説明

防汚性付与剤及び防汚性が付与されたハードコート材料

【課題】良好な防汚性を付与する防汚性付与剤、及び該防汚性付与剤を用いることにより防汚性が付与されたハードコート材料を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として含有する防汚性付与剤。


(Rfはパーフルオロアルキル基、XはF原子、CF3基、Qは2価有機基、RはH原子、アルキル基、アシル基、R1、R2はアルキル基、アリール基、アラルキル基)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として含有する防汚性付与剤、及び該防汚性付与剤を用いることにより防汚性が付与されたハードコート材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂材料は、金属と比較して錆びない、軽いなどの特徴を有するため、各種電化製品やパソコン、携帯電話などの電子機器の筐体などに幅広く用いられている。また、ガラスと比較しても割れにくいなどの特徴を有しており、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂などの高硬度、高透明性などの性質を有する樹脂は、単体あるいはハードコート剤として液晶ディスプレイやタッチパネルなどの表示体に用いられている。
【0003】
近年、特に電子機器の筐体などにおいては、デザイン面から高光沢な表面が求められている。また、携帯電話やパソコン用ディスプレイにもタッチパネルの仕様を有するものが増えてきており、その最表面には傷防止などの目的で、アクリル樹脂やシリコーン樹脂などのハードコード材料が塗工されている。
【0004】
これらは頻繁に人の手などに触れることから、皮脂や汗、指紋といった汚れが付着しやすく、それらが痕跡となった場合、見た目を損ねたり視認性が低下したりすることが多い。特に、静電容量方式のタッチパネルにおいては、指で直接触れることによる入力が必須であり、この問題は避けられない。そのため、これらのハードコート材料に対して、耐指紋性などの防汚性能の向上が強く求められてきた。
【0005】
この対策としてはこれまで種々検討されており、大別すると次の2つの手法による。一つは、シリコーン系化合物やフッ素系化合物を用いて、ハードコート表面に低表面エネルギーを有する撥水・撥油性表面を形成し、指紋などの汚れがつきにくく、かつ、取れやすい処理を施すというものである。
【0006】
例えば、特開2004−250474号公報(特許文献1)に示されるように、パーフルオロポリエーテル基を有するシラン化合物をハードコートの最表面に処理したり、特許第3963169号公報(特許文献2)に示されるように、パーフルオロポリエーテルウレタンアクリレート組成物をハードコート組成物に添加し、その表面で偏在架橋させたりして、表面に撥水・撥油表面を形成することによって、防汚性能を発現させようというものである。
【0007】
この方法では、付着した汚れが拭取りやすくなるものの、その高い撥水・撥油性によって、付着した指紋等が微細な液滴を形成し、光を乱反射することで透過性や視認性が低下したり、フッ素化合物が低屈折率であることから、指紋の成分である皮脂や汗などとの屈折率差が大きく、わずかな付着跡でも目立ったりすることがあった。
【0008】
また、指紋は水分や塩などの無機成分、たんぱく質や油脂などの有機成分など含み、その組成が複雑であり、これらの付着を完全に防ぐことは困難である。
【0009】
もう一つは、指紋等の汚れ成分に対して親和性の高い親水・親油表面をハードコートの最表面に形成し、付着した汚れを馴染ませ、薄く濡れ広がらせることによって、目立たなくしてしまうというものである。
【0010】
例えば、特開2001−353808号公報(特許文献3)に示されるように、長鎖アルキルエステル基を有するシラン化合物をハードコートの最表面に処理したり、国際公開第2009/44912号パンフレット(特許文献4)に示されるように、アクリルポリマー組成物にコロイダルシリカを添加したりして、表面に親水・親油表面を形成することによって、汚れの視認性を低下させようというものである。
【0011】
この方法では、汚れがハードコート表面に付着しても、全体に濡れ広がって見えにくくなる。更にハードコートの屈折率を指紋等の汚れ成分に近づけることによって、更に視認性の低下を防ぐことができる。しかしながら、汚れ成分への親和性が高いために、徐々にそれらが堆積してしまったり、拭取りが難しかったりするために、ディスプレイなどの光透過性が低下してしまうことがあった。
【0012】
これら2つの方法では、それぞれに一長一短があり、付着防止性と良好な視認性を兼ね備えた防汚性を付与する技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−250474号公報
【特許文献2】特許第3963169号公報
【特許文献3】特開2001−353808号公報
【特許文献4】国際公開第2009/44912号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、良好な防汚性を付与する防汚性付与剤、及び該防汚性付与剤を用いることにより防汚性が付与されたハードコート材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として含有する防汚性付与剤を、例えば耐指紋性付与剤としてハードコート材料に添加することで、指紋などの汚れが目立ちにくく、かつ拭取りやすい表面を有するハードコート皮膜が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0016】
従って、本発明は、下記に示す防汚性付与剤及びハードコート材料を提供する。
〔請求項1〕
下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として含有する防汚性付与剤。
【化1】


(式中、Rfは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基、Qは炭素数1〜12の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基もしくはアシル基であり、R1、R2は互いに独立に炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、a、b、c、dは互いに独立に0〜200の整数であり、但し、a+b+c+dは1以上であり、eは0又は1であり、p、qは互いに独立に0〜50の整数であり、但し、p+qは2以上であり、kは1〜3の整数である。)
〔請求項2〕
防汚性付与成分が、下記一般式(2):
【化2】


(式中、Q、R、p、q、p+q及びkは前記と同じである。fは2〜200の整数である。)
で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンである請求項1記載の防汚性付与剤。
〔請求項3〕
請求項1又は2記載の防汚性付与剤を0.01〜10.0質量%含有することを特徴とする防汚性が付与されたハードコート材料。
〔請求項4〕
ハードコート材料が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなることを特徴とする請求項3に記載の防汚性が付与されたハードコート材料。
【発明の効果】
【0017】
本発明の防汚性付与剤は、ハードコート材料に配合することで、ハードコート層表面に防汚性、耐指紋性等を付与するのに有用であり、これによって、指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等が付着しても目立ちにくくなり、汚れが付着した場合であっても拭取り性に優れたハードコート表面を与える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
パーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサン
本発明の防汚性付与剤の主成分であるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンは、上記したように下記一般式(1)で示される。
【化3】

【0019】
一般式(1)において、Rfは、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基である。Rf中における炭素数が上記上限値を超える場合には、パーフルオロポリエーテル鎖の柔軟性が損なわれたり、熱分解時に有害なパーフルオロオクタン酸(PFOA)などを発生したりする。
【0020】
このようなパーフルオロアルキル基Rfとしては、下記式に示される基が挙げられる。
CF3−,
CF3CF2−,
CF3CF2CF2−,
(CF32CF−,
(CF32CFCF2
【0021】
式(1)において、Qは炭素数1〜12、好ましくは炭素数3〜8の2価の有機基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、又はこれらの基の2種以上の組み合わせ(アルキレン・アリーレン基等)であってよく、あるいはこれらの基にエーテル結合、アミド結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基等から選ばれる1種又は2種以上の構造を介在させたものであってもよく、更に酸素原子、窒素原子、ケイ素原子から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい2価の炭化水素基が挙げられる。
【0022】
このようなQとしては、下記式に示される基が挙げられる。
−CH2−,
−CH2CH2−,
−(CH2n−O−CH2−,
−OCH2−,
−CO−NH−CH2−,
−CO−N(Ph)−CH2−,
−CO−NH−CH2CH2−,
−CO−N(Ph)−CH2CH2−,
−CO−N(CH3)−CH2CH2CH2−,
−CO−O−CH2−,
−CO−N(CH3)−Ph’−,
−CO−NR3−Y’−
(式中、Phはフェニル基、Ph’はフェニレン基であり、nは1〜10の整数である。Y’は−CH2−又は下記式
【化4】


で表される二価の基であり、R3は水素原子又は非置換もしくは置換の、好ましくは炭素数1〜10の一価炭化水素基である。)
【0023】
式(1)において、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基もしくはアシル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−ブチル基、アセチル基などが挙げられる。中でもメチル基、n−ブチル基、アセチル基であることが好ましい。
【0024】
式(1)において、R1、R2は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基などが挙げられる。中でも、メチル基、n−ブチル基、フェニル基であることが好ましく、特に好ましいのはメチル基である。なお、R1、R2は、R1、R2のそれぞれが同一の基であっても異種の基であってもよく、またR1とR2が同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0025】
式(1)において、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。
また、式(1)において、a、b、c及びdは互いに独立に0〜200、好ましくは20〜100の整数である。但し、a+b+c+dは1以上、好ましくは2〜200、より好ましくは3〜100、更に好ましくは5〜50である。eは0又は1であり、p、qは互いに独立に0〜50、好ましくは0〜30の整数である。但し、p+qは2以上であり、好ましくは3〜50、より好ましくは6〜40、更に好ましくは9〜30である。kは1〜3の整数であり、好ましくは1又は2であり、特に好ましくは1である。
【0026】
式(1)の化合物中のパーフルオロポリエーテル鎖とポリエーテル鎖は、分子中のフッ素原子の質量割合が5〜50質量%となる割合で存在することが好ましく、より好ましくは10〜40質量%となる割合である。上記下限値未満ではハードコート表面への滲出が困難であり、望ましい特性が得られないおそれがある。また、上記上限値超では樹脂への親和性が損なわれるため、外観の白化や硬度の低下などが生じるおそれがある。
【0027】
上記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンとしては、原料入手のしやすさ及び製造の容易さ等の点から、下記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンが好ましい。
【化5】


(式中、Q、R、p、q、p+q及びkは前記と同じである。fは2〜200、好ましくは3〜50、より好ましくは4〜40の整数である。)
【0028】
本発明のパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンとして、具体的には、以下のものを例示することができる。
【化6】


【化7】


【化8】

【0029】
パーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンの製造方法
本発明の防汚性付与剤の主成分であるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンは、下記一般式(3)で示されるビニル基含有パーフルオロポリエーテルとテトラオルガノシクロテトラシロキサンとを、好ましくは白金系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させることによって、該テトラシロキサン中のSiH基の一部をパーフルオロポリエーテル変性したシクロテトラシロキサンとした後、該シクロテトラシロキサン中に存在する残余のSiH基と下記一般式(4)で示されるアリル基含有ポリエーテル化合物を、好ましくは白金系触媒の存在下でヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。
【0030】
即ち、本発明のパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを製造する方法としては、下記2段階の製造工程を有する方法が採られる。
〈第1段目の反応〉
下記一般式(3):
【化9】


(式中、Rf、X、Q、a、b、c、d、a+b+c+d及びeは前記と同じである。)
で示されるビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)中のビニル基を、下記式:
【化10】


(式中、R4は互いに独立に炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、上記R1、R2で例示したものと同様のものが例示できる。)
で示されるテトラオルガノシクロテトラシロキサン(ii)中の4個のSiH基に対して、好ましくは白金系触媒の存在下で、部分的にヒドロシリル化付加反応させることによって、1分子中にパーフルオロポリエーテル変性シロキサン単位を1〜3個、好ましくは1個又は2個有すると共に、分子中にSiH基が残存した下記一般式:
【化11】


(式中、Rf、X、Q、R1、R2、a、b、c、d、a+b+c+d、e及びkは前記と同じである。)
で示されるSiH基含有パーフルオロポリエーテル変性シクロテトラシロキサン(iii)を得る。
【0031】
〈第2段目の反応〉
次いで、得られた該シクロテトラシロキサン(iii)中の残余のSiH基と、下記一般式(4):
【化12】


(式中、R、p、q及びp+qは前記と同じである。)
で示されるアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)中のアリル基とを、好ましくは白金系触媒の存在下でヒドロシリル化付加反応させることにより、一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサン(v)を得る。
【0032】
上記2段階の製造工程において、第1段目の反応であるビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)とテトラオルガノシクロテトラシロキサン(ii)との反応では、[シロキサン(ii)]/[パーフルオロポリエーテル(i)]の分子同士のモル比が2.0以上、より好ましくは3.0以上であることが望ましい。テトラオルガノシクロテトラシロキサンを過剰に(即ち、上記モル比≧2.0の比率で)用いることによって、一般式(1)で示されるk=1のパーフルオロポリエーテル変性シクロテトラシロキサンを優先的に得ることができる。このモル比の上限については特に制限はないが、製造効率(目的生成物の収率)等の点から、通常、10.0以下、特には5.0以下程度とすることが好ましい。前述したとおり、k=1というのは、本発明において特に好ましい値となり、本発明のポリシロキサンが、最も高い界面活性を示す構造となるものである。なお、過剰のテトラオルガノシクロテトラシロキサンは反応終了後、減圧溜去することによって容易に取り除くことができる。
【0033】
上記2段階の製造工程において、第2段目の反応であるSiH基含有パーフルオロポリエーテル変性シクロテトラシロキサン(iii)とアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)との反応では、アリル基含有ポリエーテル化合物(iv)中のアリル基に対するSiH基含有パーフルオロポリエーテル変性シクロテトラシロキサン(iii)中のSiH基のモル比(SiH/アリル比)が0.8〜1.2、特に0.9〜1.1、とりわけ0.9〜1.0で反応に付すことが好ましい。シクロテトラシロキサン中のSiH基が上記より過剰であると、他材料との親和性などを損なったり、SiH基が脱水素反応を起こして水素ガスを発生したりするおそれがある。一方、ポリエーテル化合物中のアリル基が上記より過剰であると、パーフルオロポリエーテルとしての特長を損なうおそれがある。
【0034】
また、この製造工程を2段階反応ではなく、式(3)のビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)、テトラオルガノシクロテトラシロキサン(ii)及び式(4)のアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)を一括して反応に供した場合は、ビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)とアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)のSiH基に対する反応性の違いなどによって、ビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)又はアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)のみで変性されたシクロテトラシロキサンを生成したり、ビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)とアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)の変性比の異なる化合物が何種類も生成したりするため、生成物が濁りを生ずるおそれがある。
【0035】
上記製造工程において使用する白金系触媒としては、ヒドロシリル化に用いられる従来公知のものを使用できる。一般に貴金属の化合物であり高価格であることから、比較的入手しやすい白金又は白金化合物がよく用いられる。このような白金化合物としては、塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコール、ビニルシロキサンとの錯体、及びシリカ、アルミナ、カーボン等に担持された金属白金を用いることができる。白金化合物以外の白金族金属触媒としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウム及びパラジウム系化合物が使用でき、例えば、RhCl(PPh33、RhCl(CO)(PPh32、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh32、Pd(PPh34等(式中、Phはフェニル基である。)を用いることができる。
【0036】
白金系触媒の使用量は触媒量でよく、具体的には、ビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)とテトラオルガノシクロテトラシロキサン(ii)、又はSiH基含有パーフルオロポリエーテル変性シクロテトラシロキサン(iii)とアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)の合計質量に対し、0.1〜500ppm(白金質量換算)となる量が好ましい。
【0037】
上記ヒドロシリル化反応を行う際に、必要に応じて溶媒を用いてもよい。溶媒は、第1段目、第2段目の反応とも、各段階の反応において各反応基質の双方を溶解するものであることが望ましいが、どちらか一方のみを溶解するものであってもヒドロシリル化反応を阻害するものでなければ特に制限されない。
【0038】
このような溶媒としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン、イソドデカンなどの脂肪族炭化水素系化合物、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系化合物、トリフルオロトルエン、ヘキサフルオロメタキシレンなどの含フッ素芳香族炭化水素系化合物、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタンなどのハイドロフルオロエーテル系化合物、ダイフロイル(ダイキン工業製)などのクロロフルオロカーボン系化合物、フォンブリン、ガルデン(ソルベイソレクシス製)、デムナム(ダイキン工業製)、クライトックス(デュポン製)などのパーフルオロポリエーテル系化合物などが挙げられる。中でも、ヘキサフルオロメタキシレンが、式(3)のビニル基含有パーフルオロポリエーテル(i)やSiH基含有パーフルオロポリエーテル変性シクロテトラシロキサン(iii)、式(4)のアリル基含有ポリエーテル化合物(iv)及び最終生成物(式(1)のパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサン(v))の溶解性に優れており好適である。
【0039】
溶媒の使用量は、各反応基質の粘度や仕込み量によって適宜選定されるが、各反応基質の合計量100質量部に対して、10〜200質量部が好ましく、20〜100質量部であることが特に好ましい。
【0040】
上記製造工程における反応温度は、溶媒の量や種類により適宜決められ、第1段目、第2段目の反応とも、通常、室温(25℃)〜140℃でよく、好ましくは70〜120℃である。規定範囲以上の温度では、ポリエーテル鎖や環状シロキサン鎖が熱分解してしまうおそれがあるため好ましくない。時間は特に制約なく、個別の反応条件に応じて反応が十分に進行するようにすればよい。
【0041】
防汚性付与剤
本発明の防汚性付与剤は、例えば、上述したパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として有機溶剤に均一に溶解した溶液として調製することができる。この場合、均一溶液が得られる範囲であれば防汚性付与剤中の上記防汚性付与成分の濃度は特に制限されないが、通常は、0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜20質量%、より好ましくは1〜10質量%程度であればよい。
【0042】
パーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを溶解する有機溶剤としては、該ハードコート材料と反応しないものから選ばれ、例えば、ヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、イソドデカンなどの脂肪族炭化水素系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル酢酸エステルなどのエステル系溶剤などが挙げられる。この中でもイソドデカン、イソプロパノール、メチルイソブチルケトンなどが好適に用いられる。
【0043】
ハードコート材料
本発明の防汚性付与剤は、主にハードコート材料に添加して耐指紋付与剤等として使われる。ハードコート材料としては、透明性と適度な硬度と機械的強度とがあり、本発明のパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンと混合、硬化可能であれば特に限定されるものではない。
【0044】
ハードコート材料中に添加する防汚性付与剤の濃度は特に制限されるものではないが、通常は、0.01〜10.0質量%、好ましくは0.05〜8.0質量%、より好ましくは0.1〜5.0質量%程度であればよい。
【0045】
ここで、ハードコート材料としては、活性エネルギー線の照射により硬化する樹脂(活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)や熱硬化性の樹脂(熱硬化型樹脂組成物)等を使用でき、具体的には、アルコキシシラン系化合物の部分加水分解オリゴマーからなる熱硬化型シリコーン系ハードコート材料、熱硬化型のポリウレタン樹脂からなる熱硬化型ポリウレタン系ハードコート材料、又は不飽和基を有するアクリル系化合物からなる紫外線硬化型アクリル系ハードコート材料が好ましい。特に本発明の防汚性付与剤に対して、溶解性と表面滲出性のバランスが優れている活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、とりわけ紫外線硬化型アクリル系ハードコート材料が好ましい。
【0046】
熱硬化型シリコーン系ハードコート材料には、公知の方法によって合成したアルコキシシラン化合物の部分加水分解オリゴマーが使用できる。これに酢酸、マレイン酸等の硬化触媒を添加し、アルコール、グリコールエーテル系の有機溶剤に溶解させて熱硬化型シリコーン系ハードコート液が得られる。そしてこれを通常の塗料における塗装方法により透明プラスチック成型品の外面に塗布し、80〜140℃の温度で加熱硬化することによってハードコート塗膜を形成させる。但しこの場合、プラスチック成型品の熱変形温度以下での硬化温度の設定が前提となる。
このような熱硬化型シリコーン系ハードコート材料としては、例えば、国際公開第2010/110389号パンフレット、特開2000−273394号公報、特開平10−218995号公報等に記載された材料などを挙げることができる。
【0047】
熱硬化型ポリウレタン系ハードコート材料には、ポリオキシアルキレンポリオールとして、1分子中に水酸基数2〜3個を有する多価アルコール類、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等にエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイド、例えば、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド等を単独もしくは2種以上付加させたポリオキシアルキレンポリオールが使用され、これに有機ジイソシアネート類として、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4/2,6異性体比65/35(質量比)トリレンジイソシアネート、2,4/2,6異性体比80/20(質量比)トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、末端ジイソシアネートプレポリマー等の単独又は混合物を使用することができ、これにウレタン化反応の触媒として公知の有機金属塩類、例えばナフテン酸鉛、オクチル酸鉛、ステアリン酸鉛等の有機鉛化合物又はナフテン酸すず、オクチル酸すず、ラウリル酸すず、テトラ−nブチルすず、n−ブチルチントリクロライド、トリメチルチンハイドロオキサイド、ジメチルチンジクロライド、ジブチルチンジラウレート等の有機すず化合物の単独あるいは混合物を配合し、適宜ケトン系等の溶剤で希釈することで、熱硬化型ポリウレタン系ハードコート液を調製する。そしてこれを通常の塗料における塗装方法により透明プラスチック成型品の外面に塗布し、70〜100℃の温度で加熱硬化することによってハードコート塗膜を形成させる。但しこの場合も、プラスチック成型品の熱変形温度以下での硬化温度の設定が前提となる。
このような熱硬化型ポリウレタン系ハードコート材料としては、例えば、特許第3650988号公報、特許第3583073号公報、特許第4498850号公報、特開2006−182904号公報等に記載された材料などを挙げることができる。
【0048】
紫外線硬化型アクリル系ハードコート材料には、不飽和基を有するアクリル系化合物として、例えばペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、フタル酸水素−(2,2,2−トリ−(メタ)アクリロイルオキシメチル)エチル、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート等の2〜6官能の(メタ)アクリル化合物、これらの(メタ)アクリル化合物をエチレンオキシド、プロピレンオキシド、エピクロルヒドリン、脂肪酸、アルキル、ウレタン変性品、エポキシ樹脂にアクリル酸を付加させて得られるエポキシアクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートから選ばれる水酸基を有する(メタ)アクリレートと、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、及びジフェニルメタンジイソシアネートから選ばれるポリイソシアネートを反応させたウレタンアクリレート類、アクリル酸エステル共重合体の側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入した共重合体等の多官能(メタ)アクリレート混合物等を使用することができ、これにベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン等の光重合開始剤を配合して用いる。そしてこれを透明プラスチック成型品の外面に塗布し、紫外線硬化することによってハードコート塗膜が形成される。
なお、紫外線硬化条件としては、波長100〜400nm、好ましくは200〜400nm程度の紫外線を、照射量200〜2,000mJ/cm2、好ましくは400〜1,600mJ/cm2程度照射することによって硬化することができる。
【0049】
本発明の防汚性付与剤は、ハードコート材料に配合することで、ハードコート層表面に防汚性、耐指紋性等を付与するのに有用である。これによって、指紋、皮脂、汗などの人脂、化粧品等が付着しても目立ちにくくなり、汚れが付着した場合であっても拭取り性に優れたハードコート表面を与える。このため、本発明の防汚性付与剤は、人体が触れて人脂、化粧品等により汚される可能性のある物品の表面に施与される、塗装膜もしくは保護膜を形成するために使用される、硬化性組成物の添加剤として有用である。このような物品としては、例えば、光磁気ディスク、CD・LD・DVD・ブルーレイディスクなどの光ディスク、ホログラム記録などに代表される光記録媒体;メガネレンズ、プリズム、レンズシート、ペリクル膜、偏光板、光学フィルター、レンチキュラーレンズ、フレネルレンズ、反射防止膜、光ファイバーや光カプラーなどの光学部品・光デバイス;CRT、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、フィールドエミッシプロジェクションディスプレイ、トナー系ディスプレイ等の各種画面表示機器、特にPC、携帯電話、携帯情報端末、ゲーム機、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、自動現金引出し預け入れ装置、現金自動支払機、自動販売機、自動車用等のナビゲーション装置、セキュリティーシステム端末等の画像表示装置、及びその操作も行うタッチパネル(タッチセンサー、タッチスクリーン)式画像表示入力装置;携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機、リモートコントローラ、コントローラ、キーボード等、車載装置用パネルスイッチなどの入力装置;携帯電話、携帯情報端末、カメラ、携帯音楽プレイヤー、携帯ゲーム機などの筐体表面;自動車の外装、ピアノ、高級家具、大理石などの塗装及び表面;美術品展示用保護ガラス、ショーウインドー、ショーケース、広告用カバー、フォトスタンド用のカバー、腕時計、自動車用フロントガラス、列車、航空機等の窓ガラス、自動車ヘッドライト、テールランプなどの透明なガラス製又は透明なプラスチック製(アクリル、ポリカーボネートなど)部材、各種ミラー部材等が挙げられる。
なお、ハードコート硬化膜の厚さは、通常、0.1〜30μm、好ましくは1〜10μm程度であればよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
防汚性付与剤の調製
10mlガラス製サンプル瓶に、表1に示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサン1.0gと2−プロパノール9.0gを秤量し、密栓して、30分間振盪した。該ポリシロキサンが完全に溶解したことを確認し、孔径0.45μmのPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製メンブレンフィルターでろ過して、パーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として10質量%含有する防汚性付与剤をそれぞれ調製した。
【0052】
ハードコート組成物の調製
前述の防汚性付与剤を用いて、下記に示すような配合でハードコート組成物を調製した。なお、ブランクとして、防汚性付与剤を添加しない組成物も調製した。
4官能アクリレート(EBECRYL40[ダイセルサイテック社製]):100質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル:137質量部
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184、チバ・ジャパン社製):3質量部
防汚性付与剤(防汚性付与成分濃度10質量%):10.0質量部
【0053】
ハードコート塗工材料の調製
防汚性付与剤を配合した各溶液を、黒色のポリカーボネート板(5×5×0.2cm)上にスピンコートし、コンベア型紫外線照射装置(パナソニック電工社製)で、窒素雰囲気中1.6J/cm2の紫外線を照射して厚さ7μmの硬化膜を形成した。このハードコート組成物の硬化膜を有するポリカーボネート板をテストピースとし、以下の試験に供した。
【0054】
1.外観試験
ハードコート膜の外観(色調・透明性、平滑性)を目視にて評価した。結果を表2に記載した。
【0055】
2.接触角測定試験
ハードコート膜表面の水及びオレイン酸に対する接触角を、接触角計(協和界面科学社製)を用いて測定した。結果を表2に記載した。
【0056】
3.耐指紋性試験
以下の方法で耐指紋性試験を行った。試験は5名のパネラーによって行った。評価結果は5名の評価値で最も多かった評価値を評価結果とした。2つの評価値が同数であった場合は、5名の協議により評価結果を決定した。
・指紋視認性
ハードコート膜表面に人差し指を押し付けて3秒間保持した後静かに指を離した。付着した指紋の視認性を、三波長発光形蛍光灯下で塗膜の真上から目視観察し、以下の4段階で評価した。
◎…指紋を認識することができなかった。
○…ほとんど指紋を認識できなかった。
△…若干指紋を認識することができた。
×…はっきりと指紋を認識することができた。
【0057】
・指紋拭取り性
ハードコート膜面に付着した指紋を不織布(ベンコットM−3II[旭化成せんい社製])で一方向に往復して指紋を拭取った。拭取り後の状態を三波長発光形蛍光灯下で塗膜の斜め45°上から目視観察し、指紋が目視できなくなるまでの往復回数を以下の3段階で評価した。
◎…3往復未満で指紋を拭取ることができた。
○…3往復以上5往復未満で指紋を拭取ることができた。
×…5往復以上拭いても指紋を拭取ることができなかった。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
[参考例1]実施例1で使用したパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンの製造
還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン96.2g、ヘキサフルオロメタキシレン105.7gを入れ、滴下漏斗に、下記式(5):
【化13】

で示されるビニル基含有パーフルオロポリエーテル432.2g([シロキサン]/[パーフルオロポリエーテル]=4.0(モル比))、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.32g(白金として1.6mg含有)、及びヘキサフルオロメタキシレン52.8gを混合した溶液を仕込んだ。内温を80℃まで加熱したのち、前述の溶液を内温110℃以下で滴下した。90〜100℃で1時間加熱し、IRスペクトルでパーフルオロポリエーテル(5)のビニル基由来の吸収が消失していることを確認した後、減圧下でヘキサフルオロメタキシレンと過剰のシクロテトラシロキサンを溜去して、下記式(6):
【化14】

で示されるパーフルオロポリエーテル変性SiH基含有シクロテトラシロキサン455.2gを得た。
【0061】
次に、還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに、上記で得られたシクロテトラシロキサン(6)150.0gとヘキサフルオロメタキシレン146.9gを投入した。内温を80℃まで加熱した後、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.18g(白金として0.9mg含有)を加えて、下記式(7):
【化15】

で示されるアリル基含有ポリエーテル化合物143.8g(シロキサン(6)中のSiH基/ポリエーテル化合物(7)中のアリル基=0.95(モル比))を80〜90℃で滴下した。滴下終了後、80℃で1時間加熱した後、減圧下でヘキサフルオロメタキシレンを溜去し、白色ペースト状の生成物を290.8g得た。
【0062】
上記で得られた生成物を、1H−NMR(日本電子(株)製、JNM−NS50、以下同じ)及びIRスペクトル(KBr法、(株)堀場製作所製、FT−730、以下同じ)の測定により分析した結果、下記式(8):
【化16】

で示される分子中のフッ素原子の質量割合が31.7%の化合物であった。
【0063】
[参考例2]実施例2で使用したパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンの製造
還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン96.2g、ヘキサフルオロメタキシレン106.1gを入れ、滴下漏斗に下記式(9):
【化17】

で示されるビニル基含有パーフルオロポリエーテル434.1g([シロキサン]/[パーフルオロポリエーテル]=4.0(モル比))、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.32g(白金として1.6mg含有)、及びヘキサフルオロメタキシレン53.0gを混合した溶液を仕込んだ。内温を80℃まで加熱したのち、前述の溶液を内温110℃以下で滴下した。90〜100℃で1時間加熱し、IRスペクトルでパーフルオロポリエーテル(9)のアリル基由来の吸収が消失していることを確認した後、減圧下でヘキサフルオロメタキシレンと過剰のシクロテトラシロキサンを溜去して、下記式(10):
【化18】

で示されるパーフルオロポリエーテル変性SiH基含有シクロテトラシロキサン456.3gを得た。
【0064】
次に、還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに、上記で得られたシクロテトラシロキサン(10)150.0gとヘキサフルオロメタキシレン112.5gを投入した。内温を80℃まで加熱した後、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.18g(白金として0.9mg含有)を加えて、下記式(11):
【化19】

で示されるアリル基含有ポリエーテル化合物75.0g(シロキサン(10)中のSiH基/ポリエーテル化合物(11)中のアリル基=0.95(モル比))を80〜90℃で滴下した。滴下終了後、80℃で1時間加熱した後、減圧下でヘキサフルオロメタキシレンを溜去し、白色ペースト状の生成物を224.0g得た。
【0065】
上記で得られた生成物を、1H−NMR及びIRスペクトルの測定により分析した結果、下記式(12):
【化20】

で示される分子中のフッ素原子の質量割合が42.9%の化合物であった。
【0066】
[参考例3]実施例3で使用したパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンの製造
還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン96.2g、ヘキサフルオロメタキシレン39.9gを入れ、滴下漏斗に下記式(13):
【化21】

で示されるアリル基含有パーフルオロポリエーテル103.3g([シロキサン]/[パーフルオロポリエーテル]=4.0(モル比))、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.32g(白金として1.6mg含有)、及びヘキサフルオロメタキシレン20.0gを混合した溶液を仕込んだ。内温を80℃まで加熱したのち、前述の溶液を内温110℃以下で滴下した。90〜100℃で1時間加熱し、IRスペクトルでパーフルオロポリエーテル(13)のアリル基由来の吸収が消失していることを確認した後、減圧下でヘキサフルオロメタキシレンと過剰のシクロテトラシロキサンを溜去して、下記式(14):
【化22】

で示されるパーフルオロポリエーテル変性SiH基含有シクロテトラシロキサン127.3gを得た。
【0067】
次に、還流冷却管と温度計を取り付けたフラスコに上記で得られたシクロテトラシロキサン(14)100.0gとヘキサフルオロメタキシレン109.0gを投入した。内温を80℃まで加熱した後、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.18g(白金として0.9mg含有)を加えて、下記式(15):
【化23】

で示されるアリル基含有ポリエーテル化合物118.0g(シロキサン(14)中のSiH基/ポリエーテル化合物(15)中のアリル基=0.95(モル比))を80〜90℃で滴下した。滴下終了後、80℃で1時間加熱した後、減圧下でヘキサフルオロメタキシレンを溜去し、淡褐色油状の生成物を216.9g得た。
【0068】
上記で得られた生成物を、1H−NMR及びIRスペクトルで分析した結果、下記式(16):
【化24】

で示される分子中のフッ素原子の質量割合が26.7%の化合物であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンを防汚性付与成分として含有する防汚性付与剤。
【化1】


(式中、Rfは炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状パーフルオロアルキル基、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基、Qは炭素数1〜12の2価の有機基、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基もしくはアシル基であり、R1、R2は互いに独立に炭素数1〜10のアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、a、b、c、dは互いに独立に0〜200の整数であり、但し、a+b+c+dは1以上であり、eは0又は1であり、p、qは互いに独立に0〜50の整数であり、但し、p+qは2以上であり、kは1〜3の整数である。)
【請求項2】
防汚性付与成分が、下記一般式(2):
【化2】


(式中、Q、R、p、q、p+q及びkは前記と同じである。fは2〜200の整数である。)
で示されるパーフルオロポリエーテル基含有ポリエーテル変性ポリシロキサンである請求項1記載の防汚性付与剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の防汚性付与剤を0.01〜10.0質量%含有することを特徴とする防汚性が付与されたハードコート材料。
【請求項4】
ハードコート材料が、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物からなることを特徴とする請求項3に記載の防汚性が付与されたハードコート材料。

【公開番号】特開2012−197395(P2012−197395A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63936(P2011−63936)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】