説明

防水構造を備えた機器及び機器の防水方法

【課題】機器が閉状態のときでも、水が排水路から進入せず、キーボードに到達しないようにする。
【解決手段】 キーボード3を備えこのキーボード3が使用可能な開状態と、このキーボード3が使用不能な閉状態とを有する防水構造を備えた機器において、 一端をキーボードに接続し他端をこの機器の外部に開口した排水路1と、機器が閉状態のとき排水路1を塞ぎ、機器が開状態のとき排水路1を開通させる栓部2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水構造を備えた機器及び機器の防水方法に関し、機器の開閉に応じて防水する防水構造を備えた機器及び機器の防水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器としての携帯電話機等には、例えば屋外でも使用可能なように、筐体と操作部のキーボタンとの間の隙間から内部の電気回路へ浸入する水等を遮断して腐食を防止するための防水機能を備える必要がある。
【0003】
キーボタンと筐体との隙間から侵入する水分を遮断する電子機器の防水構造の一例が特許文献1に記載されている。この電子機器の防水構造を図20、及び図21を使用して説明する。図20は、携帯電話機の外観を示す図である。図21は、携帯電話機の防水構造を説明するための図であり、図20のE−E線に沿った断面図である。
【0004】
この携帯電話機50は、図20及び図21に示すように、多数のキーボタン57を有する操作部51と、表示部52と、アンテナ53と、スピーカ54と、マイクロフォン55と、筐体56とを備える。筐体56には各キーボタン57を露出させるための開口部58が形成されている。この開口部58は、例えば合成樹脂成型品から成る。
【0005】
また、この携帯電話機50は、キーボタン57と開口部58との間の隙間から携帯電話機本体内部に水分等が侵入するのを防ぐためシート部材61を有する防水構造60を備えている。
【0006】
シート部材61は、各キーボタン57を載置する載置面62と、各載置面62に対向する裏面の中央部に形成されスイッチ66を押下するためのスイッチ作動用突起部63と、シート部材61の周縁部に形成されたシール部64とを有する。スイッチ66は基板67上に形成されている。
【0007】
防水構造60は、シール部64の突起部65が、筐体56の裏面のシール領域59に密着する構造を有する。そして、突起部65がシール領域59に押し当てられ押し潰されることによって、各キーボタン57と筐体56との間の隙間等からの水等の浸入を遮断する密閉性を確保している。
【0008】
このような防水構造により、キーボタン57と開口部58との間の隙間から侵入する水分等が携帯電話機本体内部に侵入するのを防いでいる。
【0009】
しかし、防水構造の破損、劣化、不具合等により、水等の浸入を遮断する密閉性が確保されないときには、携帯電話機本体内部に水分等が侵入する可能性がある。そして、一旦携帯電話機本体内部に水分等が侵入したときには、侵入した水分を排出する構造がないので、携帯電話機本体内部に水分が溜まったり、内部の電気回路に不具合を起こさせてしまったりするおそれがある。
【0010】
このような問題点を解決する技術を備えた電子機器を図14から図19を用いて説明する。この電子機器は本体内部に侵入した水分を排出する構造を備えている。
【0011】
図14は、水分を排出する構造を備えた折り畳み式電子機器の開いた状態の一例を示す斜視図である。
【0012】
図15は、図14で示す電子機器の閉じた状態の一例を示す斜視図である。
【0013】
図16は、図15で示す電子機器を背面からみた斜視図である。
【0014】
図17は、図14で示す電子機器の開いた状態の中央部分の一例を示す縦断面図である。
【0015】
図18は、図15で示す電子機器の閉じた状態の中央部分の一例を示す縦断面図である。
【0016】
図19は、図14で示す電子機器の開いた状態におけるキーボードを取り除いたときの一例を示す斜視図である。
【0017】
図14で示す電子機器103は、ヒンジ部42を介して第一のケース40と第二のケース41とが開閉自在となる折り畳み式電子機器である。この電子機器103は、キーボード45、第一のケース40に備えた第一のパッド43、第二のケース41に備えた第二のパッド44、を有する。 そして、図15で示すように電子機器103が閉じられたときに、第一のパッド43と第二のパッド44は当接する。第一のケース40と第二のケース41をつなぐヒンジ部42内にはヒンジ部42の回転を担うヒンジユニット47が設定されている。
【0018】
図16において、第二のケース41の背面部分にはゴム足11を設けてある。また、中央部分にはキーボード45の周囲に入った水を電子機器103の外部に排出するための水抜き穴46を設けてある。
【0019】
図17、及び図18において、水抜き穴46はキーボード45の裏面までつなげておく。また、キーボード45の端面にはフレキシブルプリント板17を配置する。そして、このフレキシブルプリント板17をフレキシブルプリント板切り欠き穴18に通し、コネクタ19を介して内部基板15と接続しておく。ここでキーボード45内に侵入した水が内部基板15に流れないようにフレキシブルプリント板17の途中にパッキン16を設置しておく。
【0020】
ここで、例えば、キーボード45の使用時等に電子機器103を開いていた際にキーボード45に水をこぼす等キーボード45に水が入った場合、図19に示すように、この水は、矢印で示すように水抜き穴46に向かって流れ電子機器103の外部に排出される。また、フレキシブルプリント板切り欠き穴18に向かって流れた水はパッキン16にて止められる。そして、この水は水抜き穴46に向かって流れ電子機器103の外部に排出される。
【0021】
しかしながら、水抜き穴46は電子機器103の外面に露出しているので、例えば、キーボード45を使用しない時等の電子機器103を閉じて持ち歩いた際でも、雨や汗等の水分がこの水抜き穴46から進入しキーボード45に到達するおそれがある。このときには、キーボード45は劣化したり、不具合を起こしたりする可能性がある。
【0022】
また、フレキシブルプリント板切り欠き穴18に流れた水を止めたパッキン16は、前述した特許文献1で開示の電子機器の防水構造と同様に、破損、劣化等により、水等の浸入を防ぐことができなくなる可能性がある。このときには、水等が内部基板15へ侵入し、内部の電気回路が不具合を起こすおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2003−347757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
上述した本体内部に侵入した水分を排出する構造を備えた電子機器は、キーボードの使用時等、電子機器を開いていた際にキーボードの周囲に水が入った場合、この水は、電子機器の外面に露出しキーボードの裏面までつながった水抜き穴から外部に排出される。しかしながら、水抜き穴は電子機器の外面に露出しているので、キーボードを使用しない時等、電子機器を閉じて持ち歩いた際でも、雨や汗等の水分がこの水抜き穴から進入しキーボードに到達する可能性がある。このときにはキーボードが劣化したり、不具合が起こったりするおそれがある。
【0025】
本発明の目的は、上記課題を解決する防水構造を備えた機器及び機器の防水方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の防水構造を備えた機器は、キーボードを備え前記キーボードが使用可能な開状態と前記キーボードが使用不能な閉状態とをとる、防水構造を備えた機器において、一端を前記キーボードに接続し他端を前記機器の外部に開口した排水路と、前記機器が閉状態のとき前記排水路を塞ぎ、前記機器が開状態のとき前記排水路を開通させる栓部と、を備えて構成されている。
【0027】
本発明の機器の防水方法は、キーボードを備え前記キーボードが使用可能な開状態と前記キーボードが使用不能な閉状態とを有し前記キーボードに入った水分を外部に排出する排水路を備えた機器の防水方法において、前記排水路の一端を前記キーボードに接続し他端を前記機器の外部に開口させ、前記機器が閉状態のときには前記排水路を塞ぎ、前記機器が開状態のときには前記排水路を開通させるようにしている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、一端をキーボードに接続し他端を機器の外部に開口した排水路を備え、機器が開状態のときにこの排水路を開通させ、機器が閉状態のときにこの排水路を塞ぐようにしている。
【0029】
このため、本発明によると、キーボードが使用可能な機器の開状態のときには、キーボードに水が入っても排水路からこの水を機器の外部に排出できる。
【0030】
そして、例えこの機器を持ち歩いても、機器を閉状態にしておくことにより、雨や汗等の水分が排水路から進入せず、キーボードに到達しない。このため、キーボードを劣化させたり、不具合を起こさせたりするおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の防水構造を備えた機器の第1の実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の防水構造を備えた機器の第2の実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の電子機器の閉じた状態の一例を示す斜視図である。
【図4】図3で示す電子機器を裏面からみた斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態の電子機器の開いた状態の中央部の一例を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の電子機器の開いた状態におけるキーボードを取り除いたときの一例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態の電子機器の閉じた状態の中央部の一例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態の電子機器の開いた状態のときの第二のパッド部分の一例を示す横断面図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態の電子機器が閉じられたときに、第二のパッドにより排水路を塞ぐ一例を示す図である。
【図10】本発明の防水構造を備えた機器の第3の実施の形態を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態の電子機器の閉じた状態の中央部の一例を示す縦断面図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態の電子機器の閉じた状態におけるヒンジ部の一例を示す横断面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態の電子機器の開いた状態におけるヒンジ部の一例を示す横断面図である。
【図14】水分を排出する構造を備えた折り畳み式電子機器の開いた状態の一例を示す斜視図である。
【図15】図14で示す電子機器の閉じた状態の一例を示す斜視図である。
【図16】図15で示す電子機器を背面からみた斜視図である。
【図17】図14で示す電子機器の開いた状態の中央部分の一例を示す縦断面図である。
【図18】図15で示す電子機器の閉じた状態の中央部分の一例を示す縦断面図である。
【図19】図14で示す電子機器の開いた状態におけるキーボードを取り除いたときの一例を示す斜視図である。
【図20】携帯電話機の外観を示す図である。
【図21】図20のE−E線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明に係る第1の実施の形態の防水構造を備えた電子機器を示す図である。
【0034】
本実施の形態の電子機器100は、キーボード3を備えた例えば折り畳み式電子機器において、排水路1と、栓部2とを備えている。排水路1と栓部2はともに筐体内に設定する(共に点線で示す)。排水路1は一端をキーボード3の下部に接続する。排水路1の他端は電子機器100下部で外部に向けて開口する。排水路1は例えば管形状である。栓部2は、キーボード3が使用不能な電子機器100の閉状態のときには、排水路1を塞ぐ位置に移動して排水路1を塞ぐ。そして、栓部2は、キーボード3が使用可能な電子機器100の開状態のときには、排水路1を開通する位置に移動して排水路1を開通させる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、電子機器100が閉じられたときに排水路1を塞ぐため、電子機器100の外部からの水が排水路1を伝わってキーボード3内に進入するおそれがない。また、電子機器100が開かれたときには、排水路1が開通するため、キーボード3に入った水を排水路1を通して電子機器100の外部に排出することができる。

【0036】
図2は、本発明に係る第2の実施の形態の防水構造を備えた電子機器を示す図である。この図は、本実施の形態の電子機器101の開いた状態の一例を示す斜視図である。
【0037】
本実施の形態の電子機器101は、第一のケース4と、第二のケース5と、ヒンジ部6と、キーボード10と、第一のパッド8と、第二のパッド9と、排水路7と、により構成する。
【0038】
この電子機器101は、ヒンジ部6を介して第一のケース4と第二のケース5とが開閉自在となる例えば折り畳み式電子機器である。
【0039】
第一のケース4と第二のケース5をつなぐヒンジ部6内にはヒンジ部6の回転を担うヒンジユニット34が設定されている。
【0040】
第一のケース4の上端中央部には第一のパッド8を設ける。
【0041】
第二のケース5の下端中央部には第二のパッド9を設ける。第二のケース5はキーボード10を備えている。
【0042】
第二のケース5の第二のパッド9の裏面に、排水路開口部12を設ける。
【0043】
第二のケース5のキーボード10下部に排水路入り口13を設ける。
【0044】
排水路7は、キーボード10下部に設けた排水路入り口13とこの排水路開口部12との間に形成する。
【0045】
次に、本実施の形態の電子機器101の動作を図3、図4、図5、図6、図7、図8及び図9を参照して詳細に説明する。
【0046】
図3は、本実施の形態の電子機器の閉じた状態の一例を示す斜視図である。
【0047】
電子機器101が閉じられた際に、すなわち、ヒンジ部6を介して第一のケース4が回転し第二のケース5に重なる際に、第一のパッド8を第二のパッド9に当接させることにより第一のケース4と第二のケース5とが直接当たらないようにしておく。
【0048】
図4は、図3で示す電子機器を裏面からみた斜視図である。
【0049】
第二のケース5の裏面にはゴム足11を設置する。第二のケース5の第二のパッド9の裏面には排水路7が排水路開口部12に開口する。排水路開口部12は切り欠き状である。
【0050】
図5は、本実施の形態の電子機器の開いた状態の中央部の一例を示す縦断面図である。
【0051】
キーボード10の下部にキーボード10に入った水が流れこむ排水路入り口13を設ける。
【0052】
排水路入り口13から下に降りた排水路7は、排水路開口部12に繋がる前段に電子機器101の前面方向に水平に折り曲がった水平部14を有し、この水平部14を経由して排水路開口部12で電子機器101の外部に開口する。
【0053】
また、キーボード10の端面には、キーボード10のON/OFF信号等を伝達するフレキシブルプリント板17を配置する。このフレキシブルプリント板17をフレキシブルプリント板切り欠き穴18に通してコネクタ19を介して内部基板15と接続する。
【0054】
ここでキーボード10内に進入した水が内部基板15に流れ込まないようにフレキシブルプリント板17の途中にパッキン16を設置する。
【0055】
図6は、本実施の形態の電子機器の開いた状態におけるキーボードを取り除いたときの一例を示す斜視図である。
【0056】
本図は矢印で示すように、キーボード10に入った水がキーボード設置部分に設けた排水路入り口13、及びフレキシブルプリント板切り欠き穴18に流れる込む様子を示している。
【0057】
図7は、本実施の形態の電子機器の閉じた状態の中央部の一例を示す縦断面図である。
【0058】
この図は、電子機器101が閉じられたときに、第二のパッド9が、第一のパッド8と当接して押され、排水路7の水平部14と接触して排水路7を塞いでいる様子を示している。
【0059】
図8は、本実施の形態の電子機器の開いた状態のときの第二のパッド9部分の一例を示す横断面図である。
【0060】
第二のパッド9は、第一のパッド8と当接する面と反対側の面の端部に下方向に向けて凸部20を備えている。第二のパッド9はこの凸部20を足とし、この足により、本図の垂直方向に形成した排水路7の水平部14上に乗っている。水平部14の幅は排水路開口部12の幅より若干広がっている。
【0061】
図8に示すように、本実施の形態の電子機器101が開いた状態のときは、凸部20により浮いている第二のパッド9の本体と排水路7の水平部14との間に隙間がある。電子機器101はこの隙間を通して水を外部に排出することができる。
【0062】
ここで、電子機器101が閉じられたときに、第二のパッド9が、第一のパッド8と当接して押され、排水路7の水平部14と接触することによって排水路7を塞ぐ動作を説明する。
【0063】
図9は、本実施の形態の電子機器が閉じられたときに、第二のパッド9により排水路7を塞ぐ一例を示す図である。
【0064】
この図は、本実施の形態の電子機器101の閉じた状態のときの第一のパッド8及び第二のパッド9部分の横断面図である。
【0065】
電子機器101を閉じると、第一のパッド8が第二のパッド9に当接することによって第二のパッド9を押す。すると、本図の垂直方向に形成した排水路7の水平部14と第一のパッド8との間にある第二のパッド9の凸部20が変形して潰れ第二のパッド9の本体が沈み込む。このことにより、第二のパッド9の本体と水平部14との間の隙間がなくなり、第二のパッド9の本体が排水路7を塞ぐ。
【0066】
その後、電子機器101が開かれると、図8に示すように、第二のパッド9に掛かっていた第一のパッド8の圧力が開放され、第二のパッド9の弾性により第二のパッド9の潰れていた凸部20が元の形状に復元し第二のパッド9の本体が浮き上がる。このため、第二のパッド9の本体と水平部14との間に隙間が発生し、電子機器101はこの隙間から水を排出することができるようになる。すなわち排水路7が開通する。
【0067】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器101が閉じられたときに、第二のパッド9の本体が沈み込むことにより排水路7を塞ぐため、電子機器101の外部からの水が排水路7を伝わってキーボード内に進入するおそれがない。また、電子機器101が開かれたときには、第二のパッド9の本体が浮き上がることにより排水路7が開通するため、キーボードに入った水を排水路7を通して電子機器101の外部に排出することができる。

【0068】
図10は、本発明に係る第3の実施の形態の防水構造を備えた電子機器を示す図である。この図は、本実施の形態の電子機器102の開いた状態の中央部分の一例を示す縦断面図である。
【0069】
本実施の形態の電子機器102は、第一のケース21と、第二のケース22と、ヒンジ部23と、キーボード27と、排水路24と、スライドパッキン36と、により構成する。
【0070】
この電子機器102は、ヒンジ部23を介して第一のケース21と第二のケース22とが開閉自在となる例えば折り畳み式電子機器である。
【0071】
第二のケース22はキーボード27を備えている。
【0072】
第二のケース22のヒンジ部23側の下部に排水路開口部25を設ける。
【0073】
排水路24は、この排水路開口部25とキーボード27下部に設けた排水路入り口26との間に形成し、ヒンジ部23の下を通る。
【0074】
スライドパッキン36は、排水路24の上部のヒンジ部23内に設け、排水路24の壁に設けたヒンジ穴35に挿入する。そして、ヒンジ部23の回転に応じてヒンジ穴35に沿って例えば垂直方向にスライドし、排水路24を塞いだり、開通させたりする。
【0075】
本図10におけるスライドパッキン36は、ヒンジ部23の回転に応じて垂直方向上方にスライドしたのち排水路24を開通させている状態を示している。
【0076】
また、キーボード27の端面にはフレキシブルプリント板30を配置し、フレキシブルプリント板切り欠き穴31を通し、コネクタ32を介して内部基板28と接続しておく。
フレキシブルプリント板切り欠き穴31は、排水路入り口26から続く排水路24の一部であっても良い。ここでキーボード27内に侵入した水が内部基板28に流れ込まないようにフレキシブルプリント板30の途中にパッキン29を設置しておく。
【0077】
次に、本実施の形態の電子機器102の動作を図11、図12、及び図13を参照して詳細に説明する。
【0078】
図11は、本実施の形態の電子機器の閉じた状態の中央部の一例を示す縦断面図である。 この図11におけるスライドパッキン36は、ヒンジ部23の回転に応じて垂直方向下方にスライドしたのち排水路24を塞いでいる状態を示している。
【0079】
図12は、本実施の形態の電子機器の閉じた状態におけるヒンジ部23の一例を示す横断面図である。
【0080】
第一のケース21と第二のケース22をつなぐヒンジ部23内にはヒンジ部23の回転を担うヒンジユニット34が設定されている。
【0081】
ヒンジユニット34は、中心にシャフト38を有し、シャフト38の先端にシャフト38の回転中心を中心にして回転する偏心軸39を備えている。
【0082】
この偏心軸39は、シャフト38の回転中心から偏心した位置にある。
【0083】
本実施の形態の電子機器102は、シャフト38の回転中心を中心にして第一のケース21と第二のケース22とを開閉自在にしている。
【0084】
スライドパッキン36は、偏心軸39を挿入する穴37を有する頭部とこの頭部の下方にこの穴37の方向と直行する方向に伸びる棒状部とを有するピン形状である。
【0085】
ヒンジユニット34の偏心軸39は、スライドパッキン36の頭部の穴37に差し込まれる。スライドパッキン36の棒状部は排水路24の壁に設けたヒンジ穴35に挿入される。偏心軸39の回転に伴ってスライドパッキン36の棒状部が排水路24の壁に設けたヒンジ穴35に沿ってスライドするようにスライドパッキン36の頭部の穴37の形状を偏心軸39の形状より大きくしておく。
【0086】
そして、電子機器102が閉じられたときに、ヒンジユニット34のシャフト38の回転に伴って回転する偏心軸39に従って、スライドパッキン36が排水路24の方向にスライドする。すると、スライドパッキン36の頭部がヒンジ穴35を塞ぐとともに、棒状部が排水路24を塞ぐ。
【0087】
図13は、本実施の形態の電子機器の開いた状態におけるヒンジ部23の一例を示す横断面図である。
【0088】
電子機器102を図12の閉じた状態から開いた状態にすると、ヒンジユニット34のシャフト38の回転に伴って回転する偏心軸39に従って、スライドパッキン36が排水路24と反対の方向にスライドする。すると、スライドパッキン36の頭部がヒンジ穴35から離れるとともに、棒状部が排水路24を解放する。
【0089】
このように、スライドパッキン36がヒンジ部23の回転に応じてヒンジ穴35に沿って例えば垂直方向にスライドし、排水路24を塞いだり、開通させたりする。
【0090】
以上のように、本実施形態によれば、電子機器102が閉じられたときに、スライドパッキン36が排水路24内に入り込んで排水路24を塞ぐため、電子機器102の外部からの水が排水路24を伝わってキーボード27内に進入することはない。また、電子機器102が開かれたときには、スライドパッキン36が移動し、排水路24を開通させる。このため、キーボード27に入った水を排水路24を通して電子機器102の外部に排出することができる。
【0091】
以上のように、本発明に係る第1から第3の実施の形態によれば、キーボードが使用不能な電子機器の閉状態のとき排水路を塞ぐので、この電子機器を持ち歩くとき等には、電子機器を閉状態にしておくことにより、雨や汗等の水分がこの排水路から進入することがない。このため、電子機器を閉状態のときには水分が排水路からキーボードに到達しないので、キーボードを劣化させたり、不具合を起こさせたりするおそれがない。
【0092】
また、本発明に係る第1から第3の実施の形態によれば、キーボードが使用可能な電子機器の開状態のときには排水路が開通するので、キーボードの使用時等にキーボードに水が入った場合、排水路からこの水を電子機器の外部に排出できる。
【0093】
尚、本発明の防水構造を備えた機器及び機器の防水方法を、上記した第1から第3の実施の形態により、キーボードを有し閉開状態のある電子機器を用いて説明した。しかし、電子機器にこだわらず、例えば、電子辞書、電卓、ゲーム機器、腕時計等の、キーボードに類似したものを有し、閉開状態のある機器であれば何でも適用できる。
【符号の説明】
【0094】
1 排水路
2 栓部
3 キーボード
4 第一のケース
5 第二のケース
6 ヒンジ部
7 排水路
8 第一のパッド
9 第二のパッド
10 キーボード
11 ゴム足
12 排水路開口部
13 排水路入り口
14 水平部
15 内部基板
16 パッキン
17 フレキシブルプリント板
18 フレキシブルプリント板切り欠き穴
19 コネクタ
20 凸部
21 第一のケース
22 第二のケース
23 ヒンジ部
24 排水路
25 排水路開口部
26 排水路入り口
27 キーボード
28 内部基板
29 パッキン
30 フレキシブルプリント板
31 フレキシブルプリント板切り欠き穴
32 コネクタ
33 ゴム足
34 ヒンジユニット
35 ヒンジ穴
36 スライドパッキン
37 穴
38 シャフト
39 偏心軸
40 第一のケース
41 第二のケース
42 ヒンジ部
43 第一のパッド
44 第二のパッド
45 キーボード
46 水抜き穴
47 ヒンジユニット
50 携帯電話機
51 操作部
52 表示部
53 アンテナ
54 スピーカ
55 マイクロフォン
56 筐体
57 キーボタン
58 開口部
59 シール領域
60 防水構造
61 シート部材
62 載置面
63 スイッチ作動用突起部
64 シール部
65 突起部
66 スイッチ
67 基板
100 電子機器
101 電子機器
102 電子機器
103 電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キーボードを備え前記キーボードが使用可能な開状態と前記キーボードが使用不能な閉状態とをとる、防水構造を備えた機器において、
一端を前記キーボードに接続し他端を前記機器の外部に開口した排水路と、
前記機器が閉状態のとき前記排水路を塞ぎ、前記機器が開状態のとき前記排水路を開通させる栓部と、
を備えたことを特徴とする防水構造を備えた機器。
【請求項2】
端部に第一のパッドを備えた第一のケースと、
前記排水路を有し、前記第一のパッドに対応する部分に前記栓部を示す第二のパッドを有し、前記キーボードを配置した第二のケースと、を更に備え、
前記第二のパッドは前記排水路の上部に位置し、
前記機器が閉じられたときに、前記第二のパッドが、前記第一のパッドと当接し、当接するのに応じて前記第一のパッドの圧力に基づき沈み込むことにより前記排水路を塞ぐ、
ことを特徴とする請求項1記載の防水構造を備えた機器。
【請求項3】
前記機器が開かれたときに、前記第二のパッドが、前記第一のパッドと離間し、離間するのに応じて前記第一のパッドの圧力から解放されて浮き上がることにより前記排水路が開通する、
ことを特徴とする請求項2記載の防水構造を備えた機器。
【請求項4】
前記第二のパッドは、前記第一のパッドと当接する面と反対側の面の端部に凸部を有し、
前記排水路は、前記第一のパッドと当接する前記第二のパッドの前記面と水平な水平部を有し、
前記第二のパッドは前記凸部を足とし、これにより前記排水路の前記水平部上に乗っており、
前記機器が閉じられたときに、前記第二のパッドが前記第一のパッドに押されて、前記水平部と前記第一のパッド間にある前記第二のパッドの前記凸部が変形して潰れ、潰れるに応じて前記第二のパッドの本体が沈み込むことにより前記排水路を塞ぐ、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の防水構造を備えた機器。
【請求項5】
前記機器が開かれたときに、前記第二のパッドが前記第一のパッドからの圧力から解放され、前記水平部と前記第一のパッド間にある前記第二のパッドの前記凸部の形状が復元し前記第二のパッドの本体が浮き上がることにより前記排水路を開通させる、
ことを特徴とする請求項4記載の防水構造を備えた機器。
【請求項6】
第一のケースと、
前記排水路を有し、前記キーボードを配置した第二のケースと、
これらのケースを開閉自在に接続するヒンジ部と、を更に有し、
前記栓部は、前記排水路の上部に位置し、前記ヒンジ部の回転に応じてスライドするスライドパッキンであり、
前記機器が閉じられたときに、前記ヒンジ部の回転に応じて前記スライドパッキンが前記排水路を塞ぐ方向にスライドすることによって前記排水路を塞ぐ、
ことを特徴とする請求項1記載の防水構造を備えた機器。
【請求項7】
前記機器が開かれたときに、前記ヒンジ部の回転に応じて前記スライドパッキンが前記排水路を開通する方向にスライドすることによって前記排水路を開通させる、ことを特徴とする請求項6記載の防水構造を備えた機器。
【請求項8】
前記ヒンジ部は、このヒンジ部の回転中心から偏心した位置にあり前記ヒンジ部の回転に伴って前記ヒンジ部の回転中心を中心にして回転する偏心軸を有し、
前記スライドパッキンは、前記偏心軸を挿入する第一の穴を有する頭部とこの頭部の下方に位置する棒状部とを有し、
前記排水路は前記スライドパッキンの前記棒状部を挿入する第二の穴を有し、
前記スライドパッキンの前記棒状部を前記排水路の前記第二の穴に挿入し、
前記ヒンジ部の前記偏心軸を前記スライドパッキンの前記頭部の前記第一の穴に差し込み、
前記偏心軸の前記回転に伴って前記スライドパッキンが前記排水路の前記第二の穴に沿ってスライドするように前記第一の穴を前記偏心軸の形状より大きな形状にし、
前記機器が閉じられたときに、前記ヒンジ部の回転に伴って回転する前記偏心軸に従って、前記スライドパッキンが前記排水路の前記第二の穴の方向にスライドすることによって、前記スライドパッキンの棒状部により前記排水路を塞ぐ、ことを特徴とする請求項6又は7記載の防水構造を備えた機器。
【請求項9】
前記機器が開かれたときに、前記ヒンジ部の回転に伴って回転する前記偏心軸に従って、前記スライドパッキンが前記排水路の前記第二の穴の方向と反対の方向にスライドすることによって、前記スライドパッキンの棒状部が前記排水路を開けて前記排水路を開通させる、ことを特徴とする請求項8記載の防水構造を備えた機器。
【請求項10】
キーボードを備え前記キーボードが使用可能な開状態と前記キーボードが使用不能な閉状態とを有し前記キーボードに入った水分を外部に排出する排水路を備えた機器の防水方法において、
前記排水路の一端を前記キーボードに接続し他端を前記機器の外部に開口させ、
前記機器が閉状態のときには前記排水路を塞ぎ、前記機器が開状態のときには前記排水路を開通させる、
ことを特徴とする機器の防水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−4366(P2012−4366A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138321(P2010−138321)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】