防液堤
【課題】被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に被災後に建設材料の確保が容易な防液堤を提供する。
【解決手段】防液堤であって、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器3を複数備え、各収容容器3同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されて形成されている。
【解決手段】防液堤であって、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器3を複数備え、各収容容器3同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されて形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防液堤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、海岸や河岸等には、陸地に建設されたタンクを津波から守るためのタンク保護用の防液堤(護岸)が設置されている。このような防液堤としては、例えば特許文献1に開示されたものを用いることができる。
防液堤は、津波によるタンクへの影響を低減させる効果があるものの、一度津波を受けることによって一部あるいは全部が損壊してしまう。
また、自然災害の影響を予め全て予測することは難しいため、実際の被害に照らし合わせて、新たな防液堤が建設される。
つまり、津波の発生後においては、損壊した防液堤の建て直しを含めて、タンクを保護するための防液堤が多く建設されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−226938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多くの防液堤を建設する要求があるものの、被災した地域においてその材料の確保は難しい。
【0005】
一方、周知のように、地震や津波によって被害を受けた地域では、建物が損壊する等によって瓦礫が発生する。
このような瓦礫は非常に大量に発生する。これに加え、被害を受けた地域では瓦礫の処理能力が著しく低下する。このため、発生した瓦礫は、被害を受けた地域に確保される土地に長期に亘り保管されることとなる。
このような瓦礫の置き場は、市街地等に多く設けられる。このため、大量の瓦礫が長期に亘って残留されていると、復興の妨げとなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に被災後に建設材料の確保が容易なタンク保護用の防液堤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、防液堤であって、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器を複数備え、各収容容器同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されて形成されているという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記収容容器が、隣接配置される他の収容容器に係止される係止部を備えるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記収容容器が、隣接配置される収容容器の同一方向を向く面が面一となることを避けて当該収容容器を位置決めする位置決め突起を備えるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記収容容器が、表面に凹凸加工が施されているという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記収容容器が、隣接配置される収容容器同士を締結するボルトが挿通されるフランジを備えるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、水平面に対して傾斜された上記収容容器の載置面を有する土台と、当該載置面の下方端部にて上記収容容器を側方から支持する支持部とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防液堤は、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されることによって形成される。
このため、収容容器の内部に収容される収容物を、被災地で発生した瓦礫とすることによって、瓦礫を材料の一部とする防液堤とすることができる。
このような本発明の防液堤によれば、被災地で発生した瓦礫を形成材料とするため、被災地に残留される瓦礫の量を減少し、さらには建設材料を容易に確保することが可能となる。
よって、本発明の防液堤によれば、被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に、被災地で容易に建設可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における防液堤の全体を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における防液堤が備えるコンクリートボックスの全体図である。
【図3】本発明の第2実施形態における防液堤が備えるコンクリートボックスの全体図である。
【図4】本発明の第2実施形態における防液堤の組立工程を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図6】本発明の第4実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図7】本発明の第5実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図8】本発明の第6実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図及び本発明の第7実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図9】本発明の第8実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大側面図及び本発明の第9実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大平面図である。
【図10】本発明の第10実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図及び本発明の第11実施形態における防液堤を模式的に示す全体図である。
【図11】本発明の第12実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図及びび本発明の第13実施形態における防液堤を模式的に示す全体図である。
【図12】本発明の防液堤の変形例を模式的に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る防液堤の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の防液堤1の全体を模式的に示す断面図である。
本実施形態の防液堤1は、海岸や浅瀬に設けられ、津波からタンクを保護するためのものである。そして、図1に示すように、防液堤1は、土台2と、コンクリートボックス3とを備えている。
【0018】
土台2は、コンクリートボックス3を支持するものであり、防液堤1の底部を構成している。この土台2は、例えば、高さ1m程度にコンクリートガラや砕石を敷設し、その上にレベル出しのためにコンクリートを打設することによって形成される。
本実施形態において土台2の上面2aは平面とされている。そして、この土台2の上面2a上にコンクリートボックス3が積層して配置される。
【0019】
図2は、コンクリートボックス3の全体図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
コンクリートボックス3(収容容器)は、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの容器であり、通常のコンクリートボックスに比べて引張強度に優れる。このため、津波が衝突することによって大きな衝撃力が作業した場合であっても、コンクリートボックス3(収容容器)の破壊を防止することができる。
【0020】
この図に示すように、コンクリートボックス3は、内部に収容物の収容空間Rを有する中空の立方体形状に形状設定されている。より詳細には、コンクリートボックス3は、図2に示すように、上部に開口端が形成された基部3aと、当該基部3aの開口端を閉じる蓋部3bとを備えている。そして、基部3aと蓋部3bとに囲まれた空間に収容物を収容可能とされている。
【0021】
また、図1に示すように、本実施形態の防液堤1においては、複数のコンクリートボックス3が備えられており、各コンクリートボックス3は同一形状とされている。これらのコンクリートボックス3は、例えば、横幅、奥行き、高さが各々3mの大きさに設定されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、コンクリートボックス3の内部に収容される収容物が瓦礫4とされている。
この瓦礫4は、被災地にて発生したものが用いられている。つまり、本実施形態においては、防液堤1の形成材料として、被災地にて発生した瓦礫4が用いられている。
また、コンクリートボックス3の収容空間Rに砂やヘドロを充填し、瓦礫4同士の隙間を埋めておくことが好ましい。
【0023】
そして、本実施形態においては、図1に示すように、土台2上においてコンクリートボックス3同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されている。
このような構成を採用する本実施形態の防液堤1によれば、被災地で発生した瓦礫4を形成材料とするため、被災地に残留される瓦礫の量を減少し、さらには建設材料を容易に確保することが可能となる。
よって、本実施形態の防液堤によれば、被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に、被災地で容易に建設可能なものとなる。
【0024】
また、本実施形態においては、コンクリートボックス3がプレキャストコンクリートからなっている。
このため、型枠やセメント等が用意できれば、被災地であっても、容易にコンクリートボックス3を形成することができる。
よって、被災地における交通網等のインフラ設備の復旧が遅れている場合であっても、早期に防液堤1の建設を開始することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態においてコンクリートボックス3は、横幅、奥行き、高さが各々3mの立方体形状に形状設定されている。
このため、各コンクリートボックス3の重量が20t程度となり、またハンドリングが容易な形状となっているため、作業者は被災地においても容易にコンクリートボックス3を運搬することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態の防液堤1は複数積層されるコンクリートボックス3によって形状が規定される。
コンクリートボックス3の配置パターンは任意で変更可能であるため、防液堤1の形状を建設箇所に合わせて任意に変更することができる。
【0027】
そして、このような防液堤1を海岸付近に建設する場合には、沖合いに高さ30m程度の防液堤1を形成し、陸上に10m程度の防液堤1を形成することで防液堤1を津波の進行方向に対して二重に配置することが考えられる。
このように防液堤1を配置することによって、沖合いの防液堤1で津波を減衰させ、陸上の防液堤1によって津波の陸地への侵入を防止することができる。
【0028】
なお、高さ30mの防液堤1を幅100mに亘って図1に示す略三角柱形状に形成した場合、防液堤1によって、約156250m3の瓦礫4を処理することができる。
【0029】
さらに、例えば、防液堤1の壁面に対して植物育成用の育成基板を取り付け、植栽を行って緑化を行うことによって、景観の保護等を図ることもできる。
【0030】
また、本実施形態の防液堤1において、以下のような変形例を採用することによって様々なメリットが生じる。以下、当該変形例について第2〜第13実施形態として説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0031】
(第2実施形態)
図3は、本第2実施形態の防液堤が採用するコンクリートボックス3Aの全体図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Aの4つの角部には、鉛直方向に貫通する貫通孔10aが形成されている。また、貫通孔10aの下端部には、機械式継手を収容可能な収容部10bが設けられている。
【0032】
このようなコンクリートボックス3Aを高さ方向に積層する場合には、図4(a)に示すように、設置面に4本の鉄筋10cを立設し、鉄筋10cを貫通孔10aに挿通してコンクリートボックス3Aを設置する。
続いて、図4(b)に示すように、鉄筋10cの上端部に対して機械式継手10dを取りつける。また、当該機械式継手10dにさらに鉄筋10cを取り付ける。
そして、新たに設置された鉄筋10cを新たなコンクリートボックス3Aに挿入することで図4(c)に示すように先に設置されたコンクリートボックス3A上に新たなコンクリートボックス3Aを積層配置する。
なお、これらの作業を繰り返すことによって、コンクリートボックス3Aをさらに多段に積層配置することができる。
【0033】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、積層されるコンクリートボックス3A同士が強固に連結され、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Aに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Aが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0034】
(第3実施形態)
図5は、本第3実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Bには、連結部11a,11b(係止部)が設けられている。
【0035】
連結部11a,11bは、コンクリートボックス3Bの側面に対して取りつけられる金属性の鍵状部材である。
連結部11aと連結部11bとは左右反転された形状に設定されており、コンクリートボックス3Bの反対向きに配置される2つ側面の各々に対して複数設けられている。
そして、連結部11aと連結部11bとが連結されることで、水平方向に隣接配置されるコンクリートボックス3B同士が係止される。
【0036】
このような本実施形態の防液堤によれば、隣接配置されるコンクリートボックス3Bに係止される係止部として機能する連結部11a,11bが各コンクリートボックス3Bに設けられている。
このため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Bに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Bが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0037】
なお、連結部11a,11bを設置することによって、隣接するコンクリートボックス3B同士の間に隙間が発生する。このため、当該隙間をコンクリートや砂等の充填物で埋めることが好ましい。
【0038】
(第4実施形態)
図6は、本第4実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。この図に示すように、本実施形態の防液堤においては、上下に重ねられるコンクリートボックス3同士の間に摩擦抵抗シート12が配置されている。
【0039】
摩擦抵抗シート12は、コンクリートボックス3の表面よりも静摩擦係数及び動摩擦係数が高い材料から形成されている。具体的には、摩擦抵抗シート12の形成材料として、ゴム材料やジオテキスタイルを用いることができる。
【0040】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、下段のコンクリートボックス3に対して上段のコンクリートボックス3が移動することを防止することができる。
したがって、本実施形態の防液堤によれば、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0041】
(第5実施形態)
図7は、本第5実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。この図に示すように、本実施形態においては、コンクリートボックス3の頂点が集まる箇所にガイド13が配置されている。
【0042】
図7に示すように、ガイド13は、3枚の板部材13aが中心Oにおいて互いに直交するように配置された形状を有している。
そして、ガイド13は、3枚の板部材13aの各々をコンクリートボックス3の3つの面に当接させて当接するコンクリートボックス3を位置決めする。
【0043】
このような本実施形態の防液堤によれば、ガイド13によって各コンクリートボックス3が正確に位置決めされ、これによってコンクリートボックス3を安定させて積層することができる。
【0044】
また、本実施形態の防液堤によれば、ガイド13によってコンクリートボックス3が他のコンクリートボックス3に対して移動することを防止することができる。
したがって、本実施形態の防液堤によれば、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0045】
(第6実施形態)
図8(a)は、本第6実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Cには、鍵状突起部14a(係止部)と、係止溝14b(係止部)とが設けられている。
【0046】
鍵状突起部14aは、コンクリートボックス3Cの側面に対して取りつけられており、断面がT字型に形状設定されている。
係止溝14bは、鍵状突起部14aが係止される溝であり、鍵状突起部14aよりも僅かに大きなT字型に形状設定されている。
【0047】
なお、コンクリートボックス3Cを図8の紙面垂直方向に移動させることによって、鍵状突起部14aを係止溝14bに対して抜差しすることができる。
そして、鍵状突起部14aが係止溝14bに挿入されることで水平方向に隣接配置されるコンクリートボックス3C同士が係止される。
【0048】
このような本実施形態の防液堤によれば、隣接配置されるコンクリートボックス3Cに係止される係止部として機能する鍵状突起部14aと係止溝14bが各コンクリートボックス3Cに設けられている。
このため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Cに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Cが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0049】
(第7実施形態)
図8(b)は、本第7実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大平面図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Dには、位置決め突起15が設けられている。
【0050】
位置決め突起15は、図8(b)に示すように、隣接配置されるコンクリートボックス3Dの同一方向を向く面が面一となることを避けるように、隣接配置されるコンクリートボックス3Dの位置決めを行うものである。
なお、図8(b)に示すように、位置決め突起15は、各コンクリートボックス3Dの隣合う2つの側面に対して各々設けられている。
【0051】
そして、位置決め突起15に対して他のコンクリートボックス3Dを当接させて配置することによって、隣接配置されるコンクリートボックス3Dの同一方向を向く面が面一となることが避けられる。
【0052】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、コンクリートボックス3D同士の境界面が直線状に連続することを避けることができる。したがって、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Dに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Dが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0053】
なお、隣接するコンクリートボックス3Dに囲まれた隙間が発生する。このため、当該隙間をコンクリートや砂等の充填物で埋めることが好ましい。
【0054】
(第8実施形態)
図9(a)は、本第8実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大側面図である。この図に示すように、本実施形態においては図9(a)に示すように、防液堤の高さ方向にコンクリートボックス3が積層され、下段におけるコンクリートボックス3の側面同士の境界面が、この上に載置される上段におけるコンクリートボックス3の側面同士の境界面とずれて配置されている。
【0055】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、コンクリートボックス3同士の境界面が高さ方向に直線状に連続することを避けることができる。したがって、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0056】
(第9実施形態)
図9(b)は、本第9実施形態の防液堤の一部を拡大した拡大平面図である。この図に示すように、本実施形態の防液堤では、4つのコンクリートボックス3がPC鋼棒16で連結されていて圧縮荷重がかけられている。
【0057】
つまり、本実施形態の防液堤は、PC鋼棒16で連結された4つのコンクリートボックス3を1つのユニットとして、複数の当該ユニットによって形成されている。
【0058】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、各ユニットにおいてコンクリートボックス3が一体化されているため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態においてはコンクリートボックス3に予め圧縮荷重がかけられているため、コンクリートボックス3を引張荷重から保護することができ、コンクリートボックス3の寿命を長くすることが可能となる。
【0060】
(第10実施形態)
図10(a)は、本第10実施形態の防液堤の一部を拡大した拡大図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Fにおいては、表面に凹凸加工が施されることによって凹凸部17aが形成されている。
凹凸部17aは、コンクリートボックス3F同士の間に介在される接着剤17bを保持するためのものである。
【0061】
なお、図10(a)において凹凸部17aを誇張して図示しているが、実際の凹凸部17aの高さは、目視にて視認できない程度の高さとされている。
したがって、コンクリートボックス3Fの側面同士を当接させるにあたり、凹凸部17aは支障とならない。
【0062】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤においては、コンクリートボックス3F同士が接着剤17bによって接合される。
この際、本実施形態の防液堤においてはコンクリートボックス3Fの表面に凹凸部17aが設けられているため、確実に接着剤17bをコンクリートボックス3F間に配置することができ、確実にコンクリートボックス3F同士を接合することができる。
【0063】
(第11実施形態)
図10(b)は、本第11実施形態の防液堤1Aの全体図である。
この図に示すように、本実施形態の防液堤1Aは、コンクリートボックス3の載置面が水平面に対して傾斜されている土台18aと、当該土台18aの載置面の下方端部にてコンクリートボックス3を側方から支持する支持部18bとを備えている。
なお、図10(b)に示すように、本実施形態においては、土台18aが支持部18bの両側に対して設けられており、各土台18aに対してコンクリートボックス3が載置されている。
【0064】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤1Aによれば、土台18aの載置面が傾斜していることから、コンクリートボックス3の重量が土台18aと支持部18bとに分散して異なる方向から支えられることとなる。
このため、地震等によってコンクリートボックス3が水平方向(図10(b)における紙面左右方向)に揺れた場合であっても、この揺れによる荷重を土台18aと支持部18bとの両方で支えることができる。
したがって、コンクリートボックス3の安定性を向上させ、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0065】
(第12実施形態)
図11(a)は、本第12実施形態の防液堤の一部を拡大した拡大図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Gは、隣接配置されるコンクリートボックス3G同士を締結するボルトが挿通されるフランジ19aを備えている。
【0066】
フランジ19aは、コンクリートボックス3Gの下部から側方に突出して設けられており、反対側を向く側壁の各々に設けられている。これらの異なる側壁に設けられるフランジ19aは、隣接配置されたコンクリートボックス3Gのフランジ19aと鉛直方向に重なるように鉛直方向にずれて配置されている。
そして、重ねて配置されたフランジ19aに1本のボルト19bが挿通されて隣接配置されるコンクリートボックス3Gが締結されている。
【0067】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、隣接配置されたコンクリートボックス3G同士が締結されているため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Gに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Gが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0068】
(第13実施形態)
図11(b)は、本第13実施形態の防液堤1Bの全体図である。この図に示すように、本実施形態の防液堤1Bにおいては、上記第1実施形態の防液堤1に対してコンクリートボックス3が鉛直面内において45°回転された状態で積層されている。
また、本実施形態の防液堤1Bは、最下段のコンクリートボックス3を安定して支持するために、コンクリートボックス3の形状に合わせた凹凸を有する土台20を有している。
【0069】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤1Bによれば、1つのコンクリートボックス3において隣合う2つの側壁が支持され、当該コンクリートボックスが異なる方向から支持される。
このため、コンクリートボックス3が安定して支持され、また、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0071】
例えば、図12に示すように、油タンク等の液体タンクの周囲を囲う防液堤に本発明の防液堤を適用することも可能である。
図12に示す防液堤は、従来から液体タンクの周囲に設置されている既設防液堤21と、津波の侵入を抑制する新設防液堤22と、既設防液堤21及び新設防液堤22を土台として既設防液堤21と新設防液堤22との間に配設される複数のコンクリートボックス3とを備えている。
このような構成を採用する防液堤に本発明を適用することによって、当該防液堤を被災地にて容易に建設することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B……防液堤、2,18a,20……土台、3,3A〜3G……コンクリートボックス(収容容器)、4……瓦礫(収容物)、14a……鍵状突起部(係止部)、14b……係止溝(係止部)、15……位置決め突起、18b……支持部、19a……フランジ、19b……ボルト
【技術分野】
【0001】
本発明は、防液堤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、海岸や河岸等には、陸地に建設されたタンクを津波から守るためのタンク保護用の防液堤(護岸)が設置されている。このような防液堤としては、例えば特許文献1に開示されたものを用いることができる。
防液堤は、津波によるタンクへの影響を低減させる効果があるものの、一度津波を受けることによって一部あるいは全部が損壊してしまう。
また、自然災害の影響を予め全て予測することは難しいため、実際の被害に照らし合わせて、新たな防液堤が建設される。
つまり、津波の発生後においては、損壊した防液堤の建て直しを含めて、タンクを保護するための防液堤が多く建設されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−226938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、多くの防液堤を建設する要求があるものの、被災した地域においてその材料の確保は難しい。
【0005】
一方、周知のように、地震や津波によって被害を受けた地域では、建物が損壊する等によって瓦礫が発生する。
このような瓦礫は非常に大量に発生する。これに加え、被害を受けた地域では瓦礫の処理能力が著しく低下する。このため、発生した瓦礫は、被害を受けた地域に確保される土地に長期に亘り保管されることとなる。
このような瓦礫の置き場は、市街地等に多く設けられる。このため、大量の瓦礫が長期に亘って残留されていると、復興の妨げとなる。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に被災後に建設材料の確保が容易なタンク保護用の防液堤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、防液堤であって、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器を複数備え、各収容容器同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されて形成されているという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記収容容器が、隣接配置される他の収容容器に係止される係止部を備えるという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記収容容器が、隣接配置される収容容器の同一方向を向く面が面一となることを避けて当該収容容器を位置決めする位置決め突起を備えるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第1〜第3いずれかの発明において、上記収容容器が、表面に凹凸加工が施されているという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1〜第4いずれかの発明において、上記収容容器が、隣接配置される収容容器同士を締結するボルトが挿通されるフランジを備えるという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第1〜第5いずれかの発明において、水平面に対して傾斜された上記収容容器の載置面を有する土台と、当該載置面の下方端部にて上記収容容器を側方から支持する支持部とを備えるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の防液堤は、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されることによって形成される。
このため、収容容器の内部に収容される収容物を、被災地で発生した瓦礫とすることによって、瓦礫を材料の一部とする防液堤とすることができる。
このような本発明の防液堤によれば、被災地で発生した瓦礫を形成材料とするため、被災地に残留される瓦礫の量を減少し、さらには建設材料を容易に確保することが可能となる。
よって、本発明の防液堤によれば、被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に、被災地で容易に建設可能なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態における防液堤の全体を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における防液堤が備えるコンクリートボックスの全体図である。
【図3】本発明の第2実施形態における防液堤が備えるコンクリートボックスの全体図である。
【図4】本発明の第2実施形態における防液堤の組立工程を示す模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図6】本発明の第4実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図7】本発明の第5実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図8】本発明の第6実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図及び本発明の第7実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。
【図9】本発明の第8実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大側面図及び本発明の第9実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大平面図である。
【図10】本発明の第10実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図及び本発明の第11実施形態における防液堤を模式的に示す全体図である。
【図11】本発明の第12実施形態における防液堤の一部を拡大する拡大図及びび本発明の第13実施形態における防液堤を模式的に示す全体図である。
【図12】本発明の防液堤の変形例を模式的に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る防液堤の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の防液堤1の全体を模式的に示す断面図である。
本実施形態の防液堤1は、海岸や浅瀬に設けられ、津波からタンクを保護するためのものである。そして、図1に示すように、防液堤1は、土台2と、コンクリートボックス3とを備えている。
【0018】
土台2は、コンクリートボックス3を支持するものであり、防液堤1の底部を構成している。この土台2は、例えば、高さ1m程度にコンクリートガラや砕石を敷設し、その上にレベル出しのためにコンクリートを打設することによって形成される。
本実施形態において土台2の上面2aは平面とされている。そして、この土台2の上面2a上にコンクリートボックス3が積層して配置される。
【0019】
図2は、コンクリートボックス3の全体図であり、(a)が平面図であり、(b)が側面図である。
コンクリートボックス3(収容容器)は、内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの容器であり、通常のコンクリートボックスに比べて引張強度に優れる。このため、津波が衝突することによって大きな衝撃力が作業した場合であっても、コンクリートボックス3(収容容器)の破壊を防止することができる。
【0020】
この図に示すように、コンクリートボックス3は、内部に収容物の収容空間Rを有する中空の立方体形状に形状設定されている。より詳細には、コンクリートボックス3は、図2に示すように、上部に開口端が形成された基部3aと、当該基部3aの開口端を閉じる蓋部3bとを備えている。そして、基部3aと蓋部3bとに囲まれた空間に収容物を収容可能とされている。
【0021】
また、図1に示すように、本実施形態の防液堤1においては、複数のコンクリートボックス3が備えられており、各コンクリートボックス3は同一形状とされている。これらのコンクリートボックス3は、例えば、横幅、奥行き、高さが各々3mの大きさに設定されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、コンクリートボックス3の内部に収容される収容物が瓦礫4とされている。
この瓦礫4は、被災地にて発生したものが用いられている。つまり、本実施形態においては、防液堤1の形成材料として、被災地にて発生した瓦礫4が用いられている。
また、コンクリートボックス3の収容空間Rに砂やヘドロを充填し、瓦礫4同士の隙間を埋めておくことが好ましい。
【0023】
そして、本実施形態においては、図1に示すように、土台2上においてコンクリートボックス3同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されている。
このような構成を採用する本実施形態の防液堤1によれば、被災地で発生した瓦礫4を形成材料とするため、被災地に残留される瓦礫の量を減少し、さらには建設材料を容易に確保することが可能となる。
よって、本実施形態の防液堤によれば、被災後に発生する大量の瓦礫の処理を可能とすると共に、被災地で容易に建設可能なものとなる。
【0024】
また、本実施形態においては、コンクリートボックス3がプレキャストコンクリートからなっている。
このため、型枠やセメント等が用意できれば、被災地であっても、容易にコンクリートボックス3を形成することができる。
よって、被災地における交通網等のインフラ設備の復旧が遅れている場合であっても、早期に防液堤1の建設を開始することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態においてコンクリートボックス3は、横幅、奥行き、高さが各々3mの立方体形状に形状設定されている。
このため、各コンクリートボックス3の重量が20t程度となり、またハンドリングが容易な形状となっているため、作業者は被災地においても容易にコンクリートボックス3を運搬することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態の防液堤1は複数積層されるコンクリートボックス3によって形状が規定される。
コンクリートボックス3の配置パターンは任意で変更可能であるため、防液堤1の形状を建設箇所に合わせて任意に変更することができる。
【0027】
そして、このような防液堤1を海岸付近に建設する場合には、沖合いに高さ30m程度の防液堤1を形成し、陸上に10m程度の防液堤1を形成することで防液堤1を津波の進行方向に対して二重に配置することが考えられる。
このように防液堤1を配置することによって、沖合いの防液堤1で津波を減衰させ、陸上の防液堤1によって津波の陸地への侵入を防止することができる。
【0028】
なお、高さ30mの防液堤1を幅100mに亘って図1に示す略三角柱形状に形成した場合、防液堤1によって、約156250m3の瓦礫4を処理することができる。
【0029】
さらに、例えば、防液堤1の壁面に対して植物育成用の育成基板を取り付け、植栽を行って緑化を行うことによって、景観の保護等を図ることもできる。
【0030】
また、本実施形態の防液堤1において、以下のような変形例を採用することによって様々なメリットが生じる。以下、当該変形例について第2〜第13実施形態として説明する。なお、以下の変形例の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0031】
(第2実施形態)
図3は、本第2実施形態の防液堤が採用するコンクリートボックス3Aの全体図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。
この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Aの4つの角部には、鉛直方向に貫通する貫通孔10aが形成されている。また、貫通孔10aの下端部には、機械式継手を収容可能な収容部10bが設けられている。
【0032】
このようなコンクリートボックス3Aを高さ方向に積層する場合には、図4(a)に示すように、設置面に4本の鉄筋10cを立設し、鉄筋10cを貫通孔10aに挿通してコンクリートボックス3Aを設置する。
続いて、図4(b)に示すように、鉄筋10cの上端部に対して機械式継手10dを取りつける。また、当該機械式継手10dにさらに鉄筋10cを取り付ける。
そして、新たに設置された鉄筋10cを新たなコンクリートボックス3Aに挿入することで図4(c)に示すように先に設置されたコンクリートボックス3A上に新たなコンクリートボックス3Aを積層配置する。
なお、これらの作業を繰り返すことによって、コンクリートボックス3Aをさらに多段に積層配置することができる。
【0033】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、積層されるコンクリートボックス3A同士が強固に連結され、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Aに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Aが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0034】
(第3実施形態)
図5は、本第3実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図であり、(a)が平面図、(b)が側面図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Bには、連結部11a,11b(係止部)が設けられている。
【0035】
連結部11a,11bは、コンクリートボックス3Bの側面に対して取りつけられる金属性の鍵状部材である。
連結部11aと連結部11bとは左右反転された形状に設定されており、コンクリートボックス3Bの反対向きに配置される2つ側面の各々に対して複数設けられている。
そして、連結部11aと連結部11bとが連結されることで、水平方向に隣接配置されるコンクリートボックス3B同士が係止される。
【0036】
このような本実施形態の防液堤によれば、隣接配置されるコンクリートボックス3Bに係止される係止部として機能する連結部11a,11bが各コンクリートボックス3Bに設けられている。
このため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Bに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Bが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0037】
なお、連結部11a,11bを設置することによって、隣接するコンクリートボックス3B同士の間に隙間が発生する。このため、当該隙間をコンクリートや砂等の充填物で埋めることが好ましい。
【0038】
(第4実施形態)
図6は、本第4実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。この図に示すように、本実施形態の防液堤においては、上下に重ねられるコンクリートボックス3同士の間に摩擦抵抗シート12が配置されている。
【0039】
摩擦抵抗シート12は、コンクリートボックス3の表面よりも静摩擦係数及び動摩擦係数が高い材料から形成されている。具体的には、摩擦抵抗シート12の形成材料として、ゴム材料やジオテキスタイルを用いることができる。
【0040】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、下段のコンクリートボックス3に対して上段のコンクリートボックス3が移動することを防止することができる。
したがって、本実施形態の防液堤によれば、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0041】
(第5実施形態)
図7は、本第5実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。この図に示すように、本実施形態においては、コンクリートボックス3の頂点が集まる箇所にガイド13が配置されている。
【0042】
図7に示すように、ガイド13は、3枚の板部材13aが中心Oにおいて互いに直交するように配置された形状を有している。
そして、ガイド13は、3枚の板部材13aの各々をコンクリートボックス3の3つの面に当接させて当接するコンクリートボックス3を位置決めする。
【0043】
このような本実施形態の防液堤によれば、ガイド13によって各コンクリートボックス3が正確に位置決めされ、これによってコンクリートボックス3を安定させて積層することができる。
【0044】
また、本実施形態の防液堤によれば、ガイド13によってコンクリートボックス3が他のコンクリートボックス3に対して移動することを防止することができる。
したがって、本実施形態の防液堤によれば、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0045】
(第6実施形態)
図8(a)は、本第6実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Cには、鍵状突起部14a(係止部)と、係止溝14b(係止部)とが設けられている。
【0046】
鍵状突起部14aは、コンクリートボックス3Cの側面に対して取りつけられており、断面がT字型に形状設定されている。
係止溝14bは、鍵状突起部14aが係止される溝であり、鍵状突起部14aよりも僅かに大きなT字型に形状設定されている。
【0047】
なお、コンクリートボックス3Cを図8の紙面垂直方向に移動させることによって、鍵状突起部14aを係止溝14bに対して抜差しすることができる。
そして、鍵状突起部14aが係止溝14bに挿入されることで水平方向に隣接配置されるコンクリートボックス3C同士が係止される。
【0048】
このような本実施形態の防液堤によれば、隣接配置されるコンクリートボックス3Cに係止される係止部として機能する鍵状突起部14aと係止溝14bが各コンクリートボックス3Cに設けられている。
このため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Cに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Cが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0049】
(第7実施形態)
図8(b)は、本第7実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大平面図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Dには、位置決め突起15が設けられている。
【0050】
位置決め突起15は、図8(b)に示すように、隣接配置されるコンクリートボックス3Dの同一方向を向く面が面一となることを避けるように、隣接配置されるコンクリートボックス3Dの位置決めを行うものである。
なお、図8(b)に示すように、位置決め突起15は、各コンクリートボックス3Dの隣合う2つの側面に対して各々設けられている。
【0051】
そして、位置決め突起15に対して他のコンクリートボックス3Dを当接させて配置することによって、隣接配置されるコンクリートボックス3Dの同一方向を向く面が面一となることが避けられる。
【0052】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、コンクリートボックス3D同士の境界面が直線状に連続することを避けることができる。したがって、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Dに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Dが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0053】
なお、隣接するコンクリートボックス3Dに囲まれた隙間が発生する。このため、当該隙間をコンクリートや砂等の充填物で埋めることが好ましい。
【0054】
(第8実施形態)
図9(a)は、本第8実施形態の防液堤の一部を拡大する拡大側面図である。この図に示すように、本実施形態においては図9(a)に示すように、防液堤の高さ方向にコンクリートボックス3が積層され、下段におけるコンクリートボックス3の側面同士の境界面が、この上に載置される上段におけるコンクリートボックス3の側面同士の境界面とずれて配置されている。
【0055】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、コンクリートボックス3同士の境界面が高さ方向に直線状に連続することを避けることができる。したがって、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0056】
(第9実施形態)
図9(b)は、本第9実施形態の防液堤の一部を拡大した拡大平面図である。この図に示すように、本実施形態の防液堤では、4つのコンクリートボックス3がPC鋼棒16で連結されていて圧縮荷重がかけられている。
【0057】
つまり、本実施形態の防液堤は、PC鋼棒16で連結された4つのコンクリートボックス3を1つのユニットとして、複数の当該ユニットによって形成されている。
【0058】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、各ユニットにおいてコンクリートボックス3が一体化されているため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態においてはコンクリートボックス3に予め圧縮荷重がかけられているため、コンクリートボックス3を引張荷重から保護することができ、コンクリートボックス3の寿命を長くすることが可能となる。
【0060】
(第10実施形態)
図10(a)は、本第10実施形態の防液堤の一部を拡大した拡大図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Fにおいては、表面に凹凸加工が施されることによって凹凸部17aが形成されている。
凹凸部17aは、コンクリートボックス3F同士の間に介在される接着剤17bを保持するためのものである。
【0061】
なお、図10(a)において凹凸部17aを誇張して図示しているが、実際の凹凸部17aの高さは、目視にて視認できない程度の高さとされている。
したがって、コンクリートボックス3Fの側面同士を当接させるにあたり、凹凸部17aは支障とならない。
【0062】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤においては、コンクリートボックス3F同士が接着剤17bによって接合される。
この際、本実施形態の防液堤においてはコンクリートボックス3Fの表面に凹凸部17aが設けられているため、確実に接着剤17bをコンクリートボックス3F間に配置することができ、確実にコンクリートボックス3F同士を接合することができる。
【0063】
(第11実施形態)
図10(b)は、本第11実施形態の防液堤1Aの全体図である。
この図に示すように、本実施形態の防液堤1Aは、コンクリートボックス3の載置面が水平面に対して傾斜されている土台18aと、当該土台18aの載置面の下方端部にてコンクリートボックス3を側方から支持する支持部18bとを備えている。
なお、図10(b)に示すように、本実施形態においては、土台18aが支持部18bの両側に対して設けられており、各土台18aに対してコンクリートボックス3が載置されている。
【0064】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤1Aによれば、土台18aの載置面が傾斜していることから、コンクリートボックス3の重量が土台18aと支持部18bとに分散して異なる方向から支えられることとなる。
このため、地震等によってコンクリートボックス3が水平方向(図10(b)における紙面左右方向)に揺れた場合であっても、この揺れによる荷重を土台18aと支持部18bとの両方で支えることができる。
したがって、コンクリートボックス3の安定性を向上させ、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0065】
(第12実施形態)
図11(a)は、本第12実施形態の防液堤の一部を拡大した拡大図である。この図に示すように、本実施形態におけるコンクリートボックス3Gは、隣接配置されるコンクリートボックス3G同士を締結するボルトが挿通されるフランジ19aを備えている。
【0066】
フランジ19aは、コンクリートボックス3Gの下部から側方に突出して設けられており、反対側を向く側壁の各々に設けられている。これらの異なる側壁に設けられるフランジ19aは、隣接配置されたコンクリートボックス3Gのフランジ19aと鉛直方向に重なるように鉛直方向にずれて配置されている。
そして、重ねて配置されたフランジ19aに1本のボルト19bが挿通されて隣接配置されるコンクリートボックス3Gが締結されている。
【0067】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤によれば、隣接配置されたコンクリートボックス3G同士が締結されているため、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3Gに作用した場合であっても、コンクリートボックス3Gが崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0068】
(第13実施形態)
図11(b)は、本第13実施形態の防液堤1Bの全体図である。この図に示すように、本実施形態の防液堤1Bにおいては、上記第1実施形態の防液堤1に対してコンクリートボックス3が鉛直面内において45°回転された状態で積層されている。
また、本実施形態の防液堤1Bは、最下段のコンクリートボックス3を安定して支持するために、コンクリートボックス3の形状に合わせた凹凸を有する土台20を有している。
【0069】
このような構成を採用する本実施形態の防液堤1Bによれば、1つのコンクリートボックス3において隣合う2つの側壁が支持され、当該コンクリートボックスが異なる方向から支持される。
このため、コンクリートボックス3が安定して支持され、また、津波が衝突する等によって大きな衝撃力がコンクリートボックス3に作用した場合であっても、コンクリートボックス3が崩れることをより確実に防止することが可能となる。
【0070】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0071】
例えば、図12に示すように、油タンク等の液体タンクの周囲を囲う防液堤に本発明の防液堤を適用することも可能である。
図12に示す防液堤は、従来から液体タンクの周囲に設置されている既設防液堤21と、津波の侵入を抑制する新設防液堤22と、既設防液堤21及び新設防液堤22を土台として既設防液堤21と新設防液堤22との間に配設される複数のコンクリートボックス3とを備えている。
このような構成を採用する防液堤に本発明を適用することによって、当該防液堤を被災地にて容易に建設することが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A,1B……防液堤、2,18a,20……土台、3,3A〜3G……コンクリートボックス(収容容器)、4……瓦礫(収容物)、14a……鍵状突起部(係止部)、14b……係止溝(係止部)、15……位置決め突起、18b……支持部、19a……フランジ、19b……ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器を複数備え、各収容容器同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されて形成されていることを特徴とする防液堤。
【請求項2】
前記収容容器は、隣接配置される他の収容容器に係止される係止部を備えることを特徴とする請求項1記載の防液堤。
【請求項3】
前記収容容器は、隣接配置される収容容器の同一方向を向く面が面一となることを避けて当該収容容器を位置決めする位置決め突起を備えることを特徴とする請求項1または2記載の防液堤。
【請求項4】
前記収容容器は、表面に凹凸加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の防液堤。
【請求項5】
前記収容容器は、隣接配置される収容容器同士を締結するボルトが挿通されるフランジを備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の防液堤。
【請求項6】
水平面に対して傾斜された前記収容容器の載置面を有する土台と、当該載置面の下方端部にて前記収容容器を側方から支持する支持部とを備えることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の防液堤。
【請求項1】
内部に収容物を収容可能なプレキャストコンクリートの収容容器を複数備え、各収容容器同士が水平方向及び鉛直方向に接続されて一体化されて形成されていることを特徴とする防液堤。
【請求項2】
前記収容容器は、隣接配置される他の収容容器に係止される係止部を備えることを特徴とする請求項1記載の防液堤。
【請求項3】
前記収容容器は、隣接配置される収容容器の同一方向を向く面が面一となることを避けて当該収容容器を位置決めする位置決め突起を備えることを特徴とする請求項1または2記載の防液堤。
【請求項4】
前記収容容器は、表面に凹凸加工が施されていることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の防液堤。
【請求項5】
前記収容容器は、隣接配置される収容容器同士を締結するボルトが挿通されるフランジを備えることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の防液堤。
【請求項6】
水平面に対して傾斜された前記収容容器の載置面を有する土台と、当該載置面の下方端部にて前記収容容器を側方から支持する支持部とを備えることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の防液堤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−60755(P2013−60755A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200495(P2011−200495)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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