説明

防汚・清掃用シート

【課題】
清掃時に拭き取った汚れの再付着がなく、被清掃面の汚れ落としと同時に防汚効果を付与することができる防汚・清掃用シートを提供する。
【課題の解決手段】
20℃で液状である炭化水素系油性溶剤と、この炭化水素系油性溶剤に溶解する界面活性剤を配合した油剤を不織布に含浸させた防汚・清掃用シートであって、前記界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン、ソルビタン脂肪酸エステル及びイオン液体から選ばれる1種又は2種以上である防汚・清掃用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被清掃面の汚れを除去しやすく、かつ同時に防汚効果を付与することができるドライタイプの防汚・清掃用シート関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、汚れを除去する清掃用シートとしては、ウエットシートタイプやドライシートタイプなど様々な形状、材質のものが知られている。
ウエットシートタイプとしては様々なものがあり、特許文献1のガラス用洗浄シート及びガラス用洗浄シート物品では、レーヨン又はコットンの不織布に洗浄剤成分として界面活性剤及び親水性溶剤と防曇成分及び/又はアルカノールアミン及びアルカリ金属から選ばれる1種を含浸されたものが記載されている。また、特許文献2の清掃用不織布及び清掃用不織布物品は、スパンレース不織布に界面活性剤、水溶性溶剤及びアルカリ剤を含浸させたものが、硬表面の頑固な油汚れを従来の研磨性のあるスチールウール等による清掃方法にくらべて、傷つきの心配もなく、非常に少ない労力で簡便且つ効果的に清掃できることを示している。特許文献3の清掃用シート及びその製造方法では、水を使用する場所に設置してある家具、備品などに適する洗浄効果の高い清掃用シートとして、レーヨン繊維とポリエチレンテレフタレート繊維を含む不織布に、界面活性剤と多価アルコールを含む清掃剤を含有させたものが開示されている。特許文献4では、陰イオン界面活性剤又は非イオン界面活性剤からなる帯電防止剤及び陰イオン増粘剤又は非イオン増粘剤からなる増粘剤を含む水性洗浄剤を不織布に含浸したウエットタイプの清掃用シートが、静電気に起因する汚れの発生を防止することが示されている。しかし、これらのウエットタイプのシートは窓ガラスや網戸を拭き取った場合、一度拭き取った汚れが洗浄液によって被清掃面に押し出され、何度拭いても拭き取れず、拭きすじが残るという問題があり、清掃後に二度拭きする必要があった。
一方、ドライシートタイプとしては、特許文献5の清掃用払拭具があり、長繊維不織布に、親水性繊維と捲縮性合成繊維とからなる繊維ウェブが積層されてなるシートに、油剤成分と界面活性剤よりなるダストコントロール剤を担持させた清掃払拭具が示されている。また特許文献6の清掃用具では、ドライタイプの繊維状基材に、アレルギーを引き起こす物質の抗原性を低減化させる抗原性低減化成分と、油剤と、界面活性剤とを含む抗原性低減化組成物が付与されてなる掃除用具が示されている。しかし、これらのドライタイプのシートは、拭き取った汚れをしっかり吸着し、その汚れが被清掃面に再付着することはないが、ウエットタイプに使用されている水溶性の防汚成分を配合することは難しく、拭いた後の被清掃面に防汚効果を付与できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−80899号公報
【特許文献2】特開2003−180593号公報
【特許文献3】特開2005−13479号公報
【特許文献4】特開2003−164408号公報
【特許文献5】特開平9−66014号公報
【特許文献6】特開2006−75361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、20℃で液状の炭化水素系油性溶剤と、これに溶解する特定の界面活性剤を配合した油剤を含浸したシートから構成され、清掃時に拭き取った汚れの再付着がなく、被清掃面の汚れ落としと同時に防汚効果を付与可能な防汚・清掃用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)20℃で液状である炭化水素系油性溶剤と、この炭化水素系油性溶剤に溶解する界面活性剤を配合した油剤を不織布に含浸させた防汚・清掃用シートであって、前記界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン、ソルビタン脂肪酸エステル及びイオン液体から選ばれる1種又は2種以上である防汚・清掃用シート。
(2)炭化水素系油性溶剤がパラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素から選ばれる1種又は2種以上である(1)記載の防汚・清掃用シート。
(3)界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルアミン及びポリオキシエチレンアルキルジアミンであって、そのエチレンオキサイド付加モル数が3モル以下である(1)又は(2)に記載の防汚・清掃用シート。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防汚・清掃用シートによれば、含浸油剤として、20℃で液状である炭化水素系油性溶剤と、これに溶解する特定の界面活性剤を配合したことに基づき、高い洗浄効果を奏するとともに、清掃後の被清掃面に防汚効果を付与することが可能となる。
また、本発明の防汚・清掃用シートは、そのままもしくは、アプリケーターに装着して使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0008】
本発明で用いる不織布は、含浸油剤を十分量含浸することができ、清掃に耐えうる強度を持つものであれば、特に制限なく使用することが可能である。特に好ましい不織布としては、例えば、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、サクション不織布、ヒートボンド不織布、メルトブロー不織布等が挙げられ、その一部もしくは全部に分割繊維を使用しても良い。不織布を形成する繊維組成は、適宜選定することができ、レーヨン、ポリオレフィン、ポリエステル、パルプ等の繊維を単独で、又は、積層して用いることができる。さらに本発明で用いる不織布は、30〜200g/mの目付けであることが望ましい。目付けが小さすぎると清掃用シートとして使用した際に、強度が不十分となり、破れたり繊維が脱落して汚れの原因となる。また、大きすぎるとコストが高くなり、また清掃面に力が伝わり難くなる等、実用性の乏しいものとなってしまう。
【0009】
本発明に用いられる20℃で液状である炭化水素系油性溶剤としては、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素が挙げられる。パラフィン系ではノルマルパラフィンやイソパラフィン、オレフィン系ではαオレフィンとして1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンなどが挙げられる。また、これらの炭化水素が混合された鉱物油等であってもよい。特に、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素又はナフテン系炭化水素は、汚れ吸着性や潤滑性が良く好適に用いられる。
【0010】
炭化水素系油性溶剤に溶解する特定の界面活性剤としては、溶解性、防汚性の観点から、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン、ソルビタン脂肪酸エステル及びイオン液体が採用され、ポリオキシエチレンアルキルアミン及びポリオキシエチレンアルキルジアミンのエチレンオキサイド付加モル数が3以下のものが好ましい。これら以外の、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルや脂肪酸アルカノールアミド、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤は、HLBの低いものであっても、炭化水素系油性溶剤に難溶なため好ましくない。
炭化水素系油性溶剤に溶解する界面活性剤の配合量としては、防汚効果の観点から5質量%以上が好ましいが、30質量%を超えて配合量を増やしても相応した防汚効果が得られないうえ、コストアップにつながるので、5〜30質量%の範囲が適当である。
【0011】
本発明の防汚・清掃用シートの含浸油剤には、本発明の特徴を損なわない範囲で、適宜、他の添加剤を配合することができる。例えば、シリコーンオイル、合成油、動物油及び植物油などの油性溶剤、グリコールエーテルなどの水溶性溶剤、殺菌剤、防腐剤、除菌剤、虫よけ剤、殺虫剤、消臭剤、香料などが挙げられる。
【0012】
次に具体的な実施例に基づき、本発明の防汚・清掃用シートについて、更に詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
表1に示す組成の実施例および比較例の含浸油剤を調製し、レーヨン/ポプロピレン/ポリエチレンのスパンレース不織布(目付け:70g/m)に1m当たり15gになるよう含浸し、ドライタイプの防汚・清掃用シートを作製した。
用いた炭化水素系油性溶剤や界面活性剤の仕様は下記のとおりである。
IPソルベント2835(出光興産(株)製 イソパラフィン)、リニアレン14(出光興産(株)製 C14α−オレフィン)、エクソールD130(エクソンモービル製 ナフテン系炭化水素)、エソミンO/12(ライオン(株)製 POE(2)オレイルアミン)、エソミンC/12(ライオン(株)製 POE(2)ラウリルアミン)、エソデュオミンT/13(ライオン(株)製 POE(3)牛脂ジアミン)、ノニオンOP−80R(日油(株)製 ソルビタンモノオレエート)、ノニオンOP−85R(日油(株)製 ソルビタントリオレエート)、X−8128(日華化学製イオン液体 ベンザルコニウム(C12)ジオクチル燐酸塩)、X8129(日華化学製イオン液体 ベンザルコニウム(C12)ジオクチルスルホコハク酸塩)、モノグリMB(日油(株)製 ステアリン酸グリセリル)、ニッコールSL−10(日光ケミカル(株)製 オレイン酸グリセリル)、アデカソールCOA((株)ADEKA製 ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(1:1型))、ブラウノンEN1502(青木油脂(株)製 POE(2)オレイルエーテル)
<防汚試験>
厚さ1mmの塩化ビニル製の板を5×10cmに切断し、防汚・清掃用シートで片面をまんべんなく拭いた後、拭いた面を下にして、乾燥した土を入れた直径9cmのシャーレの上に置き、裏面を不織布で10回こすり静電気を起こして土を付着させた。土の付着量を測定して、防汚率(%)を以下の式で算出した。

防汚率(%)=(A−B)/A×100
A:無処理の塩化ビニル板への土の付着量
B:防汚・清掃用シートで拭いた塩化ビニル板への土の付着量

また、このときの防汚効果を目視にて以下の基準で評価した。
○:無処理よりも明らかに汚れの付着を抑えている
△:無処理よりもやや汚れの付着を抑えている
×:無処理と同じくらい汚れが付着している

【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

【0016】
表1の実施例1乃至14に示すように、炭化水素系油性溶剤に溶解する特定の界面活性剤を含浸した本発明品の防汚・清掃用シートは、良好な防汚効果が認められた。
【0017】
一方、比較例1乃至4の界面活性剤は炭化水素系油性溶剤に溶解せず、不織布シートに均一に含浸することができなかった。また、比較例5乃至7で示すように、アミン、脂肪酸及びアルコールは、炭化水素系油性溶剤に溶解したが、防汚効果は認められなかった。
【0018】
本発明の防汚・清掃用シートは、ウエットタイプのシートのような清掃時の拭き取った汚れの再付着がなく、拭くだけで汚れ落しと被清掃面に防汚効果の付与を同時に行うことができるため非常に有用である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の防汚・清掃用シートは、広範な防汚・清掃用途を目的として利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
20℃で液状である炭化水素系油性溶剤と、この炭化水素系油性溶剤に溶解する界面活性剤を配合した油剤を不織布に含浸させた防汚・清掃用シートであって、前記界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルジアミン、ソルビタン脂肪酸エステル及びイオン液体から選ばれる1種又は2種以上である防汚・清掃用シート。
【請求項2】
炭化水素系油性溶剤がパラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素及びナフテン系炭化水素から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の防汚・清掃用シート。
【請求項3】
界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルアミン及びポリオキシエチレンアルキルジアミンであって、そのエチレンオキサイド付加モル数が3モル以下である請求項1又は2に記載の防汚・清掃用シート。