説明

防汚塗料組成物

新規の防汚塗料組成物が提供される。防汚塗料組成物は、5〜20重量%の樹脂と、3〜30重量%の溶剤と、0.05〜20重量%の下記化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と、1〜50重量%の顔料と、22〜75重量%の亜酸化銅及び/または0.05〜20重量%の下記化学式2のジンクピリチオンと、を含む。
〔化学式1〕
〔化学式2〕
前記化学式1において、Xの少なくとも一つは無機酸塩または有機酸塩であり、Rは、アルキル基であるか、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチル基または水素であり、nは1以上の定数である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚塗料組成物に関し、より詳しくは、海洋環境汚染を誘発する有機スズ化合物を含まないで、ポリヘキサメチレングアニジン塩とジンクピリチオン及び/または亜酸化銅(CuO)を含有する新規の防汚塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
海中には、ムラサキイガイ、ウノアシガイ、苔、珪藻類、カキ、アコヤガイ、海綿動物、サザエ、巻き貝、緑青海藻類、ホヤなどの数多い海洋生物が棲息しており、これら海洋生物が海底施設、船舶、救命ベルト、港施設、養殖網、漁獲網などに付着寄生して水中建造物に被害を発生させる。特に、海洋生物が船舶の底面に付着すれば、船体表面が荒れてよく補修作業しなければならない。即ち、船体表面が0.01mmずつ荒れる度に船体の燃料消耗は0.3〜1.0%ずつ増加する。これは、大型船舶の場合、船舶運営費のほとんど50%が燃料費であるので非常に深刻な問題を発生させる。
【0003】
水中建造物についてのファウリング(fouling)を防止するために、従来には塩化ビニル樹脂あるいはビニル樹脂に、ロジン、可塑剤及び防汚剤を混合した防汚塗料組成物を使用して来た。しかし、従来の防汚塗料組成物は、防汚剤として水銀、有機スズ化合物を含むので海水汚染を誘発する。他の防汚塗料組成物として、米国特許第4,191,579号公報及び英国特許第1,457,590号公報には、トリブチルスズオキシドのような有機スズ化合物がアクリル酸あるいはメタクリル酸のような不飽和単量体に結合してこれらの間にエステル結合を形成する自己研磨性防汚塗料組成物を開示している。エステル結合により前記防汚塗料組成物は海水中でゆっくり加水分解され、有機スズ化合物が前記防汚塗料組成物から除除に離脱される。有機スズ化合物の離脱により生成されるカルボニル基が塩を形成されて防汚塗料組成物を水溶性にし、及び膨潤させる。これによって、防汚塗料の表面ははげて新しい表層が突き出される。このような防汚塗料組成物は、水中建造物のファウリング用として一番よく使用される。しかし、防汚塗料から連続的に溶出される有機スズ化合物は非特異的毒性を保有するので、これが海洋汚染を発生させるだけではなく生態系を破壊する。したがって、海洋生物及び微生物により発生した海水汚染の防止効果が卓越で、環境衛生学的側面で問題点を持たない新規の防汚塗料組成物の開発が要求されている。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、人体及び海洋環境に被害を与えないと共に汚染を発生させる生物に対する卓越な防汚力を有した防汚塗料組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、魚網、船舶、海底施設などのような水中建造物の汚染防止に有用であり、海洋汚染を誘発させる水銀あるいは有機スズ化合物を含まない防汚塗料組成物を提供することにある。
【0005】
前記目的を達成するための本発明は、5〜20重量%の樹脂と、3〜30重量%の溶剤と、0.05〜20重量%の下記化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と、1〜50重量%の顔料と、22〜75重量%の亜酸化銅(CuO)及び/または0.05〜20重量%の下記化学式2のジンクピリチオンと、を含む防汚塗料組成物。
【0006】
《化学式1》
【化1】

《化学式2》
【化2】

【0007】
前記化学式1において、Xは、同一または相異なってもよく、そして、Xの少なくとも一つは無機酸塩または有機酸塩であり、Rは、同一または相異なってもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖または側鎖のアルキル基であるか、フェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、ベンジル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、ヨードベンジル基、フェネチル基、ナフチル基、または水素であり、nは1以上の定数である。
【0008】
好ましくは、前記Xは同一か相異なってもよい、前記Xの少なくとも一つは、HCl、HBr、HI、HNO、炭酸、硫酸、リン酸、酢酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、ソルビン酸、フマル酸、マレイン酸及びエピクロロヒドリンよりなる群から選択される。
好ましくは、前記溶剤は、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの混合物であり、前記顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄及びこれらの混合物である。
より好ましくは、前記防汚塗料組成物は、全体塗料組成物を基礎として1〜5重量%のゲル化剤をさらに含む。
【発明の詳細な説明】
【0009】
以下の詳細な記載を参照して本発明による好ましい実施の形態について詳しく説明する。
【0010】
本発明による防汚塗料組成物は、環境衛生学的に好ましく、下記化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と下記化学式2のジンクピリチオン及び/または亜酸化銅(CuO)を含む。
《化学式1》
【化3】

《化学式2》
【化4】

【0011】
化学式1において、Xは、同一または相異なってもよい、そして、Xの少なくとも一つは無機酸塩または有機酸塩である。好ましくは、Xの少なくとも一つは、HCl、HBr、HI、HNO、炭酸、硫酸、リン酸、酢酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、ソルビン酸、フマル酸、マレイン酸及びエピクロロヒドリンである。Rは、同一または相異なってもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖または側鎖のアルキル基であるか、フェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、ベンジル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、ヨードベンジル基、フェネチル基、ナフチル基または水素であり、nは1以上の定数である。
【0012】
塗料組成物の他の成分と均質に混合されるなどの取り扱いの容易性、塩の製造における容易性、塩の防汚性の持続期間などを考慮すれば、ポリヘキサメチレングアニジン塩は、500〜20,000の分子量を有することが好ましい。より好ましくは、800〜10,000、一番好ましくは、900〜5,000の分子量を有する。化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩は、通常的な高分子重合法により製造でき、例えば、グアニジン塩とジアミン基を有したモノマーを約180℃の温度で縮重合反応して得ることができる。化学式1の防汚剤、即ち、ポリヘキサメチレングアニジン塩は水に容易に溶解され、静電気引力により汚染を誘発する生物の細胞膜に近付いて、ホスファチジルグリセロールなどのようなホスホリピドに結合する。次に、前記塩は、膜構造撹乱により細胞膜を分解することにより水中建造物上に生物が付着することを防止する。
【0013】
亜酸化銅(CuO)は、塗料表面から銅イオンまたは銅塩の形態で溶出され、細胞内にアミノ酸または酵素とキレート化合物を形成して細胞の元形質を凝固させる。その結果として、亜酸化銅は、付着性海洋動植物の繁殖を中止させることにより海洋動植物により誘発された汚染を減少させる。したがって、本発明による好ましい防汚塗料組成物は、微生物についての卓越な防汚特性を有するポリヘキサメチレングアニジン塩と海洋動植物についての卓越な防汚特性を有する亜酸化銅を全部含み、汚染を誘発する各種生物に対して幅広く効果的な汚染防止効果がある。化学式2の防汚剤、即ち、ジンクピリチオンは、分子量が317.7であり、極性溶媒や非極性溶媒に極めて少量が溶解される性質があるので塗料表面から除除に溶出される。溶出されたジンクピリチオンは、生物の酵素、特に金属イオンを含んだ酵素と錯塩を形成して酵素の活性を阻害し、最終的にスライム類などの微生物の生育を抑制する。
【0014】
本発明による防汚塗料組成物は、5〜20重量%の樹脂と、3〜30重量%の溶剤と、0.05〜20重量%の化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と、1〜50重量%の顔料と、22〜75重量%の亜酸化銅(CuO)及び/または0.05〜20重量%の化学式2のジンクピリチオンと、を含み、必要によって、1〜5重量%のゲル化剤をさらに含むことができる。本発明による防汚塗料組成物が亜酸化銅(CuO)を含む場合、塗料組成物は、好ましくは、5〜20重量%の樹脂と、3〜25重量%の溶剤と、1〜15重量%の化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と、22〜75重量%の亜酸化銅(CuO)と、1〜19重量%の顔料と、を含む。また、本発明による防汚塗料組成物がジンクピリチオンを含む場合、塗料組成物は、好ましくは、10〜15重量%の樹脂と、20〜30重量%の溶剤と、5〜20重量%の化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩及び化学式2のジンクピリチオンの混合防汚剤と、40〜50重量%の顔料と、を含む。この場合において、ジンクピリチオンの含量は、重量が前記ポリヘキサメチレングアニジン塩の0.01〜100倍である。
【0015】
本発明の組成物用樹脂としては、通常的な防汚塗料組成物に使用される樹脂が制限なく使用できる。本発明において使用できる樹脂には、例えば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル系樹脂と、ウレタン樹脂、塩化ゴム樹脂、フタル酸樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂及びシリコーン樹脂などの合成樹脂と、ロジンなどの天然樹脂がある。さらに、合成または天然樹脂とともに各種水溶性樹脂または脂溶性樹脂が使用できる。樹脂の好ましい量は、塗料全体組成を基礎として5〜20重量%である。樹脂の量が5重量%未満である場合には、防汚塗料組成物の付着性が不良になる。また、樹脂の量が20重量%を超過する場合には、防汚塗料組成物の保存安定性が低下される。
【0016】
本発明の防汚塗料組成物に使用できる溶剤は、塗料組成物の各成分を溶解して分散させることができる各種溶剤を含む。溶剤の例としては、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのような炭化水素系またはケトン類溶剤、そしてこれらの混合物がある。溶剤の好ましい量は、塗料組成物全体に基礎して3〜30重量%である。溶剤の量が3重量%未満である場合には、塗料組成物の粘度が高過ぎるようになる。溶剤の量が30重量%を超過する場合には、塗料組成物の付着性及び防汚性が低下される。
【0017】
化学式1の防汚剤の量は、全体塗料組成物に対して0.05〜20重量%、好ましくは、5〜20重量%、より好ましくは、5〜15重量%であり、亜酸化銅(CuO)の好ましい量は、22〜75重量%である。化学式1の防汚剤及び亜酸化銅の量が有効濃度未満であるか化学式1の防汚剤及び亜酸化銅の中で一つだけが使用される場合には、組成物の防汚性能が低下される。化学式1の防汚剤及び亜酸化銅の量が有効濃度を超過する場合には、塗料組成物の物性及び保存安定性が低下される。
【0018】
化学式2のジンクピリチオンを使用する場合、ポリヘキサメチレングアニジン塩及びジンクピリチオンの混合組成物の好ましい量は、全体塗料組成物に対して5〜20重量%である。混合組成物の量が5重量%未満である場合には、混合組成物の防汚性能が低下されて生物が水中建造物上に付着して汚染を誘発できる。混合組成物の量が20重量%を超過する場合には、塗料組成物の物性及び保存安定性が低下される。ジンクピリチオンの含量は塗料全体組成に対して0.05〜20重量%、好ましくは、5〜19重量%、より好ましくは、5〜15重量%であり、ポリヘキサメチレングアニジン塩に対して重量が、0.01〜100倍の範囲、より好ましくは、0.05〜50倍、一番好ましくは、0.1〜10倍の範囲にある。ジンクピリチオンの含量が上述した範囲を脱すれば要求する防汚効率は獲得できない。
【0019】
本発明の防汚塗料組成物用顔料としては、従来の顔料が制限なしに使用できる。顔料の例には、金属酸化物顔料、有機顔料及びこれらの混合物を含む。金属酸化物顔料には、酸化チタン、酸化鉄及び酸化亜鉛を含む。顔料の好ましい量は、塗料全体組成に対して1〜50重量%である。顔料の量が1重量%未満である場合には、塗料組成物が変色できる。顔料の量が50重量%を超過する場合には、耐候性(weather proof property)が悪くなる。
【0020】
本発明による防汚塗料組成物は、公知された多様な添加剤を含むことができる。このような添加剤の一例には、ポリアミドワックス、ベントナイト、ポリエチレンワックスなどのようなゲル化剤である。ゲル化剤の好ましい量は、塗料全体組成に対して1〜5重量%である。ゲル化剤の量が1重量%未満である場合には、塗料組成物の塗装が効果的に実行できない。ゲル化剤の量が5重量%を超過する場合には、塗料組成物の粘度が高すぎるようになる。
【0021】
本発明の防汚塗料組成物は、その自体で十分で広範囲な抗菌、防かび及び防藻特性を有している。しかし、必要によって本発明の防汚塗料組成物は、従来の抗菌、防かびまたは防藻剤を含む。従来の抗菌、防かびまたは防藻剤の例には、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−トリアジン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスホニル)ピリジン、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、テトラクロロイソフタロニトリル、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N−p−トリルスルファミド、アルファ−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−アルファ−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール、N,N−ジメチル−N'−フェニル−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、ジンク(2−ピリジルチオ−1−オキシド)、銅(2−ピリジルチオ−1−オキシド)、銀系化合物及びこれらの混合物を含む。
【0022】
本発明の防汚塗料組成物は、通常の塗料製造方法により製造できる。例えば、樹脂をキシレンと少しのケトン化合物により完全に溶解させる。次に、ここに顔料を添加してサンドミルを利用して分散させる。次に、分散された混合物に防汚剤と添加剤を添加して高速ディソルバーを利用して撹拌する。混合物の撹拌後に、残っている溶剤を添加して撹拌することにより本発明の防汚塗料組成物を製造する。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施例について説明する。なお、下記実施例は、本発明を説明するものであって、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
《実施例1》
ビニル樹脂12重量%とロジン2重量%をキシレン3重量%とメチルイソブチルケトン3重量%を含む混合溶剤に完全に溶解させた。次に、ここに13重量%の酸化亜鉛を入れてサンドミルを利用して2回分散させた。分散された混合物に、化学式1の防汚剤(X=HPO, R=H、n=3、MW=1020であるポリヘキサメチレングアニジン塩)7重量%と亜酸化銅50重量%、ゲル化剤であるポリアミドワックス3重量%を添加して高速ディソルバーを利用して1500rpmで30分間撹拌した。最後に、残っているメチルイソブチルケトン7重量%を添加して撹拌することにより、下記表1に示された防汚塗料組成物を製造した。
【0025】
【表1】

【0026】
《実施例2》
化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩を14重量%、亜酸化銅を43重量%で使用したことの以外は、実施例1と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0027】
《比較例1》
ポリヘキサメチレングアニジン塩を使用しないで亜酸化銅を57重量%で使用したことの以外は、実施例1と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0028】
《比較例2》
ポリヘキサメチレングアニジン塩を36重量%、亜酸化銅を21重量%で使用したことの以外は、実施例1と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0029】
《比較例3》
ポリヘキサメチレングアニジン塩及び亜酸化銅を使わないことの以外は、実施例1と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0030】
《比較例4》
トリブチルスズメタクリレート15重量部、メチルメタアクリレート35重量部及びキシレン40重量部に、アゾビスイソブチロニトリル0.5重量部及びキシレン10重量部の混合液を加え、80℃で3時間処理して重合体を得た。次に、得られた重合体100重量部に、滑石10重量部、硫酸バリウム5重量部、トリブチルスズフルオライド10重量部、亜酸化銅20重量部及びキシレン40重量部を加えて、高速ディソルバーを利用して2500rpmで3時間分散させて防汚塗料組成物を製造した。
【0031】
《実施例3》
ビニル樹脂とロジンをキシレンとメチルイソブチルケトンを含む混合溶剤に完全に溶解させた後、ここに酸化亜鉛と酸化鉄を入れてサンドミルを利用して2回分散させた。分散された混合物に、化学式1の防汚剤(X=HPO,R=H、n=3、MW=1020であるポリヘキサメチレングアニジン塩)7.5重量%と、化学式2の防汚剤7.5重量%を含有した混合防汚剤(ポリヘキサメチレングアニジン塩:ジンクピリチオン=5:5)とゲル化剤を添加して高速ディソルバーを利用して1500rpmで30分間撹拌した。最後に、残っているケトン類溶媒を添加して撹拌することにより、下記表2に示された防汚塗料組成物を製造した。
【0032】
【表2】

【0033】
《実施例4》
化学式1の防汚剤4.5重量%と化学式2の防汚剤10.5重量%を含有した混合防汚剤(ポリヘキサメチレングアニジン塩:ジンクピリチオン混合比=3:7)を使用したことの以外は、実施例3と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0034】
《実施例5》
化学式1の防汚剤10.5重量%と化学式2の防汚剤4.5重量%を含有した混合防汚剤(ポリヘキサメチレングアニジン塩:ジンクピリチオン混合比=7:3)を使用したことの以外は、実施例3と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0035】
《比較例5》
化学式2の防汚剤を使わないで、化学式1の防汚剤15重量%を使用したことの以外は、実施例3と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0036】
《比較例6》
化学式1の防汚剤を使わないで、化学式2の防汚剤15重量%を使用したことの以外は、実施例3と同一の方法により防汚塗料組成物を製造した。
【0037】
《比較例7》
塩化ビニル樹脂12重量部、赤色酸化鉄5重量部、酸化チタン10重量部、酸化亜鉛10重量部及び亜酸化銅40重量部を高速ディソルバーを利用して2500rpmで1時間分散させた後、サンドミルを通過させて粒度が40μm未満になるようにミリングした。キシレン40重量部、メチルイソブチルケトン30重量部、ロジン8重量部及びトリクレシルホスフェート5重量部を投入したタンクに上記分散物を添加して高速ディソルバーを利用して1500rpmで30分間撹拌させて防汚塗料組成物を製造した。
【0038】
《実験例》
各々の実施例及び比較例により製造された防汚塗料組成物の防汚性能は、次のような方法により測定した。横×縦×厚さが300×300×3.2mmであるKSD3501の韓国工業標準による圧延鋼板をKSM5569方法によってサンドブライト処理し、タールビニル樹脂により防錆塗装した。次に、実施例及び比較例の防汚塗料組成物をコーティングされた層の乾燥厚さが150μmになるように2回にわたって鋼板上にスプレー塗装した。各防汚塗料組成物に対して3個の試片を製造した。相対湿度75%、25℃で1週間試片を乾燥させた後、試片を大韓民国統營市巨濟島沖の1m海底に沈積させた。12ヶ月後に防汚性質を測定した。試片の上端から70mm下げた線、試片の下端から30mm上がった線及び試片の各側端20mm内側の線により限定される有効面積52,000mm2内の汚染面積3個の算術平均値を計算した。その結果を、表3及び表4に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
【表4】

【0041】
表3から、化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩及び亜酸化銅を含む実施例1と実施例2による防汚塗料組成物は、水銀または有機スズを含み、自己研磨型である従来の防汚剤を含んだ比較例4の場合より優秀な防汚性能を有することがわかる。また、防汚剤を単独で含むか22重量%以下の亜酸化銅含量を含む比較例1と比較例2による防汚塗料組成物は、不十分な防汚性能を有する。表4に示されたように、化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と化学式2のジンクピリチオンを含む防汚塗料組成物は、ポリヘキサメチレングアニジン塩またはジンクピリチオンだけを単独で含有した防汚組成物、または水銀、有機スズを使用する防汚塗料組成物より防汚性能が同等以上である。また、化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩及び化学式2のジンクピリチオンは海洋環境及び人体に全然無害であり、海洋汚染を誘発する有機スズや水銀化合物の代替品として非常に適合である。したがって、本発明による防汚塗料組成物は、魚網、船舶、海底構造物などの水中建造物の汚染防止に有用である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜20重量%の樹脂と、3〜30重量%の溶剤と、0.05〜20重量%の下記化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と、1〜50重量%の顔料と、22〜75重量%の亜酸化銅及び/または0.05〜20重量%の下記化学式2のジンクピリチオンと、を含むことを特徴とする防汚塗料組成物。
《化学式1》
【化1】

《化学式2》
【化2】

前記化学式1において、Xは、同一または相異なってもよく、そして、Xの少なくとも一つは無機酸塩または有機酸塩であり、Rは、同一または相異なってもよい、1〜20の炭素原子を有する直鎖または側鎖のアルキル基であるか、フェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、ベンジル基、クロロベンジル基、ブロモベンジル基、ヨードベンジル基、フェネチル基、ナフチル基または水素であり、nは1以上の定数である。
【請求項2】
5〜20重量%の樹脂と、3〜25重量%の溶剤と、1〜15重量%の前記化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩と、22〜75重量%の亜酸化銅と、1〜19重量%の顔料と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項3】
10〜15重量%の樹脂と、20〜30重量%の溶剤と、全体5〜20重量%の化学式1のポリヘキサメチレングアニジン塩及び化学式2のジンクピリチオンの混合防汚剤と、40〜50重量%の顔料と、を含み、
前記ジンクピリチオンの含量は、質量比が前記ポリヘキサメチレングアニジン塩の0.01〜100倍であることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項4】
前記Xは同一か相異なってもよい、前記Xの少なくとも一つは、HCl、HBr、HI、HNO、炭酸、硫酸、リン酸、酢酸、安息香酸,デヒドロ酢酸、プロピオン酸、グルコン酸、ソルビン酸、フマル酸、マレイン酸及びエピクロロヒドリンよりなる群から選択される物質であることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項5】
前記ポリヘキサメチレングアニジン塩の分子量は、500〜20000であることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項6】
前記溶剤は、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項7】
前記顔料は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄及びこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項8】
全体塗料組成物を基礎として1〜5重量%のゲル化剤をさらに含むことを特徴とする請求項1に防汚塗料組成物。
【請求項9】
前記樹脂は、ビニル系樹脂、ウレタン樹脂、塩化ゴム系樹脂、フタル酸樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ロジン及びこれらの混合物よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。
【請求項10】
3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメート、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−S−トリアジン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスホニル)ピリジン、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、テトラクロロイソフタロニトリル、N−(フルオロジクロロメチルチオ)−フタルイミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N−p−トリルスルファミド、アルファ−[2−(4−クロロフェニル)エチル]−アルファ−(1,1−ジメチルエチル)−1H−1,2,4−トリアゾール−1−エタノール、N,N−ジメチル−N'−フェニル−(フルオロジクロロメチルチオ)−スルファミド、ジンク(2−ピリジルチオ−1−オキシド)、銅(2−ピリジルチオ−1−オキシド)、銀系化合物及びこれらの混合物よりなる群から選択された化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の防汚塗料組成物。

【公表番号】特表2006−503953(P2006−503953A)
【公表日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546539(P2004−546539)
【出願日】平成15年10月23日(2003.10.23)
【国際出願番号】PCT/KR2003/002243
【国際公開番号】WO2004/037933
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(500116041)エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド (49)
【Fターム(参考)】