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防汚性布帛
説明

防汚性布帛

【課題】煩雑な加工技術を要することなく、汚染物質の繊維表面への付着および繊維間への侵入を十分に防止でき、たとえ汚染物質が付着しても容易に該汚染物質を除去できる防汚性布帛を提供すること。
【解決手段】複数の有機繊維を含むマルチフィラメントで構成された防汚性布帛であって、該マルチフィラメントの表面が繊維間で融着されてなる防汚性布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂、塵埃および煤煙等の汚染物質が付着し難く、たとえ汚染物質が付着しても脱離し易い防汚性布帛に関するものである。本発明は特に、屋内外で産業用資材として好適に使用できる防汚性布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土砂、塵埃および煤煙等の汚染物質の飛散を防止するために、ネット形態やシート形態の飛散防止用布帛が使用されている。例えば、建設工事現場や各種工場等において、土砂、塵埃、煤煙、原材料等が風により飛散し、近隣を汚染するため、その周囲に飛散防止用ネットを張ったり、または当該資材に直接的に飛散防止用シートを被せたりしている。このような飛散防止用布帛は一般に、有機繊維からなるマルチフィラメントで構成され、具体的には当該マルチフィラメントを織り込んだり、編み込んだりして、織物、編物またはネットの形態で提供される。
【0003】
しかしながら、飛散防止用布帛を長期にわたって使用すると、当該布帛を構成するマルチフィラメントにおける繊維表面に汚染物質が付着したり、繊維間の隙間に汚染物質が侵入して詰まったりする。その結果、当該布帛の汚れが視覚的に顕著になり、美観を損ねるという問題が生じていた。しかも繊維表面に付着したり、繊維間に侵入した汚染物質は風雨によっても、または水洗によっても、除去困難であった。
【0004】
そこで、汚染物質が付着し難くし、かつ付着した汚染物質を洗濯で落ち易くするため、布帛を構成する繊維に防汚性能を有する被膜を形成する加工技術が報告されている。例えば、特許文献1には、合成繊維からなる繊維シートの構成繊維表面にフッ素系樹脂からなる透明な下地被膜を形成させ、この下地被膜の上にSiOを主成分とするセラミックスからなる透明な外面被膜を物理蒸着により形成させる技術が開示されている。しかしながら、加工技術が煩雑であり、コスト面で不利であった。
【0005】
また例えば、特許文献2には、繊維製品に対して、特定の構造を有するポリエステル樹脂を含む水性液、特定の構造を有するフッ素系アクリル共重合体を含む水性液及び特定の架橋剤を付与し、乾燥させて被膜を形成する技術が開示されている。しかしながら、加工技術がやはり煩雑であり、コスト面で不利であった。
【0006】
また例えば、特許文献3には、光触媒活性を有する金属酸化物微粒子を利用して、付着した汚染物質を分解する技術が開示されている。しかしながら、この技術では付着した汚染物質を分解することは可能であるが、汚染物質の付着および繊維間への汚染物質の浸入は抑制できないという欠点があった。また、付着した汚染物質についても、有機物成分の分解には効果的であるが、無機物成分の分解には効果を示さないため、特に屋外で使用することが多い産業用資材に適用した場合には、無機系の汚染物質に対して十分な防汚性能を得ることはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−105853号公報
【特許文献2】特開2006−152487号公報
【特許文献3】特開2007−046178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、煩雑な加工技術を要することなく、汚染物質の繊維表面への付着および繊維間への侵入を十分に防止でき、たとえ汚染物質が付着しても容易に該汚染物質を除去できる防汚性布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の有機繊維を含むマルチフィラメントで構成された防汚性布帛であって、該マルチフィラメントの表面が繊維間で融着されてなる防汚性布帛に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る防汚性布帛は、被膜形成技術等の煩雑な加工技術を要することなく、汚染物質の繊維表面への付着および繊維間への侵入を十分に防止でき、たとえ汚染物質が付着しても容易に該汚染物質を除去できる。また本発明に係る防汚性布帛は、優れた防汚性を長期にわたって維持でき、比較的低コストで得ることができる。しかも、特定のマルチフィラメントを用いることにより、本発明に係る防汚性布帛は十分な強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1で得られた布帛におけるマルチフィラメント表面の繊維形状を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1で得られた布帛におけるマルチフィラメント表面の繊維形状を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る防汚性布帛は、複数の有機繊維を含むマルチフィラメントで構成されてなり、後述する熱処理により、当該マルチフィラメントの表面が繊維間で融着されている。防汚性布帛の形態は、当該布帛が後述のマルチフィラメントで構成される限り特に限定されるものではなく、例えば、織物、編物、ネット等の形態が挙げられ、当該布帛が用いられる用途や場所に応じて適宜選択されればよい。マルチフィラメントは、複数の有機繊維を撚り合わせてなる撚糸の形態を有しても良いし、または複数の有機繊維が単に収束されてなる無撚の形態を有していても良い。
本明細書中、防汚性とは土砂、塵埃および煤煙等の汚染物質、特に無機系の汚染物質の付着を防止し、たとえ汚染物質が付着しても容易に除去できる特性を意味するものとする。
【0013】
[マルチフィラメント]
本発明に係る防汚性布帛を構成するマルチフィラメントは、少なくとも熱融着性有機繊維(以下、単に熱融着性繊維という)を含むものである。熱融着性繊維は、熱によって溶融し、冷却固化により隣接する繊維と接着し得る有機繊維である。熱融着性繊維の具体例として、比較的低融点を有する低融点熱可塑性ポリマー(以下、単に低融点ポリマーという)からなる鞘部および比較的高融点を有する高融点熱可塑性ポリマー(以下、単に高融点ポリマーという)からなる芯部を有する芯鞘型有機繊維(以下、芯鞘型有機繊維Aという)、および低融点ポリマーからなる低融点単一有機繊維が挙げられる。
【0014】
本発明においては、マルチフィラメントの少なくとも表面において、当該熱融着性繊維が、低融点ポリマー成分の溶融・固化により、隣接する繊維と融着するので、繊維間の隙間を減少させることができる。このため、汚染物質のマルチフィラメント内部への侵入を防止できる。また、低融点ポリマー成分の溶融・固化により、マルチフィラメント表面は図1に示すように平滑化され、マルチフィラメントの表面積が低減されるので、マルチフィラメント表面への汚染物質の付着を低減できる。たとえ汚染物質が付着しても容易に汚染物質を除去できる。
【0015】
マルチフィラメントは、防汚性布帛の強度の観点から、高融点ポリマーを含有することが好ましい。高融点ポリマーは、芯部が高融点ポリマーから構成された上記芯鞘型有機繊維Aの形態で含有されても良いし、高融点ポリマーからなる高融点単一有機繊維の形態で含有されてもよいし、またはそれらの複合形態で含有されてもよい。
【0016】
本発明において、熱融着性繊維における低融点ポリマーの含有量は、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、例えば、マルチフィラメント中の全有機繊維を構成する全熱可塑性ポリマーに対して10質量%以上であればよいが、防汚性布帛の強度の観点からは10〜60質量%が好ましい。低融点ポリマーの含有量が少なすぎると、繊維間の隙間を十分に減少させることができないため、十分な防汚性が得られない。
【0017】
本発明に係る防汚性布帛を構成するマルチフィラメントの好ましい実施形態1および2について詳しく説明する。実施形態1および2は、布帛の防汚性と強度とのバランスの観点から好ましい実施形態である。
【0018】
(実施形態1)
本実施形態においては熱融着性繊維として芯鞘型有機繊維Aのみが使用され、マルチフィラメントは芯鞘型有機繊維Aのみからなるか、または芯鞘型有機繊維Aおよび高融点単一有機繊維からなる(実施形態1)。この場合、芯鞘型有機繊維Aにおける低融点ポリマーの含有量は、マルチフィラメント中の全有機繊維を構成する全熱可塑性ポリマーに対して10〜50質量%が好ましく、特に10〜30質量%が好ましい。
【0019】
本実施形態においてマルチフィラメントにおける芯鞘型有機繊維Aの含有比率は40〜100質量%、特に50〜100質量%が好ましい。当該含有比率は、防汚性と強度との観点から、高いほど好ましく、最も好ましくは100質量%である。このような最も好ましい態様において、マルチフィラメントは芯鞘型有機繊維のみからなっている。
【0020】
マルチフィラメントを構成する有機繊維の総数は通常、20〜300本であり、好ましくは50〜150本である。本実施形態においてマルチフィラメントが芯鞘型有機繊維Aおよび高融点単一有機繊維からなる場合、当該マルチフィラメントは、これらの繊維が均一に混合された混繊マルチフィラメントとして使用されることが好ましい。
【0021】
(実施形態2)
本実施形態においては熱融着性繊維として低融点単一有機繊維のみが使用され、マルチフィラメントは低融点単一有機繊維および高融点単一有機繊維からなる(実施形態2)。この場合、マルチフィラメントにおける低融点単一有機繊維の含有比率は10質量%以上、特に10〜60質量%であり、好ましくは30〜60質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
【0022】
マルチフィラメントを構成する有機繊維の総数は実施形態1においてと同様である。本実施形態においてマルチフィラメントは、低融点単一有機繊維および高融点単一有機繊維が均一に混合された混繊マルチフィラメントとして使用されることが好ましい。
【0023】
以下、本発明に係る防汚性布帛のマルチフィラメントを構成し得る有機繊維について詳しく説明する。
(芯鞘型有機繊維A)
芯鞘型有機繊維Aは、低融点ポリマーからなる鞘部および高融点ポリマーからなる芯部を有する芯鞘型有機繊維である。当該芯鞘型有機繊維を構成する低融点ポリマーおよび高融点ポリマーは、鞘部と芯部との相溶性を考慮すると、互いに同種類のポリマーを用いることが好ましい。
【0024】
芯鞘型有機繊維Aの芯部と鞘部との質量比率は、防汚性と強度の観点から、例えば、芯部/鞘部の比率で1/1〜4/1、特に1.5/1〜3.5/1が好適である。
【0025】
芯鞘型有機繊維Aの繊度、強度および伸度は、本発明の目的が達成される限り特に制限されない。
繊度は通常、1〜20デシテックスであり、好ましくは3〜15デシテックスである;
強度は2cN/dtex以上が好ましい。なお、強度は高いほど好ましいが、上限としては、8cN/dtex程度であれば十分である;
伸度は12〜30%であるのが好ましい。
【0026】
芯鞘型有機繊維Aの断面形状は、防汚性の観点から、円形状、楕円形状が好ましい。断面形状とは、繊維の長手方向に対して垂直な断面における形状のことである、
【0027】
芯鞘型有機繊維Aにおける芯部および鞘部にはそれぞれ独立して、防汚性が損なわれない程度に、熱安定剤、結晶核剤、艶消剤、顔料、耐光剤、耐候剤、滑剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、難燃剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質等の添加剤が含有されてもよい。
【0028】
芯鞘型有機繊維Aは市販品として入手可能である。例えば、MELSET(R)(ユニチカ(株)製)が使用できる。
【0029】
芯鞘型有機繊維Aとしては、低融点ポリマーおよび高融点ポリマーの融点、芯部と鞘部との質量比率、繊度、強度および伸度等の物性がそれぞれ上記範囲内で異なる2種類以上の芯鞘型有機繊維Aが使用されてよい。
【0030】
(低融点単一有機繊維)
低融点単一有機繊維は低融点ポリマーのみからなる有機繊維である。
低融点単一有機繊維の繊度、強度、伸度、断面形状は芯鞘型有機繊維Aの説明で例示した同様の範囲内であってよい。
低融点単一有機繊維には芯鞘型有機繊維Aの説明で例示した同様の添加剤が含有されてもよい。
【0031】
低融点単一有機繊維は市販品として入手可能である。
【0032】
低融点単一有機繊維としては、低融点ポリマーの融点、繊度、強度および伸度等の物性がそれぞれ上記範囲内で異なる2種類以上の低融点単一有機繊維が使用されて良い。
【0033】
(高融点単一有機繊維)
高融点単一有機繊維は高融点ポリマーのみからなる有機繊維である。
高融点単一有機繊維の繊度、強度、伸度、断面形状は芯鞘型有機繊維Aの説明で例示した同様の範囲内であってよい。
高融点単一有機繊維には芯鞘型有機繊維Aの説明で例示した同様の添加剤が含有されてもよい。
【0034】
高融点単一有機繊維は市販品として入手可能である。
【0035】
高融点単一有機繊維としては、高融点ポリマーの融点、繊度、強度および伸度等の物性がそれぞれ上記範囲内で異なる2種類以上の高融点単一有機繊維が使用されて良い。
【0036】
(低融点ポリマーおよび高融点ポリマー)
芯鞘型有機繊維Aおよび低融点単一有機繊維を構成する低融点ポリマーは共通するものであり、それぞれ独立して以下の範囲内であればよい。
芯鞘型有機繊維Aおよび高融点単一有機繊維を構成する高融点ポリマーは共通するものであり、それぞれ独立して以下の範囲内であればよい。
【0037】
低融点ポリマーおよび高融点ポリマーの種類は、特に限定されるものではないが、例えばポリアミド、芳香環を含有する芳香族系ポリエステル、芳香環を含有しない脂肪族系ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタンまたはこれらの再生品などを用いることができる。低融点ポリマーおよび高融点ポリマーは、熱処理による繊維間の融着、芯部と鞘部との相溶性を考慮すると、互いに同種類のポリマーを用いることが好ましい。低融点ポリマーおよび高融点ポリマーは、高強度及び高タフネスの点に加えて、寸法安定性や耐候性の点では、共にポリエステルからなることが好ましい。低融点ポリマーおよび高融点ポリマーは、耐摩耗性の点では、共にポリアミドからなることが好ましい。
【0038】
低融点ポリマーと高融点ポリマーの融点の差は、防汚性布帛における防汚性と強度とのバランスの観点から、20℃以上、特に40〜150℃が好ましい。
【0039】
マルチフィラメント中において融点が異なる2種類以上の低融点ポリマーが使用されてよく、その場合、いずれの低融点ポリマーも、その融点が、高融点ポリマーの融点と上記関係を満たせばよい。
マルチフィラメント中において融点が異なる2種類以上の高融点ポリマーが使用されてよく、その場合、いずれの高融点ポリマーも、その融点が、低融点ポリマーの融点と上記関係を満たせばよい。
【0040】
低融点ポリマーの融点は、熱処理の容易性、および加工性の観点から、100〜200℃が好ましく、より好ましくは120〜190℃、さらに好ましくは140〜180℃である。
【0041】
高融点ポリマーの融点は、強度、熱処理の容易性、および加工性の観点から、また、上記したように低融点ポリマーとの融点差を考慮して、150〜300℃の範囲のなかで適宜選択すればよい。
【0042】
本明細書中、融点は示差走査熱量測定(DSC)により描かれるDSC曲線における融解ピークの頂点の温度を用いている。
【0043】
[熱処理]
本発明の防汚性布帛は、上記したマルチフィラメントを用いて公知の方法により所望の形態に形成された前駆体布帛を熱処理することにより製造できる。熱処理は複雑な加工工程を要さないため、実施が容易である。
【0044】
熱処理とは、低融点ポリマーの融点より高い雰囲気温度で前駆体布帛を保持する処理である。これにより、マルチフィラメントの少なくとも表面において、熱融着性繊維が、低融点ポリマー成分の溶融・固化により、隣接する繊維と融着し、繊維間の隙間が減少するとともに、平滑面が形成される。その結果、汚染物質の付着を十分に防止でき、たとえ汚染物質が付着しても容易に該汚染物質を除去できる。
低融点ポリマーの融点とは、熱融着性繊維を構成する低融点ポリマーの融点であり、2種類以上の熱融着性繊維を用いた場合は、融点が最も高い低融点ポリマーの融点を基準とし、この最も高い低融点ポリマーの融点より高い雰囲気温度で熱処理を施せばよい。
【0045】
マルチフィラメントが高融点ポリマーを含有する場合において、熱処理時における雰囲気温度は、防汚性布帛の強度の観点から、低融点ポリマーの融点より高く、かつ高融点ポリマーの融点より低い雰囲気温度が好ましい。雰囲気温度が高すぎると、コスト面で不利となるばかりでなく、高融点ポリマーが熱によるダメージを受け、布帛全体として強度の低下が起こる。雰囲気温度は、防汚性と強度とのバランスの観点からは、低融点ポリマーの融点をMpと表したとき、Mp+5℃以上、Mp+20℃未満が好ましい。
【0046】
熱処理を施す時間は、熱融着性繊維を構成する低融点ポリマーが充分に溶融する時間であればよい。ただし、マルチフィラメントが高融点ポリマーを含有する場合において熱処理時間が長すぎると、コスト面で不利となるばかりでなく、高融点ポリマーが熱によるダメージを受け、布帛全体として強度の低下を起こすようになる。このため、この場合の熱処理時間は、30秒間〜5分間が好ましく、より好ましくは1分間〜3分間である。
【0047】
本発明の防汚性布帛は、マルチフィラメントの少なくとも表面近傍において、熱融着性繊維が、低融点ポリマー成分の溶融・固化により、隣接する繊維と融着するので、繊維間の隙間が低減される。本発明は、マルチフィラメントの内部においても、熱融着性繊維が隣接繊維と融着することを妨げるものではないが、マルチフィラメントの表面近傍のみにおいて熱融着性繊維の隣接繊維との融着が起こることが好ましい。防汚性布帛において、柔軟性が発現し、風合いに優れるためである。熱処理時において、雰囲気温度をMp+5℃以上、Mp+15℃以下とし、かつ熱処理時間を1分間〜3分間とすることにより、そのような好ましい構造(すなわち、マルチフィラメントの表面近傍のみにおいて低融点ポリマー熱融着性繊維の隣接繊維との融着が起こった構造)を有する防汚性布帛を得ることができる。
【0048】
[防汚処理]
本発明の防汚性布帛は、熱処理後、防汚処理されることが好ましい。防汚性がより一層、向上するためである。防汚処理としては、マルチフィラメントの表面に微粒子層を形成する防汚処理を採用することが好ましい。これによって、マルチフィラメント表面において残った繊維間の隙間が当該微粒子によって埋められる。またマルチフィラメント表面の凹凸が均される。それらの結果、汚染物質の付着をより一層、十分に防止でき、たとえ汚染物質が付着しても、より一層容易に該汚染物質を除去できるようになる。
【0049】
防汚処理のための微粒子(防汚剤微粒子)としては、微粒子状のカチオン変性オルガノシリケートが好ましく用いられる。微粒子状のカチオン変性オルガノシリケートは、通常、1〜3級アミノ基や4級アンモニウム基などのカチオン性基と、シリカ表面のシラノール基に対して反応性を有する官能基との双方を有する有機化合物により、シリカ微粒子を表面処理することによって製造される。このようなカチオン変性オルガノシリケートは、汚染物質が付着し難く、付着された汚染物質が水洗によって洗い流されやすい。
【0050】
カチオン変性オルガノシリケートは水分散体の形態で市販されている。例えば、BAYGARD−AS(R)(バイエル(株)製)等が使用できる。
【0051】
上記の好ましい防汚処理は、上記防汚剤微粒子の分散液をパディング法、ディップ法、スプレー法、コーティング法などにより、布帛に適用し、その後、乾燥させることによって達成できる。カチオン変性オルガノシリケートを用いる場合は、カチオン変性オルガノシリケートを水中に分散させたエマルション溶液を用いればよい。かかる防汚処理は複雑な加工工程を要さず、実施が容易なため好ましい。
【0052】
本発明においては、上記防汚処理の代わりに、他の防汚処理を行ってもよい。そのような他の防汚処理としては、例えば、洗濯での汚れを落ちやすくする親水加工による吸水SR(ソイルリリース)加工処理、フッ素加工剤を塗布してコーティング加工することにより、汚れを付着しにくくするSG(ソイルガード)加工処理、前記吸水SR加工処理とSG加工処理の両方を併用したSGR加工処理等が挙げられる。また、その他、撥水性、撥油性および防汚性の付与のためにフッ素系やシリコーン系の処理剤などを用いた加工処理も挙げられる。
【0053】
[用途]
本発明の防汚性布帛は、防汚性能および防塵性能が要求される衣料用途、インテリア用途および産業資材用途など様々な分野に好適に使用することができる。
本発明の防汚性布帛は産業用資材として、特に、土砂、塵埃、煤煙、原材料等の飛散防止用布帛(織物、編物またはネット)として有用である。
【実施例】
【0054】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。実施例における布帛の表面状態の確認および防汚性の評価は、次の方法で行った。
【0055】
1.表面状態の確認
マイクロスコープを用いて、布帛の表面状態を観察し、繊維間の隙間について評価した。また、布帛の断面を観察し、マルチフィラメントの表面積について評価した。
【0056】
(表面状態)
○;低融点ポリマー成分の溶融固化により、隣接する繊維間で融着が起こり、繊維間の隙間がほとんど存在しなかった;
△;低融点ポリマー成分の溶融固化により、隣接する繊維間で融着が起こったものの、繊維間の隙間が僅かに存在した(実用上問題なし);
×;隣接する繊維間で融着が起こらず、繊維間に隙間が著しく存在した。
【0057】
(断面状態)
○;低融点ポリマー成分が溶融固化し、該溶融物がマルチフィラメントの周囲を覆っており、マルチフィラメントの表面積が小さくなっていることを確認した;内部では溶融固化は起きていなかった;
△;内部においても溶融固化が起きていた;
×;マルチフィラメントの周囲が溶融物により覆われておらず、マルチフィラメントの表面積に変化はなかった。
【0058】
2.防汚性
JIS L−1919「繊維製品の防汚性試験方法」のA法に準じて乾性の人工汚染物質を調製した。人工汚染物質2gをポリエチレン製袋に入れ、試験片を1g入れ、袋一杯に空気を封入した。これをICI形ピリング試験機の回転箱に入れ、毎分60回転±2回転の速度で30分間操作した。操作後、試験片の中央部を5回指ではじいたもの(試験片A)を目視にて観察し、汚れの付き難さを評価した。また操作後の試験片を30秒間水洗したもの(試験片B)を目視にて観察し、汚れの落ち易さを評価した。さらに試験片Bに対してマイクロスコープによる表面観察を行い、繊維表面および繊維間の汚れの付着状況を確認した。
【0059】
(汚れの付き難さ;試験片A)
◎;汚染物質が全く付着していなかった;
○;汚染物質がほとんど付着していなかった;
△;汚染物質が僅かに付着していたものの、実用上問題なかった;
×;汚染物質の付着が著しく、実用上問題があった。
【0060】
(汚れの落ち易さ;試験片B)
◎;汚染物質が全く除去されていた;
○;汚染物質がほとんど除去されていた;
△;汚染物質が僅かに残存していたものの、実用上問題なかった;
×;汚染物質の残存が著しく、実用上問題があった。
【0061】
(表面観察;試験片B)
◎;繊維表面および繊維間に汚染物質は全く残存していなかった;
○;繊維表面および繊維間に汚染物質はほとんど残存していなかった;
△;繊維表面および繊維間に汚染物質が僅かに残存していたものの、実用上問題なかった;
×;繊維表面または/および繊維間に汚染物質の残存が著しく、実用上問題があった。
【0062】
3.マルチフィラメント
以下に示すマルチフィラメント糸を用いた。いずれのマルチフィラメント糸も同質量であった。
(マルチフィラメント糸A1)(芯鞘型有機繊維A)
マルチフィラメント糸A1は、ポリエステル系芯鞘型繊維[ユニチカ(株)製;MELSET(R)、芯鞘型繊維、芯部(PET、融点265℃)、鞘部(テレフタル酸と1,4−ブタンジオールおよびエチレングリコールとからなる共重合ポリエステル、融点170℃)、芯部:鞘部=2.7:1(質量比)]のみによって構成させた。
マルチフィラメント糸A1は、1100デシテックス/96フィラメント、強度4.5cN/dtex、伸度17.5%であった。
【0063】
(マルチフィラメント糸A2)(低融点単一有機繊維)
マルチフィラメント糸A2は、融点150℃の共重合ポリエステルのみからなる単一繊維のみから構成させた。
マルチフィラメント糸A2は、1100デシテックス/96フィラメント、強度7.1cN/dtex、伸度15.2%であった。
【0064】
(マルチフィラメント糸B1)(高融点単一有機繊維)
マルチフィラメント糸B1は、融点265℃のポリエチレンテレフタレートのみからなる単一繊維のみから構成させた。
マルチフィラメント糸B1は、1100デシテックス/96フィラメント、強度7.1cN/dtex、伸度15.2%であった。
【0065】
実施例1
マルチフィラメント糸A1を構成するフィラメントと、マルチフィラメント糸B1を構成するフィラメントとを混繊させた混繊マルチフィラメント糸(2200デシテックス/192フィラメント)を形成し、筒編地を作製した(熱融着性繊維の混率50%)。なお、この混繊マルチフィラメント糸は、撚りを有さず無燃糸である。この筒編地を180℃の乾熱ヒーターで2分間熱処理して芯鞘型繊維を隣接する繊維と溶融接着させた。次いで、防汚剤として、カチオン変性オルガノシリケート(バイエル(株)製、BAYGARD−AS(R))を用意し、これを50g/Lに水で希釈した水分散液に対して、得られた筒編地を浸漬させた後、ニップローラーでニップし、乾熱ヒーターにより雰囲気温度100℃で3分間乾燥させて筒編地を得た(防汚処理)。実施例1で得られた布帛におけるマルチフィラメント表面の繊維形状を示す電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0066】
実施例2
混繊マルチフィラメント糸の代わりにマルチフィラメント糸A1のみを用いて、筒編地を作製したこと以外、実施例1と同様の方法により、筒編地を得た(熱融着性繊維の混率100%)。
【0067】
実施例3
防汚処理を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、筒編地を得た(熱融着性繊維の混率50%)。
【0068】
実施例4
防汚処理を行わなかったこと以外、実施例2と同様の方法により、筒編地を得た(熱融着性繊維の混率100%)。
【0069】
実施例5
マルチフィラメント糸A2を構成するフィラメントと、マルチフィラメント糸B1を構成するフィラメントとを混繊させた混繊マルチフィラメント糸(2200デシテックス/192フィラメント)を形成し、筒編地を作製したこと(熱融着性繊維繊維の混率50%)、および筒編地を乾熱ヒーターにより雰囲気温度160℃で2分間熱処理して溶融接着を行ったこと以外、実施例1と同様の方法により、筒編地を得た。
【0070】
実施例6
防汚剤としてフッ素系防汚剤(商品名「アサヒガードAG−1100」)(旭硝子社製)を用いたこと以外、実施例1と同様の方法により、筒編地を得た(熱融着性繊維の混率50%)。
【0071】
比較例1
混繊マルチフィラメント糸の代わりにマルチフィラメント糸B1のみを用いて、筒編地を作製したこと(熱融着性繊維の混率0%)、熱処理を行わなかったこと、および防汚処理を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、筒編地を得た。比較例1で得られた布帛におけるマルチフィラメント表面の繊維形状を示す電子顕微鏡写真を図2に示す。
【0072】
比較例2
混繊マルチフィラメン糸の代わりにマルチフィラメント糸B1のみを用いて、筒編地を作製したこと(熱融着性繊維の混率0%)、および熱処理を行わなかったこと以外、実施例1と同様の方法により、筒編地を得た。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例1〜4では、マルチフィラメント表面において、芯鞘型繊維Aが当該繊維における低融点ポリマー成分の溶融・固化により、隣接する繊維と融着したため、マルチフィラメント表面における繊維間の隙間が減少した。これによって、繊維間への汚れの侵入が抑制されるので、汚れが付着し難くなった。また汚れが落ち易くなった。しかも芯鞘型繊維Aには芯部に高融点ポリマー成分が含有されるので所望の強度を有していた。
特に実施例2では、筒編地の全てが芯鞘型繊維Aで構成されているため、実施例1と比較して、マルチフィラメント表面において繊維間の隙間がより一層、減少し、汚れが付着する表面積が著しく減少した。しかも防汚処理がなされたので、汚れがより一層、付着し難くなり、また汚れがより一層、落ち易くなった。
実施例3では防汚処理がなされていないため、実施例1と比較して、防汚性が低下したが、実用上問題のない範囲内であった。
実施例4では防汚処理がなされていないが、筒編地の全てが芯鞘型繊維Aで構成されているため、実施例1と同程度の防汚性を有していた。
【0075】
実施例5では、マルチフィラメント表面において、低融点単一有機繊維が低融点ポリマー成分の溶融・固化により、隣接する繊維と融着したため、マルチフィラメント表面における繊維間の隙間が減少した。これによって、繊維間への汚れの侵入が抑制されるので、汚れが付着し難くなった。また汚れが落ち易くなった。しかも、高融点単一有機繊維が併用されたので、所望の強度を有していた。
実施例6では、防汚剤としてカチオン変性オルガノシリケートが使用されなかったので、実施例1と比較して、防汚性が低下したが、実用上問題のない範囲内であった。
【0076】
比較例1〜2では、熱処理がなされなかったので、繊維間の隙間が多く、表面積も大きく、汚れの付着および繊維間への汚れの侵入が著しかった。そのため、水洗を行っても繊維間および繊維表面の汚れの残存が確認された。
特に比較例2では、防汚処理を行っても、防汚性は向上しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の有機繊維を含むマルチフィラメントで構成された防汚性布帛であって、該マルチフィラメントの表面が繊維間で融着されてなる防汚性布帛。
【請求項2】
前記マルチフィラメントが、低融点熱可塑性ポリマーからなる鞘部および高融点熱可塑性ポリマーからなる芯部を有する芯鞘型有機繊維A、および低融点熱可塑性ポリマーからなる低融点単一有機繊維から選択される熱融着性有機繊維を含む請求項1に記載の防汚性布帛。
【請求項3】
前記マルチフィラメントが、高融点熱可塑性ポリマーからなる高融点単一有機繊維をさらに含む請求項2に記載の防汚性布帛。
【請求項4】
前記熱融着性繊維における低融点熱可塑性ポリマーの含有量が、前記マルチフィラメント中の全有機繊維を構成する全熱可塑性ポリマーに対して10質量%以上である請求項2または3に記載の防汚性布帛。
【請求項5】
前記マルチフィラメントが、芯鞘型有機繊維Aのみ、または芯鞘型有機繊維Aおよび高融点単一有機繊維からなり、
該芯鞘型有機繊維Aにおける低融点熱可塑性ポリマーの含有量が、前記マルチフィラメント中の全有機繊維を構成する全熱可塑性ポリマーに対して10〜50質量%である請求項3または4に記載の防汚性布帛。
【請求項6】
前記マルチフィラメントにおける芯鞘型有機繊維Aの含有比率が40〜100質量%である請求項5に記載の防汚性布帛。
【請求項7】
前記マルチフィラメントが、低融点単一有機繊維および高融点単一有機繊維からなり、
該マルチフィラメントにおける低融点単一有機繊維の含有比率が10〜60質量%である請求項3または4に記載の防汚性布帛。
【請求項8】
低融点熱可塑性ポリマーの融点と高融点熱可塑性ポリマーの融点との差が20〜150℃である請求項3〜7のいずれかに記載の防汚性布帛。
【請求項9】
前記マルチフィラメントで構成された布帛を、低融点熱可塑性ポリマーの融点より高く、かつ高融点熱可塑性ポリマーの融点より低い雰囲気温度で熱処理してなる請求項3〜8のいずれかに記載の防汚性布帛。
【請求項10】
前記熱処理が、低融点熱可塑性ポリマーの融点をMpと表したとき、Mp+5℃以上、Mp+20℃未満の雰囲気温度で布帛を30秒間〜5分間保持する処理である請求項9に記載の防汚性布帛。
【請求項11】
前記マルチフィラメントの表面に微粒子層が形成されてなる請求項1〜10のいずれかに記載の防汚性布帛。
【請求項12】
前記微粒子がカチオン変性オルガノシリケート微粒子である請求項11に記載の防汚性布帛。
【請求項13】
前記防汚性布帛が織物、編物またはネットの形態を有する請求項1〜12のいずれかに記載の防汚性布帛。
【請求項14】
産業用資材として使用される請求項1〜13のいずれかに記載の防汚性布帛。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−40420(P2013−40420A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178676(P2011−178676)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】