説明

防汚塗料組成物

【課題】 劣化しない防汚塗料組成物の提供。
【解決手段】 一般式(I):
【化1】


[式中、
、R、R、R、Rは、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはハロゲン基を表すが、これらは場合によりアルキル、アラルキル、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
は、水素、アルキル基または−COOR(ここで、Rはアルキル基を表す)を表し、
は、水素、アルキル基または−CH−CO−(SiRO)−SiRを表し、そして
nは3から12を表す]
で表されるポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体またはその重合体を含んでなる防汚塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体(polyorganosilylated carboxylate monmers)または重合体に関する。本発明は、更に、それらを加水分解性重合体、例えば現代の防汚コーティング(antifouling coating)用の結合剤(binders)などの合成で用いることにも関する。
【背景技術】
【0002】
いろいろな海洋有機体、例えば貝、海草および水棲細菌などが原因で起こる水面下の構造物(例えば船底、ドック、漁網およびブイ)の汚れを防止しかつ遅らせる目的で一般に防汚ペイントが用いられる。そのような水棲有機体が船底のような水面下構造物に付着して増殖すると、船全体の表面の粗さが増すことで船の速度低下が誘発される結果として燃料の消費が増える。そのような水棲有機体を船底から除去するには多大な労力と長い作業時間を要する。加うるに、そのような水棲有機体が水面下の構造物、例えば鋼製構造物などに付着して増殖すると、それらはそれらの防食コーティング膜を劣化させ、その結果として、水面下の構造物の寿命が短くなってしまう。
【0003】
従って、好適には、水面下の構造物をいろいろな加水分解性基、より具体的にはオルガノシリル基を含有する重合体が用いられている防汚ペイントで塗装しておく。防汚ペイントはいくつか公知である。
【0004】
例えば、特許文献1は、オルガノシリル基および/またはオルガノポリシロキサン基を側鎖に有する重合体を含有する防汚ペイントに関する。そのオルガノポリシロキサン基はシリコンオイルとメタアクリル酸の脱水縮合を起こさせることなどの手段で誘導された基であることから、特許文献1は、オルガノシロキサン基の異なる繰り返しの数を有するオリゴマーの混合物に関する。
【0005】
トリオルガノシリル基を側鎖に有するメタアクリル酸エステル重合体または同様な重合体が用いられている加水分解性で自浄(self−polishing)型の防汚ペイントが特許文献2および3に記述されている。オルガノシリルアクリレート重合体を防汚組成物で用いることに関する他の例は特許文献4、5、6、7、8、9、10、11、12および13(引用することによって本明細書に組み入れられる)である。
【0006】
上述した防汚ペイントで用いられている重合体はシリル化カルボキシレート単量体が基になっている。
【0007】
前記シリル化カルボキシレート単量体を合成する通常の技術としていくつかの方法が公知である。
【0008】
例えば、メタアクリル系官能基を含有する有機ケイ素化合物を得る方法が特許文献14に記述されている。その方法は、メタアクリル酸とハロゲノアルキルシラン、例えばトリアルキルシリルクロライドなどを環状構造を有する第三級アミン化合物の存在下で反応させることを含んで成る。そのような方法はシリルクロライドの入手性および貯蔵安定性が低いなどの如き欠点を有する。その上、その反応では副生成物としてハロゲン化水素(これは生産装置の腐食を招く)またはハロゲン化物塩(これは濾過で除去する必要がある)が生じる。
【0009】
メタアクリル酸トリメチルシリルをメタアクリル酸と塩化トリメチルシリルから合成することが非特許文献1に開示されている。メタアクリル酸トリメチルシリルをメタアクリル酸とヘキサメチルジシラザンから合成することが非特許文献2に記述されている。そのような方法はアンモニアが生じると言った欠点を有する。
【0010】
不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸またはメタアクリル酸などとトリアルキルシリルハイドライド化合物を銅触媒の存在下で反応させることが特許文献15に開示されている。そのような方法の欠点の1つは、生じたHが炭素−炭素二重結合に対して起こす副反応によって前記不飽和カルボン酸が水添される危険性である。
【0011】
1−アシルオキシオルガノテトラシロキサンをヘキサメチルシクロトリシロキサンとアシルオキシシランの反応で得ることが特許文献16に記述されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】EP 0 297 505
【特許文献2】WO 84/02915
【特許文献3】JP 63215780
【特許文献4】EP 1 127 902
【特許文献5】EP 1 127 925
【特許文献6】JP 63118381
【特許文献7】WO 96/38508
【特許文献8】EP 0 802 243
【特許文献9】EP 0 714 957
【特許文献10】JP 07018216
【特許文献11】JP 01132668
【特許文献12】JP 01146969
【特許文献13】米国特許第4,957,989号
【特許文献14】JP 5306290
【特許文献15】JP 10195084
【特許文献16】米国特許第6,063,887号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Fedotov他、Zh.Prikl.Khim.(1971)、44(3)、695
【非特許文献2】A.Champman & A.D.Jenkins、J.Polym.Sci.Polym.Chem.Edn.、15巻、3075頁(1977)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の1つの目的は、新規なポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体もしくはその重合体を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、処理が容易な手順を用いて合成されるそのようなポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体もしくはその重合体を提供することにある。
【0016】
本発明のさらなる目的は、この上に開示した欠点に対する改良をもたらす新規な重合体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(発明の要約)
本発明は、一般式(I)で表されるポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体またはこれの重合体に関し、これは式(RSiO)で表されるシクロシロキサンと式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレートまたはこれの共重合体もしくは重合体を適切な触媒の存在下で反応させることにより得られる。
【0018】
【化1】

【0019】
ここで、R、R、R、R、Rは、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはハロゲン基を表すが、これらは場合によりアルキル、アラルキル、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基を包含する群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、Rは、水素、アルキル基または−CH−CO−SiRを表し、Rは、水素、アルキル基または−COOR(ここで、Rはアルキル基を表す)を表し、Rは、水素、アルキル基または−CH−CO−(SiRO)−SiRを表し、そしてnは、ジヒドロカルビルシロキサン単位の数3から12を表す。
【0020】
本発明の1つの態様に従い、R、R、R、R、R、RおよびRを各々独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを包含する群から選択する。好適には、R、R、R、R、R、RおよびRはメチルである。
【0021】
nは、好適には3から8、より好適には3から6を表す。好適な態様におけるnは3である。
【0022】
驚くべきことに、不飽和オルガノシリル化カルボキシレートはあまり反応しない化合物でありかつ容易には重合しないことが知られていたにも拘らずシクロシロキサンを不飽和オルガノシリル化カルボキシレート単量体、これの重合体または共重合体と反応させることでポリオルガノシリル化カルボキシレートを合成することができることを見いだした。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、一般式(I)で表されるポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体またはこれの重合体に関し、本方法では、式(RSiO)で表されるシクロシロキサンと式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレートまたはこれの共重合体もしくは重合体を適切な触媒の存在下で反応させ、
【0024】
【化2】

【0025】
ここで、R、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、この上で定義
した意味と同じ意味を有する。
【0026】
本発明は、所望数のジヒドロカルビルシリルオキサン単位を正確な数で有するポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体または重合体を生じさせることができると言った利点を有する。
【0027】
本発明は特殊なテロメル化を用いることを特徴とする。驚くべきことに、あまり反応しない化合物でありかつ容易には重合しないことが知られている不飽和オルガノシリル化カルボキシレートを用いてシクロシロキサンのテロメル化を実施することができることを見いだした。
【0028】
用語「テロメル化」を本明細書で用いる場合、これは、異なる化合物(テロゲン)の基で各末端が停止していて限定された単位数の鎖で構成されている低分子量単量体をもたらす方法を指す。Oxford English Dictionary、第2版、Clarendon、Oxford、1989を参照。このテロメル化反応は、結果として生じるテロマー分子の末端基と内部結合のそれぞれをもたらす2種類の物質の間で起こる重合反応として進行する。
【0029】
用語「重合体」を本明細書で用いる場合、これは重合反応の生成物を指し、これには単独重合体、共重合体、ターポリマーなどが含まれる。
【0030】
用語「共重合体」を本明細書で用いる場合、これは異なる少なくとも2種類の単量体の重合反応で生じた重合体を指す。
【0031】
用語「独立して選択」を本明細書で用いる場合、これはそのように記述した各基Rが同一または異なってもよいことを示す。例えば、式(I)で表される化合物に関する各Rはnの各値毎に異なってもよい。
【0032】
用語「アルキル」を本明細書で用いる場合、これは直鎖、分枝もしくは環状部分またはこれらの組み合わせを有する飽和炭化水素基に関し、これは炭素原子を1から20、好適には炭素原子を1から10、より好適には炭素原子を1から8、更により好適には炭素原子を1から6、更により好適には炭素原子を1から4個含有する。そのような基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、2−メチルブチル、ペンチル、イソ−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、3−メチルペンチル、オクチルなどが含まれる。
【0033】
用語「アルケニル」を本明細書で用いる場合、これは直鎖、分枝もしくは環状部分またはこれらの組み合わせを有していて二重結合を1個または数個有する炭化水素基に関し、これは炭素原子を2から18、好適には炭素原子を2から10、より好適には炭素原子を2から8、更により好適には炭素原子を2から6、更により好適には炭素原子を2から4個含有する。アルケニル基の例には、ビニル、アリル、イソプロペニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、1−プロペニル、2−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、イソプレニル、ファルネシル、ゲラニル、ゲラニルゲラニルなどが含まれる。
【0034】
用語「アルキニル」を本明細書で用いる場合、これは直鎖、分枝もしくは環状部分またはこれらの組み合わせを有していて三重結合を1個または数個有する炭化水素基に関し、これは炭素原子を2から18、好適には炭素原子を2から10、より好適には炭素原子を2から8、更により好適には炭素原子を2から6、更により好適には炭素原子を2から4個含有する。アルキニル基の例には、エチニル、プロピニル、(プロパルギル)、ブチニ
ル、ペンチニル、ヘキシニルなどが含まれる。
【0035】
用語「アリール」を本明細書で用いる場合、これは芳香炭化水素から水素が1個取り除かれることで生じた有機基に関し、これには各環中の員数が7以下の単環状もしくは二環状炭素環のいずれも含まれるが、少なくとも1個の環は芳香環である。前記基は場合によりアルキル、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシまたはアミノ基から独立して選択される1個以上の基で置換されていてもよい。アリールの例には、フェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(t−ブトキシ)フェニル、3−メチル−4−メトキシフェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、3−ニトロフェニル、3−アミノフェニル、3−アセトアミドフェニル、4−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アセトアミドフェニル、2−メチル−3−アミノフェニル、3−メチル−4−アミノフェニル、2−アミノ−3−メチルフェニル、2,4−ジメチル−3−アミノフェニル、4−ヒドロキシフェニル、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、3−アミノ−1−ナフチル、2−メチル−3−アミノ−1−ナフチル、6−アミノ−2−ナフチル、4,6−ジメトキシ−2−ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリルまたはアセナフチルなどが含まれる。
【0036】
用語「アラルキル」を本明細書で用いる場合、これは式アルキル−アリール(式中、アルキルおよびアリールは、この上で定義した意味と同じ意味を有する)で表される基に関する。アラルキル基の例には、ベンジル、フェネチル、ジベンジルメチル、メチルフェニルメチル、3−(2−ナフチル)−ブチルなどが含まれる。
【0037】
本発明に従う方法は、式(RSiO)で表されるシクロシロキサンに式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレートまたはこれの共重合体もしくは重合体による開環反応を適切な触媒の存在下で溶媒の有り無しで受けさせることからなる。この反応を、好適には、各1モルのシクロシロキサンが少なくとも1モルの式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレートまたは前記カルボキシレートの共重合体もしくは重合体による処理を受けるような様式に組み立てる。
【0038】
この反応は溶媒の有り無しで実施可能である。本発明に従う方法で使用可能な適切な溶媒は非極性で不活性な溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンまたはエチルベンゼンなど、脂肪族炭化水素、典型的にはペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンまたはデカヒドロナフタレン、非環状エーテル、典型的にはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルまたはジイソブチルエーテル、またはこれらの混合物である。好適な態様における前記溶媒はトルエンである。
【0039】
本方法で使用可能なシクロシロキサンの例が「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」、Mark他編集、第2版、John Wiley & Sons(1989)、15巻、207頁以降(これの内容は引用することによって本明細書に組み入れられる)に記述されている。
【0040】
本発明に従う方法で用いるに適した式(RSiO)で表されるシクロシロキサンの例には、これらに限定するものでないが、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−シクロトリシロキサン(D3)、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−シクロトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサフェニル−シクロトリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサビニル−シクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリビニル−シクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェニル−シクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリプロピル−シクロトリシロキサン、1,3,5−トリエチル−1,3,5−トリメチル−シクロ
トリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリフェネチル−シクロシロキサン、1,3,5−トリビニルトリヒドロ−シクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチルトリヒドロ−シクロトリシロキサン、ペンタメチル−シクロトリシロキサン、1,3,5−トリメチル−1,3,5−トリス(3’,3’,3’−トリフルオロプロピル)−シクロトリシロキサン(F3)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−シクロテトラシロキサン(D4)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタフェニル−シクロテトラシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタビニル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラヒドロ−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラ(1−オクチル)−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラエチル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラアリル−1,3,5,7−テトラフェニル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラ(1−ヘキサデシル)−1,3,5,7−テトラメチル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラオクチルテトラヒドロ−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラヒドロ−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラエチルテトラヒドロ−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラプロペニルテトラヒドロ−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラペンテニルテトラペンチル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラフェニルテトラヒドロ−シクロテトラシロキサン、ペンタメチル−シクロテトラシロキサン、ヘキサメチル−シクロテトラシロキサン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラキス(3’,3’,3’−トリフルオロプロピル)−シクロテトラシロキサン(F4)、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−シクロペンタシロキサン(D5)、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチル−シクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタデセニル−1,3,5,7,9−ペンタプロピル−シクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルペンタヒドロ−シクロペンタシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニルペンタヒドロ−シクロペンタシロキサン、テトラメチル−シクロペンタシロキサン、ヘキサメチル−シクロペンタシロキサン、ヘプタメチル−シクロペンタシロキサン、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−シクロヘキサシロキサン(D6)、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニルヘキサメチル−シクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルヘキサヒドロ−シクロヘキサシロキサン、テトラメチル−シクロヘキサシロキサン、ペンタメチル−シクロヘキサシロキサン、1,3,5,7,9,11,13,15,17,19−デカビニルデカヒドロ−シクロデカシロキサン、1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23,25,27,29−ペンタデカビニルペンタデカヒドロ−シクロペンタデカシロキサンなどが含まれる。
【0041】
好適な態様では、前記式(RSiO)で表されるシクロシロキサンを1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−シクロトリシロキサン(D3)、1,1,3,3,5,5,7,7−オクタメチル−シクロテトラシロキサン(D4)、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9−デカメチル−シクロペンタシロキサン(D5)、1,1,3,3,5,5,7,7,9,9,11,11−ドデカメチル−シクロヘキサシロキサン(D6)を包含する群から選択する。より好適には、前記式(RSiO)で表されるシクロシロキサンは1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−シクロトリシロキサン(D3)である。
【0042】
本発明に従う方法で使用可能な式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレートの例には、これらに限定するものでないが、(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−t−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリベンジルシリル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−イソプロピルシリ
ル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−アミルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−プロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリフェニルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−p−メチルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジブチルシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジブチルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピル−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルステアリルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルブチルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルシクロヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルオクチルシリル、(メタ)アクリル酸ジメチルフェニルシリル、(メタ)アクリル酸エチルジブチルシリル、(メタ)アクリル酸エチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸ラウリルジフェニルシリル、(メタ)アクリル酸メチルジブチルシリル、(メタ)アクリル酸n−オクチルジ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジメチルシリル、(メタ)アクリル酸t−ブチルジフェニルシリル、イタコン酸ビス(トリメチルシリル)、フマル酸t−ブチルジフェニルシリル メチル、マレイン酸t−ブチルジフェニルシリル メチル、フマル酸t−ブチルジフェニルシリル n−ブチル、マレイン酸t−ブチルジフェニルシリル n−ブチル、フマル酸トリイソプロピルシリル アミル、マレイン酸トリイソプロピルシリル アミル、フマル酸トリイソプロピルシリル メチル、マレイン酸トリイソプロピルシリル メチル、フマル酸トリ−n−ブチルシリル n−ブチル、マレイン酸トリ−n−ブチルシリル n−ブチルなどおよびこれらの重合体または共重合体が含まれる[ここで、メタアクリレートまたはアクリレートを本明細書では集合的に「(メタ)アクリレート」と呼ぶ]。
【0043】
好適な態様では、前記式(II)で表されるオルガノシリル化カルボキシレートを(メタ)アクリル酸トリメチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−t−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリベンジルシリル、(メタ)アクリル酸トリエチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−イソプロピルシリル、(メタ)アクリル酸トリイソブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−アミルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ブチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ドデシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−ヘキシルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−オクチルシリル、(メタ)アクリル酸トリ−n−プロピルシリルおよび(メタ)アクリル酸トリフェニルシリルおよびこれらの共重合体または重合体などを包含する群から選択する。より好適には、前記式(II)で表されるオルガノシリル化カルボキシレートはメタアクリル酸トリメチルシリルまたはこれの共重合体もしくは重合体である。
【0044】
本方法は不飽和オルガノシリル化カルボキシレート共重合体もしくは重合体に適切に適用可能である。この反応を前記共重合体もしくは重合体の中に存在するトリアルキルシリルカルボキシレート官能が選択的にポリオルガノシリル官能に転化するような様式で実施する。
【0045】
適切な不飽和オルガノシリル化カルボキシレート共重合体もしくは重合体は、本技術分野で公知の方法を用いて、式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレート単量体の重合および/またはそれを他のいろいろな単量体、例えばビニル単量体[アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、ビニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル)、ビニルトルエン、アルファ−メチルスチレン、クロトン酸エステルおよびイタコン酸エステルを包含]と一緒に重合させることで入手可能である。前記式(II)で表される不飽和オルガノシリル化カルボキシレートの重合体もしくは共重合体の製造は、フリーラジカル触媒、例えばベンゾイルパーオキサイド、過オクチル酸t−ブチル(TBPEH)、過安息香酸t−ブチル(TBP
)またはアゾビスイソブチロニトリルなどを用いて適切な比率の適切な単量体を重合条件下で付加重合させることで実施可能である。この反応を有機溶媒、例えばキシレン、トルエン、アミド、例えばN−メチルピロリドンおよびN,N−ジメチルホルムアミドなど、エーテル、例えばジオキサン、THFおよびジエチルエーテルなど、酢酸ブチル、n−ブタノール、2−エトキシエタノール、シクロヘキサノン、メチル−イソアミルケトン、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、酢酸2−エトキシエチルおよびこれらの混合物など中で実施する。重合を好適には70−140℃の範囲の温度で実施するが、より高い温度も溶媒および触媒がそれに適合することを条件として使用可能である。この範囲内ならば使用する温度が高ければ高いほど生じる重合体の分子量が低くなる。重合は重合体材料の全部を溶媒中で加熱するか或は好適には加熱しておいた溶媒に単量体および触媒を徐々に添加することで実施可能である。後者の手順を用いて生じさせた重合体が示す分子量の方が低い。
【0046】
この反応で用いるに適した触媒の例には、これらに限定するものでないが、酸性触媒が含まれる。酸性触媒の例にはプロトン酸触媒およびルイス酸触媒が含まれる。好適な態様における本方法で用いるに適したプロトン酸触媒には、これらに限定するものでないが、塩酸、硝酸、酢酸、硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸が含まれる。好適な態様ではトリフルオロメタンスルホン酸を用いる。前記酸触媒は不均一酸、例えば強酸性イオン交換樹脂などであってもよく、これらは全部がスルホン型である。商業的に入手可能なスルホン型強酸性イオン交換樹脂の例は、商標AMBERLYST A15、AMBERLYST 38 W、AMBERLYST 36、AMBERJET 1500H、AMBERJET 1200H(AMBERJETはRohm and Haas Companyの商標である)、DOWEX MSC−1、DOWEX 50W(DOWEXはDow Chemical Companyの商標である)、DELOXAN
ASP I/9(DELOXANはDegussの商標である)、DIAION SK1B(DIAIONはMitsubushiの商標である)、LEWATIT VP OC 1812、LEWATIT S 100 MB、LEWATIT S 100 G1(LEWATITはBayerの商標である)、NAFION SAC13、NAFION NR50(NAFIONはDuPontの商標である)およびCT275(Purliteから入手可能な孔直径中間値が600から750の範囲の巨視孔性樹脂)で知られる樹脂である。別の態様における適切なルイス酸触媒には、これらに限定するものでないが、ZnCl、BeCl、TiCl、SnCl、FeCl、FeCl、SbCl、AlClおよび他の金属ハロゲン化物が含まれる。本発明に従う方法では、また、共触媒、例えば酢酸などを用いることも可能である。
【0047】
ルイス酸特性を示す金属ハロゲン化物はシロキサン結合転位が原因で起こる平衡反応を抑制し、シクロシロキサンの開環反応を選択的にもたらしかつ望ましくない副反応を抑制し得ることから、それらが特に有用である。好適な態様の反応中に用いる触媒はZnClである。本発明に従う方法で不均一酸を用いると、これは反応生成物からの分離がより容易であると言った利点を有する。好適な態様ではAMBERLYST A15を用いる。この反応を不飽和オルガノシリル化カルボキシレートの共重合体を用いて実施する時には不均一触媒の使用が好適である、と言うのは、それは工程終了時に当該樹脂から容易に除去可能であると言った利点を与えるからである。
【0048】
前記シクロシロキサンと不飽和オルガノシリル化カルボキシレートの間のテロメル化反応は20から150℃、好適には50から120℃、より好適には90から110℃の範囲に選択した温度で実施可能である。別の好適な態様では前記反応を室温で実施する。
【0049】
この反応は重合禁止剤の添加有り無しで実施可能である。本発明の方法で使用可能な重合禁止剤は、好適には、フェノール系安定剤、例えばクレゾールもしくはヒドロキノンの
誘導体、例えばビス(t−ブチル)クレゾール、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、4−メトキシ−フェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、またはヒドロキノンもしくはフェノチアジンのモノメチルエーテルなどであり、これをシクロシロキサンと不飽和オルガノシリル化カルボキシレート(II)の総重量を基準にして0.001から2重量%、好適には0.002から0.7重量%の範囲の濃度で用いる。
【0050】
前記酸性触媒を適切な塩基で中和することで前記開環反応を終結させてもよく、そのような塩基は、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミン、ヘキサメチルジシラザン、N−メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N−メチルピペリジン、ピリジン、4−ピロリジノピリジン、ピコリン、4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン、2,6−ジ(t−ブチル)−4−メチルピリジン、キノリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどを含んで成る群から選択可能である。好適な態様における前記塩基はトリエチルアミンである。そのような中和反応中に生じた塩は濾過またはデカンテーションで除去可能である。
【0051】
前記式(I)で表されるポリオルガノシリル化カルボキシレート化合物は減圧下の蒸留で単離可能である。適切な分析方法のいずれかを用いて反応の進行を監視してもよい。反応終了時に触媒を濾過で除去することで前記式(I)で表されるポリオルガノシリル化カルボキシレート化合物の重合体を単離することができる。
【0052】
本発明は、本発明に従う方法で入手可能な式(I)で表されるポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体またはこれの重合体に関する。別の態様において、本発明は、本発明に従う方法で入手したポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体または重合体に関する。好適な態様では、式(I)で表される化合物におけるR、R、R、R、R、RおよびRを各々独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチルを包含する群から選択する。より好適には、R、R、R、R、R、RおよびRはメチルである。別の好適な態様では、nを3から12、好適には3から8、より好適には3から6を表すように選択する。より好適な態様におけるnは3である。
【0053】
本発明におけるポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体の例には、これらに限定するものでないが、ノナメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ノナ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−テトラシロキサン、ウンデカメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−
ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、ウンデカ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ペンタシロキサン、トリデカメチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカエチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−t−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカベンジル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソプロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−プロピル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−イソブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−アミル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−n−ブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ドデシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−ヘキシル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−フェニル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサン、トリデカ−オクチル−1−(メタ)アクリロイルオキシ−ヘキサシロキサンおよびこれらの重合体が含まれる。
【0054】
本発明の利点は、本方法で用いる反応体を容易に取り扱うことができる点にある。別の利点は本方法が簡潔で安全な点にある(腐食性気体状物質を捕捉する必要がない)。その上、別の利点は、反応が1段階手順である点にある。また、材料の劣化も起こらない。本発明の方法は短く、処理手順が容易でありかつ収率が高いことから、この上に記述した現存方法に対する実質的な改良であると見なすことができる。
【0055】
本発明の更に別の利点は、本発明に従うポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体または重合体が正確に所望数のジヒドロカルビルシリルオキシ単位を有する点にある。本発明の方法で得たポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体を他のいろいろな単量体、例えばビニル単量体[アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、ビニルエステル(例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル)、ビニルトルエン、アルファ−メチルスチレン、クロトン酸エステルおよびイタコン酸エステルを包含]と一緒に重合させることができる。
【0056】
前記単量体の重合体および共重合体はコーティングまたはペイント組成物で用いるに有用である。より好適には、それらを防汚コーティング組成物に含める結合剤の中の共重合用単量体として用いる。それらを防汚コーティング組成物で用いた時にそれらが与える膜は亀裂も剥がれも起こさず、かつ妥当な速度で穏やかな加水分解性を示して海水の中に絶えず溶け込み、従って優れた防汚特性を長期間に渡って示す。
【0057】
本発明の方法で得た単量体を用いて生じさせた防汚コーティング組成物は錫を含まないコーティングであり、加水分解性トリブチル錫重合体(これを防汚ペイントで用いることは2003年までに禁止される予定である)が基になった現在の自浄性コーティング技術の代替になる。本発明の方法で生じさせたポリオルガノシリル化カルボキシレート単量体は、有機錫化合物に比べて毒性が低く、極性が低く、疎水性が高くかつ安定性も高い。
【0058】
以下の実施例を参照することで本発明がより容易に理解されるであろうが、それは本発明の特定の面および態様を単に説明する目的で含めるものであり、本発明を限定することを意図するものでない。
【実施例】
【0059】
以下の実施例ではNMRデータをCDCl中で測定してTMSに対比させたデルタとして表す。特に明記しない限り、あらゆる反応体をAldrichから購入してさらなる
精製なしに用いた。
【実施例1】
【0060】
50mlのトルエンにヘキサメチルシクロトリシロキサンを50g、メタアクリル酸トリメチルシリルを35.6g、塩化亜鉛を2.5gおよび4−メトキシフェノールを0.4g溶解させた。100℃で11時間後、混合物を室温になるまで冷却し、トリエチルアミンを40ml添加した後、塩を濾過で除去した。溶媒を蒸発させた後、蒸留を減圧(0.3ミリバール、80℃)下で行うことで、高純度のノナメチル−1−メタアクリロイルオキシ−テトラシロキサンを得た。
13C NMR:167.0、137.7、126.4、18.5、2.0、1.3、1.1、0.0;
29Si NMR:7.3、−8.6、−20.1、−21.0;
IR(膜):2963、1707、1638、1335、1310、1261、1179、1082、1044、842、804cm−1
【実施例2】
【0061】
5gのヘキサメチルシクロトリシロキサンと3.5gのメタアクリル酸トリメチルシリルと0.016gのトリフルオロメタンスルホン酸を室温で24時間撹拌した。次に、トリエチルアミンを0.5ml添加した後、塩を濾過で除去することで、ノナメチル−1−メタアクリロイルオキシ−テトラシロキサンを得た。
【実施例3】
【0062】
2.5mlのトルエンにヘキサメチルシクロトリシロキサンを5g、メタアクリル酸トリメチルシリルを3.5gおよびAmberlyst A15樹脂触媒を0.3g入れて撹拌した。室温で7時間後に触媒を濾過で除去した後、溶媒を減圧下で蒸発させることで、ノナメチル−1−メタアクリロイルオキシ−テトラシロキサンを得た。
【0063】
不溶な酸性樹脂であるAMBERLYST A15樹脂触媒を用いると、室温における変換が奇麗に起こると言った利点が得られる。更に、それは濾過で容易に除去される。
【実施例4】
【0064】
2.5mlのトルエンにヘキサメチルシクロトリシロキサンを5g、メタアクリル酸トリエチルシリルを4.4gおよびAmberlyst A15樹脂を0.3g入れて撹拌した。室温で7時間後に触媒を濾過で除去した後、溶媒を減圧下で蒸発させることで、1,1,1−トリエチル−2,2,3,3,4,4−ヘキサメチル−1−メタアクリロイルオキシ−テトラシロキサンを得た。
【0065】
この化合物をGC−MSで特徴付けた。カラム:HP5(30mi/i.d.:0.32mmi.d./厚み0.25ミクロン)、初期温度:70℃、最終温度:300℃、速度:10℃/分、保持時間:11.2分。EIMS:M.:422(<1%)、407(100%)、393(85%)、309(5%)、253(10%)、217(10%);IR(膜):2961、2881、1704、1637、1336、1261、1178、1088、1023、808cm−1
【実施例5】
【0066】
2 lの4口フラスコにキシレンを100g加えて窒素下に保持した。前記フラスコの4口に撹拌手段、還流コンデンサ、反応温度制御用温度計および単量体添加用手段を取り付けた。
【0067】
別の容器内で下記を含有するプリミックスを調製した:
メタアクリル酸メチルを148.5g、
アクリル酸ブチルを346.5g、
メタアクリル酸トリメチルシリルを49.5g、
パーオキシ−2−エチルヘキサン酸t−ブチル(=Akzo−Nobelが名称Trigonox 21Sの下で販売しているTBPEH)を9.9g(=単量体総量を基準にして2%)。
【0068】
温度を90℃に維持しながら前記プリミックスを前記反応容器に滴下して加えた(全体時間=3時間)。前記プリミックスの添加が終了して30分後に0.1%のTBPEHの後添加を45分間の間隔で5回行った。最後の後添加を行って15分後に温度を1時間かけて120℃にまで上昇させた。この結合剤溶液を冷却した後、98gのキシレンで薄めて14dPa.sの粘度にした。この結合剤にヘキサメチルシクロトリシロキサンを66.5gおよびAmberlyst A15樹脂を1g加えた。室温で5時間後に触媒を濾過で除去した後、その結合剤をキシレンで希釈して粘度を14dPa.sにした。
【0069】
この得られた重合体のNMRスペクトルはノナメチル−1−メタアクリロイルオキシ−テトラシロキサンの重合で得た重合体が示したNMRスペクトルと同じであることを確認した。驚くべきことに、あまり反応せずかつ重合しない傾向があることが知られていたメタアクリル酸シリルまたはこれの重合体もしくは共重合体を用いてヘキサメチルシクロトリシロキサンのテロメル化を実施することができることを見いだした。転化が奇麗に進行することを観察し(GC)かつ生じたポリメタアクリル酸シリルがオリゴマー化を起こさないことも観察した。その生成物の精製を蒸留で容易に実施した。この重合体を合成した時点で触媒を単に除去することでそれを単離した。
【0070】
本発明に従う方法は1段階方法であると言った利点を有する。その上、前記工程中に腐食性物質は全く放出されない。生じた生成物の精製は簡潔でありかつ生じさせるポリジメチルシロキサンのMWの制御も良好である。その上、ポリジアルキルシロキサン単位は反応中に分解もオリゴマー化も起こさない。
【0071】
本発明を本発明の具体的な態様を言及することで詳細に記述してきたが、それに関するいろいろな変更および修飾を本発明の精神および範囲から逸脱しない限り成してもよいことは本分野の技術者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、
1、R2、R3、R4、R5は、各々独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキルまたはハロゲン基を表すが、これらは場合によりアルキル、アラルキル、アリール、ヒドロキシ、ハロゲン、アミノまたはアミノアルキル基から成る群から独立して選択される1個以上の置換基で置換されていてもよく、
7は、水素、アルキル基または−COOR9(ここで、R9はアルキル基を表す)を表し、
8は、水素、アルキル基または−CH2−CO2−(SiR45O)n−SiR123を表し、
こゝでアルキルは直鎖、分枝もしくは環状部分又はそれらの組合わせを有し、炭素原子を1から20個含有する飽和炭化水素として定義され、アルケニルは1個または数個の二重結合を有し、直鎖、分枝もしくは環状部分またはそれらの組合わせを有し、炭素原子を2から18個含有する炭化水素として定義され、アルキニルは1個または数個の三重結合を有し、直鎖、分枝もしくは環状部分またはそれらの組合わせを有し、炭素原子を2から18個含有する炭化水素として定義され、アリールは芳香族炭化水素から水素が1個取り除かれることで生じた有機基を意味し、これには各環中の員数が7以下の単環状もしくは二環状炭素環のいずれも含まれるが、少くとも1個の環は芳香環であり、アラルキルは式アルキル−アリール(式中アルキルおよびアリールはこの上で定義したと同じ意味を有する)の群を意味し、そしてnは3から12を表す、]
で表される単量体の重合体もしくは共重合体を含んでなる防汚塗料組成物。

【公開番号】特開2010−196070(P2010−196070A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111145(P2010−111145)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【分割の表示】特願2007−61671(P2007−61671)の分割
【原出願日】平成15年7月9日(2003.7.9)
【出願人】(505013480)シグマカロン・サービシズ・ベー・ブイ (2)
【Fターム(参考)】