説明

防滴コネクタ及びその接続構造

【課題】 水滴の浸入を防いで腐食、抵抗値の上昇、及び接続の不安定化を抑制できる防滴コネクタ及びその接続構造を提供する。
【解決手段】 防滴コネクタを、樹脂製のハウジング1と、ハウジング1に内蔵されてその表裏両面から両端部がそれぞれ露出する複数の導電ピン10と、複数の導電ピン10の少なくともハウジング1の表面から露出する露出部を被覆する弾性変形可能な防滴カバー20と、防滴カバー20に着脱自在に嵌合される抑え枠体30とから構成する。そして、防滴コネクタを、経肺投薬装置の回路基板40と交換可能なカートリッジ50の電極間に挟持させてこれらを電気的に導通接続する。防滴カバー20が導電ピン10の露出部を覆い、導電ピン10の胴体ピン11と可動ピン12の間に水滴が浸入するのを抑制防止するので、導電ピン10の腐食、抵抗値の上昇、及び接続の不安定化を招くおそれがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば経肺投薬装置の回路基板とカートリッジとを電気的に接続する防滴コネクタ及びその接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の回路基板と電気接合物との電気的な導通接続には、圧接型コネクタが使用されているが、この種の圧接型コネクタは、図示しない樹脂製のハウジングと、このハウジングに内蔵されてその両面から両端部がそれぞれ露出する複数の導電ピンとを備え、携帯電話等からなる電子機器の回路基板と電気接合物の電極間に介在されてこれらを電気的に導通接続する。
【0003】
各導電ピンは、ハウジングに内蔵される中空の胴体ピンと、この胴体ピンに往復動可能に挿入されて先端部がハウジングから突出する可動ピンと、これら胴体ピンと可動ピンとの間に介在されて可動ピンを胴体ピンから離隔する方向に弾圧付勢するコイルばねとを備えて構成されている(特許文献1参照)。
【0004】
ところで近年、痛みを伴う注射の代わりに霧状の薬剤を口から吸い込むことにより、肺から全身に投薬する経肺投薬装置が注目を集めている(特許文献2参照)が、この経肺投薬装置の回路基板と交換可能な薬剤のカートリッジとの導通接続に従来の圧接型コネクタを使用することができれば、軽量化や小型化を図ることができ、実に有益である。
【特許文献1】特開2002‐100431号公報
【特許文献2】特開2004‐350971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来における圧接型コネクタは、薬剤等の水滴の付着を前提とすることなく構成されているので、経肺投薬装置の回路基板とカートリッジとの導通接続にそのまま使用される場合には、導電ピンの胴体ピンと可動ピンとの間に水滴が浸入し、腐食、抵抗値の上昇、及び接続の不安定化を招くという大きな問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、水滴の浸入を防いで腐食、抵抗値の上昇、及び接続の不安定化等を抑制することのできる防滴コネクタ及びその接続構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、ハウジングに内蔵されてその両面から両端部が露出する導電ピンと、この導電ピンの少なくともハウジングから露出する露出部を被覆する防滴カバーとを備えたものであって、
導電ピンは、ハウジングに内蔵される導電性で中空の胴体ピンと、この胴体ピンに往復動可能に挿入されて先端部がハウジングから突出する導電性の可動ピンと、これら胴体ピンと可動ピンとの間に介在されて可動ピンを胴体ピンから離れる方向に勢い付かせる導電性のばね部材とを含み、
防滴カバーを弾性変形可能な断面略U字形に形成したことを特徴としている。
【0008】
なお、導電ピンの胴体ピンと可動ピンとの対向面のいずれか一方を、可動ピンの往復動方向に対して傾斜させ、可動ピンの先端部先端面を略平坦面あるいは断面略半円弧形に形成することができる。
また、導電ピンの可動ピンの周面に、防滴カバーの平坦部と嵌まり合う嵌合溝を形成することが好ましい。
【0009】
また、可動ピンの先端部に、導電エラストマーと導電細線のいずれかを取り付けて防滴カバーの平坦部から露出させることができる。
また、防滴カバーに、荷重を支持するエラストマーを内蔵することができる。
また、防滴カバーの自由端部に、ハウジングに接触するフランジを形成することができる。
【0010】
また、ハウジングの周面に被係止部を形成し、防滴カバーのフランジに、ハウジングの被係止部に係わり合う係止部を形成することも可能である。
また、防滴カバーに着脱自在に嵌められ、防滴カバーのフランジに支持される抑え中空体を含むと良い。
また、防滴カバーのフランジと抑え中空体の対向面のいずれか一方に凹部を、他方には凹部と嵌まり合う凸部をそれぞれ形成することも可能である。
【0011】
さらに、本発明においては上記課題を解決するため、対向する複数の電気接合物の電極間に、請求項1ないし9いずれかに記載の防滴コネクタを介在して導通するようにしたことを特徴としている。
【0012】
ここで、特許請求の範囲におけるハウジング、導電ピン、防滴カバーは、単数複数を特に問うものではない。ハウジングは、板形、ブロック形、筒形等を特に問うものではない。また、防滴カバーは、弾性変形可能なエラストマーやシートを使用して断面U字形、あるいはこれに類似するキャップ形、有底筒形等に形成することができる。導電ピンの胴体ピンは、中空の有底筒形でも良いし、中空の凸字形等でも良い。また、可動ピンは、防滴カバーの平坦部を貫通していても良いし、そうでなくても良い。
【0013】
抑え中空体は、リング形や枠形等に形成することができる。また、電気接合物には、少なくともプリント回路板、フレキシブル基板、医療用の部品、液晶部品、音響部品、小型モータ、通信部品等が含まれる。さらに、防滴コネクタは、経肺投薬装置の回路基板と薬剤のカートリッジとの電気的な接続に使用されるのが主ではあるが、これに限定されるものではない。例えば、カメラ、携帯電話、玩具の電気接合物同士の接続や水滴の付着が殆ど考えられない電気接合物同士の接続に使用しても良い。
【0014】
本発明によれば、複数の電気接合物を電気的に接続する場合には、電気接合物の電極に防滴コネクタの導電ピンの胴体ピンを接続し、導電ピンの可動ピンと他の電気接合物の電極とを接触させれば、複数の電気接合物を接続することができる。
この際、防滴コネクタの可動ピンが他の電気接合物との接触に応じて往復動するが、これに伴い防滴カバーが変形する。また、この防水機能を有する防滴カバーが少なくとも導電ピンの胴体ピンと可動ピンとの間に液体が浸入するのを抑制する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水滴の浸入を防いで腐食、抵抗値の上昇、及び接続の不安定化等を抑制することができるという効果がある。
また、導電ピンの可動ピンの周面に、防滴カバーの平坦部と嵌まり合う嵌合溝を形成すれば、可動ピンが防滴カバーを貫通して突出する場合、可動ピンと防滴カバーとの間が流体の浸入路になるのを抑制することができる。
また、防滴カバーの自由端部に、ハウジングに接触するフランジを形成すれば、接触面積の増加により、ハウジング上の防滴カバーが傾いてその姿勢が悪化するのを防ぐことができる。
【0016】
また、抑え中空体により防滴カバーのフランジを抑えるようにすれば、ハウジングと防滴カバーとの間の隙間から液体や水滴が浸入するのを抑制することが可能になる。
さらに、防滴カバーのフランジと抑え中空体の対向面のいずれか一方に凹部を、他方には凹部と嵌まり合う凸部をそれぞれ形成すれば、凸部と凹部とにより、抑え中空体の荷重を低減して電気接合物がダメージを蒙るのを抑制することが可能になる。さらにまた、凸部と凹部の噛み合いにより、シール機能を得ることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態における防滴コネクタは、図1ないし図6に示すように、樹脂製のハウジング1と、このハウジング1に内蔵されてその表裏両面から両端部がそれぞれ露出する複数の導電ピン10と、この複数の導電ピン10の少なくともハウジング1の表面から露出する露出部を被覆する弾性変形可能な防滴カバー20と、この防滴カバー20に嵌合される抑え枠体30とを備え、経肺投薬装置の回路基板40と交換可能な薬剤のカートリッジ50の電極間に挟持されてこれらを電気的に導通接続するよう機能する。
【0018】
ハウジング1は、図1ないし図6に示すように、所定の樹脂を使用して基本的には平面略長方形の平坦な板に成形され、長手方向に複数の貫通した取付孔2が間隔をおき一列に穿孔されており、各取付孔2の表面周縁部には、案内機能や補強機能を発揮するボス3が一体形成される。
【0019】
このハウジング1の所定の樹脂としては、耐熱性、寸法安定性、成形性に優れる汎用のエンジニアリングプラスチック、具体的には、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、ポリアミド9T、変性ポリアミド6T、ポリプロピレン、ポリカーボネート等があげられる。これらの中でも、耐衝撃性、耐水性、耐酸性に優れるポリフェニレンサルファイドが最適である。
【0020】
各導電ピン10は、図5や図6に示すように、ハウジング1の取付孔2内に圧入して嵌着固定される中空の胴体ピン11と、この胴体ピン11内に往復動可能に挿入される可動ピン12と、これら胴体ピン11の内底面と可動ピン12の底面との間に介在されるコイルばね17とを備えて構成される。
【0021】
この導電ピン10の胴体ピン11と可動ピン12は、ニッケルメッキや金メッキ処理された導電性の材料、例えば銅、真鍮、アルミニウム等を使用して製造される。また、コイルばね17は、リン青銅、ベリリウム銅、ばね鋼、ピアノ線材等の金属線、あるいはこれらの金属線にニッケルメッキや金メッキ処理を施した金属細線を使用して製造される。
【0022】
胴体ピン11は、断面略U字形を呈した有底円筒形に形成され、端部である平坦な底部がハウジング1の裏面に揃えられて露出しており、この底部が回路基板40上の電極にはんだを介して導通接続される。
【0023】
可動ピン12は、胴体ピン11の内周面にスライド可能に摺接する円板部13と、この円板部13から起立した円柱形のピン部14とを備えた中実の凸字形に形成され、円板部13よりも小径のピン部14がボス3を貫通してハウジング1の表面から上方に貫通突出し、このピン部14の先端部15が電極としてカートリッジ50の電極に弾発的に接触する。
【0024】
この可動ピン12は、胴体ピン11の平坦な内底面に対向する円板部13の底面が往復動方向に対して10〜30°、好ましくは15°程度の角度で傾斜形成され、ピン部14の周面に防滴カバー20に嵌合する嵌合溝16がエンドレスに切り欠かれており、ピン部14の先端部15先端面が曲率の小さい断面略半円弧形に形成される。
【0025】
コイルばね17は、胴体ピン11に嵌入され、可動ピン12を胴体ピン11から離隔する方向、換言すれば、ハウジング1の表面方向(図1の上方向)に弾圧付勢するよう機能する。
【0026】
防滴カバー20は、図2ないし図6に示すように、ハウジング1の表面の大部分に隙間をおいて対向し、導電ピン10の可動ピン12に貫通される平面略長方形の平坦部21と、この平坦部21の周縁部からハウジング1の表面方向、換言すれば、下方に伸びる短い立面壁22とを備えた底の浅い横長の断面略U字形に成形され、立面壁22の自由端部に、ハウジング1の表面周縁部に積層接着される平面枠形のフランジ23が外方向に向け水平に形成される。
【0027】
この防滴カバー20は、例えば耐薬品性や耐候性等に優れるシリコーンゴム、フッ素系ゴム等からなる所定のエラストマーを使用して成形され、平坦部21の長手方向には、可動ピン12の嵌合溝16にきつく密嵌する複数の貫通孔24が間隔をおき一列に穿孔される。防滴カバー20はシリコーンゴムにより成形される場合には、10〜70°Hs、好ましくは20〜50°Hsの硬度とされ、貫通孔24は可動ピン12に密接するようその径よりも小径に穿孔される。
【0028】
抑え枠体30は、図1、図2、図6に示すように、所定の材料を使用してハウジング1の表面や防滴カバー20よりも大きい平面略長方形の平坦な枠板に成形され、中空部が防滴カバー20に外側から着脱自在に密嵌され、かつ防滴カバー20の平坦なフランジ23に水平に搭載支持されることにより、防滴カバー20の平坦部21表面に揃えられてハウジング1の内部に水滴が浸入するのを防止するよう機能する。
【0029】
この抑え枠体30の所定の材料としては、耐熱性、寸法安定性、成形性に優れる汎用のエンジニアリングプラスチック、具体的には、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンやステンレス等があげられる。
【0030】
上記において、経肺投薬装置の回路基板40とカートリッジ50とを導通接続する場合には、先ず、回路基板40の電極に防滴コネクタの胴体ピン11をはんだにより実装し、防滴コネクタの防滴カバー20に抑え枠体30を圧接して密嵌し、その後、防滴コネクタの可動ピン12にカートリッジ50の電極を上方から圧接すれば、回路基板40とカートリッジ50とを導通接続することができる。
【0031】
この際、防滴コネクタの防滴カバー20から突出した可動ピン12がカートリッジ50との接触に応じ、コイルばね17を圧縮しつつ往復動するが、これに伴い防滴カバー20の平坦部21が往復動方向に追従して変形する。
【0032】
上記によれば、防水機能を有する防滴カバー20が複数の導電ピン10の先端部以外の大部分を覆い、この導電ピン10の胴体ピン11と可動ピン12との間に薬剤からなる水滴が浸入するのを抑制防止するので、導電ピン10の腐食、抵抗値の上昇、及び接続の不安定化を招くおそれが全くない。また、可動ピン12の先端部15先端面を円弧形に形成するとともに、可動ピン12の底面を10〜30°の角度で傾斜させ、この底面にコイルばね17を圧接して胴体ピン11の内周面と可動ピン12の周面とを接触させるので、接触を確実化してきわめて良好な導電性や低抵抗化を得ることができる。
【0033】
また、可動ピン12の底面が10°未満の角度で傾斜するのではないので、胴体ピン11の内周面と可動ピン12とを確実に接触させることができる。また、可動ピン12の底面が30°を超える角度で傾斜するのではないので、可動ピン12のスライドに支障を来たすことがない。また、可動ピン12の先端部15先端面が尖っておらず、接触面積の拡大が期待できる断面略半円弧形なので、例えカートリッジ50の電極が小さくても、非接触や位置ずれを防止することが可能になる。
【0034】
また、可動ピン12の嵌合溝16と防滴カバー20の貫通孔24とが隙間なく密嵌するので、可動ピン12と防滴カバー20との間から水滴が浸入するのを有効に抑制防止することが可能になる。また、抑え枠体30が防滴カバー20の周囲のフランジ23を強固に抑えることにより、ハウジング1と防滴カバー20との間に隙間が生じるのを防ぐことができるので、ハウジング1、導電ピン10、及び経肺投薬装置の導通部分に水滴が浸入するのを有効に抑制防止することが可能になる。
【0035】
さらに、防滴カバー20のフランジ23に抑え枠体30を水平に搭載支持させるので、抑え枠体30の姿勢の安定化が大いに期待できる。さらにまた、防滴カバー20が弾性変形可能なエラストマー製であるから、良好なクリック感が大いに期待できる。
【0036】
次に、図7は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、導電ピン10の可動ピン12を防滴カバー20の平坦部21よりも低く短く形成して平坦な先端部15先端面には電極として機能する円板形の導電エラストマー18を接着し、この導電エラストマー18を防滴カバー20の貫通孔24に嵌着して防滴カバー20の平坦部21表面から露出させるようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0037】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、導電ピン10や防滴カバー20の構成の多様化を図ったり、可動ピン12の周面から嵌合溝16を省略して構成の簡素化を図ることができるのは明らかである。
【0038】
次に、図8は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング1の全周面に平面略枠形の被係止部4を突出形成し、防滴カバー20のフランジ23に、下方に伸びてハウジング1の被係止部4に着脱自在に嵌合係止する断面略L字形の係止部25を屈曲可能に一体形成するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0039】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、相対向する被係止部4と係止部25との係止により、防滴カバー20の内部に水滴が浸入するのをさらに有効に抑制防止することができるのは明らかである。
【0040】
次に、図9は本発明の第4の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング1の表面に大きな単一の防滴カバー20を装着するのではなく、複数の防滴カバー20Aを横一列に並べ、各防滴カバー20Aに、導電ピン10の少なくともハウジング1の表面から露出する露出部を被覆させるようにしている。
防滴カバー20Aは、断面略U字形を呈したキャップ形に成形され、立面壁22の自由端部には、ハウジング1の表面に重なるフランジ23が外向きに一体形成される。
【0041】
この場合、抑え枠体30は、図示しないが、ハウジング1の表面に着脱自在に搭載される板に、防滴カバー20Aに嵌合する複数の嵌合孔が横一列に並べて穿孔されることにより抑え中空体に形成される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、防滴カバー20Aや抑え枠体30の構成、及びアセンブリの多様化を図ることができるのは明らかである。
【0042】
次に、図10は本発明の第5の実施形態を示すもので、この場合には、防滴カバー20Aのフランジ23表面にリブ状の凸部26を平面枠形に突出形成し、抑え枠体30の下面に凹部31を平面枠形に切り欠き、これら凸部26と凹部31とを相互に密嵌するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、防滴カバー20のフランジ23に抑え枠体30を圧接する際、防滴カバー20Aのフランジ23に抑え枠体30の下面を単に接触させるのではなく、接触面積の小さい凸部26と凹部31とを密接させることにより、抑え枠体30の荷重を低減、分散して回路基板40やカートリッジ50の電極がダメージを蒙るのを抑制することができるのは明白である。また、弾性変形可能な凸部26と凹部31とが相互に噛合してシールガスケットとして機能するので、防滴機能のさらなる向上が期待できる。
【0044】
次に、図11は本発明の第6の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング1を大きな板形ではなく、小さな円筒形に形成して単一の導電ピン10を内蔵し、ハウジング1の表面に断面略U字形を呈した単一の防滴カバー20Aを接着してその内部には略筒形の荷重支持エラストマー27を内蔵するようにしている。
防滴カバー20Aは、断面略U字形を呈したキャップ形に成形され、フランジ23が省略される。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0045】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、反発力を有する荷重支持エラストマー27により、防滴カバー20Aが必要以上に凹んだり、凹んだままで復帰しないのを抑制防止することができるのは明白である。また、フランジ23や抑え枠体30を省略して構成の簡素化や部品点数の削減を図ることができる。
【0046】
次に、図12、図13は本発明の第7の実施形態を示すもので、この場合には、ハウジング1を円筒形の第一、第二のハウジング1A・1Bに分割し、これら第一、第二のハウジング1A・1Bに単一の導電ピン10をそれぞれ内蔵して第一のハウジング1Aの導電ピン10と第二のハウジング1Bの導電ピン10とを胴体ピン11の底部を介して導通接続し、第一、第二のハウジング1A・1Bにおける導電ピン10の可動ピン12を防滴カバー20Aによりそれぞれ被覆するようにしている。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0047】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、ハウジング1の構成の多様化や防滴コネクタの小型化を図ることができるのは明らかである。
【0048】
なお、上記実施形態ではハウジング1に複数の導電ピン10を1×3に配列したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、複数の導電ピン10を1×5、2×2、2×3、3×2、3×3等に配列しても良い。また、ボス3は、中空の凸字形、リング形、筒形、枠形等に適宜形成して良い。また、上記実施形態では可動ピン12の円板部13底面を傾斜させたが、胴体ピン11の内底面を可動ピン12の往復動方向に対して傾斜させても良い。
【0049】
また、使用に支障を来たさないのであれば、コイルばね17の代わりに板ばね等を使用することができる。さらに、可動ピン12の先端部15先端面にワイヤ等の金属細線を必要数接着し、この金属細線を防滴カバー20の貫通孔24に嵌着して防滴カバー20の平坦部21表面から露出させることもできる。さらにまた、荷重支持エラストマー27を増減変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る防滴コネクタの実施形態を模式的に示す全体斜視説明図である。
【図2】本発明に係る防滴コネクタの実施形態を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】本発明に係る防滴コネクタの実施形態における抑え枠体を取り外した状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図4】図3の防滴コネクタから防滴カバーを取り外した状態を模式的に示す斜視説明図である。
【図5】本発明に係る防滴コネクタの実施形態における抑え枠体を取り外した状態を模式的に示す要部断面説明図である。
【図6】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図7】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第2の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図8】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第3の実施形態を模式的に示す斜視断面説明図である。
【図9】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第4の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【図10】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第5の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図11】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第6の実施形態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図12】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第7の実施形態を模式的に示す説明図である。
【図13】本発明に係る防滴コネクタ及びその接続構造の第7の実施形態を模式的に示す分解説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ハウジング
1A 第一のハウジング
1B 第二のハウジング
4 被係止部
10 導電ピン
11 胴体ピン
12 可動ピン
13 円板部
14 ピン部
15 先端部
16 嵌合溝
17 コイルばね(ばね部材)
18 導電エラストマー
20 防滴カバー
20A 防滴カバー
21 平坦部
23 フランジ
24 貫通孔
25 係止部
26 凸部
27 荷重支持エラストマー(荷重を支持するエラストマー)
30 抑え枠体(抑え中空体)
31 凹部
40 回路基板(電気接合物)
50 カートリッジ(電気接合物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに内蔵されてその両面から両端部が露出する導電ピンと、この導電ピンの少なくともハウジングから露出する露出部を被覆する防滴カバーとを備えた防滴コネクタであって、
導電ピンは、ハウジングに内蔵される導電性で中空の胴体ピンと、この胴体ピンに往復動可能に挿入されて先端部がハウジングから突出する導電性の可動ピンと、これら胴体ピンと可動ピンとの間に介在されて可動ピンを胴体ピンから離れる方向に勢い付かせる導電性のばね部材とを含み、
防滴カバーを弾性変形可能な断面略U字形に形成したことを特徴とする防滴コネクタ。
【請求項2】
導電ピンの胴体ピンと可動ピンとの対向面のいずれか一方を、可動ピンの往復動方向に対して傾斜させ、可動ピンの先端部先端面を略平坦面あるいは断面略半円弧形に形成した請求項1記載の防滴コネクタ。
【請求項3】
導電ピンの可動ピンの周面に、防滴カバーの平坦部と嵌まり合う嵌合溝を形成した請求項1又は2記載の防滴コネクタ。
【請求項4】
可動ピンの先端部に、導電エラストマーと導電細線のいずれかを取り付けて防滴カバーの平坦部から露出させるようにした請求項1又は2記載の防滴コネクタ。
【請求項5】
防滴カバーに、荷重を支持するエラストマーを内蔵した請求項1ないし4いずれかに記載の防滴コネクタ。
【請求項6】
防滴カバーの自由端部に、ハウジングに接触するフランジを形成した請求項1ないし5いずれかに記載の防滴コネクタ。
【請求項7】
ハウジングの周面に被係止部を形成し、防滴カバーのフランジに、ハウジングの被係止部に係わり合う係止部を形成した請求項6記載の防滴コネクタ。
【請求項8】
防滴カバーに着脱自在に嵌められ、防滴カバーのフランジに支持される抑え中空体を含んでなる請求項6又は7記載の防滴コネクタ。
【請求項9】
防滴カバーのフランジと抑え中空体の対向面のいずれか一方に凹部を、他方には凹部と嵌まり合う凸部をそれぞれ形成した請求項8記載の防滴コネクタ。
【請求項10】
対向する複数の電気接合物の電極間に、請求項1ないし9いずれかに記載の防滴コネクタを介在して導通するようにしたことを特徴とする防滴コネクタの接続構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−173073(P2007−173073A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369767(P2005−369767)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】