説明

防汚性物品及びその製造方法

【課題】本発明は、塵や埃等の微細物質が付着しにくく、また付着した微細物質の除去性に優れ、さらに微細物質が付着していても良好な防汚性、汚れ除去性を示す防汚性物品とその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基材表面に一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランの硬化縮合被膜を有し、該硬化縮合被膜のフッ素濃度が0.2〜2.0μg/cmであることを特徴とする防汚性物品、及び、該物品を得るための好適な製造方法。
【化】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染物質が付着しにくく、また付着した汚染物質を除去しやすく、加えて埃などが付着しにくい物品とその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属、ガラス、プラスチック、陶磁器等の基材は、自動車部品、家庭用品、家電製品、OA機器として汎用されている。これらの基材表面には、雨などによる水滴や水垢、浮遊するゴミやたばこのヤニなどの油状物質、人の手による指紋や皮脂などが付着して汚れることが多いため、これらの汚れを付着し難く、さらには、一旦付着した汚れを容易に除去できるような防汚性の機能が求められている。
【0003】
そのような防汚機能を発現するために、これまでに多くの方法が提案されてきた。特許文献1には、パーフルオロアルキルエーテル基を有する化合物からなる防汚剤組成物が開示されている。特許文献2では、撥水性、防汚性及び耐久性に優れるパーフルオロポリエーテル基を持つアルコキシシラン化合物を主成分とする処理膜が基材表面に形成された撥水処理ガラスが開示されている。特許文献3では、油状の汚染物質に対する防汚性に優れ、特に指紋に対する防汚性に優れた含フッ素ポリマーと該ポリマー層を基材表面に形成した防汚性基材が開示されている。特許文献4では、耐久性、防汚性、特に指紋拭き取り性に優れたパーフルオロポリエーテル基変性シラン、及びこれを主成分とする表面処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−234071号公報
【特許文献2】特開平11−092177号公報
【特許文献3】国際公開第98/49218号
【特許文献4】特開2003−238577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献に示したように、基材表面に防汚性の機能を発現する層(以下、防汚層と記載する)を形成させる場合、該防汚層を構成する材料として、撥水撥油性の高い含フッ素化合物を用い、0.1nm〜100μm程度の防汚層とする場合が多い。
【0006】
実際、特許文献4に記載されたパーフルオロポリエーテル基変性シランなどの硬化縮合被膜を防汚層とした場合、良好な防汚性を示す。しかしながら、塵や埃等の微細なゴミ(以下、単に「微細物質」と記載する。)の付着防止や付着した微細物質の除去については充分とはいいがたく、また、該微細物質が多く付着すると、指紋等の皮脂汚れや、食品油、化粧品汚れといった油状の汚染物質に対する防汚性、汚れ除去性が低下することがあった(後記する比較例を参照)。例えば鏡やディスプレイ、屋内外の窓などは、表面が常に外部に晒されている等、防汚性物品の使用される環境によっては、微細物質は短期間で多量に接触する可能性があり、微細物質の存在によって防汚性能の低下が起きることは大いに問題であった。
【0007】
本発明は、微細物質が付着しにくく、また付着した微細物質の除去性に優れ、さらに微細物質が付着していても良好な防汚性、汚れ除去性を示す防汚性物品とその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を行い、基材表面に形成された硬化縮合被膜の単位面積当たりのフッ素量(フッ素濃度)を特定の範囲内にすることで、上記の課題を解決し、優れた防汚性が得られることを見出した。
【0009】
つまり、本発明は、基材表面に一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランの硬化縮合被膜を有し、該硬化縮合被膜のフッ素濃度が0.2〜2.0μg/cmであることを特徴とする防汚性物品である。
【化1】

【0010】
(式中、W:フッ素原子又は下記式の構造で表される置換基を表し、
【化2】

【0011】
Xは、式:−(O)−(CF−(CH−(OC−(ここで、g、h、i及びjはそれぞれ独立して、0〜50の整数を表し、かつ、gとhの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。)で示される基を表す。Yは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Zはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、アミノ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解可能な官能基を表し、Rは炭素数が1〜10のアルキル基を表し、Vは酸素又は2価の有機基を表す。aは0〜50の整数を表し、bは1〜200の整数を表し、cは1〜3の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜4の整数を表し、e′は0又は1の整数を表し、fは0〜5の整数を表し、kは0〜5の整数を表し、lは0又は1の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立して、0〜50の整数であり、かつ、mとnの和は1以上である。)
さらに、本発明は、前記防汚性物品の製造方法であり
(1)一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランを溶媒で希釈し塗布剤とし、該塗布剤を部材に保持させた後、該部材を基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で任意の一方向に往復させて全面に塗布する塗布A、次いで前記部材を再度基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で前記塗布Aでの塗布方向とは異なる一方向に往復させて塗布剤を全面になじませる塗布Bを有する工程
(2)前記塗布された塗布剤を乾燥する工程
を含むことを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の防汚性物品は、優れた防汚性能と汚れ除去性を持ち、さらに、塵や埃などといった日常的に接触する微細物質が多い屋内外の環境であっても優れた防汚性能を生ぜしめる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の防汚層形成用塗布剤の好適な塗布方法の一例を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、基材表面に一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランの硬化縮合被膜を有し、該硬化縮合被膜のフッ素濃度が0.2〜2.0μg/cmであることを特徴とする防汚性物品である。
【化3】

【0015】
まず、本発明の防汚性物品の基材について記載する。本発明の基材は特に限定されるものではなく、例えば、建築物用窓ガラスに使用されているフロート板ガラス、又はロールアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。
【0016】
これら板ガラスを用いて形成されるディスプレイ、タッチパネル、ショーケースなどのガラスウィンドウ、パチンコ台など遊技機の前面板などのガラス基材、鏡等の反射性基材、擦りガラス、模様が刻まれたガラス等の半透明又は不透明のガラス基材を使用することができる。
【0017】
さらに、前記ガラス製基材の他にタイル、瓦、衛生陶器、食器等に使用されるセラミックス材料よりなる基材、ガラス窓等の枠体、調理器、メス、注射針等の医療器具、流し、自動車のボディ等に使用されるステンレス鋼、アルミニウム、鉄鋼等の金属材料、プラスチック製の基材、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、その他のプラスチック基材を本発明の基材として使用することができる。
【0018】
上記の基材には、平板、曲げ板等各種の成形体を使用でき、大きさや厚さは特に制限されない。基材表面に有する硬化縮合被膜は、基材面の全面でも一部分であってもよい。
【0019】
また、前記一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランについて記載する。
【化4】

【0020】
(式中、W:フッ素原子又は下記式の構造で表される置換基を表し、
【化5】

【0021】
Xは、式:−(O)−(CF−(CH−(OC−(ここで、g、h、i及びjはそれぞれ独立して、0〜50の整数を表し、かつ、gとhの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。)で示される基を表す。Yは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Zはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、アミノ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解可能な官能基を表し、Rは炭素数が1〜10のアルキル基を表し、Vは酸素又は2価の有機基を表す。aは0〜50の整数を表し、bは1〜200の整数を表し、cは1〜3の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜4の整数を表し、e′は0又は1の整数を表し、fは0〜5の整数を表し、kは0〜5の整数を表し、lは0又は1の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立して、0〜50の整数であり、かつ、mとnの和は1以上である。)
前記一般式[1]における−[CF−、−[C2mOC2n−、[−(O)−(CF−(CH−]、−[CH−、−[CH−、−(OC−及び−[CH−で表される部位により、得られる硬化縮合被膜に優れた防汚性能及び耐摩耗性を付与することができる。従って、上記のようなパーフルオロポリエーテル基含有シランが縮合して形成された硬合化縮合膜は、優れた防汚性能と耐摩耗性を両立できるため好ましい。
【0022】
前記一般式[1]において、繰り返しの構造が炭素数2以上のパーフルオロアルキル基である場合、それらは直鎖又は分岐の構造をとることができる。例えば、−[C2mOC2n−はm=0、n=2の場合、−[OCF(CF)]−という分岐構造をとることも出来る。
【0023】
前記一般式[1]において、Vは酸素又は2価の有機基を表すが、有機基としては例えば、アミド、N-メチルアミド、N-エチルアミド、エステル、エーテルが挙げられる。中でも好ましくは酸素又はアミドである。
【0024】
本発明の防汚性物品の基材表面に有する硬化縮合被膜とは、前記一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランの官能基又は該官能基が加水分解して生成したシラノール基と、基材表面の活性種との間で形成される結合(例えば、シロキサン結合をはじめとするメタロキサン結合など)や相互作用(例えば、ファンデルワールス力や静電的相互作用など)によって基材表面との間に形成されたものである。該被膜と基材表面との間の接着性は、使用する基材や官能基の反応性によって異なるため適宜検討を行うと良い。
【0025】
また、前記一般式[1]において、Zで表される加水分解可能な官能基の反応性が高すぎると、塗布剤を調合する時の取り扱いが難しくなるだけでなく、塗布剤(詳細は後述する)のポットライフが短くなる。一方、反応性が低すぎると、加水分解反応が十分に進行しなくなり、生成するシラノール基の量が十分でなくなるため、該シラノール基と基材表面の活性種との間で形成される結合や相互作用が十分でなくなり、該被膜と基材表面との間に十分な接着性を付与することができなかったり、該被膜の耐久性が低くなったりする。上記を考慮して、Zで表される加水分解可能な官能基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。これらの中でも、加水分解可能な官能基の取り扱いの容易さ、塗布剤のポットライフ、得られる硬化縮合被膜の耐久性を考慮すると、加水分解可能な官能基としてはアルコキシ基が好ましく、中でもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
【0026】
前記一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランは、Si−Z部位のZで表される官能基が加水分解することで、基材表面とSi−O−結合すると考えられるが、該パーフルオロポリエーテル基含有シラン中の結合可能部位(Si基含有部位)に含まれるケイ素1モルに対して、該パーフルオロポリエーテル基含有シラン中のフッ素のモル数が20〜200程度であると、基材に良好な撥水性能を付与することが出来るため好ましい。
【0027】
前記一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランでも、下記一般式[2]や
【化6】

【0028】
(式中、Rfは炭素数が1〜100の直鎖状のパーフルオロアルキル基を表し、pは1〜100の整数、qは0〜2の整数を表す。Y、R、dは一般式[1]と同じである。)、
一般式[3]
【化7】

【0029】
(式中、Rfは、式:−(C2tO)−(tは1〜6の整数である。)で表される単位を含み、分岐を有しない直鎖状のパーフルオロアルキレンエーテル構造を有する二価の基、または−C2u−(uは1〜8の整数である。)で表される単位を含むパーフルオロアルキル構造で有り、r及びr′はそれぞれ1〜5の整数、s及びs′はそれぞれ0〜2の整数を表す。R、Z、cは一般式[1]と同じである。)、
又は、一般式[4]
【化8】

【0030】
(式中、vは0〜3の整数を表し、w、x、y及びzはそれぞれ0〜50の整数を表す。R、V、Z、c、k、l、eは一般式[1]と同じである。)
で表される構造を有するパーフルオロポリエーテル基含有シランは好ましい化合物であり、このような化合物を含有する市販品としては、ダイキン工業製オプツールDSXやオプツールAES4などのオプツールAESシリーズ、信越化学工業製KY130やKY108、フロロテクノロジー製フロロサーフFG−5020、東レ・ダウコーニング社製のDow2634Coatingなどが挙げられる。なお、前記市販品を用いて本発明の塗布剤を調製する場合、該市販品に含まれる溶剤は、本発明で調製される塗布剤中の溶剤の一部として含まれるものである。
【0031】
本発明の防汚性物品は単位面積当たりのフッ素量(以下「単位面積当たりのフッ素量」を単に「フッ素濃度」と記載する)に特徴がある。本発明のフッ素濃度とは、以下の方法によって求められるものである。
【0032】
(1)蛍光X線分析装置ZSX PrimusII((株)リガク製)で、濃度既知の標準試料から検量線を算出。(2)サンプルの硬化縮合被膜の任意の2点を測定し、検量線からそれぞれのフッ素濃度を算出。(3)2つの算出値の平均値をその防汚性物品のフッ素濃度とした。
【0033】
本発明の防汚性物品は、そのフッ素濃度が0.2〜2.0μg/cmであることが重要である。フッ素濃度が0.2μg/cmより少ない場合、充分な防汚性が得られない。逆にフッ素濃度が2.0μg/cmよりも多いと微細物質が付着しやすくなり、また、付着した微細物質の除去性が低下してしまう。該防汚性物品のフッ素濃度はより好ましくは0.3〜1.8μg/cmであり、特に好ましくは0.4〜1.7μg/cmである。また、該防汚性物品はその任意の部分におけるフッ素濃度にバラツキが少ないほど防汚性効果に偏りがなくなり、外観が損なわれないため好ましい。
【0034】
また、本発明は該防汚性物品の製造方法であり、
(1)一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランを溶媒で希釈し塗布剤とし、該塗布剤を部材に保持させた後、該部材を基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で任意の一方向に往復させて全面に塗布する塗布A、次いで前記部材を再度基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で前記塗布Aでの塗布方向とは異なる一方向に往復させて塗布剤を全面になじませる塗布Bを有する工程、
(2)前記塗布された塗布剤を乾燥する工程
を含むことを特徴とする方法である。次にこの製造方法について詳細に記載する。
【0035】
まず、該防汚性物品の製造に使用する塗布剤(以降、「硬化縮合被膜形成用塗布剤」、「被膜形成用塗布剤」又は単に「塗布剤」と記載することもある)について説明する。該塗布剤は、一般式[1]のパーフルオロポリエーテル基含有シランを含み、基材表面にムラ無く塗布できるものであればよいが、通常はパーフルオロポリエーテル基含有シランを溶解しうる有機溶剤で希釈したものを用いると簡便に塗布できるため好ましい。有機溶剤中には特にフッ素系溶剤が60〜100質量%含有されることが好ましい。有機溶剤中のフッ素系溶剤の濃度が60質量%未満では、前記パーフルオロポリエーテル基含有シランが充分に溶解されなかったり、塗りムラが生じるため好ましくない。また、開放系において連続して多数の基材に塗布を行う場合、有機溶剤の蒸発に伴う、塗布剤中のパーフルオロポリエーテル基含有シランの濃度変化の影響を受け易くなり硬化縮合被膜の外観や防汚性が基材ごとに安定し難い傾向がある。有機溶剤中のフッ素系溶剤のより好ましい濃度は70〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%である。
【0036】
前記塗布剤中の有機溶剤は、表面張力が20.0mN/m以下であると好ましい。前記有機溶剤が、20.0mN/m超の表面張力である溶剤であると、前記塗布剤を基材に塗布した際に塗布剤の凝集作用により、液だまり部分と液だまり以外の部分が混在した状態となりやすい。乾燥後に得られる硬化縮合被膜の表面を払拭して余分な塗布剤を取り除き、目視観察でムラのない硬化縮合被膜を得ることは出来るが、該硬化縮合被膜表面が水等の蒸気にさらされると、前記液だまりのあった箇所に選択的に液滴が付着することにより、硬化縮合被膜表面にドット状の白濁が発生し易いため好ましくない。より好ましい有機溶剤は、表面張力が19.5mN/m以下の溶剤であり、さらに好ましくは、表面張力が19.3mN/m以下の溶剤である。なお、液体の表面張力は、例えば、プレート法で測定することができる。
【0037】
また、前記有機溶剤の沸点は特に制限は無いが、通常は50〜250℃であると操作性の面から好ましい。50℃未満であると、薬液塗布後の乾燥速度が速すぎ、塗布ムラを生じたり、塗布途中で薬液が揮発することで基材表面に完全に塗り広げられない傾向がある。また、開放系において連続して多数の基材に塗布を行う場合、該有機溶剤の蒸発に伴い、塗布剤中の前記パーフルオロポリエーテル基含有シランの濃度が高くなることにより硬化縮合被膜の外観や防汚性が基材ごとに安定しない傾向がある。沸点が250℃を超える場合、乾燥させるのに高温もしくは長時間必要になり、コスト面でデメリットが大きくなる傾向がある。前記有機溶剤の沸点は、より好ましくは60〜220℃であり、特に好ましくは70℃〜200℃である。
【0038】
前記フッ素系溶剤は、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロエーテル、ハイドロフルオロエーテル、及びハイドロクロロフルオロカーボンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。適切な表面張力、及び適切な沸点を考慮して、より好ましいのはパーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテルである。環境負荷を考慮すると、前記フッ素系溶剤としては、温暖化係数のより小さいハイドロフルオロエーテルが特に好ましい。
【0039】
前記有機溶剤として1種の有機溶剤を用いる場合に好ましいものを以下に挙げる。例えば、パーフルオロノナンやパーフルオロデカン、フッ素系不活性液体(例えば、住友3M製「フロリナートFC40」、「フロリナートFC43」、「フロリナートFC3283」)等のパーフルオロカーボンや、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)−ペンタン(住友3M製「Novec7600」)等のハイドロフルオロエーテルを用いることができる。また、前記有機溶剤として複数種の有機溶剤を用いることもできるが、混合後の有機溶剤の表面張力が20.0mN/m以下で、かつ、沸点が50〜200℃であると好ましく、上記のフッ素系溶剤の混合液を用いることができる。また、上記のフッ素系溶剤及びその混合液に、1,1,2,2,3,3,4,4−オクタフルオロブタン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘプタフルオロシクロペンタン(日本ゼオン製「ゼオローラH」)、2H,3H−デカフルオロペンタン(デュポン製「バートレルXF」)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール等のハイドロフルオロカーボン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン(それぞれ、住友3M製「フロリナートPF5060」、「フロリナートPF5070」、「フロリナートPF5080」)、などのC2n+2で表されるパーフルオロアルカン類ヘキサフルオロベンゼン、パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサン、フッ素系不活性液体(住友3M製「フロリナートFCシリーズ」)等のパーフルオロカーボン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のパーフルオロエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテル(住友3M製「Novec7100」)、ノナフロロブチルエチルエーテル(住友3M製「Novec7200」)、メチルパーフルオロヘキシルエーテル(住友3M製「Novec7300」)等のハイドロフルオロエーテル、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン、3,3−ジクロロ−1,1,1,2,2−ペンタフルオロプロパン(旭硝子製「HCFC−225」)等のハイドロクロロフルオロカーボン、及び、ブタン、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2−メチルヘキサン等の炭化水素系溶剤を混合した混合液を用いることができる。
【0040】
前記パーフルオロポリエーテル基含有シランの塗布剤中の濃度は、0.01〜5質量%であることが好ましい。該濃度が0.01質量%未満では、基材表面に充分な防汚性能を発現できなかったり、硬化縮合被膜が不均一になったりするため好ましくない。該濃度が5質量%超では、硬化縮合被膜の余剰分を取り除くのが困難であったり、取り除く余剰分が多くなり高コストになったりするため好ましくない。また、埃などの微細物質が付着し易くなり、付着した微細物質の除去性が低下することからも好ましくない。防汚性能、余剰分の除去性、コストの観点から、より好ましい濃度範囲は、0.05〜1質量%であり、さらに好ましい濃度範囲は、0.1〜0.4質量%である。
【0041】
また、前記硬化縮合被膜形成用塗布剤には、前記一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランのほかに、該パーフルオロポリエーテル基含有シランの加水分解可能な官能基が、分子内又は分子間で一部加水分解及び縮合反応をおこした化合物が混入していても構わない。
【0042】
また、前記硬化縮合被膜形成用塗布剤には、前記一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランの加水分解反応、縮合反応を促進する目的で、触媒が添加されてもよい。該触媒としては、例えば、ジブチル錫ジメトキシド、ジラウリル酸ジブチル錫などの有機錫化合物、テトラn−ブチルチタネートなどの有機チタン化合物、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸、塩酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。特に酢酸、テトラn−ブチルチタネート、ジラウリル酸ジブチル錫などが好ましい。添加量は通常の触媒量が好ましい。
【0043】
また、前記硬化縮合被膜形成用塗布剤には、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、難燃剤、加水分解防止剤、防黴剤等を添加しても良い。
【0044】
防汚性物品の耐久性をより向上させるために、基材と硬化縮合被膜との接着強度を向上させる処理を基材表面に予め行うこともできる。前記の処理としては、各種研磨液による研磨・洗浄・乾燥、酸性溶液又は塩基性溶液による表面改質処理、プライマー処理、プラズマ照射、コロナ放電、高圧水銀灯照射等により、基材表面に活性基を発生させることが挙げられる。該活性種と、前記一般式[1]において、Zで表される加水分解可能な官能基、又は、それが加水分解して生成したシラノール基との間で形成される結合(例えば、シロキサン結合をはじめとするメタロキサン結合など)や相互作用(例えば、ファンデルワールス力や静電的相互作用など)によって、硬化縮合被膜と基材表面との間に十分な接着性を付与することができる。
【0045】
硬化縮合被膜形成用塗布剤を基材表面に塗布する方法としては、刷毛塗り、手塗り、ロボット塗り、及びそれらの併用等各種被膜の塗布方法が可能である。なお、前記塗布剤を保持するための部材を固定した状態で該部材に基材表面を接触させて、該基材を移動することにより塗布することもできる。刷毛塗りや手塗りやロボット塗りの場合、塗布する基材の形状やサイズの制限が少なく多様な基材を使用できるため好ましく、特に手塗りがより好ましい。
【0046】
前記塗布剤を保持するための部材としては、パルプ、アクリル、PET、PP、ナイロン、レーヨンなどを原料とした不織布があるが、特に強度と吸液性の観点からパルプとPPの複合材料が好ましい。
【0047】
次に、本発明の製造方法の特徴である工程(1)、工程(2)について説明する。
【0048】
まず、前記塗布剤を基材表面に塗布する工程(1)では、塗布Aにより、基材の全表面に塗布剤を行き渡らせることができる。次いで塗布Bにより、塗層表面を均一にレベリングさせることができる。塗布Bの前記部材の往復方向は特に限定されないが、塗布Aの前記部材の往復方向と塗布Bの前記部材の往復方向とのなす角θ(θは0°以上、180°未満の範囲で表記する)は、20〜160°の角度となる方向であるとより均一に塗布できるため好ましい。さらに好ましくは45〜135°の角度となる方向である。この塗布方法によって得られる物品は、そのフッ素濃度が好ましい範囲を示す。さらに、塗布Cより、塗り忘れや塗布剤の不足が発生しやすい端部に確実に塗布剤を塗布することができる。
【0049】
塗布剤を基材に塗布した後の乾燥工程(2)は、前記塗布剤を乾燥させるものであるが、同時に前記パーフルオロポリエーテル基含有シランの縮合を促進させることにより、硬化縮合被膜を形成せしめるとともに、前記パーフルオロポリエーテル基含有シランから生成したシラノール基と基材表面の活性種との間で形成される結合や相互作用により、該硬化縮合被膜と基材表面との間に十分な接着性を発現せしめる。前記乾燥工程は50〜250℃で行うことが好ましく、より好ましくは100〜200℃であり、常圧下、加圧下、減圧下、不活性雰囲気下で行っても良い。また、マイクロ波加熱も有効である。
【0050】
前記乾燥工程後に得られる硬化縮合被膜表面に余剰分が存在する場合、該余剰分を払拭し除去する。有機溶剤で湿らした紙タオルや布及び/又は乾いた紙タオルや布で払拭することにより表面が均一な硬化縮合被膜が得られる。特に、紙タオルやティッシュペーパーなどの使い捨てすることもできるペーパー類で拭き取ることが好ましい。
【0051】
[実施例]
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
本実施例及び比較例では、防汚層形成用塗布剤を調製し、基材上に塗布して、防汚性物品を製造した。塗布剤の調製方法及び防汚性物品の製造方法は後述の通りである。また、塗布剤に用いた有機溶剤の表面張力、得られた防汚性物品の防汚層について、以下に示す方法により品質評価を行った。
【0053】
[埃付着度]
20mgの埃を付着させたベンコットM−1(旭化成社製:工業用ワイパー)を100cmのサンプル表面に接触させた後のサンプル表面の外観を目視観察し、以下の基準により評価した。
【0054】
〇:埃がサンプル表面を覆う面積が5%未満
△:埃がサンプル表面を覆う面積が5〜20%
×:埃がサンプル表面を覆う面積が20%以上
[埃除去性]
10mgの埃を100cmのサンプル表面に付着させた後に、ベンコットM−1で払拭し、完全に拭取れるまでの回数を測定した。
【0055】
〇:1拭き
△:2拭き
×:3拭き以上
[埃が付着した状態での油の除去性]
100cmのサンプル表面に10mgの埃を付着させた後に油(日清オイリオ サラダ油)を30mg滴下し、ベンコットM−1で払拭し、完全に取れるまでの回数を測定した。
【0056】
〇:10回以下
△:10〜40回
×:40回以上
[フッ素濃度]
蛍光X線ZSXPrimusII((株)リガク製)で、フッ素濃度を測定したフッ素濃度は、以下の方法によって求められた。(1)蛍光X線分析装置ZSX PrimusII((株)リガク製)で、濃度既知の標準試料から検量線を算出。(2)サンプルの任意の2点を測定し、検量線からそれぞれのフッ素濃度を算出。(3)2つの算出値の平均値をその防汚性物品のフッ素濃度とした。
【実施例1】
【0057】
(I)硬化縮合被膜形成用塗布剤の調製
オプツールDSX(ダイキン工業製:パーフルオロポリエーテル基含有シランのパーフルオロヘキサン溶液(固形分濃度20質量%)であり、推定構造は一般式[2]である。)0.75gを表面張力が17.7mN/m、沸点が131℃であるNovec7600(住友3M製:1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)ペンタン)50.0gに溶解し、30分室温で攪拌し、パーフルオロポリエーテル基含有シランの濃度が0.3質量%の塗布剤を得た。
【0058】
(II)基材(ガラス基板)の準備
200mm×200mm×2mm厚サイズのフロートガラス基板の表面を、研磨液を用いて研磨し、水洗及び乾燥した。なお、前記研磨液としてガラス研磨剤ミレークA(T)(三井金属工業製)を水に混合した2質量%のセリア懸濁液を用いた。
【0059】
(III)硬化縮合被膜の形成
上記(I)で調製した塗布剤4.0mlを保持した綿布(商品名:ベンコットM−1)をガラス基板上に接触させて、図1に示すように、塗布Aとして任意の一方向(図1中では横方向)に往復させて全面に塗布し、次いで、塗布Bとして塗布Aの塗布方向に対して約90°となる方向(図1中では縦方向)に往復させて全面に塗布し、最後に、塗布Cとして端部に沿って塗布した(表1中で「手塗りによる好適塗布(90°)」と記載する)後、該ガラス基板を電気炉に入れ12分間乾燥した。この時、ガラスの最高到達温度(乾燥温度)は150℃であった。最後に、目視で白くまだらに残留している余剰な成分をネオコールCPで湿らせた紙タオルで拭き上げて、目視観察で表面が均一な透明な硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が○、油の除去性が〇であった。また、フッ素濃度は0.93μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【実施例2】
【0060】
図1における塗布Bを塗布Aの塗布方向に対して約60°となる方向に往復させて全面に塗布した以外は、すべて実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。
【0061】
得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。
【0062】
また、フッ素濃度は0.94μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【実施例3】
【0063】
図1における塗布Bを塗布Aの塗布方向に対して約45°となる方向に往復させて全面に塗布した以外は、すべて実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。
【0064】
得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。
【0065】
また、フッ素濃度は0.90μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【実施例4】
【0066】
パーフルオロポリエーテル基含有シランの濃度を0.2wt%にした以外は、実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。また、フッ素濃度は0.85μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【実施例5】
【0067】
パーフルオロポリエーテル基含有シランの濃度を0.05wt%にした以外は、実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。また、フッ素濃度は0.70μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【実施例6】
【0068】
パーフルオロポリエーテル基含有シランをKY130にした以外は、実施例1と同じとしサンプルを得た。得られた防汚性物品の硬化縮合被膜は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。また、フッ素濃度は1.02μg/cmであった。「KY130」とは、信越化学工業製のパーフルオロポリエーテル基含有シランのメタキシレンヘキサフロライド溶液(固形分濃度20質量%)であり、推定構造は一般式[3]である。結果を表1に記載した。
【実施例7】
【0069】
パーフルオロポリエーテル基含有シランをKY130にした以外は、実施例3と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。また、フッ素濃度は1.14μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【実施例8】
【0070】
パーフルオロポリエーテル基含有シランをDow2634Coatingにした以外は、実施例4と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が〇、埃の除去性が〇、油の除去性が〇であった。また、フッ素濃度は1.22μg/cmであった。結果を表1に記載した。「Dow2634Coating」とは、東レ・ダウコーニング社製のパーフルオロポリエーテル含有シランの、エチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロイソブチルエーテルとの混合溶液(固形分濃度20質量%)であり、推定構造は一般式[4]である。結果を表1に記載した。
【0071】
[比較例1]
塗布方法としてメイヤーバー法によりガラス基板に塗布を行ったのみで、そのまま乾燥工程に移ったこと以外は、すべて実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が△、埃の除去性が〇、油の除去性が△であった。また、フッ素濃度は2.12μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【0072】
[比較例2]
塗布方法としてスピン法によりガラス基板に塗布を行ったのみで、そのまま乾燥工程に移ったこと以外は、すべて実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。
【0073】
得られた防汚性物品は、埃の付き具合が△、埃の除去性が〇、油の除去性が△であった。
【0074】
また、フッ素濃度は2.32μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【0075】
[比較例3]
塗布方法としてディップ法によりガラス基板に塗布を行ったのみで、そのまま乾燥工程に移ったこと以外は、すべて実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が△、埃の除去性が〇、油の除去性が△であった。また、フッ素濃度は2.21μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【0076】
[比較例4]
塗布方法としてカーテンフロー法によりガラス基板に塗布を行ったのみで、そのまま乾燥工程に移ったこと以外は、すべて実施例1と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が△、埃の除去性が○、油の除去性が△であった。また、フッ素濃度は2.35μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【0077】
[比較例5]
パーフルオロポリエーテル基含有シランをKY130にした以外は比較例2と同じとし、硬化縮合被膜を有するサンプルを得た。得られた防汚性物品は、埃の付き具合が△、埃の除去性が〇、油の除去性が×であった。また、フッ素濃度は2.49μg/cmであった。結果を表1に記載した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の防汚性物品は、リビング、キッチン、流し周り、玄関、浴室、トイレ等の屋内や、粉塵などの多い屋外、或は鞄や衣類の衣嚢に収納されるような環境下で優れた防汚性能を示す。また、指紋等の皮脂汚れや、食品油、化粧品汚れなどの油状の汚染物質が付着しやすい環境下でも優れた防汚性能を示す。具体的には、建築用の窓ガラスやドア、間仕切り、タイル、テーブルトップ、壁紙、ショーケース(店の商品用、人形用など)、電気、電子機器等(テレビ、携帯電話、PC、ATM、フォトプレートなど)用ディスプレイパネルやタッチパネル、照明器具(カバー)、水栓金具、鏡、壁、キャビネット、洗面ボール、カウンター、キッチンフード、換気扇、調理レンジ、コンビニの保温ケース等に用いることで優れた防汚性効果を付与できる。
【符号の説明】
【0079】
1 基材
2 塗布剤を保持した部材
3 塗布剤を保持した部材を基材に接触させて塗布剤を塗布する方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランの硬化縮合被膜を有し、該硬化縮合被膜のフッ素濃度が0.2〜2.0μg/cmであることを特徴とする防汚性物品。
【化1】

(式中、W:フッ素原子又は下記式の構造で表される置換基を表し、
【化2】

Xは、式:−(O)−(CF−(CH−(OC−(ここで、g、h、i及びjはそれぞれ独立して、0〜50の整数を表し、かつ、gとhの和は1以上であり、括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は、式中において任意である。)で示される基を表す。Yは水素原子又は炭素数1〜5の低級アルキル基を表し、Zはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、アミノ基、及びイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1つの加水分解可能な官能基を表し、Rは炭素数が1〜10のアルキル基を表し、Vは酸素又は2価の有機基を表す。aは0〜50の整数を表し、bは1〜200の整数を表し、cは1〜3の整数を表し、dは1〜10の整数を表し、eは0〜4の整数を表し、e′は0又は1の整数を表し、fは0〜5の整数を表し、kは0〜5の整数を表し、lは0又は1の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立して、0〜50の整数であり、かつ、mとnの和は1以上である。)
【請求項2】
請求項1に記載の防汚性物品の硬化縮合被膜を形成するための被膜形成用塗布剤であり、該塗布剤が一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランを含むことを特徴とする被膜形成用塗布剤。
【請求項3】
請求項1に記載の防汚性物品の製造方法であり、
(1)一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランを溶媒で希釈し塗布剤とし、該塗布剤を部材に保持させた後、該部材を基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で任意の一方向に往復させて全面に塗布する塗布A、次いで前記部材を再度基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で前記塗布Aでの塗布方向とは異なる一方向に往復させて塗布剤を全面になじませる塗布Bを有する工程
(2)前記塗布された塗布剤を乾燥する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の防汚性物品の製造方法であり、
(1)一般式[1]で表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランを溶媒で希釈し塗布剤とし、該塗布剤を部材に保持させた後、該部材を基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で任意の一方向に往復させて全面に塗布する塗布A、次いで前記部材を再度基材表面に接触させて、該部材を基材表面上で前記塗布Aでの塗布方向とは異なる一方向に往復させて塗布剤を全面になじませる塗布B、最後に基材の端部に沿って塗布する塗布Cを有する工程
(2)前記塗布された塗布剤を乾燥する工程
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−157856(P2012−157856A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−440(P2012−440)
【出願日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】