説明

防湿栓装置

【課題】 用済み後の廃棄時等における乾燥剤の分離回収や分別廃棄のために、収容部材をキャップから容易に取り外し得るようにした防湿栓装置を提供する。
【解決手段】 内部に乾燥剤を収容した状態でキャップ3に対し内嵌させて装着した収容内筒部材5の底壁部51に、通気孔を兼ねる透孔511を形成し、その一側に操作片52の一端である結合部521を結合させ、他側に係合受け部512を形成する。操作片の中間部位である帯板部522を凸アールをなして湾曲させて突出させた状態で他端の係合部523を係合受け部に係合させる。帯板部を指で挟んで引っ張って係合を外し、外した係合部を手前側に自由端として突出させてつかめば引き剥がし操作力を収容部材に対し十分に加えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部を開閉するための蓋状のキャップに装着されて、乾燥剤(防湿剤)の吸湿作用により容器内の雰囲気を防湿又は調湿するための防湿栓装置に関し、特に用済み後の廃棄時において上記キャップから乾燥剤を容易に分離回収し得るようにして乾燥剤の分別廃棄を容易に実現し得るようにする技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の口部に対し、周壁と頂壁とから蓋体として構成されたキャップをねじ込むことにより閉栓したり、外すことにより開栓したりして開閉可能に構成された容器が知られている。そして、かかる容器内に湿気を嫌う例えば薬剤等を収納する場合には、上記キャップの内側に乾燥剤を収容させて、その乾燥剤の吸湿機能又は調湿機能により容器内の雰囲気を所定の状態に保持させるという防湿が行われている。
【0003】
このような防湿を実現させるために、キャップ内に蓋皿状の中栓部材を装着し、この中栓部材の内面とキャップの頂壁との間の収容空間に乾燥剤を収容したものが知られている(例えば特許文献1参照)。このものでは、中栓部材に貫通させた通気孔を通して容器内の雰囲気と乾燥剤とを接触させて、乾燥剤に容器内の雰囲気に含まれる水分を吸湿させて防湿を図るようにしている。
【0004】
そして、容器内に収納していた薬剤等が消費されて空になれば、上記のキャップ付きの容器ごと廃棄されることになる。この際には、例えばボールペンもしくはピンセットのような棒状の道具の先端で上記中栓部材をこじてキャップから取り外し内部の乾燥剤を中栓部材等から分離した上で、合成樹脂系のものと乾燥剤とを分別して廃棄することも可能であるが、このような中栓部材の取り外し作業を補助するための構成を中栓部材に付加したものも提案されている。例えば特許文献2には、中栓部材に円形の窓孔を貫通形成し、この窓孔を横切るブリッジのように配置した帯状部を中栓部材と一体に合成樹脂成形して連結したものが提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3291531号公報
【特許文献2】特開2002−326656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記の帯状部を円形窓孔に配置した上記提案のものにおいては、中栓部材をキャップから取り外すための引き剥がし力を中栓部材に加える上でその引き剥がし側への操作力をなかなか加え難く、乾燥剤を分離する作業が却って困難となる結果、初めから道具を使ってこじた方が楽ということにもなりかねない。すなわち、上記提案のものでは、帯状部の幅方向両端側に三日月状に残る窓孔部分に作業者の指の先端を入れて帯状部をその幅方向両側から摘むようにしているため、指に力が入り難く、その結果、中栓部材に対し十分な引き剥がし力を加え難く、中栓部材の容易な取り外し作業が阻害されるおそれがある。あるいは、上記窓孔部分に入れた指先端により上記帯状部をこじ上げてその一端を引きちぎるにしても、指に力が入り難くいため容易ではない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、用済み後の廃棄時等における乾燥剤の分離回収や、乾燥剤の分別廃棄等のために、乾燥剤を収容した部材を特別な道具を必要とすることなくかつ容易にキャップから取り外し得るようにした防湿栓装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、周壁部と頂壁部とから蓋状に形成され容器の口部を開閉可能に覆うキャップに対し、内部に乾燥剤を収容する収容空間と、その乾燥剤の機能を発揮させるための通気孔とを備えた収容部材が、上記キャップの下端開口側から頂壁部側への押し込み操作により嵌合又は係合されて上記キャップの閉栓状態で上記口部よりも径方向内方に位置付けられるように装着されてなる防湿栓装置を対象として、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記収容部材として、この収容部材に対しキャップの下端開口側への引き剥がし操作力を付与することによりキャップとの間の上記嵌合又は係合を外すための操作片を備えたものとし、上記操作片として、その一端が上記収容部材を構成する壁部に対し結合され他端が自由端を構成するように合成樹脂成形により上記収容部材と一体に形成することとした(請求項1)。
【0009】
この発明の場合、操作片が収容部材に対し一体に形成され、その操作片の他端が自由端とされているため、この自由端とされた他端側の部位を容易にしかも確実につかんで把持し得ることになる。このため、例えば容器の廃棄時には上記操作片をつかんで手前に引くことにより収容部材に対しキャップから引き剥がす側への操作力を容易に付与することが可能になる。そして、この引き剥がし操作力によりキャップと収容部材との間の上記嵌合又は係合が外され、収容部材がキャップから取り外される。これにより、収容空間に収容されていた乾燥剤がキャップや収容部材から分離して回収され、この乾燥剤を収容部材等の合成樹脂素材のものとは分別して廃棄することが容易に可能となる。又、従来はキャップに対し乾燥剤を収容させて収容部材を一旦装着させれば乾燥剤は交換不能であったが、本発明の場合には収容部材を容易に取り外し得てしかもこの収容部材をキャップ内に押し込み操作することにより再び装着されることから、上記操作片を用いた収容部材の取り外しにより乾燥剤の交換が可能となって防湿機能の高寿命化や防湿栓装置の再使用化をも図り得る。
【0010】
上記の如き操作片の配設部位としては次のようにすることができる。すなわち、上記収容部材としてキャップの下端開口側に臨む底壁部と、この底壁部の周囲から上記キャップの頂壁部側に立ち上がる周壁部とを備えたものとし、上記操作片の一端を上記収容部材の底壁部に結合する(請求項2)。このようにすることにより、操作片はキャップの下端開口側に臨んで位置することになり、操作片の他端側の部位をよりつかみ易くなって収容部材に対し引き剥がし操作力をより付与し易くなる。
【0011】
又、上記の操作片の構成として、以下のようにすることにより、収容部材の取り外し作業のより一層の容易化及び確実化や、通常使用時の操作片の安定的保持を図り得ることになる。すなわち、上記操作片の一端が結合される収容部材の上記壁部に、上記操作片の他端を係脱可能に係合させる係合受け部を一体に形成し、上記操作片として、その一端を素材の有する可撓性に基づき折曲可能に形成し、他端が上記係合受け部に係合した状態と、この係合が外れて他端がキャップの下端開口側に延びる状態とに状態変換可能に構成する(請求項3)。このようにすることにより、通常の防湿機能を発揮させての使用状態では操作片の他端を係合受け部に係合させた状態にして操作片を邪魔にならぬように保持させ、収容部材を取り外す際には上記係合を外して操作片の一端位置で折曲させることにより他端をキャップの下端開口側に延びた状態に変換させれば操作片の他端側の部位がよりつかみ易くかつ確実に引き剥がし操作力を加え得る状態にすることが可能になる。
【0012】
さらに、この操作片として、他端が上記係合受け部に係合した状態では一端から他端にかけての中間部位がキャップの下端開口側に凸アールとなるように屈曲されたものとし、この中間部位の屈曲に基づく弾性復元力を上記他端に対し係合受け部との係合状態を維持する側に作用させる構成とすることもできる(請求項4)。この場合には、操作片の他端が係合受け部に係合した状態では操作片の中間部位がキャップの下端開口側に対し凸アールをなして突出した状態、つまりアーチ状に突出した状態になり、この突出した中間部位を指で容易に挟むことが可能になり、容易に挟んで上記係合を外すことにより他端をキャップの下端開口側に延びた状態に容易に変換させ得ることになる。しかも、操作片の他端が係合受け部に係合した状態が上記中間部位の屈曲に基づく弾性復元力の作用を受けて確実に維持されるため、通常使用状態において操作片が不意に外れて邪魔になることも確実に防止される。
【0013】
又、上記収容部材の壁部に上記操作片の一端が結合される位置から上記屈曲状態の操作片が内外方向に変位し得る大きさの透孔を貫通形成する一方、上記収容部材を上記操作片が内部の収容空間側に位置した状態で合成樹脂成形することとすることができる(請求項5)。このようにした場合、上記収容部材をキャップに装着する際には、上記操作片の中間部位及び他端側を透孔内に差し入れ、他端側が透孔の外部に出るように中間部位を強制的に湾曲させながら操作片を押し込んで、その他端を係合受け部に係合させて組み付ける。そして、収容空間内に乾燥剤を収容させた状態で収容部材をキャップに押し込めば収容部材は装着されることになる。この状態では、操作片に何らかの物等が衝突して係合受け部との係合が万一外れたとしても、操作片の一端には上記の組み付け作業により収容空間側への復元力が作用しているため、操作片の他端側は収容部材の壁部等に接触した状態に維持され、操作片がキャップの下端開口から下方側等に垂れ下がったりはみ出したりしてしまうことが回避される。
【0014】
加えて、上記収容部材に、上記透孔から収容空間への粉状物の侵入を阻止しかつ通気のみを許容するよう不織布により構成されたフィルタを備えることとしてもよく、この場合のフィルタとしては、上記係合状態の操作片よりも上記透孔を挟んで収容空間側位置でその透孔を覆うように上記収容部材の壁部に接合したものとすることができる(請求項6)。このようにすると、特に凸アールをなして屈曲された中間部位に何らかの物が衝突して操作片に対しこの操作片を収容空間側に押し込もうとする外力が作用したとしても、あるいは、上記の収容空間側への復元力が強く作用したとしても、操作片がフィルタに当たることにより操作片の移動が規制又は阻止されることになる。これにより、上記の中間部位が凸アールをなして屈曲し下端開口側に突出した状態が保持される結果、指で容易に挟んで係合を外し得る状態に操作片を確実に維持させ得ることになる。その上に、比較的大きい透孔を塞いで粉状物が収容空間に侵入することを阻止し得る上に、通気可能であるため通気孔としての役割をも果たし得ることになる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、請求項1〜請求項6のいずれかの防湿栓装置によれば、操作片が収容部材に対し一体に形成され、その操作片の他端が自由端とされているため、この自由端とされた他端側の部位を容易にしかも確実につかんで把持することができるようになる。このため、例えば容器の廃棄時には上記操作片をつかんで手前に引くことにより収容部材に対しキャップから引き剥がす側への操作力を容易に付与することができ、この引き剥がし操作力によりキャップと収容部材との間の上記嵌合又は係合が外されるため、収容部材を、他の特別な道具を必要とすることなくキャップから容易に取り外すことができるようになる。これにより、収容空間に収容されていた乾燥剤をキャップや収容部材から分離して回収又は交換したり、乾燥剤を収容部材等の合成樹脂素材のものとは分別して廃棄することを容易に実現させることができるようになる。
【0016】
特に、請求項2によれば、操作片をキャップの下端開口側に臨んで位置させて、操作片の他端側の部位をよりつかみ易くすることができ、収容部材に対し引き剥がし操作力をより確実に付与することができるようになる。
【0017】
又、請求項3によれば、通常の防湿機能を発揮させる使用状態では操作片の他端を係合受け部に係合させた状態にして操作片を邪魔にならぬように保持させることができる一方、収容部材を取り外す際には上記係合を外して他端をキャップの下端開口側に延びた状態に変換させれば操作片の他端側の部位をよりつかみ易くかつ確実に引き剥がし操作力を加え得る状態にすることができる。
【0018】
請求項4によれば、操作片の他端が係合受け部に係合した状態では操作片の中間部位がキャップの下端開口側に対し凸アールをなして突出した状態になるため、この突出した中間部位を指で容易に挟むことができるようになる。このため、操作片の他端の係合解除、そして、引き剥がし操作力の付与に至る作業を容易かつ確実に実現させることができる。その上に、通常使用時における操作片の他端と係合受け部との係合状態を上記中間部位の屈曲に基づく弾性復元力の作用により確実に維持させることができる。
【0019】
請求項5によれば、操作片が衝突等の外力を受けて他端と係合受け部との係合が万一外れたとしても、操作片の組み付け作業により収容空間側への復元力が操作片に対し予め作用した状態にされているため、操作片がキャップの下端開口から下方側等に垂れ下がったりはみ出したりしてしまうことを確実に回避して、操作片の他端側を収容部材の壁部等に接触した状態に維持させることができる。
【0020】
更に、請求項6によれば、凸アールをなして屈曲された請求項4の中間部位にたとえ衝突外力が作用したとしても、あるいは、請求項5の収容空間側への復元力がたとえ過度に作用したとしても、操作片がフィルタに当たることにより収容空間側への移動を規制又は阻止することができる。これにより、操作片を上記中間部位が凸アールをなして屈曲して下端開口側に突出した状態に確実に保持して、指で容易に挟んでつかみ得る摘み部分として確実に維持させることができる。その上に、比較的大きい透孔を塞いで粉状物が収容空間に侵入することを阻止することができる上に、透孔部分に通気孔としての役割をも果たさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係る防湿栓装置を示し、符号2は容器、3はこの容器2の口部21を開栓又は閉栓するための蓋状のキャップ、4は乾燥剤(例えばシリカゲル)、5はこの乾燥剤4を内部に収容する収容部材、6はフィルタである。図1は上記キャップ3が容器2の口部21にねじ込まれて閉栓状態にされて乾燥剤4による防湿機能を発揮させている通常使用状態を示している。上記の閉栓状態では収容部材5が口部21の径方向内方側に入り込んだ状態に位置付けられるようになっている。
【0023】
上記容器2は、合成樹脂製ボトル又はガラス瓶等により口部21の中心軸Xを筒軸とする有底の円筒状容器として構成されたものであり、例えばカプセル,錠剤等の経口薬剤、又は粉状,粒状の栄養補助食品等の湿気を嫌うものを収容するために用いられるものである。そして、上記口部21の外周面にはキャップ3を閉栓させるためのネジ部211が形成されている。なお、本発明が適用される容器としては、特にその形状が限定されるものではなく、キャップ3により閉栓される口部21を有するものであればよい。以下の説明では上記中心軸Xが延びる方向を上下方向とし、図1の上を「上」、下を「下」として説明する。
【0024】
上記キャップ3は、下端が開口された周壁31と、この周壁31の上端側を覆う頂壁32とが合成樹脂成形により一体に形成されたものであり、周壁31の内周面には上記口部21のネジ部211に嵌合するネジ部311が一体に形成されている。なお、かかるキャップ3と口部21との閉栓のための手段は、上記のネジ部211,311による締結手段の他に、例えばキャップを口部に被せて押し込むことにより凹凸係合する係合手段等の他の手段を用いてもよく、これらに対しても本発明を適用することができる。
【0025】
上記収容部材5は図2又は図3にも示すように上側が開放され下側に有底とされた有底円筒状とされ、下側の底壁部51と、この底壁部51に連設された操作片52と、上記底壁部51の周囲から立ち上がる周壁部53と、この周壁部53の上端縁位置から外周側に突出するフランジ部54と、このフランジ部54の外周端縁から突出する複数の係合片55a,55a,…、55b,55b,…とが合成樹脂成形により一体に形成されたものである。上記の底壁部51と、周壁部53と、キャップ3の頂壁部32とにより区画されて乾燥剤4の収容空間50が形成されている。又、上記の各係合片55a,55bは、舌状とされ突出先端側にかけて徐々に薄肉になるように形成されて湾曲し易いようにされ、突出長さの長いもの55aと、短いもの55bとが交互にかつ周方向に所定間隔を隔てて配設されている。なお、上記フランジ部54の外周側位置から上向きに突出する無端環状の突起541は、閉栓状態でフランジ部54の下面に容器2の口部21の先端からの押圧力を受けてキャップ3の頂壁部32内面に密着することにより、上記収容空間50や容器2の内部空間を容器2の外部空間から遮断して密閉するようになっている。又、周壁部53の内周面には径方向内側に突出する凸部531が形成されている。
【0026】
上記底壁部51はキャップ3の下端開口から下方に臨む壁部であり、この底壁部51には所定形状及びサイズを有し容器2の内部と連通する通気孔を兼ねる透孔511と、係合受け部512とが一体に形成されると共に、上記操作片52がその一端である結合部521で連続して結合されている。上記透孔511は底壁部51の外径の略1/3程度の幅(図2参照)と、底壁部51の外径よりも僅かに短くてかつ上記操作片52の全長よりも所定長さだけ短い長さとを有する矩形状の開口として貫通形成されており、その透孔511の長手方向一側位置に上記操作片52の一端521が結合され、他側位置の開口縁下面側に上記係合受け部512が形成されている。そして、上記操作片52はその中間部位が上記透孔511の幅よりも若干狭い幅を有する帯板部522として形成され、この操作片52の他端を構成するフック状の係合部523がさらに狭い幅を有して形成されている。又、上記の係合受け部512が形成されている透孔511の他側位置側の一部分が他の部分よりも開口幅が狭められ上記操作片52の帯板部522の幅よりも微小寸法だけ狭い開口幅の狭窄部511aとされている。つまり、下から見ると、帯板部522の幅方向両側部分の奥に上記狭窄部511aが上記微小寸法分だけ重なった状態になるようにされている(図2の狭窄部511a参照)。
【0027】
上記操作片52は、図3に二点鎖線にて図示するように結合部521で上向きに屈曲されて帯板部522及び係合部523が収容空間50の側に入り込んだ状態で収容部材5と共に合成樹脂成形されて形成されるようになっている。この成形時には操作片52の帯板部522は延ばした状態でも、若干程度湾曲させた状態でもいずれの形状に成形してもよい。そして、収容部材5の組立時において、結合部521を支点として操作片52を下向きに折り曲げ、帯板部522を下向きに凸アールになるように屈曲(湾曲)させながら透孔511から外部下方に押し出してゆき、係合部523を係合受け部512に上から係合させる(図3に実線で示す状態参照)。この押し出しの際には、帯板部522の係合部523側の部分は上記の狭窄部511aを構成する斜面513に沿って下方に案内され遂に狭窄部511aを構成する端縁を乗り越えて外部下方に押し出されることになる。上記係合部523が係合受け部512に係合した係合状態では、上記操作片52はその帯板部522が収容部材5の底壁部51から下向きに凸アールをなして屈曲した状態となって外部下方に突出し、収容部材5に対し仮固定されることになる(図1又は図3参照)。
【0028】
この仮固定をさらに詳細に説明すると、図4(a)に上記の係合状態を示すように操作片52の係合部523の下向き面が係合受け部512の上向き面に当接して操作片52のそれ以上の下側への移動が阻止され、上記係合部523の先端面が係合受け部512の横向き端面に対し帯板部522の上記の屈曲に伴う弾性復元力を受けて押し付けられ、これにより、操作片52は係合受け部512に係合した状態に維持されることになる。その上、この係合状態においては、係合部523の背後に位置する帯板部522の幅方向両側部分(図2参照)は図4(b)に示すように上記幅方向両側部分よりも幅の狭い狭窄部511aを上から下に乗り越えた状態でその狭窄部511aの下側に位置することになる。このため、上記部分の帯板部522が上方に移動、つまり係合が外れて透孔511から収容空間50内の側に移動しようとしても、上記狭窄部511aによりそれ以上の上方移動は規制されることになる。以上、要するに、上記の係合状態においては、操作片52は収容部材5に対し下向きの相対移動が係合部523と係合受け部512との係合により阻止され、上向きの相対移動が上記狭窄部511aにより規制され、かつ帯板部522の湾曲を延ばす側の相対移動も阻止された状態で、帯板部522が下向きに凸アールをなして突出した状態に確実に維持されることになる。
【0029】
このような柔軟性あるいは弾性復元力を発揮する程度の可撓性ある操作片52を実現し得る合成樹脂素材としては、次のようなものが挙げられる。例えばPE−LD(低密度ポリエチレン),PE−LLD(リニア低密度ポリエチレン),PE−MD(中密度ポリエチレン)等のオレフィン系の素材を単独で使用したり、あるいは、これらのいずれかの素材に対しPE−HD(高密度ポリエチレン),EVA(エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂)もしくはエラストマー等をブレンドしたものを使用したり、すればよい。
【0030】
図1又は図4に示すフィルタ6(図3では図示を省略)はメッシュ地又は不織布等により通気性を有するように構成され、透孔511を通して収容空間50内に入り込もうとする粉状物を阻止するために上記透孔511を覆うように取り付けられている。つまり、フィルタ6は、容器2内に収納する収納物が錠剤等ではなくて粉末又は顆粒等の粉状物であるような場合に、通気孔をも兼ねる透孔511を覆うように取り付けられ、これにより、通気のみを許容しつつ、収容空間50内への上記粉状物の侵入を阻止すると同時に、逆方向に収容空間50内にある乾燥剤の粒状物等の容器2内への侵入をも阻止するようになっている。本実施形態の場合には、収容部材5の合成樹脂成形、そして操作片52を上記の係合状態に移動させる組立作業の後に、透孔511を覆うように接着もしくは溶着等の手段により接合されて取り付けられるものである。具体的には、フィルタ6として極薄シート状の不織布を採用して収容空間50内への微粉末の侵入を阻止し通気のみ許容するようにする。このような不織布としては例えばデュポンタイベック(商標名)が挙げられる。これは0.5〜10μm径の連続性極細ポリエチレン繊維に高熱を加えて結合させて通気性を有するシート状にした不織布である。そして、合成樹脂成形した収容部材5の操作片52を収容空間50内から上述の如く透孔511を通して外部に押し出し、その係合部523を係合受け部512に係合させて操作片52を係合状態にした後に、上記透孔511を収容空間50側から、つまり底壁部51の内面側から上記フィルタ6で覆い、このフィルタ6の周囲を熱溶着又は超音波溶着してフィルタ6を収容部材5の底壁部51の内面(透孔511を挟んで収容空間側位置)に接合固定する。
【0031】
以上の実施形態の防湿栓装置を組み付けるには、まず、操作片52を上記の係合状態にした後の収容部材5の収容空間50に例えばシリカゲルにより構成された乾燥剤4を上から入れ、この状態でフランジ部54の側からキャップの下端開口から頂壁部32の側に押し込んで行く。この押し込みによりフランジ部54の周囲の各係合片55a,55bがキャップ3の内奥部位の周壁部31の内周面にある凸状部分を乗り越えた状態で内嵌されて装着され、収容部材5が内部に乾燥剤4を収容した状態でキャップ3に装着固定されることになる(図1参照)。
【0032】
容器2内の収納物(例えば錠剤等の薬剤)が消費されて空になると、キャップ3を容器2の口部21から外して開栓し、収容部材5をキャップ3から取り外して乾燥剤4を分離回収する。このための作業は次のようにすればよい。図5に示すように開栓状態のキャップ3の下端開口側から操作片52の帯板部522に指をかけ、帯板部522をその幅方向両側から挟み込んで手前側に引っ張る。すると、係合部523と係合受け部512との係合が外れて操作片52は結合部521を支点として折れ曲がり(図3に一点鎖線で示す操作片52参照)、操作片52はキャップ3の下端開口から手前に延びて係合部523側が突出した状態に変換することになる。この操作片52をつかんで手前に引っ張れば、つまり収容部材5に対しキャップ3から引き剥がす側の力を作用させれば、各係合片55a,55bがキャップ3の周壁部31内面から滑って外れ(係合又は嵌合の解除)、収容部材5は容易にキャップ3から取り外されることになる。この取り外された収容部材5内から乾燥剤4を回収すれば、この乾燥剤4を分別廃棄させることができる。つまり、収容部材5などの合成樹脂素材により形成されたものと、乾燥剤4とを確実に分別した状態でそれぞれを廃棄することが可能になる。
【0033】
上記の収容部材5の取り外し作業においては、操作片52が底壁部51から凸アールをなして突出しているため、幅方向両側から指で容易に挟んでつかむことができる。つまり、引っ張り力等の力を容易に加えることができる。そして、係合を外した後は他端部である係合部523の側が完全に自由端となって操作片52が底壁部51から突出した状態になるため、この操作片52をつかめば収容部材5を取り外すための引き剥がし操作力を容易かつ確実に加えることができるようになる。このように収容部材5の取り外し作業が特別な道具を用いることなく容易にかつ確実に行うことができる結果、乾燥剤4の分離回収や、分別廃棄を容易にかつ確実に実現させることができるようになる。
【0034】
また、上記の収容部材5の取り外し作業は、透孔511にフィルタ6が固定されていると、より一層確実に実現させることができるようになる。すなわち、フィルタ6が透孔511を覆った状態で固定されているため、操作片52の凸アールをなして突出している帯板部522に対し何らかの物が当たって操作片52を透孔511側(収容空間50側)に押し込むような力がたとえ作用したとしても、上述の狭窄部511aによる上方移動規制に加えて上記フィルタ6により操作片52の上方移動が二重に阻止される。例えば、係合部523が係合受け部512から上向き(収容部材5の内方側の向き)に外れ、さらに上記狭窄部511aを下から上にたとえ乗り越えようとしたとしても、その係合部523がフィルタ6に当たってこのフィルタ6により係合部523のそれ以上の移動が阻止されるため、上記帯板部522は上記の凸アールをなした状態に確実に保持されることになる。つまり、この凸アールをなして突出した摘み部分(帯板部522)が上述の如き指で容易に挟んでつかむことができる状態に確実に維持されることになる。これにより、収容部材5の取り外し作業をより一層確実に行うことができるようになる。
【0035】
さらに、上述の如く操作片52が収容空間50内に位置するように合成樹脂成形し、その後に操作片52を透孔511から外部に押し出すようにする場合に、通気孔としては必要以上に大きい透孔511を形成することになるものの、そのような比較的大きい透孔511にフィルタ6を固定して覆うようにしているため、容器2内の収納物が粉末や顆粒等の粉状物であっても収容空間50への侵入を確実に阻止することができる。つまり、フィルタ6は、比較的大きい開口部分である透孔511を塞いで粉状物の侵入を阻止する役割、操作片52の上側(収容空間50側、つまり凸アールをなして突出した部分が小さくなる側)への移動を規制又は阻止して操作片52の摘み部分が突出した状態に保持する役割、及び、透孔511を通気孔として機能させる役割をそれぞれ果たす。
【0036】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。
【0037】
上記実施形態では、キャップ3に対する収容部材5の装着を、フランジ部54の周囲から突出させた係合片55a,55bと、キャップ3の周壁部31の内周面との係合又は嵌合により行うようにしているが、これに限らず、例えば収容部材としてフランジ部及び係合片を省略したもので構成し、キャップの頂壁の内面に収容部材の周壁部を固定するための環状の取付部を下向きに突出させ、この環状の取付部と収容部材の周壁部とがキャップの下端開口からの押し込み操作力を受けて係合又は嵌合するように構成してもよい。
【0038】
上記実施形態では操作片52の他端を係合部523とし、通常使用状態ではその係合部523を係合受け部512に対し係合させた状態にしているが、これに限らず、最も単純には収容部材の底壁部に一端を結合した操作片の他端を垂下させて完全に自由端にしておいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態の閉栓状態を示す一部省略断面図である。
【図2】図1の収容部材の底面図である。
【図3】図1の収容部材を半分に切断した状態を示す一部省略斜視図である。
【図4】操作片の係合状態を示す部分拡大図であり、図4(a)は図1の状態での部分拡大図、図4(b)は図4(a)のA−A線における一部省略断面説明図である。
【図5】開栓状態のキャップを下端開口側から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
2 容器
3 キャップ
4 乾燥剤
5 収容部材
6 フィルタ
21 口部
31 周壁部
32 頂壁部
50 収容空間
51 底壁部(収容部材を構成する壁部)
52 操作片
53 周壁部
511 透孔(通気孔)
512 係合受け部
521 結合部(一端)
522 帯板部(中間部位)
523 係合部(他端)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部と頂壁部とから蓋状に形成され容器の口部を開閉可能に覆うキャップに対し、内部に乾燥剤を収容する収容空間と、その乾燥剤の機能を発揮させるための通気孔とを備えた収容部材が、上記キャップの下端開口側から頂壁部側への押し込み操作により嵌合又は係合されて上記キャップの閉栓状態で上記口部よりも径方向内方に位置付けられるように装着されてなる防湿栓装置であって、
上記収容部材はこの収容部材に対しキャップの下端開口側への引き剥がし操作力を付与することによりキャップとの間の上記嵌合又は係合を外すための操作片を備え、
上記操作片はその一端が上記収容部材を構成する壁部に対し結合され他端が自由端を構成するように合成樹脂成形により上記収容部材と一体に形成されている
ことを特徴とする防湿栓装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防湿栓装置であって、
上記収容部材はキャップの下端開口側に臨む底壁部と、この底壁部の周囲から上記キャップの頂壁部側に立ち上がる周壁部とを備え、
上記操作片の一端は上記収容部材の底壁部に結合されている、防湿栓装置。
【請求項3】
請求項1に記載の防湿栓装置であって、
上記操作片の一端が結合される収容部材の上記壁部には上記操作片の他端を係脱可能に係合させる係合受け部が一体に形成され、
上記操作片は、その一端が素材の有する可撓性に基づき折曲可能に形成され、他端が上記係合受け部に係合した状態と、この係合が外れて他端がキャップの下端開口側に延びる状態とに状態変換可能に構成されている、防湿栓装置。
【請求項4】
請求項3に記載の防湿栓装置であって、
上記操作片は、他端が上記係合受け部に係合した状態では一端から他端にかけての中間部位がキャップの下端開口側に凸アールとなるように屈曲され、この中間部位の屈曲に基づく弾性復元力が上記他端に対し係合受け部との係合状態を維持する側に作用するように構成されている、防湿栓装置。
【請求項5】
請求項4に記載の防湿栓装置であって、
上記収容部材の壁部には上記操作片の一端が結合される位置から上記屈曲状態の操作片が内外方向に変位し得る大きさの透孔が貫通形成される一方、上記収容部材は上記操作片が内部の収容空間側に位置した状態に合成樹脂成形されている、防湿栓装置。
【請求項6】
請求項5に記載の防湿栓装置であって、
上記収容部材は上記透孔から収容空間への粉状物の侵入を阻止しかつ通気のみを許容するよう不織布により構成されたフィルタを備えており、このフィルタは上記係合状態の操作片よりも上記透孔を挟んで収容空間側位置でその透孔を覆うように上記収容部材の壁部に接合されている、防湿栓装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−89102(P2006−89102A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−278695(P2004−278695)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】