説明

防水性カバー部材およびそれに用いるカバー本体、ならびに防水性カバー部材の製造方法

【課題】
良好な外観を有し、高精度に成形された弾性シール材を備える防水性カバー部材を提供する。
【解決手段】
本発明は、電子機器1の内部に通じる開口部21あるいは当該電子機器1に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に電子機器1に装着可能な防水性カバー部材3であって、電子機器1の開口部21あるいは部品を覆う被覆板30と、被覆板30の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部32と、開口部21あるいは部品の周囲に形成される閉ループ状の溝部23に挿入可能であって突出部32の先端から少なくとも外側の側面を覆う、突出部32より軟質の弾性シール材33と、突出部32の内側および外側の内の少なくとも外側に、突出部32より低い閉ループ状のリブ37,38を備える防水性カバー部材3に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性カバー部材およびそれに用いるカバー本体、ならびに防水性カバー部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、防水性の高い電子機器(例えば、携帯電話)の需要が高くなってきている。電子機器の防水性を高めるには、電池、Simカードあるいはメモリーディスク等を出し入れする部分や、精密部品および光学部品の嵌め込み口周辺のシール性を高める必要がある。電池を収納する電池収納部の防水構造を例に挙げると、電池収納部の開口面を覆う電池蓋に防水部材を一体化させて、電池蓋と電子機器本体との間の防水性を高めると同時に、電池蓋の薄型化を図る構成が知られている(例えば、特許文献1を参照)。かかる構成によれば、電池蓋側に、取付補助部を一体化し、その取付補助部に、シリコーンラバー等から成る防水部材を取り付ける一方、電子機器の筺体側の電池収納部の開口周囲に溝状の嵌合部を形成し、電池蓋側の防水部材を嵌合部に圧入することによって、防水が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4424445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来から公知の上記電池蓋には次のような問題がある。それは、電池蓋の外側の面に微小な凹凸若しくはゆがみが生じるという問題である。以下、図を参照しながら説明する。
【0005】
図7は、従来から公知の電池蓋の内側および外側の両方から見た斜視図である。図8は、図7に示す内側から見た状態の電池蓋のX−X線断面図およびその一部(領域Y)の拡大断面図である。図9は、図8に示す電池蓋の製造状況を示す図であって、弾性シール材の周辺部を拡大して示す拡大断面図である。
【0006】
従来から公知の電池蓋100は、その底板101の内面に、電池蓋100の開口側に向かって突出する矩形の閉ループ状の突出部102と、当該突出部102の頂面から側面にかけて被覆する弾性シール材103とを備える。底板101の外側には、好適には塗装などにより美観を向上させる処理がなされている。図7に示すように、底板101の外側の面には、突出部102の裏側近傍に、微小な凹凸若しくは歪み等の変形領域104が生じる場合がある。本発明者らは、この原因を追及した結果、突出部102に弾性シール材103を一体化する製造工程に、当該原因が潜在していることを突き止めた。
【0007】
図9に示すように、電池蓋100の突出部102に弾性シール材103を一体化する場合、下金型111、第一上金型112、第二上金型113および第三上金型114から成る成形用複合金型内に、成形後の電池蓋100をインサートし、第一上金型112、第二上金型113、第三上金型114および突出部102によって形成された空間内に、弾性シール材103を形成するための液状の弾性シール材組成物を充填し、これを硬化する。当該弾性シール材組成物は、ゲート115から上記空間内に供給される。第一上金型112は、底板101の内面における突出部102の外側近傍に、下方端面122を圧接した状態で型締めされる。同様に、第二上金型113は、突出部102の内側近傍に、下方端面123を圧接した状態で型締めされる。複合金型を型締めすると、下方端面122,123から底板101に対して矢印で示す方向に荷重がかかる。突出部102への弾性シール材103の一体化の工程では、底板101に対して上記の荷重のみならず熱も加えられるので、底板101における下方端面122,123の直下の箇所Z,Zが変形しやすくなる。
【0008】
底板101の箇所Z,Zにおける変形を防止するため、金型の型締め時の荷重を低くして、第一上金型112の下方端面122および第二上金型113の下方端面123から底板101にかかる荷重を低くする方法も考えられる。しかし、荷重を低くすると、弾性シール材組成物が下方端面122,123と底板101の内面との隙間から流出し、弾性シール材103におけるバリの発生、弾性シール材103中での気泡の生成あるいは底板101におけるヒケの発生が起きやすくなる。
【0009】
本発明は、かかる問題を解消すべくなされたものであって、良好な外観を有し、高精度に成形された弾性シール材を備える防水性カバー部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態は、電子機器の内部に通じる開口部あるいは電子機器に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に電子機器に装着可能な防水性カバー部材であって、電子機器の開口部あるいは部品を覆う被覆板と、被覆板の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部と、開口部あるいは部品の周囲に形成される閉ループ状の溝部に挿入可能であって突出部の先端から少なくとも外側の側面を覆う、突出部より軟質の弾性シール材と、突出部の内側および外側の内の少なくとも外側に、突出部より低い閉ループ状のリブを備える防水性カバー部材である。
【0011】
本発明の別の一実施形態は、さらに、被覆板の外側の面に加飾層を備える防水性カバー部材である。
【0012】
本発明の一実施形態は、電子機器の内部に通じる開口部あるいは電子機器に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に電子機器に装着可能な防水性カバー部材用のカバー本体であって、電子機器の開口部あるいは部品を覆う被覆板と、被覆板の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部と、突出部の内側および外側の内の少なくとも外側に、突出部より低い閉ループ状のリブを備えるカバー本体である。
【0013】
本発明の一実施形態は、電子機器の内部に通じる開口部あるいは電子機器に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に電子機器に装着可能な防水性カバー部材の製造方法であって、電子機器の開口部あるいは部品を覆う被覆板と、被覆板の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部と、突出部の内側および外側の内の少なくとも外側に、突出部より低い閉ループ状のリブを備えるカバー本体を、成形用の複合金型内にインサートするインサート工程と、複合金型を構成する下金型を被覆板の外面側に配置し、複合金型を構成する別の金型であって被覆板を挟んで下金型と対向する1または2以上の上金型の下方端面をリブの上に接する状態として、下金型と上金型との間を型締めする型締め工程と、複合金型内を加圧すると共に加温して、上金型と突出部とから少なくとも形成される空間内に弾性シール材組成物を供給し、開口部あるいは部品の周囲に形成される閉ループ状の溝部に挿入可能であって突出部の先端から少なくとも外側の側面を覆う、突出部より軟質の弾性シール材を成形する成形工程と、を含む防水性カバー部材の製造方法である。
【0014】
本発明の別の一実施形態は、さらに、カバー本体に形成されるリブが鋭角の頂部を備える防水性カバー部材の製造方法である。
【0015】
本発明の別の一実施形態は、さらに、下金型において、被覆板の外面と接する側の面にコート層を備える防水性カバー部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、良好な外観を有し、高精度に成形された弾性シール材を備える防水性カバー部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、第一の実施の形態に係る防水性カバー部材の一例である電池蓋を、電子機器の筺体から取り外して、筺体の背面側および電池蓋の内側をそれぞれ正面に向けて示す図および電池蓋の内側の一部(領域B)の拡大図である。
【図2】図2は、図1に示す電池蓋の内側の斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す電池蓋のA−A線断面図およびその一部(領域C)の拡大断面図である。
【図4】図4は、電池蓋のカバー本体を金型内にインサートして弾性シール材を突出部に一体成形する状況を示す突出部近傍の断面図および成形後のリブ近傍Dの拡大断面図である。
【図5】図5は、電池蓋のカバー本体を金型内にインサートして弾性シール材を突出部に一体成形する状況を示す突出部近傍の断面図であって、図4に示す方法の変形例を説明するための断面図である。
【図6】図6は、第二の実施の形態に係る防水性カバー部材の一例である背面カバーを、電子機器の背面から外して、電子機器の背面側および背面カバーの内側をそれぞれ正面に向けて示す図である。
【図7】図7は、従来から公知の電池蓋の内側および外側の両方から見た斜視図である。
【図8】図8は、図7に示す内側から見た状態の電池蓋のX−X線断面図およびその一部(領域Y)の拡大断面図である。
【図9】図9は、図8に示す電池蓋の製造状況を示す図であって、弾性シール材の周辺部を拡大して示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の防水性カバー部材、それに用いるカバー本体および防水性カバー部材の製造方法について、図面を参照しながら説明する。以下の各実施の形態では、防水性カバー部材の一例として電池蓋および背面カバーを例に説明するが、防水性カバー部材は、それによって覆われた部分の防水を実現する限り、他の形態に応用可能である。
【0019】
<第一の実施形態>
1.防水性カバー部材の構成
図1は、第一の実施の形態に係る防水性カバー部材の一例である電池蓋を、電子機器の筺体から取り外して、筺体の背面側および電池蓋の内側をそれぞれ正面に向けて示す図および電池蓋の内側の一部(領域B)の拡大図である。図2は、図1に示す電池蓋の内側の斜視図である。図3は、図1に示す電池蓋のA−A線断面図およびその一部(領域C)の拡大断面図である。
【0020】
電子機器1は、その本体を構成する筺体2と、筺体2の背面側に開口して電子機器1の内部に通じる開口部21を覆う防水性カバー部材としての電池蓋3とを備える。筺体2の開口部21は、電池22を収納する電池収納部である。筺体2は、開口部21の外周に、矩形の閉ループ状の溝部23を備える。また、筺体2は、電池蓋3の下縁および側縁との対向部位に、略U字状の端面24を備える。さらに、筺体2は、電池蓋3の上端との接合部位に2つの凹部25,25を備え、電池蓋3の下方部分との接合部位に1つの凹部26を備える。
【0021】
電池蓋3は、開口部21を被覆および露出自在に電子機器1に装着可能な部材である。電池蓋3は、開口部21を覆う被覆板30と、被覆板30の内面からその開口側に向かって突出する矩形の閉ループ状の突出部32と、筺体2側の溝部23に挿入可能であって突出部32の先端から側面を覆うと共に突出部32より軟質の弾性シール材33と、突出部32の外側および内側にそれぞれ形成され、突出部32より低い矩形の閉ループ状のリブ37,38とを備える。
【0022】
弾性シール材33を除き、電池蓋3は、好適には樹脂から成り、より好適には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂から成り、その中でも好適には、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ABS系樹脂あるいはポリアミド系樹脂から成り、その中でも特に耐熱性に優れるポリカーボネート系樹脂を好適に用いることができる。被覆板30は、その上方のみを開口してその他の方向に連接形状の側壁を有する。当該側壁の端面である開口端面34は、略U字形状であって、電池蓋3を筺体2に取り付けた際に筺体2側の端面24と接する。突出部32は、溝部23の深さよりも低く形成される矩形の閉ループ状の凸部である。
【0023】
突出部32は、その先端に、好適にはエラストマー製から成る矩形の閉ループ状の弾性シール材33を備える。弾性シール材33の好適な材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、ニトリルゴム(NBR)、天然ゴム等を例示でき、その中でも特に耐熱性、耐寒性に優れ、圧縮永久歪が小さいシリコーンゴムを好適に用いることができる。
【0024】
電池蓋3は、その上端に2つの逆L字状の凸部35,35を所定間隔で離間して備え、電池蓋3の下方部分に1つの逆L字状の凸部36を備える。電池蓋3を筺体2の背面に取り付ける際には、凸部36を凹部26の開口部分から挿入し、凸部35,35を凹部25,25に向けて挿入する。凸部35,35,36および凹部25,25,26は、かかる取り付けができるような形状と位置に形成されている。ただし、電池蓋3と筺体2との取り付け方法は、上記方法に限定されるものではない。
【0025】
リブ37,38は、突出部32のそれぞれ外周囲および内周囲に形成される矩形の閉ループ状の凸部である。後述するように、リブ37,38は、弾性シール材33を突出部32に一体成形する前に、一体成形後よりも高い凸部であったが、一体成形時の加圧および加温によって低くなった残部である。リブ37,38の好適な幅(底部の最も広い幅)は、0.01〜0.2mm(10〜200μm)の範囲、さらに好ましくは、0.02〜0.15mm(20〜150μm)の範囲である。また、リブ37,38の好適な高さは、0.01〜0.18mm(10〜180μm)の範囲、さらに好ましくは、0.02〜0.13mm(20〜130μm)の範囲である。また、リブ37,38の突出部32と弾性シール材33との一体化前の高さは、0.02〜0.20mm(20〜200μm)の範囲、より好ましくは0.03〜0.15mm(30〜150μm)の範囲であり、上記一体化前のリブ37,38の底面と頂点(頂点がない場合には、リブ37,38の側面が合わさる仮想の頂点)との間の角度、すなわち頂角は、好ましくは30〜70度の範囲であり、さらに好ましくは30〜60度の範囲である。
【0026】
リブ37,38は、一体成形時に、弾性シール材33を構成するための液状の弾性シール材組成物(好適には、エラストマー組成物)が突出部32の周囲に流出するのを防止する機能を持つ。加えて、リブ37,38は、弾性シール材33と被覆板30との隙間の露出を防ぎ、リブ37,38の各内側に係止する役割を持つ。このため、電池蓋3を筺体2からの着脱を繰り返しても、ユーザの爪等が弾性シール材33と被覆板30との隙間に入り込む危険性はほとんど無く、弾性シール材33が突出部32から剥がれるのを有効に防止することができる。リブ37,38は、突出部32の外側および内側にそれぞれ形成される方が好ましいが、リブ37,38のいずれか一方のみを形成することもできる。リブ37,38のいずれか一方のみを形成する場合には、特に、突出部32の外周囲に形成されるリブ37のみを形成する方が好ましい。これは、以下の理由による。突出部32の先端部分を被覆する弾性シール材33と溝部23との間を密閉して防水性を確保する必要から、水が浸入してくる突出部32の少なくとも外側に、弾性シール材33を形成する。したがって、突出部32の外側に弾性シール材33を形成した場合、同じ外側にリブ37を形成する必要がある。
【0027】
被覆板30は、好適に、その外側の面に加飾層39を備える。加飾層39は、顔料系あるいは染料系のいずれの塗料を用いて形成しても良く、より好ましくは、耐候性の高い顔料系の塗料から塗装または印刷により形成される。
【0028】
2.防水性カバー部材の製造方法
図4は、電池蓋のカバー本体を金型内にインサートして弾性シール材を突出部に一体成形する状況を示す突出部近傍の断面図および成形後のリブ近傍Dの拡大断面図である。
【0029】
電池蓋3は、弾性シール材33と、それを除くカバー本体40とから成る。カバー本体40は、少なくとも、被覆板30と、突出部32と、リブ37,38とを含み、この実施の形態では、凸部35,36も含む。カバー本体40の突出部32に弾性シール材33を成形する際、まず、下金型41と、上金型を構成する第一上金型42,同じく上金型を構成する第二上金型43と、同じく上金型を構成する第三上金型44とから構成される成形用の複合金型内にカバー本体40をインサートする(インサート工程)。下金型41は、カバー本体40の被覆板30と接するように配置される。上金型は、被覆板30を挟んで下金型41と対向する金型である。第一上金型42は、突出部32の頂部を下方に向かって貫く中心軸から突出部32の外側の領域に配置される。第二上金型43は、突出部32の上記中心軸から突出部32の内側の領域であって、かつ弾性シール材33の下方域までの高さに配置される。第三上金型44は、第一上金型42上に配置され、弾性シール材33の上方域に配置される。
【0030】
第一上金型42および第二上金型43は、それぞれの下端に、リブ37,38の頂部に接する下方端面52および下方端面53を備える。下金型41をカバー本体40の外面側に配置し、第一上金型42および第二上金型43の各下方端面52,53をリブ37,38の上に接する状態として、下金型41と、第一上金型42と、第二上金型43と、第三上金型44とを型締めする(型締め工程)。次に、リブ37,38を残すことができる荷重にて複合金型内を加圧すると共に加温して、主に第一上金型42、第二上金型43、第三上金型44および突出部32から形成される空間V内に弾性シール材組成物を供給して、弾性シール材33を成形する(成形工程)。当該組成物の供給口は、空間Vに通じるように第二上金型43と第三上金型44との間に形成されたゲート45である。
【0031】
ここで、第一上金型42および第二上金型43から下金型41に加わる荷重は、被覆板30の外側の面に凹凸等の変形が生じないように、従来よりも低く設定されている。具体的に例示すれば、好適な成形荷重は、従来の335〜735kNに対して約10%低減した301〜661kNである。成形荷重を低くすると、弾性シール材組成物は、突出部32の周囲に拡がりやすくなるが、リブ37,38によってせき止められる。成形工程中において、第一上金型42および第二上金型43の各下方端面52,53は、それぞれリブ37,38をその頂部から押しつぶしながら、下金型41の方向に微動する。この結果、リブ38近傍Dの拡大断面図に示すように、リブ38(およびリブ37)は、一点鎖線の位置から実線の位置まで低くなる。最終的に、リブ37,38は、完全に消失せずに被覆板30の内面より少し高い位置になる。このように、成形工程中、リブ37,38は低くなっても完全には消失しないので、弾性シール材組成物のせき止めの効果は、成形工程中において維持される。
【0032】
リブ37,38の頂部は鋭角で細くなっているため、第一上金型42および第二上金型43から下金型41に対して荷重が加わると、各下方端面52,53はリブ37,38の各頂部を容易に押しつぶすことができる。この結果、リブ37,38の頂面と、第一上金型42および第二上金型43の各下方端面52,53との隙間をゼロにあるいは極めて薄くすることができる。したがって、弾性シール材組成物が各下方端面52,53を超えて、リブ37,38の外に流出する危険性は極めて低くなる。リブ37,38の各頂部を水平面として、第一上金型42および第二上金型43の各下方端面52,53と隙間なく接するようにして、弾性シール材組成物の流出を防止することも理論的には可能である。しかし、リブ37,38の各頂面を、各下方端面52,53と正確に接するように水平かつ平滑にすることは極めて難しい。このため、この実施の形態では、リブ37,38の各頂部をつぶれやすい形状にして、弾性シール材組成物が各下方端面52,53を超えて、リブ37,38の外に流出しないようにしている。
【0033】
図3に示す加飾層39を被覆板30の外側の面に形成する加飾工程は、上記のインサート工程の前、あるいは成形工程の後に行うことができる。成形工程によって加飾層39に傷が付いたり、歪んだりするのを確実に防止するには、加飾工程を、成形工程後に行うのが好ましい。
【0034】
第一上金型42および第三上金型44は、弾性シール材33の成形後に成形体から容易に分離しやすいように分割されているが、これらを一体化しても良い。また、弾性シール材33の頂部近傍が突出部32の内側にも膨らんだ形状の場合には、第二上金型43を、第一上金型42および第三上金型44と同様に分割しても良い。
【0035】
図5は、電池蓋のカバー本体を金型内にインサートして弾性シール材を突出部に一体成形する状況を示す突出部近傍の断面図であって、図4に示す方法の変形例を説明するための断面図である。
【0036】
図5に示すように、下金型41は、被覆板30の外面と接する側の面に、コート層60を備える。コート層60は、被覆板30の外側の面と同等若しくはそれ以下の硬度を有する層である。硬度は、測定対象物の材質に合った方法にて測定されるが、被覆板30およびコート層60の両方を樹脂にて形成し、あるいは被覆板30を樹脂にて形成する一方でコート層60をエラストマーにて形成する場合を例示すれば、硬度はショア硬度を意味する。コート層60は、好適には、樹脂から構成される層であって、好適には、シリコーン系樹脂あるいはフッ素系樹脂から成る。下金型41の内側の面にコート層60を形成することによって、下金型41の形状および電池蓋3の寸法誤差を、コート層60にて吸収できる。この結果、電池蓋3の外面に凹凸等の変形がさらに生じにくくなる。
【0037】
<第二の実施形態>
図6は、第二の実施の形態に係る防水性カバー部材の一例である背面カバーを、電子機器の背面から外して、電子機器の背面側および背面カバーの内側をそれぞれ正面に向けて示す図である。
【0038】
電子機器70は、その背面側に開口する開口部71を覆う防水性カバー部材の一例である背面カバー80を備える。開口部71は、電池72を収納する電池収納部である。電子機器70は、その背面における開口部71の外側に、矩形の閉ループ状の溝部73を備える。溝部73で囲まれた領域には、開口部71の他に、ディスク若しくはカードを装填する開口部74もある。さらに、電子機器70は、その背面側であって溝部73の外側の領域に、カメラ75を備える。カメラ75は、電子機器70に取り付けられる防水を要する部品の一例である。カメラ75の外周には、矩形の閉ループ状の溝部73’を備える。すなわち、電子機器70は、その背面に、2つの溝部73,73’を独立して備える。
【0039】
背面カバー80は、電子機器70の背面全体を覆うように電子機器70に取り付けられる防水性カバー部材である。背面カバー80は、電子機器70の背面に対向する底板と、電子機器70の側面に対向する側壁とを連接したトレイ形状の被覆板81を有する。背面カバー80は、被覆板81における底板の内面から被覆板81の開口側に向かって突出する矩形の閉ループ状の突出部82と、溝部73に挿入可能であって突出部82の先端から側面を覆うと共に突出部82より軟質の弾性シール材83と、突出部82の外側および内側に形成され突出部82より低い矩形の閉ループ状のリブ87,88とを備える。また、背面カバー80は、電子機器70の溝部73’と対向する位置に、被覆板81における底板の内面から被覆板81の開口側に向かって突出する矩形の閉ループ状の突出部82’と、溝部73’に挿入可能であって突出部82’の先端から側面を覆うと共に突出部82’より軟質の弾性シール材83’と、突出部82’の外側および内側に形成され突出部82’より低い矩形の閉ループ状のリブ87’,88’とを備える。リブ88’の内側の領域には、カメラ75による撮影が可能なように、透明板85が嵌め込まれている。
【0040】
突出部82、弾性シール材83およびリブ87,88は、第一の実施の形態にて説明した電池蓋3の突出部32、弾性シール材33およびリブ37,38と同様の構成および製法にて形成される。同様に、突出部82’、弾性シール材83’およびリブ87’,88’も、また、第一の実施の形態にて説明した電池蓋3の突出部32、弾性シール材33およびリブ37,38と同様の構成および製法にて形成される。したがって、この実施の形態では、突出部82,82’、弾性シール材83,83’およびリブ87,87’,88,88’についての重複した説明を省略し、第一の実施の形態にて説明した内容を代用する。
【0041】
<その他の実施の形態>
以上、本発明の好適な各実施の形態について説明してきたが、本発明は、上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々変形実施可能である。
【0042】
例えば、防水性カバー部材は、開口部21,71,74以外の開口部あるいは取付口、例えば、メモリーカード等の取付口を覆うことのできるものでも良い。加飾層39は、必ずしも要しない。リブ37,38,87,87’,88,88’の頂部は、鋭角であるのが好ましいが、鋭角であることは必須ではなく、鈍角でも良い。さらには、当該頂部を、湾曲形状あるいは平面形状としても良い。
【0043】
突出部32,82,82’の外形は、矩形である必要は無く、楕円や真円の他、三角形、五角形以上の多角形でも良い。リブ37,38,87,87’,88,88’もまた同様である。ただし、リブ37,38,87,87’,88,88’は、突出部32,82,82’の外周および内周に近接配置されている方が好ましいことから、突出部32,82,82’と同じ形状の閉ループ状にて形成されるのが好ましい。弾性シール材33,83,83’は、それぞれ、突出部32,82,82’の外側にのみ形成されていても良い。防水性カバー部材は、電池蓋3あるいは背面カバー80のように電子機器2および電子機器70からそれぞれ完全に分離する部材に限定されるものではなく、電子機器2,70に常に接続されている開閉可能な蓋であっても良い。
【0044】
上記の第一の実施の形態および第二の実施の形態は、互いにそれぞれの特徴を一以上組み合わせても良い。例えば、第一の実施の形態に係る防水性カバー部材の一例である電池蓋3は、第二の実施の形態に係る防水性カバー部材の一例である背面カバー80と同様、電子機器1の背面全体を覆う形状としても良い。一方、背面カバー80は、電池蓋3と同様、電子機器1の背面の一部を覆う形状でも良い。
【0045】
本発明は、携帯電話機器、その他通信機器以外の広範な電子機器に適用可能であって、例えば、防水を必要とするならば、固定電話機器の本体とワイヤレス通信可能な子機、ホームオーディオ機器に使用するリモートコントローラ、バッテリーを搭載する電気自動車等にも応用できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、防水性の電子機器に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 電子機器
3 電池蓋(防水性カバー部材の一例)
21 開口部
23 溝部
30 被覆板
32 突出部
33 弾性シール材
37,38 リブ
39 加飾層
40 カバー本体
41 下金型(複合金型を構成する一部)
42 第一上金型(複合金型を構成する上金型の一部)
43 第二上金型(複合金型を構成する上金型の一部)
52,53 下方端面
60 コート層
70 電子機器
71,74 開口部
73,73’ 溝部
75 カメラ(部品の一例)
80 背面カバー(防水性カバー部材の一例)
81 被覆板
82,82’ 突出部
83,83’ 弾性シール材
87,87’ リブ
88,88’ リブ
V 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の内部に通じる開口部あるいは当該電子機器に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に当該電子機器に装着可能な防水性カバー部材であって、
上記電子機器の上記開口部あるいは上記部品を覆う被覆板と、
当該被覆板の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部と、
上記開口部あるいは上記部品の周囲に形成される閉ループ状の溝部に挿入可能であって上記突出部の先端から少なくとも外側の側面を覆う、上記突出部より軟質の弾性シール材と、
上記突出部の内側および外側の内の少なくとも上記外側に、上記突出部より低い閉ループ状のリブを備えることを特徴とする防水性カバー部材。
【請求項2】
前記被覆板の外側の面に、さらに加飾層を備えることを特徴とする請求項1に記載の防水性カバー部材。
【請求項3】
電子機器の内部に通じる開口部あるいは当該電子機器に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に当該電子機器に装着可能な防水性カバー部材用のカバー本体であって、
上記電子機器の上記開口部あるいは上記部品を覆う被覆板と、
当該被覆板の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部と、
上記突出部の内側および外側の内の少なくとも上記外側に、上記突出部より低い閉ループ状のリブを備えることを特徴とするカバー本体。
【請求項4】
電子機器の内部に通じる開口部あるいは当該電子機器に取り付けられる防水を要する部品を被覆および露出自在に当該電子機器に装着可能な防水性カバー部材の製造方法であって、
上記電子機器の上記開口部あるいは上記部品を覆う被覆板と、当該被覆板の内面からその開口側に向かって突出する閉ループ状の突出部と、当該突出部の内側および外側の内の少なくとも上記外側に、上記突出部より低い閉ループ状のリブを備えるカバー本体を、成形用の複合金型内にインサートするインサート工程と、
上記複合金型を構成する下金型を上記被覆板の外面側に配置し、上記複合金型を構成する別の金型であって上記被覆板を挟んで上記下金型と対向する1または2以上の上金型の下方端面を上記リブの上に接する状態として、上記下金型と上記上金型との間を型締めする型締め工程と、
上記複合金型内を加圧すると共に加温して、上記上金型と上記突出部とから少なくとも形成される空間内に弾性シール材組成物を供給し、上記開口部あるいは上記部品の周囲に形成される閉ループ状の溝部に挿入可能であって上記突出部の先端から少なくとも外側の側面を覆う、上記突出部より軟質の弾性シール材を成形する成形工程と、
を含むことを特徴とする防水性カバー部材の製造方法。
【請求項5】
前記カバー本体に形成される前記リブは、鋭角の頂部を有していることを特徴とする請求項4に記載の防水性カバー部材の製造方法。
【請求項6】
前記下金型は、前記被覆板の外面と接する側の面に、コート層を備えることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の防水性カバー部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−226853(P2012−226853A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90816(P2011−90816)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】