防水構造及びパッキング
【課題】部品点数が削減され、しかも組み込みの作業性が良く防水不良が発生する恐れのない防水構造を提供する。
【解決手段】剛体部材2の合せ目に円筒形状部3bの両側端面から分岐する板形状部3a、3aが延びるパッキング3を配置した防水構造において、前記パッキング3の前記円筒形状部3bと板形状部3aとが連なる箇所に、前記剛体部材の前記パッキングの前記円筒形状部3bを押えるU字形溝2cと前記板形状部3aを押える平面部2aとがなす角が食い込むことにより位置決めされるR形状部3fを設けた。
【解決手段】剛体部材2の合せ目に円筒形状部3bの両側端面から分岐する板形状部3a、3aが延びるパッキング3を配置した防水構造において、前記パッキング3の前記円筒形状部3bと板形状部3aとが連なる箇所に、前記剛体部材の前記パッキングの前記円筒形状部3bを押えるU字形溝2cと前記板形状部3aを押える平面部2aとがなす角が食い込むことにより位置決めされるR形状部3fを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防水構造に係わり、特に、ケーブルを挿通させる機器に好適な防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電子機器の防水構造の例を図6〜図9により説明する。図6は従来の携帯電子機器の防水構造の例を示す分解斜視図、図7は同防水構造を構成する部材を示す斜視図、図8は同防水構造の組立て途中を示す側面図、図9(a)は同防水構造を示す部分断面図、図9(b)は図9(a)の部分拡大図である。
【0003】
図6に示すように、樹脂製パネル11の平面部11aおよびU字形溝11c、11cの上にパッキング13が樹脂製パネル11の位置決めリブ11bの外側に位置決めされて載置され、樹脂製カバー12の穴12d、12d(図7に図示している)を挿通するねじ5、5が樹脂製パネル11のねじ穴11d、11dにねじ込まれることにより樹脂製カバー12がパッキング13を押えるように樹脂製パネル11に締着される。
【0004】
図7(a)は樹脂製カバー12を裏返した状態で示している。図7(a)に示すように樹脂製カバー12の平面部12aの内側の縁には位置決めリブ12bが設けられている。また、U字形溝12c、12cの表面にはリブ12e、12eが設けられている。
【0005】
図7(b)に示すようにパッキング13は円筒形状部13bおよび13cの両側端面から板形状部13aが分岐して延びた構造となっている。円筒形状部13bにはケーブル4を挿通させる穴13dが設けられており、円筒形状部13cには穴はなく、プラグ13eが設けられている。
【0006】
パッキング13の穴13dに図6に示すケーブル4を挿通させて上記したように樹脂製カバー12をパッキング13を挟むようにして樹脂製パネル11に締着すると、パッキング13の板形状部13aは樹脂製パネル11の平面部11aと樹脂製カバー12の平面部12aとに圧接される。
【0007】
さらに、パッキング13の板形状部13aは厚み方向に圧縮されることにより、樹脂製パネル11の位置決めリブ11bおよび樹脂製カバー12の位置決めリブ12bに圧接される。このようにして、樹脂製パネル11の平面部11aと樹脂製カバー12の平面部12aの間を密封状態とする。また、パッキング13の円筒形状部13bは樹脂製パネル11のU字形溝11cと樹脂製カバー12のU字形溝12cとに圧接されてケーブル4の周囲を密封状態とする。
【0008】
上記従来の携帯電子機器の防水構造は1つのパッキングを用いて樹脂製パネルと樹脂製カバーとの突き合わせ部とケーブルの挿通部分を防水することができる。しかしながら、組み込みの状態によっては完全な密封状態が得られないことがあった。
【0009】
その状態を図8および図9により説明する。図8は樹脂製カバー12の右側をねじ5で先に締めた状態を示している。このとき、樹脂製パネル11と樹脂製カバー12の左側の部分は矢印で示すように開いており、パッキング13の板形状部13aの右側先端部は圧縮されて板形状部13aの中心線は右側が下がるように曲げられる。そして、パッキング13の弾力により円筒形状部13bが浮き上がるように、パッキング13が変形する。
【0010】
次に、樹脂製カバー12の左側をねじで締めると樹脂製カバー12のU字形溝12cの左側がパッキング13の円筒形状部13bを押さえるようになる。このときパッキング13の板形状部13aの右端は動かないように圧接されているので、パッキング13の円筒形状部13bは板形状部13aに対して反時計方向に回動する。
【0011】
図9(a)にパッキング13の板形状部13aを全周に渡り樹脂製カバー12の平面部12aを圧接させた状態を示しており、図9(b)は図9(a)の一部を拡大して示している。上記したようにパッキング13の円筒形状部13bが板形状部13aに対して反時計方向に回動した状態で締め付けられると、図9(b)に示すように、円筒形状部13bと板形状部13aとの角部13fの左上の部分と右下の部分に凹みが発生する。この凹みのため、パッキング13により樹脂製カバー12と樹脂製パネル11との突き合わせ部を防水できなくなることがあった。
【0012】
上記のようなパッキング13の変形が発生しないようにするためには、樹脂製カバー12の組み付け作業を十分に注意して行わなければならず、組み込みの作業性が悪くなるという問題があった。
【0013】
特開平9−18169号公報に開示された防滴構造では平板状のパッキングが用いられており、平板状のパッキングにはケーブルを挿通させる部材が一体に設けられていない。従って、ケースのケーブルを挿通させる穴の部分にケーブル用のパッキングが別に必要となるために部品点数および組立て工数が増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−18169号公報、段落0009〜0010、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、部品点数が削減され、しかも組み込みの作業性が良く防水不良が発生する恐れのない防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の防水構造は、剛体部材の合せ目に円筒形状部または円錐形状部の両側端面から分岐する板形状部が延びるパッキングを配置した防水構造において、前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部と板形状部とが連なる箇所に、前記剛体部材の前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部を押えるU字形溝と前記板形状部を押える平面部とがなす角が食い込むことにより位置決めされるR形状部を設けたものである。
【0017】
また、前記防水構造において、前記剛体部材を電子機器を覆うケースとなるパネルとカバーとし、前記円筒形状部または円錐形状部をケーブルを挿通させる部材とし、前記板形状部をシート状のパッキングとしたものである。
【0018】
また、前記各防水構造において、前記U字形溝の表面にリブが形成されていないものである。
【0019】
また、前記各防水構造において、前記剛体部材を樹脂部材としたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の防水構造によれば、部品点数が削減され、しかも組み込みの作業性が良く防水の不良が発生する恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例1である携帯電子機器の防水構造を示す分解斜視図である。
【図2】同防水構造を構成する部材を示す斜視図である。
【図3】同防水構造を示す部分断面図である。
【図4】この発明の実施例2である防水構造を示す分解斜視図である。
【図5】この発明の実施例3である防水構造を示す分解斜視図である。
【図6】従来の携帯電子機器の防水構造の例を示す分解斜視図である。
【図7】同防水構造を構成する部材を示す斜視図である。
【図8】同防水構造の組立て途中を示す側面図である。
【図9】図9(a)は同防水構造を示す部分断面図、図9(b)は図9(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1はこの発明の実施例1である携帯電子機器の防水構造を示す分解斜視図、図2は同防水構造を構成する部材を示す斜視図、図3は同防水構造を示す部分断面図である。
【0024】
実施例1の携帯電子機器の防水構造は、パッキング3の円筒形状部3b、3cと板形状部3aが連なる角に図2(b)に示すように、R形状部3f、3f…が設けられ、図2(a)に示すように樹脂性カバー2のU字形溝2c、2cにリブが設けられていない。他の部分は図6および図7で説明した携帯電子機器の防水構造と同様の構造となっている。
【0025】
すなわち、図1に示すように、樹脂製パネル1の平面部1aおよびU字形溝1c、1cの上にパッキング3が樹脂製パネル1の位置決めリブ1bの外側に位置決めされて載置され、樹脂製カバー2の穴2d、2d(図2に図示している)を挿通するねじ5、5が樹脂製パネル1のねじ穴1d、1dにねじ込まれることにより樹脂製カバー2がパッキング3を押えるように樹脂製パネル1に締着される。
【0026】
図2(a)は樹脂製カバー12を裏返した状態で示している。図2(a)に示すように樹脂製カバー2の平面部2aの内側の縁には位置決めリブ2bが設けられていが、U字形溝2c、2cの表面にはリブが設けられていない。
【0027】
図2(b)に示すようにパッキング3は円筒形状部3bおよび3cの両側端面から板形状部3aが分岐して延びた構造となっている。円筒形状部3bにはケーブル4を挿通させる穴3dが設けられており、円筒形状部3cには穴はなく、プラグ3eが設けられている。パッキング3の円筒形状部3b、3cと板形状部3aが連なる8箇所の角に図2(b)に示すように、R形状部3f、3f…が設けられている。
【0028】
パッキング3の穴3dに図1に示すケーブル4を挿通させて、上記したように樹脂製カバー2をパッキング3を挟むようにして樹脂製パネル1に締着すると、パッキング3の板形状部3aは樹脂製パネル1の平面部1aと樹脂製カバー2の平面部2aとに圧接される。
【0029】
さらに、パッキング3の板形状部3aは厚み方向に圧縮されることにより、樹脂製パネル1の位置決めリブ1bおよび樹脂製カバー2の位置決めリブ2bに圧接される。このようにして、樹脂製パネル1の平面部1aと樹脂製カバー2の平面部2aの間を密封状態とする。また、パッキング3の円筒形状部3bは樹脂製パネル1のU字形溝1cと樹脂製カバー2のU字形溝2cとに圧接されてケーブル4の周囲を密封状態とする。
【0030】
このように、実施例1の携帯電子機器の防水構造は1つのパッキング3を用いて樹脂製パネルと樹脂製カバーとの突き合わせ部とケーブルの挿通部分を防水することができる。そして、図6および図7で説明した携帯電子機器の防水構造のように、組み付け時にパッキング3が変形して防水性能が悪化する恐れがない。
【0031】
以下その理由を説明する。最初にパッキング3の一方の側をねじ5で締付けるとパッキング3の板形状部3aの一方の側の先端が樹脂製パネル1と樹脂製カバー2に圧接されて固定される。このとき、パッキング3の一方の側の上下のR形状部3f、3fに樹脂製パネル1の平面部1aとU字形溝1cとが形成する角部および樹脂性カバー2の平面部2aとU字形溝2cとが形成する角部が食い込みパッキング3の円筒形状部3b、3cが樹脂製パネル1および樹脂製カバー2に対して固定される。
【0032】
このとき、パッキング3の一方の側の先端が樹脂製パネル1と樹脂製カバー2に固定されているから、パッキング3の円筒形状部3b、3cが板形状部3aに対して変位することがない。樹脂製カバー2のU字形溝2cにリブが設けられていないから円筒形状部3bを回動させる力も小さい。
【0033】
なお、パッキング3の一方の側の上下のR形状部3f、3f…は樹脂製パネル1と樹脂製カバー2により板形状部3aと同時に固定される形状となっている。図3に示すように樹脂製カバー2が樹脂製パネル1に締着された状態でパッキング3は変形していない。
【0034】
このように、実施例1の防水構造では、組付け状態により防水性能が劣化することがなく、組付け工程を簡単に行えて良好な防水性能が得られる。しかも、ケーブルの挿通部と、樹脂製パネルと樹脂製カバーの合せ部との防水が1個のパッキングで行えるため、部品点数および組立て工数が削減される。
【実施例2】
【0035】
図4はこの発明の実施例2である防水構造を示す分解斜視図である。この例では、剛体部材6でパッキング7が上下から挟まれて剛体部材6同士が締着される。但し、上側の剛体部材6は図4に示していないが下側の剛体部材6と同一の形状である。
【0036】
パッキング7は円錐形状部7bの両側面から板形状部7a、7aが延びる形状となっており、円錐形状部7bと板形状部7a、7aとがなす4箇所の角にはR形状部7c、7c…が形成されている。
【0037】
剛体部材6にはパッキング7の板形状部7a、7aを押える平面部6a、6aとパッキング7の円錐形状部7bを押えるU字形溝6bが形成されている。剛体部材6,6を図示していないねじにより締着すると、パッキング7の板形状部7a、7aと円錐形状部7bに剛体部材6、6が圧接されて防水性能が得られる。
【0038】
そして、パッキング7のR形状部7cに剛体部材6、6の角部が食い込んで円錐形状部7bが固定されるのでパッキング7の円錐形状部7bが板形状部7a、7aに対して回動するような変形が起こらず、防水性能が悪化することがない、このように円錐形状部の両側面から板形状部が延びる形状のパッキングを用いる場合にもこの発明を適用することができる。
【実施例3】
【0039】
図5はこの発明の実施例3である防水構造を示す分解斜視図である。この例では、剛体部材8、8…でパッキング9が四方から挟まれて剛体部材8、8…同士が締着される。4個の剛体部材8、8…は同一の形状である。
【0040】
パッキング9は円錐形状部9bの上下左右の側面から板形状部9a、9a…が延びる形状となっており、円錐形状部9bと板形状部9a、9a…とがなす8箇所の角にはR形状部9c、9c…が形成されている。
【0041】
剛体部材8にはパッキング9の板形状部9a、9a…を押える平面部8a、8a…とパッキング9の円錐形状部9bを押える1/4円弧形状のU字形溝8bが形成されている。剛体部材8,8…を図示していないねじにより締着すると、パッキング9の板形状部9a、9a…と円錐形状部9bに剛体部材8、8…が圧接されて防水性能が得られる。
【0042】
そして、パッキング9のR形状部9cに剛体部材8、8…の角部が食い込んで円錐形状部9bが固定されるのでパッキング9の円錐形状部9bが板形状部9a、9aに対して回動するような変形が起こらず、防水性能が悪化することがない、このように剛体部材の数が2個を越える場合にもこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 樹脂製パネル、1a 平面部、1b 位置決めリブ、1c U字形溝
1d ねじ穴
2 樹脂製カバー、2a 平面部、2b 位置決めリブ、2c U字形溝、2d 穴
3 パッキング、3a 板形状部、3b 円筒形状部、3c 円筒形状部、3d 穴
3e プラグ、3f R形状部
4 ケーブル
5 ねじ
6 剛体部材、6a 平面部、6b U字形溝
7 パッキング、7a 板形状部、7b 円錐形状部、7c R形状部
8 剛体部材、8a 平面部、8b U字形溝
9 パッキング、9a 板形状部、9b 円錐形状部、9c R形状部
11 樹脂製パネル、11a 平面部、11b 位置決めリブ、11c U字形溝
11d ねじ穴
12 樹脂製カバー、12a 平面部、12b 位置決めリブ、12c U字形溝、
12d 穴、12e リブ、
13 パッキング、13a 板形状部、13b 円筒形状部、13c 円筒形状部、
13d 穴、13e プラグ、13f 角部
【技術分野】
【0001】
この発明は防水構造に係わり、特に、ケーブルを挿通させる機器に好適な防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の携帯電子機器の防水構造の例を図6〜図9により説明する。図6は従来の携帯電子機器の防水構造の例を示す分解斜視図、図7は同防水構造を構成する部材を示す斜視図、図8は同防水構造の組立て途中を示す側面図、図9(a)は同防水構造を示す部分断面図、図9(b)は図9(a)の部分拡大図である。
【0003】
図6に示すように、樹脂製パネル11の平面部11aおよびU字形溝11c、11cの上にパッキング13が樹脂製パネル11の位置決めリブ11bの外側に位置決めされて載置され、樹脂製カバー12の穴12d、12d(図7に図示している)を挿通するねじ5、5が樹脂製パネル11のねじ穴11d、11dにねじ込まれることにより樹脂製カバー12がパッキング13を押えるように樹脂製パネル11に締着される。
【0004】
図7(a)は樹脂製カバー12を裏返した状態で示している。図7(a)に示すように樹脂製カバー12の平面部12aの内側の縁には位置決めリブ12bが設けられている。また、U字形溝12c、12cの表面にはリブ12e、12eが設けられている。
【0005】
図7(b)に示すようにパッキング13は円筒形状部13bおよび13cの両側端面から板形状部13aが分岐して延びた構造となっている。円筒形状部13bにはケーブル4を挿通させる穴13dが設けられており、円筒形状部13cには穴はなく、プラグ13eが設けられている。
【0006】
パッキング13の穴13dに図6に示すケーブル4を挿通させて上記したように樹脂製カバー12をパッキング13を挟むようにして樹脂製パネル11に締着すると、パッキング13の板形状部13aは樹脂製パネル11の平面部11aと樹脂製カバー12の平面部12aとに圧接される。
【0007】
さらに、パッキング13の板形状部13aは厚み方向に圧縮されることにより、樹脂製パネル11の位置決めリブ11bおよび樹脂製カバー12の位置決めリブ12bに圧接される。このようにして、樹脂製パネル11の平面部11aと樹脂製カバー12の平面部12aの間を密封状態とする。また、パッキング13の円筒形状部13bは樹脂製パネル11のU字形溝11cと樹脂製カバー12のU字形溝12cとに圧接されてケーブル4の周囲を密封状態とする。
【0008】
上記従来の携帯電子機器の防水構造は1つのパッキングを用いて樹脂製パネルと樹脂製カバーとの突き合わせ部とケーブルの挿通部分を防水することができる。しかしながら、組み込みの状態によっては完全な密封状態が得られないことがあった。
【0009】
その状態を図8および図9により説明する。図8は樹脂製カバー12の右側をねじ5で先に締めた状態を示している。このとき、樹脂製パネル11と樹脂製カバー12の左側の部分は矢印で示すように開いており、パッキング13の板形状部13aの右側先端部は圧縮されて板形状部13aの中心線は右側が下がるように曲げられる。そして、パッキング13の弾力により円筒形状部13bが浮き上がるように、パッキング13が変形する。
【0010】
次に、樹脂製カバー12の左側をねじで締めると樹脂製カバー12のU字形溝12cの左側がパッキング13の円筒形状部13bを押さえるようになる。このときパッキング13の板形状部13aの右端は動かないように圧接されているので、パッキング13の円筒形状部13bは板形状部13aに対して反時計方向に回動する。
【0011】
図9(a)にパッキング13の板形状部13aを全周に渡り樹脂製カバー12の平面部12aを圧接させた状態を示しており、図9(b)は図9(a)の一部を拡大して示している。上記したようにパッキング13の円筒形状部13bが板形状部13aに対して反時計方向に回動した状態で締め付けられると、図9(b)に示すように、円筒形状部13bと板形状部13aとの角部13fの左上の部分と右下の部分に凹みが発生する。この凹みのため、パッキング13により樹脂製カバー12と樹脂製パネル11との突き合わせ部を防水できなくなることがあった。
【0012】
上記のようなパッキング13の変形が発生しないようにするためには、樹脂製カバー12の組み付け作業を十分に注意して行わなければならず、組み込みの作業性が悪くなるという問題があった。
【0013】
特開平9−18169号公報に開示された防滴構造では平板状のパッキングが用いられており、平板状のパッキングにはケーブルを挿通させる部材が一体に設けられていない。従って、ケースのケーブルを挿通させる穴の部分にケーブル用のパッキングが別に必要となるために部品点数および組立て工数が増大するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平9−18169号公報、段落0009〜0010、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
この発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、部品点数が削減され、しかも組み込みの作業性が良く防水不良が発生する恐れのない防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明の防水構造は、剛体部材の合せ目に円筒形状部または円錐形状部の両側端面から分岐する板形状部が延びるパッキングを配置した防水構造において、前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部と板形状部とが連なる箇所に、前記剛体部材の前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部を押えるU字形溝と前記板形状部を押える平面部とがなす角が食い込むことにより位置決めされるR形状部を設けたものである。
【0017】
また、前記防水構造において、前記剛体部材を電子機器を覆うケースとなるパネルとカバーとし、前記円筒形状部または円錐形状部をケーブルを挿通させる部材とし、前記板形状部をシート状のパッキングとしたものである。
【0018】
また、前記各防水構造において、前記U字形溝の表面にリブが形成されていないものである。
【0019】
また、前記各防水構造において、前記剛体部材を樹脂部材としたものである。
【発明の効果】
【0020】
この発明の防水構造によれば、部品点数が削減され、しかも組み込みの作業性が良く防水の不良が発生する恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施例1である携帯電子機器の防水構造を示す分解斜視図である。
【図2】同防水構造を構成する部材を示す斜視図である。
【図3】同防水構造を示す部分断面図である。
【図4】この発明の実施例2である防水構造を示す分解斜視図である。
【図5】この発明の実施例3である防水構造を示す分解斜視図である。
【図6】従来の携帯電子機器の防水構造の例を示す分解斜視図である。
【図7】同防水構造を構成する部材を示す斜視図である。
【図8】同防水構造の組立て途中を示す側面図である。
【図9】図9(a)は同防水構造を示す部分断面図、図9(b)は図9(a)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下この発明を実施するための最良の形態を実施例に即して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1はこの発明の実施例1である携帯電子機器の防水構造を示す分解斜視図、図2は同防水構造を構成する部材を示す斜視図、図3は同防水構造を示す部分断面図である。
【0024】
実施例1の携帯電子機器の防水構造は、パッキング3の円筒形状部3b、3cと板形状部3aが連なる角に図2(b)に示すように、R形状部3f、3f…が設けられ、図2(a)に示すように樹脂性カバー2のU字形溝2c、2cにリブが設けられていない。他の部分は図6および図7で説明した携帯電子機器の防水構造と同様の構造となっている。
【0025】
すなわち、図1に示すように、樹脂製パネル1の平面部1aおよびU字形溝1c、1cの上にパッキング3が樹脂製パネル1の位置決めリブ1bの外側に位置決めされて載置され、樹脂製カバー2の穴2d、2d(図2に図示している)を挿通するねじ5、5が樹脂製パネル1のねじ穴1d、1dにねじ込まれることにより樹脂製カバー2がパッキング3を押えるように樹脂製パネル1に締着される。
【0026】
図2(a)は樹脂製カバー12を裏返した状態で示している。図2(a)に示すように樹脂製カバー2の平面部2aの内側の縁には位置決めリブ2bが設けられていが、U字形溝2c、2cの表面にはリブが設けられていない。
【0027】
図2(b)に示すようにパッキング3は円筒形状部3bおよび3cの両側端面から板形状部3aが分岐して延びた構造となっている。円筒形状部3bにはケーブル4を挿通させる穴3dが設けられており、円筒形状部3cには穴はなく、プラグ3eが設けられている。パッキング3の円筒形状部3b、3cと板形状部3aが連なる8箇所の角に図2(b)に示すように、R形状部3f、3f…が設けられている。
【0028】
パッキング3の穴3dに図1に示すケーブル4を挿通させて、上記したように樹脂製カバー2をパッキング3を挟むようにして樹脂製パネル1に締着すると、パッキング3の板形状部3aは樹脂製パネル1の平面部1aと樹脂製カバー2の平面部2aとに圧接される。
【0029】
さらに、パッキング3の板形状部3aは厚み方向に圧縮されることにより、樹脂製パネル1の位置決めリブ1bおよび樹脂製カバー2の位置決めリブ2bに圧接される。このようにして、樹脂製パネル1の平面部1aと樹脂製カバー2の平面部2aの間を密封状態とする。また、パッキング3の円筒形状部3bは樹脂製パネル1のU字形溝1cと樹脂製カバー2のU字形溝2cとに圧接されてケーブル4の周囲を密封状態とする。
【0030】
このように、実施例1の携帯電子機器の防水構造は1つのパッキング3を用いて樹脂製パネルと樹脂製カバーとの突き合わせ部とケーブルの挿通部分を防水することができる。そして、図6および図7で説明した携帯電子機器の防水構造のように、組み付け時にパッキング3が変形して防水性能が悪化する恐れがない。
【0031】
以下その理由を説明する。最初にパッキング3の一方の側をねじ5で締付けるとパッキング3の板形状部3aの一方の側の先端が樹脂製パネル1と樹脂製カバー2に圧接されて固定される。このとき、パッキング3の一方の側の上下のR形状部3f、3fに樹脂製パネル1の平面部1aとU字形溝1cとが形成する角部および樹脂性カバー2の平面部2aとU字形溝2cとが形成する角部が食い込みパッキング3の円筒形状部3b、3cが樹脂製パネル1および樹脂製カバー2に対して固定される。
【0032】
このとき、パッキング3の一方の側の先端が樹脂製パネル1と樹脂製カバー2に固定されているから、パッキング3の円筒形状部3b、3cが板形状部3aに対して変位することがない。樹脂製カバー2のU字形溝2cにリブが設けられていないから円筒形状部3bを回動させる力も小さい。
【0033】
なお、パッキング3の一方の側の上下のR形状部3f、3f…は樹脂製パネル1と樹脂製カバー2により板形状部3aと同時に固定される形状となっている。図3に示すように樹脂製カバー2が樹脂製パネル1に締着された状態でパッキング3は変形していない。
【0034】
このように、実施例1の防水構造では、組付け状態により防水性能が劣化することがなく、組付け工程を簡単に行えて良好な防水性能が得られる。しかも、ケーブルの挿通部と、樹脂製パネルと樹脂製カバーの合せ部との防水が1個のパッキングで行えるため、部品点数および組立て工数が削減される。
【実施例2】
【0035】
図4はこの発明の実施例2である防水構造を示す分解斜視図である。この例では、剛体部材6でパッキング7が上下から挟まれて剛体部材6同士が締着される。但し、上側の剛体部材6は図4に示していないが下側の剛体部材6と同一の形状である。
【0036】
パッキング7は円錐形状部7bの両側面から板形状部7a、7aが延びる形状となっており、円錐形状部7bと板形状部7a、7aとがなす4箇所の角にはR形状部7c、7c…が形成されている。
【0037】
剛体部材6にはパッキング7の板形状部7a、7aを押える平面部6a、6aとパッキング7の円錐形状部7bを押えるU字形溝6bが形成されている。剛体部材6,6を図示していないねじにより締着すると、パッキング7の板形状部7a、7aと円錐形状部7bに剛体部材6、6が圧接されて防水性能が得られる。
【0038】
そして、パッキング7のR形状部7cに剛体部材6、6の角部が食い込んで円錐形状部7bが固定されるのでパッキング7の円錐形状部7bが板形状部7a、7aに対して回動するような変形が起こらず、防水性能が悪化することがない、このように円錐形状部の両側面から板形状部が延びる形状のパッキングを用いる場合にもこの発明を適用することができる。
【実施例3】
【0039】
図5はこの発明の実施例3である防水構造を示す分解斜視図である。この例では、剛体部材8、8…でパッキング9が四方から挟まれて剛体部材8、8…同士が締着される。4個の剛体部材8、8…は同一の形状である。
【0040】
パッキング9は円錐形状部9bの上下左右の側面から板形状部9a、9a…が延びる形状となっており、円錐形状部9bと板形状部9a、9a…とがなす8箇所の角にはR形状部9c、9c…が形成されている。
【0041】
剛体部材8にはパッキング9の板形状部9a、9a…を押える平面部8a、8a…とパッキング9の円錐形状部9bを押える1/4円弧形状のU字形溝8bが形成されている。剛体部材8,8…を図示していないねじにより締着すると、パッキング9の板形状部9a、9a…と円錐形状部9bに剛体部材8、8…が圧接されて防水性能が得られる。
【0042】
そして、パッキング9のR形状部9cに剛体部材8、8…の角部が食い込んで円錐形状部9bが固定されるのでパッキング9の円錐形状部9bが板形状部9a、9aに対して回動するような変形が起こらず、防水性能が悪化することがない、このように剛体部材の数が2個を越える場合にもこの発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 樹脂製パネル、1a 平面部、1b 位置決めリブ、1c U字形溝
1d ねじ穴
2 樹脂製カバー、2a 平面部、2b 位置決めリブ、2c U字形溝、2d 穴
3 パッキング、3a 板形状部、3b 円筒形状部、3c 円筒形状部、3d 穴
3e プラグ、3f R形状部
4 ケーブル
5 ねじ
6 剛体部材、6a 平面部、6b U字形溝
7 パッキング、7a 板形状部、7b 円錐形状部、7c R形状部
8 剛体部材、8a 平面部、8b U字形溝
9 パッキング、9a 板形状部、9b 円錐形状部、9c R形状部
11 樹脂製パネル、11a 平面部、11b 位置決めリブ、11c U字形溝
11d ねじ穴
12 樹脂製カバー、12a 平面部、12b 位置決めリブ、12c U字形溝、
12d 穴、12e リブ、
13 パッキング、13a 板形状部、13b 円筒形状部、13c 円筒形状部、
13d 穴、13e プラグ、13f 角部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体部材の合せ目に円筒形状部または円錐形状部の両側端面から分岐する板形状部が延びるパッキングを配置した防水構造において、前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部と板形状部とが連なる箇所に、前記剛体部材の前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部を押えるU字形溝と前記板形状部を押える平面部とがなす角が食い込むことにより位置決めされるR形状部を設けたことを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記剛体部材は電子機器を覆うケースとなるパネルとカバーであり、前記円筒形状部または円錐形状部はケーブルを挿通させる部材であり、前記板形状部はシート状のパッキングである請求項1の防水構造。
【請求項3】
前記U字形溝の表面にリブが形成されていない請求項1または2の防水構造。
【請求項4】
前記剛体部材は樹脂部材である請求項1から3のいずれかに記載された防水構造。
【請求項1】
剛体部材の合せ目に円筒形状部または円錐形状部の両側端面から分岐する板形状部が延びるパッキングを配置した防水構造において、前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部と板形状部とが連なる箇所に、前記剛体部材の前記パッキングの前記円筒形状部または円錐形状部を押えるU字形溝と前記板形状部を押える平面部とがなす角が食い込むことにより位置決めされるR形状部を設けたことを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記剛体部材は電子機器を覆うケースとなるパネルとカバーであり、前記円筒形状部または円錐形状部はケーブルを挿通させる部材であり、前記板形状部はシート状のパッキングである請求項1の防水構造。
【請求項3】
前記U字形溝の表面にリブが形成されていない請求項1または2の防水構造。
【請求項4】
前記剛体部材は樹脂部材である請求項1から3のいずれかに記載された防水構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−181950(P2011−181950A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101977(P2011−101977)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−266612(P2006−266612)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【分割の表示】特願2006−266612(P2006−266612)の分割
【原出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】
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