説明

防水施工用通気緩衝シート、及び防水施工屋上コンクリート構造

【課題】ポリウレタン防水剤を吹き付け施工により塗布した場合に、しばしば防水層17表面に皺が発生する不具合がある。そこで皺発生を防止し得る通気緩衝シートを提供することを目的とする。
【解決手段】合成樹脂フィルム層[A]11と不織布層[C]13の間に中層[B]12を配置して一体化した防水施工用通気緩衝シート10である。層[A]11が厚み10μm以上であり、層[C]13が目付100g/m2以上で、ニードルパンチまたは流体交絡法により交絡されたものであり、中層[B]12がガラス繊維構造体を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜防水工事に用いる防水施工用通気緩衝シート、及び塗膜防水の施された屋上コンクリート構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築防水工事におけるメンブレン防水工事として、塗膜防水工事、アスファルト防水工事、シート防水工事が広く実施されている。
【0003】
上記塗膜防水工事では、コンクリート等の下地面にプライマー及び接着剤(或いは接着剤のみ)を塗布した後、通気緩衝シートを貼り付け、更にポリウレタン等の防水剤を塗布することにより塗膜防水層を形成している。
【0004】
塗膜防水工事に用いる上記通気緩衝シートとしては、長繊維不織布層(上層)と不織布層(下層)の間に合成樹脂フィルム層(中層)を挟んで一体化した本質的に三層構造の積層体が提案されている(先行技術1:例えば特許文献1参照)。不織布層(下層)は通気層として機能し、下地(例えばコンクリート)から発生する水蒸気等を水平方向に逃がすことで部分的な膨れを防止する。長繊維不織布層(上層)は、この上に塗布される防水剤を一部浸透させることにより防水剤の層(防水層)を強固に固定(アンカー効果)すると共に、この防水層を補強する機能を有する。合成樹脂フィルム層(中層)は遮水層として機能する。
【0005】
なお本出願人は、上記長繊維不織布層(上層)に代えてポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂フィルム層を配置したものを提案中である(先行技術2:特願2008−18593)。
【0006】
これらの防水施工屋上コンクリート構造は所定の効果が発揮される。
【0007】
通気緩衝シート上への防水剤の塗布方法としては、液状(或いは粘稠状)のポリウレタン樹脂等を刷毛やコテ等により手塗りする方法の他、ポリオール類をイソシアネート系のプレポリマーと混合しながらスプレーガンにより吹き付けて塗布する方法等が知られている。
【特許文献1】特許第2605893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、防水剤塗装後の表面に伸び皺の様な外観不良が発生する不具合が散見された。この皺は美観上の欠点というより、地震等で下地(例えばコンクリート)が動いたときに、皺の部分に応力が集中して亀裂を生じる危険があり、これは防水機能上の問題である。
【0009】
そこで本発明においては、皺の発生を防止し得る防水施工用通気緩衝シートを提供すること、並びに塗膜防水が施された皺のない屋上コンクリート構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記皺の発生原因を探るべく種々検討したところ、刷毛等による手塗り施工の場合には皺を生じないが、吹き付け施工の場合において施工面積が広いときには、発生しやすいことが分かった。
【0011】
上記2つの施工環境の違いとして、吹き付け施工の場合には反応熱によってスプレー液が凡そ70〜80℃になるのに対し、手塗り施工ではその様な高温にならないことが挙げられ、この様な高温に曝されることにより通気緩衝シートのフィルム層が伸びることが考えられた。しかし上記先行技術2における上層のPETフィルムが80℃程度で伸びるとは想定し難く、一方中層の合成樹脂フィルムとして熱で伸びやすい素材のものを用いたとしても、上層のPETフィルムによって中層の合成樹脂フィルム層の伸びは抑えられるであろう。かくして吹き付け時の熱によるフィルムの伸張が原因であるとは推論できず、結局のところ、手塗り施工では皺が生じないにもかかわらず、吹き付け施工において伸び皺が発生するという現象の原因は現時点で未解明である。
【0012】
本発明者らは原因の探求を行う一方で皺防止対策も検討していたところ、ガラスクロス等のガラス繊維構造体を用いることで、広い面積に吹き付け施工した場合であっても皺の発生を防止し得るという知見を得た。
【0013】
本発明はこの様な知見の下になされたものであり、本発明に係る防水施工用通気緩衝シートは、合成樹脂フィルム層[A]と不織布層[C]の間に中層[B]を配置して一体化した防水施工用通気緩衝シートであって、前記合成樹脂フィルム層[A]が、厚み10μm以上であり、前記不織布層[C]が、目付100g/m2以上で、ニードルパンチまたは流体交絡法により交絡されたものであり、前記中層[B]が、ガラス繊維構造体を備えたものであることを特徴とする。
【0014】
また本発明に係る防水施工屋上コンクリート構造は、屋上コンクリート層の上に、上記防水施工用通気緩衝シートが敷設され、この上に防水層が施工されたことを特徴とする。
【0015】
上記の様に中層[B]としてガラス繊維構造体を用いたところ、吹き付け施工により防水層(例えばポリウレタン防水層)を形成する場合であっても、皺の発生を防止することができることが実験により確認された。
【0016】
前記ガラス繊維構造体としてはガラスクロス(ガラス繊維製の織物)やガラスペーパー(ガラス繊維を用いた紙状物)が挙げられる。もっとも通気緩衝シートは専らロール状に巻いて保管されるところ、ガラスペーパーは巻き癖がつき易く、通気緩衝シートを施工するときに長手方向の端部が跳ね上がるようになる傾向があり、取扱い性にやや劣る。一方、ガラスクロスは巻き癖がつかず、通気緩衝シートの施工時の取扱い性が良い。従ってガラス繊維構造体のうちでも、ガラスクロスであることが好ましい。
【0017】
上記ガラスクロスの目付としては10〜60g/m2が好ましく、厚みとしては0.2〜0.4mmが好ましい。目付や厚みが小さ過ぎると、皺の発生を防止する効果が乏しくなる懸念があるからであり、目付や厚みが大き過ぎると、通気緩衝シート全体の可撓性が乏しくなって、取扱い性に劣る懸念があるからである。
【0018】
合成樹脂フィルム層[A]の厚みは10μm以上である。層[A]が薄過ぎると、通気緩衝シート全体として柔らかくなり過ぎ、皺が発生し易くなる懸念があるからである。
【0019】
不織布層[C]は、ニードルパンチまたは流体交絡法(例えばウォーターパンチ加工)により交絡されたものである。この様な不織布層[C]であれば、水平方向の通気性が良好で、下地から発生する水蒸気等を水平方向に良好に逃がすことができる。通気性を確実に発揮させる観点から不織布層[C]の目付は100g/m2以上であることを要する。目付の小さいものでは厚みが薄くなりすぎ、通気性に乏しくなるからである。なおニードルパンチまたは流体交絡法により交絡された不織布層を製造するにあたって、紡糸直後に繊維がバラバラにならないようにするため弱くエンボス加工(以下、プレエンボス加工と称することがある)を施すことがあるが、その後のニードルパンチや流体交絡によって、上記プレエンボス加工による熱接着点は殆ど剥がれ、水平方向の通気性を阻害することは実質上殆どない。
【0020】
また本発明の防水施工用通気緩衝シートは、前記中層[B]と前記不織布層[C]を、接着層を介して接合したものであることが好ましく、より好ましくは前記合成樹脂フィルム層[A]と中層[B]も、接着層を介して接合する。
【0021】
上記接着層を介して層[B]と層[C]、層[A]と層[B]を接合することで、これらの層が強力に接合一体化され、剥離の虞が小さい。
【0022】
加えて本発明の防水施工用通気緩衝シートは、前記合成樹脂フィルム層[A]における反中層[B]側表面が、ウレタン樹脂によってコーティングされたものであることが好ましい。
【0023】
通気緩衝シートの上層がフィルムの場合は、不織布の場合のようなアンカー効果が期待できず、この上に形成する防水層との剥離が懸念される。防水層としてはウレタン系のものが汎用されているが、この点に鑑みれば合成樹脂フィルム層[A]の表面(防水層施工側表面)がウレタン樹脂によってコーティングされたものとすることにより、上記ウレタン系防水層との馴染みが良く、剥離が起き難いという利点が得られる。
【0024】
本発明において、JASS8における下地との間の通気抵抗試験での性能評価法により求められる通気量は、10mmAq.圧力空気時に170cm3/分以上であることが好ましい。170cm3/分未満の場合は通気性が乏しいために、防水面の膨れや浮き上がりを生じる懸念があるからである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る防水施工用通気緩衝シートや屋上コンクリート構造によれば、防水層の施工を吹き付け塗布法で行った場合であっても、皺の発生が防止されるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
《防水施工用通気緩衝シートについて》
図1は本発明の一実施形態に係る防水施工用通気緩衝シートをコンクリート(下地)面に施工した様子を表す断面図である。
【0027】
本実施形態の通気緩衝シート10は、合成樹脂フィルム層[A]11と不織布層[C]13の間に、それぞれ接着層14,15を介してガラス繊維構造体の層[B](中層[B])12を挟み、一体とした積層体であって、合成樹脂フィルム層[A]11の防水剤塗装側表面(反中層[B]側表面)にウレタン樹脂製コーティング層16が設けられたものである。
【0028】
通気緩衝シート10には貫通孔22が形成されている。通気緩衝シート10としては、貫通孔22が分散形成されたものであっても、形成されていないものであっても良いが、貫通孔22を設けることにより、防水層17(例えばウレタン)を下地(コンクリート21)に直接接合させることができ、接合強度の点から好ましい。
【0029】
以下に、それぞれの層、並びに層[A],[B],[C]の接合方法について述べる。
【0030】
1.合成樹脂フィルム層[A]
合成樹脂フィルム層[A]11の素材としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が代表的であるが、これらの他、ポリオレフィン系樹脂、これらの共重合体の他、エチレンビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル重合体、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル系樹脂、或いはこれら樹脂の混合物(共重合体であるものを含む)などが使用できる。もっとも、[1]防水層の材料として用いられるウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂など及びそれら樹脂に用いる溶剤に対する相互作用(耐溶解性や接着性など)の観点、[2]施工における取扱性を配慮した適度な剛性や強度の観点、並びに[3]施工の際に雨が降る場合を想定したときの疎水性という観点などを総合考慮すると、疎水性及び耐溶剤性の合成樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、変性ポリエステル、またはこれらを混合したもの、またそれらのいずれかの共重合体フィルムの適用が好ましい。
【0031】
合成樹脂フィルム層[A]の厚みは10μm以上であり、より好ましくは15μm以上、80μm以下である。薄過ぎると、通気緩衝シート全体が非常に柔らかいものとなって皺が発生し易くなり、逆に厚過ぎると、通気緩衝シート全体が硬くなって下地への追従性が悪くなるからである。これらは単層であっても複層であっても良い。
【0032】
合成樹脂フィルム層[A]11は、防水層を補強する役割を担う。また通気緩衝シート10を敷設後、防水剤を塗布する前に降雨等により通気緩衝シート10表面に水分が残っても、層[A]11は樹脂フィルムであるので、表面の水分を拭き取る等により容易に除去でき、この上への防水剤の塗布を円滑に行うことができる。
【0033】
2.ガラス繊維構造体層[B](中層[B])
ガラス繊維構造体層[B]12としては、前述の様にガラスクロスやガラスペーパー等が挙げられる。
【0034】
ガラスクロスとしては市販品を用いることができ、例えば織密度が1〜3本/cmで製織し適宜樹脂を付与したもので、目付50〜13g/m2(樹脂込み)〔JIS L 1096〕、厚さ0.23〜0.33mm〔厚み計(ダイヤルゲージ式、加圧面積:1cm2、圧力:50gf/cm2)〕、引張強度(経,緯)220N/5cm以上〔JIS L 1096〕、伸度(経,緯)2〜4%〔JIS L 1096〕のもの等が挙げられる。
【0035】
3.不織布層[C]
不織布層[C]13の素材としては、ガラス系短繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリプロピレン系繊維、トウ開繊によるポリエステルスパンボンドやポリビニルアルコールスパンボンドが好ましい。殊に、下地がコンクリートの場合においては耐アルカリ性に優れたものとするのが好ましく、この点を考慮するとアクリル系繊維製不織布が好ましい。
【0036】
不織布層[C]13は、ニードルパンチまたは流体交絡法により交絡されたものであって、目付が100g/m2以上であり、これにより良好な通気性が実現され得る。通気性をより良好にする観点から、より好ましくは目付160g/m2以上である。一方、不織布層[C]13の目付の上限は300g/m2とするのが好ましい。目付が高すぎると、通気緩衝シート10の質量が重くなって作業性が低下するからである。より好ましくは250g/m2以下である。
【0037】
不織布層[C]13の繊維としては長繊維、短繊維のいずれであっても良いが、強度の観点からは長繊維であることが好ましい。
【0038】
不織布層[C]13は、JASS8での評価法〔JASS(1986) 参考試験1.メンブレン防水層の性能評価試験方法「8.下地との間の通気抵抗試験」(第340〜342頁)〕により求められる下地面との間の通気量が、10mmAq.圧力空気時に170cm3/分以上の流出量であることが好ましい。尚この様な不織布層[C]13であることにより、通気緩衝シート10として通気量170cm3/分以上の性能を発揮し得る。
【0039】
不織布層[C]13は、上記の通り通気層として機能するものであるが、不織布であることから、不織布特有のしなやかさで下地への追従性を実現することができる。
【0040】
4.接着層を用いることによる層[A],[B],[C]の接合方法
接着層14,15としては、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルムなどのポリオレフィン系フィルムや、これらの共重合体のフィルムの他、ポリエステル系フィルム、ポリアミド系フィルム、塩化ビニルフィルムや酢酸ビニル重合体(EVA)フィルム等が挙げられる。
【0041】
これら樹脂フィルムを用いて層[B]−層[C]、層[A]−層[B]の接合を行う手法としては、押し出しラミ法(エクストルージョンラミネーション法)やドライラミネーション法等のラミネート法、或いはコーティング法により積層一体化する方法が挙げられる。
【0042】
例えば押し出しラミ法について、接着層14,15としてポリエチレンフィルムを用いた場合を例示的に詳しく述べると、合成樹脂フィルム層[A]11とガラス繊維構造体層[B]12の間、及びガラス繊維構造体層[B]12と不織布層[C]13の間に、溶融状態ないし半溶融状態のポリエチレンフィルムの原料を押出ながらラミネートする(押し出しラミ法によるサンドラミ法)。
【0043】
上記における接着層14,15の厚みとしては、10〜80μmが好ましい。薄すぎると、ガラス繊維構造体層[B]12や不織布層[C]13に対するアンカー効果が乏しくなって、接合強度が低くなる懸念があるからである。一方、厚すぎると、通気緩衝シートが硬くなり過ぎて下地への追従性が悪くなるからである。
【0044】
上記の他、接着層14,15としてアクリル系粘着剤も挙げられる。この場合は溶剤に溶解し、転写ロールを用いて層[B]或いは層[C],[A]の表面に塗布し、このアクリル系粘着剤の粘着性によって各層を接合すると良い。
【0045】
5.コーティング層
コーティング層16の形成方法としては、合成樹脂フィルム層[A]11の表面への印刷が挙げられる。この印刷材料にはウレタン系インキを用いると良い。このインキには、ジイソシアネートとジオールの重付加反応で得られるポリウレタン樹脂が挙げられ、ジイソシアネートとしてはTDI(トルレンジイソシアネート)やIPDI(イソフォロンジイソシアネート)が用いられ、ジオールとしては長鎖のポリエーテルやポリエステルが用いられる。
【0046】
印刷においては、有機溶剤に溶解したポリウレタン樹脂をグラビアロールで塗布する方法、またはポリウレタン樹脂をビヒクルとして含有する溶剤型のインキをグラビアロールで塗布する方法が挙げられる。上記有機溶剤としてはトルエン、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等の混合溶剤を一般に用いることができる。なおポリウレタン樹脂の濃度としては10〜30%が好ましい。10%未満では、グラビアロールで塗布する際に塗布量が少なくなり、この為にポリウレタン防水層との接着が悪くなる懸念があり、30%超であると、通気緩衝シートをロール状に巻いたときにブロッキングを起こす虞がある上、有機溶剤への溶解濃度が高いために粘度も高くなるので、グラビアロールで塗布する際の適性粘度から外れることになるからである。
【0047】
《施工方法について》
次に通気緩衝シート10を用いた施工方法について述べる(図1)。
【0048】
施工にあたっては、まずコンクリート21等の下地面にプライマー19を塗布し(下地の素材によってはプライマー19を省略しても良い)、続いて接着剤18を塗布する。次いで通気緩衝シート10を、その合成樹脂フィルム層[A]11側を表側にして、即ち不織布層[C]13側を接着剤18に接着させるようにして、接着剤18塗布面に配置する。その後、この通気緩衝シート10の上から(即ち合成樹脂フィルム層[A]11の上から)ポリウレタン等の防水剤を塗布する。尚この塗布手法は吹き付け施工あるいは手塗り施工のいずれでも良い。防水剤が硬化すれば(防水層17)、施工が完了する。
【0049】
上記通気緩衝シート10を用いた場合においては、中層[B]にガラス繊維構造体を用いていることから、出来上がりの防水層17上に皺が表れない。
【実施例】
【0050】
以下、実験例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
《評価方法》
まず下記実験例における各種評価方法について述べる。サンプル方向に関しては機械方向(製造流れ方向)をMD方向、機械方向と直交する方向をCD方向と称する。
【0052】
<目付(単位面積当りの質量)>
JIS−L1906に準拠する。具体的にはMD方向に20cm、CD方向に25cm角の試験片を、CD方向に5箇所採取し、それぞれの重量を測定してこれらの平均値を算出した後、1m2当たりの重量に換算して目付量(g/m2)とする。
【0053】
<厚み>
JIS−L1906に準拠する。具体的にはCD方向の試験片全幅1m当たり、10箇所において加圧条件を1.96kPaとして測定し、これらの平均値を算出して厚みとする。
【0054】
但し、接着層14,15並びに実験No.9における中層[B](PEフィルム)の厚みの測定は、下記の方法により行う。
【0055】
即ち、まず通気緩衝シート10の任意部位20箇所から試験片をサンプリングする。次いでこの試験片を、切断面が垂直となるようにカットし、このカット面が観察できるように蒸着して、走査型電子顕微鏡により任意の倍率で撮影する。この撮影された写真において、合成樹脂フィルム層[A]11とガラス繊維構造体層[B]12の間、或いはガラス繊維構造体層[B]12と不織布層[C]13の間に存在する接着層14,15(或いは実験No.9の中層[B])の部分についてノギスで厚みを測定し、上記撮影にあたっての写真倍率を換算して厚みを求める。得られた20箇所の厚み(上記20箇所の試験片におけるそれぞれの厚み)を平均し、接着層14,15(或いは実験No.9の中層[B])の厚みとする。なおノギスで測定するにあたっては、上下のガラス繊維構造体層[B]12や不織布層[C]13に入り込んでいる接着層14,15(或いは実験No.9の中層[B])の部分を端として測定する。また上記カットする際に断面部の形状が変化する懸念がある場合には、この形状変化を抑止するため、急速冷凍装置を使用して通気緩衝シート10を冷凍した後、カットする。因みに接着層14,15として樹脂フィルムを用いた場合の接着層14,15は、その製造過程においてガラス繊維構造体層[B]12や不織布層[C]13にそれぞれ食い込むようにして形成されることから、接着層14,15の形状としては表面に凹凸を有するものとなるので、上記の如き厚み測定方法を採用した。
【0056】
<強度>
5cm×20cmの短冊状にMD及びTD方向別にサンプルを打ち抜く。このサンプルについて、JIS−L1906 5.3.1に準じ、テンシロン引張試験機を用いて破断時にかかる張力をMD、TD方向N=5でそれぞれ測定する。
【0057】
<脱気通気性>
JASS8(1986) 参考試験1.メンブレム防水層の性能評価試験方法「8.下地との間の通気抵抗試験」(第340〜342頁)に従って測定する。
【0058】
<遮水能>
「屋根防水システムの性能評価に関する一般基準」(訳、東京工業大学工業材料研究所、小池研究室、工文社)5.1.4耐水圧試験(第8〜9頁)におけるDIN−16935による試験方法に従って測定する。
【0059】
<施工試験 皺の確認>
コンクリート下地面に接着剤(クロロプレン系接着剤)を0.4kg/m2となるように塗布し、直ちに通気緩衝シート約6m2を合成樹脂フィルム層[A]側を表側にして貼り付け、この上にウレタン系防水材(下記化1)を1kg/m2となるように塗布し、更にもう一度同じウレタン系防水材を1kg/m2となるように重ね塗りする(ウレタン防水材は合計2kg/m2となる)。
【0060】
【化1】

【0061】
このウレタン系防水剤が硬化した後、施工面を目視にて観察し、皺の有無を判定する。
【0062】
《実験例の通気緩衝シートの製造方法》
次に各実験例の通気緩衝シートの製造方法について述べる。なおこの際、理解を容易にするために適宜、図1での符号を付す。
【0063】
<実験No.1〜4,7>
幅2.1m、厚み25μmのポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点70℃)製フィルムを、押出しラミネーション装置に供給し、その上に厚み15μmの共重合ポリエチレンテレフタレートのフィルムを約2m幅で押出し、厚み40μmのフィルム層[A]を得た(フィルム層[A]11)。このフィルム層[A]の表面にウレタン系インキにより印刷を行った(コーティング層16)。
【0064】
他方、固有粘度0.68のポリエチレンテレフタレートを用い、紡糸温度285℃にて、孔径0.35mmノズルより単孔吐出量2.5g/分、引取速度4800m/分にて紡糸し、スパンボンド不織布を得た。次いでこのスパンボンド不織布について、エンボス加工(ドット5mm間隔、エンボス面積率11%、175℃、線圧50kN/m)を行い、弱熱圧着タイプの不織布を得た。更にこの不織布をオルガン社FPD1−40Sを用いて、ニードル深さ13mm、密度80N/cmでニードリングによって、繊度が4.4dtexのスパンボンド不織布層[C]13を得た。なお各不織布層[C]13の目付及び厚みは表1の通りである。
【0065】
中層[B]12として目付、厚みが表1の通りのガラスクロスを準備した。
【0066】
次に、この中層[B]12のガラスクロスと上記フィルム層[A]11の間にポリエチレン(A−B間の接着層14)を配置して、Tダイフィルム押出し機を用いてこのポリエチレンが20μmとなるようにしつつ、中層[B]12とフィルム層[A]11をラミネート加工により一体化した。
【0067】
更にこの複合体(フィルム層[A]11+中層[B]12)と上記ニードリング不織布層[C]13を、上記と同様に、間にポリエチレンを完成後の層厚20μm(B−C間の接着層15)となるようにしつつ、ラミネート加工によって一体化し、通気緩衝シート10を得た。
【0068】
<実験No.5>
フィルム層[A]11として、幅2.1m、厚み40μmのポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点70℃)製フィルムを用い、このフィルム層[A]の表面にウレタン系インキにより印刷を行った(コーティング層16)。
【0069】
不織布層[C]13として次のものを用いた。即ち、繊度4.4dtex、カット長56mmアクリル繊維と繊度4.4dtex、カット長56mmポリエチレンテレフタレート繊維とを混綿比(50/50)で混綿したステープルファイバーを得、このステープルファイバーを定法通りカードとクロスラッパーによりウェッブを形成した。次いで、オルガン社FPD1−40Sを用いて、ニードル深さ13mm、密度80N/cmでニードリングすることにより、目付212g/m2、厚み1.8mmの短繊維不織布層[C]13を得た。
【0070】
上記のフィルム層[A]11と上記の不織布層[C]13を用いたこと以外は、実験No.2と同様にして通気緩衝シート10を得た。
【0071】
<実験No.6>
フィルム層[A]11の表面にウレタンによる印刷加工を施さないこと(コーティング層16を設けないこと)以外は、上記実験No.1と同様にして通気緩衝シート10を得た。
【0072】
<実験No.8>
実験No.1の通気緩衝シートのうち、フィルムA層11として厚み8μmのポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点70℃)製フィルムを用い、不織布層[C]13の厚みを1.0mmとしたこと以外は、実験No.1と同様にして通気緩衝シート10を得た。
【0073】
<実験No.9>
フィルム層[A]11として、上記と同様の製造法により厚み25μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムの上に共重合ポリエチレンテレフタレートを積層して得た厚み75μmのフィルムを用い、不織布層[C]13として実験No.2と同じものを用いた。
【0074】
Tダイフィルム押出し機を用い、上記フィルム層[A]11と不織布層[C]13の間に半溶融状態のポリエチレン(メルトインデックス:7)を挟む様にしてラミネート加工し、厚さ20μmのポリエチレンフィルム層(中層[B]に対応する)がフィルム層[A]11と不織布層[C]13に挟まれ一体化された通気緩衝シートを得た。
【0075】
<実験No.10>
実験No.1における中層[B]12のガラスクロスに代えて下記の積層ガラスペーパーを用いたこと、及びB−C間の接着層15を厚み30μmとしたこと以外は、実験No.1と同様にして通気緩衝シート10を得た。なお上記積層ガラスペーパーは、ガラスペーパー(目付25g/m2)とポリエチレンテレフタレートのスパンボンド不織布(目付15g/m2)との間にポリエチレン(20μm)を挟んで積層したもの(厚み0.3mm、目付58g/m2)である。
【0076】
【表1】

【0077】
《防水施工方法》
コンクリート等からなる下地21に接着剤18(ノガワケミカル株式会社製、商品名DU488B)を0.4kg/m2となるように塗布した後、上記各実験例の通気緩衝シート10を不織布層[C]が接着面になるように貼り付けた。次いで、その上から汎用の平場用ウレタン系防水材を1kg/m2となるようにスプレーガンにより吹き付けて塗布し、硬化後、更に同じく平場用ウレタン系防水剤を2kg/m2となるようにスプレーガンにより吹き付けて重ね塗りした(合計3kg/m2となる)。重ね塗りした防水剤が硬化した後、更にこの上から、紫外線吸収剤などを配合したトップコート用ウレタン防水材を0.3kg/m2になるように塗布して防水層17を形成した。
【0078】
上記の如く施工した防水層に関し、実験No.1〜6,10の通気緩衝シートを用いたものにおいては、防水層表面に皺等が発生しておらず、更に一ヶ月間後に調査したところ、防水層に膨れや浮き上がりもなく、良好な防水層を形成していることが判った。その後1年間調査を実施したが、異常なく良好な状態が保たれていた。
【0079】
但し実験No.6においては、防水層(ポリウレタン防水層)との接着性に劣っていたので、ポリウレタン防水層の施工を注意深く行う必要があることが分かった。
【0080】
実験No.10においては、ガラスペーパーの巻き癖のために通気緩衝シートの長手方向端部が捲れ上がるようになり、施工時における取り扱い性が良くなかった。またガラスペーパーは接着性に乏しく、積層体である通気緩衝シートの製造に手間を要するものであった。
【0081】
一方実験No.7〜9においては防水層表面に皺が発生していた。このうち実験No.9のものは伸びたような皺であり、防水層を吹き付け施工したことが原因であると考えられる。実験No.7のものは凹凸状の皺であり、この原因は不織布層[C]の厚みが小さいために下地21の表面の凹凸が通気緩衝シートの表側面にまで影響して防水層表面に皺として現れたものと考えられる。またこの実験No.7では、通気量が少なく施工一ヶ月後に膨れが発生した。実験No.8のものは波状の皺であり、この原因はフィルム層[A]の厚みが薄いことから通気緩衝シートの形態保持性が乏しくなり、このために施工時における接触で通気緩衝シートに歪が発生して皺が生じたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の一実施形態に係る防水施工用通気緩衝シートをコンクリート(下地)面に施工した様子を表す断面図である。
【符号の説明】
【0083】
10 通気緩衝シート10
11 合成樹脂フィルム層[A]
12 ガラス繊維構造体層[B](中層[B])
13 不織布層[C]
14,15 接着層
16 コーティング層
17 防水層
18 接着剤
19 プライマー
21 コンクリート
22 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂フィルム層[A]と不織布層[C]の間に中層[B]を配置して一体化した防水施工用通気緩衝シートであって、
前記合成樹脂フィルム層[A]が、厚み10μm以上であり、
前記不織布層[C]が、目付100g/m2以上で、ニードルパンチまたは流体交絡法により交絡されたものであり、
前記中層[B]が、ガラス繊維構造体を備えたものであることを特徴とする防水施工用通気緩衝シート。
【請求項2】
前記ガラス繊維構造体がガラスクロスである請求項1に記載の防水施工用通気緩衝シート。
【請求項3】
前記中層[B]と前記不織布層[C]が、接着層を介して接合された請求項1または2に記載の防水施工用通気緩衝シート。
【請求項4】
前記合成樹脂フィルム層[A]と中層[B]が、接着層を介して接合された請求項3に記載の防水施工用通気緩衝シート。
【請求項5】
前記合成樹脂フィルム層[A]における反中層[B]側表面が、ウレタン樹脂によってコーティングされた請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水施工用通気緩衝シート。
【請求項6】
屋上コンクリート層の上に、請求項1〜5のいずれか1項に記載された防水施工用通気緩衝シートが敷設され、この上に防水層が施工されたことを特徴とする防水施工屋上コンクリート構造。

【図1】
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【公開番号】特開2010−90601(P2010−90601A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261134(P2008−261134)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(508179545)東洋紡スペシャルティズトレーディング株式会社 (51)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)