防水シール構造およびこのシール構造を設けた機器
【課題】筐体の反りや変形などの発生を抑制するとともに、比較的低いパッキンの圧縮力で高い防水効果が得られる防水シール構造及び機器を提供すること。
【解決手段】第1接触面1aを設けた第1部材1と、第2接触面2aを設けた第2部材2と、第1接触面1aに接触する第1弾性接触面3aおよび第2接触面2aに接触する第2弾性接触面3bを設けたパッキン部材3とを有した防水シール構造において、第1、第2部材1、2は、その間にパッキン部材3を配置して、それぞれ対向する突起部31〜34および凹み部11、12、21、22の芯部を所定距離偏芯させて対向配置するとともに、第1、第2部材1、2間を押圧してパッキン部材3の突起部31〜34又は凹み部を第1、第2部材の凹み部11、12、21、22又は突起部へ嵌め込み結合した。
【解決手段】第1接触面1aを設けた第1部材1と、第2接触面2aを設けた第2部材2と、第1接触面1aに接触する第1弾性接触面3aおよび第2接触面2aに接触する第2弾性接触面3bを設けたパッキン部材3とを有した防水シール構造において、第1、第2部材1、2は、その間にパッキン部材3を配置して、それぞれ対向する突起部31〜34および凹み部11、12、21、22の芯部を所定距離偏芯させて対向配置するとともに、第1、第2部材1、2間を押圧してパッキン部材3の突起部31〜34又は凹み部を第1、第2部材の凹み部11、12、21、22又は突起部へ嵌め込み結合した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水シール構造およびこのシール構造を設けた機器に係り、詳しくは凹凸結合により防水シールを行う防水シール構造およびこのシール構造を設けた機器に関するものである。
【0002】
電気および電子機器などは、内部に電子回路が収容されているので、筐体が防水構造となっている。
【0003】
図15を参照して、従来技術の一般的な防水シール構造を説明する。なお、図15は従来技術の防水シール構造の要部を示した断面図である。
この防水シール構造14は、上下一対の筐体15A、15Bと、これら上下筐体15A、15B間に介在させるゴム材からなるパッキン部材16と、を有し、このパッキン部材16は、上下筐体15A、15Bに対向する面にそれぞれ少なくとも2つの山部161、162、及び163、164と1つの谷部160、160とを有するものを用いて、このパッキン部材16を上下筐体15A、15B間に挟み込んで、両筐体15A、15Bに圧力を掛けることによって、シールする構造となっている。また、下記特許文献1には、結合面の周囲にV字形溝を形成した一対の上下カバーと、これらの上下カバーのV字溝に嵌る大きさの断面視で小判形のパッキンとを有し、上下カバーの各V字溝にパッキンの一部を挿入して、両カバーを押圧することによって、シールする防水用筐体構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−275281号公報(段落〔0020〕〜〔0022〕、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのシール構造は、一対の筐体間にパッキン部材を配設して、筐体で押圧することによってシールするので、筐体の反りや変形がし易くなる。また、パッキン部材の復元力により、筐体を係止するツメ部やネジ部近辺とその他の場所では、筐体の変形差が発生しパッキンの圧縮量もバラツキが生じて防水性能に影響を及ぼすことがある。さらに、防水効果を高めるには、パッキンの圧縮量を増やさなければならず、この圧縮量を増やすと、それに比例して、さらに筐体が変形しやすくなるなど課題がある。なお、上記特許文献1の防水用筐体構造も上下カバーの間に小判形のパッキンを挿入して圧縮する構造となっているので、防水効果を高めるには、パッキンの圧縮量を増大しなければならず、同様の課題が潜在している。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、筐体の反りや変形などの発生を抑制するとともに、比較的低いパッキンの押圧力で高い防水効果が得られる防水シール構造を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、上記の防水シール構造を設けた機器および筐体回転部に適用した機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の防水シール構造は、第1接触面を設けた剛性部材からなる第1部材と、第2接触面を設けた剛性部材からなる第2部材と、前記第1接触面に接触する第1弾性接触面および前記第2接触面に接触する第2弾性接触面を設けた弾性部材からなるパッキン部材とを有し、前記第1、第2部材間に前記パッキン部材を圧接接触させてシールした防水シール構造において、
前記第1接触面および前記第1弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設けて、前記第1、第2部材は、その間に前記パッキン部材を配置して、それぞれ対向する前記突起部および前記凹み部の芯部を所定距離偏芯させて対向配置するとともに、前記第1、第2部材間を押圧してパッキン部材の前記突起部又は前記凹み部を前記第1、第2部材の凹み部又は突起部へ嵌め込み結合したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水シール構造において、前記凹み部は、窪み穴又はV字型溝で形成し、前記突起部は、前記窪み穴又はV字型溝に嵌る大きさの山型突起で形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の防水シール構造において、前記突起部の頂点を通る仮想垂線と前記突起部と対向する前記凹み部の底部中心を通る仮想垂線との間の偏芯距離Lは、前記凹み部の上方開口の幅長をWとして、0<L<3/4Wの範囲内に設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の防水シール構造において、前記パッキン部材は、スライド移動しないように固定手段で固定され、
前記固定手段は、前記第1接触面および前記第1弾性接触面のいずれか一方の接触面に前記突起部より背高の突起又は前記凹み部より深い凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起又は凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起で構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の防水シール構造において、前記突起及び凹み溝は、前記突起部及び前記凹み部の両側に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の機器は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水シール構造を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、剛性部材からなる第1、第2部材は、それぞれ対向する突起部および凹み部の芯部を所定距離偏芯させて対向配置し、これらの第1、第2部材間を押圧して弾性を有する突起部又は凹み部を相手方の弾性部材で形成した凹み部又は突起部へ嵌め込み結合するので、突起部又は凹み部の弾性変形を利用して、第1、第2部材間を低い押圧力でも高い防水効果を得ることができる。したがって、部材の反りや変形等を防止し、これによるシール部材の圧縮量のばらつきを無くして安定した防水性能を実現できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、凹み部を窪み穴又はV字型溝、突起部を窪み穴又はV字型溝に嵌る大きさの山型突起又は山型畝状突起にすることにより、凹み部および突起部の形成が簡単になる。
【0016】
請求項3の発明によれば、偏芯距離Lを0<L<3/4Wの範囲内に設定することにより、第1、第2部材を押圧する力を比較的低くしても高い防水効果を得ることができるとともに、部材の反りや変形等を防止し、これによるシール部材の圧縮量のばらつきを無くして安定した防水性能を実現できる。
【0017】
請求項4及び5の発明によれば、パッキン部材はスライド移動しないように固定手段で固定されているのでパッキン部材の固定が簡単にでき、さらに高い防水効果を得ることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、第1、第2部材間においてシール部材の低い押圧力でも高い防水効果が得られるとともに、部材の反りや変形等を防止し、これによるシール部材の圧縮量のばらつきを無くして安定した防水性能を有する機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の作用原理に係る防水シール構造を示し、図1Aは一対の部材が結合される前の状態、図1Bは結合の途中状態、図1Cは結合状態をそれぞれ示した断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る防水シール構造を示し、図2Aは一対の部材が結合される前の状態、図2Bは結合の途中状態、図2Cは結合状態をそれぞれ示した断面図である。
【図3】図3は防水シール構造A−1の変形例を示す断面図である。
【図4】図4は防水シール構造A−1の変形例を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例2に係る防水シール構造を示し、図5Aは一対の部材が結合される前の状態、図5Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
【図6】図6は防水シール構造Bの変形例を示す断面図である。
【図7】図7は防水シール構造Bの変形例を示す断面図である。
【図8】図8は本発明の実施例3に係る防水シール構造を示し、図8Aは一対の部材が結合される前の状態および図8Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
【図9】図9は防水シール構造Cの変形例を示す断面図である。
【図10】図10は防水シール構造Cの変形例を示す断面図である。
【図11】図11A〜図11Cは参考例に係る小型機器の可動状態を示す外観斜視図である。
【図12】図12は図11の分解斜視図である。
【図13】図13は図12の一部部品の拡大図である。
【図14】図14Aは図11AのXIV−XIV線での断面図、図14Bは図14AのXIV部の拡大断面図である。
【図15】図15は従来技術の防水シール構造の要部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための防水シール構造およびこの防水シール構造を設けた機器を例示するものであって、本発明をこの防水シール構造およびこの防水シール構造を設けた機器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0021】
まず、図1を参照して、本発明の防水シール構造の作用原理を説明する。なお、図1は本発明の作用原理に係る防水シール構造の要部を示し、図1Aは一対の部材が結合される前の状態、図1Bは結合の途中状態、図1Cは結合状態を示した断面図である。
このシール構造Aは、筐体を構成する第1部材Iと、パッキンを構成する第2部材IIとを有している。これらの部材のうち、第1部材Iは、比較的硬い部材、例えば合成樹脂材で形成され、第2部材IIは弾性を有する部材、例えばゴム又はシリコン樹脂で形成されている。第1部材Iは、第2部材IIと対向する面Iaに断面視で山型の突起部Tが設けられている。この突起部Tは、対向面Iaから所定高さh突出し、基部の幅長はW1となっている。この突起部Tは、また、その頂点aを通り対向面Iaに略直角に立設する第1仮想垂線L1を境にして、その左右に左側から上昇した左上り傾斜面TLおよび右側からの右上り傾斜面TRを有するものとなっている。
【0022】
第2部材IIは、第1部材Iと対向する面IIaに突起部Tへ嵌り入り込む大きさの断面視で凹状の凹み部Mが形成されている。この凹み部Mは、上方の開口幅長はW2、深さdとなっている。この凹み部Mは、最底点又は底部の中心部bを通り対向面IIaに対して略垂直に伸びる第2仮想垂線L2を境にして、図1Aの左右に左側から下った左下り傾斜面MLおよび右側からの右下り傾斜面MRを有している。第1、第2部材I、IIの幅長W1および高さhと開口幅長はW2および深さdとの関係は、幅長W1と開口幅長W2とが略同じ長さを有し、高さhと深さdとが略同じ長さになっている。また、左右の上り傾斜面TL、TRと左右の下り傾斜面ML、MRとの角度は略同じになっている。
【0023】
第1、第2部材I、IIは、第2部材IIの凹み部Mが第1部材Iの突起部Tへ滑り込むようにして結合される。この滑り込み結合は、第1仮想垂線L1と第2仮想垂線L2間の距離(いわゆる、ピッチ)をLとすると、このピッチLは、0<L<3/4W1の範囲に設定されている。また、この範囲は、1/4W1≦L≦1/2W1が好ましい。なお、このLは、偏芯距離となっている。
【0024】
図1Aは、第1、第2部材I、IIのピッチLは、半ピッチ、すなわち幅長W1の2分の1ピッチずれた状態となっている。この状態で、第2部材IIの水平方向の両端を固定しておき、第1部材Iを上方から第2部材IIへ押し当てると、まず、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが第1部材Iの左側の左上り傾斜面TLへ当接する。次いで、さらに第1部材Iが押込まれると、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが左上り傾斜面TLに沿って弾性変形しながら滑り込む(図1B参照)。この滑り込み移動によって、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが第1部材Iの左側の左上り傾斜面TLへ嵌り込む(図1C参照)。すなわち、図1B、図1Cに示すように、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが第1部材Iの左側の左上り傾斜面TLへ強制的に引き付けられて、凹み部Mが突起部T内へ嵌り込む。この滑り込み移動は、第2部材II全体が図1Bの左側へスライドされるのでなく、第2部材IIの凹み部M部分が弾性変形して、この凹み部Mが突起部Tへ嵌り込む。換言すれば、突起部Tが凹み部Mを引寄せて、この突起部Tが凹み部Mへ嵌り込む。このために、第2部材IIは、水平方向へスライド移動しないように不図示の固定手段で固定されている。なお、固定手段は、例えば図14Bに示すような手段によって固定される。なお、図14Bの固定手段は後述する。
この防水シール構造Aによると、第2部材IIの凹み部Mが弾性変形して第1部材Iの突起部Tへ嵌り込む。そして、この凹み部Mが突起部Tに嵌り込むと、凹み部Mが弾性変形した分、元へ戻ろうとする反力が凹み部Mに働き、結果として凹み部Mが突起部Tの傾斜面への反力となって強く接触される。この接触によって、第1、第2部材I、II間が緊密にシールされて、この部分からの水の浸入が阻止される。第1、第2部材I、II間の接触力は、従来技術のように押圧力に依存するのでなく、嵌め込まれた凹み部Mと突起部T間の復元力を利用するので、第1、第2部材I、IIを押圧する力が低くとも高いシール性能が得られる。
【0025】
この防水シール構造Aは、第1部材Iを筐体、第2部材IIをパッキンで構成したが、逆にして、第1部材Iをパッキン、第2部材IIを筐体にしてもよい。また、第1部材Iに突起部T、第2部材IIに凹み部Mを設けたが、逆にして、第1部材Iに凹部M、第2部材IIに突起部Tを設けてもよい。例えば、第1部材Iをパッキンに第2部材IIを筐体にして、第1部材Iに凹み部M、第2部材IIに突起部Tを設けると、両部材の結合時には、突起部Tが弾性変形、例えば捩れた状態で凹み部Mに嵌り込む。この状態によっても、防水シール効果が得られる。この場合は、弾性を有する第2部材II自体がスライド移動しないように、固定手段で固定される。また、凹み部Mは、所定形状の窪み穴或いは溝(例えばV字状溝)、一方、突起部Tはこの穴に嵌り込む突起或いは溝に入り込む所定の幅長を有する畝状の突起でもよい。例えば、所定長さの溝とこの溝に嵌り込む所定長さの突起にすると、これらの間で相対的な移動が可能になり、移動部材間でも防水シールすることが可能になる。
【0026】
以下、この作用原理を適用した本発明の実施例及び参考例を説明する。
【0027】
[実施例1]
図2を参照して、本発明の実施例1に係る防水シール構造を説明する。なお、図2は本発明の実施例1に係る防水シール構造を示し、図2Aは一対の部材が結合される前の状態、図2Bは結合の途中状態および図2Cは結合状態をそれぞれ示した断面図である。
【0028】
防水シール構造A−1は、筐体を構成する一対の第1、第2部材1、2と、パッキンを構成するパッキン部材3とを有し、第1、第2部材1、2に複数個の凹み部、一方パッキン部材3にこれらの凹み部へ嵌り込む突起部をそれぞれ設けた構造となっている。具体的には、防水シール構造A−1は、一対の第1、第2部材1、2と、これらの部材間に介在されるパッキン部材3とを有し、第1、第2部材1、2は、パッキン部材3と対向する面1aおよび2aに、それぞれ2個の凹み部11、12および21、22を設け、また、パッキン部材3は、これらの凹み部11、12および21、22に嵌り込む4個の突起31〜34を設けて、上記の防水シール構造Aの作用原理で結合される。以下、個々の部材を説明する。
【0029】
第1部材1は、パッキン部材3との対向面1aに所定の間隔をあけて2個の凹み部11、12を設けた所定の厚さで比較的硬い板状体からなり、樹脂成型体で形成されている。第2部材2も、同じ材料で形成されている。すなわち、対向面2aにも2個の凹み部21、22が形成されている。パッキン部材3は、第1、第2部材1、2のそれぞれの凹み部11、12および21、22に対応する箇所に4個の突起部31〜34を設けて、弾性を有する材料、例えばゴム或いはシリコン樹脂で形成されている。第1、第2部材1、2の4個の凹み部11、12および21、22とパッキン部材3の4個の突起部31〜34との関係で各突起部と凹み部との間の偏芯距離Lは、上記図1の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。
【0030】
これらの部材を用いた結合は、まず、第1、第2部材1、2間に、パッキン部材3を配設する(図2A参照)。次いで、第1、第2部材1、2に所定の押圧力を掛けてパッキン部材3へ押付ける。この押付けにより、パッキン部材3のそれぞれの突起部31〜34が強制的に弾性変形されて、第1、第2部材1、2のそれぞれの凹み部11、12および21、22へ嵌り込む(図2B、図2C参照)。例えば、パッキン部材3の突起部31と第1部材1の凹み部11とは、上記防水シール構造Aと同じ方法で嵌り込む。また、突起部32と凹み部12との嵌り込みも同じ方法で結合される。さらに他の突起部33、34および凹み部21、22も方向が異なるのみで同様の方法で結合される。その結果、結合が完了した状態では、図2Cに示すように、パッキン部材3の4個の突起部31〜34が第1、第2部材1、2の4個の凹み部11、12および21、22に矢印で示した方向の反力を受けた状態で嵌り込み、この反力で弾性接触して、第1、第2部材1、2とパッキン部材3とが防水シールされる。
【0031】
この防水シール構造A−1は、第1、第2部材1、2およびパッキン部材3の凹み部および突起部は2個および4個にしたが、この個数はさらに多くしてもよい。また、第1、第2部材とパッキン部材1、2とは、パッキン部材3がスライド移動しないように、例えば図14Bに示すような固定手段によって固定される。なお、図14Bの固定手段は後述する。
【0032】
この防水シール構造A−1は、図2に示すように、パッキン部材3の4個の突起部31〜34のうち、2個の突起31、32を第1部材1の各凹み部11、12の右側寄りに、一方、他方の2個の突起33、34を第2部材2の各凹み部21、22の左側寄りに位置させたが、これらの位置は任意に変更してもよい。以下に、この位置を変更した防水シール構造A−1の変形例を図3、図4を参照して説明する。なお、図3、図4は防水シール構造A−1の変形例を示した断面図である。以下の変形例は、防水シール構造A−1と突起部および凹み部の位置が異なり、他の構成は同じになっているので、共通する構成要素には同じ符号を付して説明を援用することとして、異なる構成について説明する。
【0033】
変形例に係る防水シール構造A−2は、図3Aに示すように、第2部材2とパッキン部材3との関係において、各凹み部21、22と各突起部33、34の位置が防水シール構造A−1のものと異なっている。以下、同様にして、防水シール構造A−3は、第1部材1の各凹み部11とパッキン部材3の各突起部31の位置および第2部材2の各凹み部22とパッキン部材3の各突起部34の位置(図3B参照)、防水シール構造A−4は第1部材1の凹み部11とパッキン部材3の突起部31および第2部材2の凹み部21とパッキン部材3の突起部33の位置(図4A参照)、さらに防水シール構造A−5は第1部材1の凹み部12とパッキン部材3の突起部32および第2部材2の凹み部21とパッキン部材3の突起部33の位置(図4B参照)がそれぞれ異なっている。
【0034】
これらの防水シール構造A−1〜A−5は、それぞれの第1、第2部材1、2の4個の凹み部11、12および21、22とパッキン部材3の4個の突起部31〜34との関係で各突起部と凹み部間の偏芯距離Lは、上記図1の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、これらの防水シール構造A−1〜A−5は、第1、第2部材の凹み部とパッキン部材の突起部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0035】
[実施例2]
図5を参照して、本発明の実施例2に係る防水シール構造を説明する。なお、図5は本発明の実施例2に係る防水シール構造を示し、図5Aは部材が結合される前の状態および図5Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
【0036】
この防水シール構造Bは、一対の第1、第2部材1B,2Bと、パッキン部材3Bとを有し、第1、第2部材1B,2Bに複数個の突起部、パッキン部材3Bにこれらの突起部が嵌り込まれる複数個の凹み部を設けた構造となっている。具体的には、防水シール構造Bは、一対の第1、第2部材1B、2Bと、これらの部材間に介在されるパッキン部材3Bと、を有し、第1、第2部材1B、2Bは、パッキン部材3Bと対向する面にそれぞれ2個の突起部111、112および211、222を設け、また、パッキン部材3Bには、これらの第1、第2部材1B、2Bのそれぞれの突起部111、112および211、222を滑り込ませる4個の凹み部311〜314を設けた構成となっている。
【0037】
この防水シール構造Bは、パッキン部材3Bの各凹み部311〜314が第1、第2部材1B、2Bの各突起部111、112および211、222にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、第1、第2部材1B、2Bの4個の突起部111、112および211、222とパッキン部材3の4個の凹み部311〜314との関係で各突起部と凹み部間の偏芯距離Lは、上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、この防水シール構造Bは、第1、第2部材の突起部とパッキン部材の凹み部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0038】
この防水シール構造Bは、図5に示すように所定の位置にそれぞれ突起部および凹み部を配設したが、この位置は任意に変更してもよい。以下に、この位置を変更した防水シール構造Bの変形例を説明する。なお、図6、図7は防水シール構造Bの変形例を示す断面図である。
【0039】
変形例に係る防水シール構造B−1は、図6Aに示すように、第1部材1Bの突起部111とパッキン部材3Bの凹み部311および第2部材2の突起部211とパッキン部材3の凹み313との関係で、突起部111と凹み部311および突起部211と凹み部313の位置が防水シール構造Bのものと異なっている。以下、同様にして、防水シール構造B−2は第2部材2Bの突起部211、222とパッキン部材3Bの凹み部313、314の位置(図6B)、防水シール構造B−3は、第1部材1Bの突起部112とパッキン部材3Bの凹み部312および第2部材2Bの突起部222とパッキン部材3Bの凹み部314の位置(図7)が異なっている。
【0040】
これらの防水シール構造BおよびB−1〜B−3は、パッキン部材3Bの各凹み部311〜314が第1、第2部材1B、2Bの各突起部111、112および211、222にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、第1、第2部材1B、2Bの4個の突起部111、112および211、222とパッキン部材3Bの4個の突起部311〜314間の関係で各突起部と凹み部との間の偏芯距離Lは、上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、この防水シール構造BおよびB−1〜B−3は、第1、第2部材の突起部とパッキン部材の凹み部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0041】
[実施例3]
図8を参照して、本発明の実施例3に係る防水シール構造を説明する。なお、図8は本発明の実施例3に係る防水シール構造を示し、図8Aは一対の部材が結合される前の状態および図8Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
この防水シール構造Cは、一対の第1、第2部材1C,2Cとパッキン部材3Cとを有し、第1部材1Cに複数個の凹み部、第2部材2Cに複数個の突起部、パッキン部材3Cに第1部材1Cの各凹み部が嵌り込む突起部および第2部材2Cの各突起へ嵌り込む凹み部を設けた構成を有している。具体的には、防水シール構造Cは、一対の第1、第2部材1C、2Cと、これらの部材間に介在されるパッキン部材3Cと、を有している。第1部材1Cには、パッキン部材3Cと対向する面にそれぞれ2個の凹み部131、132を設け、第2部材2Cには、パッキン部材3Cと対向する面にそれぞれ2個の突起部231、232を設け、パッキン部材3Cには、第1、第2部材1C、2Cと対向する面にそれぞれ2個の突起部331、332および凹み部333、334を設けた構成となっている。
【0042】
この防水シール構造Cは、パッキン部材3Cの各突起部331、332および各凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの各凹み部131、132および突起部231、232にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、パッキン部材3Cの2個の突起部331、332および2個の凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの2個の凹み部131、132および2個の突起部231、232との関係で各突起部と凹み部間の偏芯距離Lは上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、この防水シール構造Cは、第1部材1Cの凹み部131、132、第2部材の突起部231、232とパッキン部材3Cの突起部および凹み部331〜334とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0043】
この防水シール構造Cでは、図8に示す位置に、突起部および凹み部を配設したが、この位置は任意に変更してもよい。以下に、この位置を変更した防水シール構造Cの変形例を説明する。なお、図9、図10は防水シール構造Cの変形例を示す断面図である。
【0044】
図9Aの防水シール構造C−1は、第1部材1Cの凹み部131および第2部材2Cの突起部231とパッキン部材3Cの突起部331および凹み部333の位置が防水シール構造Cのものと異なっている。以下、同様にして、防水シール構造C−2は第2部材2Cの各突起部231、232とパッキン部材3Cの各凹み部333、334との位置(図9B)、防水シール構造C−3は第1部材1Cの凹み部132第2部材2Cの突起部232とパッキン部材3の突起部332および凹み部334との位置(図10)が異なっている。
【0045】
これらの防水シール構造CおよびC−1〜C−3は、パッキン部材3Cの各突起部331、332および凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの各凹み部131、132および突起部231、232にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、パッキン部材3Cの2個の突起部331、332および凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの各凹み部131、132および突起部231、232との関係で各偏芯距離Lは上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、これらの防水シール構造は、第1、第2部材の凹み部とパッキン部材の突起部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0046】
[参考例]
上記防水シール構造は、携帯電話機などの各種電子機器およびその他の小型機器に使用することができる。以下、図11〜図14を参照して、小型機器に使用した例を説明する。なお、図11A〜図11Cは小型機器の可動状態を示す外観斜視図、図12は図11の小型機器の分解斜視図、図13は図12の一部部品の拡大図、図14Aは図11AのXIV−XIV線での断面図、図14Bは図14AのXIVB部の拡大断面図である。
【0047】
小型機器4は、図11A〜図11C、図12に示すように、上下に配設する一対の第1、第2カバー部材5A、5Bと、これらのカバー部材5A、5B間に介在されるシールユニット6とを有している。シールユニット6は、内部に貫通孔50を有し連結部で連結された一対のドーナツ型の第1、第2環状パッキン7A、7Bからなるパッキン部材7と、これらの第1、第2環状パッキン7A、7Bを支持する一対の第1、第2支持部材8A、8Bからなる支持部材8とで構成して、前記第1、第2環状パッキン7A、7Bは、図13に示すように、それぞれの環状パッキン7A、7Bの表裏面、すなわち第1環状パッキン7Aの第1表面7A1および第1裏面7A2並びに第2環状パッキン7Bの第2表面7B1(なお、この第2表面7B1は、図13では底部になっているが、パッキン部材7全体からみると第1環状パッキン7Aの第1表面7A1と対応しているので、この面を第2表面7B1とする)および第2裏面7B2に、それぞれ4本のリング状突起71〜74が連結部7Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されている。また、前記第1、第2支持部材8A、8Bは、それぞれの表面8A'、8B'に、前記第1裏面7A2および第2裏面7B2に設けたそれぞれのリング状突起71〜74が嵌り込む4本のリング状凹み溝81〜84が貫通孔80を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されている。
さらに、前記第1、第2カバー部材5A、5Bは、それぞれの一面5a、5aに前記第1表面7A1および第2表面7B1に設けたそれぞれのリング状突起部71〜74が嵌り込むリング状凹み溝51〜54(図12参照)が設けられている。
【0048】
そして、これらの部材を用いた結合は、先ず、上記の上下一対の第1、第2カバー部材5A、5Bの間にパッキン部材7および支持部材8を介在させる。そのとき、それぞれ対向する前記リング状突起および前記リング凹み溝の芯を偏芯させて対向配置して、前記第1、第2カバー部材5A、5Bを用いて前記支持部材8で支持した前記パッキン部材7を押圧して弾性を有する各リング状突起71〜74を各リング状凹み溝51〜54および81〜84へ嵌め込んで結合する。対向するリング状突起とリング状凹み溝との偏芯は、上記防水シール構造の突起と凹み部との関係で設定した範囲に偏芯させる。すなわち、この偏芯距離は、上記の防水シール構造Aの偏芯距離Lの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。
【0049】
この嵌め込み結合により、一対の上下第1、第2カバー部材5A、5B、シールユニット6に設けた4個のリング状突起およびリング状凹み溝は、連結部7Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されているので、一対の上下カバー部材5A、5Bは、シールユニット6を中心にして、図12に示すように、防水シールした状態で360度回転可能になる。なお、図11Bは、上カバー部材を90度および図11Cは上カバー部材を180度回転させた状態を示している。なお、この小型機器5は、例えば携帯電話機に適用できる。
【0050】
この小型機器4は、リング状突起およびリング状凹み溝の本数を4本にしたが、この数に限定されるものでない。また、3本以上にしたときは、同芯円状に配設するリング状突起および凹み溝のうち、最内側と最外側のリング状突起およびリング状凹み溝は、それらの間のものと形状を変更してスライド移動を阻止する固定部になるように形成するのが好ましい。例えば、リング状突起を高くするとともにリング状凹み溝を深くする。また、間のリング突起およびリング凹み溝は、逆にして、カバー部材および支持部材にリング状突起を設け、カバー部材にリング状凹み溝を設けてもよい。
【0051】
以下、個々の部材を説明する。
まず、図12を参照して、一対の上下カバー部材5A、5Bを説明する。これらのカバー部材5A、5Bは、同じ構造を有しており、組立て時に上カバー部材5Aは下カバー部材5Bに対して表裏逆にして結合される。そこで、一方のカバー部材5Bを他方のカバー部材5Aを参照しながら説明する。
【0052】
このカバー部材5Bは、図12に示すように、一対の対向する短辺および長辺を有する矩形状の底板部5a'(同図カバー部材5A参照)と、この底板部5a'の周囲から所定長さ立設した背低の側板部5bとを有する浅底の皿状体からなり、樹脂又は金属材からなる成型体で形成されている。
【0053】
カバー部材5Bの底板部5a'の裏面5a(この面は、カバー部材5Bでは表面となっている)には、一方の短辺に近い箇所に支持部材8が装着される大きさの略円形状の凹み穴5cが形成されている。凹み穴5cは、支持部材8が収容される径および深さを有し、底板部5a'の中心に貫通孔50を設けるとともに、この貫通孔50の周囲に4本のリング状凹み溝51〜54が所定の間隔をあけて同芯円状に形成されている。これら4本のリング状凹み溝51〜54のうち、最内側および最外側のリング状凹み溝51、54は、図14に示すように、比較的深い溝で形成されて、これらのリング状凹み溝は、環状パッキンのスライド移動を阻止する固定手段の機能を果たすものとなっている。また、間の2本のリング状凹み溝52、53は、浅いリング状凹み溝で形成し、これらのリング状凹み溝は上記防水シール構造Aの凹み部Mの機能を果たすものとなっている(図1A〜図1C参照)。また、凹み穴5cの側壁には、一対の支持部材8A、8Bに係合して、固定する複数個の固定突起5c'が形成されている。
【0054】
次に、図13を参照して、シールユニットを説明する。このシールユニット6は、パッキン部材7と、このパッキン部材7を表裏から支持する支持部材8とで構成されている。
パッキン部材7は、図13に示すように、所定の肉厚を有し中心部に所定大きさの穴を設けたドーナツ型の一対の第1、第2環状パッキン7A、7Bと、これらの環状パッキン7A、7Bを中心の貫通穴70で連結する筒状の連結部7Cとを有し、弾性材料、例えばゴム又はシリコン樹脂などで一体成型により形成される。
【0055】
一対の第1、第2環状パッキン7A、7Bは、それぞれ所定の肉厚を有して、それぞれの表裏面にそれぞれ4個のリング状突起が形成されている。すなわち第1環状パッキン7Aの第1表面7A1および第1裏面7A2並びに第2環状パッキン7Bの第2表面7B1(なお、この第2表面7B1は、図13では底部になっているが、パッキン部材7全体からみると第1環状パッキン7Aの第1表面7A1としているので、この面を第2表面7B1とする)および第2裏面7B2、にそれぞれ4個のリング状突起71〜74が連結部Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されている。これらのリング状突起71〜74のうち、最内側および最外側のリング状突起71、74は、図14Bに示すように、比較的に高い突起で形成し、間の2本のリング状突起72、73は、背低に形成して、このリング状突起72、73は上記防水シール構造Aの突起部Tの機能を果たすものとなっている。また、両端の高いリング状突起71、74は、パッキン部材7の移動を阻止する固定部となっている。
連結部7Cは、伸縮自在な一蛇腹状筒状体で形成されている。連結部7Cをこのような筒状体にすることにより、この連結部に連結された一対の環状パッキン7A、7B間の長さの伸縮が可能になり、支持部材8への装着が簡単になる。
【0056】
一対の支持部材8A、8Bは、一対の第1、第2環状パッキン7A、7Bを上下から支持するとともに、上記防水シール構造Aの凹み部Mの機能並びに上下カバー部材を固定する部材となっており、両支持部材8A、8Bは互いに圧入により結合される。そこで、説明の都合上一方の支持部材8Bを他方の支持部材8Aを参照しながら支持部材8を説明する。
【0057】
この支持部材8Bは、図13に示すように、中心部にパッキン部材7を挿通することができる大きさの貫通孔80と、この貫通孔80の周辺にそれぞれ径が異なり所定肉厚の3個の環状部8a、8b、8cとを有し、蓋状体からなり、樹脂成型体で形成されている。
3個の環状部8a、8b、8cは、大径環状部8a、中径環状部8bおよび小径環状部8cからなり、大径環状部8aは、中径環状部8bから外方へ所定長さの鍔状をなしフランジ部となっている。そして、この支持部材8Bは、その大径環状部8a面から中径環状部8bへ向かって、第1環状パッキン7Bが収容される径および深さを有する凹み穴8dが形成されている。貫通孔80は、凹み穴8dの底部中心に位置している。この凹み穴8dは、その底部の貫通孔80の周囲に4本のリング状凹み溝81〜84が所定の間隔をあけて同芯円状に形成されている。これらのリング状凹み溝81〜84へは、リング状突起71〜74が嵌め込まれる。すなわち、これら4本のリング状凹み溝81〜84のうち、最内側および最外側のリング状凹み溝81、84は、図14Bに示すように、比較的深い溝で形成されて、これらのリング状溝は、環状パッキンのスライド移動を阻止する固定手段の機能を果たすものとなっている。また、間の2本のリング状凹み溝82、83は、浅いリング状凹み溝で形成し、これらのリング状凹み溝は上記防水シール構造Aの凹み部Mの機能を果たすものとなっている(図1A〜図1C参照)。大径環状部(フランジ部)8aの外周囲には、カバー部材の固定突起5c'が係合される複数個の切欠き8a'が形成されている。さらに、小径環状部8cには、相手方の支持部材8Bと係合される複数個の係止部8c'が形成されている。なお、他の支持部材8Aには、支持部材8Bと圧入により結合するための不図示の係止部が中径環状部8b'の内側に形成されている。
【0058】
化粧プレート9A、9Bは、上下カバー部材5A、5Bの底板部5a'と対向させて配設するもので、上下カバー部材5A、5Bの穴に対応する箇所にリード線を挿通する穴90、90が形成されている。
【0059】
図14A、図14Bを参照してこのように構成した上下カバー部材およびシールユニットの組立手順を説明する。
まず、シールユニット6を組立てる。この組立ては、一対の環状パッキン7A、7Bをその弾性力を利用して、丸めて各支持部材8A、8Bの貫通穴80、80内を通して装着して、各環状パッキン7A、7Bの裏面に設けた4本のリング状突起71〜74を支持部材の4本のリング状凹み溝81〜84に挿入する。すなわち、各環状パッキン7A、7Bのそれぞれのリング状突起71〜74を各支持部材8A、8Bの各リング状凹み溝81〜84へ押し込む。この押し込みで、最内側および最外側の背高のリング状突起71、74は、対応する最内側および最外側の深いリング状凹み溝81、84へ入り込み、間の2本のリング状突起72、73とリング状凹み溝82、83とは、上記防水シール構造Aと同じ方法で押し込まれる。
【0060】
次いで、上下カバー部材5A、5Bの固定突起5c'を各支持部材8A、8Bの係合切欠き8a'に挿入して、所定角度回転させて固定し、これらのカバー部材5A、5Bに化粧プレート9A、9Bを装着して、組立てを完了する。この組立て体には、パッキン部材7の貫通孔70にリード線10を挿通して、リード線10の端部に設けたコネクタ11を各化粧プレート9A、9Bに固定する。
【0061】
この構成の小型機器によれば、一対の上下第1、第2カバー部材5A、5B、シールユニット6に設けた4個のリング状突起およびリング状凹み溝は、連結部7Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されているので、一対の上下カバー部材5A、5Bは、シールユニット6を中心にして、図12に示すように、防水シールした状態で所定角度回転可能になる。
【0062】
この小型機器4は、一対の環状パッキンおよび支持部材を用いて、上下カバー部材を互いに回転できるようにしたが、環状パッキンを1つにして、一方のカバー部材のみを回転できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
I、1:第1部材
11、12、131、132、333、334:凹み部
111、112、211、222、231、232、31、32、33、34、331、332:突起部
II、2:第2部材
3、3A、3B、3C:パッキン部材
4:小型機器
5A:第1カバー部材(第1筐体)
5B:第2カバー部材(第2筐体)
51、52、53、54:リング状凹み溝
6:シールユニット
7:パッキン部材
71、72、73、74:リング状突起
7A:第1環状パッキン
7B:第2環状パッキン
7A1:第1表面
7A2:第1裏面
7B1:第2表面
7B2:第2裏面
8:支持部材
81、82、83、84:リング状凹み溝
8A:第1支持部材
8B:第2支持部材
9A、9B:化粧プレート
10:リード線
11:コネクタ
A、A−1〜A−5、B、B−1〜B−3、C、C−1〜C−3:防水シール構造
L:偏芯距離
L1:第1仮想垂線
L2:第2仮想垂線
【技術分野】
【0001】
この発明は、防水シール構造およびこのシール構造を設けた機器に係り、詳しくは凹凸結合により防水シールを行う防水シール構造およびこのシール構造を設けた機器に関するものである。
【0002】
電気および電子機器などは、内部に電子回路が収容されているので、筐体が防水構造となっている。
【0003】
図15を参照して、従来技術の一般的な防水シール構造を説明する。なお、図15は従来技術の防水シール構造の要部を示した断面図である。
この防水シール構造14は、上下一対の筐体15A、15Bと、これら上下筐体15A、15B間に介在させるゴム材からなるパッキン部材16と、を有し、このパッキン部材16は、上下筐体15A、15Bに対向する面にそれぞれ少なくとも2つの山部161、162、及び163、164と1つの谷部160、160とを有するものを用いて、このパッキン部材16を上下筐体15A、15B間に挟み込んで、両筐体15A、15Bに圧力を掛けることによって、シールする構造となっている。また、下記特許文献1には、結合面の周囲にV字形溝を形成した一対の上下カバーと、これらの上下カバーのV字溝に嵌る大きさの断面視で小判形のパッキンとを有し、上下カバーの各V字溝にパッキンの一部を挿入して、両カバーを押圧することによって、シールする防水用筐体構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−275281号公報(段落〔0020〕〜〔0022〕、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのシール構造は、一対の筐体間にパッキン部材を配設して、筐体で押圧することによってシールするので、筐体の反りや変形がし易くなる。また、パッキン部材の復元力により、筐体を係止するツメ部やネジ部近辺とその他の場所では、筐体の変形差が発生しパッキンの圧縮量もバラツキが生じて防水性能に影響を及ぼすことがある。さらに、防水効果を高めるには、パッキンの圧縮量を増やさなければならず、この圧縮量を増やすと、それに比例して、さらに筐体が変形しやすくなるなど課題がある。なお、上記特許文献1の防水用筐体構造も上下カバーの間に小判形のパッキンを挿入して圧縮する構造となっているので、防水効果を高めるには、パッキンの圧縮量を増大しなければならず、同様の課題が潜在している。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、筐体の反りや変形などの発生を抑制するとともに、比較的低いパッキンの押圧力で高い防水効果が得られる防水シール構造を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、上記の防水シール構造を設けた機器および筐体回転部に適用した機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の防水シール構造は、第1接触面を設けた剛性部材からなる第1部材と、第2接触面を設けた剛性部材からなる第2部材と、前記第1接触面に接触する第1弾性接触面および前記第2接触面に接触する第2弾性接触面を設けた弾性部材からなるパッキン部材とを有し、前記第1、第2部材間に前記パッキン部材を圧接接触させてシールした防水シール構造において、
前記第1接触面および前記第1弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設けて、前記第1、第2部材は、その間に前記パッキン部材を配置して、それぞれ対向する前記突起部および前記凹み部の芯部を所定距離偏芯させて対向配置するとともに、前記第1、第2部材間を押圧してパッキン部材の前記突起部又は前記凹み部を前記第1、第2部材の凹み部又は突起部へ嵌め込み結合したことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水シール構造において、前記凹み部は、窪み穴又はV字型溝で形成し、前記突起部は、前記窪み穴又はV字型溝に嵌る大きさの山型突起で形成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の防水シール構造において、前記突起部の頂点を通る仮想垂線と前記突起部と対向する前記凹み部の底部中心を通る仮想垂線との間の偏芯距離Lは、前記凹み部の上方開口の幅長をWとして、0<L<3/4Wの範囲内に設定したことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の防水シール構造において、前記パッキン部材は、スライド移動しないように固定手段で固定され、
前記固定手段は、前記第1接触面および前記第1弾性接触面のいずれか一方の接触面に前記突起部より背高の突起又は前記凹み部より深い凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起又は凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起で構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の防水シール構造において、前記突起及び凹み溝は、前記突起部及び前記凹み部の両側に設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の機器は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水シール構造を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、上記構成を備えることにより、以下の優れた効果を奏する。すなわち、請求項1の発明によれば、剛性部材からなる第1、第2部材は、それぞれ対向する突起部および凹み部の芯部を所定距離偏芯させて対向配置し、これらの第1、第2部材間を押圧して弾性を有する突起部又は凹み部を相手方の弾性部材で形成した凹み部又は突起部へ嵌め込み結合するので、突起部又は凹み部の弾性変形を利用して、第1、第2部材間を低い押圧力でも高い防水効果を得ることができる。したがって、部材の反りや変形等を防止し、これによるシール部材の圧縮量のばらつきを無くして安定した防水性能を実現できる。
【0015】
請求項2の発明によれば、凹み部を窪み穴又はV字型溝、突起部を窪み穴又はV字型溝に嵌る大きさの山型突起又は山型畝状突起にすることにより、凹み部および突起部の形成が簡単になる。
【0016】
請求項3の発明によれば、偏芯距離Lを0<L<3/4Wの範囲内に設定することにより、第1、第2部材を押圧する力を比較的低くしても高い防水効果を得ることができるとともに、部材の反りや変形等を防止し、これによるシール部材の圧縮量のばらつきを無くして安定した防水性能を実現できる。
【0017】
請求項4及び5の発明によれば、パッキン部材はスライド移動しないように固定手段で固定されているのでパッキン部材の固定が簡単にでき、さらに高い防水効果を得ることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、第1、第2部材間においてシール部材の低い押圧力でも高い防水効果が得られるとともに、部材の反りや変形等を防止し、これによるシール部材の圧縮量のばらつきを無くして安定した防水性能を有する機器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は本発明の作用原理に係る防水シール構造を示し、図1Aは一対の部材が結合される前の状態、図1Bは結合の途中状態、図1Cは結合状態をそれぞれ示した断面図である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係る防水シール構造を示し、図2Aは一対の部材が結合される前の状態、図2Bは結合の途中状態、図2Cは結合状態をそれぞれ示した断面図である。
【図3】図3は防水シール構造A−1の変形例を示す断面図である。
【図4】図4は防水シール構造A−1の変形例を示す断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例2に係る防水シール構造を示し、図5Aは一対の部材が結合される前の状態、図5Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
【図6】図6は防水シール構造Bの変形例を示す断面図である。
【図7】図7は防水シール構造Bの変形例を示す断面図である。
【図8】図8は本発明の実施例3に係る防水シール構造を示し、図8Aは一対の部材が結合される前の状態および図8Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
【図9】図9は防水シール構造Cの変形例を示す断面図である。
【図10】図10は防水シール構造Cの変形例を示す断面図である。
【図11】図11A〜図11Cは参考例に係る小型機器の可動状態を示す外観斜視図である。
【図12】図12は図11の分解斜視図である。
【図13】図13は図12の一部部品の拡大図である。
【図14】図14Aは図11AのXIV−XIV線での断面図、図14Bは図14AのXIV部の拡大断面図である。
【図15】図15は従来技術の防水シール構造の要部を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施形態を説明する。但し、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための防水シール構造およびこの防水シール構造を設けた機器を例示するものであって、本発明をこの防水シール構造およびこの防水シール構造を設けた機器に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に含まれるその他の実施形態のものも等しく適応し得るものである。
【0021】
まず、図1を参照して、本発明の防水シール構造の作用原理を説明する。なお、図1は本発明の作用原理に係る防水シール構造の要部を示し、図1Aは一対の部材が結合される前の状態、図1Bは結合の途中状態、図1Cは結合状態を示した断面図である。
このシール構造Aは、筐体を構成する第1部材Iと、パッキンを構成する第2部材IIとを有している。これらの部材のうち、第1部材Iは、比較的硬い部材、例えば合成樹脂材で形成され、第2部材IIは弾性を有する部材、例えばゴム又はシリコン樹脂で形成されている。第1部材Iは、第2部材IIと対向する面Iaに断面視で山型の突起部Tが設けられている。この突起部Tは、対向面Iaから所定高さh突出し、基部の幅長はW1となっている。この突起部Tは、また、その頂点aを通り対向面Iaに略直角に立設する第1仮想垂線L1を境にして、その左右に左側から上昇した左上り傾斜面TLおよび右側からの右上り傾斜面TRを有するものとなっている。
【0022】
第2部材IIは、第1部材Iと対向する面IIaに突起部Tへ嵌り入り込む大きさの断面視で凹状の凹み部Mが形成されている。この凹み部Mは、上方の開口幅長はW2、深さdとなっている。この凹み部Mは、最底点又は底部の中心部bを通り対向面IIaに対して略垂直に伸びる第2仮想垂線L2を境にして、図1Aの左右に左側から下った左下り傾斜面MLおよび右側からの右下り傾斜面MRを有している。第1、第2部材I、IIの幅長W1および高さhと開口幅長はW2および深さdとの関係は、幅長W1と開口幅長W2とが略同じ長さを有し、高さhと深さdとが略同じ長さになっている。また、左右の上り傾斜面TL、TRと左右の下り傾斜面ML、MRとの角度は略同じになっている。
【0023】
第1、第2部材I、IIは、第2部材IIの凹み部Mが第1部材Iの突起部Tへ滑り込むようにして結合される。この滑り込み結合は、第1仮想垂線L1と第2仮想垂線L2間の距離(いわゆる、ピッチ)をLとすると、このピッチLは、0<L<3/4W1の範囲に設定されている。また、この範囲は、1/4W1≦L≦1/2W1が好ましい。なお、このLは、偏芯距離となっている。
【0024】
図1Aは、第1、第2部材I、IIのピッチLは、半ピッチ、すなわち幅長W1の2分の1ピッチずれた状態となっている。この状態で、第2部材IIの水平方向の両端を固定しておき、第1部材Iを上方から第2部材IIへ押し当てると、まず、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが第1部材Iの左側の左上り傾斜面TLへ当接する。次いで、さらに第1部材Iが押込まれると、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが左上り傾斜面TLに沿って弾性変形しながら滑り込む(図1B参照)。この滑り込み移動によって、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが第1部材Iの左側の左上り傾斜面TLへ嵌り込む(図1C参照)。すなわち、図1B、図1Cに示すように、第2部材IIの凹み部Mの左下り傾斜面MLが第1部材Iの左側の左上り傾斜面TLへ強制的に引き付けられて、凹み部Mが突起部T内へ嵌り込む。この滑り込み移動は、第2部材II全体が図1Bの左側へスライドされるのでなく、第2部材IIの凹み部M部分が弾性変形して、この凹み部Mが突起部Tへ嵌り込む。換言すれば、突起部Tが凹み部Mを引寄せて、この突起部Tが凹み部Mへ嵌り込む。このために、第2部材IIは、水平方向へスライド移動しないように不図示の固定手段で固定されている。なお、固定手段は、例えば図14Bに示すような手段によって固定される。なお、図14Bの固定手段は後述する。
この防水シール構造Aによると、第2部材IIの凹み部Mが弾性変形して第1部材Iの突起部Tへ嵌り込む。そして、この凹み部Mが突起部Tに嵌り込むと、凹み部Mが弾性変形した分、元へ戻ろうとする反力が凹み部Mに働き、結果として凹み部Mが突起部Tの傾斜面への反力となって強く接触される。この接触によって、第1、第2部材I、II間が緊密にシールされて、この部分からの水の浸入が阻止される。第1、第2部材I、II間の接触力は、従来技術のように押圧力に依存するのでなく、嵌め込まれた凹み部Mと突起部T間の復元力を利用するので、第1、第2部材I、IIを押圧する力が低くとも高いシール性能が得られる。
【0025】
この防水シール構造Aは、第1部材Iを筐体、第2部材IIをパッキンで構成したが、逆にして、第1部材Iをパッキン、第2部材IIを筐体にしてもよい。また、第1部材Iに突起部T、第2部材IIに凹み部Mを設けたが、逆にして、第1部材Iに凹部M、第2部材IIに突起部Tを設けてもよい。例えば、第1部材Iをパッキンに第2部材IIを筐体にして、第1部材Iに凹み部M、第2部材IIに突起部Tを設けると、両部材の結合時には、突起部Tが弾性変形、例えば捩れた状態で凹み部Mに嵌り込む。この状態によっても、防水シール効果が得られる。この場合は、弾性を有する第2部材II自体がスライド移動しないように、固定手段で固定される。また、凹み部Mは、所定形状の窪み穴或いは溝(例えばV字状溝)、一方、突起部Tはこの穴に嵌り込む突起或いは溝に入り込む所定の幅長を有する畝状の突起でもよい。例えば、所定長さの溝とこの溝に嵌り込む所定長さの突起にすると、これらの間で相対的な移動が可能になり、移動部材間でも防水シールすることが可能になる。
【0026】
以下、この作用原理を適用した本発明の実施例及び参考例を説明する。
【0027】
[実施例1]
図2を参照して、本発明の実施例1に係る防水シール構造を説明する。なお、図2は本発明の実施例1に係る防水シール構造を示し、図2Aは一対の部材が結合される前の状態、図2Bは結合の途中状態および図2Cは結合状態をそれぞれ示した断面図である。
【0028】
防水シール構造A−1は、筐体を構成する一対の第1、第2部材1、2と、パッキンを構成するパッキン部材3とを有し、第1、第2部材1、2に複数個の凹み部、一方パッキン部材3にこれらの凹み部へ嵌り込む突起部をそれぞれ設けた構造となっている。具体的には、防水シール構造A−1は、一対の第1、第2部材1、2と、これらの部材間に介在されるパッキン部材3とを有し、第1、第2部材1、2は、パッキン部材3と対向する面1aおよび2aに、それぞれ2個の凹み部11、12および21、22を設け、また、パッキン部材3は、これらの凹み部11、12および21、22に嵌り込む4個の突起31〜34を設けて、上記の防水シール構造Aの作用原理で結合される。以下、個々の部材を説明する。
【0029】
第1部材1は、パッキン部材3との対向面1aに所定の間隔をあけて2個の凹み部11、12を設けた所定の厚さで比較的硬い板状体からなり、樹脂成型体で形成されている。第2部材2も、同じ材料で形成されている。すなわち、対向面2aにも2個の凹み部21、22が形成されている。パッキン部材3は、第1、第2部材1、2のそれぞれの凹み部11、12および21、22に対応する箇所に4個の突起部31〜34を設けて、弾性を有する材料、例えばゴム或いはシリコン樹脂で形成されている。第1、第2部材1、2の4個の凹み部11、12および21、22とパッキン部材3の4個の突起部31〜34との関係で各突起部と凹み部との間の偏芯距離Lは、上記図1の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。
【0030】
これらの部材を用いた結合は、まず、第1、第2部材1、2間に、パッキン部材3を配設する(図2A参照)。次いで、第1、第2部材1、2に所定の押圧力を掛けてパッキン部材3へ押付ける。この押付けにより、パッキン部材3のそれぞれの突起部31〜34が強制的に弾性変形されて、第1、第2部材1、2のそれぞれの凹み部11、12および21、22へ嵌り込む(図2B、図2C参照)。例えば、パッキン部材3の突起部31と第1部材1の凹み部11とは、上記防水シール構造Aと同じ方法で嵌り込む。また、突起部32と凹み部12との嵌り込みも同じ方法で結合される。さらに他の突起部33、34および凹み部21、22も方向が異なるのみで同様の方法で結合される。その結果、結合が完了した状態では、図2Cに示すように、パッキン部材3の4個の突起部31〜34が第1、第2部材1、2の4個の凹み部11、12および21、22に矢印で示した方向の反力を受けた状態で嵌り込み、この反力で弾性接触して、第1、第2部材1、2とパッキン部材3とが防水シールされる。
【0031】
この防水シール構造A−1は、第1、第2部材1、2およびパッキン部材3の凹み部および突起部は2個および4個にしたが、この個数はさらに多くしてもよい。また、第1、第2部材とパッキン部材1、2とは、パッキン部材3がスライド移動しないように、例えば図14Bに示すような固定手段によって固定される。なお、図14Bの固定手段は後述する。
【0032】
この防水シール構造A−1は、図2に示すように、パッキン部材3の4個の突起部31〜34のうち、2個の突起31、32を第1部材1の各凹み部11、12の右側寄りに、一方、他方の2個の突起33、34を第2部材2の各凹み部21、22の左側寄りに位置させたが、これらの位置は任意に変更してもよい。以下に、この位置を変更した防水シール構造A−1の変形例を図3、図4を参照して説明する。なお、図3、図4は防水シール構造A−1の変形例を示した断面図である。以下の変形例は、防水シール構造A−1と突起部および凹み部の位置が異なり、他の構成は同じになっているので、共通する構成要素には同じ符号を付して説明を援用することとして、異なる構成について説明する。
【0033】
変形例に係る防水シール構造A−2は、図3Aに示すように、第2部材2とパッキン部材3との関係において、各凹み部21、22と各突起部33、34の位置が防水シール構造A−1のものと異なっている。以下、同様にして、防水シール構造A−3は、第1部材1の各凹み部11とパッキン部材3の各突起部31の位置および第2部材2の各凹み部22とパッキン部材3の各突起部34の位置(図3B参照)、防水シール構造A−4は第1部材1の凹み部11とパッキン部材3の突起部31および第2部材2の凹み部21とパッキン部材3の突起部33の位置(図4A参照)、さらに防水シール構造A−5は第1部材1の凹み部12とパッキン部材3の突起部32および第2部材2の凹み部21とパッキン部材3の突起部33の位置(図4B参照)がそれぞれ異なっている。
【0034】
これらの防水シール構造A−1〜A−5は、それぞれの第1、第2部材1、2の4個の凹み部11、12および21、22とパッキン部材3の4個の突起部31〜34との関係で各突起部と凹み部間の偏芯距離Lは、上記図1の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、これらの防水シール構造A−1〜A−5は、第1、第2部材の凹み部とパッキン部材の突起部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0035】
[実施例2]
図5を参照して、本発明の実施例2に係る防水シール構造を説明する。なお、図5は本発明の実施例2に係る防水シール構造を示し、図5Aは部材が結合される前の状態および図5Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
【0036】
この防水シール構造Bは、一対の第1、第2部材1B,2Bと、パッキン部材3Bとを有し、第1、第2部材1B,2Bに複数個の突起部、パッキン部材3Bにこれらの突起部が嵌り込まれる複数個の凹み部を設けた構造となっている。具体的には、防水シール構造Bは、一対の第1、第2部材1B、2Bと、これらの部材間に介在されるパッキン部材3Bと、を有し、第1、第2部材1B、2Bは、パッキン部材3Bと対向する面にそれぞれ2個の突起部111、112および211、222を設け、また、パッキン部材3Bには、これらの第1、第2部材1B、2Bのそれぞれの突起部111、112および211、222を滑り込ませる4個の凹み部311〜314を設けた構成となっている。
【0037】
この防水シール構造Bは、パッキン部材3Bの各凹み部311〜314が第1、第2部材1B、2Bの各突起部111、112および211、222にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、第1、第2部材1B、2Bの4個の突起部111、112および211、222とパッキン部材3の4個の凹み部311〜314との関係で各突起部と凹み部間の偏芯距離Lは、上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、この防水シール構造Bは、第1、第2部材の突起部とパッキン部材の凹み部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0038】
この防水シール構造Bは、図5に示すように所定の位置にそれぞれ突起部および凹み部を配設したが、この位置は任意に変更してもよい。以下に、この位置を変更した防水シール構造Bの変形例を説明する。なお、図6、図7は防水シール構造Bの変形例を示す断面図である。
【0039】
変形例に係る防水シール構造B−1は、図6Aに示すように、第1部材1Bの突起部111とパッキン部材3Bの凹み部311および第2部材2の突起部211とパッキン部材3の凹み313との関係で、突起部111と凹み部311および突起部211と凹み部313の位置が防水シール構造Bのものと異なっている。以下、同様にして、防水シール構造B−2は第2部材2Bの突起部211、222とパッキン部材3Bの凹み部313、314の位置(図6B)、防水シール構造B−3は、第1部材1Bの突起部112とパッキン部材3Bの凹み部312および第2部材2Bの突起部222とパッキン部材3Bの凹み部314の位置(図7)が異なっている。
【0040】
これらの防水シール構造BおよびB−1〜B−3は、パッキン部材3Bの各凹み部311〜314が第1、第2部材1B、2Bの各突起部111、112および211、222にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、第1、第2部材1B、2Bの4個の突起部111、112および211、222とパッキン部材3Bの4個の突起部311〜314間の関係で各突起部と凹み部との間の偏芯距離Lは、上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、この防水シール構造BおよびB−1〜B−3は、第1、第2部材の突起部とパッキン部材の凹み部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0041】
[実施例3]
図8を参照して、本発明の実施例3に係る防水シール構造を説明する。なお、図8は本発明の実施例3に係る防水シール構造を示し、図8Aは一対の部材が結合される前の状態および図8Bは結合の途中状態をそれぞれ示した断面図である。
この防水シール構造Cは、一対の第1、第2部材1C,2Cとパッキン部材3Cとを有し、第1部材1Cに複数個の凹み部、第2部材2Cに複数個の突起部、パッキン部材3Cに第1部材1Cの各凹み部が嵌り込む突起部および第2部材2Cの各突起へ嵌り込む凹み部を設けた構成を有している。具体的には、防水シール構造Cは、一対の第1、第2部材1C、2Cと、これらの部材間に介在されるパッキン部材3Cと、を有している。第1部材1Cには、パッキン部材3Cと対向する面にそれぞれ2個の凹み部131、132を設け、第2部材2Cには、パッキン部材3Cと対向する面にそれぞれ2個の突起部231、232を設け、パッキン部材3Cには、第1、第2部材1C、2Cと対向する面にそれぞれ2個の突起部331、332および凹み部333、334を設けた構成となっている。
【0042】
この防水シール構造Cは、パッキン部材3Cの各突起部331、332および各凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの各凹み部131、132および突起部231、232にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、パッキン部材3Cの2個の突起部331、332および2個の凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの2個の凹み部131、132および2個の突起部231、232との関係で各突起部と凹み部間の偏芯距離Lは上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、この防水シール構造Cは、第1部材1Cの凹み部131、132、第2部材の突起部231、232とパッキン部材3Cの突起部および凹み部331〜334とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0043】
この防水シール構造Cでは、図8に示す位置に、突起部および凹み部を配設したが、この位置は任意に変更してもよい。以下に、この位置を変更した防水シール構造Cの変形例を説明する。なお、図9、図10は防水シール構造Cの変形例を示す断面図である。
【0044】
図9Aの防水シール構造C−1は、第1部材1Cの凹み部131および第2部材2Cの突起部231とパッキン部材3Cの突起部331および凹み部333の位置が防水シール構造Cのものと異なっている。以下、同様にして、防水シール構造C−2は第2部材2Cの各突起部231、232とパッキン部材3Cの各凹み部333、334との位置(図9B)、防水シール構造C−3は第1部材1Cの凹み部132第2部材2Cの突起部232とパッキン部材3の突起部332および凹み部334との位置(図10)が異なっている。
【0045】
これらの防水シール構造CおよびC−1〜C−3は、パッキン部材3Cの各突起部331、332および凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの各凹み部131、132および突起部231、232にそれぞれ嵌り込で結合される。すなわち、パッキン部材3Cの2個の突起部331、332および凹み部333、334が第1、第2部材1C、2Cの各凹み部131、132および突起部231、232との関係で各偏芯距離Lは上記の防水シール構造AのLの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。したがって、これらの防水シール構造は、第1、第2部材の凹み部とパッキン部材の突起部とがそれぞれ異なった位置に配置されているので、このシール構造を適用する箇所に応じて選定して適用できるのでシール設計が容易になる。
【0046】
[参考例]
上記防水シール構造は、携帯電話機などの各種電子機器およびその他の小型機器に使用することができる。以下、図11〜図14を参照して、小型機器に使用した例を説明する。なお、図11A〜図11Cは小型機器の可動状態を示す外観斜視図、図12は図11の小型機器の分解斜視図、図13は図12の一部部品の拡大図、図14Aは図11AのXIV−XIV線での断面図、図14Bは図14AのXIVB部の拡大断面図である。
【0047】
小型機器4は、図11A〜図11C、図12に示すように、上下に配設する一対の第1、第2カバー部材5A、5Bと、これらのカバー部材5A、5B間に介在されるシールユニット6とを有している。シールユニット6は、内部に貫通孔50を有し連結部で連結された一対のドーナツ型の第1、第2環状パッキン7A、7Bからなるパッキン部材7と、これらの第1、第2環状パッキン7A、7Bを支持する一対の第1、第2支持部材8A、8Bからなる支持部材8とで構成して、前記第1、第2環状パッキン7A、7Bは、図13に示すように、それぞれの環状パッキン7A、7Bの表裏面、すなわち第1環状パッキン7Aの第1表面7A1および第1裏面7A2並びに第2環状パッキン7Bの第2表面7B1(なお、この第2表面7B1は、図13では底部になっているが、パッキン部材7全体からみると第1環状パッキン7Aの第1表面7A1と対応しているので、この面を第2表面7B1とする)および第2裏面7B2に、それぞれ4本のリング状突起71〜74が連結部7Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されている。また、前記第1、第2支持部材8A、8Bは、それぞれの表面8A'、8B'に、前記第1裏面7A2および第2裏面7B2に設けたそれぞれのリング状突起71〜74が嵌り込む4本のリング状凹み溝81〜84が貫通孔80を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されている。
さらに、前記第1、第2カバー部材5A、5Bは、それぞれの一面5a、5aに前記第1表面7A1および第2表面7B1に設けたそれぞれのリング状突起部71〜74が嵌り込むリング状凹み溝51〜54(図12参照)が設けられている。
【0048】
そして、これらの部材を用いた結合は、先ず、上記の上下一対の第1、第2カバー部材5A、5Bの間にパッキン部材7および支持部材8を介在させる。そのとき、それぞれ対向する前記リング状突起および前記リング凹み溝の芯を偏芯させて対向配置して、前記第1、第2カバー部材5A、5Bを用いて前記支持部材8で支持した前記パッキン部材7を押圧して弾性を有する各リング状突起71〜74を各リング状凹み溝51〜54および81〜84へ嵌め込んで結合する。対向するリング状突起とリング状凹み溝との偏芯は、上記防水シール構造の突起と凹み部との関係で設定した範囲に偏芯させる。すなわち、この偏芯距離は、上記の防水シール構造Aの偏芯距離Lの範囲に設定されている。そして、これらの結合も、防水シール構造Aと同じ方法で結合される。
【0049】
この嵌め込み結合により、一対の上下第1、第2カバー部材5A、5B、シールユニット6に設けた4個のリング状突起およびリング状凹み溝は、連結部7Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されているので、一対の上下カバー部材5A、5Bは、シールユニット6を中心にして、図12に示すように、防水シールした状態で360度回転可能になる。なお、図11Bは、上カバー部材を90度および図11Cは上カバー部材を180度回転させた状態を示している。なお、この小型機器5は、例えば携帯電話機に適用できる。
【0050】
この小型機器4は、リング状突起およびリング状凹み溝の本数を4本にしたが、この数に限定されるものでない。また、3本以上にしたときは、同芯円状に配設するリング状突起および凹み溝のうち、最内側と最外側のリング状突起およびリング状凹み溝は、それらの間のものと形状を変更してスライド移動を阻止する固定部になるように形成するのが好ましい。例えば、リング状突起を高くするとともにリング状凹み溝を深くする。また、間のリング突起およびリング凹み溝は、逆にして、カバー部材および支持部材にリング状突起を設け、カバー部材にリング状凹み溝を設けてもよい。
【0051】
以下、個々の部材を説明する。
まず、図12を参照して、一対の上下カバー部材5A、5Bを説明する。これらのカバー部材5A、5Bは、同じ構造を有しており、組立て時に上カバー部材5Aは下カバー部材5Bに対して表裏逆にして結合される。そこで、一方のカバー部材5Bを他方のカバー部材5Aを参照しながら説明する。
【0052】
このカバー部材5Bは、図12に示すように、一対の対向する短辺および長辺を有する矩形状の底板部5a'(同図カバー部材5A参照)と、この底板部5a'の周囲から所定長さ立設した背低の側板部5bとを有する浅底の皿状体からなり、樹脂又は金属材からなる成型体で形成されている。
【0053】
カバー部材5Bの底板部5a'の裏面5a(この面は、カバー部材5Bでは表面となっている)には、一方の短辺に近い箇所に支持部材8が装着される大きさの略円形状の凹み穴5cが形成されている。凹み穴5cは、支持部材8が収容される径および深さを有し、底板部5a'の中心に貫通孔50を設けるとともに、この貫通孔50の周囲に4本のリング状凹み溝51〜54が所定の間隔をあけて同芯円状に形成されている。これら4本のリング状凹み溝51〜54のうち、最内側および最外側のリング状凹み溝51、54は、図14に示すように、比較的深い溝で形成されて、これらのリング状凹み溝は、環状パッキンのスライド移動を阻止する固定手段の機能を果たすものとなっている。また、間の2本のリング状凹み溝52、53は、浅いリング状凹み溝で形成し、これらのリング状凹み溝は上記防水シール構造Aの凹み部Mの機能を果たすものとなっている(図1A〜図1C参照)。また、凹み穴5cの側壁には、一対の支持部材8A、8Bに係合して、固定する複数個の固定突起5c'が形成されている。
【0054】
次に、図13を参照して、シールユニットを説明する。このシールユニット6は、パッキン部材7と、このパッキン部材7を表裏から支持する支持部材8とで構成されている。
パッキン部材7は、図13に示すように、所定の肉厚を有し中心部に所定大きさの穴を設けたドーナツ型の一対の第1、第2環状パッキン7A、7Bと、これらの環状パッキン7A、7Bを中心の貫通穴70で連結する筒状の連結部7Cとを有し、弾性材料、例えばゴム又はシリコン樹脂などで一体成型により形成される。
【0055】
一対の第1、第2環状パッキン7A、7Bは、それぞれ所定の肉厚を有して、それぞれの表裏面にそれぞれ4個のリング状突起が形成されている。すなわち第1環状パッキン7Aの第1表面7A1および第1裏面7A2並びに第2環状パッキン7Bの第2表面7B1(なお、この第2表面7B1は、図13では底部になっているが、パッキン部材7全体からみると第1環状パッキン7Aの第1表面7A1としているので、この面を第2表面7B1とする)および第2裏面7B2、にそれぞれ4個のリング状突起71〜74が連結部Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されている。これらのリング状突起71〜74のうち、最内側および最外側のリング状突起71、74は、図14Bに示すように、比較的に高い突起で形成し、間の2本のリング状突起72、73は、背低に形成して、このリング状突起72、73は上記防水シール構造Aの突起部Tの機能を果たすものとなっている。また、両端の高いリング状突起71、74は、パッキン部材7の移動を阻止する固定部となっている。
連結部7Cは、伸縮自在な一蛇腹状筒状体で形成されている。連結部7Cをこのような筒状体にすることにより、この連結部に連結された一対の環状パッキン7A、7B間の長さの伸縮が可能になり、支持部材8への装着が簡単になる。
【0056】
一対の支持部材8A、8Bは、一対の第1、第2環状パッキン7A、7Bを上下から支持するとともに、上記防水シール構造Aの凹み部Mの機能並びに上下カバー部材を固定する部材となっており、両支持部材8A、8Bは互いに圧入により結合される。そこで、説明の都合上一方の支持部材8Bを他方の支持部材8Aを参照しながら支持部材8を説明する。
【0057】
この支持部材8Bは、図13に示すように、中心部にパッキン部材7を挿通することができる大きさの貫通孔80と、この貫通孔80の周辺にそれぞれ径が異なり所定肉厚の3個の環状部8a、8b、8cとを有し、蓋状体からなり、樹脂成型体で形成されている。
3個の環状部8a、8b、8cは、大径環状部8a、中径環状部8bおよび小径環状部8cからなり、大径環状部8aは、中径環状部8bから外方へ所定長さの鍔状をなしフランジ部となっている。そして、この支持部材8Bは、その大径環状部8a面から中径環状部8bへ向かって、第1環状パッキン7Bが収容される径および深さを有する凹み穴8dが形成されている。貫通孔80は、凹み穴8dの底部中心に位置している。この凹み穴8dは、その底部の貫通孔80の周囲に4本のリング状凹み溝81〜84が所定の間隔をあけて同芯円状に形成されている。これらのリング状凹み溝81〜84へは、リング状突起71〜74が嵌め込まれる。すなわち、これら4本のリング状凹み溝81〜84のうち、最内側および最外側のリング状凹み溝81、84は、図14Bに示すように、比較的深い溝で形成されて、これらのリング状溝は、環状パッキンのスライド移動を阻止する固定手段の機能を果たすものとなっている。また、間の2本のリング状凹み溝82、83は、浅いリング状凹み溝で形成し、これらのリング状凹み溝は上記防水シール構造Aの凹み部Mの機能を果たすものとなっている(図1A〜図1C参照)。大径環状部(フランジ部)8aの外周囲には、カバー部材の固定突起5c'が係合される複数個の切欠き8a'が形成されている。さらに、小径環状部8cには、相手方の支持部材8Bと係合される複数個の係止部8c'が形成されている。なお、他の支持部材8Aには、支持部材8Bと圧入により結合するための不図示の係止部が中径環状部8b'の内側に形成されている。
【0058】
化粧プレート9A、9Bは、上下カバー部材5A、5Bの底板部5a'と対向させて配設するもので、上下カバー部材5A、5Bの穴に対応する箇所にリード線を挿通する穴90、90が形成されている。
【0059】
図14A、図14Bを参照してこのように構成した上下カバー部材およびシールユニットの組立手順を説明する。
まず、シールユニット6を組立てる。この組立ては、一対の環状パッキン7A、7Bをその弾性力を利用して、丸めて各支持部材8A、8Bの貫通穴80、80内を通して装着して、各環状パッキン7A、7Bの裏面に設けた4本のリング状突起71〜74を支持部材の4本のリング状凹み溝81〜84に挿入する。すなわち、各環状パッキン7A、7Bのそれぞれのリング状突起71〜74を各支持部材8A、8Bの各リング状凹み溝81〜84へ押し込む。この押し込みで、最内側および最外側の背高のリング状突起71、74は、対応する最内側および最外側の深いリング状凹み溝81、84へ入り込み、間の2本のリング状突起72、73とリング状凹み溝82、83とは、上記防水シール構造Aと同じ方法で押し込まれる。
【0060】
次いで、上下カバー部材5A、5Bの固定突起5c'を各支持部材8A、8Bの係合切欠き8a'に挿入して、所定角度回転させて固定し、これらのカバー部材5A、5Bに化粧プレート9A、9Bを装着して、組立てを完了する。この組立て体には、パッキン部材7の貫通孔70にリード線10を挿通して、リード線10の端部に設けたコネクタ11を各化粧プレート9A、9Bに固定する。
【0061】
この構成の小型機器によれば、一対の上下第1、第2カバー部材5A、5B、シールユニット6に設けた4個のリング状突起およびリング状凹み溝は、連結部7Cの貫通孔70を中心にして略等間隔で同芯円状に配設されているので、一対の上下カバー部材5A、5Bは、シールユニット6を中心にして、図12に示すように、防水シールした状態で所定角度回転可能になる。
【0062】
この小型機器4は、一対の環状パッキンおよび支持部材を用いて、上下カバー部材を互いに回転できるようにしたが、環状パッキンを1つにして、一方のカバー部材のみを回転できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
I、1:第1部材
11、12、131、132、333、334:凹み部
111、112、211、222、231、232、31、32、33、34、331、332:突起部
II、2:第2部材
3、3A、3B、3C:パッキン部材
4:小型機器
5A:第1カバー部材(第1筐体)
5B:第2カバー部材(第2筐体)
51、52、53、54:リング状凹み溝
6:シールユニット
7:パッキン部材
71、72、73、74:リング状突起
7A:第1環状パッキン
7B:第2環状パッキン
7A1:第1表面
7A2:第1裏面
7B1:第2表面
7B2:第2裏面
8:支持部材
81、82、83、84:リング状凹み溝
8A:第1支持部材
8B:第2支持部材
9A、9B:化粧プレート
10:リード線
11:コネクタ
A、A−1〜A−5、B、B−1〜B−3、C、C−1〜C−3:防水シール構造
L:偏芯距離
L1:第1仮想垂線
L2:第2仮想垂線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接触面を設けた剛性部材からなる第1部材と、第2接触面を設けた剛性部材からなる第2部材と、前記第1接触面に接触する第1弾性接触面および前記第2接触面に接触する第2弾性接触面を設けた弾性部材からなるパッキン部材とを有し、前記第1、第2部材間に前記パッキン部材を圧接接触させてシールした防水シール構造において、
前記第1接触面および前記第1弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設けて、前記第1、第2部材は、その間に前記パッキン部材を配置して、それぞれ対向する前記突起部および前記凹み部の芯部を所定距離偏芯させて対向配置するとともに、前記第1、第2部材間を押圧してパッキン部材の前記突起部又は前記凹み部を前記第1、第2部材の凹み部又は突起部へ嵌め込み結合したことを特徴とする防水シール構造。
【請求項2】
前記凹み部は、窪み穴又はV字型溝で形成し、前記突起部は、前記窪み穴又はV字型溝に嵌る大きさの山型突起で形成したことを特徴とする請求項1に記載の防水シール構造。
【請求項3】
前記突起部の頂点を通る仮想垂線と前記突起部と対向する前記凹み部の底部中心を通る仮想垂線との間の偏芯距離Lは、前記凹み部の上方開口の幅長をWとして、0<L<3/4Wの範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の防水シール構造。
【請求項4】
前記パッキン部材は、スライド移動しないように固定手段で固定され、
前記固定手段は、前記第1接触面および前記第1弾性接触面のいずれか一方の接触面に前記突起部より背高の突起又は前記凹み部より深い凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起又は凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起で構成されたことを特徴とする請求項3に記載の防水シール構造。
【請求項5】
前記突起及び凹み溝は、前記突起部及び前記凹み部の両側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の防水シール構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水シール構造を設けたことを特徴とする機器。
【請求項1】
第1接触面を設けた剛性部材からなる第1部材と、第2接触面を設けた剛性部材からなる第2部材と、前記第1接触面に接触する第1弾性接触面および前記第2接触面に接触する第2弾性接触面を設けた弾性部材からなるパッキン部材とを有し、前記第1、第2部材間に前記パッキン部材を圧接接触させてシールした防水シール構造において、
前記第1接触面および前記第1弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起部又は凹み部および他方の接触面に前記突起部又は凹み部が嵌り込む凹み部又は突起部をそれぞれ設けて、前記第1、第2部材は、その間に前記パッキン部材を配置して、それぞれ対向する前記突起部および前記凹み部の芯部を所定距離偏芯させて対向配置するとともに、前記第1、第2部材間を押圧してパッキン部材の前記突起部又は前記凹み部を前記第1、第2部材の凹み部又は突起部へ嵌め込み結合したことを特徴とする防水シール構造。
【請求項2】
前記凹み部は、窪み穴又はV字型溝で形成し、前記突起部は、前記窪み穴又はV字型溝に嵌る大きさの山型突起で形成したことを特徴とする請求項1に記載の防水シール構造。
【請求項3】
前記突起部の頂点を通る仮想垂線と前記突起部と対向する前記凹み部の底部中心を通る仮想垂線との間の偏芯距離Lは、前記凹み部の上方開口の幅長をWとして、0<L<3/4Wの範囲内に設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の防水シール構造。
【請求項4】
前記パッキン部材は、スライド移動しないように固定手段で固定され、
前記固定手段は、前記第1接触面および前記第1弾性接触面のいずれか一方の接触面に前記突起部より背高の突起又は前記凹み部より深い凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起をそれぞれ設け、前記第2接触面および前記第2弾性接触面は、いずれか一方の接触面に突起又は凹み溝および他方の接触面に前記突起又は凹み溝が嵌り込む凹み溝又は突起で構成されたことを特徴とする請求項3に記載の防水シール構造。
【請求項5】
前記突起及び凹み溝は、前記突起部及び前記凹み部の両側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の防水シール構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の防水シール構造を設けたことを特徴とする機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−211703(P2012−211703A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166056(P2012−166056)
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−76571(P2008−76571)の分割
【原出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【分割の表示】特願2008−76571(P2008−76571)の分割
【原出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】
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