説明

防水シート

【課題】本発明の課題は、作業性のよい防水シートを提供することにある。
【解決手段】ゴムシート2の表面に離型剤6を含浸または塗布した不織布3を貼着し、裏面には粘着剤層7を設けたことを特徴とする防水シート1を提供する。上記防水シート1にあっては、ロールに巻いても該粘着剤層7が粘着せず、また作業者が防水シート1上に乗っても滑らない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば建築物の屋根や屋上の防水に使用されている防水シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防水シートとしては、例えばエチレン−プロピレンゴムゴムシートのようなゴムシートが使用されている。該ゴムシートは床面に貼着するために、裏面に例えばブチルゴム系の粘着剤層が設けられている。
該ゴムシートは使用前はロールに巻いて運搬、保管等される。しかしこのまゝでゴムシートをロールに巻けば、外側のゴムシート裏面の粘着剤層が内側のゴムシートの表面に粘着してしまいロールからゴムシートを引出すことが困難になってしまう。該ゴムシートの間に離型シートを介在させて粘着剤層の粘着を防止することも提案されているが、離型シートは高価であり、また使用済みの離型シートの処分が問題となる(例えば特許文献1〜5参照)。
そこで該ゴムシートの表面にはシリコン系離型剤等の離型剤が塗布され、ゴムシート裏面の粘着剤層が下側のゴムシートの表面に粘着しないような対策が考えられる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−347585号公報
【特許文献2】特開2001−150598号公報
【特許文献3】特開2003−3618号公報
【特許文献4】特開平10−296915号公報
【特許文献5】特開平7−317232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ゴムシートの表面に離型剤を塗布すると、傾斜した屋根でゴムシートの貼着作業を行なうと、ゴムシートの上に乗った作業者が滑落する危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、ゴムシート2の表面に離型剤6を含浸または塗布した不織布3を貼着し、裏面には粘着剤層7を設けた防水シート1あるいはゴムシート2表面に離型剤6が塗布された熱可塑性プラスチック薄膜5を貼着した不織布3を貼着し、裏面には粘着剤層7を設けた防水シート1を提供するものである。
該不織布3表面に離型処理された熱可塑性プラスチック薄膜5が貼着されている場合には、該プラスチック薄膜5表面に、ホットエンボスによって多数の小突起5aが形成されていてもよい。該ゴムシート2はエチレン−プロピレンゴムであることが好ましく、また該不織布3は低融点繊維が混合されることによって熱接着可能にされているか、あるいは高融点成分を芯とし低融点成分を鞘とする芯鞘型複合繊維からなるか、あるいは該芯鞘型複合繊維を含んでいることが望ましい。更に該不織布3はホットメルトシート4によってゴムシート2表面に熱接着されていることが好ましい。該不織布3は例えば低融点繊維からなるかあるいは低融点繊維を含むことによって熱接着可能にされているか、あるいは高融点成分を芯とし低融点成分を鞘とする芯鞘型複合繊維からなるか、あるいは該芯鞘型複合繊維を含む熱接着性不織布4によってゴムシート2表面に熱接着されていることが望ましい。
また更に該離型剤6は架橋型シリコン離型剤または熱皮膜形成タイプのフッ素系樹脂であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
防水シート1の本体であるゴムシート2の表面に貼着されている不織布3は該ゴムシート2を補強し、伸び変形等を抑制するものであるが、該不織布3には離型剤6が含浸あるいは塗布されているか、あるいは該不織布3表面に離型剤6が塗布された熱可塑性プラスチック薄膜5が貼着されているから、該防水シート1をロールに巻いた時、外側の防水シート1の粘着剤層5が内側のシート1の不織布3に接触するが、該不織布3に含浸または塗布されている離型剤6あるいは該不織布3表面に離型剤6が塗布された熱可塑性プラスチック薄膜5によって、外側の防水シート1の粘着剤層7が内側の防水シート1の不織布3に粘着しない。該不織布3にはクッション性があり、作業者がその上に乗っても滑りにくい。また該不織布3表面に離型処理された熱可塑性プラスチック薄膜5が貼着されている場合には、該熱可塑性プラスチック薄膜5表面に、ホットエンボスによって多数の小突起5aが形成されていると、遮水性が付与され、滑り止め作用が大巾に向上する。
該ゴムシート2の材料としては、耐久性のあるエチレン−プロピレンゴムを使用することが好ましく、また該不織布3が低融点繊維が混合されることによって熱接着可能にされているかあるいは高融点成分を芯とし、低融点成分を鞘とする芯鞘型複合繊維からなるか、あるいは該芯鞘型複合繊維を含んでいると、該不織布3は接着剤なくして該ゴムシートに熱接着することが出来る。生産効率の点からみて、該不織布3はホットメルトシートまたは熱接着性の不織布4を予め裏打ちしておいて、該ホットメルトシートまたは熱接着性の不織布4を介して該不織布3を該ゴムシート2表面に熱接着する方法をとることが望ましい。該熱接着性の不織布4は低融点繊維からなるかあるいは低融点繊維を含むもの、あるいは芯鞘型複合繊維からなるかあるいは該芯鞘型複合繊維を含むものが使用されるが、芯鞘型複合繊維を使用することによって、低融点成分による熱接着性の他、高融点成分による補強効果が期待出来る。
該離型剤が架橋型シリコン離型剤または熱皮膜形成タイプのフッ素系樹脂であると、該離型剤の転移が防止される。
【0007】
〔効果〕
本発明の防水シートはロールに巻いても裏面の粘着剤層が粘着せず、シートをロールから円滑に引出すことが出来、また防水シートの上に作業者が乗っても滑りにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明を図1および図2に示す一実施例によって説明すると、防水シート1はゴムシート2と、該ゴムシート2の表面にホットメルトシート4が熱接着されている不織布3と、該ゴムシート2の裏面に形成されている粘着剤層7とからなる。
【0009】
該ゴムシート2は例えばアクリルゴム、ブチルゴム、ケイ素ゴム、ウレタンゴム、フッ化物系ゴム、多硫化物系ゴム、グラフトゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソブチレンゴム、ポリブテンゴム、イソブテン−イソプレンゴム、アクリレート−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−クロロプレンゴム、スチレン−クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水素添加ポリオレフィン−スチレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーやブタジエン−スチレンプロック共重合体、スチレン−ゴム中間ブロック−スチレン共重合体等のブロック共重合体等の合成ゴムや天然ゴム等のゴムを材料とするが、耐化学薬品性、耐候性、耐久性等の点からみて、エチレン−プロピレンゴム(EPR,EPDM)の使用が望ましい。該ゴムシート2の厚みは通常0.6〜1.0mmの範囲に設定される。
【0010】
該不織布3は例えば、ポリエステル繊維、脂肪族または芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ビニロン、レーヨン、キュプラ、アセテート繊維等の合成繊維のウェブをニードルパンチングにより絡合したニードルパンチ不織布であり、目付け20〜40g/m2のものが常用される。該合成繊維としては、耐久性、価格の面からみてポリエステル繊維の使用が望ましい。
【0011】
更に該不織布3には低融点ポリアミド繊維、低融点ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維等の低融点繊維が混合されて熱接着可能にされてもよいし、また該不織布は高融点成分を芯とし、低融点成分を鞘とする芯鞘型複合繊維によって構成されるか、あるいは該芯鞘型複合繊維を含むものであってもよい。該高融点成分としては例えば、融点200℃以上のポリアミド、ポリエステルがあり、該低融点成分としては例えば、融点180℃以下のポリアミド、ポリエステル、あるいはポリエチレン等がある。このような芯鞘型複合繊維を使用することによって、該不織布3は良好な熱接着性と強度とを有するものとなる。
【0012】
該不織布3の表面には遮水のためにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性プラスチック薄膜5が貼着されることが好ましい。該プラスチック薄膜5表面には剥離剤6が塗布されており、更にホットエンボスによって多数の小突起5aが形成されることが望ましい。該小突起5aは滑り止め効果を有する。
【0013】
該不織布3が熱接着性を有していない場合には、該不織布3の裏面には、ポリエチレンシート、ポリアミドシート等の低融点プラスチックシートであるホットメルトシート、あるいは熱接着性不織布4が裏打ちされている。
該熱接着性不織布4は、不織布3と同様な低融点繊維または芯鞘型複合繊維からなるか、あるいは該低融点繊維または芯鞘型複合繊維を含むものである。
【0014】
該不織布3は該ゴムシート2を補強して伸び変形等を抑制するものであるが、該プラスチック薄膜5を表面に貼着する代りに、該不織布3には離型剤が含浸または塗布されていてもよい。該離型剤としてはポリエチレン系、シリコン系、パラフィン系、高級脂肪酸ジルコニウム系等の通常使用されている離型剤を使用するが、転移のない架橋型離型剤が望ましい。該架橋型離型剤には例えばUV硬化型シリコン系離型剤、熱硬化型シリコン系離型剤がある。また架橋処理をしないフッ素系樹脂であっても加熱して皮膜を形成する熱皮膜形成タイプのフッ素系樹脂は望ましい離型剤である。またタルク、炭酸カルシウム、ベントナイト、シリカ微粉末等の充填剤を入れて滑り性を抑制することが望ましい。離型剤の含浸量は通常目付け20〜40g/m2の不織布に対して有効成分として1〜10g/m2程度とされる。
【0015】
該不織布3はロールに巻いておき、該ロールから該不織布3を引出し、裏面のホットメルトシートあるいは熱接着性不織布4を加熱軟化させ、該ゴムシート2の表面に圧着する。
【0016】
該粘着剤層7としては、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴム等のゴム系粘着剤、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水素添加ポリオレフィン−スチレン共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマー系粘着剤、アクリル系粘着剤等が使用される。該粘着剤は通常有機溶剤溶液、水性エマルジョンとして提供され、塗布量は通常80〜200g/m2(固形分)とされる。
【0017】
上記防水シート1はロールに巻いて運搬、保管等されるが、その時図2に示すように外側の防水シート1の粘着剤層7が内側の防水シート1の不織布3に接触する。該不織布3には該離型剤6が含浸されているので、該粘着剤層7が該不織布3に粘着することがない。また離型剤6が架橋型であると、該離型剤7が該粘着剤層5に転移することがない。
【0018】
該防水シート1はかくして粘着剤層7に干渉されることなくロールから引出され、家屋の屋根の基板や建物屋上の基礎上に貼着される。その場合、作業者が該防水シート1の上に乗っても、該防水シート1表面の不織布3のクッション性によって作業者が足を滑らせることがない。
【0019】
図3には他の実施例が示される。本実施例の防水シート11においては不織布3自体熱接着性とされ、かつ離型剤が含浸されているので、ホットメルトシートまたは熱接着性不織布4を使用することなく、直接ゴムシート2に貼着出来、また熱可塑性プラスチック薄膜5を貼着する必要がない。
【0020】
〔実施例〕
表1に示す防水シートの試験試料および比較試料を作成した。
【表1】

【0021】
上記試験試料および比較試料について下記の試験を行なった。
〔粘着性試験〕
二枚のシートを上側のシートの裏面が下側のシートの表面に接触するように重ね、10kg/m2の荷重をかけて24時間放置し、その後剥離する。
上側シートの粘着剤層が下側のシートに転移することなく円滑に剥離出来た場合をOKとする。
【0022】
〔滑り性〕
木板上にシートを載置し、該シート上に地下足袋を載置し、該地下足袋上に20kgの荷重を付加して、該木板を傾斜させ、該地下足袋が滑り始める角度θを調べた。
滑らない場合をOK、滑り始めた場合をNGとする。
【0023】
〔水もれ性〕
木板上にシートを載置し、該シート上から釘を打ちつけ、その釘を中心として、直径150mm、高さ300mmの円筒を置き、周囲から水漏れしないようにシールし、250mmの高さまで水を入れる。24時間放置し、水位の変化を観察する。水位が全く変化しない場合をOKとする。
【0024】
上記試験結果を表2に示す。
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の防水シートはロールに巻いても裏面の粘着剤層が粘着せず、離型紙を使用しないのでゴミも出ず、シートをロールから円滑に引出すことが出来、また防水シートの上に作業者が乗っても滑りにくいので、防水シートを屋根や建物屋上に貼着する作業が容易かつ安全になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1および図2は本発明の一実施例を示すものである。
【図1】側断面図
【図2】ロールに巻いた状態の説明部分側断面図
【図3】他の実施例の側断面図
【符号の説明】
【0027】
1,11 防水シート
2 ゴムシート
3 不織布
4 熱接着性不織布(ホットメルトシート)
5 熱可塑性プラスチック薄膜
5a 小突起
6 離型剤(層)
7 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムシートの表面に離型剤を含浸または塗布した不織布を貼着し、裏面には粘着剤層を設けたことを特徴とする防水シート。
【請求項2】
ゴムシート表面に離型剤が塗布された熱可塑性プラスチック薄膜を貼着した不織布を貼着し、裏面には粘着剤層を設けたことを特徴とする防水シート。
【請求項3】
該熱可塑性プラスチック薄膜表面にはホットエンボスによって多数の突起が形成されている請求項2に記載の防水シート。
【請求項4】
上記ゴムシートはエチレン−プロピレンゴムである請求項1〜3に記載の防水シート。
【請求項5】
上記不織布は低融点繊維が混合されることによって熱接着可能にされている請求項1〜4に記載の防水シート。
【請求項6】
上記不織布は高融点成分を芯とし、低融点成分を鞘とする芯鞘型複合繊維からなるか、あるいは該芯鞘型複合繊維を含んでいる請求項1〜4に記載の防水シート。
【請求項7】
上記不織布はホットメルトシートによってゴムシート表面に熱接着されている請求項1〜6に記載の防水シート。
【請求項8】
上記不織布は低融点繊維からなるかあるいは低融点繊維を含むことによって熱接着可能にされている不織布によってゴムシート表面に熱接着されている請求項1〜6に記載の防水シート。
【請求項9】
該不織布は高融点成分を芯とし、低融点成分を鞘とする芯鞘型複合繊維からなるか、あるいは該芯鞘型複合繊維を含む請求項7に記載の防水シート。
【請求項10】
該離型剤は架橋型シリコン離型剤である請求項1〜9に記載の防水シート。
【請求項11】
該離型剤は熱皮膜形成タイプのフッ素系樹脂である請求項1〜9に記載の防水シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−169716(P2006−169716A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359270(P2004−359270)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(598046963)株式会社鈴鋼製作所 (3)
【Fターム(参考)】