説明

防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網

本発明の防汚塗料組成物は、亜酸化銅および有機スズを実質的に含まない防汚塗料組成物であって、
(A)金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを共重合してなる金属含有共重合体と、
(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
(C)金属ピリチオン化合物と
を含有することを特徴としている。
本発明によれば、環境への負荷が少なく優れた防汚性を有し、塗膜の均一消耗性に優れ、しかも塗膜の長期防汚性維持性能に優れた防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網およびこれらの防汚方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、環境負荷が小さく、長期に亘り塗膜が一定の速度で均一に消耗し、しかも長期間優れた防汚性能を維持でき、外航船にも適用できる防汚塗膜を形成しうるような防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網およびこれらの防汚方法に関する。
【背景技術】
船底、水中構造物、漁網などは、水中に長期間さらされることにより、その表面に、カキ、イガイ、フジツボ等の動物類、ノリ(海苔)等の植物類、あるいはバクテリア類などの各種水棲生物が付着・繁殖すると、外観が損ねられ、その機能が害されることがある。
特に船底にこのような水棲生物が付着・繁殖すると、船全体の表面粗度が増加し、船速の低下、燃費の拡大などを招くことがある。また、このような水棲生物を船底から取り除くには、多大な労力、作業時間が必要となる。また、バクテリア類が水中構造物などに付着・繁殖し、さらにそこにスライム(ヘドロ状物)が付着して腐敗を生じたり、更に大型の付着生物が鉄鋼構造物などのような水中構造物の表面に付着・繁殖してその水中構造物の腐食防止用の塗膜などを損傷すると、その水中構造物の強度や機能が低下し寿命が著しく低下する等の被害が生ずるおそれがある。
従来では、このような被害を防止すべく、船底などには各種防汚塗料が塗装されており、下記のような種々の防汚塗料が提案されている。
例えば、(1):特開昭63−128084号公報には、酸基を有する基体樹脂と低沸点有機塩基酸の金属塩(但し該金属はアルカリ金属よりイオン化傾向の低い2価以上の金属)及び高沸点一塩基酸とを、低沸点有機塩基酸を系外に除去しつつ、加熱反応させて得られる金属含有樹脂組成物をビヒクルとして含む防汚塗料が開示されている。
また該公報の実施例42には、ナフテン酸銅(メタ)アクリレート・MMA・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体ワニスに、テトラフェニルボラン・ピリジニウムを配合した防汚塗料が開示され、また該公報の実施例43には、オレイン酸亜鉛(メタ)アクリレート・MMA・アクリル酸エチル共重合体ワニスに、亜酸化銅を配合した防汚塗料が開示されている。
また、(2):また本願出願人は、特開平11−323209号公報において、(a)(メタ)アクリル酸金属塩系共重合体、および(b)下記式で表されるトリフェニルボロン・アミン錯体:

(上記式中、RはH、炭素数3〜30のアルキル基、置換基を有していてもよいピリジル基、置換基を有していてもよい芳香族基を示す。)あるいはピリジントリフェニルボロン、を含有する防汚塗料組成物を提案している。
また、(3):トリフェニルボランと炭素数が6以上のアミンとからなる錯体及び加水分解性樹脂を含有する防汚塗料が開示され、加水分解性樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂の側鎖末端に、式:(CH−COO−M−L(m:0〜2の整数、n:金属原子価数−1、M:Zn、Cuなど、L:アルキル基、カルボキシル基など)を有する樹脂が挙げられている(特開平11−302572号公報参照)。
しかしながら、上記(1)〜(3)の何れの公報に記載の防汚塗料組成物にも、環境負荷の比較的大きな亜酸化銅等の防汚剤が含まれており、得られる塗膜には、環境負荷軽減などの点でさらなる改良の余地があった。
また、特開平11−35877号公報および特開2002−12630号公報には、金属を含有する樹脂組成物を用いた防汚性塗料が記載されており、さらに優れた性能の防汚塗料の出現が求められていた。
このため、より長期に亘り、塗装部位によらず塗膜が一様な速度で消耗し、優れた防汚性能を長期間維持でき、外航船にも適用でき、優れた防汚塗膜を形成しうるような防汚塗料組成物の開発が求められていた。
本発明者は、このような状況においてさらに鋭意研究を重ねたところ、樹脂分として、金属を含有する特定の共重合体(A)を用い、しかも防汚剤として、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)と金属ピリチオン化合物(C)とを組み合わせて用いると、亜酸化銅や有機スズを配合しなくとも優れた防汚性能を有し、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜は、環境への負荷も少なく、長期にわたり、塗装部位によらず塗膜が一様な速度で消耗し、優れた防汚性能を長期間維持でき、外航船にも適用でき、クラックや剥離が生じにくく、ピリジン−トリフェニルボランなどを用いた塗膜に比して優れた付着性を有し、色相が鮮明で没水・曝露後も変色が少ないなど、優れた各種の性能を有することを見出して、本発明を完成するに至った。
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであって、環境負荷が小さく、かつ長期に亘り塗膜が一定の速度で均一に消耗し(塗膜の均一消耗性能)、しかも長期間優れた防汚性能を維持でき(長期防汚性維持性能)、外航船にも適用でき、優れた防汚塗膜を形成しうるような防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網およびこれらの防汚方法を提供することを目的としている。
【発明の開示】
本発明の防汚塗料組成物は、亜酸化銅および有機スズを実質的に含まない防汚塗料組成物であって、
(A)金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを共重合してなる金属含有共重合体と、
(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
(C)金属ピリチオン化合物と
を含有することを特徴としている。
本発明の防汚塗料組成物は、トリフェニルボラン化合物およびテトラフェニルボラン化合物を、実質的に含まないことが好ましい。
本発明においては、前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.5〜100重量部の量で含有することが好ましく、1〜50重量部の量で含有することがより好ましい。を特徴とする請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
本発明においては、防汚塗料組成物100重量部中に、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.1〜40重量部の量で含有することが好ましく、0.5〜20重量部の量で含有することがより好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、(C)金属ピリチオン化合物を1〜90重量部の量で含有することが好ましく、5〜55重量部の量で含有することがより好ましい。
本発明においては、防汚塗料組成物100重量部中に、(C)金属ピリチオン化合物を0.2〜40重量部の量で含有することが好ましく、1〜20重量部の量で含有することがより好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、さらに(D)酸化亜鉛を含有することが好ましく、前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、(D)酸化亜鉛を5〜100重量部の量で含有することがより好ましい。
本発明の防汚塗料組成物は、さらにタルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウムおよびカオリンよりなる群から選ばれる(E)体質顔料を含有することが好ましい。
また、本発明の防汚塗料組成物は、さらに(F)有機防汚剤(ただし、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび(C)金属ピリチオン化合物を除く)を含有することが好ましい。
本発明においては、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、金属(メタ)アクリレート、金属ジ(メタ)アクリレートおよびそれらの低重合物よりなる群から選ばれる1種以上の単量体であることが好ましい。
本発明においては、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸とを、アルコール系有機溶剤と水との存在下で反応させて得られる重合性化合物であることが好ましく、無機金属化合物が、亜鉛、銅およびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属の、酸化物、水酸化物または塩化物であることがより好ましい。
また、本発明においては、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)と、下記式(1)で表される金属含有単量体(a12)とからなることが好ましい;
−COO−M−L …(1)
(式(1)中、Rは、CH=C(CH)−、CH=CH−、HOOC−CH=CH−およびHOOC−CH=C(CH)−よりなる群から選ばれ、−COOHが金属塩またはエステルを形成していてもよい不飽和結合含有有機基を示し、
Mは、金属原子を示し、
Lは、−OCOR(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、アラルキル基を示す)で表される有機酸残基を示し、
nは、金属Mの原子価数−1の数を示す。)。
本発明においては、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、亜鉛、銅およびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属を含有することが好ましい。
また本発明においては、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)が、下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の単量体(a21)からなることが好ましい;
OCO−CH(R)=CH …(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。)。
本発明においては、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)が、上記式(2)で表される1種以上の単量体(a21)と、下記式(3)で表される1種以上の単量体(a22)とからなることも好ましい;
OCO−CH(R)=CH …(3)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示し、Rはヒドロキシル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基またはアリーロキシル基を示す。)。
本発明の防汚塗料組成物は、金属含有共重合体(A)が、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)から誘導される成分単位を2〜50重量%、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)から誘導される成分単位を50〜98重量%含有する共重合体であることが好ましい。
本発明においては、金属含有共重合体(A)が、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、前記式(1)で表される金属含有単量体(a12)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)から誘導される成分単位を50〜98重量%含有する共重合体であることが好ましい。
本発明においては、金属含有共重合体(A)が、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、前記式(1)で表される金属含有単量体(a12)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、(メタ)アクリレートおよびアルキル(メタ)アクリレートよりなる群から選ばれる1種以上の単量体(a21)から誘導される成分単位を0.1〜97.9重量%、および、前記式(3)で表される単量体(a22)から誘導される成分単位を0.1〜97.9重量%含有する共重合体であることが好ましい。
本発明の防汚塗料は、上記本発明の防汚塗料組成物から形成されている。
本発明の船舶または水中構造物は、上記本発明の防汚塗料組成物から形成される塗膜で被覆されている。
本発明の漁具または漁網は、上記本発明の防汚塗料組成物から形成される塗膜で被覆されている。
本発明の船舶または水中構造物の防汚方法は、上記本発明の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船舶または水中構造物の表面を被覆することを特徴としている。
本発明の漁具または漁網の防汚方法は、上記本発明の防汚塗料組成物からなる塗膜にて漁具または漁網の表面を被覆することを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
以下、本発明に係る防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網などについて具体的に説明する。
<防汚塗料組成物>
本発明に係る防汚塗料組成物は、亜酸化銅および有機スズを実質的に含まない防汚塗料組成物であって、(A)金属含有共重合体と、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、(C)金属ピリチオン化合物とを含有する。
(A)金属含有共重合体
本発明において、金属含有共重合体(A)は、塗膜を形成する基材として作用するとともに、防汚性能をも有する。本発明で用いる金属含有共重合体(A)は、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを共重合してなる。
・金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)としては、金属を含有し、重合モノマーとして作用するものであればよいが、たとえば、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)、金属(メタ)アクリレートなどが挙げられ、また、それらの二量体、三量体などの低重合物で、重合活性を有するものも挙げられ、これらの1種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートを意味する。
金属ジ(メタ)アクリレート(a11)としては、たとえば、アクリル酸マグネシウム:(CH=CHCOO)Mg、メタクリル酸マグネシウム:(CH=C(CH)COO)Mg、アクリル酸亜鉛:(CH=CHCOO)Zn、メタクリル酸亜鉛:(CH=C(CH)COO)Zn、アクリル酸銅:(CH=CHCOO)Cu、メタクリル酸銅:(CH=C(CH)COO)Cu等を挙げることができ、これらの1種以上を選択して用いることができる。このような金属ジ(メタ)アクリレートとしては、金属として、亜鉛、銅、カルシウム、アルミニウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属を含有するのが好ましく、亜鉛、銅およびマグネシウムから選ばれる金属を含有するのがより好ましい。
また、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)としては、無機金属化合物と、カルボキシル基を有する化合物とを反応させて得られる重合性化合物が挙げられる。このような(a1)は、無機金属化合物と、カルボキシル基を有する化合物とを、好ましくは水の存在下で、より好ましくはアルコール系有機溶剤と水との存在下で反応させて得られる。
このような金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)の製造方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、金属塩の分解温度以下で、無機金属化合物と、カルボキシル基を含有する化合物とを、有機溶剤および水の存在下で加熱、撹拌することにより得ることができる。
無機金属化合物としては、カルボキシル基を有する化合物と反応して金属塩を形成するものがいずれも使用でき、たとえば、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化第二銅、酸化マグネシウム、酸化マンガン等の金属の酸化物;水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化第二銅、水酸化マグネシウム等の金属の水酸化物;塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化第二銅、塩化マグネシウム、塩化マンガン等の金属の塩化物などが挙げられる。
無機金属化合物の金属は、周期律表のIb、IIa、IIb、IIIa、IIIb、IVa、IVb、Va、Vb、VIb、VIIb、およびVIII属金属等から選ばれるものである。無機金属化合物は、単独で用いてもよく、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
このような無機金属化合物としては、亜鉛、銅、カルシウム、アルミニウムおよびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属の、酸化物、水酸化物または塩化物が好ましく用いられ、より好ましくは、亜鉛、銅およびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属の、酸化物、水酸化物または塩化物が望ましい。
無機金属化合物として、Cuの化合物を使用する場合は、Znの化合物を併用して使用すると、アクリルモノマーとの共重合性が上昇するため好ましい。
また、Zn、Mg、CaまたはAlの化合物を使用すると、得られる樹脂が透明性に優れる傾向があるため好ましい。特に2価のZn、Mgの化合物を使用すると、樹脂製造時において粘度上昇を抑えることができるため好ましい。
このうちZnまたはMgの化合物を使用した場合には、得られる金属含有共重合体(A)の透明性が高くなり、塗膜の色調が美しくなる傾向にあり、またこれらの化合物は一般的に使用される有機溶剤への溶解性が高く作業性が良好となる傾向にあるためより好ましい。さらに、Znの化合物を使用した場合には、得られる金属含有共重合体(A)の耐水性が良好となり特に好ましい。
カルボキシル基を有する化合物としては、たとえば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸モノアルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル等)、マレイン酸モノアルキル(例えば、メチル、エチル、ブチル、2−エチルヘキシル等)等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上の組み合わせを用いることができる。カルボキシル基を有する化合物としては、このうち、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられ、メタクリル酸が特に好ましく用いられる。
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)を、有機溶剤を用いて調製する場合、用いる有機溶剤は、アルコール系化合物を含むものであるのが望ましい。アルコール系化合物としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤が好ましい。
また、(a1)を得るために用いる有機溶剤は、アルコール系化合物とともに、必要に応じて、アルコール系化合物以外の有機溶剤を含有していてもよい。アルコール化合物以外の有機溶剤としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤などが挙げられる。アルコール系化合物以外の有機溶剤を、アルコール系化合物とともに混合して使用する場合、有機溶剤全量中のアルコール系化合物は5重量%以上、好ましくは25重量%以上とすることが望ましい。このような量でアルコール系化合物を含有する有機溶剤を用いると、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)の溶剤への溶解性が向上して結晶物が生成せず、貯蔵安定性が発現するため好ましい。
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)中の金属含有量は、金属の種類によって異なるが、0.1〜60重量%が好ましく、3〜25重量%がより好ましい。60重量%以下であると、有機溶剤に可溶となり、アクリルモノマーと混合して重合することが可能となるため好ましい。また、0.1重量%以上とすると、金属含有重合体(A)を効率よく製造できるため好ましい。
上述の方法で金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)を得る際の、無機金属化合物とカルボキシル基を有する化合物との比率は特に限定はしないが、カルボキシル基を有する化合物1モルに対して、無機金属化合物が0.6モル以下の比率であると、得られる金属含有重合体(A)の透明性が優れるため好ましい。また、カルボキシル基を有する化合物1モルに対して、無機金属化合物が0.1モル以上の比率であると、得られる防汚塗料が形成する塗膜が、耐水性に優れるため好ましい。
無機金属化合物とカルボキシル基を有する化合物との反応により、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)を得る場合には、上述のように、無機金属化合物と、カルボキシル基を含有する化合物とを、有機溶剤および水の存在下で加熱、撹拌して行うのが好ましい。このような反応では、無機金属化合物、カルボキシル基を含有する化合物、有機溶剤および水の総量に対して、水の量(反応時に生成する水の量は除く)は、0.01〜30重量%、好ましくは0.2〜15重量%の範囲であるのが望ましい。反応系内に0.01重量%以上の水が存在すると、得られる反応物である金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が溶液状態で得られるため、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)との共重合を効率的に行うことができる。
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)を、無機金属化合物とカルボキシル基を有する化合物とをアルコール系有機溶媒と水との存在下で反応させて得る場合、通常、(a1)と有機溶媒と水との混合物の形態で、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)との共重合反応に供される。この場合、(a2)と共重合する際の、(a1)を含む混合物は、0.01〜30重量%、好ましくは0.2〜15重量%の範囲で水を含有するのが好ましい。この水の量が30重量%以下であると、アクリルモノマーなどの金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)や有機溶剤などとの溶解性が良好となり、(a1)と(a2)との共重合を効率的に行うことができる。この金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)を含む混合物が含有する水は、(a1)を調製する反応系内に添加された水のみであってもよく、(a1)を調製した後にさらに添加した水を含んでもよい。また、この(a1)を含む混合物が含有する水の量は、無機金属化合物の使用モル数に対して、好ましくは0.01〜5倍、より好ましくは0.05〜3倍(モル比)の範囲であることも作業性の面から望ましい。
このような金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)としては、たとえば、下記式(1)で表される化合物(a12)が挙げられる。
−COO−M−L …(1)
(式(1)中、Rは、CH=C(CH)−、CH=CH−、HOOC−CH=CH−およびHOOC−CH=C(CH)−よりなる群から選ばれ、−COOHが金属塩またはエステルを形成していてもよい不飽和結合含有有機基を示し、
Mは、金属原子を示し、
Lは、−OCOR(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、アラルキル基、もしくは前記Rと同様の不飽和結合含有有機基を示す)で表される有機酸残基を示し、
nは、金属Mの原子価数−1の数を示す。)
上記式(1)において、Mは、Mg,ZnまたはCuであるのが好ましく、Znであるのが特に好ましい。また、有機酸残基であるLとしては、モノクロル酢酸、モノフルオロ酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、バーサチック酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、クレソチン酸、α−ナフトエ酸、β−ナフトエ酸、安息香酸、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、キノリンカルボン酸、ニトロ安息香酸、ニトロナフタレンカルボン酸、プルビン酸等の一価の有機酸から誘導されるものが挙げられ、これらの中でも脂肪酸系のものが好ましい。
このような式(1)で表される化合物としては、たとえば、モノクロル酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノクロル酢酸銅(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、モノフルオロ酢酸銅(メタ)アクリレート、プロピオン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プロピオン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プロピオン酸銅(メタ)アクリレート、オクチル酸マグネシウム(メタ)アクリレート、オクチル酸亜鉛(メタ)アクリレート、オクチル酸銅(メタ)アクリレート、バーサチック酸マグネシウム(メタ)アクリレート、バーサチック酸亜鉛(メタ)アクリレート、バーサチック酸銅(メタ)アクリレート、イソステアリン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、イソステアリン酸亜鉛(メタ)アクリレート、イソステアリン酸銅(メタ)アクリレート、パルミチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、パルミチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、パルミチン酸銅(メタ)アクリレート、クレソチン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、クレソチン酸亜鉛(メタ)アクリレート、クレソチン酸銅(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、α−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸マグネシウム(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸亜鉛(メタ)アクリレート、β−ナフトエ酸銅(メタ)アクリレート、安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、安息香酸銅(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸マグネシウム(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸亜鉛(メタ)アクリレート、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸銅(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、キノリンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロ安息香酸銅(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸亜鉛(メタ)アクリレート、ニトロナフタレンカルボン酸銅(メタ)アクリレート、プルビン酸マグネシウム(メタ)アクリレート、プルビン酸亜鉛(メタ)アクリレート、プルビン酸銅(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記式(1)で表される化合物は、上述のように無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有する化合物とを、アルコール系有機溶媒および水の存在下で反応させて得たものであってもよく、また、他の製法により得たものであってもよい。
このような金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明では、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)として、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)と、前記式(1)で表される金属含有単量体(a12)とを併用するのが特に好ましい。
・金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)
上記(a1)と共重合する、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトンまたはε−カプロラクトン等との付加物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の二量体または三量体;
グリセロール(メタ)アクリレート等の水酸基を複数有する単量体;ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の第一級および第二級アミノ基含有ビニル単量体;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第三級アミノ基含有ビニル単量体;
ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルカルバゾール等の複素環族系塩基性単量体等;
スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニル系単量体などを用いてもよい。
このような、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)のうちでは、下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルである単量体(a21)が好ましい。
OCO−CH(R)=CH …(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。)。
また、本発明で用いる、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)は、下記式(3)で表される単量体(a22)であることも好ましい。
OCO−CH(R)=CH …(3)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示し、Rはヒドロキシル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基またはアリーロキシル基を示す。)。
上記式(3)で表される単量体(a22)としては、たとえば、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−エチルヘキサオキシ)エチル(メタ)アクリレート、1−メチル−2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、3−メチル−3−メトキシブチルアクリレート、m−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニル(メタ)アクリレート、o−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、m−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレート、p−メトキシフェニルエチル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選択して使用することができる。このような単量体(a22)としては、2−メトキシエチルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレートなどがより好ましい。
このような金属を含有しない重合性不飽和単量体(a2)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明では、金属を含有しない重合性不飽和単量体(a2)として、前記式(2)で表される単量体(a21)と、前記式(3)で表される単量体(a22)とを併用するのが特に好ましい。
・金属含有共重合体(A)
本発明で用いる金属含有共重合体(A)は、上述の金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを共重合して得られる。
このような金属含有共重合体(A)は、特に限定されるものではないが、(a1)から誘導される成分単位を2〜50重量%、好ましくは5〜40重量%含有し、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)から誘導される成分単位を50〜98重量%、好ましくは60〜90重量%含有する共重合体であることが望ましい。
また、本発明で用いる金属含有共重合体(A)は、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、好ましくは1〜40重量%含有し、前記式(1)で表される金属含有単量体から誘導される成分単位(a12)を0.1〜49.9重量%、好ましくは1〜40重量%含有し、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)から誘導される成分単位を50〜98重量%、好ましくは60〜90重量%含有する共重合体であることも望ましい。
さらに、本発明で用いる金属含有共重合体(A)は、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、好ましくは1〜40重量%含有し、前記式(1)で表される金属含有単量体から誘導される成分単位(a12)を0.1〜49.9重量%、好ましくは1〜40重量%含有し、かつ、前記式(2)で表される単量体(a21)から誘導される成分単位を0.1〜97.9重量%、前記式(3)で表される単量体(a22)から誘導される成分単位を0.1〜97.9重量%、好ましくは1〜90重量%含有する共重合体であることが望ましい。
たとえば、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)として、無機金属化合物と(メタ)アクリル酸とをアルコール系有機溶剤と水との存在下で反応させて得られる重合性化合物を用いる場合には、この反応物である(a1)と有機溶媒と水との混合物と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを、該混合物と(a2)との合計100重量部に対して、(a2)が16〜97重量部、好ましくは40〜90重量部、より好ましくは60〜80重量部となる重量比で共重合に供されることも望ましい。
本発明で用いる金属含有共重合体(A)は、上記の割合で、各共重合成分を共重合することにより好ましく得ることができる。このような割合で共重合を行うことにより、得られる金属含有共重合体(A)は、塗膜を形成した際に、適度な耐水性と、長期にわたる良好な加水分解性を有し、塗膜の耐クラック性と加水分解性とのバランスに優れる。
金属含有共重合体(A)を製造する共重合の方法は、特に限定されるものではないが、たとえば、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを混合し、ラジカル開始剤の存在下で、60〜180℃程度の反応温度で、5〜14時間程度反応させることによって金属含有共重合体(A)を製造することができる。このような共重合反応では、連鎖移動剤を用いることも好ましい。連鎖移動剤としては、メルカプタン以外の連鎖移動剤を用いるのが、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)との相溶性の点から好ましく、たとえばスチレンダイマー等を使用することができる。
共重合方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが採用できるが、一般の有機溶剤を用いる溶液重合方法が、生産性がよく好ましい。
有機溶剤としては、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類;
ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;
イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール類;
ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類;
メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;などが挙げられる。
本発明で用いる金属含有共重合体(A)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で求めた重量平均分子量(Mw)が、通常1000〜20000、好ましくは3000〜10000程度であるのが望ましい。重量平均分子量が20000以下であると、共重合体溶液の粘度が高くなりすぎず、共重合体樹脂内での金属架橋による樹脂のゲル化を防止することができるため好ましく、また、1000以上であると、塗膜を形成した際に耐クラック性を有するため好ましい。
本発明の防汚塗料組成物中における、金属含有共重合体(A)の割合は、特に限定されるものではないが、たとえば、防汚塗料組成物中に15〜30重量%、好ましくは15〜25重量%程度の量とすることができる。
(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン
本発明において、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)は、上述の金属含有共重合体(A)および後述する(C)金属ピリチオン化合物とともに、本発明の防汚塗料組成物を構成する。このような防汚塗料組成物からなる塗膜は、環境負荷が少なく、しかも優れた防汚性、経年劣化塗膜表面への優れた付着性を発揮する。
この成分(B)は、本発明の防汚塗料組成物100重量部中に、通常、0.1〜40重量部の量で、好ましくは0.5〜20重量部の量で含まれていることが望ましい。このような量で成分(B)が本発明の防汚塗料組成物中に含まれていると、得られる塗膜の防汚性が優れ、付着性が優れる傾向がある。また、該成分(B)は、金属含有共重合体(A)100重量部に対して、通常、0.5〜100重量部、好ましくは、1〜50重量部の量で含まれていることが塗膜物性の点で望ましい。
(C)金属ピリチオン化合物
本発明で用いられる金属ピリチオン化合物(C)としては、下記式(4)で示される化合物が挙げられる。

式(4)中、R〜R11は、それぞれ独立に水素、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン化アルキル基を示す。
Mは、Cu、Na、Mg、Ca、Ba、Pb、Fe、Al等の金属を示し、塗膜消耗度の持続性の点を考慮するとZnが好ましい。
nは金属Mの価数を示す。
このような金属ピリチオン化合物は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。
本発明においては、金属ピリチオン化合物(C)は、前記金属含有共重合体(A)(固形分)100重量部に対して、通常、1〜90重量部の量で、好ましくは5〜55重量部の量で本発明の防汚塗料組成物中に含まれていることが望ましい。このような量で、金属ピリチオン化合物(C)が、本発明の防汚塗料組成物中に含まれていると、防汚性に優れた防汚塗膜が得られる傾向がある。
また、金属ピリチオン化合物(C)は、本発明の防汚塗料組成物100重量部中に、0.2〜40重量部の量で、好ましくは1〜20重量部の量で含まれていることが望ましい。このような量で金属ピリチオン化合物(C)が本発明の防汚塗料組成物中に含まれていると、得られる塗膜の防汚性が優れる傾向がある。
上記金属ピリチオン化合物(C)は、亜酸化銅などと異なり、環境への負荷が低く、この金属ピリチオン化合物(C)と4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)と組み合わせて用いることにより、得られる防汚塗料組成物は被塗物基材への含浸性に優れ、またその塗膜は長期防汚性維持性能、長期にわたる塗膜の均一消耗性能に優れており、外航船など長期間連続的に使用する用途にも好適に適用でき、また塗膜にクラック、剥離が生じにくく、ピリジン−トリフェニルボラン等を用いる場合に比して優れた付着性を有する塗膜を形成でき、船舶、水中構造物用防汚塗料として、あるいは漁具・漁網用防汚塗料として好適である。
任意成分
本発明に係る防汚塗料組成物は、上述した金属含有共重合体(A)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)および金属ピリチオン化合物(C)の必須成分以外に、塩素化パラフィン等の可塑剤、酸化亜鉛(亜鉛華)(D)等の着色顔料、タルクなどの体質顔料(E)、無機脱水剤、上記(A)〜(C)以外の防汚剤、特に有機防汚剤(F)、可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、上記共重合体(A)以外の塗膜形成成分、溶剤など、通常防汚塗料に配合されるような各種成分が含まれていてもよい。
<着色顔料>
着色顔料としては、従来公知の有機系、無機系の各種顔料を用いることができる。
有機系顔料としては、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、紺青等が挙げられる。
無機系顔料としては、例えば、チタン白、ベンガラ、バライト粉、白亜、酸化鉄粉等のように中性で非反応性のもの;亜鉛華(ZnO、酸化亜鉛)、鉛白、鉛丹、亜鉛末、亜酸化鉛粉等のように塩基性で塗料中の酸性物質と反応性のもの(活性顔料);等が挙げられる。なお、染料等の各種着色剤も含まれていてもよい。
特に、酸化亜鉛(D)は好ましく用いられ、酸化亜鉛(D)を配合する場合には、該酸化亜鉛は、得られる塗膜の消耗性の持続性、付着性の点を考慮すると、上記金属含有共重合体(A)100重量部に対して、通常5〜100重量部の量で、また防汚塗料組成物中に0.1〜40重量%の量で含まれていることが望ましい。
<体質顔料(E)>
体質顔料(E)は、屈折率が小さく、油やワニスと混練した場合に透明で被塗面を隠さないような顔料であり、かかる体質顔料としては、例えば、タルク、シリカ、マイカ、クレー、沈降防止剤としても用いられる炭酸カルシウム、カオリン、アルミナホワイト、艶消し剤としても用いられるホワイトカーボン、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、沈降防止剤としても用いられるベントナイト等が挙げられ、これらのうちでは、好ましくはタルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリンが好ましい。
これらの体質顔料(E)は、1種または2種以上組み合わせて用いられる。また体質顔料の種類によって、消耗度の調整ができる。
体質顔料は、得られる塗料のコスト低減、増量効果や、得られる塗膜の透明性、肉付き性の点を考慮すると、防汚塗料組成物中に通常0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%の量で含まれていてもよい。
<無機脱水剤(安定剤)>
無機脱水剤(安定剤)は、防汚塗料組成物の貯蔵安定性を一層向上させることができ、このような無機脱水剤としては、無水石膏(CaSO)、合成ゼオライト系吸着剤(商品名:モレキュラーシーブ等)、オルソギ酸メチル、オルソ酢酸メチル等のオルソエステル類、オルソほう酸エステル、シリケート類やイソシアネート類(商品名:アディティブTI)等が挙げられ、無水石膏、モレキュラーシーブが好ましく用いられる。このような無機脱水剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
<その他の有機防汚剤(F)>
防汚剤としては、上記金属含有共重合体(A)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)および金属ピリチオン化合物(C)以外に、その他の防汚剤が含まれていてもよく、特に有機防汚剤(F)等が含まれていてもよい。
有機防汚剤(F)としては、テトラメチルチウラムジサルファイド、カーバメート系の毒物(例:ジンクジメチルジチオカーバメート、マンガン−2−エチレンビスジチオカーバメート)、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素、2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノSトリアジン、塩基性酢酸銅等を挙げることができる。
このようなその他の有機防汚剤(F)は、上記(B)、(C)を含めて防汚剤総量((B)+(C)+(F))として、防汚塗料組成物中に通常1〜70重量%、好ましくは5〜50重量%となるような量で用いることができる。
なお、本発明においては、ピリジン−トリフェニルボランなどのトリフェニルボラン化合物やテトラフェニルボラン化合物など、特公昭54−1571号公報に記載されているようなボラン化合物や、無機系防汚剤の亜酸化銅などが実質上含まれていないことが望ましい。
<可塑剤(塩化パラフィン)>
可塑剤としては、TCP(トリクレジルフォスフェート)、塩化パラフィン、ポリビニルエチルエーテル等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの可塑剤は、得られる防汚塗料組成物からなる塗膜(本明細書中では、「防汚塗膜」とも言う)の耐クラック性の向上に寄与するが、これら可塑剤のうちで、塩素化パラフィン(塩化パラフィン)が好ましく用いられる。
この塩素化パラフィン(塩化パラフィン)としては、直鎖状でもよく分岐を有していていてもよく、室温で液状でも固体(粉体)でもよいが、その平均炭素数が通常、8〜30、好ましくは10〜26のものが好ましく用いられ、その数平均分子量が通常、200〜1200、好ましくは300〜1100であり、粘度が通常1以上(ポイズ/25℃)、好ましくは1.2以上(ポイズ/25℃)であり、その比重が1.05〜1.80/25℃、好ましくは1.10〜1.70/25℃のものが好ましく用いられる。このような炭素数の塩素化パラフィンを用いると、得られる防汚塗料組成物を用いて割れ(クラック)、剥がれの少ない塗膜を形成できる。なお塩素化パラフィンの炭素数が8未満では、クラックの抑制効果が不足となることがあり、またその炭素数が30を超えると、得られる塗膜表面の消耗性(更新性)に劣り防汚性が劣ることがある。また、この塩素化パラフィンの塩素化率(塩素含有量)は、通常35〜75%、好ましくは35〜65%であることが好ましい。このような塩素化率の塩素化パラフィンを用いると、得られる防汚塗料組成物を用いて割れ(クラック)、剥がれの少ない塗膜を形成できる。このような塩素化パラフィンとしては、東ソー(株)製の「トヨパラックス150」、「トヨパラックスA−70」などが挙げられる。
<タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)>
タレ止め・沈降防止剤(搖変剤)としては、有機粘土などのような防汚塗料組成物の貯蔵安定性を害するもの以外は、任意量で配合されていてもよい。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、有機粘度系Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの塩類、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス系、ポリアマイドワックス系および両者の混合物、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等が挙げられ、好ましくは、ポリアマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス、有機粘度系が用いられる。このようなタレ止め・沈降防止剤としては、楠本化成(株)製の「ディスパロン305」、「ディスパロン4200−20」等の他、「ディスパロンA630−20X」等の商品名で上市されているものが挙げられる。
<その他の塗膜形成成分>
本発明の防汚塗料組成物には、塗膜形成成分として、上記金属含有共重合体(A)以外の樹脂が本発明の目的に反しない範囲で含まれていてもよい。このような「その他の塗膜形成成分」としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、ポリブテン樹脂、シリコーンゴム、ウレタン樹脂(ゴム)、ポリアミド樹脂、塩化ビニル系共重合樹脂、塩化ゴム(樹脂)、塩素化オレフィン樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂等の難あるいは非水溶性樹脂(以下、難/非水溶性樹脂ともいう)が挙げられる。
上記塩化ビニル系共重合樹脂として、さらに具体的には、例えば、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル・ビニルアルコール共重合樹脂、塩化ビニル・ビニルi−ブチルエーテル共重合樹脂、塩化ビニル・プロピオン酸ビニル共重合樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体の塩素化物が挙げられる。
本発明においては、これらの樹脂あるいはゴムを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。本発明においては、上記難/非水溶性樹脂と、下記のような水溶性樹脂とを組み合わせて用いることができる。
水溶性樹脂としては、ロジン(例:商品名「ロジンWW」)、モノカルボン酸およびその塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、炭素数9〜19程度の脂肪酸、ナフテン酸が挙げられる。モノカルボン酸の塩としては、Cu塩、Zn塩、Ca塩等が挙げられる。ロジンには、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどがあるが、本発明ではいずれをも使用することができる。これらの水溶性樹脂は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
<溶剤>
本発明の防汚塗料では、上記のような各種成分は、溶剤に溶解若しくは分散している。ここで使用される溶剤としては、例えば、脂肪族系、芳香族系、ケトン系、エステル系、エーテル系など、通常、防汚塗料に配合されるような各種溶剤が用いられる。上記芳香族系溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等が挙げられ、ケトン系溶剤としては、例えば、MIBK等が挙げられ、エーテル系溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMAC)等が挙げられる。
防汚塗料組成物の製造
本発明の防汚塗料組成物は、上述した金属含有共重合体(A)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)、金属ピリチオン化合物(C)および、必要に応じて任意成分を用いて、従来より公知の方法を適宜利用することにより製造することができる。たとえば、金属含有共重合体(A)、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン(B)、金属ピリチオン化合物(C)および、必要により用いられる着色顔料特に酸化亜鉛(D)、タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、カオリンなどの体質顔料(E)、無機脱水剤(安定剤)、防汚剤特に有機防汚剤(F)、可塑剤、タレ止め・沈降防止剤、その他の塗膜形成成分、溶剤(例:キシレン)などとを所定の割合で一度にあるいは任意の順序で加えて攪拌・混合し、溶媒に分散することにより、製造することができる。
このような本発明の防汚塗料組成物を、例えば、火力・原子力発電所の給排水口等の水中構造物、湾岸道路、海底トンネル、港湾設備、運河・水路等のような各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜、船舶、漁業資材(例:ロープ、漁網、漁具、浮き子、ブイ)などの各種成形体の表面に、常法に従って1回〜複数回塗布すれば防汚性に優れ、防汚剤成分が長期間に亘って徐放可能であり、厚塗りしても適度の可撓性を有し耐クラック性に優れた防汚塗膜被覆船舶または水中構造物などが得られる。
すなわちこのような本発明に係る防汚塗料組成物を各種成形体の表面に塗布硬化してなる防汚塗膜は、アオサ、フジツボ、アオノリ、セルプラ、カキ、フサコケムシ等の水棲生物の付着を長期間継続的に防止できるなど防汚性に優れている。
特に、該防汚塗料組成物は、船舶等の素材が、FRP、鋼鉄、木、アルミニウム合金などである場合にもこれらの素材表面に良好に付着する。鋼船およびアルミ船の場合、通常は基材表面にプライマー、防食塗料、および必要に応じてバインダー塗料を塗装した表面に、本発明の防汚塗料が塗布される。また、該防汚塗料組成物は、既存の防汚塗膜表面に上塗してもよい。
また例えば、該防汚塗料組成物を海中構造物表面に塗布すれば、海中生物の付着防止を図ることができ、該構造物の機能を長期間維持でき、漁網に塗布すれば、漁網の網目の閉塞を防止でき、しかも環境汚染のおそれが少ない。
なお、この本発明に係る防汚塗料組成物は、直接漁網に塗布してもよく、また予め防錆剤、プライマーなどの下地材が塗布された船舶または水中構造物等の表面に塗布してもよい。さらには、既に従来の防汚塗料による塗装が行われ、あるいは本発明発明の防汚塗料組成物による塗装が行われている船舶、特にFRP船あるいは水中構造物等の表面に、補修用として本発明の防汚塗料組成物を上塗りしてもよい。このようにして船舶、水中構造物等の表面に形成された防汚塗膜の厚さは特に限定されないが、例えば、30〜150μm/回程度である。
上記のようにして得られる本発明に係る防汚塗膜、あるいは船舶・水中構造物の接水部表面の塗膜は、前述したような防汚塗料組成物から形成されており環境汚染のおそれが少なく広汎な船舶・水中構造物付着生物に対して長期防汚性に優れている。
本発明によれば、環境への負荷が少なく優れた防汚性を有し、かつ長期に亘り塗膜が一定の速度で均一に消耗し塗膜の均一消耗性に優れ、しかも長期間優れた防汚性能を維持でき塗膜の長期防汚性維持性能に優れ、外航船用として好適であり、クラックや剥離が生じにくく、ピリジン−トリフェニルボランなどを用いた塗膜に比して優れた付着性を有し、色相が鮮明で没水・曝露後も変色が少なく、白色防汚塗料も製造可能であるなど適用分野が広く、優れた諸性能を有する長期防汚性に優れた防汚塗膜を形成しうるような防汚塗料組成物、防汚塗膜、該防汚塗膜で被覆された船舶、水中構造物、漁具または漁網を提供することができる。
このような本発明の防汚塗料組成物を船舶、海上構造物没水部、漁具・漁網等の被塗物基材の表面に塗布・含浸させ塗膜をその表面に形成させれば、その汚損を大幅に低減させることができ、その耐用年数を著しく向上させることができ、また着色顔料が配合された防汚塗料組成物では、鮮明な色相の塗膜を得ることができる。
また、本発明の防汚塗料組成物は、有機溶剤に可溶であり、漁網などへの塗工性に優れる。
本発明の船舶、水中構造物、漁具および魚網は、本発明の防汚塗料組成物を用いて得られ、優れた防汚性能を長期間にわたって有する。
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例、比較例などにおいて、部は重量部を意味する。
製造例1
(金属含有単量体a1−1の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル(PGM)85.4部および酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸(MAA)43.1部、アクリル酸(AA)36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後プロピレングリコールメチルエーテルを36部添加して、金属含有単量体a1−1を含有する透明な混合物溶液Aを得た。得られた混合物溶液中における固形分(金属含有単量体a1−1)は44.8重量%であった。
製造例2
(金属含有単量体a1−2の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、n−ブタノール(nBuOH)24.3部、キシレン61.1部および酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1部、アクリル酸36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後キシレンを36部添加して、金属含有単量体a1−2を含有する透明な混合物溶液Bを得た。得られた混合物溶液中における固形分(金属含有単量体a1−2)は44.9重量%であった。
製造例3
(金属含有単量体a1−3の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル85.4部および酸化亜鉛46.8部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸46.1部、アクリル酸36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から半透明となった。さらに4時間撹拌した後プロピレングリコールメチルエーテルを43.5部添加して、金属含有単量体a1−3を含有する僅かに濁った混合物溶液Cを得た。得られた混合物溶液中における固形分(金属含有単量体a1−3)は44.9%であった。
製造例4
(金属含有単量体a1−4の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル70部、水15.4部および酸化亜鉛40.7部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1部、アクリル酸36.1部、水20.6部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後、プロピレングリコールメチルエーテルを20.4部添加して、金属含有単量体a1−4を含有する透明な混合物溶液Dを得た。得られた混合物溶液中における固形分(金属含有単量体a1−4)は44.2%であった。
製造例5
(金属含有単量体a1−5の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル85.4部および酸化マグネシウム20.2部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1部、アクリル酸36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後反応溶液は乳白色状態から透明となった。さらに2時間撹拌した後、プロピレングリコールメチルエーテルを11部添加して、金属含有単量体a1−5を含有する透明な混合物溶液Eを得た。得られた混合物溶液中における固形分(金属含有単量体a1−5)は44.6%であった。
製造例6
(金属含有単量体a1−6の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル85.4部および酸化亜鉛40.5部、酸化第二銅0.2部を仕込み、撹拌しながら75℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメタクリル酸43.1部、アクリル酸36.1部、水5部からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後、反応溶液は緑色となった。さらに2時間撹拌した後プロピレングリコールメチルエーテルを11部添加して、金属含有単量体a1−6を含有する透明な混合物溶液Fを得た。得られた混合物溶液中における固形分(a1−6)は44.9%であった。
製造例7
(金属含有共重合体A−1の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン57部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート1部、エチルアクリレート66.2部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、製造例1で得た混合物溶液Aを52部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル、日本ヒドラジン工業(株))2.5部、AMBN(アゾビスメチルブチロニトリル、日本ヒドラジン工業(株))7部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを4.4部添加して、加熱残分45.6%、ガードナー粘度−Yを有し、不溶解物がなく、淡黄色透明な、金属含有共重合体A−1を含有する樹脂組成物を得た。
製造例8
(金属含有共重合体A−2の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコにプロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン60部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート10部、エチルアクリレート62.6部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、製造例1で得た混合物溶液Aを40部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN5.5部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後、キシレンを8部添加して、加熱残分46.1%、ガードナー粘度+Vを有する不溶解物のない淡黄色透明な金属含有重合体A−2を含有する樹脂組成物を得た。
製造例9
(金属含有共重合体A−3の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン57部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート14.6部、エチルアクリレート52.6部、n−ブチルアクリレート7.5部、製造例1で得た混合物溶液Aを47.4部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN8.5部からなる透明な混合物を6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを6.9部添加して、加熱残分45.8%、ガードナー粘度−Z2を有する不溶解物のない淡黄色透明な金属含有重合体A−3を含有する樹脂組成物を得た。
製造例10
(金属含有共重合体A−4の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン61部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート18部、エチルアクリレート61部、製造例1で得た混合物溶液Aを37.8部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN7部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを8.2部添加して、加熱残分46.0%、ガードナー粘度+Tを有する不溶解物のない淡黄色透明な金属含有重合体A−4を含有する樹脂組成物を得た。
製造例11
(金属含有共重合体A−5の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコにプロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン57部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて滴下ロートからメチルメタクリレート5部、エチルアクリレート64.9部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、製造例1で得た混合物溶液Aを40部、製造例5で得た混合物溶液Eを6部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN6部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後、キシレンを7.7部添加して、加熱残分46.2%、ガードナー粘度+Uを有する不溶解物のない淡黄色透明な金属含有共重合体A−5を含有する樹脂組成物を得た。
製造例12
(金属含有共重合体A−6の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン57部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート1部、エチルアクリレート66.2部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、製造例6で得た混合物溶液Fを52部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN7部からなる緑色な混合物を6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを4.4部添加して、加熱残分45.2%、ガードナー粘度+Vを有する不溶解物のない緑色な金属含有共重合体A−6を含有する樹脂組成物を得た。
製造例13
(金属含有共重合体A−7の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部およびキシレン61部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート49.55部、エチルアクリレート50部、製造例1で得た混合物溶液Aを1部、AIBN2.5部、AMBN2部からなる透明な混合物を、4時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後、キシレンを38.45部添加して、加熱残分44.7%、ガードナー粘度+Bを有する不溶解物のない透明な金属含有共重合体A−7を含有する樹脂組成物を得た。
製造例14
(金属含有共重合体A−8の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部およびキシレン61部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート18部、エチルアクリレート61部、製造例2で得た混合物溶液Bを37.8部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN7部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後キシレンを8.2部添加して、加熱残分46.2%、ガードナー粘度+Yを有する不溶解物のない淡黄色透明な金属含有重合体A−8を含有する樹脂組成物を得た。
製造例15
(金属含有共重合体A−9の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル15部、キシレン57部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート1部、エチルアクリレート64.9部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、製造例3で得た混合物溶液Cを55部、キシレン10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN7.5部からなる透明な混合物を、6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下し、さらに1時間30分撹拌した後、キシレンを3.1部添加して、加熱残分46.3%、ガードナー粘度+Wを有する僅かに濁った淡黄色な金属含有重合体A−9を含有する樹脂組成物を得た。
製造例16
(金属含有共重合体A−10の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコに、プロピレングリコールメチルエーテル46.8部、キシレン25.2部およびエチルアクリレート4部を仕込み、撹拌しながら90℃に昇温した。続いて、滴下ロートからメチルメタクリレート1部、エチルアクリレート66.2部、2−メトキシエチルアクリレート5.4部、製造例4で得た混合物溶液Dを52部、プロピレングリコールメチルエーテル10部、連鎖移動剤(日本油脂社製ノフマーMSD)1部、AIBN2.5部、AMBN8部からなる透明な混合物を6時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート0.5部とキシレン7部を30分で滴下した後、100℃に昇温し、さらに1時間撹拌した後、キシレンを4.4部添加して、加熱残分45.9%、ガードナー粘度+Vを有する僅かに濁った淡黄色な金属含有重合体A−10を含有する樹脂組成物を得た。
表1に、製造例1〜6の反応物製造の仕込み量(モル比)、反応物を含有する混合物溶液中の溶剤量、水の含有量(重量%)および固形分を記載した。
また表2に、製造例7〜16の金属含有共重合体を製造する際の仕込み量(重量比)、得られた樹脂組成物の粘度(ガードナー粘度)、固形分(%)および樹脂の分子量(MW)を記載した。
なお、樹脂の分子量は、HLC−8120GPCにより、TSK−gel αタイプの分離カラム(α−M)2本を用い、20mM LiBrを添加したDMF(ジメチルホルムアミド)を溶離液として用いて測定した。重量平均分子量は、ポリスチレン換算として求めた。


製造例17〜29
(金属含有共重合体A−11〜A−23の製造)
冷却器、温度計、滴下ロートおよび攪拌機を備えた四つ口フラスコにPGM(プロピレングリコールメチルエーテル)30重量部およびキシレン40重量部を仕込み、撹拌しながら100℃に昇温した。続いて、滴下ロートから表3に示す単量体および重合開始剤からなる混合物を3時間で等速滴下した。滴下終了後にt−ブチルパーオクトエート1重量部とキシレン10重量部を2時間で滴下し、さらに2時間撹拌した後キシレンを20重量部添加して、表3に示す特性値を有する金属含有共重合体A−11〜A−23を含有する溶液を得た。

実施例1〜65、比較例1〜44
上記製造例7〜29で得た金属含有共重合体A−1〜A−23を含有する樹脂組成物をそれぞれ用いて、表4〜表13に示す配合組成の防汚塗料組成物を常法により調製した。
この表4〜表12に示す配合組成の防汚塗料組成物を、予め防錆塗料(種類:ショッププライマー、タールエポキシ塗料、ビニル塗料)がそれぞれ20μm厚、150μm厚、75μm厚に塗装されているサンドブラスト処理鋼板(縦:30cm×横:10cm×厚み:0.32cm)に、その乾燥膜厚が100μmになるように塗布し乾燥させて試験板を作成した。
この試験板を広島県広島湾内で12ヶ月間静置浸漬し、その間1ヶ月毎に付着生物の付着面積(%)等を調べた。
その結果を表4〜表12に併せて示す。
なお、表4〜12において、配合組成に示す各物質は、それぞれ下記の商品等を示す。
・塩素化パラフィン:
商品名「トヨパラックス150」(平均炭素数:14.5、塩素含有率(量)50%、粘度:12ポイズ/25℃、比重:1.25/25℃、東ソー(株)製)
・酸化亜鉛:商品名「亜鉛華3号」(九州白水(株)製)
・タルク:商品名「TTKタルク」(タケハラ化学工業(株)製)
・弁柄:商品名「弁柄月光BB」(日本弁柄工業(株)製)
・チタン白:商品名「チタン白 R−5N」(堺化学工業(株)製)
・ロダン銅:日本化学産業(株)製
・ジンクジメチルジチオカーバメート:
「サンセラーPZ」(三新化学(株)製)
・2−メチルチオ−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−トリアジン:
商品名「イルガロール#105」(Ciba−Geigy社製)
・2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル:
「マリンサイドC」(サンノプコ(株)製)
・N,N−ジメチルジクロロフェニル尿素:「DCMU」(保土ヶ谷化学社製)
・N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド:
「プリペントールA−3」(バイエルジャパン(株)製)
・N,N’−ジメチル−N’−フェニル−(N−フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド:
「プリペントールA−4S」(バイエルジャパン(株)製)
・テトラメチルチウラムジサルファイド:
「サンセラーTT」(三新化学(株)製)
・2,4,6−トリクロロフェニルマレイミド:
「IT−354」(イハラケミカル工業(株)製)
・2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン:
「デンシルS100」(ゼネカ(株)製)
・3−ヨード−2−プロピニールブチルカーバメート:
「TROYSAN POLYPHASE P100」(TROY社製)
・ジヨードメチル−p−トリルスルホン:
「アミカル48(Amical 48)」(Abbott社製)
・ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート:
「TOC−3204」(東京有機化学工業(株)製)
・ジンクエチレンビスチオカーバメート:
商品名「ジネブ」(東京有機化学工業(株)製)
・ピリジン・トリフェニルボロン:
商品名「PKボロン」(北興化学工業(株)製)
・2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩:
商品名「AF−Z」(吉富ファインケミカル(株)製)
・2−ピリジンチオール−1−オキシド銅塩:
商品名「銅ピリチオン」(オーリン(株)製)
・4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン:
商品名「シーナイン211」(ロームアンドハース社製)
・亜酸化銅:
平均粒径8μm、商品名「NC−801」(日本化学工業(株)製)
・酸化ポリエチレンワックス:
商品名「ディスパロン4200−20(Dispal4200−20X)」(楠本化成(株)製)、20%キシレンペースト。
・脂肪族アマイドワックス:
商品名「ディスパロンA630−20X(DispalA630−20X)」(楠本化成(株)製)、20%キシレンペースト。
・プロピレングリコールモノメチルエーテル:
商品名「クラレPGM(KurarayPGM)」(クラレ(株)製);溶剤
評価基準は以下の通りである。
評価基準
<海中生物の付着面積評価基準(静置防汚性評価基準)>
5点‥‥‥海中生物の付着面積が0%。
4点‥‥‥海中生物の付着面積が0%を超え5%以下。
3点‥‥‥海中生物の付着面積が5%を超え10%以下。
2点‥‥‥海中生物の付着面積が10%を超え25%以下。
1点‥‥‥海中生物の付着面積が25%を超え50%以下。
0点‥‥‥海中生物の付着面積が50%を超える。
<劣化防汚塗膜との付着性>
劣化防汚塗膜との付着性は、以下の既存の防汚塗料をそれぞれ試験板に塗布し、海水中に1年間浸漬させて製作した各劣化防汚塗膜表面に、実施例、比較例に示す各防汚塗料組成物からなる防汚塗膜を、その乾燥膜厚が100μmとなるようにそれぞれ塗布形成した後、海水中に浸漬し、6ヶ月後に「JIS K−5400Xカットテープ法」により評価した。ここで、試験に用いた既存の防汚塗料は、「中国AF」、「ラバックスAF」、「ビニルAF」、「マリンスター10改」、「AFシーフローZ−100LEHS」、「シーグランプリ500」、「シーグランプリ700」および「シーグランプリ1000」(いずれも中国塗料(株)製)である。
<塗膜消耗度測定方法>
サイズが170mm(縦)×70mm(横)×4.5mm(厚さ)の鉄基板を用意し、その長手方向に、R=500mm(曲がり半径)で湾曲させると共に、基板の四角に回転ドラムへの取付用ネジ穴を形成し、サンドブラスト処理鉄板を作成した。
このサンドブラスト処理鉄板の湾曲した突出表面に、ショッププライマー、タールエポキシ塗料、ビニル塗料を順次スプレー塗装にて塗り重ねた後、各種供試塗料を塗装(乾燥膜厚200μm)した。
この試験板を、広島県呉湾に設置したロータリー試験筏の回転ドラムに取り付けて、回転速度15ノットで回転させ、1月毎に試験板を海中より引き上げて膜厚を測定することにより、塗膜消耗速度を測定した。










【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜酸化銅および有機スズを実質的に含まない防汚塗料組成物であって、
(A)金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)と、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)とを共重合してなる金属含有共重合体と、
(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンと、
(C)金属ピリチオン化合物と
を含有することを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項2】
トリフェニルボラン化合物およびテトラフェニルボラン化合物を、実質的に含まないことを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、
(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.5〜100重量部の量で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、
(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを1〜50重量部の量で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
防汚塗料組成物100重量部中に、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.1〜40重量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
防汚塗料組成物100重量部中に、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンを0.5〜20重量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、
(C)金属ピリチオン化合物を1〜90重量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、
(C)金属ピリチオン化合物を5〜55重量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項9】
防汚塗料組成物100重量部中に、(C)金属ピリチオン化合物を0.2〜40重量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
防汚塗料組成物100重量部中に、(C)金属ピリチオン化合物を1〜20重量部の量で含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項11】
(D)酸化亜鉛を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項12】
前記(A)金属含有共重合体100重量部に対して、
(D)酸化亜鉛を5〜100重量部の量で含有することを特徴とする請求項11に記載の防汚塗料組成物。
【請求項13】
タルク、シリカ、マイカ、クレー、炭酸カルシウムおよびカオリンよりなる群から選ばれる(E)体質顔料を含有することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項14】
(F)有機防汚剤(ただし、(B)4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンおよび(C)金属ピリチオン化合物を除く)を含有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項15】
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、金属(メタ)アクリレート、金属ジ(メタ)アクリレートおよびそれらの低重合物よりなる群から選ばれる1種以上の単量体であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項16】
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、無機金属化合物と、(メタ)アクリル酸とを、アルコール系有機溶剤と水との存在下で反応させて得られる重合性化合物であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項17】
無機金属化合物が、亜鉛、銅およびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属の、酸化物、水酸化物または塩化物であることを特徴とする請求項16に記載の防汚塗料組成物。
【請求項18】
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)と、下記式(1)で表される金属含有単量体(a12)とからなることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の防汚塗料組成物;
−COO−M−L …(1)
(式(1)中、Rは、CH=C(CH)−、CH=CH−、HOOC−CH=CH−およびHOOC−CH=C(CH)−よりなる群から選ばれ、−COOHが金属塩またはエステルを形成していてもよい不飽和結合含有有機基を示し、
Mは、金属原子を示し、
Lは、−OCOR(Rは、アルキル基、シクロアルキル基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、アラルキル基を示す)で表される有機酸残基を示し、
nは、金属Mの原子価数−1の数を示す。)。
【請求項19】
金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)が、亜鉛、銅およびマグネシウムよりなる群から選ばれる金属を含有することを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項20】
金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)が、下記式(2)で表される(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルよりなる群から選ばれる1種以上の単量体(a21)からなることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の防汚塗料組成物;
OCO−CH(R)=CH …(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。)。
【請求項21】
金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)が、下記式(2)で表される1種以上の単量体(a21)と、下記式(3)で表される1種以上の単量体(a22)とからなることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の防汚塗料組成物;
OCO−CH(R)=CH …(2)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基を示す。)
OCO−CH(R)=CH …(3)
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基を示し、Rはヒドロキシル基、アルコキシル基、シクロアルコキシル基またはアリーロキシル基を示す。)。
【請求項22】
金属含有共重合体(A)が、金属を含有する重合性不飽和単量体(a1)から誘導される成分単位を2〜50重量%、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)から誘導される成分単位を50〜98重量%含有する共重合体であることを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項23】
金属含有共重合体(A)が、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、前記式(1)で表される金属含有単量体(a12)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、金属を含有しないラジカル重合性不飽和単量体(a2)から誘導される成分単位を50〜98重量%含有する共重合体であることを特徴とする請求項18に記載の防汚塗料組成物。
【請求項24】
金属含有共重合体(A)が、金属ジ(メタ)アクリレート(a11)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、前記式(1)で表される金属含有単量体(a12)から誘導される成分単位を0.1〜49.9重量%、前記式(2)で表される単量体(a21)から誘導される成分単位を0.1〜97.9重量%、および、前記式(3)で表される単量体(a22)から誘導される成分単位を0.1〜97.9重量%含有する共重合体であることを特徴とする請求項21に記載の防汚塗料組成物。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成されている防汚塗膜。
【請求項26】
請求項1〜24のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成される塗膜で被覆されていることを特徴とする船舶または水中構造物。
【請求項27】
請求項1〜24のいずれかに記載の防汚塗料組成物から形成される塗膜で被覆されていることを特徴とする漁具または漁網。
【請求項28】
請求項1〜24のいずれかに記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて船舶または水中構造物の表面を被覆することを特徴とする船舶または水中構造物の防汚方法。
【請求項29】
請求項1〜24のいずれかに記載の防汚塗料組成物からなる塗膜にて漁具または漁網の表面を被覆することを特徴とする漁具または漁網の防汚方法。

【国際公開番号】WO2004/037932
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546388(P2004−546388)
【国際出願番号】PCT/JP2002/013244
【国際出願日】平成14年12月18日(2002.12.18)
【出願人】(390033628)中国塗料株式会社 (57)
【Fターム(参考)】