説明

防水シート構造及びその施工方法

【解決手段】透水性シートと不透水性シートを含む防水シート構造であって、該透水性シートが不織布又は織布からなっており、該不透水性シートが一面の長手方向に弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを複数接合・具備しており、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、透水性シートと不透水性シートとが一体化されてなること特徴とする防水シート構造。
【効果】本発明によれば、防水シートを凹凸のある一次覆工コンクリート面にも歪みなく確実な接合強度で取り付けることができ、かつ施工効率にも優れた防水シート構造を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートの間に介装する防水シート構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル工事においてトンネル地中からの涌水が一次覆工コンクリート側から二次覆工コンクリートに漏水するのを防止するために、トンネルの一次覆工コンクリートと二次覆工コンクリートとの間に防水シートを介装することが行われており、防水シートとしては、例えば不織布等の透水性シートを不透水性シートの一面に積層したものが使用されている。
そして、このような防水シートを配設するにあたっては、例えば実開平7−35597号公報(特許文献1)や特開平8−135393号公報(特許文献2)のように、透水性シートを、可撓性や移動可能な機能を有する熱溶着ディスクに連設された耳片や帯状プレートを介してトンネルの一次覆工コンクリート面に釘でアンカーリングし展張した後、不透水性シートを該熱溶着ディスクに押し当てて、近赤外線ウェルダーや高周波ウェルダーなどの溶着機により、熱溶着ディスクと不透水性シートとを溶着・接合する方法がとられている。
【0003】
しかし、トンネルの一次覆工コンクリート面には凹凸があって、可撓性や移動可能な機能を有する熱溶着ディスクに連設された耳片や帯状プレートを介して透水性シートを釘でアンカーリングしているとは言え、アンカーリングの際の歪みを十分に吸収できず、熱溶着ディスクが反ってしまうことがあり、結果として防水シート溶着面の平滑性が損なわれ、防水シートを歪みなく展張することができなかったり、また防水シートの溶着強度が熱溶着ディスク毎にばらついてしまうことから、相対的に溶着強度の低い熱溶着ディスクに応力集中が起こり、防水シートの一部が剥離してしまうことがあった。
このような問題を解決するために、熱溶着ディスクの数を増やして透水性シートを展張する手段が取られていたが、施工効率が悪く満足に足るものではなかった。
即ち、防水シートを凹凸のある一次覆工コンクリート面に歪みなく確実な接合強度で、かつ施工効率良く配設することができなかった。
【0004】
【特許文献1】実開平7−35597号公報
【特許文献2】特開平8−135393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、防水シートを凹凸のある一次覆工コンクリート面にも歪みなく確実な接合強度で取り付けることができ、かつ施工効率にも優れた防水シート構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するため、鋭意検討を行なった結果、透水性シートと不透水性シートを含む防水シート構造であって、該透水性シートが不織布又は織布からなっており、該不透水性シートが一面の長手方向に弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを複数接合・具備しており、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、透水性シートと不透水性シートとが一体化されてなる防水シート構造が有効であり、さらに前記防水シート構造を適用し、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に不織布又は織布からなる透水性シートを取り付け、該透水性シートに、弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを一面の長手方向に複数接合・具備した不透水性シートの該弾性フック側を対向させて押圧することにより、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、該透水性シートと該不透水性シートとが一体化される防水シートの施工方法によれば、防水シートを凹凸のある一次覆工コンクリート面にも歪みなく確実な接合強度で取り付けることができ、かつ施工効率にも優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記防水シート構造及びその施工方法を提供する。
請求項1:
透水性シートと不透水性シートを含む防水シート構造であって、該透水性シートが不織布又は織布からなっており、該不透水性シートが一面の長手方向に弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを複数接合・具備しており、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止し、透水性シートと不透水性シートとが一体化されてなること特徴とする防水シート構造。
請求項2:
上記面ファスナーの基材部と上記不透水性シートとが、ホットメルト系接着剤により接合されてなることを特徴とする請求項1記載の防水シート構造。
請求項3:
上記面ファスナーの基材部が上記不透水性シートと熱融着可能な熱可塑性樹脂を含み、該基材部と該不透水性シートとが、該熱可塑性樹脂により接合されてなることを特徴とする請求項1記載の防水シート構造。
請求項4:
上記面ファスナーが茸形であり、該面ファスナーの、該弾性フック部の直径,高さをそれぞれDe,He、茎部の直径,高さをそれぞれDs,Hs、該弾性フック部・茎部の基材部に対する植毛密度をBw、上記透水性シートをなす不織布又は織布の平均空隙直径,高さをそれぞれDt,Htとした時、下記式を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の防水シート構造。
0.50 ≦ De/Dt ≦ 2.67
0.13 ≦ Ds/De ≦ 0.75
0.37 ≦ Hs/Ht ≦ 1.28
250000 ≦ Bw ≦ 700000 (単位:本/m2
150 ≦ He ≦ 450 (単位:μm)
請求項5:
請求項1乃至4のいずれか1項記載の防水シート構造を適用し、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に不織布又は織布からなる透水性シートを取り付け、該透水性シートに、弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを一面の長手方向に複数接合・具備した不透水性シートの該弾性フック側を対向させて押圧することにより、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、該透水性シートと該不透水性シートとが一体化されることを特徴とする防水シートの施工方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、防水シートを凹凸のある一次覆工コンクリート面にも歪みなく確実な接合強度で取り付けることができ、かつ施工効率にも優れた防水シート構造及びその施工方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態及び実施例】
【0009】
以下、本発明について図面を参照してより詳細に説明する。
まず本発明の防水シート構造について説明する。
本発明の防水シート構造の一構成例を説明するために、図1は面ファスナー4を、接合層5を介して具備した一不透水性シート6の一部を拡大して示した概略縦断面図であり、図2は図1の縮小平面図であり、図3は不織布又は織布からなる一透水性シート2の一部を拡大して示した概略縦断面図であり、図4は面ファスナー4を具備した一不透水性シート6と不織布又は織布からなる一透水性シート2とが一体化された様子の一部を拡大して示した概略縦断面図であり、図5は面ファスナー4を具備した2つの一不透水性シート6,6が不織布又は織布からなる一透水性シート2に一体化され、かつ相互に隣接する該不透水性シート6,6の端部同士6a,6aを重ね合わせて溶着・接合した様子の一部を拡大して示した概略縦断面図である。
【0010】
本発明の防水シート構造は、図1,図2に示すように、不透水シート6の一面の長手方向(X方向)に弾性フック部4a、茎部4b、基材部4cからなる帯状の面ファスナー4が該基材部4cにおいて接合層5を介して複数接合・具備されており、これを図3に示す不織布又は織布からなる透水性シート2に、上記面ファスナー4の弾性フック部4a側を対向させて押圧することにより、面ファスナー4の弾性フック部4aが不織布又は織布からなる透水性シート2の図示しない繊維間隙を該繊維間隙及び/又は該繊維間隙をなす繊維群を弾性拡張させて進入し、該弾性フック部4aの下部(茎部4bの上部でもある)における該繊維群及び/又は該繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、図4に示すように透水性シート2と不透水性シート6とが一体化されるものである。
この場合、不織布又は織布からなる透水性シート2は、弾性を有する繊維群で構成されているため、面ファスナー4の弾性フック部4aの該透水性シート2の繊維間隙への進入によって、逐次該繊維間隙及び/又は該繊維群が弾性拡張され、該繊維間隙直径が該弾性フック部4aの直径まで押し広げられた後、該弾性フック部4aの該繊維間隙通過に従い、逐次面ファスナー4の茎部4bの直径まで該繊維群及び/又は該繊維間隙が弾性収縮し、該面ファスナーと不織布又は織布が係合係止されるものである。
【0011】
ここで、上記面ファスナー4は、不織布又は織布からなる透水性シート2に対して高い係合性(係合し易いこと)と高い係合強度(一度係合したら外れ難いこと)を両立するものが好ましいことから、不織布又は織布からなる透水性シート2の材質、目付け、厚さ、繊維直径、空隙直径等を考慮して、面ファスナー4の弾性フック部4a、茎部4b、基材部4cの材質、形状、大きさ、植毛目付け等を決め、採用することができる。
【0012】
通例、トンネル施工に用いられる透水性シート2を形成している不織布又は織布は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン等から選ばれる材質で、目付量50〜500g/m2程度、20g/cm2の荷重で厚さHtが2000〜5000μm、繊維直径30〜80μm、平均空隙直径Dt300〜800μmのものが用いられることから、係合性の面から、面ファスナー4の弾性フック部4a、茎部4bの材質は透水性シート2を形成している不織布又は織布の材質以上の剛性を有するポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート等から選ばれる断面円形又は略円形の繊維を用いることが好ましく、また係合強度の面から、面ファスナー4の弾性フック部4aの形状は進入方向に対して逆行を阻止する‘かえし’が必要で、具体的には茸形のものやフック形のものが好ましく、特に図1に示した茸形のものがより好ましく、この場合(茸形のものの場合)、弾性フック部4aの直径Deが400〜800μm、高さHeが150〜450μm、茎部4bの直径Dsが100〜300μm、高さHsが1850〜2550μmのものが好ましい。また植毛目付けBwは250000〜700000本/m2のものが好ましい。
【0013】
面ファスナー4が茸形の場合、該面ファスナー4の透水性シート2への係合性は、透水性シート2をなす不織布又は織布の平均空隙直径Dtに対する弾性フック部4aの直径Deの比De/Dt及び植毛密度Bwに関係し、面ファスナー4と透水性シート2との係合強度は、弾性フック部4aの直径Deに対する茎部4bの直径Dsの比Ds/De、透水性シート2をなす不織布又は織布の厚さHtに対する茎部4bの高さHsの比Hs/Ht、弾性フック部4aの高さHe及び植毛密度Bwに関係する。
e/Dtの値が大きくなれば係合し難くなり、逆に該値が小さくなれば係合し易くなる。Ds/Deの値が大きくなれば係合強度が小さくなり、逆に該値が小さくなれば係合強度が大きくなる。Hs/Htの値が大きくなれば係合強度が大きくなり、逆に該値が小さくなれば係合強度が小さくなる。Bw,Heは、De/Dt,Ds/De,Hs/Htのそれぞれの特性を係合性に対しては負の係数として、係合強度に対しては正の係数として作用する。
従って、上述の数値から、トンネル施工に用いられる透水性シート2に対する面ファスナー4は、係合性、係合強度の面から特に次の関係を満たすことが好ましい。
0.50 ≦ De/Dt ≦ 2.67
0.13 ≦ Ds/De ≦ 0.75
0.37 ≦ Hs/Ht ≦ 1.28
250000 ≦ Bw ≦ 700000 (単位:本/m2
150 ≦ He ≦ 450 (単位:μm)
【0014】
さらに、面ファスナー4の基材部4cは、これに括り付けられる弾性フック部4a及び茎部4b(一体もの)の強度以上とする必要があることから、弾性フック部4a及び茎部4bを形成している材質以上の剛性を有するポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、ポリカーボネート等から選ばれる繊維で形成される布地を用いることができる。
また、後述するように、この面ファスナー4の基材部4cは不透水性シート6に熱融着可能な熱可塑性樹脂の繊維で形成される布地としても良い。
【0015】
このような構成をなす面ファスナー4の作製は、例えば公知の接結二重織法によって、上記基材部4cに上記茎部4bを括り付け、しかる後、該茎部4bの先端を、その材質融点以上の温度で熱処理して茸形又はフック形とし、弾性フック部4aとすることによって得られる。
【0016】
また、必要に応じて、基材部4cの裏面(茎部4bが植毛される反対面であって、不透水性シート6と対向する面)に、例えばウレタン/ポリ塩化ビニル系塗料をコーティングし、強度と柔軟性を付与させる構成としても良い。
【0017】
面ファスナー4を不透水性シート6に接合・具備させるに際し、用いられる不透水性シート6は特に制限されるものではなく、通例トンネル施工に用いられる不透水性シートを用いることできる。
即ち、材質はポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン(ポリエチレン,ポリプロピレン等)樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂等から選ばれるいずれかの合成樹脂、中でもポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体の合成樹脂が好適に用いられ、寸法も通例用いられる幅1600〜2500mm程度、長さ13〜30m程度、厚さ0.8〜3.0mm程度のものを用いることができる。
【0018】
ここで上記面ファスナー4の寸法は、上記不透水性シート6の寸法を考慮し、幅20〜50mm程度、長さ13〜30m程度とすることができる。幅20mm未満では面ファスナー4による透水性シート2への十分な係合強度が得られないおそれがあり、幅50mmを超えると凹凸を有する一次覆工コンクリート1に展張された透水性シート2に面ファスナー4を馴染ませながら展張させることが困難となるおそれがある。
【0019】
上記面ファスナー4の不透水性シート6への接合・具備のさせ方は、例えば予めそれぞれ個別にフープ状に巻き付けた面ファスナー4と不透水性シート6とを同期的に巻き出しながら、面ファスナー4の基材部4cの一面(茎部4bが植毛される反対面)と不透水性シート6の一面の少なくとも一方に溶融ホットメルト系接着剤を連続的に或いは間欠的に塗布し、該溶融ホットメルト系接着剤が固化するまでに両シートを所定の厚さにレベリングしながら微小圧縮して巻き取って一体化させて行くか、或いは、上記面ファスナー4の、基材部4cを不透水性シート6に熱融着可能な熱可塑性樹脂で形成したものとし、これを予めフープ状に巻き付けたものと、不透水性シート6をフープ状に巻き付けたものとを同期的に巻き出しながら、該基材部4cの一面(茎部4bが植毛される反対面)と不透水性シート6の一面との間を加熱しながら両シートを所定の厚さにレベリングしながら微小圧縮して巻き取って一体化させて行っても良い。
【0020】
この場合、上記ホットメルト系接着剤並びに熱可塑性樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、変性ポリオレフィン(変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニルが好適に用いられ、上記面ファスナー4の基材部4cと不透水性シート6の両方への相溶性(接着性)を考慮して適宜選択できる。このような接合材料により、面ファスナー4の基材部4cと不透水性シート6との間に接合層5が形成され、不透水性シート6は面ファスナー4を具備したものとなる。
【0021】
なお、ここで不透水性シート6への面ファスナー4の付設は、図2に示すように、幅方向(Y方向)に対してY1,Y2,・・・,Ynのように任意の間隔で離間させて付設させることができる。Y1,Y2,・・・,Ynの各距離は同じにしても変えても構わないが、一般に同じにした方が不透水性シート6への面ファスナー4の付設作業効率が高いことが多く、かつ不透水性シート6の透水性シート2への接合は、面ファスナー4を介してなされるので、不透水性シート6の透水性シート2への重力配分が均等になるため好ましい。
この場合の面ファスナー4の付設間隔(Y1=Y2=・・・=Yn)は400〜1000mmが好ましく、より好ましくは500〜900mmとすることができる。該付設間隔が400mm未満では面ファスナー4が過剰付設となり、思った程の不透水性シート6と透水性シート2との接合力が得られず、逆に1000mmを超えると不透水性シート6と透水性シート2との全体の接合力が不足するおそれがある。
また、不透水性シート6の幅方向(Y方向)、両端に接合・具備させる面ファスナー4は、不透水性シート6の両端から75〜400mm内部に入った位置(図2中の距離Y0に相当)が好ましく、より好ましくは150〜300mm内部に入った位置とするのが良い。
75mm以下であると、複数の面ファスナー4を接合・具備した不透水性シート6を透水性シート2に展張していく際、隣接する該不透水性シート6,6の端部6a,6a同士を重ね合わせて溶接・接合する‘重ねあわせしろ’(図5,6o)が不足し、400mm以上であると、隣接する該不透水性シート6,6の端部6a,6a同士の位置決めが困難となるためである。
以上の観点から、幅1600〜2500mm程度の不透水性シート6の一面の長手方向に、幅20〜50mm程度の帯状の面ファスナー4を2〜5本、より好ましくは3〜4本付設させることができる。
【0022】
さらに、面ファスナー4は黒などの濃厚な色とし、不透水性シート6は透明、若しくは白、乳白色などの淡白な色とすることが好ましく、このようにすることにより、該不透水性シート6に該面ファスナー4を接合・具備し、トンネル一次覆工コンクリートに付設された透水性シート2に、該面ファスナー4の弾性フック部4a側を対向させて、押圧し、該面ファスナー4の弾性フック部4aと透水性シート2(不織布又は織布)とを係合させる際、不透水性シート6側から面ファスナー4の位置が透けて見え、確認できるため、確実に係合部分を押すことができ作業効率と係合品質を高めることができる。
【0023】
このようにして得られる弾性フック部4a,茎部4b,基材部4cからなる面ファスナー4を、接合層5を介して、一面、長手方向に接合・具備した不透水性シート6は、通例トンネル施工に用いられる透水性シート2を形成している不織布又は織布に対して高い係合性と高い係合強度を両立することができる。
その係合性と係合強度は、例えば上記トンネル施工用透水性シート2(不織布又は織布)と上記茸形面ファスナー4をそれぞれ200mm(l)×50mm(w)の試験片に切り出し、該透水性シート2(不織布又は織布)に該面ファスナー4の弾性フック部4a側を対向させて重ね合わせ、100mm(l)×50mm(w)を係合させるに際し、78.4N(8kgf)の加重のローラで2回押圧しただけで、容易に係合するもので、しかも相互に未接合の部分の透水性シート2(不織布又は織布)及び面ファスナー4を引張試験機のチャックに挟み50mmの間隔からクロスヘッドスピード300mm/minの速度でTピール試験した際、約196N(20kgf)もの係合強度に達する強固で確実なものである。
【0024】
しかも、透水性シート2と不透水性シート6の接合基点が、圧倒的多数の面ファスナー4の弾性フック部4a(と透水性シート2をなす繊維群)で、該弾性フック部4aが該透水性シート2をなす不織布又は織布に押圧・係合して、該透水性シート2と該不透水性シート6とが一体化される防水シート構造であるため、特許文献1,2のように接合基点が可撓性や移動可能な機能を有する熱溶着ディスクとなる構造と異なり、透水性シート2の凹凸のある一次覆工コンクリート1へのアンカーリングの際の歪の影響は殆ど受けず、接合効率も良く、不透水性シート6の透水性シート2への接合も歪なく展張することができ、接合基点毎の接合強度ばらつきも少なく、従って相対的に接合強度の低い接合基点への応力集中による防水シートの一部剥離も起き難いものである。
【0025】
次に本発明の防水シート構造の施工方法について説明する。
本発明の防水シート構造に係る施工方法の一例を説明するために、図6は一次覆工コンクリート1に不織布又は織布からなる一透水性シート2を展張した様子を示した概略縦断面図であり、図7は図6の状態に面ファスナー4を具備した一不透水性シート6を不織布又は織布からなる一透水性シート2に上記面ファスナー4の弾性フック部4a側を対向させて押圧し、一体化した様子を示した概略縦断面図であり、図8は図7の状態に二次覆工コンクリート7を打設した様子を示した概略縦断面図である。
【0026】
本発明の防水シート構造の施工方法は、まず図6に示すように、トンネル地山、一次覆工コンクリート1側の面に不織布又は織布からなる透水性シート2を馴染ませながらコンクリート釘等の固定部材3でアンカーリングし展張した後、図7及び図4に示すように、順次該透水性シート2に、弾性フック部4a、茎部4b、基材部4cからなる帯状の面ファスナー4を一面の長手方向に接合・具備した不透水性シート6の該弾性フック部4a側を対向させて押圧することにより、上記面ファスナー4の該弾性フック部4a部が該不織布又は織布からなる透水性シート2の図示しない繊維間隙を該繊維間隙及び/又は該繊維間隙をなす繊維群を弾性拡張させて進入し、該弾性フック部4aの下部(茎部4bの上部でもある)における該繊維群及び/又は該繊維間隙の弾性収縮によって係合係止されて、該透水性シート2と該不透水性シート6とを一体化させると共に、図5に示すように、隣接する該不透水性シート6,6の端部6a,6a同士を重ね合わせて‘重ねあわせしろ’6oを溶着機で溶接し、一次覆工コンクリート1を透水性シート2及び面ファスナー4を接合・具備した不透水性シート6で液密に展張して行き、最後に図8に示すように、該不透水性シート6の一面(面ファスナー4が接合・具備されている面の反対側の面)に二次覆工コンクリート7を打設するものである。
【0027】
このような防水シート構造の施工方法は、上述の通り、透水性シート2と不透水性シート6の接合基点が、圧倒的多数の面ファスナー4の弾性フック部4a(と透水性シート2をなす繊維群)となり、該弾性フック部4aを、該透水性シート2をなす不織布又は織布に押圧・係合させて、該透水性シート2と該不透水性シート6とを一体化させる施工方法であるため、特許文献1,2のように接合基点を可撓性や移動可能な機能を有する熱溶着ディスクとするものと異なり、透水性シート2の凹凸のある一次覆工コンクリート1へのアンカーリングの際の歪の影響は殆ど受けず、接合効率も良く、不透水性シート6の透水性シート2への接合も歪なく展張することができ、接合基点毎の接合強度ばらつきも少なく、従って相対的に接合強度の低い接合基点への応力集中による防水シートの一部剥離も起き難いものである。
【0028】
即ち、本発明の防水シート構造及びその施工方法によれば、透水性シートと不透水性シートを含む防水シートを凹凸のある一次覆工コンクリート面にも歪みなく確実な接合強度で取り付けることができ、かつ施工効率にも優れたものとすることができる。
【0029】
なお、本発明の防水シート構造及び施工方法は、特に透水性シート2と不透水性シート6とを該不透水性シート6に接合・具備した面ファスナー4により接合する構造、方法であるから、例えば図9のように透水性シート2が目付けの異なる2種類の不織布又は織布2a,2bからなる構成としても、該面ファスナー4の弾性フック部4aが係合する不織布又は織布が通例のトンネル用防水シートに用いられる不織布又は織布である以上、その特徴が損なわれることはない。
また、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差支えない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】面ファスナーを具備した一不透水性シートの一部を示した概略縦断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】不織布又は織布からなる一透水性シートの一部を示した概略縦断面図である。
【図4】面ファスナーを具備した一不透水性シートと不織布又は織布からなる一透水性シートとが一体化された様子の一部を示した概略縦断面図である。
【図5】面ファスナーを具備した2つの一不透水性シートが不織布又は織布からなる一透水性シートに一体化され、かつ隣接する該不透水性シートの端部同士を重ね合わせて溶接した様子の一部を示した概略縦断面図である。
【図6】一次覆工コンクリートに不織布又は織布からなる一透水性シートを展張した様子を示した概略縦断面図である。
【図7】図6の状態に面ファスナーを具備した一不透水性シートを不織布又は織布からなる一透水性シートに押圧し、一体化した様子を示した概略縦断面図である。
【図8】図7の状態に二次覆工コンクリートを打設した様子を示した概略縦断面図である。
【図9】不織布又は織布からなる他の透水性シートの一部を示した概略縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 一次覆工コンクリート
2 透水性シート
3 固定部材
4 面ファスナー
4a 弾性フック部
4b 茎部
4c 基材部
5 接合層
6 不透水性シート
6a 不透水性シート端部
7 二次覆工コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性シートと不透水性シートを含む防水シート構造であって、該透水性シートが不織布又は織布からなっており、該不透水性シートが一面の長手方向に弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを複数接合・具備しており、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、透水性シートと不透水性シートとが一体化されてなること特徴とする防水シート構造。
【請求項2】
上記面ファスナーの基材部と上記不透水性シートとが、ホットメルト系接着剤により接合されてなることを特徴とする請求項1記載の防水シート構造。
【請求項3】
上記面ファスナーの基材部が上記不透水性シートと熱融着可能な熱可塑性樹脂を含み、該基材部と該不透水性シートとが、該熱可塑性樹脂により接合されてなることを特徴とする請求項1記載の防水シート構造。
【請求項4】
上記面ファスナーが茸形であり、該面ファスナーの、該弾性フック部の直径,高さをそれぞれDe,He、茎部の直径,高さをそれぞれDs,Hs、該弾性フック部・茎部の基材部に対する植毛密度をBw、上記透水性シートをなす不織布又は織布の平均空隙直径,高さをそれぞれDt,Htとした時、下記式を満たすことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の防水シート構造。
0.50 ≦ De/Dt ≦ 2.67
0.13 ≦ Ds/De ≦ 0.75
0.37 ≦ Hs/Ht ≦ 1.28
250000 ≦ Bw ≦ 700000 (単位:本/m2
150 ≦ He ≦ 450 (単位:μm)
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載の防水シート構造を適用し、トンネル地山、一次覆工コンクリート側に不織布又は織布からなる透水性シートを取り付け、該透水性シートに、弾性フック部、茎部、基材部からなる帯状の面ファスナーを一面の長手方向に複数接合・具備した不透水性シートの該弾性フック側を対向させて押圧することにより、該面ファスナーの弾性フック部が該不織布又は織布の繊維及び/又は繊維間隙を弾性拡張させて進入し、該面ファスナーの弾性フック下部における該繊維及び/又は繊維間隙の弾性収縮によって係合係止され、該透水性シートと該不透水性シートとが一体化されることを特徴とする防水シートの施工方法。






【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−57220(P2008−57220A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235402(P2006−235402)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【出願人】(591029921)フジモリ産業株式会社 (65)
【Fターム(参考)】