説明

防水構造

【課題】防水性に優れた防水構造を提供する。
【解決手段】コンクリート床F上に架台1が足ボルト2を介して設置されている。架台1上に複数枚の床板3が端面を突き合わせて配設されている。複数枚の防水シート4を敷設し、継目を水膨潤性シーリング材5でコーキング処理する。継目に跨って防水テープ6を貼り、側縁を弾性コーキング材7で処理する。防水シート4上にセメント板などよりなるタイル張り用下地板11を敷設し、この下地板11上に接着剤によってタイル12を張り付け、目地13を詰める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防水構造に係り、特に床、壁又は天井などのパネルの表面に防水シートが張設されている防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室等の防水床を構築するために、床板の上に防水シートを敷設し、その上に仕上げ処理を施すことが行われている。
【0003】
なお、特開平7−71097号の図8,9には、コンクリート床の上に複数枚の防水シートを、防水シートの辺縁同士の間に若干の間隔をあけるようにして両面粘着テープで敷設し、防水シート同士の間にシーリング材を充填した防水床が記載されている。
【特許文献1】特開平7−71097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特開平7−71097号公報の防水床では、防水シートの辺縁同士の間の防水性が不足する。即ち、同号公報では、防水シートの辺縁同士の間にシーリング材を充填しているが、このシーリング材と防水シートの端面との間を水が透過し易い。特に、床が熱膨張したときにはシーリング材とシート端面との剥離が生じ、防水性が極端に低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、防水性に優れた床、壁、天井等の防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の防水構造は、パネルの表面に複数枚の防水シートが張設された防水構造において、防水シート同士の継目を水膨潤性シーリング材でコーキング処理し、該継目を覆うように防水テープを貼着したことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の防水構造は、請求項1において、該防水テープの両側縁と前記防水シートとの間を弾性コーキング材でコーキング処理したことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の防水構造は、請求項1又は2において、該防水シート同士の継目に沿う辺縁部分の裏面が、該継目を跨ぐ幅員を有した両面粘着テープによって該パネルに付着されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防水構造にあっては、防水シート同士の継目を水膨潤性シーリング材でコーキング処理しているため、仮に防水テープの下側を浸透して水が該継目部分に到達した場合でも、この水膨潤性シーリング材が水を吸収して膨潤し、継目を水密的にシールするようになり、水が防水シートの裏側にまで浸透することが防止される。なお、万が一、この水膨潤性シーリング材に施工不良等に起因したコーキング切れがあっても、水が浸透してきたときに、水膨潤性シーリング材が該水と接触すると膨潤し、確実に止水される。
【0010】
請求項2の防水構造によると、防水テープと防水シートとの間への水の浸透が防止され、防水性がさらに向上する。
【0011】
請求項3の防水構造では、防水シート同士の継目部分に沿う辺縁の裏面が両面粘着テープによってパネルに付着されており、この両面粘着テープが該継目部分を跨いで配設されている。このため、防水シートと両面粘着テープとの付着界面の面積が大きく、防水シートの継目部分の防水性が極めて高いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1、図2はそれぞれ実施の形態に係る防水構造としての防水床を示す縦断面図、図3は図2の防水床にタイル張りを施した状態を示す縦断面図である。
【0013】
この実施の形態では、防水構造の一例として防水床の構築例を示す。
【0014】
浴室等の構築予定スペースのコンクリート床F上に架台1が足ボルト2(図3)を介して設置されている。
【0015】
この架台1は横桟と縦桟を直交状に組み付けた枠形のものである。
【0016】
図1,2の通り、この架台1上に複数枚のパネルとしての床板3が端面を突き合わせて配設されている。床板3はテクスビス10により架台1に固定される。床板3の一方の端面には、下縁側から張り出す相决り実部3aが設けられ、他方の端面には上縁側から張り出す相决り実部3bが設けられている。これらの相决り実部3a,3bが係合されると共に、接着剤(図示略)により接着されている。
【0017】
この床板3上に防水シート4を敷設するのに先立って、床板3にプライマーを塗布しておく。
【0018】
図1では、この床板3の上に直ちに複数枚の防水シート4を敷設する。図2では、防水シート4の継目予定位置に沿って床板3に両面粘着テープ8を貼り付けた後、この床板3上に複数枚の防水シート4を敷設する。図2の場合、防水シート4はローラー等を用いて両面粘着テープ8に圧着し、気泡が残らないようにするのが好ましい。
【0019】
なお、図1,2のいずれの場合も、防水シート4を図示しない両面テープや粘着剤などによって床板3に留め付けてもよい。
【0020】
防水シート4を敷設する際に、防水シート4の辺縁同士は突き合わせるか、又は若干(例えば3mm以下程度)の間隙を開けて対峙させる。
【0021】
この防水シート4同士の継目に水膨潤性シーリング材5をコーキングガン等を用いて充填し、コーキング処理する。この水膨潤性シーリング材は、継目から若干盛り上がるように充分に充填されるのが好ましい。その後、防水シート4の継目を跨ぐようにして防水テープ6を貼着する。その後、この防水テープ6の両側縁と防水シート4上面との交叉部分に変性シリコン系コーキング材などの弾性コーキング材7を付着させる。
【0022】
その後、図3のように、防水シート4上にセメント板などよりなるタイル張り用下地板11を敷設し、この下地板11上に接着剤によってタイル12を張り付け、目地13を詰める。これにより、タイル張り防水床が構築される。
【0023】
この防水床にあっては、万一、水が防水シート4,4の継目にまで浸透してきたとしても、この継目に充填された水膨潤性シーリング材5が水と接触して膨潤することにより、継目が水密的にシールされ、防水シート4の裏側にまで水が浸透することが防止される。
【0024】
この実施の形態にあっては、防水テープ6や両面テープ8の幅をある程度大きくとることにより、防水シート4,4の継目部分の防水性を高いものとすることができる。
【0025】
なお、防水テープ6の両側縁を弾性コーキング材7でコーキング処理しているので、防水性をさらに高いものとすることができる。
【0026】
次に、上記各部材の好適な材料等について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
上記床板3としては、発泡合成樹脂ボードや、セメント系ボード、合板などが好適である。
【0028】
防水シート4としては、厚さが1〜3mm程度のEVAシート等の合成樹脂シートや、ゴムシートが好適である。
【0029】
防水テープ6や両面粘着テープ8としては、ガラス繊維や有機繊維等の不織布にブチルゴム等の粘着性ゴムや粘着性アスファルト等を含浸させたものが好適である。これらのテープ6,8の厚さは0.5〜2mm程度が好適であり、幅は10〜1000mm特に100〜350mm程度が好適である。
【0030】
水膨潤性シーリング材としては、水膨潤性ウレタンプレポリマーに、一般式R−NCOで示される末端にNCO基を10%以上含む単官能イソシアネートを加えて、これに充填剤・可塑剤・溶剤を混合したものが好適である。
【0031】
充填剤は水分を含まない状態でNCO基(イソシアネート基)と反応しない炭酸カルシウム、タルク、クレー、酸化チタン、酸化珪素等の無機質充填剤及び塩ビパウダー等の有機物が使用できる。
【0032】
可塑剤はフタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル系可塑剤が使用できる。溶剤は、キシレン、トルエン、エーテル系を用いることができる。単官能イソシアネートは、水分及び反応基を除去するために加えるので、反応性が大きな特に10%以上のイソシアネート量の物が望ましい、例えばフェニルイソシアネート、ω−トルエンイソシアネート等がある。
【0033】
水膨潤性ウレタンプレポリマーに使用される、ポリアルキレンポリオール、一般式R〔(OR)nOH〕pのRに相当する多価アルコールは以下の物があげられる。エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリオキシイソブタン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,3−ペンタントリオール、2−メチル−1,2,3−プロパントリオール、2−メチル−2,3,4−ブタントリオール、2−エチル−1,2,3−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等である。以上の中で特に好ましいのはプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等である。
【0034】
一般式R〔(OR)nOH〕pの(OR)に相当するポリエーテルポリオールは、炭素数3〜4のポリオキシアルキレン基とポリオキシエチレン基とを有するポリオキシアルキレン鎖をもち、ここでnはオキシアルキレン基の重合度を示す数で水酸基当量が500〜5000になるに相当する数であり、アルキレンオキサイドとエチレンオキサイドとはランダム重合させたものである、pは2〜4で示される数である。ここで使用されるアルキレンオキサイドはプロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドがあげられるが特にプロピレンオキサイドが好ましい。
【0035】
かかるポリエーテルポリオールの1種又は2種以上の混合物と芳香族イソシアネートとを常法により反応せしめて、末端にNCO基を0.5〜3.0%含有するウレタンプレポリマーを得る。ここで使用される芳香族イソシアネートはトリレンジイソシナート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアナート、(MDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等を使用することができ、特にジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を使用するのが、物性、貯蔵安定性及びコストの面で好ましい。
【0036】
ただし、水膨潤性シーリング材は上記のものに限定されない。
【0037】
なお、上記の実施の形態は防水床の構築例を示すものであるが、本発明は、防水床や防水天井を構築する場合にも適用可能である。例えば、この実施の形態を天地逆にし、床板3を天井板に置き換えることにより、防水性及び天井板同士の結合張度が高い防水天井を構築することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態に係る防水床を示す縦断面図である。
【図2】別の実施の形態に係る防水床を示す縦断面図である。
【図3】図1の防水床にタイル張りを施した状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 架台
3 床板
4 防水シート
5 水膨潤性シーリング材
6 防水テープ
7 弾性コーキング材
11 タイル張り用下地板
12 タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの表面に複数枚の防水シートが張設された防水構造において、
防水シート同士の継目を水膨潤性シーリング材でコーキング処理し、該継目を覆うように防水テープを貼着したことを特徴とする防水構造。
【請求項2】
請求項1において、該防水テープの両側縁と前記防水シートとの間を弾性コーキング材でコーキング処理したことを特徴とする防水構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、該防水シート同士の継目に沿う辺縁部分の裏面が、該継目を跨ぐ幅員を有した両面粘着テープによって該パネルに付着されていることを特徴とする防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−249688(P2006−249688A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64072(P2005−64072)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】