説明

防汚塗料組成物、防汚塗膜、ならびに防汚塗膜の加水分解速度の制御方法

【課題】長期間にわたって一定の速度で加水分解される防汚塗膜を形成することが可能であり、もって高い防汚性を長期間にわたって安定して発揮することができる防汚塗料組成物および当該防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜を提供する。
【解決手段】4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルを含む2種以上の防汚剤と、下記一般式(1)[Mは2価金属であり、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。]で表される基を側鎖に有するアクリル樹脂と、を含有する防汚塗料組成物および当該防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物に関し、より詳しくは、水中における加水分解速度が一定である防汚塗膜を形成できる防汚塗料組成物に関する。また、本発明は、当該防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜、ならびに防汚塗膜の水中における加水分解速度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶、養殖を始めとする各種魚網、港湾施設、オイルフェンス、配管材料、橋梁、浮標、工業用水系施設、海底基地等の水中構造物は、生物が生息する水中に常時さらされているため、時間の経過により、バクテリア等の微生物が付着し、また、これを食料とする、たとえば、フジツボ、イガイ、アオサ、珪藻等の動植物が付着する。これらの微生物および動植物により、水中構造物の表面が覆われると、当該部分の腐食、船舶の海水摩擦抵抗の増大による船舶燃費の低下、漁網の目詰まりによる魚介類の大量ヘイ死、浮標の浮力低下による沈降、作業能率の低下等の被害が発生する。
【0003】
これら有害生物の付着を防止する方法としては、水中構造物表面に、1種以上の防汚剤とバインダ樹脂とを含有する防汚塗料を塗装し、該表面に防汚塗膜を形成する方法が一般的である。現在までに、防汚剤として有効な、様々な種類の防汚成分が見出され、実用化されている。そのなかで、亜酸化銅(Cu2O)は、フジツボ等の動物の付着を効果的に防止できる耐動物性防汚剤として知られており、しばしば用いられる防汚剤の1つである。防汚剤として亜酸化銅を用いた、あるいは亜酸化銅と藻類に対する防汚効果を持つ他の防汚剤とを併用した種々の防汚塗料が提案されている。
【0004】
たとえば、特許文献1には、亜酸化銅と、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩と、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチル−ジクロロフェニル尿素、ジンクジメチルジチオカルバメートから選択されるいずれか1種の化合物とを含有する防汚塗料組成物が開示されている。また、特許文献2には、防汚剤としての、亜酸化銅と4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−3(2H)−イソチアゾリンとの組み合わせ、亜酸化銅と2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩との組み合わせ、および、亜酸化銅と2−ピリジンチオール−1−オキシド銅塩とジンクエチレンビスジチオカーバメートとの組み合わせ等が開示されている。
【0005】
一方、防汚塗料に用いるバインダ樹脂としては、近年、水中浸漬により防汚塗膜が徐々に加水分解されることにより自己研磨され、これによって長期にわたって防汚性が発揮できることから、樹脂側鎖に、たとえば金属含有基などの加水分解性基を有する加水分解性樹脂が用いられるようになっている(上記特許文献1および2参照)。
【特許文献1】特開平10−298455号公報
【特許文献2】特開2001−342432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
亜酸化銅(Cu2O)は、特に耐動物性防汚剤として有効な防汚成分であるが、亜酸化銅を用いて十分に高い防汚性を有する防汚塗料組成物を得るためには、通常、亜酸化銅の配合量を多くする必要がある。しかしながら、多量の亜酸化銅とバインダ樹脂としての加水分解性樹脂とを含有する防汚塗料組成物においては、形成された防汚塗膜の水中での加水分解速度が一定とならず、安定して高い防汚性を発揮できないという問題があった。具体的には、加水分解性樹脂が有する加水分解性基の種類によっては、水中浸漬の初期段階では比較的一定の加水分解速度を示しても、一定の水中浸漬期間を経て急激に加水分解速度が上昇したり、あるいは、水中浸漬後しばらくの間は一定の加水分解速度を示すものの、その後は加水分解速度が低下し、塗膜の自己研磨がほとんど進行しなくなることがあった。
【0007】
そこで本発明の目的は、長期間にわたって一定の速度で加水分解される防汚塗膜を形成することが可能であり、もって高い防汚性を長期間にわたって(たとえば船舶航行時の全期間にわたって)安定して発揮することができる防汚塗料組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、当該防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜、ならびに当該防汚塗料組成物を用いた、防汚塗膜の水中における加水分解速度の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルを含む2種以上の防汚剤と、下記一般式(1):
【0009】
【化1】

【0010】
(上記一般式(1)中、Xは、
【0011】
【化2】

【0012】
で表される基であり、kは0または1であり、Yは炭化水素であり、Mは2価金属であり、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。)で表される基を側鎖に有するアクリル樹脂と、を含有する防汚塗料組成物を提供する。
【0013】
上記防汚剤は、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルである第1の防汚剤と、ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ピリジントリフェニルボラン、1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド、1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)メタンスルフェンアミド、N’−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N’−ジメチル尿素、N’−tert−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、および、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンからなる群から選択される少なくとも1種である第2の防汚剤と、を含むことが好ましい。
【0014】
第1の防汚剤の含有量と前記第2の防汚剤の含有量との比は、質量比で、1/15〜1/1の範囲内であることが好ましい。
【0015】
本発明の防汚塗料組成物は、上記防汚剤として亜酸化銅を含んでいなくてもよい。
また、上記アクリル樹脂は、側鎖に、下記一般式(2):
【0016】
【化3】

【0017】
(上記一般式(2)中、R1、R2、R3は、同一または異なって、炭素数1〜20の炭化水素残基を表す。)で表される基をさらに有していてもよい。
【0018】
また、本発明は、上記本発明の防汚塗料組成物を用いて形成された防汚塗膜を提供する。さらに、本発明は、被塗物表面に形成された防汚塗膜の水中における加水分解速度を制御する方法を提供する。本発明の制御方法は、防汚塗膜を形成する塗料組成物として、上記本発明の防汚塗料組成物を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の防汚塗料組成物によれば、長期間にわたって一定の速度で加水分解される防汚塗膜を形成することができるので、高い防汚性能を長期間にわたって安定して発揮することができる。また、本発明の防汚塗料組成物によれば、長期防汚性に優れるとともに、耐クラック性に優れた防汚塗膜を形成することができる。本発明の防汚塗料組成物は、船舶、養殖を始めとする各種魚網、港湾施設、オイルフェンス、配管材料、橋梁、浮標、工業用水系施設、海底基地等の水中構造物表面を防汚するための防汚塗料として好適に用いることができる。
【0020】
また、本発明の加水分解速度の制御方法によれば、被塗物表面に形成された防汚塗膜の水中における加水分解速度を一定にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の防汚塗料組成物は、バインダ樹脂である特定の加水分解性基を有する加水分解性樹脂と、4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルである第1の防汚剤と、第1の防汚剤とは異なる1種または2種以上の防汚剤とを含む。このような防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜は、水中、特には海水中において、長期間にわたり一定の速度で加水分解する。したがって、本発明の防汚塗料組成物によれば、高い防汚性能を長期間にわたって安定して発揮する塗膜を得ることができる。さらに、本発明の防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜は、長期防汚性に優れるとともに、耐クラック性にも優れている。たとえば、防汚塗料組成物が船舶等に適用される場合、一定期間海水に浸漬後、陸揚げされるというサイクルを繰り返すため、防汚塗膜には、かかる条件下にも耐え得る可とう性が要求されるが、本発明によれば、このようなサイクルを繰り返してもクラックが生じにくい防汚塗膜を形成することが可能である。以下、本発明の防汚塗料組成物中に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0022】
<バインダ樹脂>
本発明の防汚塗料組成物に用いるバインダ樹脂は、下記一般式(1):
【0023】
【化4】

【0024】
で表される基を側鎖に有するアクリル樹脂(以下、アクリル樹脂(A)と称する)である。ここで、式中、Xは、
【0025】
【化5】

【0026】
で表される基であり、kは0または1であり、Yは炭化水素であり、Mは2価金属であり、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。
【0027】
一般に、アクリル樹脂(A)は、上記一般式(1)で表される基が有する金属エステル結合の加水分解性に起因して、水中(特には海水中)において徐々に加水分解する性質を示す。したがって、このようなアクリル樹脂をバインダ樹脂とする防汚塗料組成物から形成された防汚塗膜は、水中浸漬によりその表面が自己研磨され、これにより、防汚成分(防汚剤ならびに金属エステル結合の加水分解により生成した金属成分および有機酸分)が塗膜表面から放出され続けるようになるため、塗膜が完全に消耗されるまでの間、防汚性能を示すこととなる。
【0028】
しかしながら、本発明者らの検討により、アクリル樹脂(A)をバインダ樹脂とし、亜酸化銅を防汚剤の主成分として含有する防汚塗料組成物からなる防汚塗膜は、水中浸漬後しばらくの間は一定の加水分解速度を示すものの、その後は加水分解速度が低下して塗膜の自己研磨がほとんど進行しなくなり、その結果、十分に高い防汚性能を長期にわたって発揮できなくなることがわかった。このような現象は、上記一般式(1)で表される基の金属エステル部分と、亜酸化銅との相互作用によるものと考えられる。すなわち、水中浸漬初期では、順調に金属エステル部分の加水分解が進行していても、塗膜の自己研磨がある程度進行すると、イオン化した亜酸化銅が上記一般式(1)で示される側鎖と何らかの相互作用を示すようになるため、金属エステル部分と亜酸化銅との相互作用がより強くなり、金属エステル部分の加水分解が起こりにくくなり、結果として加水分解による塗膜の更新性が乏しくなるものと考えられる。
【0029】
本発明では、上記問題を解消すべく、後で詳細を述べる防汚剤をアクリル樹脂(A)と併用する。当該防汚剤を用いることにより、アクリル樹脂(A)をバインダ樹脂とする場合であっても、防汚塗膜の加水分解速度を長期間にわたり一定に保つことができ、高い防汚性能を長期間にわたって安定して発揮することができる。
【0030】
本発明で用いるアクリル樹脂(A)としては、加水分解性基として上記一般式(1)で表される基を側鎖に有し、下記一般式(2)で表される基を側鎖に有しないアクリル樹脂(以下、アクリル樹脂(A1)と称する)、ならびに、加水分解性基として上記一般式(1)で表される基および下記一般式(2)で表される基の双方を側鎖に有するアクリル樹脂(以下、アクリル樹脂(A2)と称する)等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、アクリル樹脂(A1)とアクリル樹脂(A2)と併用してもよい。なお、本明細書中において、「アクリル樹脂」とは、樹脂の少なくとも一部が、(メタ)アクリル酸あるいはその誘導体または(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位からなる樹脂を意味する。(メタ)アクリル酸の誘導体には、(メタ)アクリル酸金属塩も含まれる。
【0031】
【化6】

【0032】
(上記一般式(2)中、R1、R2、R3は、同一または異なって、炭素数1〜20の炭化水素残基を表す。)
[アクリル樹脂(A1)]
アクリル樹脂(A1)は、加水分解性基として上記一般式(1)で表される基を側鎖に有し、上記一般式(2)で表される基の双方を側鎖に有しないアクリル樹脂であり、典型的には、加水分解性基として上記一般式(1)で表される基のみを側鎖に有するアクリル樹脂である。上記一般式(1)において、Mは2価金属であり、たとえば、周期律表中の3A〜7A、8、1B〜7B族元素を挙げることができる。なかでも、Mは、銅、亜鉛であることが好ましい。
【0033】
上記一般式(1)において、Aは、一塩基酸の有機酸残基である。好ましい一塩基酸としては、たとえば、一塩基環状有機酸等を挙げることができる。一塩基環状有機酸としては特に限定されず、たとえば、ナフテン酸等のシクロアルキル基を有するもののほか、三環式樹脂酸等の樹脂酸およびこれらの塩等を挙げることができる。三環式樹脂酸としては特に限定されず、たとえば、ジテルペン系炭化水素骨格を有する一塩基酸等を挙げることができ、このようなものとしては、たとえば、アビエタン、ピマラン、イソピマラン、ラブダン各骨格を有する化合物を挙げることができる。より具体的には、たとえば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、水添アビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸、レボピマル酸、デキストロピマル酸、サンダラコピマル酸、およびこれらの塩等を挙げることができる。これらのうち、加水分解が適度に行なわれるので長期防汚性に優れるほか、塗膜の耐クラック性、入手容易性にも優れることから、アビエチン酸、水添アビエチン酸、およびこれらの塩が好ましい。さらに、好ましい一塩基環状有機酸としては、酸価が120〜220mgKOH/gのものが挙げられる。酸価が220mgKOH/g以下の一塩基環状有機酸を用いることにより、得られるバインダ樹脂(A1)の粘度を低下させることができるようになり、得られる塗料の溶剤含有量を減らすことができる。これはバインダ樹脂(A1)の粘度が、一般式(1)で示される官能基同士の相互作用によるところが大きいためである。酸価が220mgKOH/g以下の一塩基環状有機酸を用いて得たバインダ樹脂(A1)は、一塩基環状有機酸の立体反発が大きくなる傾向があり、該立体反発が一般式(1)で示される官能基同士の相互作用を阻害する働きがあると思われ、その結果、バインダ樹脂(A1)の粘度を低下させることができる。また、酸価が120を下回る場合、得られるバインダ樹脂(A1)が疎水性になりすぎて、得られる塗膜の加水分解が進まない場合が有り好ましくない。
【0034】
上記一塩基環状有機酸としては、高度に精製されたものである必要はなく、たとえば、松脂、松の樹脂酸等を使用することもできる。このようなものとしては、たとえば、ロジン類、水添ロジン類、不均化ロジン類等やナフテン酸を挙げることができる。ここでいうロジン類とは、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等である。ロジン類、水添ロジン類および不均化ロジン類は、廉価で入手しやすく、取り扱い性に優れ、長期防汚性を発揮する点で好ましい。これらの一塩基環状有機酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本発明で使用できる一塩基酸のうち、上記一塩基環状有機酸以外のものとしては、たとえば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリル酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、クロル酢酸、フルオロ酢酸、吉草酸等の炭素数1〜20のもの等を挙げることができる。これらの一塩基酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
上記一般式(1)におけるYとしては、炭化水素であれば特に限定されず、たとえば、重合性不飽和有機酸単量体にフタル酸、コハク酸、マレイン酸等の二塩基酸を付加した場合における残基を挙げることができる。
【0037】
アクリル樹脂(A1)の製造方法としては、特に限定されず、たとえば、(イ)重合性不飽和有機酸とその他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させることにより得られた樹脂と、一塩基酸と金属化合物とを反応させる方法、(ロ)重合性不飽和有機酸と金属化合物と一塩基酸とを反応させるか、または、重合性不飽和有機酸と一塩基酸の金属塩とを反応させ、得られる金属含有不飽和単量体と、その他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させる方法等を挙げることができる。なお、(イ)の方法の過程で得られる重合性不飽和有機酸とその他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させることにより得られた樹脂、および、(ロ)の方法で重合性不飽和有機酸と金属化合物と一塩基酸とを反応させるか、または、重合性不飽和有機酸と一塩基酸の金属塩とを反応させ、得られる金属含有不飽和単量体と、その他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させ、当該樹脂がもつ一般式(1)の側鎖を加水分解させた樹脂は、ともに同様の樹脂構造を有し、本明細書ではこれらを総称して「基体アクリル樹脂(a1)」ともいう。
【0038】
上記方法(イ)および(ロ)における重合性不飽和有機酸としては特に限定されず、たとえば、カルボキシル基を1つ以上有する重合性不飽和有機酸などを挙げることができる。より具体的には、たとえば、(メタ)アクリル酸等の不飽和一塩基酸;マレイン酸およびこのモノアルキルエステル、イタコン酸およびこのモノアルキルエステル等の不飽和二塩基酸およびこのモノアルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのマレイン酸付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのフタル酸付加物、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルのコハク酸付加物等の不飽和一塩基酸ヒドロキシアルキルエステルの二塩基酸付加物等を挙げることができる。これらの重合性不飽和有機酸は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、方法(ロ)において、金属含有不飽和単量体として、その一部あるいは全部を2価金属ジ(メタ)アクリレートに置き換えて使用してもよい。2価金属ジ(メタ)アクリレートを用いた場合には、一般式(1)で示された基を介して樹脂が架橋構造となるが、そのような樹脂を用いることも可能である。
【0039】
上記その他の共重合可能な不飽和単量体としては特に限定されず、たとえば、(メタ)アクリル酸エステル類として、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等のエステル部の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のエステル部の炭素数が1〜20の水酸基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸環状炭化水素エステル;(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、重合度2〜10のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル;炭素数1〜3のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート等の他、(メタ)アクリルアミド;スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルトルエン、アクリロニトリル等のビニル化合物;クロトン酸エステル類;マレイン酸ジエステル類、イタコン酸ジエステル類等の不飽和二塩基酸のジエステルを挙げることができる。上記(メタ)アクリル酸エステル類のエステル部分は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましい。好ましくは、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0040】
上記金属化合物としては特に限定されず、たとえば、金属酸化物、水酸化物、塩化物、硫化物、塩基性炭酸塩、酢酸金属塩等を挙げることができる。また、上記一塩基酸としては特に限定されず、たとえば、上述したものを挙げることができる。
【0041】
上記基体アクリル樹脂(a1)の数平均分子量(GPC、ポリスチレン換算)としては特に限定されないが、2000以上、100000以下であることが好ましく、3000以上、40000以下であることがより好ましい。2000未満であると、塗膜の造膜性が低下するおそれがあり、100000を超えると、得られる塗料の貯蔵安定性が悪くなり実用に適さないだけでなく、塗装時に大量の希釈溶剤の使用により公衆衛生、経済性等の点で好ましくない。
【0042】
また、アクリル樹脂(A1)は、少なくとも1つの一般式(1)で表される基を含有する。一般式(1)で表される基の含有率を調整することにより、水中への塗膜溶出速度(塗膜の加水分解速度)を所望の溶出速度に制御することが可能である。上記一般式(1)で表される基の含有率は、主に、基体アクリル樹脂(a1)の酸価を調整することにより調整することが可能であり、基体アクリル樹脂(a1)の酸価としては、100〜250mgKOH/gであることが好ましい。100mgKOH/g未満であると、側鎖に結合させる金属塩の量が少なくなり、防汚性に劣ることがあり、250mgKOH/gを超えると、溶出速度が速すぎて、長期の防汚性が得られにくい傾向にある。
【0043】
[アクリル樹脂(A2)]
アクリル樹脂(A2)は、加水分解性基として上記一般式(1)で表される基および上記一般式(2)で表される基の双方を側鎖に有するアクリル樹脂である。上記一般式(2)において、R1、R2およびR3は、同一または異なって、炭素数1〜20の炭化水素残基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基等の炭素数が20以下の直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロヘキシル基、置換シクロヘキシル基等の環状アルキル基;アリール基、置換アリール基等が挙げることができる。置換アリール基としては、ハロゲン、炭素数18程度までのアルキル基、アシル基、ニトロ基またはアミノ基等で置換されたアリール基等を挙げることができる。なかでも、得られる塗膜において安定したポリッシングレート(研磨速度)を示し、防汚性能を長期間安定して維持することができる観点から、イソプロピル基等が好ましい。
【0044】
アクリル樹脂(A2)の製造方法としては、特に限定されず、たとえば、(I)重合性不飽和有機酸とトリオルガノシリル基を有するモノマー成分とその他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させることにより得られた樹脂と、一塩基酸と金属化合物とを反応させる方法、(II)重合性不飽和有機酸と金属化合物と一塩基酸とを反応させるか、または、重合性不飽和有機酸と一塩基酸の金属塩とを反応させることにより得られる金属含有不飽和単量体と、トリオルガノシリル基を有するモノマー成分と、その他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させる方法等を挙げることができる。なお、(I)の方法の過程で得られる重合性不飽和有機酸とトリオルガノシリル基を有するモノマー成分とその他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させることにより得られた樹脂、および、(II)の方法で重合性不飽和有機酸と金属化合物と一塩基酸とを反応させるか、または、重合性不飽和有機酸と一塩基酸の金属塩とを反応させることにより得られる金属含有不飽和単量体と、トリオルガノシリル基を有するモノマー成分と、その他の共重合可能な不飽和単量体とを重合させ、当該樹脂がもつ一般式(1)の側鎖を加水分解させた樹脂は、ともに同様の樹脂構造を有し、本明細書ではこれらを総称して「基体アクリル樹脂(a2)」ともいう。
【0045】
上記トリオルガノシリル基を有するモノマー成分としては、下記一般式(3):
【0046】
【化7】

【0047】
で表されるトリオルガノシリル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。一般式(3)で示されるトリオルガノシリル(メタ)アクリレートにおいて、Zは、水素原子またはメチル基を表す。上記R4、R5およびR6は、同一または異なって、炭素数1〜20の炭化水素残基を表し、たとえば、上記R1、R2およびR3と同様の炭化水素残基を挙げることができる。
【0048】
上記一般式(3)で示されるトリオルガノシリル(メタ)アクリレートの具体例としては特に限定されず、たとえば、トリメチルシリル(メタ)アクリレート、トリエチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−i−プロピルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−i−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−s−ブチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−アミルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ヘキシルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−オクチルシリル(メタ)アクリレート、トリ−n−ドデシルシリル(メタ)アクリレート、トリフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリ−p−メチルフェニルシリル(メタ)アクリレート、トリベンジルシリル(メタ)アクリレート、エチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、n−ブチルジメチルシリル(メタ)アクリレート、ジ−i−プロピル−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、n−オクチルジ−n−ブチルシリル(メタ)アクリレート、ジ−i−プロピルステアリルシリル(メタ)アクリレート、ジシクロヘキシルフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、ラウリルジフェニルシリル(メタ)アクリレート、t−ブチル−m−ニトロフェニルメチルシリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも、安定したポリッシングレート(研磨速度)を長期間維持する点から、トリ−i−プロピルシリル(メタ)アクリレートが好ましい。これらのトリオルガノシリル(メタ)アクリレートは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
上記重合性不飽和有機酸、その他の共重合可能な不飽和単量体、金属化合物および一塩基酸としては、上記アクリル樹脂(A1)について述べたものを挙げることができる。これらの重合性不飽和有機酸およびその他の共重合可能な不飽和単量体等は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記基体アクリル樹脂(a2)の数平均分子量(GPC、ポリスチレン換算)としては特に限定されず、2000以上、100000以下であることが好ましく、3000以上、40000以下であることがより好ましい。2000未満であると、塗膜の造膜性が低下するおそれがあり、100000を超えると、得られる塗料の貯蔵安定性が悪くなり実用に適さないだけでなく、塗装時に大量の希釈溶剤を使用する必要があることから公衆衛生、経済性等の点で好ましくない。
【0051】
アクリル樹脂(A2)は、上記一般式(1)で表される基と、上記一般式(2)で示される側鎖とを、それぞれ少なくとも1つ有するものである。一般式(1)および一般式(2)で示される基の合計の含有率を調整することにより、水中への塗膜溶出速度(塗膜の加水分解速度)を所望の溶出速度に制御することが可能である。一般式(1)および一般式(2)で示される基の合計の含有率は、主に、基体アクリル樹脂(a2)の酸価を調整することにより調整することが可能であり、基体アクリル樹脂(a2)の酸価としては、30〜200mgKOH/gであることが好ましい。30mgKOH/g未満であると、側鎖に結合させる金属塩の量が少なくなり、防汚性に劣ることがあり、200mgKOH/gを超えると、溶出速度が速すぎて、長期の防汚性が得られにくい傾向にある。
【0052】
また、本発明においては、バインダ樹脂として、上記アクリル樹脂(A)以外の他のバインダ樹脂が用いられてもよい。他のバインダ樹脂の併用により、防汚性能や塗膜の耐クラック性をさらに改善できる場合があり、また、塗膜の物性や塗膜の消耗速度の調整をより容易に行なえるようになる。他のバインダ樹脂としては、たとえば、塩素化パラフィン、ポリビニルエーテル、ポリプロピレンセバケート、部分水添ターフェニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリエーテルポリオール、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル、シリコンオイル、ワックス、ワセリン、流動パラフィン、ロジン、水添ロジン、ナフテン酸、脂肪酸およびこれらの2価金属塩等を挙げることができる。なかでも塩素化パラフィン、ロジン、水添ロジンが好ましく用いられる。他のバインダ樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
上記他のバインダ樹脂の使用量は、樹脂固形分に基づく質量比で、アクリル樹脂(A)100質量部に対して、0〜150質量部とすることができる。防汚性能および耐クラック性の改善効果等を考慮すると、アクリル樹脂(A)100質量部に対して、0〜100質量部とすることが好ましい。
【0054】
また、本発明の防汚塗料組成物は、バインダ樹脂として、アクリル樹脂(A)以外の加水分解性樹脂を含有していてもよい。アクリル樹脂(A)以外の加水分解性樹脂としては、たとえば、上記一般式(2)で表される基を側鎖に有し、上記一般式(1)で表される基を有しないアクリル樹脂(B)を挙げることができる。ただし、アクリル樹脂(B)をバインダ樹脂とする塗膜は、水中浸漬の初期段階では比較的一定の加水分解速度を示すが、その後急激に加水分解速度が上昇する傾向を示すことから、長期間にわたって一定の速度で加水分解される防汚塗膜を形成するためには、アクリル樹脂(B)の含有量は、樹脂固形分に基づく質量比で、アクリル樹脂(A)100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましく、より好ましくは30質量部以下である。
【0055】
本発明の防汚塗料組成物において、バインダ樹脂の含有量は、防汚塗料組成物に含有される固形分中、30〜70質量%であることが好ましく、40〜65質量%であることがより好ましい。30質量%未満である場合、塗膜にクラック・剥離等の欠陥が生じる傾向がある。また、70質量%を超える場合には、望ましい防汚効果が得られにくい傾向にある。なお、防汚塗料組成物に含有される固形分とは、防汚塗料組成物に含まれる溶剤以外の成分の合計をいう。
【0056】
<防汚剤>
本発明の防汚塗料組成物は、下記式(4)で示される4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル(以下、第1の防汚剤と称する)を含む2種以上の防汚剤を含む。
【0057】
【化8】

【0058】
上記第1の防汚剤は、特に耐動物性防汚剤として有効な防汚成分である。したがって、第1の防汚剤の使用により、従来多く用いられてきた亜酸化銅の使用を完全になくすか、または大幅に低減させることができ、これにより、アクリル樹脂(A)をバインダ樹脂とする防汚塗膜の加水分解速度を長期間にわたって一定にすることが可能となる。また、亜酸化銅の不使用または削減により、防汚塗料の比重の低減や、被塗物の材質の制限の緩和を図ることができる。亜酸化銅を含む防汚塗料は、アルミニウム基材を腐食させるため、アルミニウム製の被塗物には使用できなかったが、本発明の防汚塗料組成物は、このような被塗物にも制限なく使用可能である。さらに、赤味を示す亜酸化銅の配合量が削減されることにより、得られる塗膜の色味を調整することが出来るようになる。
【0059】
また、本発明の防汚塗料組成物は、上記第1の防汚剤とは別に、第2の防汚剤を少なくとも1種含む。これにより、水中動物だけでなく、藻類等の植物に対しても高い防汚性を示し、水中生物全般に対して優れた防汚性能を有する防汚塗膜を形成することが可能となる。第2の防汚剤としては、藻類等水中植物に対して高い防汚性を示す防汚成分を使用することが好ましく、たとえば、ジンクピリチオン(2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩);銅ピリチオン(2−ピリジンチオール−1−オキシド銅塩);ピリジントリフェニルボラン等のトリフェニルボランアミン錯体;1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド;1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)メタンスルフェンアミド;4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン;N’−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N’−ジメチル尿素;および、N’−tert−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミンなどを挙げることができる。これらは、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0060】
なお、トリフェニルボランアミン錯体は、トリフェニルボランとアミン類とにより形成される錯体である。アミン類としては、特に限定されないが、たとえば、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−トリデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミン、アニリン、トルイジン等の第一アミン;ジn−ブチルアミン、ジn−ヘキシルアミン、ジn−オクチルアミン、ジn−デシルアミン、ジn−ドデシルアミン、ジn−トリデシルアミン、ジn−テトラデシルアミン、ジn−ヘキサデシルアミン、ジn−オクタデシルアミン、ジフェニルアミン等の第二アミン;トリn−プロピルアミン、トリn−ヘキシルアミン、トリn−オクチルアミン、トリn−デシルアミン、トリn−ドデシルアミン、トリn−トリデシルアミン、トリn−テトラデシルアミン、トリn−ヘキサデシルアミン、トリn−オクタデシルアミン、トリフェニルアミン等の第三アミン;ピリジン、2−ピコリン、3−ピコリン、4−ピコリン、2−クロロピリジン、3−クロロピリジン、4−クロロピリジンなどのピリジンまたはその核置換体等のピリジン類などを挙げることができる。
【0061】
上記のなかでも、アミン類としてピリジンを用いたピリジントリフェニルボランは防汚性に優れており、好ましく用いられる。
【0062】
本発明の防汚塗料組成物は、第2の防汚剤として上記以外にも、たとえば、亜酸化銅、チオシアン酸第一銅(ロダン銅)などを用いることが可能である。ただし、亜酸化銅を防汚剤の主成分として用いると、上記したように、一定の速度で加水分解される防汚塗膜を得ることができなくなることから、亜酸化銅を使用する場合には、防汚塗料組成物に含有される固形分中、15質量%以下とすることが好ましく、亜酸化銅を含有しないことがより好ましい。また、チオシアン酸第一銅(ロダン銅)を多く用いる場合にも、亜酸化銅と同様の現象が生じ得ることから、チオシアン酸第一銅を使用する場合には、防汚塗料組成物に含有される固形分中、15質量%以下とすることが好ましく、チオシアン酸第一銅を含有しないことがより好ましい。
【0063】
第1の防汚剤の含有量は、防汚塗料組成物に含有される固形分中、1〜60質量%であることが好ましく、3〜50質量%であることがより好ましい。3質量%未満である場合、水中動物に対する十分な防汚性能が得られにくい傾向がある。また、60質量%を超える場合には、得られる塗膜にクラック・剥離等の欠陥が生じる傾向がある。
【0064】
第2の防汚剤の含有量(第1の防汚剤以外の防汚剤の合計量)は、防汚塗料組成物に含有される固形分中、5〜60質量%であることが好ましく、10〜55質量%であることがより好ましい。5質量%未満である場合、水中生物全般に対して優れた防汚性能を有する防汚塗料組成物が得られにくい傾向がある。また、60質量%を超える場合には、得られる塗膜にクラック・剥離等の欠陥が生じる傾向がある。
【0065】
また、第1の防汚剤と第2の防汚剤との合計含有量は、防汚塗料組成物に含有される固形分中、5〜70質量%であることが好ましく、10〜60質量%であることがより好ましい。5質量%未満である場合、長期防汚性に優れる防汚塗料組成物が得られにくい傾向がある。また、60質量%を超える場合には、塗膜にクラック・剥離等の欠陥が生じる傾向がある
第1の防汚剤の含有量と第2の防汚剤の含有量(第1の防汚剤以外の防汚剤の合計量)との比(質量比)は1/15〜1/1であることが好ましく、1/12〜1/2であることがより好ましい。当該質量比が、1/15未満である場合、耐動物防汚性が低下する傾向がある。また、1/1を超える場合には、耐藻類防汚性が低下する傾向がある。
【0066】
<その他の添加剤>
本発明の防汚塗料組成物は、可塑剤、顔料、溶剤等の慣用の添加剤を含んでいてもよい。可塑剤としては、たとえば、ジオクチルフタレート、ジメチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;アジピン酸イソブチル、セバシン酸ジブチル等の脂肪族二塩基酸エステル系可塑剤;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールアルキルエステル等のグリコールエステル系可塑剤;トリクレンジリン酸、トリクロロエチルリン酸等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ大豆油、エポキシステアリン酸オクチル等のエポキシ系可塑剤;ジオクチル錫ラウリレート、ジブチル錫ラウリレート等の有機錫系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリアセチレン等を挙げることができる。これらの可塑剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
顔料としては、たとえば、沈降性バリウム、タルク、クレー、白亜、シリカホワイト、アルミナホワイト、ベントナイト等の体質顔料;酸化チタン、酸化ジルコン、塩基性硫酸鉛、酸化スズ、カーボンブラック、黒鉛、ベンガラ(弁柄)、クロムイエロー、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、キナクリドン等の着色顔料等を挙げることができる。これらの顔料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
溶剤としては、たとえば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロペンタン、オクタン、ヘプタン、シクロヘキサン、ホワイトスピリット等の炭化水素類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ベンジル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチルイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;n−ブタノール、プロピルアルコール等のアルコール等を挙げることができる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
上記のほか、たとえば、フタル酸モノブチル、コハク酸モノオクチル等のジカルボン酸のモノエステル、樟脳、ひまし油;水結合剤、タレ止め剤;色分かれ防止剤;沈降防止剤;消泡剤等を添加してもよい。
【0070】
本発明の防汚塗料組成物は、たとえば、上記バインダ樹脂に、上記防汚剤、ならびに、必要に応じて可塑剤、塗膜消耗調整剤、顔料、溶剤等の慣用の添加剤を添加し、ボールミル、ペブルミル、ロールミル、サンドグラインドミル等の混合機を用いて混合することにより、調製することができる。
【0071】
防汚塗膜は、得られた防汚塗料組成物を、常法に従って被塗物の表面に塗布した後、常温下または加熱下で溶剤を揮散除去することによって形成することができる。被塗物としては、特に限定されず、たとえば、船舶や、各種魚網、港湾施設、オイルフェンス、配管材料、橋梁、海底基地等の水中構造物などを挙げることができる。本発明の防汚塗料組成物を用いて形成された防汚塗膜は、長期間にわたって一定の速度で加水分解されるため、高い防汚性能を長期間にわたって安定して発揮することができる。また、本発明の防汚塗料組成物を用いて形成された防汚塗膜は、このような高い長期防汚性を有するとともに、耐クラック性に優れている。
【0072】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
(製造例1)アクリル樹脂ワニス1の調製
攪拌機、冷却機、温度制御装置、窒素導入管、滴下ロートを備えた4つ口フラスコにキシレン64質量部、n−ブタノール16質量部を加え100℃に保った。この溶液中に表1の配合(質量部)に従ったモノマーおよびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシレン16質量部、n−ブタノール4質量部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後1時間30分間保温することにより樹脂ワニスIを得た。得られた樹脂ワニスI中の固形分は49.8質量%であり、粘度は4.4ポイズであった。また、当該樹脂ワニスI中の樹脂の酸価は130であった。得られた樹脂の酸価および樹脂ワニスI中の固形分を表1にまとめた。なお、表1中に記載のモノマーの略称は、下記の化合物を示す。
(1)EA:アクリル酸エチル
(2)CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
(3)CHA:アクリル酸シクロヘキシル
(4)M−90G:メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールエステル(NKエステルM−90G、新中村化学社製)
(5)MMA:メタクリル酸メチル
(6)AA:アクリル酸
(7)MAA:メタクリル酸
(8)TIPSI:アクリル酸トリイソプロピルシリル
【0074】
次に、同様の反応容器に、樹脂ワニスI 100質量部、酢酸亜鉛25.4質量部、ナフテン酸(NA−165、酸価165、大和油脂工業社製)39.2質量部、キシレン110質量部を加えて130℃に加熱し、溶剤とともに酢酸を除去することにより、固形分が41.5質量%のアクリル樹脂ワニス1を得た。粘度は12.3ポイズであった。
【0075】
(製造例2)アクリル樹脂ワニス2の調製
上記製造例1と同様の反応容器に、キシレン64質量部、n−ブタノール16質量部を加え115℃に保った。この溶液中に表1の配合(質量部)に従ったモノマーおよびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート3質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシレン16質量部、n−ブタノール4質量部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後、1.5時間保温することにより樹脂ワニスIIを得た。得られた樹脂ワニスII中の固形分は49.7質量%であり、粘度は9.5ポイズであった。また、当該樹脂ワニスII中の樹脂の数平均分子量(GPC、ポリスチレン換算)は6500であり、酸価は160であった。得られた樹脂の酸価および樹脂ワニスII中の固形分を表1にまとめた。
【0076】
次に、同様の反応容器に、樹脂ワニスII 100質量部、酢酸銅29.6質量部、ピバリン酸(酸価:550mgKOH/g)14.5質量部を用いること以外は、上記製造例1と同様にして反応を行ない、固形分が45.2質量%のアクリル樹脂ワニス2を得た。
【0077】
(製造例3)アクリル樹脂ワニス3の調製
上記製造例1と同様の反応容器に、キシレン64質量部、n−ブタノール16質量部を加え115℃に保った。この溶液中に表1の配合(質量部)に従ったモノマーおよびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート2質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシレン16質量部、n−ブタノール4質量部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後、1.5時間保温することにより樹脂ワニスIIIを得た。得られた樹脂ワニスIII中の固形分は49.6質量%であり、粘度は6ポイズであった。また、当該樹脂ワニスIII中の樹脂の数平均分子量(GPC、ポリスチレン換算)は6000であり、酸価は70mgKOH/gであった。得られた樹脂の酸価および樹脂ワニスIII中の固形分を表1にまとめた。
【0078】
次に、同様の反応容器に、樹脂ワニスIII 100質量部、酢酸銅12.9質量部、水素添加ロジン(ハイペールCH、酸価160、荒川化学工業社製)21.7質量部を用いること以外は、上記製造例1と同様にして反応を行ない、固形分が50.6質量%のアクリル樹脂ワニス3を得た。
【0079】
(製造例4)アクリル樹脂ワニス4の調製
上記製造例1と同様の反応容器に、キシロール50質量部を加え90℃に保った。この溶液中に表1の配合(質量部)に従ったモノマーおよびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1質量部からなる混合液を3時間にわたり等速滴下し、滴下終了後30分間保温した。その後、キシロール7質量部およびt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.2質量部からなる混合液を30分間にわたり等速滴下し、滴下終了後、1.5時間保温した。その後、60℃まで冷却しキシロール10質量部を加えることによりアクリル樹脂ワニス4を得た。得られたアクリル樹脂ワニス4中の固形分は60.0質量%であり、粘度は7.5ポイズであった。また、アクリル樹脂ワニス4中の樹脂の数平均分子量(GPC、ポリスチレン換算)は8000であった。アクリル樹脂ワニス4中の固形分を表1にまとめた。
【0080】
【表1】

【0081】
<実施例1〜41および比較例1〜12>
上記製造例1〜4で得られたアクリル樹脂ワニス1〜4および表2〜6に示すその他の成分を使用して、高速ディスパーにて混合することにより、防汚塗料組成物を調製し、下記評価方法に従って長期防汚性、耐クラック性、塗膜状態および塗膜消耗量(研磨速度)を評価した。なお、表2〜6に記載の各成分の詳細は以下のとおりである。
(1)亜酸化銅:NCテック(株)製「NC−301」
(2)亜鉛華:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」
(3)弁柄:戸田工業(株)製「トダカラーKN−R」
(4)防汚剤1(エコネア):4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリル(ヤンセンPMP社製「エコネア」)
(5)防汚剤2(ZPT):ZPT(ジンクピリチオン)(アーチケミカル社製「ジンクオマジン」)
(6)防汚剤3(CuPT):CuPT(銅ピリチオン)(アーチケミカル社製「カッパーオマジン」)
(7)防汚剤4(PK):ピリジントリフェニルボラン(北興化学工業(株)製「PK」)
(8)防汚剤5(YN−18−20):トリフェニルボラン・n−オクタデシルアミン錯体(ベニートヤマ(株)製「YN−18−20」)
(9)防汚剤6(A4S):1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド(ランクセス社製「プリベントール A4S」)
(10)防汚剤7(A5S):1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)メタンスルフェンアミド(ランクセス社製「プリベントール A5S」)
(11)防汚剤8(SN211):4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(4,5−ジクロロ−2−nオクチル−3(2H)イソチアゾロン)(ロームアンドハース社製「シーナイン211」)
(12)防汚剤9(A6):N’−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N’−ジメチル尿素(ランクセス社製「プリベントール A6−AF」)
(13)防汚剤10(I1051):N’−tert−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製「イルガロール 1051」)
(14)防汚剤11(ロダン銅):チオシアン酸第一銅(日本化学産業(株)製「ロダン銅」)
(15)塩素化パラフィン:東ソー(株)製「トヨパラックス A50」
(16)ウッドロジン:荒川化学工業(株)製「WWロジン」
(17)タレ防止剤:楠本化成社製「ディスパロン A600−20X」
【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【表6】

【0087】
(評価)
(1)長期防汚性
得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。得られた試験板を、岡山県玉野市にある日本ペイントマリン社臨海研究所設置の実験用筏で生物付着試験を行ない、防汚性を評価した。結果を表2〜6に示す。表中の月数は筏浸漬期間を示す。また、表中の数値は、生物付着面積の塗膜面積に占める割合(%)(目視判定)の結果を下記の基準で評点化したものであって、1点以下を合格とした。
評点0: 生物付着面積の塗膜面積に占める割合 0%
評点1: 生物付着面積の塗膜面積に占める割合 0%超20%未満
評点2: 生物付着面積の塗膜面積に占める割合 20%以上40%未満
評点3: 生物付着面積の塗膜面積に占める割合 40%以上60%未満
評点4: 生物付着面積の塗膜面積に占める割合 60%以上80%未満
評点5: 生物付着面積の塗膜面積に占める割合 80〜100%
図1は、防汚性試験(生物付着試験)後(浸漬24ヶ月後)における試験板表面の状態の例を示す写真である。図1において、左の写真は、動物付着の評点が5で、スライム・藻類付着の評点が0である場合の例(たとえば比較例1)であり、中央の写真は、動物付着の評点が0で、スライム・藻類付着の評点が5である場合の例(たとえば比較例3)であり、右の写真は、動物およびスライム・藻類の双方が付着している例であり、動物付着の評点が3で、スライム・藻類付着の評点が3である場合の例である。
【0088】
(2)塗膜状態
上記長期防汚性試験における筏浸漬期間6ヶ月の試験板の塗膜状態を目視およびラビングで観察し、評価した。結果を表2〜6に示す。クラックが確認されなかったものをAとし、クラックが確認されたものをBとした。
【0089】
(3)耐クラック性試験(乾湿交番試験)
得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。得られた試験板を、40℃の海水に1週間浸漬した後、1週間室内乾燥を行ない、これを1サイクルとした乾湿交番試験を最大20サイクルまで実施した。途中で塗膜にクラックが発生した場合は、クラックが発生した時点で試験を終了し、その時点でのサイクル数を表に記載した。20サイクル行なってもクラック発生がないものをAとした。
【0090】
(4)塗膜消耗量(研磨速度)試験
得られた防汚塗料組成物を、あらかじめ防錆塗料が塗布されたブラスト板に乾燥膜厚が300μmとなるように塗布し、2昼夜室内に放置することにより乾燥させて、防汚塗膜を有する試験板を得た。この試験板を直径750mm、長さ1200mmの円筒側面に貼り付け、海水中、周速15ノットで24ヶ月間連続回転させ、3ヶ月毎の試験板の塗膜消耗量(塗膜厚みの累積減少量[μm])を測定した。結果を表2〜6に示す。
【0091】
表2〜6に示されるように、実施例の防汚塗料組成物から得られる防汚塗膜の加水分解速度(研磨速度)は、24ヶ月間にわたりほぼ一定であり、水中動物およびスライム・藻類に対して高い防汚性を長期間にわたって安定して発揮することができる。また、長期の防汚性とともに、耐クラック性にも優れていることがわかる。塗膜状態も長期にわたり良好である。
【0092】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】防汚性試験(生物付着試験)後(浸漬24ヶ月後)における試験板表面の状態の例を示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルを含む2種以上の防汚剤と、
下記一般式(1):
【化1】

(上記一般式(1)中、Xは、
【化2】

で表される基であり、kは0または1であり、Yは炭化水素であり、Mは2価金属であり、Aは一塩基酸の有機酸残基を表す。)
で表される基を側鎖に有するアクリル樹脂と、
を含有する防汚塗料組成物。
【請求項2】
前記防汚剤は、
4−ブロモ−2−(4−クロロフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ピロール−3−カルボニトリルである第1の防汚剤と、
ジンクピリチオン、銅ピリチオン、ピリジントリフェニルボラン、1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−フェニルメタンスルフェンアミド、1,1−ジクロロ−N−[(ジメチルアミノ)スルホニル]−1−フルオロ−N−(4−メチルフェニル)メタンスルフェンアミド、N’−(3,4−ジクロロフェニル)−N,N’−ジメチル尿素、N’−tert−ブチル−N−シクロプロピル−6−(メチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、および、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンからなる群から選択される少なくとも1種である第2の防汚剤と、
を含む請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記第1の防汚剤の含有量と前記第2の防汚剤の含有量との比は、質量比で、1/15〜1/1の範囲内である請求項2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
亜酸化銅を含まない請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記アクリル樹脂は、側鎖に、下記一般式(2):
【化3】

(上記一般式(2)中、R1、R2、R3は、同一または異なって、炭素数1〜20の炭化水素残基を表す。)
で表される基をさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いて形成された防汚塗膜。
【請求項7】
被塗物表面に形成された防汚塗膜の水中における加水分解速度を制御する方法であって、
前記防汚塗膜を形成する塗料組成物として、請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物を用いる加水分解速度の制御方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−150355(P2010−150355A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328993(P2008−328993)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(597091890)日本ペイントマリン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】