説明

防水型コネクタ

【課題】
弾性的押圧力が低下したシール材の変位量を一定に保つことによって、機密性が補償される防水型コネクタを提供する。
【解決手段】
オスハウジング10の嵌合面は、間口から奥方向に勾配が備わり、嵌合時この勾配に当接するハウジングシール50は、その周面がこの勾配に倣う角度が備わり、オス、メス両ハウジング10、30には、互いに嵌合しあうハウジング同士の嵌合深さを、推進させるための嵌合推進手段が組み込まれ、ハウジングシール50に生じた弾性的押圧力の低下に応じて、嵌合推進手段によって、オス、メス両ハウジング10、30が勾配の備わる嵌合面にそって近接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水型コネクタに関し、詳しくは、機密性を持続的に維持可能な防水型コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
オスハウジングと、メスハウジングとの嵌合面にハウジングシールを装着し、ワイヤとハウジングの隙間にワイヤシールを装着した防水型コネクタがある。たとえば特許文献1参照。シール材には、たとえば、シリコーンゴムのような弾性体が使用される。弾性体が圧縮されたときの復元力を利用してハウジング間、或いは、ワイヤとハウジング間の隙間を埋めるものである。このようにすることによってハウジング構造の機密性を確保する。弾性体の復元力を利用して機密性を確保するものだから、復元力が低下したときには、機密性もそれに応じて低下する。
【0003】
負荷状態で圧縮された弾性体は、この状態が続くと、圧縮量の内いくらかは、元に戻らなくなる、いわゆる圧縮永久ひずみとして弾性体に内蔵されることになる。特に、シール材の劣化が進む環境下での使用の際は、機密性の低下は速まる傾向にある。たとえば、高温環境、高温高湿環境などでは著しく劣化が進む。
また、材料や加工の分野では、二色成形或いはインサート成形が利用される機会が増えつつある、いわゆるエラストマなどの弾性樹脂材料を使用した場合には、圧縮永久ひずみ率が、一般的なシリコーンゴム材に比べて高い傾向にあるので特に問題になり易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−36354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、圧縮永久ひずみによって弾性的押圧力が低下したシール材の弾性的変位量を一定量に保持することによって、機密性が補償された防水型コネクタを提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、シール材でシールされた状態が補強される防水型コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するものである。すなわち、本発明の防水型コネクタは、(1)一対のハウジング間の嵌合面にハウジングシールを備える防水型コネクタであって、一方のハウジングの前記嵌合面には、間口から奥方向に亘る勾配と、他方のハウジングの前記嵌合面には、前記ハウジングシールと、前記一対のハウジングには、嵌合深さを推進させるための嵌合推進手段と、を備え、前記ハウジングシールに生じた弾性的変位量の低下に応じて、前記嵌合推進手段によって、前記一対のハウジングが、前記ハウジングシールを前記嵌合面間に挟持した状態で前記勾配の備わる嵌合面にそって近接するところに特徴を有するものである。
【0007】
この発明によれば、一対のハウジング間の嵌合面にハウジングシールを備えている。これによって、一対のハウジング間の機密性は確保されている。さらに、このハウジングシールが圧縮永久ひずみ等によって弾性的変位量が低下した場合にも、一対のハウジングに備わる嵌合推進手段の働きによって、嵌合はより深い方向に進められる。これによって、
一方のハウジングの嵌合面におけるこのハウジングシールとの弾接位置は、嵌合面に設けられた勾配に沿って移動する。移動は、ハウジングシールをより強く圧縮する方向であるから、このハウジングシールの圧縮量は、一定に保たれる。したがって、新たな嵌合位置で、ハウジングシールは、以前と同じ程度の弾性的変位を受け、これによって、以前と同じ程度の弾性的押圧力を嵌合面に作用させるようになる。したがって、一対のハウジング間の機密性は、常に一定レベルに維持されることになる。
【0008】
さらに好ましくは、本発明の防水型コネクタは、(2)前記ハウジングシールが、インサート成形によって、前記他方のハウジングと一体的に成形されるところに特徴を有する(1)記載のものである。
【0009】
この発明によれば、ハウジングシールは、他方のハウジングと一体的に成形されるものである。これにより、ハウジングシールと他方のハウジング間には接合力が作用する。その結果、嵌合の際シール材がずれたり、めくれたりすることはない。したがって、作業性の向上が図られる。
【0010】
さらに、この発明によれば、ハウジングシールは、ハウジングと一体的に成形されるので、部品点数が削減され、工数の低減が図られる。
【0011】
さらに好ましくは、本発明の防水型コネクタは、(3)前記嵌合推進手段は、前記一方のハウジングには、内側にコンタクトを配した筒部と、前記他方のハウジングには、嵌合時前記筒部を囲むフード部と、前記筒部外周面には、嵌合方向側の前壁に勾配を有する、周方向に沿う少なくともひとつの溝部と、前記フード部には、嵌合時この溝部に対応する位置にスリットと、このスリットを介して前記溝部に押圧を加えるスプリングロックと、を備え、嵌合時このスプリングロックの作用部が前記溝部の前記勾配面上に位置し、前記作用部は、この勾配面上で前記溝部の底面に向かう方向に押圧を作用させているところに特徴を有する(1)又は(2)記載のものである。
【0012】
この発明によれば、スプリングロックが一方のハウジングの筒状部を外周面から挟持するように弾性力を作用させている。これにより、一方のハウジングの内周面(嵌合面)とハウジングシールとの機密性は、補強されることになる。またさらに、スプリングロックの弾性力は、作用部が勾配面にのっているので、一方のハウジングをさらに深部へと嵌合を進める向きに力を作用させている。これによって、特に圧縮永久ひずみによって弾性的変位量が減少したハウジングシールは、以前と同じ程度の弾性的変位量を与えることができる締め代の大きい内周面(嵌合面)の側に移行する。これによって、以前と同じ程度の弾性的押圧力が作用する弾性的変位を受けることになるので、以前と同じ程度の弾接力が嵌合面に作用することになる。その結果、常に一定の機密性がハウジング間に確保されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る、嵌合前のオスコネクタと、メスコネクタの外観斜視図である。
【図2】同、オスコネクタ、及びメスコネクタの断面図である。(A)は、図1のA−A断面図、(B)は図1のB−B断面図である。
【図3】同、オスコネクタと、メスコネクタとの嵌合状態の断面図である。
【図4】同、スプリングロックをハウジングに装着するところの外観斜視図である。
【図5】同、スプリングロックが作用して、ハウジング同士の嵌合が深まる方向に嵌合が進む状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で実施することができる。図1は、本発明の実施形態に係る、嵌合前のオスコネクタと、メスコネクタの外観斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係るオスコネクタ、及びメスコネクタの断面図である。(A)は、図1のA−A断面図、(B)は図1のB−B断面図である。ここで、方向について定義しておく、図1、図2に示すように、オスコネクタ、メスコネクタともに嵌合方向を前方とし、これに反対する方向を後方とする。以下特に断りのない限り、これに準じる。
【0015】
オスコネクタ1は、図1、図2に示されるように、オスハウジング10と、オス端子20とを備えている。オスハウジング10は、合成樹脂の射出成形品である。オス端子20は、対応コンタクトに接続する接触部を備えた棒状の端子である。オス端子20は、ハウジングに支持されるための固定部を備えている。オス端子20は、リン青銅や黄銅などの銅合金の材料表面を金或いは錫等でめっきし、耐性をもたせたものである。
【0016】
オスハウジング10は、図1、図2に示されるように、矩形状の基部11と、基部11から垂直に前方に起立する筒部12とを備えている。基部11には、オス端子20を支持するための貫通孔が穿たれている。基部11は、図示されていないが固定するためのネジ穴が開けられている。
【0017】
筒部12は、図1、図2に示されるように、外形は略円柱形である。筒部12の内部には、円柱状の空間からなる収容部17が備わる。収容部17は、前方に位置する前方収容部17aと、後方に位置する後方収容部17bとで構成されている。収容部17は、筒部12の内周面18で画成されている。内周面18は、前方に位置する前方内周面18aと、後方に位置する後方内周面18bとで構成されている。前方内周面18aと、後方内周面18bとは、径が相違する。前方内周面18aと、後方内周面18bとは、傾斜面181でつながっている。前方内周面18aの後方に後方内周面18bが位置する。筒部12の後方には、後壁12aがある。後壁12aには、オス端子20を支持するための貫通孔が穿たれている。筒部12の後壁12aは、基部11の表面よりも前方にいくらか突出している。
【0018】
筒部12は、図1、図2に示されるように、周面に、長手方向(前後方向)に延びる隆起部13を備えている。隆起部13は周面上の左右側面に一対備わっている。隆起部13は、先端部にテーパー面16が形成されている。このテーパー面は、嵌合をスムーズに行なわせるためにある。隆起部13は、筒部12の長手方向の中間部よりも前方で窪み14を形成している。窪み14の幅は、スプリングロック70の板幅よりも大きい。窪み14は隆起部13を前方隆起部13aと、後方隆起部13bとに二分している。
【0019】
窪み14の底は、筒部12の周面よりも深い位置にある。この窪み14全体に、上下方向(図1の紙面上で上下方向)に沿って延びる溝部15が形成されている。溝部15は、スプリングロック70の板幅よりも大きい幅を備えている。
溝部15は、図2に示されるように、断面凹形状であり、前方の壁は、勾配面15aを持っている。この勾配面15a上にスプリングロック70の作用部が配置される。
【0020】
メスコネクタ3は、図1、図2に示されるように、メスハウジング30と、メス端子80と、スプリングロック70と、ハウジングシール50と、ワイヤシール60とを備えている。
【0021】
メスハウジング30は、図1、図2に示されるように、合成樹脂の射出成形品である。メスハウジング30は、略矩形で扁平状の本体31と、本体31の中央部から前方に突出
する筒部36と、本体31の周縁から前方に突出するフード部32と、本体31の周縁よりやや内側から後方に突出する後方筒部33と、を備えている。
本体31は、メス端子80を嵌入するための貫通孔が穿たれている。メス端子31は、メスハウジング30後方側から嵌入される。本体31の外形は、外部に凹凸体がある略矩形状である。
【0022】
筒部36は、図2に示されるように、本体31中央部から前方に突出する円柱体である。筒部36の内部には、後方から嵌入されたメス端子80をその位置に固定するための係合構造が組まれている。係合片37が後方から延びてメス端子80の係合孔と係合し、メス端子80の後方ズレを防止している。
筒部36の先端は、オス端子20を迎え入れるための穴38が穿たれている。穴38の周囲には、テーパーが形成されている。このテーパーは、オス端子の挿通をスムーズにおこなわせるためにある。筒部36の周面は、凹凸物がなく滑らかな面を形成している。筒部36の周面には、後方にハウジングシール50が形成されている。筒部36を取り囲むようにしてフード部32が、本体31の前方に突出している。
【0023】
フード部32は、図1、図2に示されるように、内周面がオスハウジング10の筒部12の周面に嵌め合うように円筒状にくり抜かれた空間を有する収容部39を形成している。フード部32は、オスハウジング10の筒部12全体を囲い込める長さを有している。この長さは機密性を高めるための有効な手段である。
フード部32は、周面上にスプリングロック70を支持するための支持台34を備えている。フード部32は、周面上に前後方向に延びる、凸状に張出した基台40を備えている。これは、フード部32側面の肉厚を確保するためのものである。この基台40と直交する態様で支持台34が上下方向(図1の紙面上で上下方向)に沿って備わっている。
【0024】
支持台34は、図1、図2に示されるように、フード部32周面の左右側面に一対備わっている。支持台34は、左右側面の中間部に上面から下面に亘って構成されている。支持台34は、復元力を持つスプリングロック70の弾性力を受け止めるだけの強固な構造を有している。支持台34は、上下に延びる本体と、その中央に凹状に延びる溝部35と、を備えている。支持台34本体は、前壁34aと、後壁34bとを備えている。溝部35は、前壁34aと後壁34bとの間を、上下方向(図1の紙面上で上下方向)に沿って延びている。支持台34は、フード部32上面を越えて、張出す態様で上方に突出している。
【0025】
溝部35は、図1に示されるように、支持台34の上面から下面にかけて全体に形成されている。支持台34の上端角部には、テーパー面が備わる。溝部35は、支持台34の上端部まで形成されている。溝部35の幅は、スプリングロック70の板幅よりも大きめに形成されている。溝部35の底面は、フード部32の周面を一部破る態様で形成されている。これにより溝部35の底面に当たるフード部32の壁面には、矩形状のスリット41が形成されている。支持台34に装着されたスプリングロック70の一部は、このスリット41を通して、嵌合された位置にあるオスハウジング10の溝部15に臨む。
【0026】
後方筒部33は、図1、図2に示されるように、本体31周縁のやや内側から後方に突出する筒状体である。後方に連なるワイヤ90をその中心に置き周囲には、ワイヤシール60が形成されている。後方筒部部33は、ワイヤシール60をホールドするために備わる。ワイヤシール60は、ワイヤ90と、後方筒部33内周面との隙間を埋めるために備わる。ワイヤシール60は、エラストマ材の成形体である。ここでエラストマとは、熱可塑性弾性樹脂を意味し、各メーカーのエラストマが選択可能である。
【0027】
ハウジングシール50は、図2に示されるように、オスハウジング10と、メスハウジ
ング30との嵌合面の隙間を埋めるために備わる。ハウジングシール50は、エラストマの成形体である。ハウジングシール50は、底のない筒状体であって、先端部には、断面凸形の突起部51を2個備えている。2個の突起部51の頂部を結ぶ直線は、メスハウジングを嵌合方向に貫く中心線に対して傾きを有している。この傾きは、オスハウジング10の筒部12の前方内周面18aのテーパー面の傾きに対応している。すなわち、このような態様にすることで、突起部51が前方内周面18に当接した際、2個の突起部51それぞれは、等しい圧縮力を受けるようになる。これにより2個の突起部51は、バランスよく圧縮されて2段階で機密性を確保するものである。
【0028】
ワイヤシール60、及びハウジングシール50は、ともにエラストマ材からなる。このことにより、いわゆる二色成形(インサート成形)による、シール材とハウジング本体との一体成形が可能になる。これにより、ワイヤシール60、及びハウジングシール50とメスハウジング30との密着性はよくなる。このことによって、嵌合の際、シール材の位置がズレたり、めくれたりすることがなくなる。
【0029】
図4は、本発明の実施形態に係るスプリングロックをハウジングに装着するところの外観斜視図である。
スプリングロック70は、図4に示されるように、高い剛性を有するバネ鋼の板材を必要形状に折り曲げ加工したものである。スプリングロック70は、屈曲部を有する略コの字形の折り曲げ片である。左右の片部72、72は一文字に延びる連結部71で結ばれている。左右片部72、72は、中間で内向きに屈曲した作用部73を備えている。
左右片部72、72は、嵌合の際作用部73がその板面で対応する溝部15の勾配面15aに当接可能なようにねじられている。ねじり角度は30〜50度程度が好ましく、さらに好ましくは40〜50度程度である。このようにねじられることで、弾接力は、効率よく直接的に溝部15の勾配面15aに伝えられることになる。
スプリングロック70は、図4に示されるように、メスハウジング30の支持台34の溝部35に沿わすようにして、先端から装着される。溝部35に装着されたスプリングロック70は、左右作用部73、73が、フード部32壁面のスリット41に配置される。
【0030】
〈嵌合〉
オスハウジング10と、メスハウジング30との嵌合は、図2、図3に示されるように、オスハウジング10の収容部17にメスハウジング30の筒部36が嵌め込まれ、オスハウジング10の筒部12が、メスハウジング30の収容部39に収容される態様でおこなわれる。このように嵌め合い構造を二重に備えるのは、水の進入経路を延長させて、機密性の向上を図るためである。
嵌合の際、オスハウジング10の筒部12の前方内周面18aは、ハウジングシール50の周面と摺接する。前方内周面18a、及びハウジングシール50の周面には、共に同じ大きさの傾き(テーパー)がつけられている。これによって、ハウジングシール50の2個の突起部51は、同程度の圧縮量を受けて、バランスのとれた弾接力を作用させることになる。
【0031】
オス端子20と、メス端子80が正規位置で接続した状態のとき、図3に示されるように、メスハウジング30の筒部36の先端は、オスハウジング10の後方収容部17bに収まる。このとき、筒部36周面と、後方内周面18bとは近接している。一方、筒部36の中央から後方側は、前方収容部17aに収まる。このとき、筒部36周面と、前方内周面18aとの間には、大きな隙間が生じている。この隙間を埋めるようにして、ハウジングシール50が筒部36後方に備わっている。
【0032】
ハウジングシール50は、図3に示されるように、前方内周面18aの中央から前方にかけての範囲をシールしている。すなわち、前方内周面18aの中央から後方にかけての
範囲は、ハウジングシール50でシールされていない。ハウジングシール50の2個の突起部51は、正規嵌合位置で、前方内周面18aから押圧を受けて圧縮変形が生じている。圧縮率が低すぎる場合は、機密性が保障されず、圧縮率が高すぎる場合は、変形抵抗が大きくなるので嵌合時の挿入作業が困難になる。
【0033】
メスハウジング30に備わるスプリングロック70の作用部73は、図3に示されるように、嵌合位置で、オスハウジング10の溝部15の勾配面15aに弾接している。勾配面15aは、嵌合方向(前後方向)に直交する面に対して30〜45度の勾配を有している。スプリングロック70の作用部73は、嵌合位置で、この勾配面15a上にある。このとき作用部73は、その板面を勾配面15aに当接させている。
スプリングロック70の作用部73は、この状態で、勾配面15aを押す方向に弾性力を作用させている。弾性力は、勾配面15aの傾きによって2方向の分力に分けられる。一方は、筒部12を介してハウジングシール50を圧縮するように作用する力であり、他方は、オスハウジング10をメスハウジング30に対してより深く嵌合させるように嵌合を進める方向に作用する力である。
【0034】
〈嵌合推進原理〉
図5は、本発明の実施形態に係るロックスプリングが作用して、ハウジング同士の嵌合が深まる方向に嵌合が進む状態の図である。
嵌合推進原理について、図5を参照しつつ説明する。嵌合当初の嵌合位置にあるオス、メス両ハウジング10、30の嵌合面にあるハウジングシール50には、圧縮変形が生じている。この圧縮変形は、全てが弾性変形によって生じた変形であるときは、負荷が除かれれば元の状態に復元可能である。しかし、一部に圧縮永久ひずみが生じている場合、圧縮永久ひずみが生じた分だけ復元可能な弾性的変位量が減少することになる。このことによって、圧縮永久ひずみが生じた後の復元力は、圧縮当初の復元力に比べてその分低下する。その結果、ハウジングシール50の前方内周面18aを押圧する弾接力が減少する。この状態が続くことによって、次第に機密性が低下していく。
本発明の場合、嵌合推進手段の作用によって、ハウジングシール50の弾性的変位量が一定量に保たれるように作用し、これによって、弾性的押圧力が常に一定レベルに保持可能となる。その結果、機密性が、嵌合当初と同程度に維持されるものである。
【0035】
弾性的押圧力の低下によって、当初の嵌合位置での釣り合いが崩れる。これによって、スプリングロック70の弾性力によって、嵌合がより深く進む方向にハウジング同士10、30が相対的に移動する。この移動によって、ハウジングシール50の突起部51の頂部を押圧する筒部12内周面18は、テーパー面に沿って移動する。このように深部に行くほど当たりが強くなる傾きを持ったテーパー面に沿って移動することによって、移動前よりも大きな圧縮量がハウジングシール50に加わることになる。この圧縮量の増加によって、弾性的変位量が一定に保たれることになる。
【0036】
このように、圧縮永久ひずみによって生じた復元力を伴わない変形の発生と、この変形によって低下した復元力を補うための新たな変形の発生と、が並行して随時生じる仕組みを、本発明の嵌合推進手段は、備えている。
【0037】
〈作用効果〉
本発明の効果は、スプリングロックによって、オスハウジングと、メスハウジングとの嵌合面に備わるハウジングシールが圧縮されるので、簡易な方法でハウジング間の機密性が補強される。
本発明の効果は、圧縮永久ひずみ等によって復元力が低下したハウジングシールに対して圧縮を強化させるような態様で嵌合面が相対的に移動するので、ハウジングシールの弾性的変位量は、常に一定レベルに保たれる。その結果、ハウジング間は常に一定の機密性
が補償される。
さらに別の効果は、ハウジングシール、及びワイヤシールが二色成形(インサート成形)によってハウジングと一体的に形成されるので、部品点数の削減や、工数の削減が図られる。
【0038】
〈他の実施形態〉
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 オスコネクタ
10 オスハウジング
11 基部
12 筒部
13 隆起部
13a 前方隆起部
13b 後方隆起部
14 窪み部
15 溝部
15a 勾配面
16 テーパー面
17 収容部
17a 前方収容部
17b 後方収容部
18 内周面
180 テーパー面
181 傾斜面
18a 前方内周面
18b 後方内周面
20 オス端子
3 メスコネクタ
30 メスハウジング
31 本体
32 フード部
33 後方筒部
34 支持台
35 溝部
36 筒部
37 係止片
38 穴
39 収容室
40 基台
41 スリット
50 ハウジングシール
51 突起部
60 ワイヤシール
70 スプリングロック
71 連結部
72 片部
73 作用部
74 第1固定部
75 第2固定部
80 メス端子頁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のハウジング間の嵌合面にハウジングシールを備える防水型コネクタであって、
一方のハウジングの前記嵌合面には、間口から奥方向に亘る勾配と、
他方のハウジングの前記嵌合面には、前記ハウジングシールと、
前記一対のハウジングには、嵌合深さを推進させるための嵌合推進手段と、を備え、
前記ハウジングシールに生じた弾性的変位量の低下に応じて、前記嵌合推進手段によって、前記一対のハウジングが、前記ハウジングシールを前記嵌合面間に挟持した状態で前記勾配の備わる嵌合面にそって近接するところに特徴を有する防水型コネクタ。
【請求項2】
前記ハウジングシールが、インサート成形によって、前記他方のハウジングと一体的に成形されるところに特徴を有する請求項1記載の防水型コネクタ。
【請求項3】
前記嵌合推進手段は、
前記一方のハウジングには、内側にコンタクトを配した筒部と、
前記他方のハウジングには、嵌合時前記筒部を囲むフード部と、
前記筒部外周面には、嵌合方向側の前壁に勾配を有する、周方向に沿う少なくともひとつの溝部と、
前記フード部には、嵌合時この溝部に対応する位置にスリットと、このスリットを介して前記溝部に押圧を加える前進バネと、を備え、
嵌合時この前進バネの作用部が前記溝部の前記勾配面上に位置し、
前記作用部は、この勾配面上で前記溝部の底面に向かう方向に押圧を作用させているところに特徴を有する請求項1又は2記載の防水型コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−77407(P2013−77407A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215767(P2011−215767)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390033318)日本圧着端子製造株式会社 (457)
【Fターム(参考)】