防波装置
【課題】波浪や津波が押し寄せた際に、電源を必要とせず迅速に機能してその波を防波すると共に、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力によって押し倒されることのない防波装置を得る。
【解決手段】波浪、津波の際に防波構造体2の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材3を、取水口8、流通路4を通じて各浮上管部材3の内周面3a側に流入させた海水の水圧及びこの浮上管部材3に発生する浮力により、収容孔5内をガイド管部材6に沿って上昇して防波構造体2の上端側から突出すると共に、各浮上管部材3の内周面3a側の海水が流通路4を通じて流出させることにより収容孔5内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔5内に収容される構成とし、上記ガイド管部材6を、上記防波構造体2を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材3の昇降をガイドし、下端側が海底の地盤1まで打ち込まれているものとする。
【解決手段】波浪、津波の際に防波構造体2の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材3を、取水口8、流通路4を通じて各浮上管部材3の内周面3a側に流入させた海水の水圧及びこの浮上管部材3に発生する浮力により、収容孔5内をガイド管部材6に沿って上昇して防波構造体2の上端側から突出すると共に、各浮上管部材3の内周面3a側の海水が流通路4を通じて流出させることにより収容孔5内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔5内に収容される構成とし、上記ガイド管部材6を、上記防波構造体2を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材3の昇降をガイドし、下端側が海底の地盤1まで打ち込まれているものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波浪や津波の波が押し寄せた際に、電源を必要とすることなく機能してその波を防波する防波装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台風や発達した低気圧等による波浪(高潮含む)、あるいは地震による津波が懸念される地域では、これらの波浪や津波の防波対策として、護岸の改良が急務となっている。
このような波浪や津波による被害を防止するための対策としては、防波堤の高さを高くして、波が陸側に流入するのを防ぐことが考えられるが、いつ発生するか分からず、また発生確率も低い津波や、高潮等の波浪による異常潮位に対応するために防波堤を高くすると、設置費用が莫大となるだけでなく、景観を著しく害するという大きな欠点がある。
【0003】
この欠点を解消すべく、例えば特許文献1に示すように、波浪や津波が押し寄せた際に、これらの波を防波する浮上用鋼管を浮上させる可動式の防波堤が開発されており、この特許文献1の防波堤によれば、平時においては、浮上用鋼管は地中内の鞘管内に収容され、必要に応じて上昇して防波する構成であるため、景観を害するという問題が解消される。
しかしながら、この特許文献1のものは、浮上用鋼管を上昇させるためにコンプレッサ等の電気機器を使用する必要があるため、例えば地震等によって電源を喪失した場合には、浮上用鋼管を上昇させることができず、波を防波することができないという問題がある。
【0004】
一方で、特許文献2のように、波浪や津波が押し寄せてきた際に、無電源で防波用のフロートを上昇させる可動式防波堤も公知となっている。
この特許文献2のものは、押し寄せてきた波によって護岸外壁を越えた海水を、上記フロートが収容されている矩形空間内に、該矩形空間の上端側の開口から流入させ、この矩形空間内に溜まった海水によってフロートに発生する浮力により該フロートを上昇させる構成となっている。
しかしながら、この特許文献2の場合、矩形空間内に溜まった海水によってフロートに発生する浮力のみによって該フロートを上昇させるものであるため、急激に波が押し寄せてきた場合には、海水が矩形空間に溜まる時間的な余裕がない場合も想定されるため、フロートが上昇しきれずに防波できない可能性がある。
また、波が去った後については、矩形空間内の海水をポンプ等で排水してフロートを下降させる必要があるため、電源を喪失した場合には、フロートを下げることができないという問題がある。
さらに、津波の場合においては、押し寄せる波が有するエネルギーは凄まじいが、この津波のエネルギーに起因する外力がこの特許文献2に係る可動式防波堤に作用した場合には、防波堤全体が押し倒される可能性がある。また、仮に押し寄せる津波によって押し倒されなかったとして、津波が引く際に作用する反対方向の大きな外力によって、押し倒される可能性があり、津波への対策が万全とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−281128号公報
【特許文献2】特開2006−70536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、波浪や津波の波が押し寄せた際に、電源を必要とすることなく迅速に機能してその波を防波すると共に、波が引いた場合には速やかに平時の状態に復帰することができる、平時において周囲の景観を害することのない防波装置を提供することにある。
また、本発明の他の技術的課題は、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力によって、押し倒されることのない防波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の防波装置は、波浪、津波を防波する防波装置であって、海底の地盤上に固定的に配設された防波構造体と、筒状に形成されて、波浪、津波の際に該防波構造体の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材と、海水を各浮上管部材の下端側にそれぞれ流入出させる流通路と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、各浮上管部材を防波構造体の上端側から出没自在に収容する、上端側が開口する収容孔と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、上部側が該収容孔内に配設されて、上記各浮上管部材の昇降をそれぞれ個別にガイドする、上下方向に延びる筒状に形成された複数のガイド管部材とを有し、上記防波構造体は、該防波構造体の沖側に開設され、海水を取込んで上記流通路に流入させる一方、該流通路から流出される海水を海に排出する取水口を備え、上記各浮上管部材は、上記流通路を通じて各浮上管部材の下端側に流入させた海水による水圧及びこの浮上管部材に発生する浮力により、該収容孔内を上記ガイド管部材に沿って上昇して防波構造体の上端側から突出し、波浪、津波を防波すると共に、各浮上管部材の下端側の海水を流通路を通じて流出させることにより収容孔内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔内に収容される構成であり、上記各ガイド管部材は、上記防波構造体を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材の昇降をガイドすると共に、下端側が海底の地盤まで打ち込まれていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、上記浮上管部材は、その内周面側に上記各ガイド管部材がそれぞれ挿入されていて、該浮上管部材の内周面がガイド管部材の外周面に沿ってガイドされる構成であるものとすることができる。
あるいは、上記各浮上管部材は、上記各ガイド管部材の内周側に昇降自在にそれぞれ個別に配設されていて、該浮上管部材の外周面がガイド管部材の内周面に沿ってガイドされる構成である共に、上記ガイド管部材は、周面に、該ガイド管部材の内周面側に対して海水を流入出させる流通孔を備えているものとすることができる。
【0009】
また、本発明においては、上記ガイド管部材の内周面側に、ガイド管部材の自重を増加させるための充填材が充填されているものとすることができる。
【0010】
さらに、本発明においては、上記防波構造体の取水口に、該防波構造体よりも沖方向に延設され、先端側の開口部から波浪、津波の際に事前に海水を取込んで上記流通路に流入させる取水管が連結されているものとすることができる。
【0011】
また、本発明においては、上記浮上管部材は、一定の間隔を空けて防波構造体の長手方向に並設されていて、隣接する浮上管部材の間の空間に、これらの浮上管部材と同期して防波構造体の上端側から出没する、防波用の板状部材が配設されているものとすることができる。
【0012】
さらに、本発明においては、上記各浮上管部材と、対応する各ガイド管部材との間に、これら浮上管部材がガイド管部材から離脱することを防止するストッパ部材が設けられているものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、波浪、津波に際しては、防波する各浮上管部材が、取水口及び流通路を通じて該浮上管部材の下端側に流入させた海水の水圧と、この浮上管部材に発生する浮力によって、収容孔内を上記ガイド管部材に沿って上昇して防波構造体の上端側から速やかに突出し、波が引いた際には、各浮上管部材の内周面側の海水が流通路を通じて取水口から流出させることにより収容孔内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔内に収容される構成であるため、無電源で迅速に機能して防波、及び景観を損なわない平時位置への復帰を行うことができる。
また、浮上管部材をガイドする各ガイド管部材は、上記防波構造体を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材の昇降をガイドする一方で、下端側が海底の地盤の支持層まで打ち込まれているため、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力にも耐えて、防波装置全体が押し倒されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防波装置の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。ただし、浮上管部材が下降した平時の状態を示している。
【図2】同断面図である。
【図3】同一部破断要部正面図である。
【図4】同要部平面図である。
【図5】ストッパ部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明に係る防波装置の第1の実施の形態において、浮上管部材が上昇した状態を模式的に示す断面図である。
【図7】同斜視図である。
【図8】本発明に係る防波装置の第1の実施の形態において、浮上管部材が下降する状態を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明に係る防波装置の第2の実施の形態を模式的に示す断面図である。ただし、浮上管部材が下降した平時の状態を示している。
【図10】同要部平面図である。
【図11】本発明に係る防波装置の第2の実施の形態において、浮上管部材が上昇した状態を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明に係る防波装置の第3の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図13】同要部正面図である。
【図14】本発明に係る防波装置の第4の実施の形態を模式的に示す一部破断要部正面図断面図である。ただし、浮上管部材及び板状部材が下降した平時の状態を示している。
【図15】同要部平面図である。
【図16】同斜視図である。ただし、海面は省略している。
【図17】本発明に係る防波装置の第4の実施の形態において、浮上管部材及び板状部材が上昇した状態を模式的に示す正面図である。
【図18】同斜視図である。ただし、海面は省略している。
【図19】異なる形状の板状部材を用いた状態を模式的に示す要部平面図である。
【図20】本発明に係る防波装置の構築に際して使用するガイド管部材において、該ガイド管部材の先端にビットを設けた状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図8は、本発明に係る防波装置の第1の実施の形態を示すもので、波浪、特に高潮時の波や津波を防波するものである。
即ち、この実施の第1の形態の防波装置は、海底の地盤1上に固定的に配設された防波構造体2と、波浪、津波の際に該防波構造体2の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材3と、海水を各浮上管部材3の下端側を通してこれらの浮上管部材3の内周面3a側にそれぞれ流入出させる流通路4とを備えている。さらに、上記防波構造体2に鉛直方向に穿設されて、上記浮上管部材3を防波構造体2の上端側から出没自在となるように収容する収容孔5と、上記各浮上管部材3の昇降をそれぞれ個別にガイドする複数のガイド管部材6を備えている。
【0016】
上記防波構造体2は、通常の防波堤と同様の機能を有するコンクリート製のもので、基端側が海底の地盤1上に載置されていると共に、上端側は、海面7の平常潮位(波浪による波や津波がない平時の潮位)時において、海上に突出している。
この防波堤構造体2は、上端側に、長手方向に延びる平坦面2aが形成されていて、該平坦面2aに上記収容孔5が開設されている。
【0017】
また、上記防波構造体2には、その沖側の面に、海水の取込み及び排出を行う取水口8が開設されている。
この取水口8は、波浪、津波の際に、海水を取込んで上記流通路4に流入させる一方、波が引いた際には、該流通路4から流出される海水を海に排出するものであり、上記防波構造体2における、海面7の平常潮位よりも上方に設けられている。したがって、この取水口8は、波浪による波や津波が発生して潮位が上昇し、該取水口8の下端側の高さよりも高い異常潮位となった場合にのみ海水が流入し、また潮位が下がって異常潮位を脱した際には取込んだ海水を排出することができるようになっている。
この実施の形態においては、上記取水口8は、防波構造体2の長手方向、つまり上記各浮上管部材3及び収容孔5がそれぞれ並設されている方向に向けて、防波構造体2のほぼ全長に亘って延びる単一の略矩形状に形成されていて、この構成の取水口8から各浮上管部材3へ送る海水を一括して取込み、また、各浮上管部材3からの海水を一括して排出する構成となっている。
【0018】
上記各浮上管部材3は、上端側が閉塞された鉛直方向に延びる円筒状のもので、鋼管等の上端側の開口を鋼板等で気密に閉塞することにより形成されている。これら浮上管部材3は、波浪による波や津波が押し寄せた場合には、上記取水口8から取込んだ海水を流通路4を通して内周面3a側に流入させることにより上記収容孔5を上昇して、防波構造体2の上端から突出する一方で、波が引いた場合には取水口8から流通路4を介して海水を排出させることにより収容孔5を下降し、該収容孔5内に収容されるものである。
この実施の形態においては、これらの各浮上管部材3は、上記防波構造体2の長手方向に、相互に等間隔且つ直線状に並設されていると共に、その軸線方向長さが、想定される波浪や津波の高さに応じて、上記防波構造体2の高さを考慮した長さ設定されていて、波が押し寄せた際には防波構造体2と共に波を防波できるようになっている。
なお、この実施の形態においては、各浮上管部材3は、いずれも同形同大に形成されている。
【0019】
上記収容孔5は、上端側、即ち上記防波構造体2の上端側の平坦面2aに開口させたもので、上記各浮上管部材3を個別に収容するように、これら浮上管部材と同数の収容孔5が防波構造体2の長手方向に直線状に並設されている。
これらの各収容孔5は、上記浮上管部材3の外周径よりも大径の内周径を有した平面視略円形状に形成されていて、これらの収容孔5の内周面5aと、収容されている浮上管部材3の外周面3bとの間に海水が流入することができる程度の隙間が形成されるようになっている。
また、各収容孔5は、上記浮上管部材3の軸線方向長さよりも深く形成されていて、平時(平常潮位時)においては各浮上管部材3を、下端側から上端側に亘って完全に収容することが可能となっている。
なお、これらの各収容孔5は、隣接するもの同士が、最も近接する位置において相互に連通していても良く、また連通することなく独立したものであってもよい。また、これらの収容孔5は、隣接するものとの間の間隔が小さい方が好ましく、これにより、上記各浮上管部材3の間隔を狭めて可及的に密集させて、これらの浮上管部材3全体による防波効果の向上を図ることができる。
【0020】
上記流通路4は、上記取水口8と各浮上管部材3の下端側とを常時連通させるものである。
これにより、この実施の形態においては、各浮上管部材3の下端側を通じ、取水口8から取込んだ海水を上記浮上管部材3の内周面3a側に流入させて該浮上管部材3の上昇に供させる一方で、浮上管部材3の内周面3a側の海水を取水口8に向けて流出させて該浮上管部材3の下降に供させることが可能となっている。
この実施の形態の場合、上記流通路4は、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間、及び各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間により形成されている。
したがって、上記取水口8から取込まれた海水は、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って、各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間10に至り、該空間10から各浮上管部材3の下端側の開口3dから内周面3a側へと流入することとなる。逆に、各浮上管部材3の内周面3a側の海水が排出される場合、該海水は各浮上管部材3の下端側の開口3dから、各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間10に流出し、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って取水口8から排出される。
【0021】
上記各ガイド管部材6は、上部側が該収容孔5内に収容された状態で配設され、さらに、該収容孔5の底部5bから上記防波構造体2を鉛直方向に貫通して、下端側が海底の地盤1まで打ち込まれたものである。
これらの各ガイド管部材6は、上記浮上管部材3の内周径よりも小径の外周径を有する鋼管等の円筒状のものであり、上記収容孔5内に位置する上部側の部分は、その収容孔内に位置する浮上管部材の内周面側に挿入されて、浮上管部材の昇降を鉛直方向にガイドするガイド部6aとなっている。これにより、各ガイド管部材6のガイド部6aが、その外周面に沿って、挿入されている浮上管部材3の内周面3aをガイドし、収容孔5内における浮上管部材3の昇降を安定的に行わせるようにしている。
【0022】
また、上記各ガイド管部材6における上記収容孔5内に位置する部分、つまりガイド部6aの軸線方向長さは、平時において上記各浮上管部材3の上端部が収容孔5から突出しない範囲内で、各浮上管部材3の内周面3a側の軸線方向長さよりも長く設定されている。これにより、浮上管部材3の下端部3cと収容孔5の底部5bとの間に常に空間10が形成されて、上述のように、この空間10を流通路の一部として浮上管部材3の内周面3a側に対する海水の流入出を確実に行えるようにしている。
さらに、上記各ガイド管部材の外周径は、各ガイド管部材の外周面と、挿入している浮上管部材の内周面との間に海水が流入することができる程度の空間が形成されるような大きさに設定されていて、浮上管部材の内周面側に対する海水の流入出が自在に行えるようにしている。
【0023】
一方で、各ガイド管部材6の下端側は、海底の地盤1まで達していて、この実施の形態においては、該地盤1の中間層1bを貫通し、さらには、より頑強な支持層1bにまで至っている。これにより、各ガイド管部材6が支持杭の役割を果たして、防波構造体2が安定的に地盤1上に固定されるようにしている。
この結果、波浪による波や津波、特に大きなエネルギーを有する津波が押し寄せ、該防波構造体2に外力を与えたとしても、この防波構造体2全体が転倒したり押し流されたりすることが防止される。なお、仮に波が防波装置自体を越えた場合において、その波が引く際にも、波が押し寄せた場合とは反対方向の大きな外力が防波構造体2に作用することが考えられるが、このような場合であっても、防波構造体2全体が転倒したり押し流されたりすることが防止される。
【0024】
さらに、上記各ガイド管部材6は、その内周面6b側に、該ガイド管部材6の自重を増加させるための充填材11が、内周面6b側全体に亘ってそれぞれ充填されていて、その自重によって防波構造体2をより安定的に海底の地盤1上に固定することができるようにしていると共に、ガイド管部材6自体の座屈等に対する強度を向上させている。なお、充填材11としては、コンクリート、製鋼スラグ、高炉スラグ等が望ましい。
また、上記各ガイド管部材6としては、基端部に外方に張り出すフランジ状あるいは螺旋状の羽根が設けられた、いわゆる羽根付鋼管を用いることが好ましく、これにより、各ガイド管部材6の引抜き方向の力に対する抗力を確保することができるため、波浪や津波によって防波構造体2に作用する外力により確実に対抗することができる。
【0025】
また、上記各浮上管部材3と対応する各ガイド管部材6との間には、これら浮上管部材3がガイド管部材6から離脱することを防止するストッパ部材12がそれぞれ設けられている。
このストッパ部材12は、浮上管部材3が海水により上昇した際に、ガイド管部材5から抜け出て脱落して流出するのを防ぐためのもので、例えば、図5に示すような、浮上管部材3の防波のための昇降を妨げず、且つガイド管部材6から離脱しない程度の長さのワイヤーにより、各浮上管部材3と対応する各ガイド管部材6とを相互に連結することができる。
なお、このストッパ部材12としては、上記ワイヤー以外の任意のものを用いることができ、例えば、各浮上管部材の内周面側の下端部近傍と、各ガイド管部材の上端部近傍とに、抜け止め用の突起等を設け、それらの突起が相互に引っ掛ることによって浮上管部材がガイド管部材から離脱することを防止するようにしてもよい。
【0026】
上記構成を有する防波装置は、波浪、津波時及びその収束後においては、次のように機能する。
平時、即ち、海面7が平常潮位である場合においては、図1〜図3に示すように浮上管部材3は、防波構造体から突出することなく、全体として収容孔5内に収容されている。
そして、波浪よる波や津波が発生し、その波が押し寄せて海面7が異常潮位となった場合には、図6に示すように、上記取水口8から海水を流入させて取込み、その取込んだ海水を、上記流通路4(この実施の形態の場合、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9、及び各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間10)を通じて、各浮上管部材3の下端側の開口3dから内周面3a側へと流入させる。
このとき、各浮上管部材3は、上端側が閉塞されているため、内周面3a側に流入した海水がこの閉塞部分に衝突するエネルギー(水圧)により効果的に上方に押し上げられ、さらには、海水によって各浮上管部材3に発生する浮力によっても浮上するため、波のエネルギーを有効に利用してきわめて迅速に上昇する。
なお、各浮上管部材3が上昇するに際しては、上記ストッパ部材によって、各浮上管部材がガイド管部材及び収容孔から抜け出ることがなく、また、完全に上昇した状態においては各浮上管部材の下端側及びその近傍部分は収容孔内に留められる。また、各浮上管部材3が完全に上昇しきった後の余剰となった海水は、上記収容孔5の内周面5aと浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って、該収容孔5の上端側の開口から放出される。
【0027】
この結果、図6及び図7に示すように、各浮上管部材3は、上記収容孔5内を上記ガイド管部材6に沿って上昇して防波構造体2の上端側から迅速に突出し、該防波構造体2と共に波浪、津波を防波することとなる。これにより、波を防波する高さが平常時、つまり防波構造体自体の高さよりも増大するため、防波構造体の高さを越えるような高い波(特に高潮)や津波が押し寄せても確実にこれを防波することができる。
【0028】
一方、波が引いて平常潮位に戻る場合には、図8に示すように、潮位に応じて各浮上管部材3の内周面3a側の海水は流通路4に徐々に流出し、該流通路5を通じて取水口8から排出される。なお、海水の一部は、収容孔5の内周面5aと浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って、該収容孔5の上端側の開口からも排出される。
そして、各浮上管部材3は、自重との関係でガイド管部材6に沿って収容孔5内を次第に下降し、最終的には、下端部から上端部に亘って完全に収容孔5内に収容されることとなる。
これにより、浮上管部材3は平時の位置に復帰し、防波装置全体として、周囲の景観を損なわない状態に戻る。
【0029】
このように、上記構成を有する防波装置は、波浪、津波時には、防波する各浮上管部材3を、取水口8及び流通路4を通じて該浮上管部材3の内周面3a側に流入させた海水の水圧と、この浮上管部材3に発生する浮力を利用して防波構造体2の上端側から速やかに突出させる一方、波が引いた際には、各浮上管部材3の内周面3a側の海水を流通路4を通じて取水口8から流出させて、収容孔5内に下降させる構成であるため、無電源で迅速に機能して防波と平時状態への復帰を行うことができる。
また、各ガイド管部材6は、上記防波構造体2を鉛直方向に貫通し、収容孔5内に位置する上部側(ガイド部6a)において上記浮上管部材3の昇降を安定的にガイドする一方で、下端側が海底の地盤1の支持層1aまで打ち込まれているため、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力にも耐えて、防波装置全体が押し倒されたり、押し流されたりすることが防止される。
【0030】
上記第1の実施の形態においては、ガイド管部材が浮上管部材の内周面側に挿入された構成となっているが、次に述べる第2の実施の形態においては、浮上管部材がガイド管部材の内周面に挿入された構成となっている。
即ち、図9〜図11は、本発明に係る防波装置の第2の実施の形態を示すもので、この第2の実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態と同様に、海底の地盤上に固定的に配設された防波構造体2と、波浪、津波の際に該防波構造体2の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材13と、海水を各浮上管部材13の下端側を通してこれらの浮上管部材13の内周面13a側にそれぞれ流入出させる流通路14とを有している。さらに、上記防波構造体2に上下方向(この実施の形態の場合は鉛直方向)に穿設されて、該浮上管部材13を防波構造体2の上端側から出没自在となるように収容する収容孔15と、上記各浮上管部材13の昇降をそれぞれ個別にガイドする複数のガイド管部材16と、該防波構造体2の沖側に開設された、海水の取込み及び排出を行う取水口8を備えている。
【0031】
なお、上記浮上管部材13及びガイド管部材16、並びに流通路14、収容孔15以外の構成は、実質的に上記第1の実施の形態と同様の構成であり、また同様の作用効果を奏するため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
上記各ガイド管部材16は、外周径が上記収容孔15の内周径と略同径に形成された円筒状に形成されたもので、内周面16a側に上記浮上管部材13が収容されている。
また、各ガイド管部材16は各収容孔15内に収容されていて、ガイド管部材16の外周面16bと該ガイド管部材16が収容されている収容孔15の内周面とが相互に当接した状態に保持されている。
【0033】
さらに、各ガイド管部材16は、その内周面16a側における収容孔15の底部に相当する高さにまで、各ガイド管部材16の自重を増加させるコンクリート等の充填材17が充填されていて、この該充填材17が充填されていない部分の空間が、上記浮上管部材が収容し且つ該浮上管部材が昇降のガイドに供される収容部16cとなっている。なお、各ガイド管部材16に充填された充填材の上端部分は、略水平の平坦面17aがそれぞれ形成されている。
また、各ガイド管部材16の浮上管部材13を収容する高さにおける、上記取水口8に臨む周面には、該ガイド管部材16の内周面16aと外周面16bとの間を貫通して、該ガイド管部材16の外周面16b側から内周面16a側に向けて海水の流入させる一方で、内周面16a側から外周面16b側に向けて海水を流出させる流通孔18が設けられている。
【0034】
上記各浮上管部材13は、鋼管等により形成され、下端側が鋼板等により気密に閉塞されていると共に上端側が開放された、上下方向に延びる円筒状のもので、外周径が上記ガイド管部材16の内周径よりも小径に形成され、上記各ガイド管部材16における充填材17が充填されていない内周面16a側、つまり収容部16c内に昇降自在に個別に挿入されている。したがって、各浮上管部材13は、各ガイド管部材16を介して、防波構造体2の上端側から出没自在となるように上記収容孔15に収容されていることとなる。さらに、各浮上管部材13が昇降する際には、これらの浮上管部材13の外周面が、ガイド管部材16の内周面16aによってガイドされて、安定的な昇降が図られることなる。
また、上記各浮上管部材13の外周径は、各浮上管部材13の外周面13bと上記ガイド管部材16の内周面16aとの間に、海水が流入出することが可能な隙間19が形成される程度の大きさとなっている。
【0035】
また、各浮上管部材13の下端部13cと、各ガイド管部材16内における充填材17の上端側の平坦面17aとの間には、浮上管部材13がガイド管部材16内において最も下降した状態において、該浮上管部材の下端部13cと充填材17の上端側の平坦面17aとの間に、浮上管部材3の内周面13a側に対する海水の流出入を安定的且つ確実に行わせるための、海水流通用の空間20が形成されている。
この海水流通用の空間20を形成するにあたっては、例えば、上記充填材17aの上端側の平坦面17a上に浮上管部材13の下端部13cの一部が当接するスペーサ17bを設けて、浮上管部材13の下端部13cと充填材17の平坦面17aとの間にこの空間20ができるようにする等、任意の手段を用いることができる。
【0036】
上記流通路14は、この実施の形態においては、上記各ガイド管部材16の流通孔18、及び各ガイド管部材16の内周面16aと収容されている浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19、さらには各浮上管部材13の下端部13c側に設けられた海水流通用の空間20で構成されている。
したがって、図11に示すように、海面が異常潮位となった場合に上記取水口8から取込まれた海水は、各ガイド管部材16の流通孔18から各ガイド管部材16の内周面16a側に流入し、さらに該ガイド管部材16の内周面16aと浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19を通って海水流通用の空間20に至る。これにより、該空間20内の海水が各浮上管部材13の下端側の閉塞された下端部13cに衝突し、各浮上管部材13は、その海水によるエネルギー(水圧)により効果的に上方に押し上げられ、さらには、該海水によって各浮上管部材3に発生する浮力によっても浮上するため、これらの各浮上管部材13は上記各ガイド管部材16内をそれぞれ上昇することとなる。
逆に、海面の潮位が下がった場合、海水流通用の空間20内の海水は、該空間20から上該ガイド管部材16の内周面16aと浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19を通り、流通孔18から各ガイド管部材16の外周面16b側に流出して、取水口8からそれぞれ排出され、これにより、各浮上管部材13は各ガイド管部材16内をそれぞれ下降することとなる。
なお、各浮上管部材13の上昇に際して余剰となった海水や、各浮上管部材13の下降時において浮上管部材13の内周面13a側から流出する海水の一部は、上記ガイド管部材16の内周面16aと浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19を通って、ガイド管部材16の上端側の開口、延いては収容孔15の上端側の開口から放出される。
【0037】
上記構成を有する第2の実施の形態の防波装置は、基本的に上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、上記第1実施の形態に比べて、ガイド管部材16の径を大きくすることができるため、ガイド管の板厚が同一であれば、該ガイド管部材の強度を高め、防波構造材2の固定をより強固に行うことができ、これにより、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力に対する耐力を増加させることできる。
【0038】
上記第2の実施の形態においては、ガイド管部材の外周径と収容孔の内周径をほぼ同じとし、これらガイド管部材の外周面と収容孔の内周面とが当接した構成となっているが、ガイド管部材の外周径は収容孔の内周径よりも小径であってもよく、ガイド管部材の外周面と収容孔の内周面との間に隙間が形成されるようにしてもよい。その場合には、流通孔は、取水口とガイド管部材の流通孔との間に、ガイド管部材の外周面と収容孔の内周面との間の隙間が加わる構成となる。
なお、第2の実施の形態においては、上記浮上管部材13は、下端側が気密に閉塞され、上端側が開口した構成となっているが、この実施の形態における浮上管部材は、下端側だけでなく上端側も気密に閉塞された構成としてもよく、あるいは上端側が閉塞されて下端側が開口した構成であってもよい。
【0039】
図12及び図13は本発明に係る防波装置の第3の実施の形態を示すもので、この実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態とは、取水口の構成が異なっていると共に、一部の浮上管部材に対する海水の取水を、防波構造体よりも沖側で行う構成となっている。
即ち、この第3の実施の形態の防波装置は、防波構造体2に開設された取水口21が、各浮上管部材3毎に独立した状態で複数設けられていて、各取水口21は、対応する1本の浮上管部材3に対して個別に海水の取水と排出を行う構成となっている。したがって、これらの取水口21は浮上管部材3と同数開設されていることになる。
また、流通路22については、各浮上管部材3と対応する取水口21との間にそれぞれ設けられた構成となっている。なお、各流通路22の構成については、1本の浮上管部材3に対して個別に海水の取水と排出を行う取水口21と連通している点以外は、基本的に上記第1の実施の形態の流通路と実質的に同じ構成であり、同様の作用効果を奏する。
【0040】
さらに、上記複数の取水口22のうちの少なくとも1つについては、防波構造体2よりも沖方向に延設された筒状の取水管23が連結されている。図13に示すように、この実施の形態については、取水管23が連結されている取水口と連結されていない取水口とが交互に位置するようにしている。
上記取水管23は、先端側(沖側)の開口部23aから波浪、津波の際に海水を取込み、その海水を上記流通路22に流入させるもので、基端側が取水口21に気密に連結されている。
この実施の形態においては、上記取水管23は、基端側近傍の部分は防波構造体2の沖側の面に沿わせ、その他の部分は海底の地盤1に沿って沖側まで延設させたものとなっている。
また、この取水管23の中には、常時海水が充填されており、取水口近傍の防波構造体2の沖側の面に沿わせている部分については、少なくとも通常潮位の海面と同程度の高さまで海水が満たされている。これにより、波浪、津波の際に取水管23の開口部23aから流入した海水が、既に取水管23内にある海水を取水口方向に押出すため、波のエネルギーを早期に浮上管部材3に伝達することが可能となる。
【0041】
ここで、この取水管23を設けたのは、波浪、津波の際、その波が防波構造体2に到達する前に事前に浮上管部材3の一部を上昇させて、波に対する早期の対応を実現するためである。
波浪による波や津波は比較的に速度が速く、波が防波構造体に到達した時点で浮上管部材を上昇させた場合には、上昇までの時間的な余裕を確保できずに十分な防波効果が得られない可能性がないとはいえない。
そこで、押し寄せる波のエネルギーを利用して、防波構造体よりも十分に沖側の位置で事前に海水を取込んで、そのエネルギーを早期に浮上管部材に伝達させ、波が防波構造体に到達する前に、一部の浮上管部材だけでも上昇させて防波態勢を取らせ、被害を最小限に抑えることができるようにしている。
【0042】
なお、上記取水口21、流通路22、取水管23以外の構成は、実質的に上記第1の実施の形態と同様の構成であり、また同様の作用効果を奏するため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
上記構成を有する第3の実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、上述のように、沖側に延設された取水管23を設けたことにより、波浪による波及び津波が防波構造体に到達する前に事前に海水を取込んで、早期に浮上管部材3を上昇させることができるため、防波態勢を早期に確立することできるという利点がある。
【0044】
なお、上記第3の実施の形態においては、第1の実施の形態の構成を基礎として、ガイド管部材6の上部側が浮上管部材3の内周面3a側に挿入された構成となっているが、第2の実施の形態の構成を基礎とした、浮上管部材がガイド管部材の内周面側に挿入された構成を用いてもよい。
【0045】
図14〜図18は、本発明の防波装置の第4の実施の形態を示すもので、この第4の実施の形態の防波装置は、複数の浮上管部材24を備えていて、隣接する浮上管部材24,24の間の空間に、これらの浮上管部材24と同期して防波構造体2の上端側から出没する防波用の板状部材25が配設された構成となっている。
上記各浮上管部材24は、予め定められた一定の間隔、即ち、設置すべき上記板状部材25の横幅と同等の間隔を空けて防波構造体2の長手方向にそれぞれ並設されている。なお、これらの各浮上管部材24自体の構成は、基本的に上記第1の実施の形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
また、防波構造体2に穿設された収容孔26は、各浮上管部材24の配置に適合する間隔に配設された、各浮上管部材24を個別に収容する浮上管部材用の収容部26aと、隣接する浮上管部材用の収容部26a,26aの間に設けられて、隣接する浮上管部材24,24の間に配設されている上記板状部材25を収容するための板状部材用の収容部26bとを備えている。したがって、この収容孔26は、各浮上管部材用の収容部26aが、板状部材用の収容部26bを介して一連に連通した構成となっている。
【0047】
さらに、この実施の形態においては、防波構造体2に開設された取水口27は、浮上管部材24と同数、相互に独立した状態で設けられていて、これにより、基本的に、各取水口27が、対応する1本の浮上管部材24に対して海水の取水と排出を行う構成となっている。
また、各浮上管部材24と対応する取水口27との間には流通路28がそれぞれ設けられている。なお、各流通路24の構成については、1本の浮上管部材24に対して個別に海水の取水と排出を行う取水口27と連通している点以外は、基本的に上記第1の実施の形態の流通路と実質的に同じ構成であり、同様の作用効果を奏する。
【0048】
上記板状部材25は、例えば鋼製の矢板や鋼板等により形成された、上記浮上管部材24の軸線方向長さとほぼ同じ高さを有し、且つ防波構造体2の長手方向に延びる板体状のもので、隣接する浮上管部材24,24の間において、これら浮上管部材24,24と共に波浪による波や津波を防波するものである。
この実施の形態においては、隣接する浮上管部材24,24の間に1枚の矢板からなる板状部材25を配設し、該板状部材25の両端面を対向する浮上管部材24の外周面に剛接合した構成となっている。また、各板状部材25は、図15及び図16に示すように、平面視において、各浮上管部材24を挟んで相対する位置(平面視において、各浮上管部材24の軸線を中心として180°をなす位置)にそれぞれ配設され、各端部が浮上管部材24にそれぞれ位置不動に固定されている。
これにより、各浮上管部材24は、板状部材25を介して全体として一連に連結された構成となり、したがって、波浪による波や津波が押し寄せてきた場合には、図17に示すように、すべての浮上管部材24及び板体部材25が同期して一斉に上昇して、防波構造体2の上端側から突出し、これらのすべての浮上管部材24及び板体部材25の全体で波を防波する。一方、波が引いた場合には、これらの浮上管部材24及び板体部材25が同期して一斉に下降し、上記収容孔26に収容されることとなる。
【0049】
なお、浮上管部材24、板状部材25、収容孔26、取水口27、流通路28以外の構成については、実質的に上記第1の実施の形態と同様の構成であり、また同様の作用効果を奏するため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
上記構成を有する第4の実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、隣接する浮上管部材24,24の間に板状部材25を設けたことにより、第1に実施の形態の構成に比べて、浮上管部材間の間隔を大きくとって防波構造体に配設する浮上管部材の数を減らすことができるため、それに伴って収容孔やガイド管部材の数を減らすことができ、これによって防波装置としての設置の手間やコストの低減を図ることが可能となる。
【0051】
上記第4の実施の形態においては、隣接する浮上管部材24,24の間に1枚の板状部材25を配設し、該板状部材25の両端面を対向する浮上管部材24の外周面に剛接合した構成となっているが、図19に示すように、各浮上管部材の外周面における防波構造体の長手方向に沿う両側に、隣接する浮上管部材との間隔の約半分の幅の一対の板状部材29,29をそれぞれ剛接合して、各浮上管部材を板状部材で連結することなく独立して昇降させるようにしてもよい。
この場合においては、上記第1の実施の形態と同様に、各浮上管部材はそれぞれ独立して昇降するため、各浮上管部材に配設された一対の板状部材は、他の浮上管部材の板状部材の動きに干渉されることなく、その接合された浮上管部材と共に昇降することとなる。
なお、各板状部材は、仮に浮上管部材が軸線周りに回転しようとした場合であっても、板状部材の下端側の一部が収容孔の板状部材用の収容部に引っ掛るため、浮上管部材の回転及びそれに伴う板状部材の回転は抑止される。
なお、図19に係る防波装置の構成は、板状部材29以外は上記第4の実施の形態と同様の構成であるため、該第4の実施の形態と同様の符号を付している。
【0052】
さらに、上記第4の実施の形態においては、第1の実施の形態の構成を基礎として、ガイド管部材6の上部側が浮上管部材24の内周面側に挿入された構成となっているが、第2の実施の形態の構成を基礎とした、浮上管部材がガイド管部材の内周面側に挿入されている構成を用いてもよい。ただし、この場合は、ガイド管部材に板状部材が所工事材に挿入される溝等を設ける必要がある。
【0053】
また、上記第4の実施の形態においても、上述した第3の実施の形態のように、上記防波構造体2の取水口27の少なくとも1つに、該防波構造体2よりも沖方向に延設され、先端側の開口部から波浪、津波の際に事前に海水を取込んで上記流通路に流入させる取水管を連結することができる。
特に上記第4の実施の形態の場合は、隣接する浮上管部材の対向する板状部材同士が剛接合されているため、波浪、津波の際に、取水管の開口部から海水を取込んだ場合には、そのエネルギーによってすべての浮上管部材及び板状部材を同時に上昇させることができる。したがって、防波装置全体として早期に防波態勢を整えることができる上、高い防波効果を発揮することができるため、上記第4の実施の形態の構成に上記取水管の設置することは、波浪、津波対策としては非常に効果的である。
なお、上記第4の実施の形態の構成のように隣接する浮上管部材の対向する板状部材同士が剛接合されている場合、浮上管部材及び板状部材の自重により、これらの浮上管部材及び板状部材の上昇には大きなエネルギーが必要となるため、取水管は浮上管部材及び板状部材の数に応じて複数個設けることが望ましい。ただし、取水管からの海水によってこれらの浮上管部材及び板状部材が完全に上昇しきらなかった場合であっても、波浪による波や津波が防波構造体に押し寄せた際に取水口から海水が直接取込まれて、早期に完全な上昇状態とすることが可能であるため、これらの浮上管部材及び板状部材が全く上昇していない場合に比べ、防波態勢を整えることができる。
【0054】
さらに、上記第1〜第4の実施の形態の防波装置は、防波構造体を海底の地盤上に新たに設置することによって構築してもよいが、この防波構造体として既存のコンクリート製の防波堤を利用して構築してもよい。
このような既存の防波堤を利用して防波装置を構築するに際しては、既存の防波堤に対して収容孔を上下方向に形成すると共に、該収容孔からガイド管部材を海底の地盤、さらに好ましくは支持層に至るまで上下方向に打ち込み、さらに該防波堤の沖側に取水口を開設する。
ここで、上記収容孔の形成とガイド管部材の打ち込みに際しては、例えば図20に示すように、ガイド管部材の下端側を、必要な収容孔の内周径と同程度の外周径となるよう厚肉にするなどして拡径すると共に、該ガイド管部材6(16)の拡径した下端部に、コンクリート掘削用のビット30を取付けた上で、このガイド管部材を、既存の防波堤の上端面から下方向に向けて、回転させながら圧入、掘削して支持層まで打ち込む方法を用いることができる。この場合には、収容孔の形成とガイド管部材の打ち込みを同時に行うことができるため、防波装置の構築を効率良く行うことができる。
あるいは、ガイド管部材の下端側を拡径することなく、下端側にコンクリート掘削用のビットを取付けて、このガイド管部材を既存の防波堤の上端面から下方向に向けて掘削して海底の地盤あるいはその支持層まで打ち込んだ後、内周径がガイド管部材の外周径よりも大径で且つ必要な収容孔の内周径と同等の外周径を有し、先端部に上記コンクリート掘削用のビットを取付けた鋼管によりガイド管部材の周囲を掘削することにより収容孔を形成するようにしてもよい。
【0055】
上記第1〜第4の実施の形態においては、浮上管部材及びガイド管部材を円筒状のものとしているが、これらの浮上管部材及びガイド管部材は、必ずしも円筒状である必要はなく、角筒状等、任意の断面形状を有する筒状とすることができる。
また、上記第1及び第3、第4の実施の形態においては各浮上管部材の上端側を閉塞し、第2の実施の形態においては各浮上管部材の下端側を閉塞しているが、各浮上管部材は必ずしも上端側あるいは下端側を閉塞する必要はなく、上下端側がいずれも開口した単純な筒状であってもよい。ただし、上記第1〜第4の実施に形態のように、浮上管部材の上端側や下端側を閉塞した方が、上昇に際して海水のエネルギーをきわめて効果的に利用することができることはもちろんである。
さらに、上記第1〜4の実施の形態においては、収容孔を鉛直方向に穿設すると共に、ガイド管部材を防波構造体の鉛直方向に貫通させたものとなっているが、収容孔は必ずしも鉛直方向に穿設したものである必要はなく、収容孔を防波構造体に傾いた状態で上下方向に穿設すると共に、ガイド管部材を該収容孔の傾いた穿設方向に合わせて防波構造体の上下方向に貫通させた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1: 海底の地盤
2: 防波構造体
3,13,24: 浮上管部材
4,14,22,28: 流通路
5,26: 収容孔
6,16: ガイド管部材
7: 海面
8,21,27: 取水口
11: 充填材
12: ストッパ部材
23: 取水管
【技術分野】
【0001】
本発明は、波浪や津波の波が押し寄せた際に、電源を必要とすることなく機能してその波を防波する防波装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、台風や発達した低気圧等による波浪(高潮含む)、あるいは地震による津波が懸念される地域では、これらの波浪や津波の防波対策として、護岸の改良が急務となっている。
このような波浪や津波による被害を防止するための対策としては、防波堤の高さを高くして、波が陸側に流入するのを防ぐことが考えられるが、いつ発生するか分からず、また発生確率も低い津波や、高潮等の波浪による異常潮位に対応するために防波堤を高くすると、設置費用が莫大となるだけでなく、景観を著しく害するという大きな欠点がある。
【0003】
この欠点を解消すべく、例えば特許文献1に示すように、波浪や津波が押し寄せた際に、これらの波を防波する浮上用鋼管を浮上させる可動式の防波堤が開発されており、この特許文献1の防波堤によれば、平時においては、浮上用鋼管は地中内の鞘管内に収容され、必要に応じて上昇して防波する構成であるため、景観を害するという問題が解消される。
しかしながら、この特許文献1のものは、浮上用鋼管を上昇させるためにコンプレッサ等の電気機器を使用する必要があるため、例えば地震等によって電源を喪失した場合には、浮上用鋼管を上昇させることができず、波を防波することができないという問題がある。
【0004】
一方で、特許文献2のように、波浪や津波が押し寄せてきた際に、無電源で防波用のフロートを上昇させる可動式防波堤も公知となっている。
この特許文献2のものは、押し寄せてきた波によって護岸外壁を越えた海水を、上記フロートが収容されている矩形空間内に、該矩形空間の上端側の開口から流入させ、この矩形空間内に溜まった海水によってフロートに発生する浮力により該フロートを上昇させる構成となっている。
しかしながら、この特許文献2の場合、矩形空間内に溜まった海水によってフロートに発生する浮力のみによって該フロートを上昇させるものであるため、急激に波が押し寄せてきた場合には、海水が矩形空間に溜まる時間的な余裕がない場合も想定されるため、フロートが上昇しきれずに防波できない可能性がある。
また、波が去った後については、矩形空間内の海水をポンプ等で排水してフロートを下降させる必要があるため、電源を喪失した場合には、フロートを下げることができないという問題がある。
さらに、津波の場合においては、押し寄せる波が有するエネルギーは凄まじいが、この津波のエネルギーに起因する外力がこの特許文献2に係る可動式防波堤に作用した場合には、防波堤全体が押し倒される可能性がある。また、仮に押し寄せる津波によって押し倒されなかったとして、津波が引く際に作用する反対方向の大きな外力によって、押し倒される可能性があり、津波への対策が万全とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−281128号公報
【特許文献2】特開2006−70536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、波浪や津波の波が押し寄せた際に、電源を必要とすることなく迅速に機能してその波を防波すると共に、波が引いた場合には速やかに平時の状態に復帰することができる、平時において周囲の景観を害することのない防波装置を提供することにある。
また、本発明の他の技術的課題は、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力によって、押し倒されることのない防波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の防波装置は、波浪、津波を防波する防波装置であって、海底の地盤上に固定的に配設された防波構造体と、筒状に形成されて、波浪、津波の際に該防波構造体の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材と、海水を各浮上管部材の下端側にそれぞれ流入出させる流通路と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、各浮上管部材を防波構造体の上端側から出没自在に収容する、上端側が開口する収容孔と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、上部側が該収容孔内に配設されて、上記各浮上管部材の昇降をそれぞれ個別にガイドする、上下方向に延びる筒状に形成された複数のガイド管部材とを有し、上記防波構造体は、該防波構造体の沖側に開設され、海水を取込んで上記流通路に流入させる一方、該流通路から流出される海水を海に排出する取水口を備え、上記各浮上管部材は、上記流通路を通じて各浮上管部材の下端側に流入させた海水による水圧及びこの浮上管部材に発生する浮力により、該収容孔内を上記ガイド管部材に沿って上昇して防波構造体の上端側から突出し、波浪、津波を防波すると共に、各浮上管部材の下端側の海水を流通路を通じて流出させることにより収容孔内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔内に収容される構成であり、上記各ガイド管部材は、上記防波構造体を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材の昇降をガイドすると共に、下端側が海底の地盤まで打ち込まれていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明においては、上記浮上管部材は、その内周面側に上記各ガイド管部材がそれぞれ挿入されていて、該浮上管部材の内周面がガイド管部材の外周面に沿ってガイドされる構成であるものとすることができる。
あるいは、上記各浮上管部材は、上記各ガイド管部材の内周側に昇降自在にそれぞれ個別に配設されていて、該浮上管部材の外周面がガイド管部材の内周面に沿ってガイドされる構成である共に、上記ガイド管部材は、周面に、該ガイド管部材の内周面側に対して海水を流入出させる流通孔を備えているものとすることができる。
【0009】
また、本発明においては、上記ガイド管部材の内周面側に、ガイド管部材の自重を増加させるための充填材が充填されているものとすることができる。
【0010】
さらに、本発明においては、上記防波構造体の取水口に、該防波構造体よりも沖方向に延設され、先端側の開口部から波浪、津波の際に事前に海水を取込んで上記流通路に流入させる取水管が連結されているものとすることができる。
【0011】
また、本発明においては、上記浮上管部材は、一定の間隔を空けて防波構造体の長手方向に並設されていて、隣接する浮上管部材の間の空間に、これらの浮上管部材と同期して防波構造体の上端側から出没する、防波用の板状部材が配設されているものとすることができる。
【0012】
さらに、本発明においては、上記各浮上管部材と、対応する各ガイド管部材との間に、これら浮上管部材がガイド管部材から離脱することを防止するストッパ部材が設けられているものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、波浪、津波に際しては、防波する各浮上管部材が、取水口及び流通路を通じて該浮上管部材の下端側に流入させた海水の水圧と、この浮上管部材に発生する浮力によって、収容孔内を上記ガイド管部材に沿って上昇して防波構造体の上端側から速やかに突出し、波が引いた際には、各浮上管部材の内周面側の海水が流通路を通じて取水口から流出させることにより収容孔内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔内に収容される構成であるため、無電源で迅速に機能して防波、及び景観を損なわない平時位置への復帰を行うことができる。
また、浮上管部材をガイドする各ガイド管部材は、上記防波構造体を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材の昇降をガイドする一方で、下端側が海底の地盤の支持層まで打ち込まれているため、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力にも耐えて、防波装置全体が押し倒されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る防波装置の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。ただし、浮上管部材が下降した平時の状態を示している。
【図2】同断面図である。
【図3】同一部破断要部正面図である。
【図4】同要部平面図である。
【図5】ストッパ部材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図6】本発明に係る防波装置の第1の実施の形態において、浮上管部材が上昇した状態を模式的に示す断面図である。
【図7】同斜視図である。
【図8】本発明に係る防波装置の第1の実施の形態において、浮上管部材が下降する状態を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明に係る防波装置の第2の実施の形態を模式的に示す断面図である。ただし、浮上管部材が下降した平時の状態を示している。
【図10】同要部平面図である。
【図11】本発明に係る防波装置の第2の実施の形態において、浮上管部材が上昇した状態を模式的に示す断面図である。
【図12】本発明に係る防波装置の第3の実施の形態を模式的に示す断面図である。
【図13】同要部正面図である。
【図14】本発明に係る防波装置の第4の実施の形態を模式的に示す一部破断要部正面図断面図である。ただし、浮上管部材及び板状部材が下降した平時の状態を示している。
【図15】同要部平面図である。
【図16】同斜視図である。ただし、海面は省略している。
【図17】本発明に係る防波装置の第4の実施の形態において、浮上管部材及び板状部材が上昇した状態を模式的に示す正面図である。
【図18】同斜視図である。ただし、海面は省略している。
【図19】異なる形状の板状部材を用いた状態を模式的に示す要部平面図である。
【図20】本発明に係る防波装置の構築に際して使用するガイド管部材において、該ガイド管部材の先端にビットを設けた状態を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図8は、本発明に係る防波装置の第1の実施の形態を示すもので、波浪、特に高潮時の波や津波を防波するものである。
即ち、この実施の第1の形態の防波装置は、海底の地盤1上に固定的に配設された防波構造体2と、波浪、津波の際に該防波構造体2の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材3と、海水を各浮上管部材3の下端側を通してこれらの浮上管部材3の内周面3a側にそれぞれ流入出させる流通路4とを備えている。さらに、上記防波構造体2に鉛直方向に穿設されて、上記浮上管部材3を防波構造体2の上端側から出没自在となるように収容する収容孔5と、上記各浮上管部材3の昇降をそれぞれ個別にガイドする複数のガイド管部材6を備えている。
【0016】
上記防波構造体2は、通常の防波堤と同様の機能を有するコンクリート製のもので、基端側が海底の地盤1上に載置されていると共に、上端側は、海面7の平常潮位(波浪による波や津波がない平時の潮位)時において、海上に突出している。
この防波堤構造体2は、上端側に、長手方向に延びる平坦面2aが形成されていて、該平坦面2aに上記収容孔5が開設されている。
【0017】
また、上記防波構造体2には、その沖側の面に、海水の取込み及び排出を行う取水口8が開設されている。
この取水口8は、波浪、津波の際に、海水を取込んで上記流通路4に流入させる一方、波が引いた際には、該流通路4から流出される海水を海に排出するものであり、上記防波構造体2における、海面7の平常潮位よりも上方に設けられている。したがって、この取水口8は、波浪による波や津波が発生して潮位が上昇し、該取水口8の下端側の高さよりも高い異常潮位となった場合にのみ海水が流入し、また潮位が下がって異常潮位を脱した際には取込んだ海水を排出することができるようになっている。
この実施の形態においては、上記取水口8は、防波構造体2の長手方向、つまり上記各浮上管部材3及び収容孔5がそれぞれ並設されている方向に向けて、防波構造体2のほぼ全長に亘って延びる単一の略矩形状に形成されていて、この構成の取水口8から各浮上管部材3へ送る海水を一括して取込み、また、各浮上管部材3からの海水を一括して排出する構成となっている。
【0018】
上記各浮上管部材3は、上端側が閉塞された鉛直方向に延びる円筒状のもので、鋼管等の上端側の開口を鋼板等で気密に閉塞することにより形成されている。これら浮上管部材3は、波浪による波や津波が押し寄せた場合には、上記取水口8から取込んだ海水を流通路4を通して内周面3a側に流入させることにより上記収容孔5を上昇して、防波構造体2の上端から突出する一方で、波が引いた場合には取水口8から流通路4を介して海水を排出させることにより収容孔5を下降し、該収容孔5内に収容されるものである。
この実施の形態においては、これらの各浮上管部材3は、上記防波構造体2の長手方向に、相互に等間隔且つ直線状に並設されていると共に、その軸線方向長さが、想定される波浪や津波の高さに応じて、上記防波構造体2の高さを考慮した長さ設定されていて、波が押し寄せた際には防波構造体2と共に波を防波できるようになっている。
なお、この実施の形態においては、各浮上管部材3は、いずれも同形同大に形成されている。
【0019】
上記収容孔5は、上端側、即ち上記防波構造体2の上端側の平坦面2aに開口させたもので、上記各浮上管部材3を個別に収容するように、これら浮上管部材と同数の収容孔5が防波構造体2の長手方向に直線状に並設されている。
これらの各収容孔5は、上記浮上管部材3の外周径よりも大径の内周径を有した平面視略円形状に形成されていて、これらの収容孔5の内周面5aと、収容されている浮上管部材3の外周面3bとの間に海水が流入することができる程度の隙間が形成されるようになっている。
また、各収容孔5は、上記浮上管部材3の軸線方向長さよりも深く形成されていて、平時(平常潮位時)においては各浮上管部材3を、下端側から上端側に亘って完全に収容することが可能となっている。
なお、これらの各収容孔5は、隣接するもの同士が、最も近接する位置において相互に連通していても良く、また連通することなく独立したものであってもよい。また、これらの収容孔5は、隣接するものとの間の間隔が小さい方が好ましく、これにより、上記各浮上管部材3の間隔を狭めて可及的に密集させて、これらの浮上管部材3全体による防波効果の向上を図ることができる。
【0020】
上記流通路4は、上記取水口8と各浮上管部材3の下端側とを常時連通させるものである。
これにより、この実施の形態においては、各浮上管部材3の下端側を通じ、取水口8から取込んだ海水を上記浮上管部材3の内周面3a側に流入させて該浮上管部材3の上昇に供させる一方で、浮上管部材3の内周面3a側の海水を取水口8に向けて流出させて該浮上管部材3の下降に供させることが可能となっている。
この実施の形態の場合、上記流通路4は、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間、及び各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間により形成されている。
したがって、上記取水口8から取込まれた海水は、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って、各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間10に至り、該空間10から各浮上管部材3の下端側の開口3dから内周面3a側へと流入することとなる。逆に、各浮上管部材3の内周面3a側の海水が排出される場合、該海水は各浮上管部材3の下端側の開口3dから、各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間10に流出し、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って取水口8から排出される。
【0021】
上記各ガイド管部材6は、上部側が該収容孔5内に収容された状態で配設され、さらに、該収容孔5の底部5bから上記防波構造体2を鉛直方向に貫通して、下端側が海底の地盤1まで打ち込まれたものである。
これらの各ガイド管部材6は、上記浮上管部材3の内周径よりも小径の外周径を有する鋼管等の円筒状のものであり、上記収容孔5内に位置する上部側の部分は、その収容孔内に位置する浮上管部材の内周面側に挿入されて、浮上管部材の昇降を鉛直方向にガイドするガイド部6aとなっている。これにより、各ガイド管部材6のガイド部6aが、その外周面に沿って、挿入されている浮上管部材3の内周面3aをガイドし、収容孔5内における浮上管部材3の昇降を安定的に行わせるようにしている。
【0022】
また、上記各ガイド管部材6における上記収容孔5内に位置する部分、つまりガイド部6aの軸線方向長さは、平時において上記各浮上管部材3の上端部が収容孔5から突出しない範囲内で、各浮上管部材3の内周面3a側の軸線方向長さよりも長く設定されている。これにより、浮上管部材3の下端部3cと収容孔5の底部5bとの間に常に空間10が形成されて、上述のように、この空間10を流通路の一部として浮上管部材3の内周面3a側に対する海水の流入出を確実に行えるようにしている。
さらに、上記各ガイド管部材の外周径は、各ガイド管部材の外周面と、挿入している浮上管部材の内周面との間に海水が流入することができる程度の空間が形成されるような大きさに設定されていて、浮上管部材の内周面側に対する海水の流入出が自在に行えるようにしている。
【0023】
一方で、各ガイド管部材6の下端側は、海底の地盤1まで達していて、この実施の形態においては、該地盤1の中間層1bを貫通し、さらには、より頑強な支持層1bにまで至っている。これにより、各ガイド管部材6が支持杭の役割を果たして、防波構造体2が安定的に地盤1上に固定されるようにしている。
この結果、波浪による波や津波、特に大きなエネルギーを有する津波が押し寄せ、該防波構造体2に外力を与えたとしても、この防波構造体2全体が転倒したり押し流されたりすることが防止される。なお、仮に波が防波装置自体を越えた場合において、その波が引く際にも、波が押し寄せた場合とは反対方向の大きな外力が防波構造体2に作用することが考えられるが、このような場合であっても、防波構造体2全体が転倒したり押し流されたりすることが防止される。
【0024】
さらに、上記各ガイド管部材6は、その内周面6b側に、該ガイド管部材6の自重を増加させるための充填材11が、内周面6b側全体に亘ってそれぞれ充填されていて、その自重によって防波構造体2をより安定的に海底の地盤1上に固定することができるようにしていると共に、ガイド管部材6自体の座屈等に対する強度を向上させている。なお、充填材11としては、コンクリート、製鋼スラグ、高炉スラグ等が望ましい。
また、上記各ガイド管部材6としては、基端部に外方に張り出すフランジ状あるいは螺旋状の羽根が設けられた、いわゆる羽根付鋼管を用いることが好ましく、これにより、各ガイド管部材6の引抜き方向の力に対する抗力を確保することができるため、波浪や津波によって防波構造体2に作用する外力により確実に対抗することができる。
【0025】
また、上記各浮上管部材3と対応する各ガイド管部材6との間には、これら浮上管部材3がガイド管部材6から離脱することを防止するストッパ部材12がそれぞれ設けられている。
このストッパ部材12は、浮上管部材3が海水により上昇した際に、ガイド管部材5から抜け出て脱落して流出するのを防ぐためのもので、例えば、図5に示すような、浮上管部材3の防波のための昇降を妨げず、且つガイド管部材6から離脱しない程度の長さのワイヤーにより、各浮上管部材3と対応する各ガイド管部材6とを相互に連結することができる。
なお、このストッパ部材12としては、上記ワイヤー以外の任意のものを用いることができ、例えば、各浮上管部材の内周面側の下端部近傍と、各ガイド管部材の上端部近傍とに、抜け止め用の突起等を設け、それらの突起が相互に引っ掛ることによって浮上管部材がガイド管部材から離脱することを防止するようにしてもよい。
【0026】
上記構成を有する防波装置は、波浪、津波時及びその収束後においては、次のように機能する。
平時、即ち、海面7が平常潮位である場合においては、図1〜図3に示すように浮上管部材3は、防波構造体から突出することなく、全体として収容孔5内に収容されている。
そして、波浪よる波や津波が発生し、その波が押し寄せて海面7が異常潮位となった場合には、図6に示すように、上記取水口8から海水を流入させて取込み、その取込んだ海水を、上記流通路4(この実施の形態の場合、上記各収容孔5の内周面5aと各浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9、及び各収容孔5の底部5bと各浮上管部材3の下端部3cとの間の空間10)を通じて、各浮上管部材3の下端側の開口3dから内周面3a側へと流入させる。
このとき、各浮上管部材3は、上端側が閉塞されているため、内周面3a側に流入した海水がこの閉塞部分に衝突するエネルギー(水圧)により効果的に上方に押し上げられ、さらには、海水によって各浮上管部材3に発生する浮力によっても浮上するため、波のエネルギーを有効に利用してきわめて迅速に上昇する。
なお、各浮上管部材3が上昇するに際しては、上記ストッパ部材によって、各浮上管部材がガイド管部材及び収容孔から抜け出ることがなく、また、完全に上昇した状態においては各浮上管部材の下端側及びその近傍部分は収容孔内に留められる。また、各浮上管部材3が完全に上昇しきった後の余剰となった海水は、上記収容孔5の内周面5aと浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って、該収容孔5の上端側の開口から放出される。
【0027】
この結果、図6及び図7に示すように、各浮上管部材3は、上記収容孔5内を上記ガイド管部材6に沿って上昇して防波構造体2の上端側から迅速に突出し、該防波構造体2と共に波浪、津波を防波することとなる。これにより、波を防波する高さが平常時、つまり防波構造体自体の高さよりも増大するため、防波構造体の高さを越えるような高い波(特に高潮)や津波が押し寄せても確実にこれを防波することができる。
【0028】
一方、波が引いて平常潮位に戻る場合には、図8に示すように、潮位に応じて各浮上管部材3の内周面3a側の海水は流通路4に徐々に流出し、該流通路5を通じて取水口8から排出される。なお、海水の一部は、収容孔5の内周面5aと浮上管部材3の外周面3bとの間の隙間9を通って、該収容孔5の上端側の開口からも排出される。
そして、各浮上管部材3は、自重との関係でガイド管部材6に沿って収容孔5内を次第に下降し、最終的には、下端部から上端部に亘って完全に収容孔5内に収容されることとなる。
これにより、浮上管部材3は平時の位置に復帰し、防波装置全体として、周囲の景観を損なわない状態に戻る。
【0029】
このように、上記構成を有する防波装置は、波浪、津波時には、防波する各浮上管部材3を、取水口8及び流通路4を通じて該浮上管部材3の内周面3a側に流入させた海水の水圧と、この浮上管部材3に発生する浮力を利用して防波構造体2の上端側から速やかに突出させる一方、波が引いた際には、各浮上管部材3の内周面3a側の海水を流通路4を通じて取水口8から流出させて、収容孔5内に下降させる構成であるため、無電源で迅速に機能して防波と平時状態への復帰を行うことができる。
また、各ガイド管部材6は、上記防波構造体2を鉛直方向に貫通し、収容孔5内に位置する上部側(ガイド部6a)において上記浮上管部材3の昇降を安定的にガイドする一方で、下端側が海底の地盤1の支持層1aまで打ち込まれているため、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力にも耐えて、防波装置全体が押し倒されたり、押し流されたりすることが防止される。
【0030】
上記第1の実施の形態においては、ガイド管部材が浮上管部材の内周面側に挿入された構成となっているが、次に述べる第2の実施の形態においては、浮上管部材がガイド管部材の内周面に挿入された構成となっている。
即ち、図9〜図11は、本発明に係る防波装置の第2の実施の形態を示すもので、この第2の実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態と同様に、海底の地盤上に固定的に配設された防波構造体2と、波浪、津波の際に該防波構造体2の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材13と、海水を各浮上管部材13の下端側を通してこれらの浮上管部材13の内周面13a側にそれぞれ流入出させる流通路14とを有している。さらに、上記防波構造体2に上下方向(この実施の形態の場合は鉛直方向)に穿設されて、該浮上管部材13を防波構造体2の上端側から出没自在となるように収容する収容孔15と、上記各浮上管部材13の昇降をそれぞれ個別にガイドする複数のガイド管部材16と、該防波構造体2の沖側に開設された、海水の取込み及び排出を行う取水口8を備えている。
【0031】
なお、上記浮上管部材13及びガイド管部材16、並びに流通路14、収容孔15以外の構成は、実質的に上記第1の実施の形態と同様の構成であり、また同様の作用効果を奏するため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
上記各ガイド管部材16は、外周径が上記収容孔15の内周径と略同径に形成された円筒状に形成されたもので、内周面16a側に上記浮上管部材13が収容されている。
また、各ガイド管部材16は各収容孔15内に収容されていて、ガイド管部材16の外周面16bと該ガイド管部材16が収容されている収容孔15の内周面とが相互に当接した状態に保持されている。
【0033】
さらに、各ガイド管部材16は、その内周面16a側における収容孔15の底部に相当する高さにまで、各ガイド管部材16の自重を増加させるコンクリート等の充填材17が充填されていて、この該充填材17が充填されていない部分の空間が、上記浮上管部材が収容し且つ該浮上管部材が昇降のガイドに供される収容部16cとなっている。なお、各ガイド管部材16に充填された充填材の上端部分は、略水平の平坦面17aがそれぞれ形成されている。
また、各ガイド管部材16の浮上管部材13を収容する高さにおける、上記取水口8に臨む周面には、該ガイド管部材16の内周面16aと外周面16bとの間を貫通して、該ガイド管部材16の外周面16b側から内周面16a側に向けて海水の流入させる一方で、内周面16a側から外周面16b側に向けて海水を流出させる流通孔18が設けられている。
【0034】
上記各浮上管部材13は、鋼管等により形成され、下端側が鋼板等により気密に閉塞されていると共に上端側が開放された、上下方向に延びる円筒状のもので、外周径が上記ガイド管部材16の内周径よりも小径に形成され、上記各ガイド管部材16における充填材17が充填されていない内周面16a側、つまり収容部16c内に昇降自在に個別に挿入されている。したがって、各浮上管部材13は、各ガイド管部材16を介して、防波構造体2の上端側から出没自在となるように上記収容孔15に収容されていることとなる。さらに、各浮上管部材13が昇降する際には、これらの浮上管部材13の外周面が、ガイド管部材16の内周面16aによってガイドされて、安定的な昇降が図られることなる。
また、上記各浮上管部材13の外周径は、各浮上管部材13の外周面13bと上記ガイド管部材16の内周面16aとの間に、海水が流入出することが可能な隙間19が形成される程度の大きさとなっている。
【0035】
また、各浮上管部材13の下端部13cと、各ガイド管部材16内における充填材17の上端側の平坦面17aとの間には、浮上管部材13がガイド管部材16内において最も下降した状態において、該浮上管部材の下端部13cと充填材17の上端側の平坦面17aとの間に、浮上管部材3の内周面13a側に対する海水の流出入を安定的且つ確実に行わせるための、海水流通用の空間20が形成されている。
この海水流通用の空間20を形成するにあたっては、例えば、上記充填材17aの上端側の平坦面17a上に浮上管部材13の下端部13cの一部が当接するスペーサ17bを設けて、浮上管部材13の下端部13cと充填材17の平坦面17aとの間にこの空間20ができるようにする等、任意の手段を用いることができる。
【0036】
上記流通路14は、この実施の形態においては、上記各ガイド管部材16の流通孔18、及び各ガイド管部材16の内周面16aと収容されている浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19、さらには各浮上管部材13の下端部13c側に設けられた海水流通用の空間20で構成されている。
したがって、図11に示すように、海面が異常潮位となった場合に上記取水口8から取込まれた海水は、各ガイド管部材16の流通孔18から各ガイド管部材16の内周面16a側に流入し、さらに該ガイド管部材16の内周面16aと浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19を通って海水流通用の空間20に至る。これにより、該空間20内の海水が各浮上管部材13の下端側の閉塞された下端部13cに衝突し、各浮上管部材13は、その海水によるエネルギー(水圧)により効果的に上方に押し上げられ、さらには、該海水によって各浮上管部材3に発生する浮力によっても浮上するため、これらの各浮上管部材13は上記各ガイド管部材16内をそれぞれ上昇することとなる。
逆に、海面の潮位が下がった場合、海水流通用の空間20内の海水は、該空間20から上該ガイド管部材16の内周面16aと浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19を通り、流通孔18から各ガイド管部材16の外周面16b側に流出して、取水口8からそれぞれ排出され、これにより、各浮上管部材13は各ガイド管部材16内をそれぞれ下降することとなる。
なお、各浮上管部材13の上昇に際して余剰となった海水や、各浮上管部材13の下降時において浮上管部材13の内周面13a側から流出する海水の一部は、上記ガイド管部材16の内周面16aと浮上管部材13の外周面13bとの間の隙間19を通って、ガイド管部材16の上端側の開口、延いては収容孔15の上端側の開口から放出される。
【0037】
上記構成を有する第2の実施の形態の防波装置は、基本的に上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、上記第1実施の形態に比べて、ガイド管部材16の径を大きくすることができるため、ガイド管の板厚が同一であれば、該ガイド管部材の強度を高め、防波構造材2の固定をより強固に行うことができ、これにより、押し寄せる波の外力及び波が引く際の外力に対する耐力を増加させることできる。
【0038】
上記第2の実施の形態においては、ガイド管部材の外周径と収容孔の内周径をほぼ同じとし、これらガイド管部材の外周面と収容孔の内周面とが当接した構成となっているが、ガイド管部材の外周径は収容孔の内周径よりも小径であってもよく、ガイド管部材の外周面と収容孔の内周面との間に隙間が形成されるようにしてもよい。その場合には、流通孔は、取水口とガイド管部材の流通孔との間に、ガイド管部材の外周面と収容孔の内周面との間の隙間が加わる構成となる。
なお、第2の実施の形態においては、上記浮上管部材13は、下端側が気密に閉塞され、上端側が開口した構成となっているが、この実施の形態における浮上管部材は、下端側だけでなく上端側も気密に閉塞された構成としてもよく、あるいは上端側が閉塞されて下端側が開口した構成であってもよい。
【0039】
図12及び図13は本発明に係る防波装置の第3の実施の形態を示すもので、この実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態とは、取水口の構成が異なっていると共に、一部の浮上管部材に対する海水の取水を、防波構造体よりも沖側で行う構成となっている。
即ち、この第3の実施の形態の防波装置は、防波構造体2に開設された取水口21が、各浮上管部材3毎に独立した状態で複数設けられていて、各取水口21は、対応する1本の浮上管部材3に対して個別に海水の取水と排出を行う構成となっている。したがって、これらの取水口21は浮上管部材3と同数開設されていることになる。
また、流通路22については、各浮上管部材3と対応する取水口21との間にそれぞれ設けられた構成となっている。なお、各流通路22の構成については、1本の浮上管部材3に対して個別に海水の取水と排出を行う取水口21と連通している点以外は、基本的に上記第1の実施の形態の流通路と実質的に同じ構成であり、同様の作用効果を奏する。
【0040】
さらに、上記複数の取水口22のうちの少なくとも1つについては、防波構造体2よりも沖方向に延設された筒状の取水管23が連結されている。図13に示すように、この実施の形態については、取水管23が連結されている取水口と連結されていない取水口とが交互に位置するようにしている。
上記取水管23は、先端側(沖側)の開口部23aから波浪、津波の際に海水を取込み、その海水を上記流通路22に流入させるもので、基端側が取水口21に気密に連結されている。
この実施の形態においては、上記取水管23は、基端側近傍の部分は防波構造体2の沖側の面に沿わせ、その他の部分は海底の地盤1に沿って沖側まで延設させたものとなっている。
また、この取水管23の中には、常時海水が充填されており、取水口近傍の防波構造体2の沖側の面に沿わせている部分については、少なくとも通常潮位の海面と同程度の高さまで海水が満たされている。これにより、波浪、津波の際に取水管23の開口部23aから流入した海水が、既に取水管23内にある海水を取水口方向に押出すため、波のエネルギーを早期に浮上管部材3に伝達することが可能となる。
【0041】
ここで、この取水管23を設けたのは、波浪、津波の際、その波が防波構造体2に到達する前に事前に浮上管部材3の一部を上昇させて、波に対する早期の対応を実現するためである。
波浪による波や津波は比較的に速度が速く、波が防波構造体に到達した時点で浮上管部材を上昇させた場合には、上昇までの時間的な余裕を確保できずに十分な防波効果が得られない可能性がないとはいえない。
そこで、押し寄せる波のエネルギーを利用して、防波構造体よりも十分に沖側の位置で事前に海水を取込んで、そのエネルギーを早期に浮上管部材に伝達させ、波が防波構造体に到達する前に、一部の浮上管部材だけでも上昇させて防波態勢を取らせ、被害を最小限に抑えることができるようにしている。
【0042】
なお、上記取水口21、流通路22、取水管23以外の構成は、実質的に上記第1の実施の形態と同様の構成であり、また同様の作用効果を奏するため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0043】
上記構成を有する第3の実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、上述のように、沖側に延設された取水管23を設けたことにより、波浪による波及び津波が防波構造体に到達する前に事前に海水を取込んで、早期に浮上管部材3を上昇させることができるため、防波態勢を早期に確立することできるという利点がある。
【0044】
なお、上記第3の実施の形態においては、第1の実施の形態の構成を基礎として、ガイド管部材6の上部側が浮上管部材3の内周面3a側に挿入された構成となっているが、第2の実施の形態の構成を基礎とした、浮上管部材がガイド管部材の内周面側に挿入された構成を用いてもよい。
【0045】
図14〜図18は、本発明の防波装置の第4の実施の形態を示すもので、この第4の実施の形態の防波装置は、複数の浮上管部材24を備えていて、隣接する浮上管部材24,24の間の空間に、これらの浮上管部材24と同期して防波構造体2の上端側から出没する防波用の板状部材25が配設された構成となっている。
上記各浮上管部材24は、予め定められた一定の間隔、即ち、設置すべき上記板状部材25の横幅と同等の間隔を空けて防波構造体2の長手方向にそれぞれ並設されている。なお、これらの各浮上管部材24自体の構成は、基本的に上記第1の実施の形態と同じであるため、詳細な説明は省略する。
【0046】
また、防波構造体2に穿設された収容孔26は、各浮上管部材24の配置に適合する間隔に配設された、各浮上管部材24を個別に収容する浮上管部材用の収容部26aと、隣接する浮上管部材用の収容部26a,26aの間に設けられて、隣接する浮上管部材24,24の間に配設されている上記板状部材25を収容するための板状部材用の収容部26bとを備えている。したがって、この収容孔26は、各浮上管部材用の収容部26aが、板状部材用の収容部26bを介して一連に連通した構成となっている。
【0047】
さらに、この実施の形態においては、防波構造体2に開設された取水口27は、浮上管部材24と同数、相互に独立した状態で設けられていて、これにより、基本的に、各取水口27が、対応する1本の浮上管部材24に対して海水の取水と排出を行う構成となっている。
また、各浮上管部材24と対応する取水口27との間には流通路28がそれぞれ設けられている。なお、各流通路24の構成については、1本の浮上管部材24に対して個別に海水の取水と排出を行う取水口27と連通している点以外は、基本的に上記第1の実施の形態の流通路と実質的に同じ構成であり、同様の作用効果を奏する。
【0048】
上記板状部材25は、例えば鋼製の矢板や鋼板等により形成された、上記浮上管部材24の軸線方向長さとほぼ同じ高さを有し、且つ防波構造体2の長手方向に延びる板体状のもので、隣接する浮上管部材24,24の間において、これら浮上管部材24,24と共に波浪による波や津波を防波するものである。
この実施の形態においては、隣接する浮上管部材24,24の間に1枚の矢板からなる板状部材25を配設し、該板状部材25の両端面を対向する浮上管部材24の外周面に剛接合した構成となっている。また、各板状部材25は、図15及び図16に示すように、平面視において、各浮上管部材24を挟んで相対する位置(平面視において、各浮上管部材24の軸線を中心として180°をなす位置)にそれぞれ配設され、各端部が浮上管部材24にそれぞれ位置不動に固定されている。
これにより、各浮上管部材24は、板状部材25を介して全体として一連に連結された構成となり、したがって、波浪による波や津波が押し寄せてきた場合には、図17に示すように、すべての浮上管部材24及び板体部材25が同期して一斉に上昇して、防波構造体2の上端側から突出し、これらのすべての浮上管部材24及び板体部材25の全体で波を防波する。一方、波が引いた場合には、これらの浮上管部材24及び板体部材25が同期して一斉に下降し、上記収容孔26に収容されることとなる。
【0049】
なお、浮上管部材24、板状部材25、収容孔26、取水口27、流通路28以外の構成については、実質的に上記第1の実施の形態と同様の構成であり、また同様の作用効果を奏するため、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
上記構成を有する第4の実施の形態の防波装置は、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができるが、隣接する浮上管部材24,24の間に板状部材25を設けたことにより、第1に実施の形態の構成に比べて、浮上管部材間の間隔を大きくとって防波構造体に配設する浮上管部材の数を減らすことができるため、それに伴って収容孔やガイド管部材の数を減らすことができ、これによって防波装置としての設置の手間やコストの低減を図ることが可能となる。
【0051】
上記第4の実施の形態においては、隣接する浮上管部材24,24の間に1枚の板状部材25を配設し、該板状部材25の両端面を対向する浮上管部材24の外周面に剛接合した構成となっているが、図19に示すように、各浮上管部材の外周面における防波構造体の長手方向に沿う両側に、隣接する浮上管部材との間隔の約半分の幅の一対の板状部材29,29をそれぞれ剛接合して、各浮上管部材を板状部材で連結することなく独立して昇降させるようにしてもよい。
この場合においては、上記第1の実施の形態と同様に、各浮上管部材はそれぞれ独立して昇降するため、各浮上管部材に配設された一対の板状部材は、他の浮上管部材の板状部材の動きに干渉されることなく、その接合された浮上管部材と共に昇降することとなる。
なお、各板状部材は、仮に浮上管部材が軸線周りに回転しようとした場合であっても、板状部材の下端側の一部が収容孔の板状部材用の収容部に引っ掛るため、浮上管部材の回転及びそれに伴う板状部材の回転は抑止される。
なお、図19に係る防波装置の構成は、板状部材29以外は上記第4の実施の形態と同様の構成であるため、該第4の実施の形態と同様の符号を付している。
【0052】
さらに、上記第4の実施の形態においては、第1の実施の形態の構成を基礎として、ガイド管部材6の上部側が浮上管部材24の内周面側に挿入された構成となっているが、第2の実施の形態の構成を基礎とした、浮上管部材がガイド管部材の内周面側に挿入されている構成を用いてもよい。ただし、この場合は、ガイド管部材に板状部材が所工事材に挿入される溝等を設ける必要がある。
【0053】
また、上記第4の実施の形態においても、上述した第3の実施の形態のように、上記防波構造体2の取水口27の少なくとも1つに、該防波構造体2よりも沖方向に延設され、先端側の開口部から波浪、津波の際に事前に海水を取込んで上記流通路に流入させる取水管を連結することができる。
特に上記第4の実施の形態の場合は、隣接する浮上管部材の対向する板状部材同士が剛接合されているため、波浪、津波の際に、取水管の開口部から海水を取込んだ場合には、そのエネルギーによってすべての浮上管部材及び板状部材を同時に上昇させることができる。したがって、防波装置全体として早期に防波態勢を整えることができる上、高い防波効果を発揮することができるため、上記第4の実施の形態の構成に上記取水管の設置することは、波浪、津波対策としては非常に効果的である。
なお、上記第4の実施の形態の構成のように隣接する浮上管部材の対向する板状部材同士が剛接合されている場合、浮上管部材及び板状部材の自重により、これらの浮上管部材及び板状部材の上昇には大きなエネルギーが必要となるため、取水管は浮上管部材及び板状部材の数に応じて複数個設けることが望ましい。ただし、取水管からの海水によってこれらの浮上管部材及び板状部材が完全に上昇しきらなかった場合であっても、波浪による波や津波が防波構造体に押し寄せた際に取水口から海水が直接取込まれて、早期に完全な上昇状態とすることが可能であるため、これらの浮上管部材及び板状部材が全く上昇していない場合に比べ、防波態勢を整えることができる。
【0054】
さらに、上記第1〜第4の実施の形態の防波装置は、防波構造体を海底の地盤上に新たに設置することによって構築してもよいが、この防波構造体として既存のコンクリート製の防波堤を利用して構築してもよい。
このような既存の防波堤を利用して防波装置を構築するに際しては、既存の防波堤に対して収容孔を上下方向に形成すると共に、該収容孔からガイド管部材を海底の地盤、さらに好ましくは支持層に至るまで上下方向に打ち込み、さらに該防波堤の沖側に取水口を開設する。
ここで、上記収容孔の形成とガイド管部材の打ち込みに際しては、例えば図20に示すように、ガイド管部材の下端側を、必要な収容孔の内周径と同程度の外周径となるよう厚肉にするなどして拡径すると共に、該ガイド管部材6(16)の拡径した下端部に、コンクリート掘削用のビット30を取付けた上で、このガイド管部材を、既存の防波堤の上端面から下方向に向けて、回転させながら圧入、掘削して支持層まで打ち込む方法を用いることができる。この場合には、収容孔の形成とガイド管部材の打ち込みを同時に行うことができるため、防波装置の構築を効率良く行うことができる。
あるいは、ガイド管部材の下端側を拡径することなく、下端側にコンクリート掘削用のビットを取付けて、このガイド管部材を既存の防波堤の上端面から下方向に向けて掘削して海底の地盤あるいはその支持層まで打ち込んだ後、内周径がガイド管部材の外周径よりも大径で且つ必要な収容孔の内周径と同等の外周径を有し、先端部に上記コンクリート掘削用のビットを取付けた鋼管によりガイド管部材の周囲を掘削することにより収容孔を形成するようにしてもよい。
【0055】
上記第1〜第4の実施の形態においては、浮上管部材及びガイド管部材を円筒状のものとしているが、これらの浮上管部材及びガイド管部材は、必ずしも円筒状である必要はなく、角筒状等、任意の断面形状を有する筒状とすることができる。
また、上記第1及び第3、第4の実施の形態においては各浮上管部材の上端側を閉塞し、第2の実施の形態においては各浮上管部材の下端側を閉塞しているが、各浮上管部材は必ずしも上端側あるいは下端側を閉塞する必要はなく、上下端側がいずれも開口した単純な筒状であってもよい。ただし、上記第1〜第4の実施に形態のように、浮上管部材の上端側や下端側を閉塞した方が、上昇に際して海水のエネルギーをきわめて効果的に利用することができることはもちろんである。
さらに、上記第1〜4の実施の形態においては、収容孔を鉛直方向に穿設すると共に、ガイド管部材を防波構造体の鉛直方向に貫通させたものとなっているが、収容孔は必ずしも鉛直方向に穿設したものである必要はなく、収容孔を防波構造体に傾いた状態で上下方向に穿設すると共に、ガイド管部材を該収容孔の傾いた穿設方向に合わせて防波構造体の上下方向に貫通させた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1: 海底の地盤
2: 防波構造体
3,13,24: 浮上管部材
4,14,22,28: 流通路
5,26: 収容孔
6,16: ガイド管部材
7: 海面
8,21,27: 取水口
11: 充填材
12: ストッパ部材
23: 取水管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波浪、津波を防波する防波装置であって、海底の地盤上に固定的に配設された防波構造体と、筒状に形成されて、波浪、津波の際に該防波構造体の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材と、海水を各浮上管部材の下端側にそれぞれ流入出させる流通路と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、各浮上管部材を防波構造体の上端側から出没自在に収容する、上端側が開口する収容孔と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、上部側が該収容孔内に配設されて、上記各浮上管部材の昇降をそれぞれ個別にガイドする、上下方向に延びる筒状に形成された複数のガイド管部材とを有し、
上記防波構造体は、該防波構造体の沖側に開設され、海水を取込んで上記流通路に流入させる一方、該流通路から流出される海水を海に排出する取水口を備え、
上記各浮上管部材は、上記流通路を通じて各浮上管部材の下端側に流入させた海水による水圧及びこの浮上管部材に発生する浮力により、該収容孔内を上記ガイド管部材に沿って上昇して防波構造体の上端側から突出し、波浪、津波を防波すると共に、各浮上管部材の下端側の海水を流通路を通じて流出させることにより収容孔内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔内に収容される構成であり、
上記各ガイド管部材は、上記防波構造体を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材の昇降をガイドすると共に、下端側が海底の地盤まで打ち込まれていることを特徴とする防波装置。
【請求項2】
上記浮上管部材は、その内周面側に上記各ガイド管部材がそれぞれ挿入されていて、該浮上管部材の内周面がガイド管部材の外周面に沿ってガイドされる構成であることを特徴とする請求項1に記載の防波装置。
【請求項3】
上記各浮上管部材は、上記各ガイド管部材の内周側に昇降自在にそれぞれ個別に配設されていて、該浮上管部材の外周面がガイド管部材の内周面に沿ってガイドされる構成である共に、上記ガイド管部材は、周面に、該ガイド管部材の内周面側に対して海水を流入出させる流通孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の防波装置。
【請求項4】
上記ガイド管部材の内周面側に、ガイド管部材の自重を増加させるための充填材が充填されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防波装置。
【請求項5】
上記防波構造体の取水口に、該防波構造体よりも沖方向に延設され、先端側の開口部から波浪、津波の際に事前に海水を取込んで上記流通路に流入させる取水管が連結されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の防波装置。
【請求項6】
上記浮上管部材は、一定の間隔を空けて防波構造体の長手方向に並設されていて、隣接する浮上管部材の間の空間に、これらの浮上管部材と同期して防波構造体の上端側から出没する、防波用の板状部材が配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の防波装置。
【請求項7】
上記各浮上管部材と、対応する各ガイド管部材との間に、これら浮上管部材がガイド管部材から離脱することを防止するストッパ部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の防波装置。
【請求項1】
波浪、津波を防波する防波装置であって、海底の地盤上に固定的に配設された防波構造体と、筒状に形成されて、波浪、津波の際に該防波構造体の上端側から突出して防波する複数の浮上管部材と、海水を各浮上管部材の下端側にそれぞれ流入出させる流通路と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、各浮上管部材を防波構造体の上端側から出没自在に収容する、上端側が開口する収容孔と、上記防波構造体に上下方向に穿設されて、上部側が該収容孔内に配設されて、上記各浮上管部材の昇降をそれぞれ個別にガイドする、上下方向に延びる筒状に形成された複数のガイド管部材とを有し、
上記防波構造体は、該防波構造体の沖側に開設され、海水を取込んで上記流通路に流入させる一方、該流通路から流出される海水を海に排出する取水口を備え、
上記各浮上管部材は、上記流通路を通じて各浮上管部材の下端側に流入させた海水による水圧及びこの浮上管部材に発生する浮力により、該収容孔内を上記ガイド管部材に沿って上昇して防波構造体の上端側から突出し、波浪、津波を防波すると共に、各浮上管部材の下端側の海水を流通路を通じて流出させることにより収容孔内をガイド管部材に沿って下降して該収容孔内に収容される構成であり、
上記各ガイド管部材は、上記防波構造体を上下方向に貫通し、上部側において上記浮上管部材の昇降をガイドすると共に、下端側が海底の地盤まで打ち込まれていることを特徴とする防波装置。
【請求項2】
上記浮上管部材は、その内周面側に上記各ガイド管部材がそれぞれ挿入されていて、該浮上管部材の内周面がガイド管部材の外周面に沿ってガイドされる構成であることを特徴とする請求項1に記載の防波装置。
【請求項3】
上記各浮上管部材は、上記各ガイド管部材の内周側に昇降自在にそれぞれ個別に配設されていて、該浮上管部材の外周面がガイド管部材の内周面に沿ってガイドされる構成である共に、上記ガイド管部材は、周面に、該ガイド管部材の内周面側に対して海水を流入出させる流通孔を備えていることを特徴とする請求項1に記載の防波装置。
【請求項4】
上記ガイド管部材の内周面側に、ガイド管部材の自重を増加させるための充填材が充填されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の防波装置。
【請求項5】
上記防波構造体の取水口に、該防波構造体よりも沖方向に延設され、先端側の開口部から波浪、津波の際に事前に海水を取込んで上記流通路に流入させる取水管が連結されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の防波装置。
【請求項6】
上記浮上管部材は、一定の間隔を空けて防波構造体の長手方向に並設されていて、隣接する浮上管部材の間の空間に、これらの浮上管部材と同期して防波構造体の上端側から出没する、防波用の板状部材が配設されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の防波装置。
【請求項7】
上記各浮上管部材と、対応する各ガイド管部材との間に、これら浮上管部材がガイド管部材から離脱することを防止するストッパ部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の防波装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−87574(P2013−87574A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231460(P2011−231460)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000006655)新日鐵住金株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]