説明

防水筐体排熱構造、及び電子機器

【課題】防水筐体内の圧力調整をするとともに、防水筐体内で発生した熱を効率よく逃がす。
【解決手段】防水が図られた筐体1内に配置した発熱体17の近傍に配置され、筐体1内を密閉しながら一部を筐体1から露出させて、発熱体17の熱変化による筐体1内の空気の膨張・収縮により伸縮する中空の伸縮部材21を備える。具体的には、筐体1に開口部(19)が形成され、伸縮部材21は、端部に排熱口(22)を有する管状部に形成され、その排熱口(22)が筐体1の開口部(19)に配置される。さらに、発熱体17と伸縮部材21との間に充填され、発熱体17の熱を伝達する熱伝達部材18を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水筐体の排熱構造と、その防水筐体排熱構造を備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器において、回路基板や電子部品などを収納し、密閉された筐体の一部に、筐体内外の圧力差によって伸縮する弾性体を設けたものが特許文献1に開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−68333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、密閉された筐体内に収納された電子部品などが発熱し、筐体内が高温になった場合に、筐体内の熱を効率よく逃がすことができなかった。
【0005】
本発明の課題は、防水筐体内の圧力調整をするとともに、防水筐体内で発生した熱を効率よく逃がすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、防水が図られた筐体と、前記筐体内に配置された発熱体と、前記筐体内の前記発熱体の近傍に配置され、前記筐体内を密閉しながら一部を前記筐体から露出させて、前記発熱体の熱変化による前記筐体内の空気の膨張・収縮により伸縮する中空の伸縮部材と、を備える防水筐体排熱構造を特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の防水筐体排熱構造であって、前記筐体に開口部が形成され、前記伸縮部材は、端部に排熱口を有する管状部に形成され、前記排熱口が前記開口部に配置されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の防水筐体排熱構造であって、前記伸縮部材は、前記管状部の両端部に前記排熱口を有し、前記筐体は、二面部に前記開口部を有し、前記管状部両端部の排熱口が前記筐体二面部の開口部にそれぞれ配置されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の防水筐体排熱構造であって、前記発熱体と伸縮部材との間に充填され、前記発熱体の熱を伝達する熱伝達部材を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の防水筐体排熱構造であって、前記開口部に格子状部または網状部が設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の防水筐体排熱構造を備える電子機器を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、防水筐体内の圧力調整をするとともに、防水筐体内で発生した熱を効率よく逃がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成を示すもので、携帯電話を示した斜視図である。
【図2】図1の携帯電話を破断して示した図である。
【図3】図1の携帯電話の分解図である。
【図4】図1の携帯電話の横断面図である。
【図5】図4の矢印A部の拡大図である。
【図6】常温時を示す要部断面図である。
【図7】図6の高温時の変化を示した図である。
【図8】変形例1を示した図である。
【図9】変形例2を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は本発明を適用した電子機器の一実施形態の構成として携帯電話を示したもので、図2は破断して示したもの、図3は分解して示したもの、図4は横断面で示したものである。図中、1は筐体、2は下ケース、3は上ケース、4は下カバー、5は上カバー、6は中ケース、7は放音部、8はカメラ、9は発光部、10はデータ通信部、11は受話部、12はキー入力部、13は表示部、14はスピーカ、15は表示窓、16は回路基板、17は発熱体、18は熱伝達部材、19は開口部、20はホルダ、21は伸縮部材である。
【0015】
図示のように、筐体1は、下ケース2及び上ケース3を合わせ面間にパッキンPを介装したシール構造により防水して合体し、その外側に下カバー4及び上カバー5を合体した構造となっており、下ケース2及び上ケース3の内部には、中ケース6及びその上の回路基板16が設けられている。図示例において、下ケース2に放音部7、カメラ8、発光部9及びデータ通信部10が設けられて下カバー4から露出し、上ケース3に受話部11、キー入力部12が設けられて上カバー5から露出している。さらに、表示部13が回路基板16の上面に搭載され、スピーカ14が下ケース2に組み付けられ、表示窓15が上カバー5に設けられている。
【0016】
なお、キー入力部12及び表示窓15は上ケース3と弾性部材によって一体成形の防水構造となっている。さらに、受話部(レシーバ)11及び図示しない送話部(マイク)の音響部には防水性の振動板が用いられている。また、図示しないが、外部とのデータ通信接続構造は防水コネクタを用いて筐体1を水密構造としている。
【0017】
そして、回路基板16の下面には、通電により発熱体となる電子部品17が搭載されている。図示例では、回路基板16の縦横方向に間隔を各々空けて四つの電子部品17が並べて搭載されており、この四つの電子部品17の周囲には、中ケース6と回路基板16との間において、電子部品の通電による発熱体17の熱を伝達する弾性材による熱伝達部材18が充填されている。この熱伝達部材18はポッティングまたは成形により形成される。この熱伝達部材18により、電子部品17からの熱伝達効率を向上でき、また、筐体1の落下衝撃等による電子部品17の回路基板16からの剥離も防止できる。
【0018】
また、下カバー4の両側面部で四つの電子部品17より下方には開口部19が形成されている。図示例において、開口部19は、塵が入らないように細いスリットが並ぶ格子状部となっている。この開口部19の内側において、下ケース2の両側面部の長孔に二つのホルダ20がそれぞれ組み付けられている。
【0019】
そして、中ケース6の四つの電子部品17及び熱伝達部材18に対応する下側の凹部には、電子部品の通電による発熱体17の熱変化による筐体1内の空気の膨張・収縮により伸縮する中空の伸縮部材21が配置されている。図示例では、中ケース6の長手方向に間隔を空けた二つの凹部に、上下面がほぼ平行するチューブによる伸縮部材21がそれぞれ収納されている。このチューブによる伸縮部材21は、両端部が開放された排熱口22となっていて、中ケース6の凹部に塗布した接着剤または貼り付けた両面接着テープ等による接着部23で固定されている。
【0020】
以上の二つのチューブによる伸縮部材21は、その両端部の排熱口22を、図5にも拡大して示したように、下カバー4の両側面部の開口部19において、下ケース2の両側面部の長孔に対し楕円形のホルダ20の嵌合によりそれぞれ取り付けられる。
【0021】
図6は常温時を示したもので、電子部品17が通電により発熱体となる前において、図示のように、伸縮部材21は上下面がほぼ平行するチューブの状態となっている。
【0022】
次に、図7は高温時の変化を示したもので、電子部品が通電により発熱体17となると、その発熱体17から直接、及び周囲の熱伝達部材18を介して中ケース6に熱が伝達され、その熱が中ケース6の凹部内のチューブによる伸縮部材21に接着部23から伝達されて、そのチューブ内の空気中に放熱される。そして、伸縮部材21のチューブ内の加熱された空気は、その両端の排熱口22において、ホルダ20を介して下カバー4の両側面部の開口部19から筐体1の外部に排出される。
【0023】
また、以上の熱により中ケース6と下ケース2との間の空間内の空気が膨張して内圧が上昇し、その内圧上昇によって、図示のように、中ケース6の凹部内のチューブによる伸縮部材21の下面が潰されるように弾性変形する。
【0024】
従って、実施形態のように、防水構造による筐体1内の圧力調整が行える上、防水構造による筐体1内で発生した熱を効率よく逃がすことができる。
【0025】
(変形例1)
図8は変形例1を示したもので、前述した実施形態1と同様、1は防水構造による筐体、17は発熱体、19は開口部、20はホルダ、21は伸縮部材である。
【0026】
すなわち、変形例1は、図示のように、円周方向が蛇腹状の可変径のチューブによる伸縮部材21としたものである。
【0027】
(変形例2)
図9は変形例2を示したもので、前述した実施形態1と同様、1は防水構造による筐体、19は開口部、20はホルダ、21は伸縮部材である。
【0028】
すなわち、変形例2は、図示のように、十字形状のチューブによる伸縮部材21としたものである。
【0029】
その他、曲線形状のチューブによる伸縮部材21であってもよく、どのような形状の伸縮部材21であってもよい。また、チューブの太さが異なっていてもよい。さらに、筐体1の周りに伸縮部材21を配置してもよい。
【0030】
(他の変形例)
なお、以上の実施形態においては、携帯電話としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カメラ、PDA、ノートパソコン、ウェアラブルパソコン、電卓、電子辞書などで、防水構造を有する全ての機器に用いることができる。
また、実施形態では、伸縮部材の両端に排熱口を設けたが、排熱口は両端になくてもよく、片側の1箇所だけであってもよい。
さらに、伸縮部材は実施形態のチューブ(管状部)以外に中実であってもよく、この場合、中実の部材が熱により伸縮したり、筐体外に熱発散できるようになっていればよい。また、中実の発泡材であってもよい。
【0031】
さらに、実施形態では、筐体の開口部に格子状部を設けたが、網状部であってもよい。
また、伸縮部材や熱伝達部材の材質等も任意であり、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0032】
1 筐体
2 下ケース
3 上ケース
4 下カバー
5 上カバー
6 中ケース
7 放音部
8 カメラ
9 発光部
10 データ通信部
11 受話部
12 キー入力部
13 表示部
14 スピーカ
15 表示窓
16 回路基板
17 発熱体
18 熱伝達部材
19 開口部
20 ホルダ
21 伸縮部材
22 排熱口
23 接着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水が図られた筐体と、
前記筐体内に配置された発熱体と、
前記筐体内の前記発熱体の近傍に配置され、前記筐体内を密閉しながら一部を前記筐体から露出させて、前記発熱体の熱変化による前記筐体内の空気の膨張・収縮により伸縮する中空の伸縮部材と、を備えることを特徴とする防水筐体排熱構造。
【請求項2】
前記筐体に開口部が形成され、
前記伸縮部材は、端部に排熱口を有する管状部に形成され、
前記排熱口が前記開口部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の防水筐体排熱構造。
【請求項3】
前記伸縮部材は、前記管状部の両端部に前記排熱口を有し、
前記筐体は、二面部に前記開口部を有し、
前記管状部両端部の排熱口が前記筐体二面部の開口部にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項2に記載の防水筐体排熱構造。
【請求項4】
前記発熱体と伸縮部材との間に充填され、前記発熱体の熱を伝達する熱伝達部材を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の防水筐体排熱構造。
【請求項5】
前記開口部に格子状部または網状部が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の防水筐体排熱構造。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の防水筐体排熱構造を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−219223(P2010−219223A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63107(P2009−63107)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(504149100)株式会社カシオ日立モバイルコミュニケーションズ (893)
【Fターム(参考)】