説明

防水ゴム栓

【課題】 ゴム栓の大型化を招くことなく、シール性を確保しまた電線挿入力を低減できるようにする。
【解決手段】 ゴム栓30は全キャビティの後面側を覆う横長形状に形成されている。ゴム栓30には電線を水密状に貫通可能な複数の挿通孔31が形成され、各挿通孔31は、横方向にはキャビティのピッチと同じピッチが取られている一方、ゴム栓30の中央高さを挟んだ上下両側に交互に配され、いわゆる千鳥状に配列されている。並列方向のピッチを従前通りに抑えたままで、隣り合う挿通孔31の間のゴムの肉厚を大きく取ることができ、全周にわたって大きな弾発力が得られて電線回りのシール性を確保できる。また電線を挿通孔31に挿入する場合に、隣の挿通孔31に電線が既に挿入されていた場合でも、挿通孔31を容易に拡径変形させることができ、電線の挿入力が低減できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、いわゆる一括型の防水ゴム栓に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の一括型防水ゴム栓は、例えば特開平9−92384号公報に記載されているような圧接型の防水コネクタに用いられている。この防水コネクタを概略的に説明すると、圧接端子が収容されるキャビティを横方向に複数個並べて設けたハウジングの後面に、図9に示すように、電線を水密状に挿通可能な挿通孔aを各キャビティと対応した位置ごとに一列に並べて開口した防水ゴム栓bが設けられ、各挿通孔aに電線を挿通してその先端を対応する圧接端子に圧接接続し、防水ゴム栓bにより各電線の回りをシールする構造となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで従来の防水ゴム栓bでは、電線の挿通孔aが、キャビティのピッチに合わせて単に横一列に並べられた構造であったため、特に隣り合う挿通孔aの間隔が狭くなる傾向にあり、言い換えると、隣り合う挿通孔aの間のゴムの肉厚が薄いことで弾発力が不足し、その部分で十分なシール効果が得られないおそれがあった。また、挿通孔a間の間隔が狭いと、挿通孔aに電線を挿通する作業を行う際、隣りの挿通孔aに既に電線が挿通されていた場合にはその間のゴムを弾性変形させ難く、その結果、電線の挿入力が増すという不具合があった。
【0004】尤も、各挿通孔a間の間隔を広げれば上記の不具合は解消されるが、それだけ防水ゴム栓bが大型化するし、キャビティの間隔も広げる必要が生じてそれに起因してコネクタの大型化を招く結果となるので、簡単には対応できない。本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、その目的は、ゴム栓の大型化を招くことなく、シール性を確保しまた電線挿入力を低減できるようにするところにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、端子金具が収容される複数のキャビティを一列に並べて設けたハウジングの後面側に配設され、前記各端子金具に接続された電線を水密状に挿通する複数の挿通孔が形成された防水ゴム栓において、前記各挿通孔が、前記キャビティの並列方向に沿った線を挟んで交互に反対側に位置する千鳥状に配置されているところに特徴を有する。
【0006】請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、当該防水ゴム栓は、電線の挿通時には前記ハウジングの後面から離間した位置に配され、電線の挿通完了後にこの電線を挿通孔内で摺動させつつ前記ハウジングの後面に当接されるようになっているところに特徴を有する。
【0007】
【発明の作用及び効果】<請求項1の発明>挿通孔を千鳥状に配列したことによって、各挿通孔の並列方向のピッチを従前通りに抑えたままで、挿通孔の間のゴムの肉厚を大きく取ることができる。そのため、挿通孔の全周にわたって大きな弾発力を得ることができて、電線回りのシール性を確保することができる。また、電線を挿通孔に挿入する場合に、隣の挿通孔に電線が既に挿入されていた場合であっても、挿通孔を容易に弾性変形させることが可能であり、もって小さな挿入力で電線を挿入することができる。
【0008】<請求項2の発明>防水ゴム栓は初めはハウジングの後面から離間した位置に配され、係る状態で電線が突出長さに余裕を持って挿通孔に挿通される。各電線がハウジング内で圧接等の処理が行われたら、防水ゴム栓が電線に沿って押し込まれてハウジングの後面に配される。電線の挿通位置が異なるにも拘わらず、各電線の先端のハウジング内における圧接等の処理を的確に行うことができる。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1ないし図8に基づいて説明する。この実施形態では、雌側の圧接型の防水コネクタを例示しており、図1に示すように、雌側のフレーム1内に複数のハウジング収容室2が形成され、各ハウジング収容室2内に、雌側の圧接端子20の装着されたハウジング10が収容される構造となっている。このフレーム1が、図示しない相手の雄側のフレームとシールリング3を介して水密に嵌合されるようになっている。
【0010】まず、ハウジング10の構造について説明する。このハウジング10は、図2及び図3に示すように、全体として扁平な方形状に形成され、その内部には図示10個のキャビティ11が横方向に並んで形成されている。各キャビティ11は、図3に示すように後面側が開口されている一方、前面側には前面板12が設けられ、この前面板12には、図示しない相手の雄側端子金具のタブが挿入される端子挿入口13が形成されている。ハウジング10の上面は、前端側(図3の右側)の所定範囲を除いて全幅にわたって切除されており、この部分が、図示しない圧接具が挿入される圧接用開口15となっている。
【0011】各キャビティ11内には、それぞれ圧接端子20が収容されるようになっている。この圧接端子20は、図4に示すように、先端側に接触片の収納された箱形の接続部21が設けられるとともに、接続部21の後方に上面の開口された溝形の圧接部22が設けられており、この圧接部22には、左右の側壁から内方に切り起こすことで前後一対の圧接刃23が形成されている。圧接部22の後方にはバレル24が設けられている。
【0012】そして、圧接端子20は各キャビティ11内に後方から挿入され、図3に示すように、前面板12に当たることで前止まりがなされ、また、接続部21の上面に形成された金属ランス25が、キャビティ11の天井面に形成された係止孔17に嵌まることで後方への抜け止め状態で収容されるようになっている。
【0013】ハウジング10の後面には、一括型のゴム栓30が配設されるようになっている。このゴム栓30は、全キャビティ11の後面側を覆うことのできる横長形状に形成され、上記したフレーム1のハウジング収容室2の入り口に緊密に嵌着可能とされている。
【0014】このゴム栓30には、電線35を水密状に貫通可能な10個の挿通孔31が形成されている。各挿通孔31は詳細には、図5に示すように、横方向については、上記したキャビティ11のピッチと同じピッチが取られている一方、ゴム栓30の中央高さを挟んだ上下両側に交互に配され、いわゆる千鳥状に配列されている。
【0015】続いて、上記のゴム栓30を用いた圧接コネクタの組み付け手順を説明する。まず図6に示すように、ハウジング10の各キャビティ11内に圧接端子20が収容され、圧接型の基盤上に載せられる。一方、ゴム栓30の各挿通孔31には、それぞれ電線35が後方から挿入され、その先端は、組み付け状態におけるゴム栓30からの正規の突出長さよりも余分に長く突出した状態で挿通される。
【0016】次に、各電線35の先端が、図6の矢線に示すように、対応する圧接端子20の圧接刃23の上に載せられる。係る状態から圧接型の圧接具(図示せず)がハウジング10の圧接用開口15を通して下降し、図7R>7に示すように、電線35が圧接刃23に向けて押し込まれて圧接接続され、またバレル24がかしめられる。
【0017】上記の圧接工程が終了したら、ハウジング10が圧接型から外される。そして、ゴム栓30を図7の矢線に示すように押し込むと、電線35が挿通孔31内を相対的に摺動して、図8に示すように、ゴム栓30がハウジング10の後面に押し付けられる。これにより、ゴム栓30がハウジング10の後面の正規の位置に配されることになる。最後に、圧接用開口15がカバー5で閉鎖されることによって、図1に示すハウジング10が形成される。このハウジング10が、雌側のフレーム1のハウジング収容室2に後方から挿入され、ゴム栓30がハウジング収容室2の入り口に嵌着されることは既述したとおりである。
【0018】以上説明したように本実施形態によれば、ゴム栓30の挿通孔31を千鳥状に配列したから、各挿通孔31の並列方向のピッチを従前通りに抑えたままで、隣り合う挿通孔31の間のゴムの肉厚を大きく取ることができる。そのため、挿通孔31の全周にわたって大きな弾発力を得ることができて、電線35の回りのシール性を確保することができる。また、電線35を挿通孔31に挿入する場合に、隣の挿通孔31に電線35が既に挿入されていた場合であっても、挿通孔31を容易に拡径変形させることが可能であり、もって小さな挿入力で電線35を挿入することができ、作業能率を向上させることができる。
【0019】<他の実施形態>本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態ではフレームに装着されるハウジングに用いられる防水ゴム栓を例示したが、本発明はハウジング単体で相手のハウジングと嵌合する形式のものに用いる防水ゴム栓にも同様に適用できる。
【0020】(2)本発明は、雄側の圧接型防水コネクタに用いる防水ゴム栓にも適用できる。
(3)また、電線の端末に端子金具を圧着により固着したものをハウジング内に収容する圧着型防水コネクタに用いる防水ゴム栓にも、本発明は同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るハウジングとフレームの断面図
【図2】ハウジングとゴム栓の平面図
【図3】圧接端子の収容されたハウジングの断面図
【図4】圧接端子の平面図
【図5】ゴム栓の正面図
【図6】電線をゴム栓に挿通した状態の断面図
【図7】圧接完了時の断面図
【図8】ゴム栓を正規位置に移動させた状態の断面図
【図9】従来例のゴム栓の正面図
【符号の説明】
10…ハウジング
11…キャビティ
20…圧接端子(端子金具)
30…ゴム栓
31…挿通孔
35…電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】 端子金具が収容される複数のキャビティを一列に並べて設けたハウジングの後面側に配設され、前記各端子金具に接続された電線を水密状に挿通する複数の挿通孔が形成された防水ゴム栓において、前記各挿通孔が、前記キャビティの並列方向に沿った線を挟んで交互に反対側に位置する千鳥状に配置されていることを特徴とする防水ゴム栓。
【請求項2】 当該防水ゴム栓は、電線の挿通時には前記ハウジングの後面から離間した位置に配され、電線の挿通完了後にこの電線を挿通孔内で摺動させつつ前記ハウジングの後面に当接されるようになっていることを特徴とする請求項1の防水ゴム栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−277204(P2000−277204A)
【公開日】平成12年10月6日(2000.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−79333
【出願日】平成11年3月24日(1999.3.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】