説明

防水塗膜層形成用ポリオール組成物及び防水塗膜層の製造方法

【課題】中空樹脂微粒子の添加により低比重の防水塗膜を形成することができ、しかも高温耐久性が良好な防水塗膜を形成するポリウレタン防水塗膜層形成用ポリオール組成物及び該防水塗膜層形成用ポリオール組成物を使用したポリウレタン防水塗膜層の製造方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート基含有成分と混合して基材に塗布し、硬化させてポリウレタン防水塗膜層を形成するポリオール組成物であり、ポリオール化合物、可塑剤、充填剤及び鎖延長剤を含み、充填剤は、中空樹脂微粒子、非多孔性無機粉末及び多孔性無機粉末からなり、中空微粒子の配合量が2〜10重量%、前記多孔性無機粉末の配合量が1〜15重量%であるポリオール組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床等の基材に塗布してポリウレタン樹脂の防水塗膜層を形成するための防水塗膜層形成用ポリオール組成物並びに該ポリオール組成物を使用した防水塗膜層の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床等の基材にイソシアネート成分と硬化剤成分とを混合した反応性原液組成物を塗布してポリウレタン樹脂の防水塗膜層を形成する技術は公知である(特許文献1、2など)。
【0003】
特許文献1には、低粘度で作業性のよい反応性原液組成物としてNCO基含有率が12〜28質量%のイソシアネート基含有成分とポリオキシテトラメチレングリコールを含有する硬化剤とからなる組成物が開示されており、特許文献2には、溶剤を使用せず、従って臭気の発生の少ない反応性原液組成物として、可塑剤を含有する組成物が開示されている。
【0004】
上記特許文献1、2に開示された防水塗膜層を構成するポリウレタン樹脂は比重が1.4を超えるものであり、低比重化の要請に対応することができない。樹脂の低比重化のためには、樹脂を発泡体にする方法は一般的に行われることであり、中空樹脂粒子を添加する技術も公知である(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−30277号公報
【特許文献2】特開2002−364128号公報
【特許文献3】特許3091494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、発泡体にする技術は、発泡反応と硬化反応のバランスを調整することが必要であって反応原液組成物の厳密な温度調整が必要であるが、施工時期や地域によって温度が変動し、また1日の中において温度が変動する防水塗膜層の施工において、反応原液組成物の厳密な温度調整を行って発泡体とすることは実質的に行えない。
【0007】
これに対して中空樹脂を添加することによって発泡体とすることは可能であるが、防水塗膜層形成用ポリオール組成物に中空樹脂微粒子を添加すると、形成されるポリウレタン防水塗膜の高温耐久性が低下することが判明した。ポリウレタン防水塗膜用のポリオール組成物とポリイソシアネート成分のセットにおいては、施工現場での混合の容易さを考慮してポリオール組成物/ポリイソシアネート成分重量比が1/1のものと、ポリオール組成物の充填剤量を多くした2/1のものが一般的に使用されているが、中空樹脂微粒子を添加した場合、特に2/1タイプの防水塗膜の高温耐久性の低下が大きく、改善が求められている。
【0008】
本発明は、上記公知技術の問題点に鑑みて、中空樹脂微粒子の添加により低比重の防水塗膜を形成することができ、しかも高温耐久性が良好な防水塗膜を形成するポリウレタン防水塗膜層形成用ポリオール組成物及び該防水塗膜層形成用ポリオール組成物を使用したポリウレタン防水塗膜層の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の防水塗膜層形成用ポリオール組成物は、イソシアネート基含有成分と混合して基材に塗布し、硬化させてポリウレタン防水塗膜層を形成するポリオール組成物であって、
ポリオール化合物、可塑剤、充填剤及び鎖延長剤を含み、
前記充填剤は、中空樹脂微粒子、非多孔性無機粉末及び多孔性無機粉末からなり、
前記中空微粒子の配合量が2〜10重量%、前記多孔性無機粉末の配合量が1〜15重量%であることを特徴とする。
【0010】
係る構成のポリオール組成物を使用することにより、中空樹脂微粒子の添加により低比重の防水塗膜を形成することができ、しかも高温耐久性が良好なポリウレタン防水塗膜を形成することができる。
【0011】
本発明のポリオール組成物は、イソシアネート基含有成分とセットで市場流通させ、施工時に現場においてポリオール組成物/イソシアネート基含有成分=1/1もしくは2/1(重量比)にて混合、撹拌して硬化性組成物とし、基材に施工し、反応硬化させることにより、ポリウレタン防水塗膜層を形成する。
【0012】
別の本発明はイソシアネート基含有成分とポリオール組成物とを混合して硬化性組成物とし、前記硬化性組成物を基材に塗布し、硬化させて防水層とするポリウレタン防水塗膜層の製造方法であって、
前記ポリオール組成物は、ポリオール化合物、可塑剤、充填剤及び鎖延長剤を含み、
前記充填剤は、中空樹脂微粒子、非多孔性無機粉末及び多孔性無機粉末からなり、
前記中空微粒子の配合量が2〜10重量%、前記多孔性無機粉末の配合量が1〜15重量%であることを特徴とする。
【0013】
係る構成の製造方法によれば、中空樹脂微粒子の添加により低比重のポリウレタン防水塗膜であって、高温耐久性が良好なポリウレタン防水塗膜を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において使用する中空樹脂微粒子は、熱可塑性樹脂の中空微粒子であり、該熱可塑性樹脂中空粒子を構成する熱可塑性樹脂としては、メチルメタクリレート、メタアクリロニトリル、塩化ビニリデン、アクリロニトリルから選択される少なくとも1種の単量体の重合体又は共重合体であることが好ましく、塩化ビニリデン、アクリロニトリルもしくはこれらの共重合体であることがより好ましい。
【0015】
中空樹脂粒子は、公知の方法により製造することができ、例えばペンタンやヘキサン等の低沸点有機溶剤を内部に含む熱可塑性樹脂のマイクロカプセルを製造し、これを加熱して熱可塑性樹脂を軟化させると同時に内部の低沸点有機溶剤を気化させてマイクロカプセルを膨張させる方法が例示される。中空樹脂微粒子としては市販品を使用してもよく、例えば商品名ミクロパール(松本油脂)、商品名エクスパンセル(日本フィライト)などが例示される。
【0016】
本発明において使用する中空樹脂微粒子は、無機微粉末付着処理したものであることが好ましい。無機微粉末付着処理した中空樹脂微粒子を使用することにより、ポリオール組成物製造時において飛散が防止される結果作業性が改善され、中空樹脂微粒子の添加量の安定したポリオール組成物が得られる。
【0017】
中空樹脂粒子の表面に無機微粉末付着処理を行う方法としては、バインダーを使用して付着させる方法が一般的である。バインダーとしては、低分子量反応性化合物、溶剤系樹脂、ポリウレタン樹脂エマルジョンやアクリル樹脂エマルジョン樹脂などのエマルジョン樹脂や水溶性樹脂などが使用可能である。中空樹脂粒子の表面に無機微粉末付着処理を行う具体的方法としては、例えばエマルジョン樹脂に無機微粒子を所定の無機微粒子/樹脂固形分比となるように添加分散し、この分散液に中空樹脂粒子を添加し、乾燥する方法が例示される。無機微粉末としては、公知の無機微粉末を使用することができ、具体的には炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを例示することができる。無機微粉末付着処理した中空樹脂微粒子としては、市販品を使用してもよく、例えばエクスパンセルEMC(日本フィライト)が例示される。
【0018】
本発明において使用する多孔性無機粉末としては、貝殻粉、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土、セピオライト、モンモリロナイト、ゾノトライト、高炉スラグや製鋼スラグなどのスラグ、大谷石粉、活性白土を例示することができる。使用する多孔性無機粉末の平均粒子径は0.5〜50μmであることが好ましく、0.5〜20μmであることがより好ましく、1〜20μmであることがさらに好ましい。平均粒子径が大きすぎる場合は、形成される防水塗膜の強度が低下し、平均粒子径が小さすぎる場合は、形成される防水塗膜の高温耐久性改善効果が十分でない場合がある。また使用する多孔性無機粉末は、かさ密度が0.01〜1g/ccであることが好ましく、0.1〜0.5g/ccであることがより好ましい。
【0019】
ポリオール組成物を構成するポリオール化合物は、ポリウレタン樹脂防水塗膜の分野において公知のポリオール化合物を限定なく使用することができ、より具体的には官能基数が2〜3のポリエーテルポリオールを使用する。該ポリエーテルポリオールとしては、低分子量グリコール、トリオールの少なくとも1種を開始剤としてプロピレンオキサイド、又はプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドを開環付加させた平均分子量が500〜3000のポリオール化合物を使用することが好ましい。
【0020】
ポリオール組成物の構成成分である可塑剤としては、公知の可塑剤を限定なく使用でき、例えばDOP,DOA(ジオクチルアジペート)、DINP,DINA、植物油などの使用が好ましく、特にDINP,DINA、植物油の使用が好ましい。
【0021】
ポリオール組成物の構成成分である鎖延長剤は、ポリウレタン樹脂の技術分野において公知の鎖延長剤を使用することができ、メチレンビス−o−クロルアニリン(MOCA),2,4−トルエンジアミンの置換誘導体、2,6−トルエンジアミンの置換誘導体、4,4’−ジアミノジフェニルメタンの各アミノ基のo−位置の少なくとも1つの置換誘導体、フェニレンジアミン類、キシリレンジアミン類などが例示され、より具体的には、3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミン、3,5−ビス(メチルチオ)−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、m−キシリレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミンなどが例示される。鎖延長剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。3,5−ビス(メチルチオ)−2,4−トルエンジアミンとの80/20混合物はエタキュア300(アルベマール社製)として市販されている。
【0022】
鎖延長剤成分として低分子量多価アルコールを使用することも好ましい態様であり、係る多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどを例示することができる。低分子量多価アルコールは、上記のアミン類と混合して使用してもよいが、イソシアネート基含有成分としてNCO基末端プレポリマーを使用する場合には、該プレポリマー構成成分として使用してもよい。
【0023】
ポリオール組成物の構成成分としては、中空樹脂微粒子、多孔性無機粉末に加えて他の充填剤を添加してもよく、係る充填剤としては、公知の充填剤、添加剤を使用することができ、具体的には炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ、シリカアルミナ、タルク等の無機粉末、樹脂微粉末、顔料などが例示される。
【0024】
ポリオール組成物の構成成分としては、必要に応じて他の成分を添加することができ、具体的には酸化防止剤、耐候剤、消泡剤、触媒、カップリング剤等が例示される。
【0025】
ポリオール組成物と混合して反応原液組成物を形成するイソシアネート成分としては、公知のイソシアネート基含有化合物を使用することができるが、イソシアネート基含有プレポリマーの使用が好ましい。イソシアネート基含有プレポリマーは、ポリオール組成物の構成成分として上記に例示したポリオール化合物、低分子量グリコール等から選択される化合物とジイソシアネート化合物とをNCO過剰、好ましくはNCO/OH当量比1.6〜2.6にて反応させて得られる。
【実施例】
【0026】
(実施例)
平均分子量2000のポリオキシプロピレングリコールとトルエンジイソシアネート(TDI;2,4/2,6比=80/20)をNCO/OH=にて反応させてイソシアネート基末端プレポリマーを製造した。
【0027】
ポリオール組成物は、3官能、平均分子量7000のポリオキシプロピレングリコール15重量部、可塑剤(DOP)50重量部、鎖延長剤としてMOCA1.5重量部とML−520(イハラケミカル社)10重量部、充填剤としてエクスパンセルEMCを4重量部、重炭酸カルシウム粉末75重量部、カタルポ30重量部、卵殻粉末8重量部、その他の顔料、触媒など4.5重量部の計200重量部を混合してポリオール組成物とした。
【0028】
イソシアネート基含有成分として上記のイソシアネート基末端プレポリマー100重量部とポリオール組成物200重量部を混合し、厚さ約2mmのポリウレタン樹脂シートを作成して物性評価を行った。結果を表1に示した。
【0029】
(比較例)
卵殻粉末8重量部を全量重炭酸カルシウムとした以外は実施例と同じ配合にてポリオール組成物とした。
【0030】
<評価>
評価は以下の方法により行った。測定は常態のサンプルと加熱劣化試験後のサンプルについて行った。加熱劣化は、80℃にて7日間加熱することにより行った。
(硬度)
JIS K 6253に準拠して測定した。測定はデュロメーターA硬度計を使用した。
(引張り特性)
JIS K 6251に準拠して測定した。測定は引張り試験機を使用し、クロスヘッド速度は500mm/minにて行った。
【0031】
【表1】

【0032】
表1の結果により本発明により得られた防水塗膜は、高温耐久性が改善されたものであることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基含有成分と混合して基材に塗布し、硬化させてポリウレタン防水塗膜層を形成するポリオール組成物であって、
ポリオール化合物、可塑剤、充填剤及び鎖延長剤を含み、
前記充填剤は、中空樹脂微粒子、非多孔性無機粉末及び多孔性無機粉末からなり、
前記中空微粒子の配合量が2〜10重量%、前記多孔性無機粉末の配合量が1〜15重量%であることを特徴とするポリウレタン防水塗膜層形成用ポリオール組成物。
【請求項2】
イソシアネート基含有成分とポリオール組成物とを混合して硬化性組成物とし、前記硬化性組成物を基材に塗布し、硬化させて防水層とするポリウレタン防水塗膜層の製造方法であって、
前記ポリオール組成物は、ポリオール化合物、可塑剤、充填剤及び鎖延長剤を含み、
前記充填剤は、中空樹脂微粒子、非多孔性無機粉末及び多孔性無機粉末からなり、
前記中空微粒子の配合量が2〜10重量%、前記多孔性無機粉末の配合量が1〜15重量%であることを特徴とするポリウレタン防水塗膜層の製造方法。

【公開番号】特開2008−63351(P2008−63351A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239124(P2006−239124)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】