説明

防水構造、これを備えた携帯電子機器、及び、防水方法

【課題】防水タイプの携帯電話機において、小型、薄型、軽量化を可能にする。
【解決手段】この防水構造は、二つの部材(外装カバー101d,フロントカバー107)のそれぞれに互いに嵌合する嵌合部(嵌合爪107a)と、外装カバー101dの面に設けられた弾性部材110cとを有し、前記二つの部材が嵌合時に前記二つの部材間に弾性部材110cを挟みこむことにより、密閉された防水空間を形成する。そして、弾性部材110cを挟み込む方向から見て、弾性部材110cの先端部が、外装カバー101dの面に接合された弾性部材110cの底面の外周よりも外側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造、これを備えた携帯電子機器、及び、防水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電子機器の開発では新機能の追加に伴う厚肉化とこれを解消するための新技術による薄型化とが繰り返されている。最近の携帯電子機器では、防水機能が流行っており、これを備えた機器が普及している。一般的な防水構造は、ゴム製のシール部材を使って隙間をシールする構造である。
【0003】
このような防水構造には、筐体を構成する2つの部材間にシール部材を挟み込むタイプと、筐体を構成する2つの部材のうちの一方にシール部材を一体成形して、該シール部材を一方の部材と他方の部材の間に挟み込むタイプがある。挟み込む方向は、筺体の主面と垂直な方向(Z方向)と、筺体の主面方向(XY方向)と、それらの組み合わせがある。
【0004】
図13A〜13Eは、防水機能を備えた一般的な折り畳み式携帯電話機の外観図である。図13Aは、開いた状態(開状態)での電話機前面を示す外観図である。図13Aに示すように、この携帯電話機では、第1の筐体1と第2の筐体2とが、ヒンジ3により折り畳み可能に接続されている。第1の筐体1にはメイン表示部4が設けられている。また、第2の筐体2には操作キー5が設けられている。
【0005】
図13Bは、折り畳んだ状態(閉状態)での電話機前面を示す外観図である。図13Bに示すように、第1の筐体1のメイン表示部4が設けられた面と反対側の面にはサブ表示部6が設けられている。
【0006】
図13Cは、閉状態での電話機側面を示す外観図である。図13Cに示すように、第2の筐体2はフロントカバー7とリアカバー8とを備えている。
【0007】
図13Dは、閉状態での電話機背面を示す外観図である。図13Dに示すように、第2の筐体2の操作キー5が設けられた面と反対側の面にはカメラ9及び、取り外し可能なバッテリカバー10が設けられている。
【0008】
図13Eは、第2の筐体2から取り外された状態のバッテリカバー10を示す外観図である。図13Eに示すように、バッテリカバー10には、バッテリカバー10を第2の筐体2に嵌め込むときのガイドになるガイド爪10aが設けられている。
【0009】
図14A、14Bは、図13DのXIV−XIV線での断面図である。図14Aは、バッテリカバー10が第2の筐体2に取り付けられた状態(嵌合状態)、図14Bはバッテリカバー10が第2の筐体2から取り外された状態(非嵌合状態)を示している。
【0010】
図14A、14Bに示すように、バッテリカバー10は、樹脂成形品の中間プレート10bと、シリコンゴム製のシール部材10cと、樹脂成形品の外装カバー10dを備えている。また、バッテリカバー10に嵌合爪7aが設けられ、フロントカバー7には、バッテリカバー10の取り付け時に嵌合爪7aと嵌合する嵌合溝7bが設けられている。
【0011】
シール部材10cは、断面山形であって、中間プレート10bと一体成形されている。一体成形には、コンプレッション成形、トランスファー成形、射出(LIM)成形などが採用される。ここで、一体成形前に、シール部材10cと中間プレート10bとの間に、接着力を発生させるプライマーが塗布される場合もある。また、中間プレート10bは両面テープなどを使って外装カバー10dに接合されている。
【0012】
この防水構造は、第2の筐体2の一部を構成するバッテリカバー10にゴム製のシール部材10cを設け、第2の筐体2の主面と垂直な方向(Z方向)にて、フロントカバー7と外装カバー10dの間に挟み込むという構造である(図14A、14B参照)。このような挟み込みにより、シール部材10cが押し潰され、パッテリカバー10の密閉性が確保される。
【0013】
上記のように、相対する二つの部材のそれぞれに互いに嵌合する手段を備え、一方の部材の面に弾性部材を設け、前記二つの部材が嵌合する際に部材間に前記弾性部材を挟みこむことにより、前記二つの部材によって形成される空間を防水する構造例が特許文献1〜3等に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−247644号公報
【特許文献2】特開2005−143138号公報
【特許文献3】特開2010−124072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1〜3等に記載されるような防水構造では、携帯電子機器の小型、薄型、及び軽量化を図れないという問題がある。
【0016】
特許文献1〜3に示されるシール用弾性部材では、弾性部材の挟み込み方向から見て先端部が弾性部材の底面の外周内に収まる位置にある。このような形状では、弾性部材が形成された面に対して垂直な方向の力が弾性部材に加わったとき、その力は弾性部材を押し潰すのに使われる。このため、弾性部材底面を支持する部材がバッテリカバーのように比較的薄い部材であると変形するおそれがあり、結果、弾性部材底面とそれを支持する支持部材の間に金属の中間プレートが必要になる。
【0017】
例えば図14A、14Bに示すように、シール部材10cが十分圧縮され得るように、バッテリカバー10(特に外装カバー10d)が変形しない必要がある。そのため、シール部材10cとバッテリカバー10の間に金属の中間プレート10bを設ける必要があった。このような金属の中間プレート10bが在ると、フロントカバー7とバッテリカバー10dを嵌合してなる部分の厚みが厚くなり、携帯電子機器の重さも重くなる。
【0018】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、携帯電子機器の小型、薄型、及び軽量化に好適、かつ、防水性に優れる防水構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様は、二つの部材のそれぞれに互いに嵌合する嵌合部と、前記二つの部材の互いに相対する2面のうちの一方の面に設けられた弾性部材とを有し、前記二つの部材が嵌合時に前記二つの部材間に前記弾性部材を挟みこむことにより、密閉された防水空間を形成する防水構造に係る。このような防水構造において、前記弾性部材を挟み込む方向から見て、前記弾性部材の先端が、前記一方の面に接合された前記弾性部材の底面の外周よりも外側に位置することが本態様の特徴である。
【0020】
また本発明の他の態様は、二つの部材を嵌合する際に該二つの部材間に弾性部材を挟みこむことにより、密閉された防水空間を形成する防水方法に係る。この防水方法において、前記二つの部材の互いに相対する2面のうちの一方の面に弾性部材を設け、前記弾性部材を挟み込む方向から見て、前記弾性部材の先端部が、前記一方の面に接合された前記弾性部材の底面の外周よりも外側に位置するように、前記弾性部材を設けることが本態様の特徴である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、携帯電話機を小型、薄型、及び軽量化できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】本発明の第一実施形態例による携帯電話機の斜視図。
【図1B】本発明の第一実施形態例による携帯電話機の構成部品を示す分解斜視図。
【図2A】第一実施形態例の、開状態での電話機前面を示す正面図。
【図2B】第一実施形態例の、閉状態での電話機前面を示す正面図。
【図2C】第一実施形態例の、閉状態での電話機側面を示す側面図。
【図2D】第一実施形態例の、閉状態での電話機背面を示す背面図。
【図2E】第一実施形態例の、第2の筐体から取り外されたバッテリカバーを示す正面図。
【図2F】(a)は図2Eに示したバッテリカバーの裏面図、(b)はその側面図、(c)は(b)のIV−IV線での断面図。
【図3A】図2DのIII−III線での断面図。
【図3B】図2DのIII−III線での断面であって、バッテリカバーとフロントカバーが嵌合していない時の状態を示す断面図。
【図4A】第一実施形態例における、シール用弾性部材のフック構造の詳細図。
【図4B】図4Aのフックが圧接するフロントカバー部位の詳細図。
【図5A】(a)は第一実施形態例におけるバッテリカバーを第2の筐体に嵌合する前の様子を示す側面図、(b)はその様子を示す断面図。
【図5B】(a)は第一実施形態例におけるバッテリカバーを第2の筐体に嵌合している間の様子を示す側面図、(b)はその様子を示す断面図。
【図5C】(a)は第一実施形態例におけるバッテリカバーを第2の筐体に嵌合させた後の様子を示す側面図、(b)はその様子を示す断面図。
【図6A】第二実施形態例におけるシール用弾性部材を備えたバッテリカバーとフロントカバーの嵌合状態を示す断面図。
【図6B】第二実施形態例におけるシール用弾性部材を備えたバッテリカバーとフロントカバーが嵌合していない時の状態を示す断面図。
【図6C】第二実施形態例における、シール用弾性部材のフック構造の詳細図。
【図7A】各実施形態例におけるシール用弾性部材のフック構造の適用例1を示す斜視図。
【図7B】各実施形態例におけるシール用弾性部材のフック構造の適用例2を示す斜視図。
【図7C】各実施形態例におけるシール用弾性部材のフック構造の適用例3を示す斜視図。
【図8】本発明のその他の実施形態例のシール用弾性部材を説明するためにバッテリカバーの裏面を示した図。
【図9A】図8に示した部位Tにおける一例のシール用弾性部材を備えたバッテリカバーとフロントカバーの嵌合状態を示す断面図。
【図9B】図8に示した部位Tにおける一例のシール用弾性部材を備えたバッテリカバーとフロントカバーが嵌合していない時の状態を示す断面図。
【図10A】図8に示した部位Tにおける他の例のシール用弾性部材を備えたバッテリカバーとフロントカバーの嵌合状態を示す断面図。
【図10B】図8に示した部位Tにおける他の例のシール用弾性部材を備えたバッテリカバーとフロントカバーが嵌合していない時の状態を示す断面図。
【図11】図8に示した部位Tにおける他の例のシール用弾性部材を示す断面図。
【図12】図8に示した部位Tにおける他の例のシール用弾性部材を示す断面図。
【図13A】本発明に関連する携帯電話機の、開状態での電話機前面を示す正面図。
【図13B】本発明に関連する携帯電話機の、閉状態での電話機前面を示す正面図。
【図13C】本発明に関連する携帯電話機の、閉状態での電話機側面を示す側面図。
【図13D】本発明に関連する携帯電話機の、閉状態での電話機背面を示す背面図。
【図13E】本発明に関連する携帯電話機の、第2の筐体から取り外されたバッテリカバーを示す正面図。
【図14A】図13DのXIV−XIV線での断面図。
【図14B】図13DのXIV−XIV線での断面であって、バッテリカバーとフロントカバーが嵌合していない時の状態を示す断面図。
【図15】(a)は本発明のシール用弾性部材を備えた態様の断面図、(b)は本発明に関連するシール用弾性部材を備えた態様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。ここでは本発明に係る携帯電子機器を携帯電話機に適用した場合の形態例を説明するが、本発明の適用は電話機に限られない。
【0024】
図1A〜1B及び図2A〜2Eに示される本実施形態の携帯電話機では、第1の筐体101と第2の筐体102とが、ヒンジ103により折り畳み可能に接続されている(図1A)。第1の筐体101はフロントパネル101a、フロントカバー101b、リアカバー101c、フレキ112等を備え、第2の筐体102はキーシート114、フロントカバー107、リアカバー108、バッテリー111、バッテリカバー110、I/Oカバー113等を備える(図1B)。
【0025】
第1の筐体101にはメイン表示部104が設けられ、第2の筐体102には操作キー105が設けられている(図2A)。第1の筐体101のメイン表示部104が設けられた面と反対側の面にはサブ表示部106が設けられている(図2B)。第2の筐体102の外郭はフロントカバー107、リアカバー108、バッテリカバー110等で形成されている(図2C)。第2の筐体102の操作キー105が設けられた面と反対側の面にはカメラ109及び、取り外し可能なバッテリカバー110が設けられている(図2D)。バッテリカバー110には、バッテリカバー110を第2の筐体102に嵌め込むときのガイドになるガイド爪110aが設けられている(図2E)。
【0026】
図2Fは図2Eに示したバッテリカバー110の詳細を示している。図2Fの(a)は図2Eに示したバッテリカバーの裏面図、(b)はその側面図、(c)は(b)のIV−IV線での断面図である。バッテリカバー110の裏面(すなわち、バッテリカバー110が装着される第2の筐体102のフロントカバー107と対向する面)に、一続きの弾性部材110cが設けられている。バッテリカバー110をフロントカバー107に装着した際に弾性部材110cはフロントカバー107と当接して、バッテリカバー110の密閉性を確保する。
【0027】
バッテリカバー110の裏面にはさらに、バッテリカバー110をフロントカバー107に装着した際にフロントカバー107と嵌合する嵌合爪107aが設けられている。
【0028】
図3A及び図3Bは図2DのIII−III線での断面図であり、図3Aはバッテリカバー110(外装カバー110d)とフロントカバー107が嵌合している時の状態を示し、図3Bは外装カバー110dとフロントカバー107が嵌合していない時の状態を示している。フロントカバー107には、バッテリカバー110をフロントカバー107に装着した際に嵌合爪107aが嵌合する嵌合溝107bが形成されている。また、バッテリカバー110とフロントカバー107が嵌合している状態では、弾性部材110cからなるフック201がフロントカバー107と密着することにより、第2の筐体102のフロントカバー107とバッテリカバー110とで形成される筐体内側の空間が密閉される。フック201はフック弁202を撓ませられたときに元に戻そうとする力で、フロントカバー107との密着状態を維持する。
【0029】
図4Aに、第一実施形態例によるフック201の形状を詳細に示す。
【0030】
フック201は第2の筺体102のバッテリカバーの外装カバー110dに接続されている。
【0031】
フック201は、フック弁202と、フック弁202の根元202aを外装カバー110dに接続するフックリブ203とからなる。
【0032】
フック弁202はフック弁根元202aからフック弁先端202bの側へ行くにつれて細くなっている。言い換えれば、フック弁202の幅がフック弁先端202bからフック弁根元202aへ行くにつれて広がるように、フック弁先端202bは所定の角度(フック弁角α)を成す2つの側面(外側面202cと内側面202d)を有する。そのフック弁角αは、鋭角である。
【0033】
フック弁202の外側面202cと外装カバー110dが成す角度であるフック角θは鋭角である。フック弁先端202bはフックリブ203の側面より外側へ延出した位置にある。そのフック弁先端202bは、環状のフック201(特にフックリブ203)の内側とは反対側へと向けられている。つまり、フック201(特にフックリブ203)は図2F(a)に示すように外装カバー110dの裏面に環状の一続きに形成されており、フックリブ203には外側面203aと内側面203bがある。
【0034】
なお、フック201は、外装カバー101dを形成している樹脂成形品に、一体成形された弾性部材101cからなる。この弾性部材101cには、樹脂部材にゴム部材を混合してなるエラストマー部材、又は、シリコンゴム部材やその他のゴム部材を使用することができる。シリコンゴムの場合には外装カバー101dに対する接着力を発生させるためのプライマーが必要になるが、エラストマー部材よりも耐久性が高いという利点がある。一方、エラストマー部材の場合にはプライマーが必要なくなるという利点がある。
【0035】
さらに、エラストマー部材の場合、外装カバー101dをモールド成形した後直ぐに、金型内の外装カバー101dに弾性部材101cを一体成形する手法、いわゆる2色成形が可能である。この手法は、シリコンゴムを弾性部材101cとする場合と比べてコストの低い方法である。
【0036】
次に、第一実施形態におけるバッテリカバー110(外装カバー110d)をフロントカバー107に嵌合させるときの動作、及び防水シール用弾性部材110cの様子について、図3A〜3B及び図5A〜Cを参照して説明する。
【0037】
図5Aに示すように、フロントカバー107の側面には、バッテリカバー110の外装カバー110dの内側面に形成された嵌合爪107aと係合する係合溝107bが形成されている。係合溝107bは、フック201が形成されたバッテリカバー110の裏面に垂直な方向(図5A中の第1のバッテリカバー装着方向Z)に沿って形成された後、第2の筐体102の長手方向に沿った方向(図5B中の第2のバッテリカバー装着方向Y)に形成されている。つまり、係合溝107bはL字状の溝である。
【0038】
図5Aではバッテリカバー110が第2筺体102のフロントカバー107に嵌合する前の状態が示されている。図5Bに示すように、バッテリカバー110が縦方向(第1のバッテリカバー装着方向Z)に移動させられて、第2筺体102のフロントカバー107の嵌合溝107bにバッテリカバー110の嵌合爪107aが侵入すると、図5Bの(b)に示すようにバッテリカバー110のフック201がフロントカバー107と接触する。このとき、フック弁202の内側面202d(図4A参照)とフロントカバー107が密着したまま、フック角θが小さくなる方向に、フック弁202が撓み変形する。
【0039】
さらに、図5Cに示すようにバッテリカバー110が横方向(第2のバッテリカバー装着方向Y)にスライドさせると、第2筺体102のフロントカバー107の嵌合溝107bにバッテリカバー110の嵌合爪107aが嵌合する。このスライド中もフック弁202の内側面202d(図4A参照)とフロントカバー107が密着したまま、バッテリカバー110が横方向(Y方向)に移動する。
【0040】
このようにフック201がフロントカバー107と密着したまま、バッテリカバー110とフロントカバー107が嵌合するため、フロントカバー107の密閉性が確保される。
【0041】
フック201はフック弁202を撓ませられたときに元に戻そうとする力で、フロントカバー107との密着状態を維持している。
【0042】
上記した嵌合時の際弾性部材の反発力によりバッテリカバー107が変形しないようにする必要があるが、上記の密着状態を維持するためのフック弁202の撓みの反発力は、本願発明の関連技術によるシール部材10c(図14A,14B)の場合における、弾性体が圧縮されることで発生する反発力と比べて、十分小さい。そのため、本実施形態のフック201を使用する場合、本願発明の関連技術での金属中間プレート10b(図14B)をフロントカバー107とフック201の間に配置する必要がなくなる。
【0043】
また、金属中間プレート10bが不要となることで、図15A及び図15Bに示すように、携帯電子機器の第二筐体におけるフロントカバー7とバッテリカバー10dを嵌合してなる部分の厚みが薄くなり、その結果、携帯電子機器の重さも軽くなる。
【0044】
なお、本実施形態のフック201が、塑性変形をしないで、弾性的に、繰り返し撓むことを可能とするためには、表1に示す値が最適である。
【0045】
【表1】

【0046】
すなわち、フック201の硬度は、A硬度60 であることが好ましい。また、フック201及びフロントカバー107の寸法(図4A及び図4Bに示す各部の寸法)は、以下の値であることが好ましい。
【0047】
W1=0.35mm、W2=0.35mm、W3=0.70mm、W4=1.80mm
H1=0.55mm、H2=0.25mm、H3=0.80mm
α=30°、θ=85°
(第二の実施形態例)
図6Aは、第二実施形態例のバッテリカバー110とフロントカバー107が嵌合している時の状態を示した断面図、図6Bは第二実施形態例の外装カバー110dとフロントカバー107が嵌合していない時の状態を示した断面図である。図6Cは、第二実施形態例によるフック301の形状を詳細に示す断面図である。フック301以外の発明構成部品の構造は上記の第一実施形態例と基本的に同じ構造である。
【0048】
第二実施形態例におけるフック301は図6Cに示すように、フック頭302と、フック頭302の根元を外装カバー110dに接続するフックリブ303と、フック頭302に形成されたフック弁304とからなる。
【0049】
フック301(特にフックリブ303)は図2F(a)に示したように外装カバー110dの裏面に環状の一続きに形成されており、フックリブ303には、環状のフック301の内側に向いた内側面303aと、その外側を向いた外側面303bがある。フックリブ303の外側面303bと外装カバー110dが成す角度であるフック角θ2は鋭角である。フックリブ303は外側へ向かって傾いて形成されているが、内側面303aと外側面303bの間の幅は概ね同じである。
【0050】
フックリブ303の上部はフック頭302とされている。フック頭302は、フックリブ303の内側面aが上方へ延長した側面302aと、側面302aに連続した、フックリブ303が接続された外装カバー110dの裏面と略平行な上面302bと、を有する。
【0051】
そして、フック頭302の、側面302aと反対側にフック弁304が突出している。そのフック弁の先端304bは、環状のフック301(特にフックリブ303)の内側とは反対側へと向けられている。つまり、フック弁先端304bはフックリブ303の側面より外側へ延出した位置にある。
【0052】
フック弁304は、フック頭302に接続されたフック弁根元304aからフック弁先端304bの側へ行くにつれて細くなっている。フック弁先端202bは所定の角度(フック弁角α)を成す2つの側面304c,304dを有する。そのフック弁角αは、鋭角である。
【0053】
フック弁304の側面304dとフックリブ303の外側面303bが成す角度であるフック角θ1は、鈍角である。
【0054】
なお、第一実施形態例と同様、フック301は、外装カバー101dを形成している樹脂成形品に、一体成形された弾性部材からなる。この弾性部材は、エラストマー部材、又は、シリコンゴム部材やその他のゴム部材を使用することができる。
【0055】
次に、第二実施形態におけるバッテリカバー110(外装カバー110d)をフロントカバー107に嵌合させるときのフック301の様子について、図6A〜6Bを参照して説明する。
【0056】
図6Bの状態から、外装カバー110dの弾性部材110cが形成された面に対して垂直な方向にバッテリカバー110を第2筺体102のフロントカバー107に取り付けるとき、バッテリカバー110のフック301がフロントカバー107と接触する。このとき、フック頭302の上面302b(図6C参照)とフロントカバー107が密着したまま、フック角θ2が小さくなる方向に、フックリブ303が撓み変形する。
【0057】
さらに、図6Aに示すようにバッテリカバー110の嵌合爪107aがフロントカバー107の嵌合溝107bに完全に嵌合すると、フック頭302の上面302b(図6C参照)とフロントカバー107、ならびにフック弁先端304bの側面304dと外装カバー110dが密着した状態となる。
【0058】
第一実施形態と同様、上記の密着状態を維持するためのフックリブ303の撓みの反発力は、本願発明の関連技術によるシール部材10c(図14A,14B)の場合における、弾性体が圧縮されることで発生する反発力と比べて、十分小さい。そのため、本実施形態のフック301を使用する場合、本願発明の関連技術での金属中間プレート10b(図14B)をフロントカバー107とフック301の間に配置する必要がなくなる。
【0059】
また、上記した第一実施形態例と同様に金属中間プレート10bが不要となることで、携帯電子機器の第二筐体における、フロントカバー7とバッテリカバー10dを嵌合してなる部分の厚みが薄くなり、その結果、携帯電子機器の重さも軽くなる。
【0060】
なお、本実施形態例におけるフック301は、フック301の撓みのストッパーとなるフック弁304を、1個以上、有していてもよい。このフック弁304の形状は、図6Cで示される断面で見て三角、四角、円、楕円、多角形などの如何なる形状でもよい。
【0061】
(その他の実施形態例)
図7Aは、第一実施形態例における構成部品の配置及び形状を模式的に示している。なお、第1の筐体101の構成部品はフロントパネル101a、フロントカバー101b、リアカバー101c、フレキ112等であり、第2の筐体102の構成部品はキーシート114、フロントカバー107、リアカバー108、バッテリカバー110、I/Oカバー113等である。
【0062】
図7Aに示す第一実施形態例の構成部品の配置及び形状に対して、図7Bでは、第2の筐体102のリアカバー108が第2の筐体102の全体にあり、バッテリカバー110がリアカバー108の下になった構成である。また図7Cでは、第2の筐体102のリアカバー108が無くなり、バッテリカバー110がフロントカバー107の下になった構成である。
【0063】
上記した第一又は第二の実施形態例のフック201,301の構造は、第2の筐体102のフロントカバー107とリアカバー108の間、そのフロントカバー107とバッテリカバー110の間、及びそのフロントカバー107とI/Oカバー113の間の隙間に適用可能である。その他、それらのフック構造は、第1の筐体101のフロントカバー101bとフロントパネル101aの間、そのフロントカバー101bとリアカバー101cの間、第2の筐体102のフロントカバー107とキーシート114の間の隙間にも適用可能である。さらには、フック201,301は、第1の筐体101と第2筐体102を電気的に接続するフレキ112に接続された弾性体にも適用可能である。
【0064】
このような適用箇所においても、フック201,301の撓み動作は、第一及び第二の実施形態例と同じ動作である。
【0065】
なお、上述した第一及び第二の実施形態例において、バッテリカバー110をフロントカバー107に嵌合させるときの動作はスライド動作(図5A〜5C参照)であるが、本発明のシール用弾性部材を挟み込む2つの部材の嵌合方法は、スライド動作を利用した方法(スライド嵌合)に限られない。例えば、図5Bで嵌合が完了する方法(垂直嵌合)や、それ以外の嵌合方法(例えば斜め嵌合)であってもよい。但し、スライド嵌合は、嵌合し易さ及び外し易さの点で他の方法よりも優れている。
【0066】
さらに、上記した各実施形態例において、フック201,301のフック弁先端202b,304bは、筐体外側ではなく筐体内側200の方を向いていてもよい。また、フック角θは、直角でもよい。
【0067】
さらに、上述した各実施形態例におけるフック201,301を構成する部位において、フックリブ203,303は樹脂や金属などの硬い部材で構成され、フック弁202,304及びフック頭302のみが撓むようにこれらの部位が弾性部材で構成されていてもよい。
【0068】
また、上記スライド嵌合の場合において、図8に示すような概ね4つの辺を成す環状の弾性部材110cの、スライド方向Sと交差する2つの辺に相当する部位が、上述したフック201,301のような構造であると、バッテリカバー110のスライド時にフック201,301がめくれてフロントカバー107から離間するおそれがある。
【0069】
そこで、環状の弾性部材110cの、スライド方向Sと交差する2つの辺に相当する部位Tは、図9B,10B、11、12に示す形状のいずれかで形成されることが好ましい。勿論、前記スライド方向Sに沿った2つの辺に相当する部位Uについては、上述した各実施形態例のようにフック201又は301の形に弾性部材110cが形成される。
【0070】
上述したスライド時のめくれを防ぐため、図9A,9Bの例では、第一実施形態例のフック201のフック弁202が筐体外側に向かって延在するだけなく、筐体内側200に向けても形成されている。また、図10A,10Bの例では、上記の部位Tに複数の平板状の弾性リブが、スライド方向Sと交差する2つの辺に沿って配置されている。なお、図11及び図12の例のように、上記の部位Tにおける弾性部材110cは断面が山形や半円形を成す部材であってもよい。
【0071】
「産業上の利用可能性」
なお、上記した第一及び第二の実施の形態例では、携帯電子機器の一例として、折り畳み携帯電話機を例にあげたが、携帯スマートフォン、携帯ゲーム機、携帯コンピューター、携帯音楽プレイヤー、卓上コンピューター、テレビ/ビデオ/クーラーなどの各種リモコン、その他の携帯電子機器において本発明の防水シール構造を適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
101 第1の筐体
101a フロントパネル
101b フロントカバー
101c リアカバー
102 第2の筐体
103 ヒンジ
104 メイン表示部
105 キー
106 サブ表示画面
107 フロントカバー
107a 嵌合爪
107b 嵌合溝
108 リアカバー
109 カメラ
110 バッテリカバー
110a ガイド爪
110c 弾性部材
110d 外装カバー
111 バッテリー
112 フレキ
113 I/Oカバー
114 キーシート
200 筐体内側
201 フック
201 フック弁
202a フック弁根元
202b フック弁先端
202c 外側面
202d 内側面
203 フックリブ
203a 外側面
203b 内側面
α フック弁角
θ、θ1、θ2 フック角
301 フック
302 フック頭
302a 側面
302b 上面
303 フックリブ
303a 内側面
303b 外側面
304 フック弁
304a フック弁根元
304b フック弁先端
304c、304d 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの部材のそれぞれに互いに嵌合する嵌合部と、前記二つの部材の互いに相対する2面のうちの一方の面に設けられた弾性部材とを有し、前記二つの部材が嵌合時に前記二つの部材間に前記弾性部材を挟みこむことにより、密閉された防水空間を形成する防水構造であって、
前記弾性部材を挟み込む方向から見て、前記弾性部材の先端が、前記一方の面に接合された前記弾性部材の底面の外周よりも外側に位置することを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記二つの部材が嵌合する際に挟み込んだ前記弾性部材は撓むことにより弾性変形する、請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記一方の面に一続きの環状に形成されたリブと、該環状のリブの内側面と外側面のそれぞれに接続された2つの側面を有するフック弁とを備え、
前記フック弁は、先端部が前記リブの内側面と外側面の間よりも外側へ延出した位置にある、請求項1または2に記載の防水構造。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記一方の面に一続きの環状に形成されたリブと、該環状のリブの内側面もしくは外側面に接続された側面と該側面に接続された上面とを有するフック頭と、前記側面が接続されていない前記フック頭の内側面もしくは外側面と前記フック頭の上面のそれぞれに接続された2つの側面を有するフック弁と、を備え、
前記フック弁は、先端部が前記リブの内側面と外側面の間よりも外側へ延出した位置にある、請求項1または2に記載の防水構造。
【請求項5】
前記嵌合部は前記弾性部材を前記二つの部材間に挟み込んだ後に、前記二つの部材のうちの一方を前記一方の面に沿った一方向にスライドさせることで嵌合する構造を有する、請求項3または4に記載の防水構造。
【請求項6】
前記一方向のスライド動作によって前記二つの部材を嵌合する構造において、前記リブの、前記一方向と交差する方向に延在する部分の上に位置する前記フック弁は、前記二つの部材の嵌合時のスライド方向とは反対側へ延出する前記先端部を有する、請求項5に記載の防水構造。
【請求項7】
前記弾性部材が設けられた部材が樹脂成形品からなり、前記弾性部材は該樹脂成形品に一体成形されており、
前記弾性部材は、樹脂部材にゴム部材を混合してなるエラストマー部材、または、シリコンゴム部材である、請求項1から6のいずれか1項に記載の防水構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の防水構造を備えた携帯電子機器。
【請求項9】
二つの部材を嵌合する際に該二つの部材間に弾性部材を挟みこむことにより、密閉された防水空間を形成する防水方法であって、
前記二つの部材の互いに相対する2面のうちの一方の面に弾性部材を設け、
前記弾性部材を挟み込む方向から見て、前記弾性部材の先端部が、前記一方の面に接合された前記弾性部材の底面の外周よりも外側に位置するように、前記弾性部材を設けることを特徴とする防水方法。
【請求項10】
前記二つの部材の嵌合時に該二つの部材間に前記弾性部材を撓ませて挟み込む、請求項9に記載の防水方法。
【請求項11】
前記弾性部材は、前記一方の面に一続きの環状に形成されたリブと、該環状のリブの内側面と外側面のそれぞれに接続された2つの側面を有するフック弁とを備え、
前記フック弁は、先端部が前記リブの内側面と外側面の間よりも外側へ延出した位置にある、請求項9または10に記載の防水方法。
【請求項12】
前記弾性部材は、前記一方の面に一続きの環状に形成されたリブと、該環状のリブの内側面もしくは外側面に接続された側面と該側面に接続された上面とを有するフック頭と、前記側面が接続されていない前記フック頭の内側面もしくは外側面と前記フック頭の上面のそれぞれに接続された2つの側面を有するフック弁と、を備え、
前記フック弁は、先端部が前記リブの内側面と外側面の間よりも外側へ延出した位置にある、請求項9または10に記載の防水方法。
【請求項13】
前記弾性部材を前記二つの部材間に挟み込んだ後に、前記二つの部材のうちの一方を前記一方の面に沿った一方向にスライドさせることで前記二つの部材を嵌合する、請求項11または12に記載の防水方法。
【請求項14】
前記一方向のスライド動作によって前記二つの部材を嵌合する場合、前記リブの、前記一方向と交差する方向に延在する部分の上に位置する前記フック弁において、前記二つの部材の嵌合時のスライド方向とは反対側へ延出する前記先端部を設ける、請求項13に記載の防水方法。
【請求項15】
前記弾性部材が設けられた部材が樹脂成形品からなり、前記弾性部材は該樹脂成形品に一体成形されており、
前記弾性部材は、樹脂部材にゴム部材を混合してなるエラストマー部材、または、シリコンゴム部材である、請求項9から14のいずれか1項に記載の防水方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図13D】
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【図13E】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図2F】
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【図4A】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46218(P2013−46218A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182606(P2011−182606)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】