説明

防火ドア

【課題】長期に渡って延焼防止効果の信頼性を維持すること。
【解決手段】互いに対向する一対の表面材21の間に構造材60を備え、かつこの構造材60において開口枠10に対向する見込み面には加熱膨張性を有した延焼防止材50を配設し、延焼防止材50が加熱膨張した場合に開口枠10との間の遮炎性を確保するようにした防火ドア20において、一対の表面材21の縁部を互いに近接する方向に屈曲させることによって構造材60の見込み面に対向する挟持片部22を構成し、延焼防止材50の両側縁部を挟持片部22と構造材60の見込み面との間に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適用する建造物に火災が発生した場合に延焼を防止するように機能する防火ドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物の内部を仕切る壁に設けられるドアには、防火ドアと称されるものがある。防火ドアは、開口枠に対向する框の見込み面にそれぞれ熱膨張性を有した帯状の延焼防止材を連続して配設したもので、火災が発生した場合に加熱されると、延焼防止材が膨張して開口枠との隙間を塞ぎ、火炎が次の部屋へ移るのを防止するように機能する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−19186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
延焼防止材を配設するには、両面テープやネジが用いられるのが一般的である。しかしながら、延焼防止材を両面テープやネジで固定した防火ドアにあっては、たとえ粘着面積やネジの本数を増やしたとしても、異物が接触したり、擦れる等、外力が加えられると、延焼防止材の縁部分が捲れ上がる恐れがある。この結果、使用期間によっては、延焼防止材が構造材から脱落したり、損傷する等の問題を招来する恐れがあり、延焼防止効果の信頼性を確保する上で必ずしも好ましいとはいえない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、長期に渡って延焼防止効果の信頼性を維持することのできる防火ドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る防火ドアは、互いに対向する一対の表面材の間に構造材を備え、かつこの構造材の見込み面には加熱膨張性を有した延焼防止材を配設し、前記延焼防止材が加熱膨張した場合に前記構造材の見込み面に対向する対向部材との間の遮炎性を確保するようにした防火ドアにおいて、前記一対の表面材の縁部を互いに近接する方向に屈曲させることによって前記構造材の見込み面に対向する挟持片部を構成し、前記延焼防止材の両側縁部を前記挟持片部と前記構造材の見込み面との間に配置したことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、表面材から連続する挟持片部によって延焼防止材の両側縁部が覆われることになる。
【0008】
また、本発明は、上述した防火ドアにおいて、前記延焼防止材は、開口枠の見込み面に対向する構造材に配設し、加熱膨張した際に構造材と開口枠との間に遮炎性を確保することを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、防火ドアと開口枠との間の隙間から延焼する事態を防止することができるようになる。
【0010】
また、本発明は、上述した防火ドアにおいて、前記一対の表面材は、内方部に四周が構造材によって囲まれた採光用の窓穴を備えるとともに、前記窓穴を覆う透光性パネルを備えたものであり、前記延焼防止材は、前記窓穴を構成する構造材の見込み面に配設し、加熱膨張した際に前記構造材と前記透光性パネルとの間に遮炎性を確保することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、採光用の窓穴の周囲から延焼する事態を防止することができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、表面材から連続する挟持片部によって延焼防止材の両側縁部が覆われることになるため、異物が接触したり、擦れた場合にも縁部分が捲れ上がることはなく、使用期間が増えても延焼防止材が脱落したり、損傷する事態を招来する恐れがなくなる。この結果、長期に渡って延焼防止効果の信頼性を維持することができるようになる。しかも、挟持片部を表面材と一体に成形しているため、部品点数が増えたり、取付工数が増えることもなく、この発明を適用することに起因して製造コストが著しく増大することもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である防火ドアを適用する建具の縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示した防火ドアを適用する建具の横断面図である。
【図3】図3は、図1に示した防火ドアを適用する建具の概念図である。
【図4】図4は、図3におけるV−V線断面図である。
【図5−1】図5−1は、図1に示した防火ドアの要部を示す分解斜視図である。
【図5−2】図5−2は、図1に示した防火ドアの要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る防火ドアの好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である防火ドアを適用する建具を示したものである。ここで例示する建具は、例えば建造物の内部を仕切る仕切壁に設けられるもので、図3に示すように、開口枠(対向部材)10及び防火ドア20を備えている。
【0016】
開口枠10は、上枠11、下枠12及び左右一対の縦枠13を四周枠組みすることによって矩形の枠状に構成したものである。防火ドア20は、框120の表裏両面にそれぞれ表面材21を配設することによって構成したものである。框120は、上框121、下框122及び左右一対の縦框123を四周框組みすることによって構成した矩形の枠状を成すもので、開口枠10を閉塞することのできる大きさに構成してある。框120の内部には、一対の方立124及び一対の無目125が設けてあり、これら方立124及び無目125の間に矩形状を成す採光用の窓穴126が構成してある。窓穴126の内部には、ガラス枠(対向部材)40を介してガラスパネル(透光性パネル)41が配設してある。この防火ドア20は、一方の縦框123と開口枠10の一方の縦枠13との間が上下一対のヒンジ15によって接続してあり、鉛直軸に沿ったヒンジ15の軸心回りに回転することにより開口枠10に対して開閉可能である。
【0017】
上述した防火ドア20には、図1及び図2に示すように、框120を構成する上框121、下框122及び一対の縦框123において開口枠10に対向する見込み面にそれぞれ延焼防止材50が設けてあり、また、図4に代表して示すように、窓穴126を構成する方立124及び無目125においてガラス枠40に対向する見込み面にそれぞれ延焼防止材50が設けてある。延焼防止材50は、例えば膨張性黒鉛を混錬した合成樹脂製の帯状部材であり、防火ドア20の見込み方向に沿った寸法よりも小さい幅に形成してある。上枠11、下枠12及び一対の縦枠13については、それぞれの見込み方向のほぼ中央となる位置に全周に渡って連続するように延焼防止材50が配設してある。方立124及び無目125についても、それぞれの見込み方向のほぼ中央となる位置に全周に渡って連続するように延焼防止材50が配設してある。尚、図には明示していないが、上框121、下框122、縦框123、方立124、無目125(以下、これらを総称する場合に「構造材60」という)と延焼防止材50との間は、接着剤や両面テープによって接着しておくことが好ましい。
【0018】
図5−1及び図5−2に示すように、延焼防止材50を配設した構造材60は、それぞれ台状部61を備えているとともに、個々の両側縁部が挟持片部22によって覆ってある。
【0019】
台状部61は、延焼防止材50の両側となる部位から開口枠10やガラス枠40に向けて突出した部分であり、構造材60と一体に成形してある。図には明示していないが、台状部61は、延焼防止材50の長手方向に沿って複数設けてある。台状部61の突出高さは、延焼防止材50の厚さよりもわずかに小さい寸法に設定してある。またそれぞれの台状部61には、延焼防止材50の長手方向に沿って延びる溝孔61aが形成してある。
【0020】
挟持片部22は、表面材21の縁部を互いに近接する方向に屈曲させることによって構成したもので、図1、図2、図4に示すように、構造材60の台状部61及び延焼防止材50の両側縁部を覆う状態で配設してある。挟持片部22の相互間には、延焼防止材50を外部に露出させるための間隙が確保してある。挟持片部22は、図5−1に示すように、台状部61の溝孔61aに対向する部位にリベット装着孔22aを有しており、図1、図2、図4、図5−2に示すように、個々のリベット装着孔22a及び溝孔61aを介してリベット止めすることにより、構造材60との間が連結してある。
【0021】
上記のように構成した建具によれば、構造材60の見込み面に配設した延焼防止材50の両側縁部が挟持片部22によって覆われているため、異物が接触したり、擦れた場合にも縁部分が捲れ上がることはなく、使用期間が増えても延焼防止材50が脱落したり、損傷する事態を招来する恐れがなくなる。従って、火災時に防火ドア20が加熱された場合には、加熱膨張した延焼防止材50が挟持片部22の相互間から膨れ出て開口枠10やガラス枠40に接触した状態となり、防火ドア20と開口枠10との隙間、並びに窓穴126とガラス枠40との隙間がそれぞれ切れ間なく全周に渡って確実に塞がれることになる。これにより、延焼をより確実に防止することができ、長期に渡って延焼防止効果の信頼性を維持することが可能となる。
【0022】
しかも、挟持片部22を表面材21と一体に成形しているため、部品点数が増えたり、取付工数が増えることもなく、建具の製造コストが著しく増大する事態を招来することもない。
【0023】
尚、上述した実施の形態では、防火ドア20に採光用の窓穴126を有した建具を例示しているが、必ずしも防火ドア20に窓穴126を有している必要はない。
【0024】
また、上述した実施の形態では、挟持片部22を構造材60にリベット止めするようにしているが、必ずしもリベット止めする必要はなく、挟持片部22が延焼防止材50の両側縁部を覆っていれば十分である。この場合には、構造材60に台状部61や溝孔61aを設ける必要もない。
【符号の説明】
【0025】
10 開口枠
20 防火ドア
21 表面材
22 挟持片部
50 延焼防止材
60 構造材
121 上框
122 下框
123 縦框
124 方立
125 無目
126 窓穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の表面材の間に構造材を備え、かつこの構造材の見込み面には加熱膨張性を有した延焼防止材を配設し、前記延焼防止材が加熱膨張した場合に前記構造材の見込み面に対向する対向部材との間の遮炎性を確保するようにした防火ドアにおいて、
前記一対の表面材の縁部を互いに近接する方向に屈曲させることによって前記構造材の見込み面に対向する挟持片部を構成し、前記延焼防止材の両側縁部を前記挟持片部と前記構造材の見込み面との間に配置したことを特徴とする防火ドア。
【請求項2】
前記延焼防止材は、開口枠の見込み面に対向する構造材に配設し、加熱膨張した際に構造材と開口枠との間に遮炎性を確保することを特徴とする請求項1に記載の防火ドア。
【請求項3】
前記一対の表面材は、内方部に四周が構造材によって囲まれた採光用の窓穴を備えるとともに、前記窓穴を覆う透光性パネルを備えたものであり、
前記延焼防止材は、前記窓穴を構成する構造材の見込み面に配設し、加熱膨張した際に前記構造材と前記透光性パネルとの間に遮炎性を確保することを特徴とする請求項1に記載の防火ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【公開番号】特開2013−91916(P2013−91916A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232975(P2011−232975)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】