説明

防湿性積層フィルム、積層体及び包装物

【課題】吸湿性のある又は高い内容物に対して、防湿性が均一であり、且つ高いレベルの防湿性を有する積層フィルム、それを用いた積層体、及びその積層体を用いて内容物を包装した包装物を提供すること。
【解決手段】二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)の片面に、ポリビニルアルコール(PVA)と層状珪酸塩との重量比(PVA/層状珪酸塩)が85/15〜75/25である混合物を塗布層(B)として設けた少なくとも二層の防湿性積層フィルム、或いは防湿性積層フィルムの塗布層面側に印刷を施し、その塗布層に無延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートしてなる総厚みが70μm以下の積層体、或いはその積層体を用いて、無延伸ポリオレフィンフィルム側に内容物を包装した包装物であって、特定の式を満足することを特徴する包装物を提供した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気バリア性に優れたポリプロピレン系防湿性積層フィルム、積層体、及び包装物に関し、更に詳しくは、防湿性の必要な内容物を包装する際に有用な、食品包装材料等として適しているポリプロピレン系防湿性積層フィルム、それを用いた積層体、及びその積層体を用いて内容物を包装した包装物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン系フィルムは、優れた透明性、光沢性等の光学特性、引張特性、ヤング率に代表される機械特性、実質上の無毒性及び無臭性等の特性を備えているため、特に内容物が食品である食品用包装材料などとして広く用いられている。
ところが、内容物を包装する目的は、多種多様である。例えば、意匠性を与えたり、内容物の物理的な保護、化学的な保護などがある。食品用の包装材料として適用するとき、食品の種類によっては乾燥を防止すること、或いは、逆に吸湿性のある内容物を外部の湿気から保護する、すなわち、防湿性を有することは、内容物の品質保護の観点から非常に重要である。例えば、内容物が吸湿性食品の場合、内容物の吸湿は、内容物の水分率を高める、すなわち湿気させるだけでなく、変色などにも大きく関与するといわれている。このように吸湿性のある又は高い内容物を外部の湿気から保護することは非常に重要なことであり、水蒸気バリア性を具備するフィルム、或いは、その中でも防湿性を有するフィルムがこれまでいくつか提案されてきた。
【0003】
一般的に包装材料としては、ニ軸延伸されたポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン(以下OPPと略称することもある)、ポリアミド等のフィルムは、優れた力学特性や耐熱性、透明性などを有し、広く使われてきた。
この中でも防湿性という観点からは、ニ軸延伸されたポリプロピレン系フィルムが有用であり、多く使用されてきた。ポリプロピレン系フィルムでも防湿性が強く求められる内容物については、ポリプロピレン系フィルムに塩化ビニリデン系重合体をコーティングしたフィルム(以下KOPと略す)が用いられてきた。
しかしながら、昨今のダイオキシン問題に端を発してKOPが敬遠され、現在では、ポリプロピレン系フィルムの中に石油樹脂などを添加することにより、ポリプロピレン系フィルムの防湿性を高めている。このように、ポリプロピレン樹脂に石油樹脂やテルペン樹脂を添加すると、ヤング率が高くなったり、防湿性が向上することが知られている。例えば、特許文献1、2には、水蒸気バリア性が改良されたポリプロピレンフィルムが開示されているが、これらはいずれもテルペン樹脂又は石油樹脂を添加することのみによって水蒸気バリア性を向上させている。
【0004】
しかし、この石油樹脂などを添加する方法では、テルペン樹脂や石油樹脂がフィルム表面にブリードして透明性が悪化したり、ラミネート強度、印刷インキのにじみ、外観や触感不良を起こすという不具合がある。さらに、防湿性レベルの点でも、これまでのKOPの防湿性レベルを完全には満足しておらず、非常に高い防湿性を必要とされる内容物には、PETフィルムに酸化珪素や酸化アルミニウムなどの金属酸化物を蒸着した透明蒸着フィルムが用いられている。この透明蒸着フィルムは、フィルムの屈曲により防湿性が劣化することや、ロット間に防湿性のバラツキがあることなどの問題点があり、さらに、製造工程が煩雑になり、KOPよりも高価であることが課題とされ、未だ十分なものとはいえない。
【特許文献1】特開昭58−213037号公報
【特許文献2】特開昭60−210647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、吸湿性のある又は高い内容物に対して、防湿性が均一であり、且つ高いレベルの防湿性を有する積層フィルム、それを用いた積層体、及びその積層体を用いて内容物を包装した包装物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために、鋭意検討を進め、通常、一般に用いられている包装用の防湿性フィルムは、例えば塩化ビニリデン系重合体をコーティングした面側に印刷が施された後、無延伸のポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムをラミネートして、ヒートシール性のある積層体を作製し、この積層体で内容物を包装するのが一般的であるが、種々の防湿性フィルムを用いて内容物を包装した包装物について、防湿性などを詳細に検討を行った結果、防湿性積層フィルムとして、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムに特定の塗布層をコーティングしたものは、内容物の水分活性すなわち内部湿度に応じて、防湿性或いは防乾燥性(耐脱湿性)が変わり、すなわちフィルムの水蒸気透過度が変わり、言い替えると同じ積層フィルムでありながら、内容物の湿度が低く防湿性が求められるときは、水蒸気透過度が低く防湿性に優れることを見出した。さらに、本発明者は、検討を進め、積層フィルムの塗布層の湿度レベルによりフィルムの防湿性(水蒸気透過度)が変わり、防湿性の湿度依存性があること、すなわち塗布層の湿度レベルが40%未満であると、防湿性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)の片面に、ポリビニルアルコール(PVA)と層状珪酸塩との重量比(PVA/層状珪酸塩)が85/15〜75/25である混合物を塗布層(B)として設けた少なくとも二層の防湿性積層フィルムが提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、層状珪酸塩は、水に膨潤させた後、高圧ホモジナイザーを用いて500kgf/cm以上の圧力条件下で2パス以上処理させ、水溶媒に膨潤又はへき開した分散状態であることを特徴とする防湿性積層フィルムが提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、層状珪酸塩は、純度が99%以上であるモンモリロナイトであることを特徴とする防湿性積層フィルムが提供される。
またさらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、塗布層(B)の塗布量は、0.3〜1g/mであることを特徴とする防湿性積層フィルムが提供される。
【0008】
本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の防湿性積層フィルムの塗布層面側に印刷を施し、その塗布層に無延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートしてなる総厚みが70μm以下の積層体が提供される。
【0009】
一方、本発明の第6の発明によれば、第5の発明の積層体を用いて、無延伸ポリオレフィンフィルム側に内容物を包装した包装物であって、次の式を満足することを特徴する包装物が提供される。
X=(0.9A+B・Aw)/(A+B)<0.4
[式中、Xは防湿性のパラメータであり、Aは基材フィルム(A)の水蒸気透過度(g/m/24h)を、Bは無延伸ポリオレフィンフィルムの水蒸気透過度(g/m/24h)を、及びAwは内容物の水分活性を示す。]
【0010】
本発明は、上記した如く、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)の片面に、ポリビニルアルコール(PVA)と層状珪酸塩との重量比(PVA/層状珪酸塩)が85/15〜75/25である混合物を塗布層(B)として設けた少なくとも二層の防湿性積層フィルム、或いは、その防湿性積層フィルムの塗布層面側に印刷を施し、その塗布層に無延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートしてなる総厚みが70μm以下の積層体、或いは、その積層体を用いて、無延伸ポリオレフィンフィルム側に内容物を包装した包装物に係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
【0011】
(1)本発明の第1の発明において、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)は、コア層(A)とその両面にスキン層(AとA)からなることを特徴とする防湿性積層フィルム。
(2)上記(1)において、コア層(A)には、石油樹脂又はテルペン樹脂の少なくとも1種の樹脂が3〜25重量%含有されることを特徴とする防湿性積層フィルム。
(3)上記(1)において、塗布層(B)側のスキン層(A)は、エチレンを0.01〜5重量%含有するランダム共重合型のポリプロピレンであることを特徴とする防湿性積層フィルム。
(4)上記(1)において、スキン層(A)は、単独重合型のポリプロピレンであることを特徴とする防湿性積層フィルム。
(5)上記(1)において、スキン層(AとA)に、ブロッキング防止剤として、シリカ又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)を100〜4000ppm含有することを特徴とする防湿性積層フィルム。
(6)本発明の第1の発明において、基材フィルム(A)と塗布層(B)間に、アンカー層(C)を設けることを特徴とする防湿性積層フィルム。
(7)本発明の第2の発明において、ポリビニルアルコールと層状珪酸塩の混合は、水溶媒に膨潤又はへき開した状態での層状珪酸塩をポリビニルアルコール水溶液へ分散させることにより行われることを特徴とする防湿性積層フィルム。
(8)上記(3)又は(6)において、基材フィルム(A)の塗布層(B)側のスキン層(A)には、表面処理が行われることを特徴とする防湿性積層フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリプロピレン系防湿性積層フィルム、それを用いた積層体、及びその積層体を用いて内容物を包装した包装物は、本来ポリプロピレン系フィルムが持つ特性を損なうことなく、防湿性に優れているので、特に各種食品の防湿性が必要な包装材料や包装物として好適に用いることができ、内容物の長期保存に効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の防湿性積層フィルム、それを用いた積層体、及びその積層体を用いて内容物を包装した包装物について、項目毎に詳細に説明する。
1.防湿性積層フィルム
本発明の防湿性積層フィルムは、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)の片面に、ポリビニルアルコール(PVA)と層状珪酸塩との重量比(PVA/層状珪酸塩)が85/15〜75/25である混合物を塗布層(B)として設けた少なくとも二層の防湿性積層フィルムである。
【0014】
(1)基材フィルム(A)
基材フィルム(A)は、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなり、そのフィルムの層構成は、通常、コア層(A)とその両面にスキン層(AとA)からなるが、コア層(A)の塗布層(B)側の片面にのみにスキン層(A)が有ってもよい。
【0015】
コア層(A)は、ポリプロピレン系樹脂、又はポリプロピレン系樹脂を好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上含有する樹脂組成物からなる。ポリプロピレン系樹脂は、高結晶の結晶性ポリプロピレンが好ましい。また、プロピレンと、エチレン、ブテン−1、3−メチルペンテン、4−メチルペンテン等との共重合体でもよいが、プロピレン以外の構成単位の含有率は1重量%以下がよく、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満である。
【0016】
望ましいポリプロピレン系樹脂は、高結晶ポリプロピレン系樹脂であり、防湿性の点から規則性は高い方がよく、すなわち高立体規則性ポリプロピレン樹脂が好ましく、ポリプロピレン系樹脂のアイソタクチック指数は、積層フィルムの特性を損なわない範囲である限り特に制限されないが、好ましくは97%以上がよく、より好ましくは99%以上である。一方、アイソタクチック指数が97%未満では、防湿性に劣り、また、フィルムの熱収縮率が大きくなって熱寸法安定性に劣るために、印刷やコーティングおよびラミネート加工などの二次加工性に劣る。
【0017】
また、コア層(A)に用いられるポリプロピレン系樹脂の融点は、好ましくは160℃以上、より好ましくは170℃以上である。230℃でのメルトフローレート(ASTM D1238、以下MFRと略す)は、成形のしやすさの点から、好ましくは0.5〜20g/10分、より好ましくは2〜4g/10分である。
【0018】
コア層(A)には、石油樹脂又はテルペン樹脂から選ばれる1種以上の樹脂を配合することが望ましい。石油樹脂又はテルペン樹脂を含有することにより、本発明の防湿性積層フィルムの水蒸気に対するバリア性が向上する。
石油樹脂としては、シクロペンタジエン系や高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂又はこれらに80%以上の水添率で水素添加したものを挙げることができる。この石油樹脂は、極性基を含まないものであることが好ましい。このような石油樹脂としては、具体的に、例えば荒川化学製の商品名「アルコンP−120」、トーネックス社製の商品名「エスコレッツE5320HC」が挙げられる。
石油樹脂は、軟化点が125℃以上のものが望ましく、またガラス転移温度が65〜85℃のものが望ましい。
【0019】
テルペン樹脂としては、ピネン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テルピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ピサボレン、ジンギペレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレン等又はこれらに80%以上の水添率で水素添加したものを挙げることができる。これらのテルペン樹脂は、極性基を含まないものであることが好ましい。
【0020】
コア層(A)中における石油樹脂又はテルペン樹脂の含有量は、3〜25重量%、好ましくは3〜20重量%、より好ましくは3〜15重量%である。
【0021】
コア層(A)には、本発明の目的を損なわない限り、さらに紫外線吸収剤、帯電防止剤、結晶核成長剤、スチレン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、クマロニンデン樹脂等のクマロン樹脂、フェノール樹脂、ロジンとその誘導体やそれらの水添樹脂等の炭化水素系重合体、可塑剤、充填剤を配合することができる。なお、フィルムを、後加工の工程に供する場合には、これらの添加剤のブリード等によってコーティング層、蒸着層、ラミネート層、インキ層等との適性を損なわないように条件設定する必要がある。
【0022】
また、コア層(A)は、単層であってもよく、2層以上のポリプロピレン系樹脂層が積層されたものであってもよい。コア層の厚みは、特に制限されないが、本発明においては、好ましくは1〜40μm、より好ましくは5〜40μm、さらに好ましくは10〜30μmである。
【0023】
スキン層(表面層)(AとA)は、コア層と同じポリプロピレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を含む樹脂組成物からなるものである。スキン層を構成するポリプロピレン系樹脂は、望ましい態様として、コア層(A)の塗布層側のスキン層(A)には、エチレンを0.01〜5重量%含有するランダム共重合型のポリプロピレンであり、そして、コア層(A)の他方のスキン層(A)には、単独重合型のポリプロピレン、すなわちホモポリプロピレンである。
【0024】
上記のエチレンを0.01〜5重量%含有するランダム共重合型のポリプロピレンとしては、例えばエチレンとプロピレンのランダムコポリマー、エチレン−プロピレン−ブチレンターポリマーなどが挙げられ、特にエチレン−プロピレン−ブチレンターポリマーが好ましい。さらに、このようなポリプロピレンランダムコポリマーのコモノマー成分としては、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテンなどの炭素数2〜6程度のアルケン等が挙げられる。さらに好ましくは、プロピレンをポリプロピレン系コポリマー全体の84重量%以上、特に好ましくは84〜99重量%含み、エチレンを0.01〜5重量%含有し、エチレンおよび/またはブテンをポリプロピレン系コポリマー全体の16重量%以下、特に好ましくは16〜1重量%含むコポリマーであるのがよい。なお、スキン層(AとA)を構成するポリプロピレン系コポリマーには、本発明の作用を阻害しない範囲で、添加剤等の他の成分を含有していても良い。
【0025】
スキン層に用いられるポリプロピレン系樹脂のMFRは、5g/10分以上、好ましくは10〜50g/10分である。なお、スキン層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFRは、コア層を構成するポリプロピレン系樹脂のMFRよりも大きくする方が、メルトフラクチャーを起こし難くなるので好ましい。
【0026】
コア層及びスキン層を構成するポリプロピレン系樹脂には、酸化防止剤を配合することができる。スキン層中における酸化防止剤の含有量は、200ppm以下がよく、好ましくは100ppm以下である。酸化防止剤の含有量を200ppm以下にすると、押出機内でポリプロピレン系樹脂の分子量分解が発生する恐れがある。
【0027】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、硫黄系等が挙げられるが、フェノール系としては2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン(例えば、日本チバガイギー社、イルガノックス1010)等が好ましい。
【0028】
スキン層を構成するポリプロピレン系樹脂には、ブロッキング防止剤(アンチブロッキング剤)を配合することが望ましい。ブロッキング防止剤としては、シリカ、アルミナ、合成ゼオライト、カオリン、タルク、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、石英粉、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等の無機系微粉末、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、アミノ樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂等から選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、シリカやPMMA(ポリメタクリル酸メチル)が好ましく、好ましい実施態様として、コア層(A)の塗布層側のスキン層(A)には、PMMAが、一方、他方のスキン層(A)には、シリカが挙げられる。なお、ブロッキング防止剤は、フィルム成形時に加えられる熱によっても変形することなく形状を保持するために、フィルム成形時の温度より高い融点又は軟化点を有するものが好ましい。
【0029】
ブロッキング防止剤は、真球状でも不定形でもよいが、真球状のブロッキング防止剤を用いると、透明性を低下させることなく、高い耐ブロッキング性を付与できるため好ましい。シリカなどのブロッキング防止剤の平均粒子径は、スキン層の厚みに応じて、耐ブロッキング性、すべり性、透明性を損なわない範囲で選択でき、好ましくは0.1〜7.5μm、より好ましくは0.5〜5μm、さらに好ましくは0.5〜1μmである。
【0030】
ブロッキング防止剤の含有量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.5重量部がよく、より好ましくは0.02〜0.4重量部、さらに好ましくは0.03〜0.3重量部である。ブロッキング防止剤の含有量が0.01重量部以上であると巻取時におけるフィルムのブロッキングを防止でき、また、0.5重量部以下であると透明性の低下を防止できる。
【0031】
さらに、防湿性積層フィルムのスキン層の表面処理は、慣用の表面処理、例えばコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾンや紫外線照射処理等を採用できるが、コロナ放電処理が好ましい。表面処理は、フィルムの延伸処理に先立って行ってもよいが、延伸後に行うことが望ましい。
【0032】
本発明の防湿性積層フィルムは、スキン層の上にコーティング層、蒸着層、ラミネート層、インキ層等を形成する場合には、スキン層には前記(すなわち酸化防止剤とブロッキング防止剤)以外の成分を含まないことが好ましいが、層間の密着性が損なわれない範囲であれば、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、ワックス等を含んでいてもよい。また、このような表面処理は、密着性を向上させるため、好ましくは36dyne/cm以上、より好ましくは37〜45dyne/cm、さらに好ましくは38〜42dyne/cmの表面張力となるように行うことが望ましい。
【0033】
(2)塗布層(B)
本発明の防湿性積層フィルムは、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)の片面に、すなわち、コア層(A)の塗布層側のスキン層(A)に、アンカー層(又はアンカーコート層)を介して、ポリビニルアルコールと層状珪酸塩の混合物からなる塗布層(バリア層)(B)を少なくとも1層有するものである。
【0034】
アンカー層としては、スキン層(A)と塗布層(B)との接着性や密着性を高めるものであれば特に限定されず、例えば、ウレタン系、ポリエチレンイミン系、ブタジエン系、ポリエステル系等の公知或いは慣用のアンカーコート剤などを使用できる。これらの中でも、接着強度及び耐水性の点から、ウレタン系、ポリエステル系のアンカーコート剤が好ましく、特に好ましくは有機溶剤可溶型のポリエステル系のアンカーコート剤である。なお、アンカー層には、本発明の作用を阻害しない範囲で、添加剤等の他の成分を含有していても良い。
【0035】
また、アンカー層の厚みも特に限定されず、スキン層(A)や塗布層(B)の構成、所望の接着強度等により適宜設定すればよいが、通常、0.2g/m程度であり、塗布量で0.05〜0.5g/mとなるようにするのがよく、好ましくは0.1〜0.3g/mである。
【0036】
アンカー層は、スキン層(A)の形成後、例えば、必要に応じて溶媒に溶解あるいは分散して塗布液としたアンカー層の構成素材を、スキン層(A)の表面に塗布する方法により形成できる。上記塗布液は、溶媒が水性あるいは有機溶剤のいずれであっても良い。なお、アンカー層の形成時には、スキン層(A)の表面に、慣用の表面処理、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線照射処理などを施すことが望ましい。
【0037】
本発明の防湿性積層フィルムは、塗布層側のスキン層(A)に対する塗布層(B)の密着強度(ラミネート強度)が100g/15mm幅以上であることが望ましい。密着強度が100g/15mm幅未満であると、塗布層が剥離しやすく、本発明の防湿性積層フィルムを用いた包装材の形成時などに、塗布層側に他のフィルムを積層した場合のラミネート強度が低下したり、塗布層側に他のヒートシール性フィルムを積層して封筒貼り形態などにヒートシールした場合のヒートシール強度が低下したりする。
【0038】
本発明においては、塗布層(B)として、ポリビニルアルコールと層状珪酸塩の混合物を用いることに特徴がある。
上記前者のポリビニルアルコールとしては、ビニルアルコールを主たるモノマー成分とするビニルアルコール共重合体が挙げられ、このビニルアルコール共重合体を使用することにより、塗布層は、酸素ガスへのバリア性に優れる。好ましくは、主たるモノマー成分であるビニルアルコールが、ビニルアルコール共重合体中の全モノマー成分に対し70〜100モル%、さらに好ましくは80〜98モル%であるのがよい。ビニルアルコールのモノマーが70モル%未満であると、防湿性が悪化し、好ましくない。上記ビニルアルコール以外のモノマー成分としては、酢酸ビニルやエチレンが挙げられる。
【0039】
また、上記後者の層状珪酸塩は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している珪酸塩であって、層状珪酸塩の具体例としては、アルミニウム、マグネシウムまたは鉄の含水珪酸塩である、クレー鉱物(粘土鉱物)の内、SiOの四面体結晶質にもとづく繰返し単位により層状構造をなす化合物であり、こうしたSiO四面体が六角網目の板状に連っており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオン、例えばAl3+、Fe2+、Mg3+などイオン結合したサンドイッチ状三層構造を有するものが挙げられる。このような三層構造を有するものとしては膨張性の格子を有するものと、例えばタルクのごとき非膨脹格子のものとがあるが、本発明においては、膨潤性が望ましく、すなわち前者の膨脹性格子を有するものが望ましく、このような膨脹性格子を有するものは、更に、無制限層膨脹を示すもの、例えばスメクタイトなどと、制限層膨脹を示す。例えば、ひる石などとに分類されるが、本発明の目的からは、前者の無制限膨脹のものが効果的であり好ましい。このような無制限膨脹スメクタイトグループとしては、数種の鉱物があり、占有されている中央層におけるオクタヘドラルサイトの数の差により、三価および二価に置換された中央カチオンを有するジオクタヘドラルスメクタイト及び一価に置換された二価カチオンを有するトリオクタヘドラルスメクタイトに分類される。
ジオクタヘドラルスメクタイトの例としては、モンモリロナイト、ビーデライト、ノントロナイトなどが、トリオクタヘドラルスメクタイトとしては、ヘクトライト、サポナイト、テニオライトなどが挙げられる。これらの鉱物は、天然のクレー中より産するもの、天然品より抽出したものの層間イオン交換処理を行った半合成品、及び天然品と類似構造を有するごとく合成した純合成品などがある。中でも、溶媒、例えば水に膨潤又はへき開する層状珪酸塩が好ましく用いられ、純度が99%以上である天然物のモンモリロナイトなどが挙げられる。そのモンモリロナイトは、層間に水分子を取り込み、層間隔が大きくなる特性(膨潤性)があり、水中で膨潤する。
【0040】
溶媒としては、層状珪酸塩の密度より小さい密度を有する溶媒を用いる。層状珪酸塩が天然の膨潤性粘土鉱物(クレー鉱物)である場合、該溶媒としては、水を用いることが好ましい。他の溶媒として、例えばメタノールやエタノ−ル等のアルコール類と水との混合溶媒が挙げられる。
【0041】
層状珪酸塩の大きさとしては、フィルムとした際の製膜性ないし成形性の点から、粒径(光回折により測定されるメジアン径)が2μm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点からは、粒径が1μm以下であることが好ましい。本発明の防湿性積層フィルムを透明性が重視される用途(例えば食品用途)に用いる場合には、この粒径は0.7μm以下であることが、特に好ましい。
【0042】
ポリビニルアルコールと層状珪酸塩の混合方法としては、均一に混合、分散する限り特に限定されないが、例えば、先ず、溶媒としての水に膨潤又はへき開した状態での層状珪酸塩を作製し、次に、そのような状態の層状珪酸塩を水に溶解させたポリビニルアルコール溶液へ分散させることにより行われる方法などが挙げられる。
その溶媒としての水に膨潤又はへき開した状態での層状珪酸塩の作製方法としては、水に混合分散させた層状珪酸塩を、高圧ホモジナイザーを用いて500kgf/cm以上の圧力条件下で2パス以上処理させ、水溶媒に膨潤又はへき開した分散状態にする方法などが挙げられる。
さらに、ポリビニルアルコール(PVA)と層状珪酸塩の混合割合としては、その重量比(PVA/層状珪酸塩)が85/15〜75/25であることが望ましい。ポリビニルアルコールの混合割合が85より多いと、所定の防湿性が得られず、一方、75より少ないとラミネート強度が劣化する。
【0043】
塗布層(B)は、スキン層(A)の形成後、例えば、必要に応じて溶媒に溶解あるいは分散して塗布液とした塗布層の構成素材を、スキン層(A)の表面に塗布する方法により形成できる。上記塗布液は、溶媒が水性あるいは有機溶剤のいずれであっても良いが、好ましくは水あるいは水と親水性溶媒の混合液であるのがよい。
また、塗布層(B)の重量は、0.3〜1g/m、好ましくは0.5〜0.7g/mである。塗布層(B)量が0.3g/mより少ないと、防湿性が発現せず、一方、1g/mより多いとコスト的に不利である。
さらに、塗布層を複数有する場合は、塗布層同士の間にアンカー層を有していても良い。
なお、塗布層には、本発明の作用を阻害しない範囲で、添加剤等の他の成分を含有していても良い。
【0044】
(3)防湿性積層フィルム(の製造方法)
本発明の防湿性積層フィルムの製造方法は、特に限定されず、通常一般に使用されるフィルムの成形方法および積層方法を使用できる。好ましくは、基材フィルム(A)としてのコア層(A)とスキン層(AとA)を共押出し法により同時に成形するのがよい。例えば、コア層とスキン層の形成に使用する樹脂等を、それぞれ個別の押出機に供給し、樹脂温度200〜260℃の範囲で融解混合させた後、スリット上の口金から共押出し法により積層することにより得られる。コア層(A)或いはスキン層(AとA)が多層構成であっても、同様の共押出し法を使用することができる。また、好ましくは共押出し後、二軸方向に延伸するのがよい。延伸することにより、水蒸気バリア性発現効果があがる。押出し条件および延伸条件は、使用する各層の素材や厚み、所望の物性等に応じて適宜設定できる。尚、塗布層(B)の積層方法は、前述のとおりである。
【0045】
上述の製造工程において、30〜55℃の比較的低温で12時間以上の熱エージング等の熱処理を施すことにより、積層フィルムの水蒸気バリア性が向上する。
【0046】
本発明の防湿性積層フィルムは、積層フィルムの全厚み(Tf)が好ましくは50μm以下であり、コア層の厚み(Tc)は、前述したように好ましくは1〜40μmであり、スキン層の厚み(Ts)(両側にスキン層がある場合はそれらの合計)が好ましくは0.8μm以上、より好ましくは1〜15μmである。また、塗布層(B)の厚み(Tb)は、特に限定されず、所望のバリア性等により適宜選定され、塗布層(B)の重量として、前述したように、0.3〜1g/mである。
【0047】
2.防湿性積層フィルムを用いた積層体
本発明の防湿性積層フィルムは、単独で包装材として使用可能であるが、例えばヒートシール性を有する無延伸ポリオレフィンフィルム、例えば、ポリプロピレン系樹脂(CPP)フィルムやポリエチレン系樹脂フィルム、などの他の素材と積層し、積層体の形状や形態で包装材として使用することが望ましい。積層体の構成や積層方法は、特に限定されない。
【0048】
無延伸透明ポリプロピレン系樹脂フィルムなどの無延伸ポリオレフィンフィルムは、本発明の防湿性積層フィルムの塗布層(B)に積層する(ラミネートする)ことにより、ヒートシール性などを有し、軽量で、塗布層との密着性にも優れた積層体としての包装材を得ることができる。
また、積層体としての包装材には、防湿性積層フィルムの塗布層面側に、印刷等により着色処理や画像形成処理を施すことができ、望ましい。
さらに、本発明においては、防湿性積層フィルムの塗布層に無延伸ポリオレフィンフィルムを積層(ラミネート)した積層体の総厚みは、70μm以下が望ましい。
【0049】
本発明の防湿性積層フィルムおよびそれを用いた積層体は、水蒸気バリア性に優れているために、特に、吸湿性のある又は吸湿性の高い内容物を外部の湿気から保護することができ、防湿性が必要なキャンディ、チョコレート、米菓、ビスケット、クッキー等の各種菓子類、海苔等の個別包装及び全体包装用として好適である。
【0050】
3.積層体を用いた包装物
本発明においては、上記の積層体、すなわち防湿性積層フィルムの特定の塗布層に無延伸ポリオレフィンフィルムを積層した総厚みが70μm以下の積層体を用いて、無延伸ポリオレフィンフィルム側に内容物を包装した包装物は、次の式を満足すれば、優れた防湿性を得ることができるという特徴を有している。
X=(0.9A+B・Aw)/(A+B)<0.4
[式中、Xは防湿性のパラメータであり、Aは基材フィルム(A)の水蒸気透過度(g/m/24h)を、Bは無延伸ポリオレフィンフィルムの水蒸気透過度(g/m/24h)を、及びAwは内容物の水分活性を示す。]
【0051】
前述したように、防湿性フィルムとして、二軸延伸されたポリプロピレンフィルムにポリビニルアルコールと層状珪酸塩の混合物からなる塗布層をコーティングしたものは、内容物の水分活性すなわち内部湿度に応じて、防湿性或いは防乾燥性(耐脱湿性)が変わり、すなわちフィルムの水蒸気透過度が変わり、言い替えると同じ積層フィルムでありながら、内容物の湿度が高く防乾燥性(耐脱湿性)が求められるときは、水蒸気透過度が比較的高くて防乾燥性(耐脱湿性)に劣るものの、内容物の湿度が低く防湿性が求められるときは、水蒸気透過度が低く防湿性に優れるという特徴を有している。上記の式は、このような技術的意味を表したものであって、積層フィルムを用いた積層体の塗布層の湿度レベル(即ち、上記防湿性のパラメータXに相当する)により積層体の水蒸気透過度が変わり、防湿性の湿度依存性があり、かつ塗布層の湿度レベル(パラメータX)が0.4未満、好ましくは0.35未満、より好ましくは0.30未満、特に好ましくは0.25未満であると、積層体が防湿性に優れ、内容物が吸湿しないことを表している。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例において、各種性状や性能の測定、評価は下記の試験方法により評価した。
(1)積層フィルム又は積層体の厚さ
実施例/比較例の積層フィルム又は積層体の厚さをデジタル厚み計により測定した。
【0053】
(2)ラミネート強度
実施例/比較例の積層フィルムに対し、ラミネート用接着剤(東洋モートン社製、TM329)とラミネート用接着剤(東洋モートン社製、CAT−8B)と酢酸エチルとをそれぞれ重量比で4.8:4.8:10.4となるように混合したラミネート接着剤を、乾燥後の重量で2〜2.5g/mとなるように上記フィルムの塗布層(B)表面に塗布し、乾燥後、ラミネート接着剤塗布面と、表面にコロナ処理(36dyne/cm以上の処理度)を施した、例えば、東セロ株式会社製の無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)のコロナ処理面とを圧着させた。圧着後24時間、40℃、30%RHの条件下で保存した。接着されたフィルムを、15mm幅の短冊状に裁断して試験片を作成し、JIS K 7127に準じて、試験片の一方の端部側の積層フィルムと無延伸ポリエチレンフィルムのそれぞれ端部を保持して、積層フィルムと無延伸ポリエチレンフィルムが剥離する方向に300mm/minの速度で引張った時の強度を測定し、密着強度とした。
【0054】
(3)水蒸気バリア性(水蒸気透過度)
水蒸気バリア性は、温度40℃、相対湿度90%の条件で、水蒸気過率測定装置(PERMATRAN W200、MOCON社製)により水蒸気透過速度(透過度)を測定、評価した。
【0055】
[実施例1]
層状珪酸塩として、モンモリロナイトであるクニミネ工業株式会社製の商品名「クニピアG」を水中に固形分濃度4%となるように分散し、液Aとした。この液Aを高圧分散装置であるニロ ソアビ(Niro Soavi)社製高圧ホモジナイザーの商品名「NS 3015」にて、圧力500kg/cmで2パスさせた。この液をB液とする。また、ポリビニルアルコール(PVA)として、クラレ製の商品名「クラレポバール PVA−103」を水に固形分濃度10%にて溶かした溶液をC液とした。B液44gとC液100g及び水を91g加えて撹拌した。これをD液とした。即ち、PVA/層状珪酸塩の重量比は、10/1.76=85/15である。
【0056】
基材として、ダイセル化学工業製のOPPフィルム「G1」(厚さ20μm)を用い、アンカーコート層として、東洋紡績製「バイロン30SS」をメチルエチルケトン(MEK)にて希釈し、塗布量が0.1g/mとなるようにグラビアコーターで塗布した。この上に、塗布層として、D液を乾燥後の塗布量が0.5g/mとなるようにグラビアコーターで塗布して、積層フィルムを作製した。
このフィルムの水蒸気透過度を、コート面を湿度0%にて測定した。また、このフィルムのコート面に、東セロ株式会社製の無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)をドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
尚、OPPフィルム「G1」(厚さ20μm)の水蒸気透過度は、7g/m・24hであった。また、無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)の水蒸気透過度は、24g/m・24hであった。
【0057】
[実施例2]
B液、C液、水の配合量を、それぞれ62g、100g、88gに変更した以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。PVA/層状珪酸塩の重量比は、10/2.48=80/20である。
このフィルムの水蒸気透過度を、コート面を湿度0%にて測定した。また、実施例1と同様に無延伸ポリエチレンフィルムをドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
コートを行う基材フィルムをダイセル化学工業製の「W1」(厚さ20μm)にする以外は、実施例1と同様にコーティングフィルムを作製した。
このフィルムの水蒸気透過度を、コート面を湿度0%にて測定した。また、このフィルムのコート面に東セロ株式会社製の無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)をドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
尚、基材フィルム「W1」(厚さ20μm)の水蒸気透過度は、4g/m・24hであった。また、無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)の水蒸気透過度は、24g/m・24hであった。
【0059】
[実施例4]
コートを行う基材フィルムをダイセル化学工業製の「W1H」(厚さ20μm)にする以外は、実施例1と同様にコーティングフィルムを作製した。
このフィルムの水蒸気透過度を、コート面を湿度0%にて測定した。また、このフィルムのコート面に東セロ株式会社製の無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)をドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
尚、基材フィルム「W1H」(厚さ20μm)の水蒸気透過度は、3g/m・24hであった。また、ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)の水蒸気透過度は、24g/m・24hであった。
【0060】
[比較例1]
実施例1で用いたダイセル化学工業製のOPPフィルム「G1」(厚さ20μm)をコートせずに、このフィルムの水蒸気透過度を測定した。また、このフィルムのコロナ処理面に東セロ株式会社製の無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)をドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0061】
[比較例2]
実施例2で用いたダイセル化学工業製のOPPフィルム「W1」(厚さ20μm)をコートせずに、このフィルムの水蒸気透過度を測定した。また、このフィルムのコロナ処理面に東セロ株式会社製の無延伸ポリエチレンフィルム「TUX−Tcs」(厚さ25μm)をドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0062】
[比較例3]
実施例1におけるB液、C液、水の配合量をそれぞれ166g、100g、67gに変更した以外は、実施例1と同様にしてフィルムを作製した。PVA/層状珪酸塩の重量比は、10/6.64=60/40である。
このフィルムの水蒸気透過度を、コート面を湿度0%にて測定した。また、実施例1と同様に、無延伸ポリエチレンフィルムをドライラミネートし、ラミネート強度を測定した。これらの結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
[実施例5]
実施例1で得られたラミネートフィルムで、内サイズで縦・横10cmの正方形四方袋を作製し、塩化カルシウム(水分活性0)を5g入れて密封した。これを40℃、90%の恒温恒湿槽にて保存し、72時間後の吸湿量からフィルムの透湿度を算出した。その結果を表2に示す。
【0065】
尚、フィルムの透湿度の算出方法は、以下の通りである。
フィルムの外側が内側に比べて、40℃において、湿度が10%高かった場合の1m当り、24時間当りの水の透過量を算出する。従って、計算式としては、次式のようになる。内容物の水分活性をAw、フィルム表面積をS(m)、72時間後の吸湿量をW(g)とすると、防湿性(水の透過度)P(g/m・24h)は、
P={(W/3)/S}/{(0.9−Aw)/0.1}
となり、この式から、フィルムの透湿度(水の透過量)(P)を算出する。
【0066】
[実施例6]
実施例3で得られたラミネートフィルムで、内サイズで縦・横10cmの正方形四方袋を作製し、水分活性0.1の米菓を入れて密封した後、それを40℃、90%の恒温恒湿槽にて保存し、72時間後の吸湿量からフィルムの透湿度を算出した。その結果を表2に示す。
【0067】
[実施例7]
実施例3で得られたラミネートフィルムで、内サイズで縦・横10cmの正方形四方袋を作製し、水分活性0.3のピーナツを入れて密封した後、それを40℃、90%の恒温恒湿槽にて保存し、72時間後の吸湿量からフィルムの透湿度を算出した。その結果を表2に示す。
【0068】
[実施例8]
実施例1の無延伸ポリエチレンフィルムを無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)にした以外は、実施例1と同様にラミネートフィルムを得た後、そのラミネートフィルムを用いて、実施例5と同様にして評価を行った。その結果を表2に示す。
尚、用いた無延伸ポリプロピレンフィルム(厚さ20μm)の水蒸気透過度は、17g/m・24hであった。
【0069】
[比較例4]
四方袋に入れる内容物を、水分活性が0.4のフリーズドライネギにする以外は、実施例5と同様にして評価を行った。その結果を表2に示す。
【0070】
[比較例5]
四方袋に入れる内容物を、水分活性が0.8の珍味にする以外は、実施例5と同様にして評価を行った。その結果を表2に示す。
【0071】
[比較例6]
比較例2で作製したラミネートフィルムを用いる以外は、実施例5と同様にして評価を行った。その結果を表2に示す。
【0072】
[比較例7]
実施例1で張り合わせた無延伸ポリエチレンフィルムの代わりに無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡(株)製「P1128」、厚さ40μm)をドライラミネート法により、ラミネートした。この「P1128」(厚さ40μm)の水蒸気透過度は、7g/m・24hであった。このラミネートフィルムで内サイズで縦・横10cmの正方形四方袋を作製し、水分活性0.1の米菓を入れて密封した後、それを40℃、90%の恒温恒湿槽にて保存し、72時間後の吸湿量からフィルムの透湿度を算出した。その結果を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
表1、2に示される結果からわかるように、実施例1〜8の積層フィルム又は積層体、或いはそれらを用いた包装物は、防湿性に優れていることが明らかである。
一方、比較例1〜7の積層フィルム又は積層体、或いはそれらを用いた包装物は、防湿性に優れていないこと、又はラミネート強度が低いことが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸されたポリプロピレンフィルムからなる基材フィルム(A)の片面に、ポリビニルアルコール(PVA)と層状珪酸塩との重量比(PVA/層状珪酸塩)が85/15〜75/25である混合物を塗布層(B)として設けた少なくとも二層の防湿性積層フィルム。
【請求項2】
層状珪酸塩は、水に膨潤させた後、高圧ホモジナイザーを用いて500kgf/cm以上の圧力条件下で2パス以上処理させ、水溶媒に膨潤又はへき開した分散状態であることを特徴とする請求項1に記載の防湿性積層フィルム。
【請求項3】
層状珪酸塩は、純度が99%以上であるモンモリロナイトであることを特徴とする請求項2に記載の防湿性積層フィルム。
【請求項4】
塗布層(B)の塗布量は、0.3〜1g/mであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防湿性積層フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の防湿性積層フィルムの塗布層面側に印刷を施し、その塗布層に無延伸ポリオレフィンフィルムをラミネートしてなる総厚みが70μm以下の積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を用いて、無延伸ポリオレフィンフィルム側に内容物を包装した包装物であって、次の式を満足することを特徴する包装物。
X=(0.9A+B・Aw)/(A+B)<0.4
[式中、Xは防湿性のパラメータであり、Aは基材フィルム(A)の水蒸気透過度(g/m/24h)を、Bは無延伸ポリオレフィンフィルムの水蒸気透過度(g/m/24h)を、及びAwは内容物の水分活性を示す。]

【公開番号】特開2006−316279(P2006−316279A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−167051(P2006−167051)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【分割の表示】特願2002−199636(P2002−199636)の分割
【原出願日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【出願人】(000002901)ダイセル化学工業株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】