説明

防水パンの設置方法

【目的】 ユニットバスルーム等の床を構成する防水パンを設置するに際して、その高さ調節を容易に行うことのできる防水パン設置方法を提供する。
【構成】 防水パン14下面側に調節ボルト20を下向きに突設するとともに、調節ボルト20の上部位において防水パン14に貫通穴28を設け、防水パン14を設置面上に据え置いた状態で貫通穴28より調節ボルト20の高さ調節操作を行い、しかる後貫通穴28を閉塞処理する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は防水パンの設置方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ユニットバスルーム等の床を構成する防水パンを設置するに際してその高さ調節を行うことが必要であり、そのための方法として、従来防水パンの下面側に多数の調節ボルトを下向きに設け、これら調節ボルトを回転操作するといったことが行われている。
【0003】しかしながらこの場合、防水パンを持ち上げたりして周縁から下側に手を延ばして数多くのボルトの調節操作を行わなければならず、同作業のために非常な困難を伴う。
【0004】一方、防水パンの四隅についてのみ調節ボルトの高さ調節を行い、これらを設置面に接地させて他のボルトについてはこれを浮かせたままとしておき、そしてこれら浮かせた状態のボルトを、図4に示すように筒状部材100の内部に込めた未硬化のモルタル102中に埋め込み、このモルタル102を硬化させて支持を行うといったことも行われている。
【0005】しかしながらこの方法の場合にも多数の筒状部材100の設置,モルタル102の充填,モルタル102の硬化のための養生等多大の手間と時間とがかかる問題がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願の発明はこのような課題を解決するためになされたものである。而して本願の発明は、防水パン下面側に調節ボルトを下向きに突設するとともに該調節ボルトの上部位において該防水パンに貫通穴を設け、該防水パンを設置面上に据え置いた状態で該貫通穴より該調節ボルトの高さ調節操作を行い、しかる後該貫通穴を閉塞処理することを特徴とする(請求項1)。
【0007】本願の別の発明は、前記貫通穴に、硬化後においてゴム状弾性を有する弾性パテを未硬化状態で詰めて該貫通穴を閉塞処理することを特徴とする(請求項2)。
【0008】本願の更に別の発明は、前記貫通穴の一部をバックアップ部材で埋め、該バックアップ部材の上に充填材を詰めることによって該貫通穴を閉塞処理することを特徴とする(請求項3)。
【0009】本願の更に別の発明は、前記調節ボルトを前記防水パンの周縁の立上部よりも該防水パン中心側の部分に設けたことを特徴とする(請求項4)。
【0010】
【作用及び発明の効果】上記のように請求項1の発明は調節ボルトに対応した貫通穴を防水パンに設け、この穴を用いて調節ボルトの調節操作を行うものである。
【0011】本方法によれば、防水パンを持ち上げたりその周端から下側に手を差し込んで無理な姿勢で作業を行う必要はなく、防水パンの上側から各調節ボルトの調節操作を行うことができる。従って防水パンの高さ調節を容易に行うことができ、防水パンの設置作業を簡単に且つ短時間でなし得るようになる。
【0012】請求項2の発明は、弾性パテを用いて防水パンの貫通穴を閉塞処理するもので、このものは硬化反応後においてゴム状弾性を呈することから次のような効果が得られる。
【0013】一般に防水パンはFRP等のプラスチック材にて構成されている。従って貫通穴の閉塞用充填材として樹脂材が一般的に考えられるが、このような樹脂材を貫通穴に充填した場合、樹脂材の硬化反応に伴って収縮が生じ、この収縮に基づいて充填材と貫通穴内面との間に或いは充填材自体にクラックが発生する。而してこのようなクラックが発生するとそこから漏水を生じる恐れがある。
【0014】しかるに本発明の弾性パテは、硬化反応後においてもゴム状弾性を有しているからこのようなクラックを生ぜしめず、従ってそのクラックに起因する漏水の問題を惹起しない。
【0015】またこの弾性パテは、防水パンに人が載ってその荷重により防水パンが撓んだりした場合にも、自身の弾性によってクラックの発生を防止する。
【0016】請求項3の発明は、貫通穴の一部を発泡材等のバックアップ材にて埋め、その上に弾性パテ等の充填材を詰めることによって貫通穴を閉塞処理するものであるため、必要な充填材の量が少なくて済み、また充填材の充填作業が簡単化する利点が得られる。
【0017】請求項4の発明は、防水パン周縁の立上部より防水パン中心側に調節ボルトを設けて、これら調節ボルトにより高さ調節を行うものである。
【0018】防水パン設置に際して、調節ボルトの操作はボルトの位置が防水パンの周縁から遠くなるに従って難しくなる。しかるに防水パンに貫通穴を設けてその貫通穴において調節ボルトの操作を行う場合には、ボルトの位置の如何に拘らず簡単にその操作を行うことができる。即ち本発明は、調節ボルトが防水パン周縁より防水パン中心側に位置する場合において特に効果を発揮する。
【0019】
【実施例】次に本発明の実施例を図面に基づいて詳しく説明する。図2はユニットバスルーム等の床を構成する防水パンを床スラブ上に設置した状態を示すもので、図中10は床スラブ、12は床スラブ10に形成した凹所、14は防水パンである。
【0020】防水パン14には排水トラップ16及び排水管18が連結されており、これらが凹所12の底面と防水パン14本体との間の空間に収容されている。この防水パン14の下面側には、調節ボルト20が中空の取付部材22を介して下向きに多数設けられている。
【0021】具体的には、防水パン14の下面側には中空の取付部材22が取り付けられていてこの取付部材22にナット24が固着され、そして調節ボルト20が、上端を取付部材22の中空内部に入り込ませるようにしてナット24に螺合されている。尚ボルト20の上端面には一条の係合溝26が設けられている。
【0022】防水パン14には、この調節ボルト20の直上部位において貫通穴28が設けられ、この貫通穴28が発泡材から成るバックアップ部材30と弾性パテ32とにより閉塞処理されている。
【0023】ここで弾性パテ32は一液室温反応硬化型のもので、硬化前は通常のパテ状を成し、硬化後にはゴム状弾性を呈するものである。本例ではこの弾性パテ32としてセメダイン社からDP−20として市販されているものを用いた。
【0024】図1は防水パン14の設置方法の具体的手順を示したものである。図示のように本例の方法では、予め調節ボルト20の頭部の接地部分(凹所12底面への接地部分)に接着剤34を山盛状態に塗り付けておき、その状態で防水パン14を設置面上に据え置く。このとき接着剤34は、ボルト頭部にて押し潰された形となる。
【0025】そこで次に防水パン14の表面側からマイナスドライバー等の工具40を貫通穴28に差し込んで、先端部分を調節ボルト上端面の係合溝26に係合させる。そして工具40にて調節ボルト20を回転操作し、高さ調節を行う。
【0026】以上の操作を各調節ボルト20ごとに行い、そしてそれらの作業が済んだら、次に先ずバックアップ部材30を貫通穴28内に挿入して一部を埋める。次にその上側から弾性パテ32を貫通穴28内部に詰め込み、その後これを硬化反応させる。
【0027】また必要に応じて閉塞処理した貫通穴28の上面部分を仕上処理する。この仕上げ処理の仕方には種々パターンがある。図3はその具体例を示している。これらの内(A)は接着剤にてタイル36を貼着することによって仕上げを行う場合の例であり、また(B)は接着剤にて塩化ビニル樹脂等から成るプレート38を固着して仕上げを行う場合の例である。勿論その他の方法にて仕上げ処理を行っても良い。
【0028】以上の説明から明らかなように、本例の方法によれば各調節ボルト20の操作を防水パン14の表面側から行うことができ、防水パン14の設置作業を容易且つ短時間で行うことができる。
【0029】以上本発明の実施例を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において、当業者の知識に基づき様々な変更を加えた態様で実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である防水パン設置方法の要部工程説明図である。
【図2】その防水パンを設置した状態の図である。
【図3】防水パンに形成した貫通穴の表面部分の仕上方法の例を示す図である。
【図4】本発明の背景説明のための説明図である。
【符号の説明】
14 防水パン
20 調節ボルト
28 貫通穴
30 バックアップ部材
32 弾性パテ
40 工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】 防水パン下面側に調節ボルトを下向きに突設するとともに該調節ボルトの上部位において該防水パンに貫通穴を設け、該防水パンを設置面上に据え置いた状態で該貫通穴より該調節ボルトの高さ調節操作を行い、しかる後該貫通穴を閉塞処理することを特徴とする防水パンの設置方法。
【請求項2】 前記貫通穴に、硬化後においてゴム状弾性を有する弾性パテを未硬化状態で詰めて該貫通穴を閉塞処理することを特徴とする請求項1に記載の防水パンの設置方法。
【請求項3】 前記貫通穴の一部をバックアップ部材で埋め、該バックアップ部材の上に充填材を詰めることによって該貫通穴を閉塞処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の防水パンの設置方法。
【請求項4】 前記調節ボルトを前記防水パンの周縁の立上部よりも該防水パン中心側の部分に設けたことを特徴とする請求項1,2又は3に記載の防水パンの設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−331895
【公開日】平成5年(1993)12月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−164220
【出願日】平成4年(1992)5月29日
【出願人】(000000479)株式会社イナックス (1,429)