説明

防汚性艶消しフィルムまたはシート

【課題】良好な製膜安定性と加工適性と艶消し性と柔軟性を有し、且つ改良された防汚性、特に油性マジックの汚れも落とすことができる防汚性に優れた生分解性樹脂フィルム又はシートの提供。
【解決手段】ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を含む生分解性樹脂(A)を60〜97重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)を3〜40重量%((A)と(B)と(C)の合計が100重量%)からなり、少なくとも片面の表面光沢度(Gloss:45度)が60%以下であることを特徴とする単層艶消しフィルムまたはシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な製膜安定性と加工適性を有し、且つ防汚性、特に油性マジックの汚れも落とすことができる防汚性と艶消し性に優れた生分解性樹脂フィルムまたはシートに関する。更には、防汚性で艶消し調(マットタイプ)の熱収縮性又は熱非収縮性のフィルムまたはシートおよびこれらを他素材と積層して得られる、包装用資材、育成ハウスやマルチフィルム等の農業用資材、光沢を抑えて高級で落ち着いた外観を呈する壁紙、スクリーン、室内装飾品、日用品、封筒、ファイルケース、カバー加工品等の学用品、文具、手帳、紙製品(紙容器、障子紙、襖を含む)、布製品、繊維製品、テーブルクロス、光を拡散する拡散板などに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の様な樹脂材料を用いた、透明で光沢のある延伸フィルムが包装材料として幅広く使用されている。その一方で、迷光を嫌う壁紙やスクリーン、封筒や文具用各種ファイル等に従来から用いられている光沢を抑えた艶消しフィルム又はシートが、包装業界においても商品の魅力や購買意欲を高める効果があると云われ、要求されてきている。
艶消し性フィルム又はシートに関しては、例えば、特許文献1には、無機フィラーを1重量%以上含有するエチレン−ビニルアルコール系共重合体からなる光沢度60%以下の壁紙用艶消しフィルム、特許文献2には、特定粒径の無機又は有機粒子などの不活性粒子を1重量%以上含有する光沢度35%以下で曇り度80%以下の包装用艶消し二軸延伸ポリエステルフィルム、特許文献3には、アニーリングされた光沢度30%以下で曇り度18%以下の艶消しポリプロピレンフィルムが開示されている。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂材料の廃棄に関わる自然環境保護の観点から、燃焼熱量が低く、土壌中で分解し、且つ安全であるものが望まれており、ポリ乳酸系樹脂などの脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂を用いた製品、具体的にはフィルム・シートやボトルなどの容器や成形物、繊維、不織布、発泡体、それらを用いた複合材料等の研究が活発に行われているが、艶消し性を改良した生分解性フィルムに関するものは少ない。
ポリ乳酸系樹脂とガラス転位温度Tgが0℃以下の生分解性ポリエステルの混合物を主体としてなるポリ乳酸系樹脂からなるポリ乳酸系延伸フィルム又はシートに関しては、例えば、特許文献4等に開示されているが、いずれも耐衝撃性は改善されているが、実用レベルの艶消し性を達成しているとは言えず問題がある。
【0004】
ポリ乳酸系樹脂と不活性粒子の混合物を主体としてなるポリ乳酸系樹脂からなるポリ乳酸系延伸フィルム及びシートに関しては、例えば、特許文献5には平均粒径0.6μmの炭酸カルシウム20重量%又はポリスチレン樹脂15重量%と酸化チタン5重量%(いずれも不活性粒子として20重量%)含有するポリ乳酸延伸フィルムであって、白色の不透明なフィルムが得られる事が開示されている。しかし、単に無機粒子や有機粒子を加えるだけでは艶消し性の良好なフィルムは得ることはできず、特許文献5には艶消し性の向上に関する開示は無い。
【0005】
また、特許文献6には生分解性樹脂を主成分とする艶消し性フィルム材料が開示されているが、このフィルムの具体例はポリ乳酸の二軸延伸フィルムの表面に艶消し剤を塗布することで艶消し性を出したフィルムであり、艶消し剤を生分解性樹脂に練り込んで溶融押出し成形加工する一般的製法については記述されているが、具体的な記述は無く、良好な製膜安定性と加工適性を有する生分解性艶消し性フィルムを得るための樹脂組成に関しては一切開示されていない。
【0006】
また、特許文献7においては、ポリ乳酸系樹脂と化学変性澱粉からなる混合物を主体としてなるポリ乳酸系樹脂からなる艶消し性フィルムが開示されているが、得られるフィルムは引張破断時の伸びが小さく脆いフィルムとなり、特に20μm以下の薄いフィルムとして他素材とラミネート加工する場合には破断しやすいと言う問題点を有する。また、特に油性マジックの汚れを防ぐ防汚性もやや劣ると言う問題点を有する。
【特許文献1】特許第3172559号公報
【特許文献2】特開2002−200724号公報
【特許文献3】特許第3175306号公報
【特許文献4】特許第3138196号公報
【特許文献5】特開2001−49003号公報
【特許文献6】特開2004−66513号公報
【特許文献7】特開2004−131726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、良好な製膜安定性と加工適性と艶消し性と柔軟性を有し、且つ改良された防汚性、特に油性マジックの汚れも落とすことができる防汚性に優れた生分解性樹脂フィルム又はシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生分解性樹脂を用いて、改良された防汚性を有しながら、艶消し性と製膜安定性と加工適性と柔軟性を有するフィルムを得るために、本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステルからなる生分解性樹脂と無機フィラーおよび/または微粒子ポリマーとを特定の比率で含む混合物とすることで、良好な製膜安定性と加工適性と艶消し性と柔軟性を有し、且つ改良された防汚性、特に油性マジックの汚れも落とすことができる防汚性を有するフィルム又はシートとなることを見出し本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は下記の通りである。
1)ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を含む生分解性樹脂(A)を60〜97重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)を3〜40重量%((A)と(B)と(C)の合計が100重量%)からなり、少なくとも片面の表面光沢度(Gloss:45度)が60%以下であることを特徴とする単層艶消しフィルムまたはシート。
2)生分解性樹脂(A)が、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を20〜95重量%とガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)を5〜80重量%からなる混合物を含むことを特徴とする1)に記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
3)生分解性樹脂(A)が、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を30〜95重量%とガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)を5〜70重量%からなることを特徴とする1)に記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【0010】
4)ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)の融点Tmが80℃以上であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
5)ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)の融点Tmが90℃以上であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
6)無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする1)〜5)に記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
7)更に、澱粉および/またはその誘導体(D)を、上記生分解性樹脂(A)、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の合計100重量部に対して10重量部以下含むことを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【0011】
8)1)〜7)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートが、表面光沢度60%以下の面を少なくとも1つの外表面になる様に積層された構造を有することを特徴とする多層の艶消しフィルムまたはシート。
9)1)〜7)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートが、表面光沢度60%以下の面を1つの外表面になる様に積層され、残りの1つの表面にガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性ポリエステル(a3)を40重量%以上含有する樹脂からなる層が積層された、少なくとも2層からなる構造を有することを特徴とする多層の艶消しフィルムまたはシート。
10)生分解性ポリエステル(a3)が、ガラス転移温度Tgが10℃以下で融点Tmが120℃以下である生分解性脂肪族芳香族ポリエステルであることを特徴とする9)に記載の多層の艶消しフィルムまたはシート。
【0012】
11)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを製造する方法であって、該艶消しフィルムまたはシートの少なくとも片面に対して非接着性の樹脂を選択し、該艶消しフィルムまたはシートの該片面と該非接着性樹脂層とを接触させる様に共押出フィルム又はシートを製膜し、その後に該非接着性樹脂層を剥がすことによって艶消しフィルムまたはシートを得ることを特徴とする艶消しフィルムまたはシートの製造方法。
12)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートからなる包装用資材。
13)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートからなる農業用資材。
14)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる壁紙。
【0013】
15)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる壁紙の基材がエチレン−酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のいずれかである14)に記載の壁紙。
16)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなるスクリーン。
17)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる室内装飾品。
18)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる日用品、学用品、文具、または手帳。
19)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる紙製品。
20)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる布製品、繊維製品またはテーブルクロス。
21)1)〜10)のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる光拡散板。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防汚性の改良された艶消しフィルムまたはシートは、主要成分である生分解性樹脂(A)が生分解性を有するため使用後に廃棄する際にも自然環境保護の観点から有利であり、且つ表面が汚れた場合でも洗剤、水、消しゴムなどを用いて汚れを落とすことができ、特に油性マジックの汚れも落とすことができる汚れ防止機能を有し、且つ良好な製膜安定性と加工適性と柔軟性を有し、単独かまたは他素材と積層して用いられ、包装用資材や農業用資材に防汚性と艶消し性を付与する効果、また、壁紙、スクリーン、室内装飾品、日用品、学用品、文具、手帳、紙製品(紙容器、障子紙、襖を含む)、布製品、繊維製品およびテーブルクロス等に光沢を抑えて高級で落ち着いた外観と汚れ防止機能、光拡散板において光を拡散する機能を付与する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、具体的に説明する。
本発明の艶消しフィルム又はシートは、最終的に微生物によって分解される生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)とを含む混合物を主体とする。本発明の改良された防汚性艶消しフィルム又はシートを得るためには、ガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を含む生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)との混合物の重量割合(合計100%)は、生分解性樹脂(A)が60〜97重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が3〜40重量%の範囲内である事が必要である。
【0016】
好ましくは、生分解性樹脂(A)が65〜93重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が7〜35重量%の範囲内であり、更に好ましくは、生分解性樹脂(A)が68〜88重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が12〜32重量%の範囲内であり、特に好ましくは、生分解性樹脂(A)が73〜83重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が17〜27重量%の範囲内である。
【0017】
生分解性樹脂(A)の割合が60重量%未満で無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が40重量%を超えると、得られるフィルム又はシートの機械物性が劣り、フィルム又はシートが脆くなり製膜安定性が低下する傾向にあり、また、フィルム又はシートの柔軟性が低下して、エンボス加工等の凹凸のあるラミ品を生産する際にフィルム又はシートが凹凸に追随せずに凹凸転写性が悪くなる傾向、基材との密着性が悪くなる傾向にある。生分解性樹脂(A)が97重量%を超えると無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が3重量%未満となり、艶消し性が劣り、ASTM−D2457−70に準拠して測定した表面光沢度(グロス:45度)が60%以下の艶消し性の良好なフィルムは得難くなる。
【0018】
また、本発明の改良された防汚性を有する艶消しフィルムまたはシートに用いられる生分解性樹脂(A)は、ガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を含むことが必要である。汚れ防止を改良するために、特に油性マジックの汚れ防止性を改良するために、(a1)は脂肪族ポリエステルである必要がある。(a1)の含有量は、汚れ防止の観点から、生分解性樹脂(A)100重量%に対し、30重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上であり、更に好ましくは50重量%以上であり、更により好ましくは60重量%以上であり、最も好ましくは、100重量%である。更に生分解性樹脂(A)は、引張弾性率の観点から、全量(100重量%とする)の中にガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を20〜95重量%、ガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)を5〜80重量%含む混合物からなり、(a1)+(a2)の合計が40〜100重量%である混合物であることが好ましい。加えて、汚れ防止を改良するために、特に油性マジックの汚れ防止性を改良するために(a1)、(a2)が共に脂肪族ポリエステルであることが好ましい。より好ましい生分解性樹脂(A)は、全量(100重量%とする)の中に(a1)を30〜95重量%、(a2)を5〜70重量%含み、且つ(a1)+(a2)の合計が50〜100重量%である混合物からなるものであり、更に好ましい生分解性樹脂(A)は、(a1)を40〜95重量%、(a2)を5〜60重量%含み、且つ(a1)+(a2)の合計が60〜100重量%である混合物からなるものであり、更により好ましい生分解性樹脂(A)は、(a1)を50〜95重量%、(a2)を5〜50重量%含み、且つ(a1)+(a2)の合計が70〜100重量%である混合物からなるものであり、特に好ましい生分解性樹脂(A)は、(a1)を60〜95重量%、(a2)を5〜40重量%含み、且つ(a1)+(a2)の合計が90〜100重量%である混合物からなるものである。(a1)が20重量%未満、または(a2)が80重量%を超える場合では、加工適性が劣り、伸びの少ない脆いフィルムになる傾向にある。また、(a1)が95重量%以下で(a2)が5重量%以上の場合では、得られたフィルムまたはシートの引張弾性率は(a1)が100重量%の場合より高くなり、特に20μm以下の薄いフィルムにおいては、他の素材にラミネート加工するなどフィルムを取り扱う際に、フィルムが長手方向(MD方向)に伸び過ぎ幅方向(TD方向)に縮むことを抑制するので好ましい。加えて、生分解性樹脂(A)において、(a1)+(a2)の合計が40重量%未満である混合物からなる生分解性樹脂の場合、加工適性と伸びと防汚性のバランスが劣るフィルムになる傾向がある。
【0019】
本発明で用いられる生分解性脂肪族ポリエステル(a1)、(a2)、生分解性ポリエステル(a3)およびこれらを包含する生分解性樹脂(A)は、JIS K6950(2000)又はJIS K6951(2000)又はJIS K6953(2000)又はOECD 301C又はISO 17556の少なくともどれか1つに準拠して測定した生分解度が各試験法記載期間内で60%以上であるポリマーである。
【0020】
本発明で用いられる生分解性脂肪族ポリエステル(a1)、(a2)は、芳香族系単量体、すなわち芳香族ジオール、芳香族ジカルボン、芳香族ヒドロキシカルボン酸などの単量体を実質的に含まないポリエステルである。実質的に含まないとは、汚れ防止性能が低下しない範囲内の芳香族系単量体を含むことは可能で、好ましくは艶消し層に用いられる生分解性樹脂(A)100重量%に対して芳香族系単量体の含量が10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、更に好ましくは3重量%以下であり、最も好ましくは含まないことである。芳香族系単量体の含量が増えると汚れ防止性、特に油性マジックに対する防汚性が低下する傾向にある。
【0021】
本発明で用いられるガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)とは、酸脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)などの脂肪族ポリエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族ポリエステルであり、示差走査熱量測定(JIS−K−7121)でのガラス転移温度Tgが10℃以下、好ましくは0℃以下、より好ましくは、−20℃以下の生分解性ポリエステル1種または2種以上からなるポリマー組成物である。生分解性脂肪族ポリエステル(a1)のTgが10℃を超えると得られるフィルムの加工適性、伸びが低下する場合が多い。
【0022】
脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステルとしては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸と、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)等の脂肪族ジオールの中からそれぞれ1種以上選んだ重縮合物が例として挙げられる。環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステルとしては、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等の環状モノマーの中から1種以上選んだ開環重合体が例として挙げられる。合成系脂肪族ポリエステルとしては、無水コハク酸とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の環状酸無水物とオキシラン類の共重合体が例として挙げられる。また、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)としては、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオン酸)、ポリ(3−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシ吉草酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシヘキサン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシプロピオン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−4−ヒドロキシ酪酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシオクタン酸)共重合体、ポリ(3−ヒドロキシ酪酸−3−ヒドロキシデカン酸)共重合体等が例として挙げられる。
【0023】
本発明で用いられるガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性脂肪族ポリエステル(a1)として好ましく用いられるものは、ガラス転移温度Tgが10℃以下で且つ融点Tmが80℃以上の生分解性脂肪族ポリエステルであり、より好ましくはガラス転移温度Tgが10℃以下で且つ融点Tmが90℃以上の生分解性脂肪族ポリエステルであり、特に好ましくはガラス転移温度Tgが10℃以下で且つ融点Tmが100℃以上の生分解性脂肪族ポリエステルである。融点Tmが高いほど特に油性マジックに対する汚れ防止性が優れる傾向にあり好ましい。また、生分解性脂肪族ポリエステルにおいては、結晶化度が高くなるほど汚れ防止性は向上する傾向にあるので、結晶化度の高い生分解性脂肪族ポリエステルが好ましい。すなわち、好ましい生分解性脂肪族ポリエステル(a1)としては、溶融延伸法(例えばダイレクトインフレーション法)で得られたフィルムを示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温させながら求めた結晶融解時の吸熱量の絶対値(ΔHm)から結晶化時の発熱量の絶対値(ΔHc)を引いた値(ΔHm−ΔHc)、すなわちフィルムが製膜後に有する結晶化度の指数が20J/g以上となる生分解性脂肪族ポリエステルであり、より好ましくは(ΔHm−ΔHc)が40J/g以上の生分解性脂肪族ポリエステルであり、更に好ましくは(ΔHm−ΔHc)が50J/g以上の生分解性脂肪族ポリエステルであり、特に好ましくは(ΔHm−ΔHc)が60J/g以上の生分解性脂肪族ポリエステルである。具体的にはポリブチレンコハク酸、ポリブチレンコハク酸アジピン酸共重合体、ポリブチレンコハク酸グルタル酸共重合体、ポリエチレンコハク酸、ポリエチレンコハク酸アジピン酸共重合体、ポリエチレンコハク酸グルタル酸共重合体などが挙げられる。また、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)は、ガラス転移温度Tgが10℃以下で、且つ融点Tmが100℃以上で結晶化度の高い生分解性脂肪族ポリエステルが多く、好ましい。
【0024】
生分解性脂肪族ポリエステル(a1)の重合方法としては、直接法、間接法などの公知の方法を採用できる。直接法では、例えば、脂肪族ジカルボン酸成分として上記ジカルボン酸化合物その酸無水物又は誘導体を選択し、脂肪族ジオール成分として上記ジオール化合物又はその誘導体を選択して重縮合を行う方法で、重縮合に際して発生する水分を除去しながら高分子量物を得ることができる。間接法では、直接法により重縮合されたオリゴマーに少量の鎖延長剤、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物を添加して高分子量化して得ることができる。生分解性脂肪族ポリエステル(a1)の重量平均分子量は、2万〜50万の範囲が好ましく、さらに好ましくは重量平均分子量5万〜25万の範囲である。分子量が2万より小さいと得られたフィルムにおいて機械的強度、衝撃強度等の実用物性の向上が十分でない場合があり、分子量が50万を越えると成形加工性に劣る場合がある。
【0025】
本発明で用いられるガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)とは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールを主成分として重縮合した脂肪族ポリエステル、環状ラクトン類を開環重合した脂肪族ポリエステル、合成系脂肪族ポリエステル、菌体内で生合成されるポリ(ヒドロキシアルカン酸)などの脂肪族ポリエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種のポリエステルであり、示差走査熱量測定(JIS−K−7121)でのガラス転移温度Tgが30℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは、45℃以上の生分解性ポリエステル1種または2種以上からなるポリマー組成物である。
【0026】
ガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)の例として、ヒドロキシカルボン酸を縮合重合して得られた生分解性ポリエステルとしては、ポリ乳酸およびその共重合体が挙げられる。
ポリ乳酸およびその共重合体としては、ポリ乳酸単独重合体、乳酸単量体単位を50重量%以上含有する共重合体、またはそれらの混合物であって、ポリ乳酸単独重合体、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸およびラクトン類からなる群より選ばれる化合物との共重合体、またはそれらの混合物である。乳酸単量体単位の含有量が50重量%未満の場合、フィルムの防汚性が低下する傾向にある。好ましくはポリ乳酸単独重合体、乳酸単量体単位を80重量%以上含む共重合体又はそれらの混合物であり、さらに好ましくは、ポリ乳酸単独重合体、乳酸単量体単位を90重量%以上含む共重合体又はそれらの混合物である。
【0027】
ガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)の重合方法としては、縮合重合法、開環重合法などの公知の方法を採用できる。また、ポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、酸無水物、多官能酸塩化物などの結合剤を使用して分子量を増大する方法を用いることもできる。
ガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000未満ではフィルムの機械的物性が不十分となる傾向があり、1000000を超えると溶融粘度が高くなり、通常の加工機械では物性の安定したフィルムが得られ難い。
【0028】
本発明で用いられるガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性ポリエステル(a3)はガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を含むものであるが、それ以外に生分解性ポリエステルの一部が生分解性を失わない範囲で芳香族化合物に置換された構造を持つ脂肪族芳香族ポリエステルからなる群より選ばれる脂肪族芳香族ポリエステルを含むものである。より好ましい(a3)としては、ガラス転移温度Tgが10℃以下で且つ融点Tmが120℃以下の生分解性ポリエステルである。ガラス転移温度Tgが10℃以下で、且つ融点Tmが120℃以下の生分解性ポリエステルは、熱を用いて他の基材に接着、ラミネートする際により低い温度で接着しやすいので好ましい。
【0029】
更に脂肪族芳香族ポリエステルは脂肪族ポリエステル単独より耐加水分解性に優れるため、耐久性の必要な用途ではより好ましい。よって、特に好ましい(a3)としては、ガラス転移温度Tgが10℃以下で、且つ融点Tmが120℃以下の脂肪族芳香族ポリエステルである。具体的な脂肪族芳香族ポリエステルの例としては、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸とコハク酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、ポロピレングリコール、ブタンジオールなどの脂肪族ジオールの共重合物があり、例としてはポリ(ブチレンサクシネート/テレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペートテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート/アジペート)などが挙げられ、特に好ましくはポリブチレンアジペートテレフタレートである。
【0030】
本発明で用いられる無機フィラー(B)とは、株式会社技術情報協会発行の「樹脂/フィラー系 混練技術」(発行人:高薄一弘、第1刷発行日:2000年3月31日)のページ30〜31に述べられている様な無機フィラーであり、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、窒化物、炭素類、その他無機フィラーである。
【0031】
酸化物としては、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化スズ、酸化アンチモン、フェライト類などがある。水酸化物としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性マグネシウムなどがある。炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイトなどがある。硫酸塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維などがある。ケイ酸塩としては、ケイ酸カルシウム(ウォラストナイト、ゾノトライト)、タルク、クレイ、マイカ、モンモリナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビード、シリカ系バルンなどがある。窒化物としては、窒化アルミ、窒化ホウ素、窒化ケイ素などがある。炭素類としては、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末などがある。その他無機フィラーとしては、チタン酸カリウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ホウ酸亜鉛、スラグ繊維などがある。
【0032】
本発明で用いられる無機フィラー(B)としては、好ましくは形状が板状または球状、粒状のフィラーであり、板状フィラーとしては、タルク、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、板状炭酸カルシウム、板状水酸化アルミ、ハイドロタルサイトなどがあり、球状、粒状フィラーとしては、炭酸カルシウム、シリカ、クレイ、各種鉱石粉砕品、各種ビーズ、各種バルーン、テトラポット型酸化亜鉛などがある。より好ましくは、タルク、炭酸カルシウム、クレイ、シリカ、マイカ、セリサイト、酸化チタンなどである。特に好ましくは、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、シリカなどである。
【0033】
本発明で用いられる無機フィラー(B)は、平均粒子径が10μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径が7μm以下のものであり、更に好ましくは平均粒子径が5μm以下で0.1μm以上のものである。平均粒子径が10μmを超える無機フィラーを使用すると、20μm以下の薄いフィルムを作る場合に欠陥となってフィルムが破れたり、穴があいたりして製膜安定性が低下する傾向にある。無機フィラーの平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0034】
本発明で用いられる微粒子ポリマー(C)とは、株式会社シーエムシー発行の「超微粒子ポリマーの最先端技術」(監修者:室井宗一、発行者:境 鶴雄、第1刷発行日:1991年4月26日)のページ257〜259に書かれている様に、合成ポリマー、天然ポリマー、カプセル化粉末、複合粉末などからなる微粒子ポリマーであり、具体的な例としてはページ283〜294、「第6章 微粒子ポリマー製品一覧」に書かれている微粒子ポリマーの様なものである。即ち、スチレン樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、フェノール樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン/アクリル酸樹脂、メチルメタクリレート(MMA)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ウレタン樹脂、酢酸セルロース樹脂、セルロース、スチレン/アクリル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン樹脂、メラミン樹脂、n−ブチルアクリレート樹脂、尿素樹脂、ナイロン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、およびその他エンジニアリング樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などの樹脂から得られる微粒子ポリマーなどである。
【0035】
本発明で用いられる微粒子ポリマー(C)として、好ましくは、1)ガラス転移温度Tgが60℃以上、又は2)融点Tmが100℃以上、又は3)架橋されたポリマーのどれか一つ以上を満たす樹脂からなる微粒子ポリマーであり、更に好ましくは、1)ガラス転移温度Tgが80℃以上、又は2)融点Tmが120℃以上、又は3)ガラス転移温度Tgが60℃以上で架橋されたポリマーのどれか一つ以上を満たす樹脂からなる微粒子ポリマーである。
【0036】
本発明で用いられる微粒子ポリマー(C)は、平均粒子径が10μm以下のものが好ましい。より好ましくは、平均粒子径が7μm以下のものであり、更に好ましくは、平均粒子径が5μm以下の微粒子ポリマーであり、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、スチレン樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂からなる群より選択された微粒子ポリマーを少なくとも1種以上含むものである。特に好ましくは、平均粒子径が0.1〜3μmの微粒子ポリマーで、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、スチレン樹脂、ジビニルベンゼン樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、酢酸セルロース樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン/メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ナイロン樹脂からなる群より選択された微粒子ポリマーを少なくとも1種以上含むものである。微粒子ポリマーの平均粒子径が10μmを超えると20μm以下の薄いフィルムを製膜する際に欠陥が生じやすく製膜安定性が低下する傾向にある。微粒子ポリマーの平均粒子径はレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0037】
本発明の防汚性の艶消しフィルム又はシートは、光沢計(ASTM−D2457−70)で測定した、少なくとも片面の表面の光沢度(Gloss:45度)が60%以下である事が必要である。好ましくは、表面の光沢度(Gloss:45度)が30%以下のフィルム又はシートであり、更に好ましくは20%以下であり、特に好ましくは10%以下のフィルム又はシートである。光沢度が60%を超えるフィルム又はシートは艶消し性に劣るフィルム又はシートとなる。
【0038】
本発明の艶消しフィルム又はシートは、更に、澱粉および/またはその誘導体(D)を、生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の合計100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下で含むことが好ましい。澱粉および/またはその誘導体(D)を添加することで、フィルムまたはシートの艶消し性の斑を改善し均一な艶消し性を出す効果があるので、用途と目的に合わせて選択することが好ましい。澱粉および/またはその誘導体(D)の含量が生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)と微粒子ポリマー(C)の合計100重量部に対して0.1重量部未満では澱粉および/またはその誘導体(D)の添加効果が得られにくく、10重量部を超えると添加による改善効果は飽和する傾向にあり添加量を増やす割に得られる効果は少なくなり、経済的に不利になる傾向がある。また、澱粉および/またはその誘導体(D)の含量が10重量部を超えると生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)とからなる樹脂ブレンド物への相容性から澱粉および/またはその誘導体(D)が凝集を起こし易くなり製膜安定性を低下させる傾向がある。
【0039】
好ましい澱粉および/またはその誘導体(D)の内、澱粉としては、株式会社エヌ・ティー・エス発行の「植物代謝工学ハンドブック」(監修:新名 惇彦、吉田 和哉、発行者:吉田 隆、初版第一刷発行日:2002年6月25日)のページ40〜43に述べられている様に、緑色植物の光合成反応によって生産されるバイオマスの一つであり、多くの植物の種子、根、塊茎などの組織に貯蔵される物質であり、植物界に広く分布し、特に米、麦、トウモロコシなどの穀類、馬鈴薯、サツマイモ、キャッサバなどのイモ類の貯蔵組織に大量蓄積され、古来より人類を始め多くの動物の食料となって来た物質で、アミロース(線状重合体)とアミロペクチン(分岐状重合体)の混合物である多様な種類の澱粉[分子式(C10]、例えば、コーンスターチ、ポテトスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、カッサバ澱粉等から得られる澱粉が挙げられる。また、澱粉の誘導体としては、破壊化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル、またはポリエステルグラフト重合澱粉の群より選ばれる少なくとも1種の澱粉誘導体が挙げられる。得られるフィルムの防汚性から、澱粉エステル、澱粉エーテル、ポリエステルグラフト重合澱粉の群より選ばれる少なくとも1種の澱粉誘導体がより好ましい。
【0040】
尚、本発明の防汚性の艶消しフィルム又はシートに使用する原料樹脂としては、上記したバージン原料以外に該樹脂製膜時に発生するトリム屑等を再度加工してペレット化、又は微粉化したリサイクル原料を単独で、又は該バージン原料に混入して使用することができる。
また、本発明の艶消しフィルム又はシートには、所望により当該技術分野において通常用いられる添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加水分解抑制剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、造核剤、架橋剤、着色剤、抗菌剤、防カビ剤等を本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合することが可能である。
【0041】
可塑剤としては、当業界で一般に用いられているものから選択使用でき、ブリードアウトしないもの、人体に対して無害、安全な物質が好ましい。可塑剤の例としては、フタル酸エステル、脂肪族二塩基酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、多価アルコールエステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、エポキシ系可塑剤、脂肪族多価アルコールなどがある。より好ましい可塑剤としては、脂肪族二塩基酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、多価アルコールエステル、脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤であり、更に好ましくは脂肪族カルボン酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸と脂肪族アルコールの群より選ばれる2種以上の組合せから合成されたエステルであり、特に好ましくは、炭素数20個以下の脂肪族カルボン酸と炭素数20個以下の脂肪族ヒドロキシカルボン酸と炭素数20個以下の脂肪族アルコールの群より選ばれる2種以上の組合せから合成されたエステルである。
【0042】
フタル酸エステルの例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチルなどがある。脂肪族二塩基酸の例としてはコハク酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソデシル、アゼライン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジオクチル等がある。ヒドロキシ多価カルボン酸エステルの例としては、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、クエン酸トリブチル等がある。多価アルコールエステルの例としては、グリセリントリアセテート、グリセリントリブチレート、アセチル化モノグリセライド系可塑剤、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジペンタエリスリトールヘキサエステル、ペンタエリスリトールエステル等がある。脂肪酸エステルの例としては、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、塩素化脂肪酸メチル、アジピン酸エーテル・エステル等がある。リン酸エステルの例としては、リン酸トリオクチル、リン酸トリクロロエチル等がある。エポキシ可塑剤の例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル等がある。脂肪族多価アルコールの例としては、分子内に水酸基を2個もつ多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等があり、分子内に水酸基を3個以上もつ多価アルコールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、トリメチロールプロパンなどがある。
【0043】
酸化防止剤の例としては、p−t−ブチルヒドロキシトルエン、p−t−ブチルヒドロキシアニソール等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。熱安定剤の例としては、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノリルフェニルホスファイト等が挙げられる。加水分解抑制剤としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物などがあるが、カルボジイミド化合物が好ましい。紫外線吸収剤の例としては、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシブチロフェノン等が挙げられる。滑剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、パルミチン酸ナトリウム等が挙げられる。帯電防止剤の例としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アルキルアミン、アルキルアミン、アルキルアリルスルホネート、アルキルスルフォネート等が挙げられる。難燃剤の例としては、ヘキサブロモシクロドデカン、トリス−(2,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ペンブロモフェニルアリルエーテル等;造核剤としてはポリエチレンテレフタレート、ポリ−トランスシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、パルミチン酸アミド等が挙げられる。
【0044】
次に、本発明の艶消しフィルム又はシートの製造方法について述べる。
生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)、及び場合によって澱粉および/またはその誘導体(D)等の混合方法や混合装置は、特に限定されないが、例えば、同一の単軸又は二軸押出混練機にそれぞれの原料を供給して溶融混合して行い、そのまま口金(ダイリップ)より押出して直接にフィルム又はシートに加工する方法、或いはストランド形状に押出してペレットを作製した後に再度押出してフィルム又はシートに加工する方法等が挙げられる。粉体である無機フィラー(B)、微粒子ポリマー(C)および澱粉および/またはその誘導体(D)などの分散性を良くするためには、二軸押出混練機を用いることが好ましい。
【0045】
溶融押出温度としては、生分解性樹脂(A)の融点及び無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の混合比率を考慮して適宜選択されるが、100〜250℃の温度範囲が好ましい。フィルムまたはシートを不透明にするだけであればマトリックス樹脂に非相溶な樹脂や無機粒子や有機粒子を混合するだけで良いが、艶消し性を得るためにはフィルムまたはシートの表面に凹凸を形成させる事が重要であり、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)などを含んだ生分解性樹脂(A)がダイから出て溶融延伸される過程でマトリックスとなる生分解性樹脂(A)が引き伸ばされて薄肉化する際に、マトリックスに比較して粘度の大きな無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)が大きな流動変形を起こさずに好ましくは0.1μm以上の直径の粒状、棒状、0.1μm以上の長辺を持つ板状などの形態を保持するためフィルムまたはシートの表面に凹凸を形成することで艶消し性が発現されるのである。
【0046】
本発明の艶消しフィルム又はシートの製膜方法としては、Tダイより冷却ロールにキャストされる方法、インフレーション法やテンター法などの従来公知の製膜方法にて、無延伸、一軸延伸、或いは、同時又は逐次二軸延伸する方法がある。詳しくは、(1)押出されたチューブ状またはシート状の樹脂を溶融状態からインフレーション法又はキャスト法により溶融延伸して製膜する方法、(2)押出されたチューブ状又はシート状の樹脂を溶融状態から急冷して非晶状態に近い状態で固化させた後、続いてそのチューブ状又はシート状の樹脂をガラス転移温度以上融点以下に再加熱してインフレーション法又はロール・テンター法で延伸する冷間延伸法で製膜する方法、或いは、溶融延伸又は冷間延伸の後にフィルム又はシートの熱収縮性の抑制の為にフィルム又はシートを把持した状態等で熱処理を行ってフィルム又はシートを得る様な方法によって得られる。
【0047】
上記の通り、マトリックスである生分解性樹脂(A)が溶融状態で延伸される過程が艶消し性のフィルムを得る際に重要になる。生分解性樹脂(A)が溶融状態に近い状態で平滑な冷却ロールにキャストされる方法、平滑な2本以上のロールで圧延される方法は、艶消し性発現に寄与する無機フィラー(B)、微粒子ポリマー(C)などが平滑なロールによってフィルムまたはシートの表面に凹凸を形成するのを阻害され易く艶消し性が低下し易い。これらの方法に比べて、チューブ状で押出されてインフレーション法でフィルム又はシートを得る方法は、マトリックスである生分解性樹脂(A)が溶融状態に近い状態で平滑なロールに接触することなく、艶消し性発現に寄与する無機フィラー(B)、微粒子ポリマー(C)などがフィルムまたはシートの表面に凹凸を形成するのを阻害され難いので艶消し性の良好なフィルムまたはシートが得られ易く好ましい。また、溶融延伸法で得られたフィルムまたはシートは、冷間延伸法で得られたフィルムまたはシートよりマトリックスである生分解性樹脂(A)の高分子鎖の配向度が低く、得られた艶消しフィルムまたはシートを他の素材にラミネートする場合に伸び易く、他の素材の表面形状に従って伸び易く、またエンボスなどの凹凸形状に従い易いので加工性に優れて好ましい。
【0048】
フィルム又はシートの延伸倍率としては、延伸方法に関わらず、押出し口金(ダイリップ)間隔に対して、最終のフィルム又はシートの厚みが1/500〜1/40の範囲になる様に、少なくとも1軸方向に溶融延伸または冷間延伸することが好ましい。
又、フィルム又はシートの熱処理加工としては、非収縮フィルム又はシートを得る場合には、熱処理温度は約60℃〜160℃、熱処理時間は2〜10秒の範囲内が好ましい。かかる範囲を下回ると得られたフィルムの熱収縮率が高くて非収縮フィルムにはなりにくく、かかる範囲を上回ると熱処理中にフィルムが融解し破断する場合がある。
【0049】
本発明の艶消しフィルム又はシートの厚みは、好ましくは5〜500μm、より好ましくは7〜250μm、更に好ましくは7〜100μmである。エンボス等の表面凹凸を有する他素材に熱ラミネートして用いられる場合、熱ラミネート後にエンボスなどの表面凹凸形状を付与する場合には、その凹凸形状をできるだけ忠実に再現できるように、フィルムの厚みは取り扱いできる強度を保持する範囲で、且つ表面艶消しフィルムの機能を維持できる範囲で、できるだけ薄い方が好ましく、20μm以下のフィルムがより好ましく、15μm以下のフィルムが更に好ましい。
【0050】
本発明の艶消しフィルムまたはシートの製造方法で、特に20μm以下の薄いフィルムを得る場合に、目的とするフィルムと非接着性の樹脂を用いて多層ダイで共押出し、その後に非接着性の樹脂層を取り除くことによって目的とするフィルムを得る製造方法は、非接着性の樹脂で製膜安定性を向上できるので好ましい製造方法である。
【0051】
一般的に樹脂は、その溶解性パラメーターの値(SP値)が近い樹脂同士は相容性が良く、ブレンドした場合に混ざり易い傾向にあり、製膜時に共押出しすると接触する樹脂層同士が接着しやすい傾向にあるので、非接着性の樹脂を選択する場合には、接触する樹脂層の樹脂同士の化学構造(1次構造)、極性ができるだけ異なる樹脂同士を選択すると、溶解性パラメーターの値の差も大きくなり、製膜時に共押出しても非接着性な樹脂層の組合せを選択できる。例としては、生分解性樹脂は主に脂肪族ポリエステル構造を有するものが多いため、カルボニル基などの比較的極性の大きな基を有するため、ポリオレフィン等の無極性な樹脂は、脂肪族ポリエステル樹脂とは接着し難い傾向にあり、良好な非接着性樹脂の一つである。非接着性の目安としては、製膜後に非接着性の樹脂層を剥離する際に目的とするフィルム又はシートが実用上悪影響を与える程に変形することなく剥がれる程度の非接着性が好ましい。本発明の艶消しフィルムまたはシートに対して非接着性の樹脂としては、非接着性を有して製膜安定性に優れる樹脂であれば特に限定はないが、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂類が挙げられる。
【0052】
本発明の防汚性の艶消しフィルム又はシートには、単層のフィルム又はシート以外に、本発明の防汚性の艶消しフィルム又はシートを少なくとも1つの外表面の表面光沢度(Gloss:45度)が60%以下になる様に積層された多層のフィルム又はシートが含まれる。特に、多層フィルム又はシートにおいて、少なくとも1つの外表面に本発明の防汚性の艶消し性フィルム又はシートからなる層を有し、それ以外の層でフィルム又はシートの製膜安定性などの加工性を改良する層、柔軟性を付与する層または別の基材との接着性を改良する層などの物性を改良する層を有する多層フィルム又はシートが好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの外表面に本発明の艶消し性フィルム又はシート層を有し、それ以外の層でフィルム又はシートの製膜安定性などの加工性を改良する層、柔軟性を付与する層または別の基材との接着性を改良する層などの物性を改良する層が生分解性の樹脂からなる多層フィルム又はシートである。
【0053】
また、本発明の多層フィルムにおいて、本発明の防汚性を有する艶消し単層フィルムまたはシートが、表面光沢度60%以下の面を1つの外表面になる様に積層され、残りの1つの表面にガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性ポリエステル(a3)を40重量%以上含有する樹脂からなる層が積層された、少なくとも2層からなる構造を有する多層の艶消しフィルムまたはシートは、別の素材に熱でラミネートされて用いられる場合に、上記残りの1つの表面側がより低い温度でも基材に対して優れた接着性を示すので好ましい。より好ましい生分解性ポリエステル(a3)としては、ガラス転移温度Tgが10℃以下で且つ融点Tmが120℃以下の生分解性脂肪族芳香族ポリエステルが低温での接着性に優れ、且つフィルムおよびシートの耐久性を向上させる点からより好ましい。
【0054】
また、上記の残りの1つの表面において、より好ましい生分解性ポリエステル(a3)の含量は50重量%以上であり、更に好ましい生分解性ポリエステル(a3)の含量は60重量%以上である。特に好ましくは、残りの1つの表面にガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性ポリエステル(a3)を60重量%以上含有し且つ(a3)が脂肪族芳香族ポリエステルである樹脂からなる層が積層された、少なくとも2層からなる構造を有する多層の防汚性を有する艶消しフィルムまたはシートである。また、熱接着する基材の種類によって、基材との熱接着性を改良するために、融点が100℃以下のポリエステル系樹脂、融点が100℃以下のエチレン酢酸ビニル共重合体系樹脂、および石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂などからなる群より選ばれる樹脂をこの生分解性ポリエステル(a3)に添加することも好ましい。
【0055】
また、本発明の防汚性の艶消し性フィルム又はシートは、単体材料でもそれに異種又は同種の材料が積層された複合材料でも良い。更には、印刷、コーテイング、ラミネート等の目的で、コロナ処理などによりさらに親水化処理することもできる。その際の表面張力としては、40mN/m〜60mN/mの範囲が好ましい。
【0056】
単体で用いる用途としては、被包装物に高級感を出すために本発明のフィルム又はシートを直接包装に用いた包装資材、および育成ハウスやマルチフィルムなどの農業用資材としての用途がある。また、他素材と積層された複合材料としての用途としては、壁紙の汚れ防止用のフィルムとして壁紙表面に積層され、且つ壁紙の持つ艶消し性を損なわない壁紙防汚用、特に油性マジックの汚れ防止性用フィルムとしての用途、迷光を嫌うスクリーンの表面に積層する用途、家具、調度品、カーテンなどの室内装飾品の表面に積層して、汚れ防止、特に油性マジックの汚れ防止性と同時に艶消し性で高級感を出す用途、また、日用品、学用品、文具、手帳の表面に積層して艶消し性で革製品に似た高級感を出すために用いられる用途、紙製品、紙製容器、障子紙の表面に積層されて、艶消し性による高級感を出すと同時に紙に防水効果、防油効果を付与するフィルムとしての用途、布製品、繊維製品またはテーブルクロスの表面に積層されて艶消し性による高級感を出すと同時に布、繊維、テーブルクロスに防水効果、防汚性を付与するフィルムとしての用途がある。
【実施例】
【0057】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。
実施例および比較例で用いた評価方法について以下に説明する。
(1)ポリ乳酸系樹脂Nature Works4042D(商品名、NatureWorks LLC)の光学純度OP
ポリ乳酸系樹脂の光学純度(OP:単位%)は、構成するL−乳酸及び/又はD−乳酸単量体単位の構成比率から下記式により計算される。
OP=|[L]−[D]| ,但し、[L]+[D]=100
ポリ乳酸系樹脂を構成するL−乳酸及び/又はD−乳酸単量体単位の構成比率は、以下の測定条件で、試料を1N−NaOHでアルカリ分解後に1N−HClで中和して蒸留水で濃度調整した加水分解試料(液)について、光学異性体分離カラムを装着した(株)島津製作所製の高速液体クロマトグラフィー(HPLC:LC−10A−VP(商品名))にて、紫外線UV254nmでのL−乳酸とD−乳酸の検出ピーク面積比(垂線法による面積測定)から、ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸の重量比率[L](単位%)、ポリ乳酸重合体を構成するD−乳酸の重量比率[D](単位%)を求め、1重合体当り3点の算術平均(四捨五入)をもって測定値とした。
カラム:東ソー(株)製「TSKgel−Enantio−L1」(商品名) [4.6mm径×25cm長]
移動相:1mM−CuSO4 水溶液
試料溶液濃度:25pg/μL [ポリ乳酸重合体としての濃度]
試料溶液注入量:10μL
溶媒流速:0.5〜0.8ml/分
カラム温度:40℃
【0058】
(2)Nature Works4042D、ビオノーレ#1001、#3001(商品名、昭和高分子(株))、セルグリーンPH7(商品名、ダイセル化学工業(株))、エコフレックス(商品名、BASF社)およびコーンポールCP−3(商品名、日本コーンスターチ(株))の融点Tm、ガラス転移温度Tg、ΔHm−ΔHc
JIS−K7121に準拠して、樹脂の融点Tm、ガラス転移温度Tgを測定した。すなわち、標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)した試料から試験片として長手方向(MD)及び幅方向(TD)に各々2点(2箇所)ずつ約10mgを切り出した後、パーキンエルマー(Perkin−Elmer)社製の示差走査熱量計(熱流速型DSC)、DSC−7型(商品名)を用いて、窒素ガス流量25ml/分、10℃/分で室温(23℃)から200℃まで昇温し(1次昇温)、200℃で10分間保持して完全に融解させた後、30℃/分で−100℃まで降温させて−100℃で2分間保持し、更に上記昇温条件で2回目の昇温(2次昇温)する間に描かれるDSC曲線のうち、1次昇温時の結晶化(発熱)ピーク面積から結晶化発熱量ΔHc(単位J/g)、1次昇温時の融解(吸熱)ピーク頂点から融点Tm(℃)、融解(吸熱)ピーク面積から結晶融解熱量ΔHm(単位J/g)、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をTg(単位℃)として測定し、1試料当り4点の算術平均(小数点以下四捨五入)をもって測定値とした。ここで、ΔHm、ΔHcはそれぞれ結晶融解熱量、結晶化発熱量を絶対値で表した値であり、ΔHm−ΔHcはその差である。
【0059】
(3)無機フィラー(B)、微粒子ポリマー(C)の平均粒子径(μm)
無機フィラー(B)および微粒子ポリマー(C)の平均粒子径は、(株)堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置 LA−910(商品名)を用いて、小粒子径のものから累計の頻度が50%となる粒子径を平均粒子径とした。
(4)フィルムまたはシートの全層厚み、各層厚み(μm)
フィルムの全層厚みは、JIS−K−7130に従い、マイクロメータを用いて測定、各層厚みは顕微鏡で多層フィルムの断面を観察して測定した。
【0060】
(5)表面光沢度(Gloss:45度)(%)
標準状態(23℃65%RH)で状態調節(23℃1週間放置)したサンプルフィルム又はシートから試験片として50mm角の正方形状のサンプルに切り出した後、表面光沢度(Gloss:単位%)は、ASTM−D2457−70に準拠して、日本電色工業(株)製の光沢計VGS−300A(商品名)を用い、標準状態下で測定し、1種フィルム又はシート当り6点の算術平均値(有効数字2桁)をもって測定値とした。
【0061】
(6)艶消し性
艶消し性は、フィルム又はシートを用いて包装体とした時における被包装物の照かり性の観点から以下のように評価した。
aa:最良の艶消し度で照かりが殆ど無い。
a :照かりがかなり抑えられ良好な艶消し性のレベル。
b :照かりが中程度抑えられ中程度の艶消し性のレベル。
c :照かりがある程度抑えられ実用できる最低限の艶消し性のレベル。
× :艶消し性に劣り、反射光が照かって見える。
【0062】
(7)製膜安定性
フィルム製膜時の安定性で以下の基準で評価した。
aa:全く問題なく安定して製膜できる。
a :殆ど問題ないが、まれに不安定になることがある。
b :まれにフィルムの脆い部分が発生して、チューブ状フィルムの製膜時に中の空気が
抜けることがある。
c :時々フィルムの脆い部分が発生して、チューブ状フィルムの製膜時に中の空気が抜
けることがある。
× :フィルムが脆くて、チューブ状フィルムの製膜時に中の空気が抜けることが多く、
欠陥のないフィルムを連続して得る事が難しい。
【0063】
(8)凹凸転写性および密着性
180℃に予熱したポリ塩化ビニル樹脂製壁紙用発泡シートとサンプルフィルムを平面ロール(ポリ塩化ビニル樹脂壁紙裏面紙と接触するロール)とエンボスロール(サンプルフィルムと接触するロール)で圧着し、エンボスロールの凹凸転写性および下地(ポリ塩化ビニル樹脂発泡シート)とサンプルフィルムとの密着性を以下の基準で評価した。
また、140℃に予熱したエチレン酢酸ビニル系樹脂製壁紙用発泡シートとサンプルフィルムを上と同様にして平面ロールとエンボスロールで圧着し、エンボスロールの凹凸転写性および下地とサンプルフィルムとの密着性を以下の基準で評価した。
aaa:最高の凹凸転写性で最も美しいエンボス加工ができ、且つ下地との密着性も最も優れている。
aa :優れた凹凸転写性で美しいエンボス加工ができ、且つ下地との密着性も優れている。
a :凹凸転写性も下地との密着性も良好で美しい状態である。
b :凹凸転写性か下地との密着性のどちらかは良好であるが、どちらかは実用として許容できる最低レベルである。
c :凹凸転写性も下地との密着性も両方とも実用として許容できる最低レベルである。
× :凹凸転写性か下地との密着性のどちらか少なくとも一方が実用として許容できるレベルに達しない状態である。
【0064】
(9)フィルム伸び
フィルム伸びはJIS K7127に従ってフィルムの長手方向(MD方向)の引張破断伸び(%)を測定し、以下の基準で評価した。
aa:引張破断伸びが50%以上で、ロール状フィルムを引き出す際にフィルムが適度に伸びて、且つシワ取りのためにフィルムに張力を掛けると良好に伸びてしわが取れ、高速での加工にも耐え、加工時の取り扱い性は最良である。
a :引張破断伸びが20%以上50%未満で、ロール状フィルムを引き出す際にフィルムが適度に伸び、シワ取りのためにフィルムに張力を掛けるとシワも取れて、加工時の取り扱い性は良好である。
b :引張破断伸びが10%以上20%未満で、ロール状フィルムを引き出す際にフィルムが少し伸びて破断に耐え、シワ取りのためにフィルムに弱い張力を掛ける程度であれば破壊せずにシワも取れて、加工時の取り扱い性は注意を要するが使用可能である。
c :引張破断伸びが5%以上10%未満で、ロール状フィルムを引き出す際にフィルムが破断し易く、シワ取りのためにフィルムに張力を掛ける場合には常時コントロールして弱い張力を掛ける程度であれば破壊せずにシワも取れて、加工時の取り扱い性は注意を要し、脆いので実用に耐える最低レベルの状態である。
× :引張破断伸びが5%未満でロール状フィルムを引き出す際、シワ取りのためにフィルムに張力を掛ける場合にフィルムが破断して使用できないほどに脆い状態である。
【0065】
(10)フィルム長手方向(MD方向)の引張弾性率(MPa)
フィルムの引張弾性率はJIS K7127に従って測定した。
(11)防汚性テスト
壁紙にラミネートした場合の汚れ防止機能(耐汚染性)を調べるために、日本壁装協会のホームページ(http://wacoa.topica.ne.jp/wacoa/kabe_kinou.html)に記載された方法に従い、フィルムに汚染物(コーヒー、醤油、クレヨン、水性サインペン)をそれぞれ付着させ、24時間後にコーヒーと醤油は水で、クレヨンと水性サインペンは中性洗剤で汚れを拭き取ったものを目視で判定した。判定は汚れを拭き取った部分を元のフィルムと比較判定し、以下の5段階評価のどれに相当するかを目視で判定し、4級以上を合格とした。
5級:汚れが残らない。
4級:ほとんど汚れが残らない。
3級:やや汚れが残る。
2級:かなり汚れが残る。
1級:汚れが濃く残る。
【0066】
(12)油性マジックに対する防汚性テスト
油性マジックに対する防汚性は、フィルムに寺西化学製の油性マジックNo.500ブラックを使用して、上記水性ペンの試験法に準じて等間隔に5本の平行線を描き、約5分後にエタノールと歯ブラシで洗浄した。判定は汚れを拭き取った部分を元のフィルムと比較判定し、以下の5段階評価のどれに相当するかを目視で判定した。
5級:汚れが残らない。
4級:ほとんど汚れが残らない。
3級:わずかに汚れが残るがほとんど気にならないレベル。
2級:かなり汚れが残る。
1級:汚れが濃く残る。
フィルムとしての防汚性評価としては、以下の様な基準で評価した。
aa:5級で、油性マジックに対して特に優れた防汚性を有するフィルム。
a :4級で、油性マジックに対して優れた防汚性を有するフィルム。
c :3級で、油性マジックに対して最低限の防汚性を有するフィルム。
× :2級以下で、油性マジックに対して防汚性に劣るフィルム。
【0067】
(13)総合評価
艶消し性、製膜安定性、凹凸追随性及び密着性、フィルム伸び、防汚性、油性マジックに対する防汚性の6項目の評価結果から以下の様な基準で総合評価した。
AAA:凹凸転写性および密着性の評価がaaaであり且つ他の5項目の評価が全てaaで、最良の防汚性と艶消し性を有するフィルム又はシートである。
AA :6項目の評価の全てがaaで、優れた艶消し性フィルム又はシートである。
A :6項目の評価の内、1項目以上がaで、残りは全てaaaかaaで、優れた防汚性と艶消し性を有するフィルム又はシートである。
B :6項目の評価の内、1項目以上がbで、残りは全てaaaかaaかaで、良好な防汚性と艶消し性を有するフィルム又はシートである。
C :6項目の評価の内、1項目以上がcで、残りは全てaaaかaaかaかbで、実用に耐える最低限の防汚性と艶消し性を有するフィルム又はシートである。
× :6項目の評価の内、1項目以上が×で、防汚性と艶消し性を有するフィルム又はシートとして実用に耐えないフィルム又はシートである。
【0068】
以下の実施例および比較例に用いた生分解性樹脂(A)は表1に示したポリマーであり、NatureWorks LLC製結晶性ポリ乳酸、Nature Works4042D(商品名)、昭和高分子株式会社製ポリブチレンサクシネート、ビオノーレ#1001、ポリブチレンサクシネートアジペート、ビオノーレ#3001(商品名)、BASF社製脂肪族芳香族ポリエステル、エコフレックス(商品名)である。これらのポリマーは全て生分解性プラスチック研究会(東京都中央区八丁堀2−26−9 URL:http://bpsweb.net/)のポジティブリストの分類A(樹脂)に登録され、生分解性プラスチック研究会識別表示委員会が指定する生分解性試験(OECD 301C、JIS K6950(2000)、JIS K6951(2000)又はJIS K6953(2000))の少なくともどれか1つに準拠して測定した生分解度が、各試験法が定める期間内に60%以上を示すことが既に確認されているポリマーである。
【0069】
また、無機フィラー(B)としては、松村産業(株)製のタルク、ハイフィラー#5000PJ(商品名)を用いた。微粒子ポリマー(C)としては信越化学工業(株)製シリコーン樹脂粒子、KMP−590(商品名)、澱粉誘導体(D)としては日本コーンスターチ(株)製のエステル化澱粉、コーンポールCP−3(商品名)を用いた。接着性改良剤として、東ソー(株)製のエチレン酢酸ビニル共重合物、ウルトラセン710(商品名)、ダイセル化学工業株式会社製ポリカプロラクトン、セルグリーンPH7(商品名)、ヤスハラケミカル(株)製の水添テルペン樹脂、クリアロンP−125(商品名)を用いた。また、非接着性の樹脂として旭化成ケミカルズ(株)製のサンテックLD F−1920(商品名)を、加水分解抑制剤として日清紡績(株)製カルボジイミド カルボジライトLA−1(商品名)用いた。
【0070】
[実施例1〜9及び比較例1〜3]
実施例1〜9及び比較例1〜3においては、表1の生分解性樹脂(A)、及び無機フィラー(B)および微粒子ポリマー(C)を用いて、以下の様にしてコンパウンドされた原料ペレットを得た。即ち、表2の組成のマスターバッチを得るために、ビオノーレ#1001を60重量%と微粒子ポリマー(C)であるシリコーン樹脂粒子、KMP−590を40重量%とを同方向二軸押出機を用いて、溶融混錬、押出、ペレット化し、その後十分乾燥して、シリコーン樹脂入りのビオノーレペレット1(シリコーン/ビオ−MB1)を得て、実施例1〜9および比較例2で使用した。同様にして、ビオノーレ#3001が60重量%、シリコーン樹脂40重量%の組成のシリコーン樹脂入りビオノーレペレット2(シリコーン/ビオ−MB2)を作成し、実施例7、9に用いた。また、無機フィラー(B)であるタルク、ハイフィラー#5000PJを40重量%と、ポリ乳酸 Nature Works4042Dを60重量%を、同方向二軸押出機で溶融混錬、押出、ペレット化し、その後十分乾燥して、タルク入りポリ乳酸ペレット1(タルク/PLA−MB1)として、実施例1〜4、9、比較例3に用いた。また、同様にして、タルクを50重量%と、ポリ乳酸を50重量%からタルク入りポリ乳酸ペレット2(タルク/PLA−MB2)を作成して、実施例8、比較例2に用いた。また、ポリ乳酸を50重量%と澱粉誘導体(D)であるコーンポールCP3を50重量%用いてコーンポール入りポリ乳酸ペレット(変性澱粉/PLA−MB)を作成して、実施例7に用いた。また、エコフレックスが60重量%、シリコーン樹脂40重量%の組成のシリコーン樹脂入りエコフレックスペレット(シリコーン/エコ−MB)を作成し、比較例3で使用した。
【0071】
また、比較例1では、表3の組成比になるようにポリ乳酸とビオノーレ#1001のペレットをドライブレンドして使用、比較例2では表3の組成比になるようにシリコーン樹脂入りビオノーレペレット1(シリコーン/ビオ−MB1)およびタルク入りポリ乳酸ペレット2(タルク/PLA−MB2)を使用した。また、比較例3では上記タルク入りポリ乳酸ペレット1(タルク/PLA−MB1)とシリコーン樹脂入りエコフレックスペレット(シリコーン/エコ−MB)をドライブレンドして使用した。
次に、こうして得られた各種マスターバッチペレット、ビオノーレおよびポリ乳酸樹脂のペレットを生分解性樹脂(A)、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)、および澱粉誘導体(D)の組成比が表3になる様にドライブレンドして、単軸押出機で溶融押出し、円筒形の単層ダイを用いて製膜した。
【0072】
押出時には、外側ダイリップ直径110ミリ、内側ダイリップ直径108ミリ、リップクリアランス1.0ミリの円筒ダイを用い、チューブ状に押出された溶融樹脂に冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内へエアーを注入してバブルを形成し、得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルムとして巻き取った。次に、バブルが安定してから、樹脂押出速度、バブル中へのエアー注入量、ピンチロールにおけるフィルム巻き取り速度を微調整し、最終厚みが15μmのフィルムを得た。
実施例1〜9及び比較例1〜3で得られたフィルムのフィルムの組成、艶消し性、製膜安定性、凹凸転写性および密着性、伸び、防汚性、油性マジック防汚性および総合評価を表3に示した。
【0073】
[実施例10〜14及び比較例4]
実施例10〜14および比較例4においては、第一層(チューブ状フィルムの最外層)には、表4に示した組成になるように実施例3〜7及び比較例3で使用した原料および日清紡績(株)製のカルボジイミド、カルボジライトLA−1入りポリ乳酸マスターバッチ(CDI/PLA−MB)をドライブレンドして用いた(実施例12ではCDI/PLA−MBを使用しなかった。)。この(CDI/PLA−MB)は、表2に示した様にカルボジライトLA−1を10重量%とポリ乳酸ペレット90重量%をブレンドして作成した。カルボジイミドは、生分解性樹脂(A)と無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の合計100重量部に対して0.2重量部添加した。
【0074】
第二層(中間層)には表4に示した組成になる様にエコフレックス、セルグリーン、ポリ乳酸、クリアロンP125、ウルトラセン710をドライブレンドして使用した。
第三層(チューブ状フィルムの最内層)には、実施例10〜14、比較例4の全てにおいて第二層樹脂に非接着性樹脂である低密度ポリエチレン サンテックLD F−1920を用いた。
実施例10〜14および比較例4では、外側ダイリップ直径110ミリ、内側ダイリップ直径108ミリ、リップクリアランス1.0ミリの3層の円筒ダイより押出し、表4に示した各層厚みの多層フィルムを製膜した。製膜終了後、非接着性樹脂層である低密度ポリエチレン層を他の2層から剥がして目的としたフィルムを得て、それを用いて物性評価した。
【0075】
こうして得られたフィルムの各層の組成、層構成、各層厚み、得られたフィルムの艶消し性、製膜安定性、エチレン酢酸ビニル系樹脂製壁紙に熱圧着した際の凹凸転写性および密着性、伸び、防汚性、油性マジック防汚性および総合評価の結果を表4に示した。ただし、グロス(%)の値は第一層側の表面光沢度、グロス(%)を測定した値であり、艶消し性、防汚性、油性マジック防汚性も第一層側で評価し、凹凸転写性および密着性評価は、第二層側をエチレン酢酸ビニル系樹脂製(EVA)壁紙と熱圧着させ、第一層側が外表面に出るようにして評価した。
【0076】
実施例11〜14で得られたフィルムは、比較的低温でもエチレン酢酸ビニル系樹脂(EVA)製壁紙との熱接着性が特に優れ、フィルムを貼り合わせた壁紙の裏面に市販の水性合成樹脂製のりを塗布して、のり面を内側にして折り返し、10枚重ね置きして、60分間放置した後に、合板に貼り付けて24時間放置した後に折り返し部分を観察して折れシワの消え具合を目視評価した結果では、殆どシワは残らず優れた折れシワ復元性を有していることが分かった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の改良された防汚性を有する艶消しフィルムまたはシートは、主要成分である樹脂が生分解性を有するため使用後に廃棄する際にも自然環境保護の観点から有利であり、且つ良好な製膜安定性と加工適性を有し、単独かまたは他素材と積層して用いられ、防汚性、特に油性マジックに対する優れた防汚性を有し且つ艶消し性で高級感を有する包装用資材、育成ハウスやマルチフィルム等の農業用資材として、また、壁紙、スクリーン、室内装飾品、日用品、学用品、文具、手帳、紙製品および紙容器、布製品、繊維製品およびテーブルクロス等の表面に積層して、艶消し性で高級感を与え且つ適度な防水性、汚れ防止機能を与えるラミネート用フィルム又はシート、光拡散板の表面に積層して、光拡散機能を増加するラミネートフィルム又はシートの分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を含む生分解性樹脂(A)を60〜97重量%、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)を3〜40重量%((A)と(B)と(C)の合計が100重量%)からなり、少なくとも片面の表面光沢度(Gloss:45度)が60%以下であることを特徴とする単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項2】
生分解性樹脂(A)が、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を20〜95重量%とガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)を5〜80重量%からなる混合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項3】
生分解性樹脂(A)が、ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)を30〜95重量%とガラス転移温度Tgが30℃以上である生分解性脂肪族ポリエステル(a2)を5〜70重量%からなることを特徴とする請求項1に記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項4】
ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)の融点Tmが80℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項5】
ガラス転移温度Tgが10℃以下である生分解性脂肪族ポリエステル(a1)の融点Tmが90℃以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項6】
無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の平均粒子径が10μm以下であることを特徴とする請求項1〜5に記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項7】
更に、澱粉および/またはその誘導体(D)を、上記生分解性樹脂(A)、無機フィラー(B)および/または微粒子ポリマー(C)の合計100重量部に対して10重量部以下含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の単層艶消しフィルムまたはシート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートが、表面光沢度60%以下の面を少なくとも1つの外表面になる様に積層された構造を有することを特徴とする多層の艶消しフィルムまたはシート。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートが、表面光沢度60%以下の面を1つの外表面になる様に積層され、残りの1つの表面にガラス転移温度Tgが10℃以下の生分解性ポリエステル(a3)を40重量%以上含有する樹脂からなる層が積層された、少なくとも2層からなる構造を有することを特徴とする多層の艶消しフィルムまたはシート。
【請求項10】
生分解性ポリエステル(a3)が、ガラス転移温度Tgが10℃以下で融点Tmが120℃以下である生分解性脂肪族芳香族ポリエステルであることを特徴とする請求項9に記載の多層の艶消しフィルムまたはシート。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを製造する方法であって、該艶消しフィルムまたはシートの少なくとも片面に対して非接着性の樹脂を選択し、該艶消しフィルムまたはシートの該片面と該非接着性樹脂層とを接触させる様に共押出フィルム又はシートを製膜し、その後に該非接着性樹脂層を剥がすことによって艶消しフィルムまたはシートを得ることを特徴とする艶消しフィルムまたはシートの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートからなる包装用資材。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートからなる農業用資材。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる壁紙。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる壁紙の基材がエチレン−酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂のいずれかである請求項14に記載の壁紙。
【請求項16】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなるスクリーン。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる室内装飾品。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる日用品、学用品、文具、または手帳。
【請求項19】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる紙製品。
【請求項20】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる布製品、繊維製品またはテーブルクロス。
【請求項21】
請求項1〜10のいずれかに記載の艶消しフィルムまたはシートを表面に積層してなる光拡散板。

【公開番号】特開2008−19338(P2008−19338A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192122(P2006−192122)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】