメルト収容部
32,42…端子収容部
33,43…溜め部
50…シール部材
51…ホットメルト
61,62…圧着端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が取り付けられた接続端部をそれぞれ有する複数のフレキシブル基板を一括して挟み込み、前記フレキシブル基板と対向する面にホットメルトを収容する収容部が形成されたリテーナと、
前記収容部に注入したホットメルトを硬化させてなるシール部材と、を備え、
前記リテーナは、前記接続端部同士の間にスペースを空けた状態で並べられた複数の前記フレキシブル基板を挟み込み、
さらに前記リテーナには、前記スペースを介して前記収容部から先端に向かって流出した前記ホットメルトを受け入れる溜め部が前記スペースに対応する部分に形成されていることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の防水コネクタであって、
前記端子は、
前記フレキシブル基板を挟み込む上板及び下板と、
前記下板の側部に立設されたバレルと、を有する圧着端子であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防水コネクタであって、
前記溜め部は、前記リテーナにおいて前記フレキシブル基板に対向する面に形成された凹部であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項4】
請求項1又は2記載の防水コネクタであって、
前記溜め部は、前記リテーナを貫通する貫通孔であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の防水コネクタであって、
前記溜め部の幅は、前記スペースの幅よりも広いことを特徴とする防水コネクタ。
【請求項1】
端子が取り付けられた接続端部をそれぞれ有する複数のフレキシブル基板を一括して挟み込み、前記フレキシブル基板と対向する面にホットメルトを収容する収容部が形成されたリテーナと、
前記収容部に注入したホットメルトを硬化させてなるシール部材と、を備え、
前記リテーナは、前記接続端部同士の間にスペースを空けた状態で並べられた複数の前記フレキシブル基板を挟み込み、
さらに前記リテーナには、前記スペースを介して前記収容部から先端に向かって流出した前記ホットメルトを受け入れる溜め部が前記スペースに対応する部分に形成されていることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の防水コネクタであって、
前記端子は、
前記フレキシブル基板を挟み込む上板及び下板と、
前記下板の側部に立設されたバレルと、を有する圧着端子であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防水コネクタであって、
前記溜め部は、前記リテーナにおいて前記フレキシブル基板に対向する面に形成された凹部であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項4】
請求項1又は2記載の防水コネクタであって、
前記溜め部は、前記リテーナを貫通する貫通孔であることを特徴とする防水コネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の防水コネクタであって、
前記溜め部の幅は、前記スペースの幅よりも広いことを特徴とする防水コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−73888(P2013−73888A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214145(P2011−214145)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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