説明

防汚・抗菌・防カビコンクリートブロック及びその製造方法

【課題】撥水及び撥油性を有することにより防汚性をもち、さらに抗菌、防カビの機能を複合して表面を被覆したコンクリートブロックを提供することを目的としている。
【解決手段】
主成分がフッ素系撥水剤である防汚剤と、主成分がイミダゾール系である抗菌・防カビ剤とを溶解あるいは分散させた表面処理加工液をコンクリート表面に付着浸透させることを特徴とするコンクリートブロックの製造方法と、そのコンクリートブロックを提供することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外構等に用いるコンクリートエクステリア製品の表面を、汚れやカビ等の付着から防ぐための表面保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンクリートブロック表面を汚れやカビの発生から保護するため、撥水剤や抗菌・防カビ・防藻剤を、表面に塗布し、あるいはコンクリートに練り込んだりする方法が実施されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−288046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表面の外観と透気性を保持したまま、水だけでなく油類に対しても撥液性を示し、防汚効果を長期にわたって保ちつつ、抗菌・防カビ性を効果的に長時間持続して示すコンクリートブロック及びその表面処理方法は開発されていなかった。それは特に、撥水・撥油性と抗菌・防カビ性を同時に付与するために、撥水剤や撥油剤と、抗菌・防カビ剤を同時に塗布しようとする場合、互いの相互作用で効果が半減し、変色し、あるいは相互に均一分散し難いために均一な塗布が困難となり、さらには長期にわたる十分な効果が発揮し難い等の多くの問題が生じていたからである。
【0005】
又、抗菌・防カビ剤のみの被覆では、汚れに対する抵抗性がなく、表面に汚れが付着した場合、その汚れ自体にカビが発生し、抗菌、防カビ剤の効果がなくなるといった問題が生じていた。
【0006】
そこで本発明では、防汚と防カビの両方の機能を複合して表面被覆することのできる成分からなる表面処理加工液を鋭意研究の結果見出し、コンクリートブロックに塗布することに成功した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
泥分やホコリ等の汚れを含んだ水や油分がブロック表面を濡らし、それが蒸発した後、汚れとして表面にこびり付く。したがって、汚れを含んだ水や油で表面が濡れず、弾いてしまう撥水、撥油加工が防汚対策としてきわめて有効である。発明者らは撥水・撥油剤を種々試験した結果、フッ素系撥水・撥油剤が最も有効であることを発見した。
【0008】
更に、外部からの汚れを防ぐと同時にカビや藻の発生を防ぐための抗菌・防カビ剤を探索した。その結果、イミダゾール系の防カビ剤が、防カビ効果も優れ、コンクリートのアルカリ性に対しても耐久性を有していることがわかった。
【0009】
そして発明者らは各種の防汚剤と抗菌・防カビ剤を組み合わせて、相互の分散性、塗布・浸透性について試験を行い、フッ素系の撥水・撥油剤とイミダゾール系の防カビ剤の組み合わせが防汚と抗菌・防カビの両方の効果を最も顕著に発揮することを見出したのである。
【0010】
そこで下記の手段により、上記課題を解決する。
【0011】
(1)撥水、撥油性を有する防汚剤と、耐アルカリ性の抗菌・防カビ剤とで表面処理することを特徴とするコンクリートブロックを提供する。
【0012】
(2)前記防汚剤の主成分がフッ素系撥水剤であり、前記抗菌・防カビ剤の主成分がイミダゾール系であることを特徴とする(1)に記載のコンクリートブロックを提供する。
【0013】
(3)溶媒中に撥水・撥油性を有する防汚剤と耐アルカリ性の防カビ剤を溶解あるいは分散させた表面処理加工液をコンクリート表面に付着浸透させることを特徴とするコンクリートブロックの製造方法を提供する。
【0014】
(4)前記防汚剤の主成分がフッ素系撥水剤であり、前記抗菌・防カビ剤の主成分がイミダゾール系であることを特徴とする(3)に記載のコンクリートブロックの製造方法を提供する。
【0015】
(5)ブロック製品の表面処理加工において、目地部を構成する側面をカバーすることにより、側面への表面処理加工液の付着を防ぐことを特徴とする(3)あるいは(4)に記載のコンクリートブロックの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
フッ素系撥水・撥油剤を主成分とする防汚剤とイミダゾール系を主成分とする防カビ剤とを、水を溶媒として、溶解あるいは分散させ、コンクリートブロック表面に塗布することにより、水、油等の液体が浸み込むのを防止でき、優れた防汚、防カビ性を有するコンクリートブロックを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に用いる撥水、撥油性を有する防汚剤の主成分はフッ素系撥水剤である。そして抗菌・防カビ剤の主成分はイミダゾール系である。これらの成分を、水を溶媒とし混合して溶解あるいは分散させて表面処理加工液とする。そしてその表面処理加工液をコンクリートブロックに塗布することにより、コンクリートブロック表面をコーティングすることができる。
【0018】
表面に塗布する際には、コンクリートブロックの目地部分となる側面に上記表面処理加工液が塗布されることのないように、側面をカバーすることが必要である。底抜きの型枠にコンクリートブロックをはめ込み、あるいは成形後の型抜きにおいて底面を離脱し、側面を型枠でカバーした状態にした後に、コンクリートブロック表裏に表面処理加工液を塗布してもよいし、側面をシールして、表面処理加工液が側面に付着しないようにしてから表裏に表面処理加工を行ってもよい。更に、コンクリートブロックを敷き詰めるように並べて、表裏に表面処理加工液を塗布しても良い。このように側面に表面処理加工液が付着しないようにするのは、表面処理加工液によりモルタルが弾かれてコンクリートブロックの接合力を弱めることのないためである。
【0019】
本発明により表面加工処理したコンクリートブロックに水や油を付着させた場合、無加工やシリコン撥水剤による加工処理とは異なり、図1のように撥液し、コンクリートブロックに浸み込むことはない。
【実施例1】
【0020】
表面処理剤としてシリコーン系表面処理剤、アクリル系表面処理剤、フッ素系表面処理剤の夫々を塗布したコンクリートブロックに対し水と油を作用させた。その結果を示したものが表1である。
【0021】
【表1】

【0022】
無処理のコンクリートブロックはそのまま水、油とも浸透してしまい、シリコーン系表面処理剤、アクリル系表面処理剤を塗布したコンクリートブロックは、水ははじいたが、油は浸透してしまった。この点、フッ素系表面処理剤は水、油の両方に対して撥液効果があることが分かる。
【実施例2】
【0023】
抗菌・防カビ剤の防カビ効果について、無機系の抗菌・防カビ剤とイミダゾール系の抗菌・防カビ剤で比較を行った。試験方法は下記のとおりである。
1.試験法:JIS Z-2911カビ抵抗性試験 合成樹脂指定黴
2.試験方法:減菌シャーレにカビ用寒天培地を約15ml分注する。固化後、カビの菌液を含む寒天培地を約5ml重層する。試料を培地中央に埋め込み、蓋をして28℃で7日間培養し、抗菌・防カビ効力の有無を観察した。
3:供試カビ
Penicillium citrinum FERM S-5
Cladosporium cladosporioides FERM S-8
Chaetomium globosum FERM S-11
【0024】
【表2】

【0025】
この結果から明らかなように、本発明に係る実施例の防カビの効果が最も高いことが分かる。
【0026】
図2は本発明の抗菌・防カビ性の効果を示す写真である。右側が本発明、左側が比較例1である。この図から明らかなように、本実施例にかかる発明のブロックの周囲にはカビが生えず、ブロックを避けるように培地に白カビ、黒カビが発生している。一方、比較例1においてはブロックの周囲まで白カビが発生しており、抗菌、防カビの効果が低いことが分かる。したがって、この実験結果より、本発明に係るコンクリートブロックの抗菌・防カビ性が高いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の撥液性の効果を示す写真である。
【図2】本発明の抗菌・防カビ性の効果を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥水・撥油性を有する防汚剤と、耐アルカリ性の抗菌・防カビ剤とで表面処理することを特徴とするコンクリートブロック。
【請求項2】
前記防汚剤の主成分がフッ素系撥水剤であり、前記抗菌・防カビ剤の主成分がイミダゾール系であることを特徴とする請求項1記載のコンクリートブロック。
【請求項3】
溶媒中に撥水・撥油性を有する防汚剤と耐アルカリ性の防カビ剤を溶解あるいは分散させた表面処理加工液をコンクリートブロック表面に付着浸透させることを特徴とするコンクリートブロックの製造方法。
【請求項4】
前記防汚剤の主成分がフッ素系撥水剤であり、前記抗菌・防カビ剤の主成分がイミダゾール系であることを特徴とする請求項3記載のコンクリートブロックの製造方法。
【請求項5】
コンクリートブロック製品の表面処理加工において、目地部を構成する側面をカバーすることにより、側面への表面処理加工液の付着を防ぐことを特徴とする請求項3あるいは4に記載のコンクリートブロックの製造方法。


【図1】
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【図2】
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