説明

防汚性車両内装材用布帛

【課題】
耐久性に優れた防汚性を有する車両内装材用布帛を提供する。
【解決手段】
ポリエステル繊維布帛の繊維表面に、オルガノポリシロキサン微粒子からなる防汚剤、バインダー樹脂および平滑剤が付着してなることを特徴とする防汚性車両内装材用布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚性を有する車両内装材用布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、列車、飛行機、船舶などの車両内装材として、座席シート、天井、カーテンなど様々な部位に布帛が用いられている。かかる布帛は、取り外して洗濯することが不可能、あるいは、非常に困難であるという理由から、高い防汚性が求められる。
【0003】
布帛に防汚性を付与する方法としては、フッ素化合物やシリコーン化合物などの撥水撥油剤で処理する方法が広く知られている。しかしながら、撥水撥油剤による処理では、湿った汚れ(「ウェットソイル」と呼ばれる)に対しては効果があるものの、乾燥した汚れ(「ドライソイル」と呼ばれる)に対しては逆に汚れを吸着する傾向にあった。車両内装材として車室空間内に適用された布帛は、外気より流れ込む砂や埃、粉塵、排気ガスなどの乾燥した汚れ物質により黒ずみやすい。しかしながら、撥水撥油剤による処理では、この黒ずみ汚れに対して十分に対処できないのである。
【0004】
これに対し、例えば、特許文献1には、繊維構造物の繊維表面を無機系ケイ素化合物で被覆することにより、繊維構造物に黒ずみ汚れに対する防汚性を付与することができ、自動車内装材として好ましく使用することができることが記載されている。しかしながら、かかる繊維構造物を車両内装材として適用した場合、乗員が乗り降りする際の摩耗により無機系ケイ素化合物が脱落しやすく、耐久性に欠けるという問題があった。
【0005】
一方、繊維表面に微粒子を付着させ、繊維表面に微細な凹凸を形成することにより、繊維と乾燥汚れとの接触状態を点接触として、汚れを付着させないように、かつ、付着しても落ちやすいようにする試みも提案されている。例えば、特許文献2には、粒子径が500nm以下、好ましくは100nm以下の微粒子を繊維表面に付着させることにより、繊維製品に乾燥汚れに対する防汚性を付与することができることが記載されている。ここで、微粒子は、各種金属酸化物から選ばれる無機化合物であるか、これら無機化合物に有機基を導入した有機物誘導体化合物である。しかしながら、特許文献2に記載のものは、一時的効果を狙ったものにすぎず、したがって耐久性に対する配慮はなく、依然として摩耗により微粒子が脱落しやすいという問題を抱えていた。
【0006】
微粒子の脱落を防止するには、バインダー機能を有する樹脂を併用するのが一般的である。例えば、特許文献3には、繊維基材層とその両面に配された樹脂層とからなる屋内テント用膜材において、樹脂層(バインダー機能を有する)に粒子径が20nm以上100nm未満のシリカ微粒子を含有させることにより、砂や埃に対する防汚性を付与することができ、しかも、その機能を長期間発現することができることが記載されている。また、特許文献4には、繊維布帛の繊維表面に、アニオン性を有する親水性樹脂(バインダー機能を有する)からなる内層と、カチオン性シリコーン系化合物微粒子からなる外層とからなる複合被膜層を形成することにより、泥や草木に対し、洗濯耐久性のある防汚性を付与することができることが記載されている。しかしながら、摩耗による微粒子の脱落防止という観点で検討されたものではなく、さらに改善できる余地があると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−248462号公報
【特許文献2】特開2004−238788号公報
【特許文献3】特開2009−108446号公報
【特許文献4】特開2006−83495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような現状に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、耐久性に優れた防汚性を有する車両内装材用布帛を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、防汚剤としてオルガノポリシロキサン微粒子を選択し、これをバインダー樹脂と平滑剤とともにポリエステル繊維布帛に付着させることにより、布帛に防汚性、特には、黒ずみなどの乾燥汚れに対する防汚性を付与することができ、しかも、摩耗による防汚剤の脱落を防止して耐久性を向上させることができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、ポリエステル繊維布帛の繊維表面に、オルガノポリシロキサン微粒子からなる防汚剤、バインダー樹脂および平滑剤が付着してなることを特徴とする防汚性車両内装材用布帛である。
オルガノポリシロキサン微粒子は、カチオン変性オルガノシリケート微粒子であることが好ましい。
バインダー樹脂のガラス転移温度は、−30〜+50℃であることが好ましい。
平滑剤は、シリコーンオイルおよび/またはワックスであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、防汚性を有する車両内装材用布帛、特には、黒ずみなどの乾燥汚れに対し優れた防汚性を有する車両内装材用布帛を提供することができる。本発明による車両内装材用布帛は、乗降時の摩耗により防汚剤が脱落することがなく、長期間にわたってその効果を持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明においてポリエステル繊維布帛とは、ポリエステル繊維を主体とする織物、編物、不織布を意味し、その物性に影響を及ぼさない範囲で、ポリエステル繊維以外の繊維を混紡、混繊、交撚、交織、交編などの手法により組み合わせたものであっても構わない。
【0013】
ポリエステル繊維として典型的には、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどを挙げることができるが、これに限定されるものでなく、第3成分として、例えば、イソフタル酸スルホネート、アジピン酸、イソフタル酸、ポリエチレングリコールなどを共重合して得られる繊維、またはこれらの共重合体やポリエチレングリコールをブレンドして得られる繊維であってもよい。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、物性に優れ、安価に入手可能という理由により、ポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。
【0014】
ポリエステル繊維と組み合わせるポリエステル繊維以外の繊維は特に限定されるものでなく、例えば、合成繊維(ポリエステル繊維を除く)、半合成繊維、再生繊維、天然繊維、無機繊維などを挙げることができ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0015】
かかるポリエステル繊維布帛は着色されたものであってもよく、繊維あるいは布帛とする前のポリマー原料に顔料などを混練することにより着色されたもの、繊維あるいは布帛とした後に染料などで染色(捺染を含む)することにより着色されたものなど、着色方法は特に限定されない。
【0016】
本発明の車両内装材用布帛は、前記ポリエステル繊維布帛の繊維表面に、オルガノポリシロキサン微粒子からなる防汚剤、バインダー樹脂および平滑剤が付着してなるものである。防汚剤として、微粒子状のものを選択し、これを繊維表面に付着させることにより、汚れが繊維間隙に浸透したり付着したりするスペースを狭めるとともに、繊維表面に微細な凹凸を形成して汚れとの接触状態を点接触とするのに役立つ。こうして、汚れが繊維に付着しにくく、かつ、付着しても落ちやすくなり、優れた防汚性が発揮される。また、微粒子としてオルガノポリシロキサン微粒子を選択することにより、布帛の風合いを損なうことがない。
【0017】
また、オルガノポリシロキサン微粒子を繊維表面に固定するためにバインダー樹脂を併用し、さらに、繊維表面の摩耗による負荷を軽減するために平滑剤を併用することにより、乗降時の摩耗によるオルガノポリシロキサン微粒子の脱落を防止することができ、優れた防汚性を長期間にわたって発揮することができる。
【0018】
本発明においてオルガノポリシロキサンとは、主鎖にシロキサン結合(Si−O−Si結合)による骨格を有し、かつ、側鎖に有機基を導入した高分子化合物をいう。具体的には、側鎖にアルキル基などを導入したオルガノシリコーン(単に「シリコーン」ともいう)、側鎖にアルコキシ基などを導入したオルガノシリケート(単に「シリケート」ともいう)などを挙げることができる。これらは有機基を有するため、適度な弾性があり、布帛の風合いを損なうことがない。オルガノポリシロキサンは、側鎖や末端が、各種の変性基で置換されたものであってもよい。
【0019】
前記の通り、本発明に用いられるオルガノポリシロキサンは、微粒子状であることが求められる。微粒子の形成性、形状および硬さの点から、オルガノポリシロキサン微粒子は、カチオン変性オルガノシリケート微粒子であることが好ましい。
【0020】
カチオン変性オルガノシリケート微粒子は、通常、1〜3級アミノ基や4級アンモニウム基などのカチオン性基と、シリカ表面のシラノール基に対して反応性を有する官能基との双方を有する有機化合物により、シリカ微粒子を表面処理することによって製造される。前記有機化合物としては、例えば、アミノエトキシシランやアミノアルキルジグリシジルエーテルなどを挙げることができる。このように、オルガノポリシロキサン微粒子は、無機化合物微粒子の表面を、オルガノポリシロキサンまたはその原料で処理することにより得られたものであることができる。
【0021】
オルガノポリシロキサン微粒子の粒子径は、0.1〜100nmであることが好ましく、1〜50nmであることがより好ましい。粒子径がこの範囲にある微粒子を用いることにより、糸条同士の間隙や繊維同士の間隙はもちろん、繊維表面に存在し得る微細な窪み(汚れがひっかかりやすい)にまで微粒子が入り込み、繊維表面を被覆する緻密な層が形成される。粒子径が0.1nm未満であると、バインダー樹脂から微粒子を適度に露出させることが困難となり、十分な防汚性が得られない虞がある。粒子径が100nmを超えると、微粒子を繊維表面に緻密に配することが困難となり、十分な防汚性が得られない虞がある。
【0022】
オルガノポリシロキサン微粒子は、微粒子そのものとして提供されるもののほか、水中に分散させた状態(サスペンジョン)で提供されるものを用いることができる。
【0023】
ポリエステル繊維布帛に対するオルガノポリシロキサン微粒子の付着量は、0.5〜10重量%であることが好ましく、1〜5重量%であることがより好ましい。付着量が0.5重量%未満であると、十分な防汚性が得られない虞がある。付着量が10重量%を超えても、性能の向上が見られないばかりか、布帛の風合いが硬くなったり、チョークマークが発生したりする虞がある。
【0024】
オルガノポリシロキサン微粒子を繊維表面に固定するため、本発明ではバインダー樹脂を併用する。バインダー樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。本発明では、バインダー樹脂が汚れ、特には、黒ずみ汚れの原因となる、砂や埃、粉塵、排気ガスなどの乾燥した汚れ物質を吸着することによって防汚性を損なうことがないよう、バインダー樹脂単独で皮膜化したときに、皮膜表面に粘着性やタック性を示さないものを用いることが好ましい。このため、バインダー樹脂のガラス転移温度は、−30〜+50℃であることが好ましく、0〜+30℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が−30℃未満であると、粘着性やタック性が強く、汚れを吸着しやすくなり、十分な防汚性が得られない虞がある。ガラス転移温度が+50℃を超えると、布帛の風合いが硬くなる虞がある。
【0025】
バインダー樹脂の形態は特に限定されるものでなく、水系(サスペンジョン、エマルジョン)、溶剤系のいずれも用いることができるが、環境への配慮、および、VOC(揮発性有機化合物)排出規制、非引火性の観点から、水系エマルジョンを用いることが好ましい。
【0026】
バインダー樹脂の使用量は、オルガノポリシロキサン微粒子100重量部に対し25〜200重量部であることが好ましく、50〜100重量部であることがより好ましい。使用量が25重量部未満であると、オルガノポリシロキサン微粒子を繊維表面に十分に固定することができず、防汚性の耐久性が損なわれる虞がある。使用量が200重量部を超えると、オルガノポリシロキサン微粒子がバインダー樹脂に埋没し、十分な防汚性が得られない虞がある。
【0027】
ポリエステル繊維布帛に対するバインダー樹脂の付着量は、0.25〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがより好ましい。付着量が0.25重量%未満であると、オルガノポリシロキサン微粒子を繊維表面に十分に固定することができず、防汚性の耐久性が損なわれる虞がある。付着量が10重量%を超えると、布帛の風合いが硬くなる虞がある。
【0028】
さらに、繊維表面の摩耗による負荷を軽減するため、本発明では平滑剤を併用する。これにより、オルガノポリシロキサン微粒子を単独で用いた場合、あるいは、オルガノポリシロキサン微粒子とバインダー樹脂の2つを併用した場合に比べ、オルガノポリシロキサン微粒子の脱落を防止して、防汚性の耐久性を大幅に向上させることができる。
【0029】
平滑剤としては、繊維布帛の平滑剤として従来公知のものを用いることができる。具体的には、シリコーンオイル、ワックスなどを挙げることができ、これらを1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0030】
シリコーンオイルとは、オイル(液状油)としての性質を示すシリコーンをいい、通常、シロキサン結合が2000程度以下の直鎖構造分子がこれに該当する。本発明においては、ジメチルポリシロキサンを骨格とするものが好ましく用いられる。具体的には、無変性(ストレートシリコーンオイル)のジメチルシリコーンオイルの他、メチル基の一部を各種の変性基で置換した変性シリコーンオイル、より具体的には、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイルなどを挙げることができる。なかでも、繊維表面に対する吸着性の高さから、アミノ変性シリコーンオイルがより好ましく用いられる。
【0031】
ワックスとしては、例えば、蜜蝋、鯨蝋およびセラック蝋等の動物由来のワックス;カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋およびキャンデリラワックス等の植物由来のワックス;パラフィンワックスおよびマイクロクリスタリンワックス等の石油由来のワックス;モンタンワックスおよびオゾケライト等の鉱物由来のワックス;フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、油脂系合成ワックス(エステル、ケトン類、アミド)および水素化ワックス等の合成ワックス;酸化ワックス、配合ワックス、および変性モンタンワックス等の加工・変性ワックスなどを挙げることができる。なかでも、繊維表面の摩擦係数を低減させる効果が高いという理由から、パラフィンワックスが好ましく用いられ、低融点タイプ(融点:30〜100℃)のパラフィンワックスがより好ましく用いられる。
【0032】
平滑剤の形態は特に限定されるものでなく、水系(エマルジョン)、溶剤系のいずれも用いることができるが、環境への配慮、およびVOC(揮発性有機化合物)排出規制、非引火性、バインダー樹脂との併用のしやすさの観点から、水系エマルジョンを用いることが好ましい。
【0033】
平滑剤の使用量は、オルガノポリシロキサン微粒子100重量部に対し5〜90重量部であることが好ましく、15〜40重量部であることがより好ましい。使用量が5重量部未満であると、防汚性の耐久性が損なわれる虞がある。使用量が90重量部を超えると、オルガノポリシロキサン微粒子が平滑剤に埋没し、十分な防汚性が得られない虞がある。
【0034】
ポリエステル繊維布帛に対する平滑剤の付着量は、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。付着量が0.01重量%未満であると、防汚性の耐久性が損なわれる虞がある。付着量が5重量%を超えると、オルガノポリシロキサン微粒子が平滑剤に埋没し、十分な防汚性が得られない虞がある。
【0035】
本発明の車両内装材用布帛は、以上に説明したオルガノポリシロキサン微粒子からなる防汚剤、バインダー樹脂および平滑剤を含む処理液を用いて、ポリエステル繊維布帛を処理することにより製造することができる。処理液は、水系エマルジョンとして調製される。
【0036】
ポリエステル繊維布帛に対する、オルガノポリシロキサン微粒子、バインダー樹脂および平滑剤の付着量は前記の通りであり、これらは、処理液の濃度や、布帛に対する処理液の付与量を調整することにより、適当量、布帛に付与される。
【0037】
なお、処理液は、必要に応じて他の成分、例えば、架橋剤、分散剤、増粘剤、乳化剤、pH調整剤、難燃剤、風合い処理剤、撥水剤などを含んでいてもよい。
【0038】
処理液をポリエステル繊維布帛に付与する方法としては、従来公知の方法を採用することができ、例えば、パディング法、スプレー法、コーティング法、グラビア法などを挙げることができる。なかでも、付与量のコントロールが容易であるという理由から、パディング法が好ましく用いられる。
【0039】
次いで、処理液を付与したポリエステル繊維布帛を乾燥する。乾燥は、溶媒である水が残存しない程度になされていればよく、条件は特に限定されない。生産効率を考慮し、適宜設定すればよい。
【0040】
熱処理により架橋反応を起こす架橋剤や自己架橋型のバインダー樹脂を用いる場合には、乾燥後、それらが架橋するに十分な条件(温度および時間)で熱処理する必要がある。なお、乾燥と熱処理を一工程にまとめて行うことも可能である。
【0041】
かくして、本発明の耐久性に優れた防汚性車両内装材用布帛を得ることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、性能の評価は以下の方法に従った。
【0043】
[防汚性]
汚粉として、関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gとを混合したものを調製した。この汚粉0.5gと、幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)10枚とを、1リットルの金属缶に入れ、ふたをして10分間よく振とうさせて、汚染布を調製した。こうして、汚染布を必要な枚数調製した。
幅30mm、長さ220mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、学振型摩擦試験機(株式会社大栄科学精器製作所製)に取り付け、前記汚染布をかぶせた摩擦子に荷重2Nを掛けて摩擦した。摩擦子が試験片の表面上100mmの間を30回往復/分の速さで20回往復摩擦した後、摩擦子の汚染布を新しい汚染布と交換して、再び摩擦を行った。以上の摩擦工程を5回(計100回往復)繰り返した後、試験片から汚粉を掃除機で除去した。
さらに、以上の工程(100回往復摩擦後、汚粉除去まで)を6回(計600回往復)繰り返した。
試験片を取り外し、変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4級以上を合格とした。
【0044】
[防汚性の耐久性]
幅70mm、長さ300mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、裏面に幅70mm、長さ300mm、厚み10mmの大きさのウレタンフォームを添え、ウレタンフォームの下面中央に直径4.5mmのワイヤーを設置した状態で、平面摩耗試験機T−TYPE(株式会社大栄科学精機製作所製)に取り付け、ワイヤー上をワイヤーと平行に白綿布(カナキン3号)をかぶせた摩擦子に荷重9.8Nを掛けて摩耗した。摩擦子が試験片の表面上140mmの間を60回往復/分の速さで10000回往復摩耗した後の試験片について、前記の防汚性試験を実施した。
【0045】
[実施例1]
ポリエステルトリコット(目付け:400g/m)を、処方1に示す処理液に浸漬後、マングルにて圧搾率(布帛に対する付与量)が90重量%となるように圧搾し(パディング法)、次いで、ヒートセッターにて150℃で3分間熱処理して乾燥した。布帛に対するカチオン変性オルガノシリケート微粒子の付着量は1.01重量%、アクリル樹脂の付着量は0.53重量%、アミノ変性シリコーンオイルの付着量は0.19重量%であった。また、カチオン変性オルガノシリケート微粒子100重量部に対するアクリル樹脂の割合は52.2重量部、アミノ変性シリコーンオイルの割合は19.3重量部であった。
かくして、実施例1の車両内装材用布帛を得た。
【0046】
処方1
1)商品名「BAYGARD AS」;5.6重量%
(カチオン変性オルガノシリケート微粒子(防汚剤)の水分散液、平均粒子径:30nm、有効成分:20重量%、ランクセス株式会社製)
2)商品名「ボンコートAN−1190」;1.3重量%
(アクリル樹脂(バインダー樹脂)の水系エマルジョン、ガラス転移温度:30℃、有効成分:45重量%、DIC株式会社製)
3)商品名「ANF-21S」;0.8重量%
(アミノ変性シリコーンオイル(平滑剤)の水系エマルジョン、有効成分:27重量%、一方社油脂工業株式会社製)
4)蒸留水;92.3重量%
【0047】
[比較例1]
処方2に示す処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の車両内装材用布帛を得た。
【0048】
処方2
1)商品名「BAYGARD AS」;5.6重量%
(カチオン変性オルガノシリケート微粒子(防汚剤)の水分散液、平均粒子径:30nm、有効成分:20重量%、ランクセス株式会社製)
2)蒸留水;94.4重量%
【0049】
[比較例2]
処方3に示す処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の車両内装材用布帛を得た。
【0050】
処方3
1)商品名「BAYGARD AS」;5.6重量%
(カチオン変性オルガノシリケート微粒子(防汚剤)の水分散液、平均粒子径:30nm、有効成分:20重量%、ランクセス株式会社製)
2)商品名「ボンコートAN−1190」;1.3重量%
(アクリル樹脂(バインダー樹脂)の水系エマルジョン、ガラス転移温度:30℃、有効成分:45重量%、DIC株式会社製)
3)蒸留水;93.1重量%
【0051】
[比較例3]
処方4に示す処理液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3の車両内装材用布帛を得た。
【0052】
処方4
1)商品名「BAYGARD AS」;5.6重量%
(カチオン変性オルガノシリケート微粒子(防汚剤)の水分散液、平均粒子径:30nm、有効成分:20重量%、ランクセス株式会社製)
2)商品名「ANF-21S」;0.8重量%
(アミノ変性シリコーンオイル(平滑剤)の水系エマルジョン、有効成分:27重量%、一方社油脂工業株式会社製)
3)蒸留水;93.6重量%
【0053】
実施例および比較例で得られた車両内装材用布帛について、性能を評価した結果を表1に示す。
【0054】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル繊維布帛の繊維表面に、オルガノポリシロキサン微粒子からなる防汚剤、バインダー樹脂および平滑剤が付着してなることを特徴とする防汚性車両内装材用布帛。
【請求項2】
オルガノポリシロキサン微粒子がカチオン変性オルガノシリケート微粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の防汚性車両内装材用布帛。
【請求項3】
バインダー樹脂のガラス転移温度が−30〜+50℃であることを特徴とする、請求項1または2に記載の防汚性車両内装材用布帛。
【請求項4】
平滑剤がシリコーンオイルおよび/またはワックスであることを特徴とする、請求項1〜3いずれか一項に記載の防汚性車両内装材用布帛。

【公開番号】特開2011−168905(P2011−168905A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32599(P2010−32599)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【Fターム(参考)】