説明

防汚塗料組成物及び防汚塗膜の形成方法

【課題】耐汚染性や、耐温水性に優れた、自己洗浄能力を有する防汚層を形成し、また、有機系溶剤を使用しないため環境面においても優しく、更に有機溶剤に弱い下地塗膜を溶解や膨潤等を起こすことのない防汚塗料組成物及び防汚塗膜の形成方法を提供することである。
【解決手段】
(a)水分散コロイダルシリカ(固形分換算)0.1〜10.0質量%と、
(b)2種類以上のノニオン系界面活性剤(固形分換算)0.01〜1.0質量%と、
(c)水89〜99質量%と
を主成分として含有し、有機系溶剤を含有しないことを特徴とする防汚塗料組成物及び該組成物からなる防汚塗膜の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐汚染性、耐温水性に優れた、自己洗浄能力を有する防汚層を形成することのできる防汚塗料組成物及び防汚塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノポリシロキサン系の無機樹脂を結合剤とする塗膜は、耐候性や耐汚染性等に優れるものの、初期の親水性発現までに時間を要する。また、オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、シリル基含有化合物を加水分解縮合反応させて得られる有機無機複合樹脂を結合剤とする塗膜は、クラックが生じにくいものの、耐汚染性や、耐候性、耐溶剤性を更に向上させることが求められていた(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−313497号公報
【特許文献2】特開2001−98221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、このような従来技術の課題を背景になされたもので、特定のコロイド状シリカと特定の界面活性剤、水とを用いることにより、耐汚染性や、耐温水性に優れた、自己洗浄能力を有する防汚層を形成し、また、有機系溶剤を使用しないため環境面においても優しく、更に有機溶剤に脆弱な下地塗膜が溶解や膨潤等を起こすことのない防汚塗料組成物及び防汚塗膜の形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従って、
(a)水分散コロイダルシリカ(固形分換算)0.1〜10.0質量%と、
(b)2種類以上のノニオン系界面活性剤(固形分換算)0.01〜1.0質量%と、
(c)水89〜99質量%と
を主成分として含有し、有機系溶剤を含有しないことを特徴とする防汚塗料組成物が提供される。
【0006】
また、本発明に従って、上記の防汚塗料組成物を、基材又は下塗塗膜上に塗布・乾燥し、防汚塗膜を形成することを特徴とする防汚塗膜の形成方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によって、耐汚染性や、耐温水性に優れた、自己洗浄能力を有する防汚層を形成し、また、有機系溶剤を使用しないため環境面においても優しく、更に有機溶剤に脆弱な下地塗膜が溶解や膨潤等を起こすことのない防汚塗料組成物及び防汚塗膜の形成方法を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0009】
本発明の防汚塗料組成物の各構成成分について説明する。
【0010】
まず、本発明の防汚塗料組成物の主剤となる(a)水分散コロイダルシリカについて説明する。
【0011】
(a)水分散コロイダルシリカについて
(a)成分の水分散コロイダルシリカは、シリカ粒子が、水媒体中に分散したものである。コロイダルシリカは、通常、平均粒子径が、5〜100nmのほぼ球状のシリカ粒子が分散したタイプと、シリカ粒子が太さ5〜50nm、長さ40〜400nm程度に鎖状に凝集して溶液中に分散したタイプ、平均粒子径10〜50nmの球状シリカ粒子がパールネックレス状に50〜400nmの長さに連なったパールネックレス状タイプ、平均粒子径5〜50nmのシリカ粒子が環状に凝集して溶液中に分散した環状タイプ等があるが、本発明においては、鎖状コロイダルシリカを使用することが好ましい。また、異なるタイプの物も少量であれば混合して使用することができる。
【0012】
ほぼ球状のシリカ粒子が水に分散したコロイダルシリカは、市販品として容易に入手することができ、具体例としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス−20、スノーテックス−O、スノーテックス−C、スノーテックス−Sや、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20、AT−20N、AT−20A、AT−300等が挙げられる。
【0013】
鎖状コロイダルシリカは、水中にシリカ粒子が分散したものであり、市販品として容易に入手することができる。その具体例としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス−UP、スノーテックス−OUP(以上、水分散系)等が挙げられる。
【0014】
パールネックレス状コロイダルシリカは、市販品として容易に入手することができ、具体例としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックス−PS−S、スノーテックス−PS−M、スノーテックス−PS−SO、スノーテックス−PS−MO等が挙げられる。
【0015】
本発明の防汚塗料組成物においては、水系の塗料組成物であり、塗膜外観が低下するため、水分散コロイダルシリカの分散溶媒としては、有機溶媒を含むものは使用できない。
【0016】
(a)成分は、塗膜の硬化性や耐汚染性を向上させるためのものであり、その配合量は、固形分換算で、防汚塗料組成物中、0.1〜10.0質量%、好ましくは、0.5〜2.0質量%が適当である。(a)成分の配合量が、前記範囲より少ないと、塗膜の硬化性や、耐汚染性を向上させる効果が発揮されず、逆に多過ぎると、塗膜の外観が悪くなる傾向にある。
【0017】
一般に水分散コロイダルシリカは製造方法によりNaを含むが、本発明においてはそのNaを除去した酸性タイプの水分散コロイダルシリカを用いることがシリカ粒子の分散性が向上するため好ましい。
【0018】
よって、(a)成分の水分散コロイダルシリカ溶液のpHは、1〜5であることが好ましく、更には、pHが2〜4であることがより好ましい。水分散コロイダルシリカ溶液のpHが、5より大きいと得られる防汚塗料組成物の貯蔵安定性が不十分となり易くなり、pHが1より小さいと防汚塗料組成物自体の酸性が強くなり、好ましくない。
【0019】
(b)ノニオン系界面活性剤について
(b)成分は、(a)成分の水分散コロイダルシリカの分散性向上や塗膜の耐汚染性、塗膜形成時のフロー性を向上させるために含有される。
【0020】
(b)ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリコシド等が挙げられる。これらの内2種類以上のノニオン系界面活性剤を使用し、これらの中でもポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有することが耐汚染性、耐雨筋染性が向上するためより好ましい。更には、それに加えてプロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロックポリマーを含有すると耐雨筋汚染性が向上するためより好ましい。
【0021】
(b)成分の配合量は、固形分換算で、防汚塗料組成物中、合計0.01〜1.0質量%、好ましくは、0.05〜0.5質量%が適当である。(b)成分の配合量が、前記範囲より少ないと、塗膜の成膜性、外観が悪くなる。逆に前記範囲より多いと、塗膜の耐水性が低下し、塗膜の耐久性が悪くなる。
【0022】
(c)成分について
希釈剤としての(c)成分の水は、純水や蒸留水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0023】
(c)水の配合量は、防汚塗料組成物中、89〜99質量%であり、更に好ましくは、95〜99質量%である。(c)成分の配合量が、前記範囲より少ないと、塗料粘度が高くなり塗装作業性が悪くなり、逆に多過ぎると、防汚塗料成分が希薄となり、均一な塗膜が得られなくなる。
【0024】
本発明の防汚塗料組成物は、有機系溶剤を含有しないことが特徴である。その有機系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、トルエン、キシレン等が挙げられる。有機系溶剤を含んでいると、塗膜の成膜性が悪くなり、塗膜の外観等が悪くなる。また、有機系溶剤を含んでいると、下地塗膜の溶解や膨潤等により下地に悪影響を与える場合があり、特に有機塗膜上に塗装する場合は注意を要するが、本発明の防汚塗料組成物は有機系溶剤を含まないため、そのような課題は生じない。更に、揮発性の有機溶剤を含まないため、被塗物に付着しなかった塗料(オーバースプレー)も回収することが可能であり、環境に対して非常に優しい塗料である。
【0025】
本発明の防汚塗料組成物は、表面張力が、25〜40dyn/cm(25℃)であることが好ましく、更には、25〜35dyn/cm(25℃)であることがより好ましい。表面張力が、25dyn/cm(25℃)未満であると薄膜の場合、塗装が困難になる場合があり、40dyn/cm(25℃)よりも大きいと均一な塗膜形成が困難となるため、十分な塗膜性能が発揮できない。
【0026】
本発明の防汚塗料組成物は、150℃、30分間の加熱残分が、0.1〜10.0質量%であることが好ましく、更には、0.5〜5.0質量%であることがより好ましい。加熱残分が、0.1質量%未満であると、塗膜の硬化性や、耐汚染性を向上させる効果が少なく、10.0質量%超過であると塗膜の外観が悪くなる傾向がある。
【0027】
本発明の防汚塗料組成物は、塗膜形成時に(a)成分の水分散コロイダルシリカが塗膜表面に偏析し、コロイダルシリカが互いにネットワーク構造を形成することで、膜厚が薄くても強固な塗膜を形成するため、優れた耐汚染性、耐水性を発現することが可能となり、雨水により(a)成分の水分散コロイダルシリカが洗い流されることがなく、耐汚染機能の維持性にも優れると考えられる。しかしながら、防汚塗料組成物中に有機系溶剤を含んでいると、そのコロイダルシリカのネットワーク構造が形成されず、雨水により(a)成分の水分散コロイダルシリカが洗い流され易く良好な塗膜が形成されないと考えられる。同じコロイダルシリカでも鎖状コロイダルシリカは、シリカ粒子が連なった構造を持つため、このネットワーク構造を構築し易く、より強固な塗膜を形成すると考えられるため本発明に用いられることが好ましい。
【0028】
本発明の防汚塗料組成物は、以上説明した(a)成分、(b)成分及び(c)成分の3成分を主成分とし、有機系溶剤を含有しない。更に、必要に応じて、塗膜物性の向上や着色等のために、充填剤や、染料、硬化剤、更には、硬化促進剤、増粘剤、顔料分散剤等の各種添加剤等を配合することができる。
【0029】
充填材としては、例えば、タルクや、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ベントナイト、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラ、リトポン等の各種塗料用体質顔料や、着色顔料が使用可能である。
【0030】
次に、防汚塗料組成物が塗装される基材や下塗塗膜について説明する。
【0031】
本発明に使用される基材は、主に建材等に使用されるものに適用され、例えば、フレキシブルボードや、珪酸カルシウム板、石膏スラグバーライト板、木片セメント板、石綿セメント板、パルプセメント板、プレキャストコンクリート板、軽量気泡コンクリート板、ALC板、石膏ボード等の無機建材や、アルミニウム、鉄、ステンレス等の金属建材等が代表的なものとして挙げられる。これらはその表面が平滑なものであっても、凹凸形状を有するものであってもよい。
【0032】
基材上に下塗塗膜が形成される場合は、複数の塗膜から形成されていてもよい。
【0033】
下塗塗膜を形成する塗膜としては、基材と塗膜との長期間密着性を発現させる働きをなすものであり、ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、エポキシ/ポリアミン樹脂、ウレタン樹脂等を結合剤とする各種の溶剤系又は水系塗料等が挙げられ、塗膜機能としては基材密着性や耐アルカリ性、耐エフロレッセンス性等が要求される。
【0034】
特に外壁基材等の塗膜に耐候性や耐凍害性等が要求される場合には、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、有機無機複合系樹脂等を結合剤とする溶剤系又は水系塗料が塗装される。
【0035】
本発明の防汚塗料組成物は、下塗塗膜の水に対する接触角120°以下のものに適用することが好ましい。そのような塗膜を形成する塗料としては、結合剤として無機系樹脂、特にSi−OR基(Rは水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基)を有する化合物が、塗膜形成成分換算で0.1〜50質量%含有することが、防汚塗料組成物から形成される防汚塗膜との密着がより優れるため望ましい。
【0036】
Si−OR基(Rは水素原子又は炭素数1〜12の炭化水素基)を有する化合物を含有する塗料としては、加水分解性シリル基含有ビニル系塗料や、オルガノポリシロキサン系塗料、更には、シランカップリング剤添加塗料等が挙げられる。
【0037】
これらの塗料は、各種機能を付与させるために、防カビ剤や、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤、更に体質顔料や、着色顔料、防錆顔料を配合する場合は、分散剤や沈降防止剤、増粘剤等の各種添加剤を配合することができる。
【0038】
本発明の防汚塗料組成物は、基材上に1つあるいは複数の下塗塗料を塗布し、硬化・乾燥後、塗膜を形成した下塗塗膜の上から塗装し、硬化・乾燥させて防汚塗膜を形成する。
【0039】
形成された防汚塗膜上の水に対する接触角は、1°〜30°であることが好ましく、接触角が30°より大きいと塗膜の防汚性能が低下する。
【0040】
下塗塗料や防汚塗料の塗装方法は、刷毛や、スプレー、ロール、ディッピング等の塗装手段により塗装し、例えば、常温もしくは300℃以下の温度で焼付けることにより、硬化塗膜を形成することが可能である。場合により、予め基材を加熱しておき(プレヒート)、その上から塗料を塗装し、硬化塗膜を形成することもできる。
【0041】
下塗塗膜の膜厚は、数μm〜数百μmであり、特に制限されない。防汚塗料組成物により形成される防汚塗膜の膜厚は、0.1〜1μmであることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例により更に詳細に説明する。なお、実施例中の「部」や「%」は、特に断らない限り、質量基準で示す。
【0043】
(i)防汚塗料組成物の調製
<実施例1〜11及び比較例1〜6>
表1〜表2に示すように各成分を配合し、実施例1〜11及び比較例1〜6の防汚塗料組成物を得た。
【0044】
得られた各防汚塗料組成物について、表面張力や加熱残分の測定を、以下のように行った。
【0045】
<表面張力の測定方法>
表面張力の測定は、協和界面科学(株)製の表面張力計(CBVP−A3型)を用いて、25℃で測定した。
【0046】
<加熱残分の測定方法>
加熱残分は、試料約3グラムをアルミニウムカップに精秤し、150℃オーブンを用いて30分間乾燥後の質量を精秤し、元の質量に対する残分の質量から計算し、加熱残分(%)を求めた。
【0047】
各防汚塗料組成物の塗膜性能評価は、以下のように行った。
【0048】
<性能評価試験>
(ii)防汚塗料組成物の塗膜性能評価用試験板の作製
素材として石膏スラグパーライト板(厚さ12mm)を用い、その表面にポリイソシアネートプレポリマー溶液シーラー「Vセラン#100シーラー」(大日本塗料(株)製、酢酸ブチル:キシレン=1:1の溶剤で100%希釈)を塗着量が90〜100g/m(wet質量)となるように吹付塗装した。これを100℃で5分間乾燥した。次いでベース塗料としてアクリルシリコーン樹脂系塗料「Vセラン#500エナメル」(大日本塗料(株)製、酢酸ブチル:キシレン=1:1の溶剤で40%希釈)を塗着量が80〜90g/m(wet質量)となるように吹付塗装した。これを120℃で15分間乾燥した。
【0049】
次いで、前述の各調製した溶液に界面活性剤や希釈剤等を添加し、表1〜表2に示す配合の上塗り塗料を、塗着量70〜80g/m(wet質量)となるように吹付塗装した。これを120℃で15分間乾燥した後、室温で3日間乾燥し、得られた塗膜の硬度、耐温水性、耐汚染性、耐候性、耐凍害性の各性能評価試験を行い、その結果を表1〜表2に示した。
【0050】
なお、各性能評価試験の試験方法及び評価基準は、以下に基づいて行った。
【0051】
<塗膜外観>
得られた塗膜の外観を、以下のように目視で評価した。
◎…良好(透明な膜)
○…やや良好(一部白濁)
×…不良(全体的に白濁)
【0052】
<耐温水性>
上記のように作製した塗板を80℃の温水中に3時間浸漬した後の塗膜外観を、浸漬中及び塗膜乾燥後において、以下のように目視判定した。
◎…浸漬中及び塗膜乾燥後、共に変化なし
○…浸漬中軽微な白化はあるが、塗膜乾燥後では変化なし
△…浸漬中での白化がひどく、塗膜乾燥後では光沢低下、白化等の軽微な変化あり
×…浸漬中での白化がひどく、塗膜乾燥後では光沢低下、白化等の変化大
【0053】
<耐汚染性>
塗板上にカーボンブラック分散液(ターペン溶液)をスポイトで数滴滴下して流し塗りした後、水の霧吹きでそれを洗い流し、その除染性を以下のように目視判定した。
◎…完全除去
○…極く軽微な汚染
△…少し汚染
×…汚染著しい
【0054】
<耐雨筋汚染性>
水平面に対して10度に傾斜し、かつ、長さ30cmで深さ3mmの溝が3mmピッチで刻まれた屋根を有する架台上に、上記の各塗板を、降雨が塗膜表面に筋状に流れ落ちるように南向きに垂直に取り付け、その状態で12ヶ月間暴露した後、塗膜外観を試験前の塗膜と比較し、塗膜表面の汚染状態を、以下のように目視判定した。
◎…汚れはなく、雨筋も確認されない
○…わずかな汚れはあるが、雨筋は確認されない
△…局所的な汚れがあり、雨筋が薄く確認される
×…全面にかなりの汚れがあり、雨筋がはっきりと確認される
【0055】
<耐候性>
サンシャインウェザー−オーメーターにより5000時間行い、その耐候性を以下のように判定した。
○…塗膜外観に変化はなく、光沢保持率95%以上
△…塗膜外観の変化が軽微にあり、光沢保持率80%以上95%未満
×…塗膜外観の変化が著しく、光沢保持率80%未満
【0056】
<耐凍害性>
ASTM−C666A法(凍結−融解サイクル)により、100サイクルの耐凍害性を実施し、以下のように目視判定した。
○…塗膜にクラックの発生なし
△…極く軽微なクラックの発生
×…クラックの発生又は塗膜の部分剥離
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
1)水分散コロイダルシリカA(日産化学工業(株)製、スノーテックス−O、固形分20%、pH3.8、平均粒子径10〜20nm、形状:球状、Naを除去した酸性タイプ)
2)水分散コロイダルシリカB(日産化学工業(株)製、スノーテックス−C、固形分20%、pH9.0、平均粒子径10〜20nm、形状:球状)
3)水分散コロイダルシリカC(日産化学工業(株)製、スノーテックス−PS−SO、固形分20%、pH3.0、平均粒子径80〜120nm、形状:パールネックレス状)
4)水分散コロイダルシリカD(日産化学工業(株)製、スノーテックス−OUP、固形分15%、pH3.8、平均粒子径40〜100nm、形状:鎖状、Naを除去した酸性タイプ)
5)水分散コロイダルシリカE(日産化学工業(株)製、スノーテックス−UP、固形分20%、pH10.0、平均粒子径40〜100nm、形状:鎖状)
6)イソプロパノール分散コロイダルシリカF(日産化学工業(株)製、IPA−ST、固形分30%、pH3.2、平均粒子径10〜20nm、形状:球状)
7)ノニオン系界面活性剤A(TEGO社製、ポリフローKL−510、固形分100%、成分:ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル)
8)ノニオン系界面活性剤B(サンノプコ(株)製、SN984、固形分100%、成分:ポリエーテル系化合物)
9)ノニオン系界面活性剤C(サンノプコ(株)製、SN366、固形分100%、成分:ポリオキシエチレン脂肪酸エステル)
10)ノニオン系界面活性剤D(第一工業製薬(株)、ニューコール1004、固形分100%、成分:ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル)
11)ノニオン系界面活性剤E(第一工業製薬(株)、DMH−40、固形分100%、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
12)ノニオン系界面活性剤F(第一工業製薬(株)、ネオノイゲン140A、固形分100%、成分:ポリオキシエチレン−アルキルフェニルエーテル)
13)ノニオン系界面活性剤G(株式会社ADEKA製、プルロニックL−44、固形分100%、成分:プロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロックポリマー)
14)カチオン系界面活性剤H(ライオン(株)製、サンノール LMT−1430、固形分27%、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)
15)アニオン系界面活性剤I(株式会社ADEKA製、アデカコール EC−8600、固形分70%、成分:ジオクチルスルホコハク酸エステル塩)
16)アニオン系界面活性剤J(サンノプコ(株)製、ウェット50、固形分100%、成分:アルキルスルホコハク酸ナトリウム)
17)アニオン系界面活性剤K(第一工業製薬(株)製、プライサーフA219B、固形分100%、成分:ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル)
【0060】
<評価結果>
表1〜表2より明らかな通り、本発明の防汚塗料組成物を使用した実施例1〜11は、優れた塗膜性能を有していた。一方、比較例1〜3のノニオン系界面活性剤を1種類しか使用しない塗料では、耐温水性、耐汚染性及び耐雨筋汚染性が悪かった。比較例4の有機系溶剤のエタノールを含有する塗料では、塗膜外観、耐温水性、耐候性及び耐凍害性が非常に悪かった。また、比較例5のノニオン系界面活性剤を使用しない塗料では、塗膜外観及び耐汚染性が非常に悪かった。また、比較例6のノニオン系界面活性剤を2種類含有していても有機系溶剤のエタノールを含有する塗料では、塗膜外観、耐雨筋汚染性及び耐凍害性が非常に悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)水分散コロイダルシリカ(固形分換算)0.1〜10.0質量%と、
(b)2種類以上のノニオン系界面活性剤(固形分換算)0.01〜1.0質量%と、
(c)水89〜99質量%と
を主成分として含有し、有機系溶剤を含有しないことを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項2】
上記(b)ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシアルキレンモノアルキルエーテルを含有する請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
表面張力が、25〜40dyn/cm(25℃)である請求項1又は2に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
上記(a)成分、水分散コロイダルシリカの形状が鎖状のコロイダルシリカである請求項1〜3のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
上記(a)成分、水分散コロイダルシリカがNaを除去した酸性タイプである請求項1〜4のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
150℃、30分間の加熱残分が、0.1〜10.0質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
上記(b)ノニオン系界面活性剤として、更にプロピレンオキサイド・エチレンオキサイドブロックポリマーを含有する請求項1〜6のいずれかに記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の防汚塗料組成物を、基材又は下塗塗膜上に塗布・乾燥し、防汚塗膜を形成することを特徴とする防汚塗膜の形成方法。
【請求項9】
上記防汚塗膜上の水に対する接触角が、1°〜30°である請求項8に記載の防汚塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2011−213810(P2011−213810A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81736(P2010−81736)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【特許番号】特許第4641563号(P4641563)
【特許公報発行日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003322)大日本塗料株式会社 (275)
【Fターム(参考)】