説明

防火塗料、防火塗膜および建材の修復方法

【課題】 可燃性材料に塗布することができ、かつ可燃性材料に塗布されたときに可燃性材料に対して防火性能を発揮することのできる防火塗料、防火塗膜および建材の修復方法を提供することである。
【解決手段】 防火塗料10は、砂状物質14と、液体材料16とを含んで構成される。砂状物質14は、各粒子内に空隙17が形成され、空隙17の少なくとも一部に、ゼオライト化した珪酸塩18を収容した物質である。液体材料16は、珪酸塩が溶解し、砂状物質14を分散可能に調製され、砂状物質14が分散した状態で可燃性材料21の表面に臨んで塗布される材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾固することによって塗布膜を形成する防火塗料、この防火塗料を塗布し乾固させることによって形成される塗布膜を含む防火塗膜、および防火塗料を用いる建材の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術に係る防火塗料として、アルカリ金属の珪酸塩、塩類および水を含む木質材料用塗料が知られている。珪酸塩を含む塗料は、塗布および乾固の後、加熱することによって発泡し、発泡によって生じた気泡によって断熱性能が発揮される(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−306235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される珪酸塩を含む塗料は、乾固の後、摂氏350度程度に加熱しなければ気泡の形成が開始されない。摂氏350度では、たとえばエポキシ樹脂などの樹脂を含む多くの可燃性材料は、熱分解される。したがって、従来技術に係る防火塗料を、可燃性材料の表面に塗布し乾固させても、摂氏350度程度に達してから気泡の形成が始まるので、可燃性材料に塗布する防火塗料としては、珪酸ソーダの気泡の形成による防火性能を期待することができないという問題点がある。
【0005】
また従来技術においては、防火塗料を、厚みが5ミリメートルを超える程度に塗布することによって、防火性能を期待する場合があるけれども、防火塗料を厚く塗布することは、多くの材料を要し、また熟練した技術を有する人が塗布しない限り、美観が損なわれることが多く、施工が容易でないという問題点がある。
【0006】
本発明の目的は、可燃性材料に塗布することができ、かつ可燃性材料に塗布されたときに可燃性材料に対して防火性能を発揮することのできる防火塗料、防火塗膜および建材の修復方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粒子状に形成された砂状物質であって、各粒子内に空隙が形成され、前記空隙の少なくとも一部に、ゼオライト化した珪酸塩を収容した砂状物質と、
珪酸塩が溶解した液体材料であって、前記砂状物質を分散可能に調製され、前記砂状物質が分散した状態で可燃性材料の表面に臨んで塗布される液体材料とを含むことを特徴とする防火塗料である。
【0008】
また本発明は、前記砂状物質に収容される珪酸塩の物質量は、この珪酸塩を溶解させたときの溶液の全体積を前記空隙の体積と同じに調製したならば、前記溶液における珪酸塩の濃度が、前記液体材料に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くなる物質量に設定されることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記砂状物質の前記空隙には、アルミノ珪酸塩がさらに収容されることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記砂状物質は、シラスバルーンを含むことを特徴とする。
また本発明は、固体のミョウバンをさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記液体材料とは混合されずに提供される、エポキシ樹脂の前駆体をさらに含むことを特徴とする。
また本発明は、前記液体材料は、ホウ素をさらに含むことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、可燃性材料の表面に臨み、層状に形成される防火塗膜であって、前記防火塗料が塗布され、前記液体材料が乾固することによって形成される塗布膜を含むことを特徴とする防火塗膜である。
【0013】
また本発明は、複数の前記塗布膜を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記液体材料が乾固することによって形成され、前記可燃性材料の表面に臨んで配置される塗布膜と、
前記可燃性材料と前記塗布膜との間に形成される、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記可燃性材料の少なくとも表面部は、エポキシ樹脂が接着可能であり、
前記エポキシ樹脂の前駆体を前記可燃性材料の前記表面部に接触させて配置する前駆体配置工程と、
前記前駆体配置工程の後、前記防火塗料を塗布する塗料塗布工程と、
前記塗料塗布工程によって塗布された防火塗料を乾固させることによって塗布膜を形成する乾固工程とを含むことを特徴とする建材の修復方法である。
【0015】
また本発明は、前記前駆体配置工程において配置されるエポキシ樹脂の前駆体には、粒子状に形成され、珪酸塩を収容しない粒子状固体物質が分散し、
前記前駆体配置工程において前記エポキシ樹脂の前駆体が配置された状態を、前記塗料塗布工程よりも前に、30分以上維持する維持工程をさらに含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防火塗料は、砂状物質と、液体材料とを含んで構成される。砂状物質は、各粒子内に空隙が形成され、空隙の少なくとも一部に、ゼオライト化した珪酸塩を収容した物質である。液体材料は、珪酸塩が溶解し、砂状物質を分散可能に調製され、砂状物質が分散した状態で可燃性材料の表面に臨んで塗布される材料である。
【0017】
これによって、珪酸塩からの発泡によって気泡の形成が開始される温度を摂氏350度よりも低く設定することができる。砂状物質には、ゼオライト化した珪酸塩を収容するので、珪酸塩からの発泡によって気泡の形成が開始される温度を、珪酸塩がゼオライト化されない場合に比べて低く設定することができる。具体的には、珪酸塩の気泡の形成が開始される温度を、摂氏150度以上200度以下とすることができる。したがって、可燃性材料が防火塗料の塗布された表面側から加熱されることによって温度上昇する場合に、可燃性材料が熱分解する温度に達するよりも早く、珪酸塩からの気泡の形成を開始させることができる。これによって、可燃性材料が熱分解を開始する温度よりも低い温度において、可燃性材料の表面に臨む断熱層を形成することができる。したがって、砂状物質が収容した珪酸塩がゼオライト化されていない場合に比べて、可燃性材料の熱分解を遅延させることができる。また防火塗料が塗布されない場合に比べて、可燃性材料の引火を遅延させることができる。
【0018】
また本発明によれば、砂状物質に収容される珪酸塩の物質量は、この珪酸塩を溶解させたときの溶液の全体積を前記空隙の体積と同じに調製したならば、溶液における珪酸塩の濃度が、液体材料に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くなる物質量に設定される。
【0019】
これによって砂状物質に収容される珪酸塩の濃度を、液体材料に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くすることができる。したがって、乾固することによって可燃性材料の表面に臨んで形成される塗布膜において、珪酸塩の濃度にムラを生じさせることができる。これによって、塗布膜において珪酸塩の濃度が一様に分布する場合に比べて、発泡によって発生する気体の発生量を、可燃性材料の表面上の位置によって異ならせることができる。したがって、発泡によって形成される各気泡が面方向に大きく広がった気泡となる前に、局所的な気体の発生によって気泡に破れが生じる。これによって、発生する気体の一部が大気に放出されるための経路が形成される。したがって、各気泡が面方向に大きく広がった気泡となることを防止することができる。
【0020】
仮に、各気泡が面方向に大きく広がると、塗布膜が破れることによって、1つの気泡が面方向に広がった全ての範囲で気泡を構成する塗布膜が一括して剥がれ落ちる可能性が高くなる。これに対し、各気泡が面方向に大きく広がることが防止されるので、複数の気泡の一部に破れが生じた場合であっても、塗布膜が一括して剥がれ落ちることを防止することができる。したがって、各気泡が面方向に広がる場合に比べて、形成された気泡による断熱効果を長く維持することができる。
【0021】
また本発明によれば、砂状物質の空隙には、アルミノ珪酸塩がさらに収容される。これによって、アルミノ珪酸塩を含んで構成されるゼオライトによって、摂氏350度未満における気泡形成の効率を向上させることができ、防火性能の高い防火塗料を実現することができる。
【0022】
また本発明によれば、砂状物質は、シラスバルーンを含む。これによって、砂状物質の各粒子には、外方に開口する空隙が形成されるので、外部から空隙に珪酸塩を収容させることができる。またシラスバルーンは、火山灰の一部として採取されるので、安価に入手することができる。
【0023】
また本発明によれば、固体のミョウバンをさらに含む。これによって、液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜の耐水性を向上させることができる。固体のミョウバンは、水に対してゆっくりと溶解するので、防火塗料の液体材料に含まれる珪酸塩とミョウバンとの反応においては、ミョウバンの液体材料に対する溶解が、律速段階となる。したがって、固体のミョウバンを液体材料に分散させて液体材料を塗布することによって、液体材料が塗布されてから乾固するまでの時間に匹敵する程度に時間をかけて、ミョウバンと珪酸塩との反応をゆっくりと進行させることができる。
【0024】
これによって、液体材料が塗布されてから乾固するまでに、可燃性材料の表面部と珪酸塩との密着、またはエポキシ樹脂と珪酸塩との密着に関して、充分に親和性の高い密着を実現することができる。また液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜の耐水性を、十分に高く設定することができる。したがって、充分に高い接着強度と、塗布膜の耐水性とを両立させることができる。これによって、汎用性の高い防火塗料を実現することができる。
【0025】
また本発明によれば、防火塗料は、エポキシ樹脂の前駆体をさらに含む。エポキシ樹脂の前駆体は、液体材料とは混合されずに提供される。これによって、可燃性材料と液体材料との間に、エポキシ樹脂を介在させることが可能となる。液体材料をエポキシ樹脂の表面に塗布し乾燥させ、液体材料の乾固によって塗布膜を形成すると、エポキシ樹脂と塗布膜とを、充分な接着強度をもって接着させることができる。
【0026】
液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜に対して接着強度が充分でない可燃性材料は、エポキシ樹脂との接着強度が十分に大きい場合が多い。これに対し、エポキシ樹脂との接着強度が充分でない可燃性材料は、液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜に対して、接着強度が充分に大きい場合が多い。防火塗料の一部にエポキシ樹脂の前駆体が含まれることによって、エポキシ樹脂を介在させるか否かを選択することができる。これによって、汎用性の高い防火塗料を実現することができる。
【0027】
また本発明によれば、液体材料は、ホウ素をさらに含む。これによって、ホウ素が含まれない場合に比べて、加熱によって発煙の生じにくい防火塗膜を実現することができる。
【0028】
また本発明によれば、防火塗膜は、可燃性材料の表面に臨み、層状に形成され、塗布膜を含んで構成される。塗布膜は、前記防火塗料が塗布され、液体材料が乾固することによって形成される。これによって、濃度にムラの生じた塗布膜を形成することができる。したがって、塗布膜において珪酸塩の濃度が一様に分布する場合に比べて、発泡によって発生する気体の発生量を、可燃性材料の表面上の位置によって異ならせることができる。これによって、発泡によって形成される各気泡が面方向に大きく広がった気泡となる前に、局所的な気体の発生によって気泡に破れが生じる。これによって、発生する気体の一部が大気に放出されるための経路が形成される。したがって、各気泡が面方向に大きく広がった気泡となることを防止することができる。
【0029】
仮に、各気泡が面方向に大きく広がると、塗布膜が破れることによって、1つの気泡が面方向に広がった全ての範囲で気泡を構成する塗布膜が一括して剥がれ落ちる可能性が高くなる。これに対し、各気泡が面方向に大きく広がることが防止されるので、複数の気泡の一部に破れが生じた場合であっても、塗布膜が一括して剥がれ落ちることを防止することができる。したがって、各気泡が面方向に広がる場合に比べて、形成された気泡による断熱効果を長く維持する防火塗膜を実現することができる。
【0030】
また本発明によれば、前記防火塗膜は、複数の塗布膜を含む。これによって、防火塗膜が1つの塗布膜として形成される場合に比べて、断熱効果を向上させることができる。
【0031】
また本発明によれば、防火塗膜は、塗布膜と、エポキシ樹脂とを含んで構成される。塗布膜は、液体材料が乾固することによって形成され、可燃性材料の表面に臨んで配置される。エポキシ樹脂は、可燃性材料と塗布膜との間に形成される。これによって、可燃性材料と防火塗膜とを、充分な接着強度をもって接着させることが可能となる。液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜に対して接着強度が充分でない可燃性材料は、エポキシ樹脂との接着強度が十分に大きい場合が多い。これに対し、エポキシ樹脂との接着強度が充分でない可燃性材料は、液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜に対して、接着強度が充分に大きい場合が多い。防火塗膜の一部にエポキシ樹脂が含まれることによって、液体材料に基づく塗布膜に対して接着強度が小さい可燃性材料に対してもエポキシ樹脂を介在させることで、接着強度を高く設定することができる。したがって、汎用性の高く、剥がれにくい防火塗膜を実現することができる。
【0032】
また本発明によれば、可燃性材料の少なくとも表面部は、エポキシ樹脂が接着可能であり、建材の修復方法は、前駆体配置工程と、塗料塗布工程と、乾固工程とを含んで構成される。前駆体配置工程では、エポキシ樹脂の前駆体を可燃性材料の表面部に接触させて配置する。塗料塗布工程では、前駆体配置工程の後、前記防火塗料を塗布する。乾固工程では、塗布膜工程によって塗布された防火塗料を乾固させる。
【0033】
これによって、塗料塗布工程において塗布される防火塗料は、ゼオライト化した珪酸塩を収容する砂状物質が含まれるので、珪酸塩からの発泡によって気泡の形成が開始される温度を、エポキシ樹脂の熱分解が開始する温度よりも低い温度に設定することができる。したがって、エポキシ樹脂が防火塗料の塗布された表面側から加熱されることによって温度上昇する場合に、エポキシ樹脂が熱分解する温度に達するよりも早く、珪酸塩からの気泡の形成を開始させることができる。これによって、エポキシ樹脂が熱分解を開始する温度よりも低い温度において、エポキシ樹脂の表面上に断熱層を形成することができる。したがって、砂状物質が収容した珪酸塩がゼオライト化されていない場合に比べて、エポキシ樹脂の熱分解を遅延させることができる。また防火塗料が塗布されない場合に比べて、エポキシ樹脂の引火を遅延させることができる。
【0034】
また本発明によれば、前駆体配置工程において配置されるエポキシ樹脂の前駆体には、粒子状固体物質が分散する。粒子状固体物質は、粒子状に形成される。また粒子状固体物質は、珪酸塩を収容しない。建材の修復方法は、維持工程をさらに含んで構成される。維持工程では、前駆体配置工程においてエポキシ樹脂の前駆体が配置された状態を、塗料塗布工程よりも前に、30分以上維持する。
【0035】
これによって、維持工程において、エポキシ樹脂の前駆体をある程度乾固させることができる。前駆体配置工程において配置されるのは、エポキシ樹脂の前駆体であるので、その表面部が固くなり始めるまでに30分以上かかる。エポキシ樹脂の前駆体には、粒子状固体物質が分散するので、エポキシ樹脂の前駆体の表面部が固くなり始めるまでに、粒子状固体物質が、エポキシ樹脂の前駆体の表面部に集まり、内部よりも表面部において多く分布する。したがって、塗料塗布工程の開始を樹脂製材料の前駆体が配置されてから30分以上とすることによって、維持工程を行わない場合に比べて、塗料塗布工程において塗布される防火塗料と、エポキシ樹脂の前駆体内の粒子固体状物質との接触面積を、大きくすることができる。また粒子状固体物質は珪酸塩を収容しないので、修復された建材が加熱されて温度上昇した場合であっても、樹脂製材料と塗布膜との間に気泡が発生することはない。これによって、塗布膜が樹脂製材料から剥がれ落ちることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態において、砂状物質14が分散した状態の塗料を表す図である。
【図2】本発明の第1実施形態における防火塗膜11を、基材28の表面に垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。
【図3】本発明の比較例における防火塗膜11を、基材28の表面に垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る建材の修復方法の工程を表すフローチャートである。
【図5】本発明の第1実施形態に係る建材の修復方法において、防火塗料10が塗布された状態を表す断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る防火塗膜11の防火性能を検証するために用いた第1の試料33の断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態における第1の試料33を加熱したときの、検証結果を表す図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る防火塗膜11の防火性能を検証するために用いた第2の試料34およびバーナ36の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための複数の形態について説明する。以下の説明においては、各形態に先行する形態ですでに説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略す場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。またそれぞれの実施形態は、本発明に係る技術を具体化するために例示するものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明に係る技術内容は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。以下の説明は、防火塗料10、防火塗膜11および建材の修復方法についての説明をも含む。
【0038】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態において、砂状物質14が分散した状態の塗料を表す図である。図2は、本発明の第1実施形態における防火塗膜11を、基材28の表面に垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。第1実施形態において防火塗料10は、乾固することによって塗布膜12を形成する。防火塗膜11は、防火塗料10を塗布し乾固させることによって形成される塗布膜12を含む。建材の修復方法は、建材を、防火塗料10を用いて修復する方法である。本実施形態において「乾固」は、乾燥および溶媒の蒸散による固体の析出と、重合などの化学反応による固体化との両方を意味し、いずれか一方である場合にも、また両方が同時に起こる場合にも「乾固」と称する。
【0039】
防火塗料10は、砂状物質14と、液体材料16とを含んで構成される。砂状物質14は、各粒子内に空隙17が形成され、空隙17の少なくとも一部に、ゼオライト化した珪酸塩18を収容した物質である。液体材料16は、珪酸塩が溶解し、砂状物質14を分散可能に調製され、砂状物質14が分散した状態で可燃性材料21の表面に臨んで塗布される材料である。空隙17およびこれに収容されるゼオライト化した珪酸塩18、またこれが塗布される可燃性材料21の詳細については、後述する図5の説明において詳しく述べる。
【0040】
砂状物質14に収容される珪酸塩の物質量は、この珪酸塩を溶解させたときの溶液の全体積を前記空隙17の体積と同じに調製したならば、溶液における珪酸塩の濃度が、液体材料16に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くなる物質量に設定される。
【0041】
砂状物質14の空隙17には、アルミノ珪酸塩がさらに収容される。砂状物質14は、シラスバルーン24を含む。防火塗膜11は、1または複数の塗布膜12を含み、塗布膜12は、可燃性材料21の表面上に層状に形成され、前記防火塗料10が塗布され乾固することによって形成される。塗布膜12は、0.1ミリメートル以上0.2ミリメートル以下の厚みに形成される。可燃性材料21は、たとえばエポキシ樹脂26、ポリ塩化ビニル樹脂、木材などである。本実施形態において「樹脂」の用語は、「樹脂製材料」をも「樹脂製材料の前駆体」をも含む。
【0042】
建材には、たとえば木材、樹脂などの可燃性材料21と、たとえば金属、ガラスウールなどの非可燃性材料とがある。これら建材は、風化による老朽化、時間経過に伴う劣化などによって、部分的に不具合が生じる場合がある。部分的な不具合は、たとえばひび割れ、水漏れなどを含む。このような部分的な不具合が建材に生じた場合には、部分的な修復が行われる。部分的な修復は、建材が可燃性材料21である場合にも、また非可燃性材料である場合にも、樹脂によって行われる場合が多い。たとえばエポキシ樹脂26などの樹脂は、乾固する前の樹脂製材料の前駆体において自由に成形することができ、これが乾固した後の樹脂製材料の形状を、自由に設定することができる。
【0043】
一般に非可燃性材料には、樹脂ほどの成形の自由度はないので、部分的な修復には適しているとは言えない。非可燃性材料から成る建材を、部分的にでも可燃性材料21を用いて修復すれば、修復された部分において、可燃性材料21が露出する表面部が形成される。特に、積極的に非可燃性材料を用いて建材が構成されている場合、および建材が可燃性材料21であっても外気に露出する表面部が非可燃性の材料によって被覆されている場合には、防火対策が重要である場合が多い。
【0044】
本実施形態に係る防火塗料10は、防火性能を有し、非可燃性材料に塗布された状態でも優れた防火性能を発揮するので、建材全体が可燃性材料21である場合にも、部分的に可燃性材料21の表面部が露出する場合においても、防火塗料10を塗布することによって、火災を防ぐ効果が期待できる。特に防火対策が重要であるが故に非可燃性材料が用いられ、かつ部分的に可燃性材料21によって修復せざるを得なかった場合には、本実施形態の防火塗料10は、有用である。
【0045】
また本実施形態の防火塗料10は、可燃性を有する材料の表面に塗布して防火効果を発揮するので、建材として用いられるさまざまな材料に塗布されて使用されてもよい。たとえば外壁に用いることも可能であり、このような使用においても、防火塗膜の防火効果は、大きな重要性を有する。
【0046】
建材のうち、たとえば床材として用いられる軟質のポリ塩化ビニルシート、いわゆるクッションフロアシート(CFシート)は、摂氏250度(以下「℃」と記載する)付近で黒変し、引火する。また、ほとんどのゴムおよび熱可塑性樹脂(プラスチック)は300℃付近で引火し、プラスチックのうちでは耐熱温度が比較的高いエポキシ樹脂26であっても、300℃付近で引火する。
【0047】
火災前の小さな火種から、火災に発展するか否かは、火種が消えるまでの時間と、火種によって建材が引火するまでの時間とによって左右され、火種が消えるまでの時間の方が短ければ、火災に発展しないけれども、引火するまでの時間の方が短ければ、火災に発展する。したがって、引火するまでの時間を少しでも長く設定することは、防火の効果を望む上で重要な要素となる。
【0048】
引火するまでの時間を長く設定する方法としては、建材の引火点を高く設定する方法と、建材に熱が伝達される時間を長く設定する方法と、建材に伝達された熱エネルギを建材から他の部材に移動させ、放熱させることによって建材の温度上昇を抑制する方法と、建材に接触する支燃性ガス、たとえば酸素などが建材に接触することを遮断する方法とが考えられる。建材を、たとえば可燃性材料21から非可燃性材料に置き換えることは、建材の引火点を高く設定することである。しかし非可燃性材料は、樹脂などに比べて自由な形状に成形しにくいという問題点がある。
【0049】
本発明に係る防火塗料10は、主に建材に熱が伝達される時間を長く設定することによって、防火性能を発揮する。防火塗料10は、珪酸塩を含み、珪酸塩は、加熱によって発泡し、気泡25を形成する。珪酸塩は、メタケイ酸塩およびオルトケイ酸塩を含み、これらのそれぞれに対し、たとえばカルシウム塩、ナトリウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、マグネシウムカルシウム塩(CaMg(SiOなど)、マンガン塩、ベリリウム塩(BeSiOなど)のいずれであってもよく、少なくともいずれか1種類を含んでいればよい。金属元素を「M」と表し、MO対SiOの組成比が1対1となるとき「メタケイ酸塩」と称し、MO対SiOの組成比が2対1となるとき「オルトケイ酸塩」と称する。
【0050】
メタケイ酸とオルトケイ酸との名称に関して、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の塩である場合にメタケイ酸塩と称する場合もある。本実施形態では、金属酸化物と二酸化ケイ素との組成比における定義を採用する。また本実施形態において「珪酸塩」は、固体状態にあっても水和物であり、特に言及しない場合であっても水分を含む。
【0051】
防火塗料10中の珪酸塩として、また防火塗料10を製造するために用いられる珪酸塩として、高い純度の珪酸塩である必要はなく、メタケイ酸塩、オルトケイ酸塩および塩を成していない珪酸の混合物であることを除外しない。これらのうち、アルカリ金属塩は、水に溶け易く好適であり、アルカリ土類金属塩は、水和物として発泡性の材料となるので、建材としての利用には好適である。
【0052】
固体、液体、または固体と液体との混合物から気体が泡として発生することを「発泡」と称し、発泡によって形成され、固体として永続的に形成される泡を「気泡」(25)と称する。気泡25は、内部空間を規定する被膜によって形成され、気泡25として形成された被膜の一部に破れが生じた状態においても、被膜によって内部空間と外部空間とが仕切られている場合には、「気泡」(25)に含む。発泡によって形成される泡であっても、沸騰直後に消える泡などのように、永続的な気泡の形成に寄与せずまた全体的に視認される体積の増加にも寄与しない泡については、気泡25から除く。
【0053】
防火塗料10は、可燃性材料21の表面に塗布され、防火塗膜11を形成する。防火塗膜11は、液体材料16が乾固することによって生成する塗布膜12を1層以上含んで形成される。たとえば二度塗りによって防火塗膜11を形成した場合には、1回の液体材料16の塗布によって1層の塗布膜12が形成され、防火塗膜11は2層の塗布膜12を含んで形成される。また後述するように、防火塗膜11は、液体材料16の塗布および乾固によって形成される塗布膜12以外に、さらに他の層を含んで構成されてもよい。
【0054】
防火塗膜11の防火性能は、防火塗膜11が可燃性材料21の表面上に配置された状態において、防火塗膜11が配置された側から、防火塗膜11および可燃性材料21を温度上昇させることによって、評価した。防火塗料10に含まれる珪酸塩は、塗布膜12中にも含まれ、塗布膜12が温度上昇することによって発泡する。これによって、多数の気泡25が生成し、防火塗膜11を介して外方に位置する外気と、可燃性材料21との間に多数の気泡25が介在する。発泡によって発生した気体は、多くが各気泡25内に閉じ込められるので、対流することもなく、伝熱を抑制する。これによって、可燃性材料21の温度上昇速度を遅くし、引火を遅延させる。
【0055】
また、防火塗膜11からの気体の発生および気体の膨張に熱エネルギが消費されることによって、防火塗膜11が配置された側から与えられる熱エネルギの一部が消費される。これによっても、可燃性材料21の温度上昇は抑制される。また防火塗膜11および防火塗膜11に発生した気泡25によって可燃性材料21と外気とは遮断され、空気中の酸素など、支燃性を有する気体が基材28である可燃性材料21に接触することを防止する。これによっても、引火の可能性を低減することができる。
【0056】
珪酸ソーダの水溶液は、アルミン酸ソーダと混合して加熱し温度上昇させると、珪酸ソーダがゼオライト化する。たとえば、質量濃度で50%の珪酸ソーダの水溶液を500グラム(gram, 略号「g」)と、1規定(normality, 略号「N」)のアルミン酸ソーダの水溶液300gとを混合し、およそ100℃に加熱する。1Nのアルミン酸ソーダ水溶液は、すなわちナトリウムが水溶液中において1モル/リットル(mole per little, 略号「mol/L」)の濃度となる水溶液である。沸点上昇の現象によって、100℃でも沸騰はせず、加熱によって粘度が上昇する。水溶液の色は、わずかに桃色となる。
【0057】
これによって、珪酸ソーダとアルミン酸ソーダとは、互いに反応し、アルミノ珪酸ソーダを形成する。アルミノ珪酸ソーダなどのアルミノ珪酸塩は、ナノメートル(nanometers, 略号「nm」)規模での内部空間を有するゼオライトを形成する。
【0058】
本実施形態では、防火塗料10に含まれる液体材料16は、水および水性顔料であり、砂状物質14は、シラスバルーン24である。液体材料16には、珪酸ソーダ(珪酸ナトリウム)を無水物として計算して、質量比が20%以上の濃度とした。
【0059】
防火性能を有する建材を構成する材料には、たとえばシラスバルーン24、イースファボール29、二酸化チタン(TiO)などが混合される場合がある。シラスバルーン24およびイースファボール29は、内部に空間が形成された粒状物質であり、各粒子の内部空間によって熱の伝達が阻止される。シラスバルーン24は、最大径が1マイクロメートル(micrometers, 略号「μm」)〜150μm程度の粒子であり、イースファボール29は、外径が10μm〜100μm程度の粒子である。シラスバルーン24およびイースファボール29は、当然ながら、非可燃性の材料である。二酸化チタンを防火塗料10に含ませた場合には、外部から放射され防火塗料10に届く赤外線を外部に向けて反射することによって、可燃性材料21の温度上昇を抑制する。二酸化チタンについては、防火塗料10内に混合されていても混合されていないくてもよい。
【0060】
シラスバルーン24は、火山性の材料であり、外部に開放した1つまたは複数の開口部が形成される。開口部の内部には内部空間が形成される。シラスバルーン24に形成される内部空間を「空隙」(17)と称する。シラスバルーン24は、中空の形状であるので、シラスバルーン24を液体とともに加熱および冷却することによって、シラスバルーン24の空隙17には、外部から液体を注入することができる。シラスバルーン24の多数の粒子が堆積している状態において、粒子間に形成される空間は、「空隙」(17)には含めないこととし、「粒子間空間」と称する。
【0061】
これに対しイースファボール29は、シラスバルーン24よりも真球に近い形状をしており、内部空間は、密閉されている。また内部空間は、外気よりも気圧が低い真空の状態に形成される。したがって、イースファボール29を防火塗料10に混入させることによって防火性能は期待できるけれども、液体とともに加熱および冷却しても、内部に液体材料16を注入することは期待できない。防火塗料10は、砂状物質14としてシラスバルーン24を含む。イースファボール29については、防火塗料10に含まれていても含まれていなくてもよい。
【0062】
防火塗料10を調製するには、珪酸塩の一例としての珪酸ソーダを、水中においてアルミン酸ソーダと混合し加熱することで温度上昇させる。これによって珪酸ソーダの少なくとも一部は、アルミノ珪酸塩となってゼオライト化する。次に温度上昇した状態でこの液体にシラスバルーン24を投入する。これを冷却すると、シラスバルーン24の空隙17にゼオライト化した珪酸ソーダが進入する。空隙17には、多くのゼオライト化した珪酸ソーダが進入することが好ましいけれども、空隙17の一部に、珪酸ソーダの進入していない領域が残っていても問題はない。またゼオライト化した珪酸ソーダは、粒子間空間に位置していてもよい。
【0063】
空隙17に珪酸ソーダを収容したシラスバルーン24は、水性顔料を含む液体材料16中に分散した状態で、液体材料16が塗布されることに伴って、基材28である可燃性材料21の表面上に配置される。液体材料16には、ゼオライト化した珪酸ソーダとは濃度の異なる珪酸ソーダを混合する。ゼオライト化した珪酸塩18と、液体材料16に混合される珪酸塩とは、種類は同じであってもよいけれども、液体材料16に混合される珪酸塩は、必ずしもゼオライト化する必要はない。本実施形態では、ゼオライト化した珪酸ソーダの水溶液に、シラスバルーン24(珪酸ソーダとおよそ同質量)を添加し、加熱および沸騰によってシラスバルーン24内の空気とゼオライト化した珪酸ソーダとを置換する。この処理の後には、ゼオライト化した珪酸ソーダがシラスバルーン24の添加前の4分の1〜3分の1程度残る。これに水を添加することで、シラスバルーン24の粒子間空間に位置する溶液の体積は3倍〜5倍程度に希釈される。このときに添加される水の量は、シラスバルーン24を添加する前のゼオライト化した珪酸ソーダの水溶液とおよそ同じ体積程度の水とした。
【0064】
ゼオライト化した珪酸ソーダは、溶媒分子すなわち水分子を外囲して配列し、集合したミセルのような構造を形成している。珪酸ソーダに混合するアルミン酸ソーダがの濃度が高ければ高いほど、珪酸ソーダがゲル化する傾向が見られる。また珪酸ソーダを含む溶液がさらに塩基性に偏ると、珪酸ソーダのこのような構造は、解消する。
【0065】
珪酸塩をゼオライト化することによって、珪酸塩の温度を常温から上昇させたときに、珪酸塩からの発泡によって気泡25の形成が開始される温度を、ゼオライト化していない場合に比べて低く設定することができる。ゼオライト化した珪酸塩18は、ゼオライトのキャビティに水分子を含んだ状態で安定化し、固体化する。したがって、ゼオライト化しない場合に比べてゼオライト化した珪酸塩18は、多くの水分子を内包することができる。
また常温において、ゼオライト化した珪酸ソーダの粘度は充分に高く、ゼオライト化した珪酸ソーダの自重によってシラスバルーン24の空隙17から流出することはない。したがって、ゼオライト化した珪酸ソーダを空隙17に収容したシラスバルーン24を防火塗料10を成す液体材料16中に分散しても、ゼオライト化した珪酸ソーダを空隙17内に維持させることができる。
【0066】
ゼオライトのキャビティに位置する水分子の沸点は、厳密には1気圧下において100℃とは異なる温度であると考えられるけれども、およそ100℃で気化し始め、珪酸塩からの発泡および気泡25の形成に寄与する。したがって、ゼオライト化することによって、珪酸塩の気泡形成開始の温度を低くすることができる。発泡が顕著となり気泡25が視認できる状態となる温度は、150℃〜200℃であり、発泡したときの気泡25を含む全体の体積は、発泡していない防火塗膜11の体積に比べて10倍以上となる。発泡によって生じる気泡25は、200℃を超えても温度上昇に伴って大きくなり、250℃以上の温度でも気泡25の拡大が見られた。発生した気泡25のうち、大きな気泡25には破れが生じるけれども、気泡25を形成する被膜は、破れてもなお残存し、気泡25を形成した被膜からも発泡および気泡25の形成が生じる。この現象は、温度上昇に伴って継続し、800度付近まで継続することが確認された。
【0067】
珪酸ソーダをゼオライト化する工程およびゼオライト化した珪酸ソーダをシラスバルーン24の空隙17に進入させる工程では、珪酸ソーダの濃度を高い濃度に設定し、これに対し、砂状物質14、すなわちシラスバルーン24を分散させる液体材料16中における珪酸ソーダの濃度は低く設定する。ゼオライト化した珪酸塩18をシラスバルーン24の空隙17に進入させる工程の後、シラスバルーン24は、乾燥させることが好ましい。これによって、空隙17に収容された珪酸塩が乾固し、固体となり、液体材料16に混合された後も、液体材料16に珪酸塩が溶解しにくくなる。仮に乾燥させる工程を行わなくても、空隙17中の珪酸塩は、ゼオライト化しているので、液体材料16への、空隙17中の珪酸塩の溶解は、抑制される。
【0068】
空隙17に収容された珪酸ソーダの濃度は、液体材料16中の珪酸ソーダの濃度よりも高いので、シラスバルーン24が液体材料16とともに可燃性材料21の表面上に配置されたときには、可燃性材料21の表面上において、珪酸ソーダの濃度にムラが生じる。防火塗料10を乾固させる工程では、加熱を行うことはなく、環境温度が珪酸ソーダの発泡する温度にまで上昇することはない。また空隙17中の珪酸塩がゼオライト化されていることによって、防火塗料10が乾固する間に空隙17中の珪酸塩が可燃性材料21の表面の面方向に拡散して広がることもない。
【0069】
図2は、前述したように、本発明の第1実施形態における防火塗膜11を、基材28の表面に垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。図3は、本発明の比較例における防火塗膜11を、基材28の表面に垂直な仮想平面で切断して見た断面図である。第1実施形態では、可燃性材料21の表面上の位置によって珪酸ソーダの濃度に差異を生じさせることによって、加熱され発泡したときに発生する気体の量を、可燃性材料21の表面上の位置によって異ならせることができる。
【0070】
したがって、発泡によって面方向に広がって大きな気泡25が形成されるよりも前に、局所的な気体の発生によって気泡に破れを生じさせることができる。これによって、発生する気体の一部が大気に放出されるための経路が形成される。したがって、各気泡が面方向に大きく広がった気泡となることを防止する。これによって、図2に示すように多数の小さな気泡25が形成される。仮に、可燃性材料21の表面上において珪酸ソーダの濃度が均一に設定されると、発泡によって発生する気体の量が、可燃性材料21の表面上において均一となり、図3に示すように、小数の大きな気泡25が形成されやすくなる。
【0071】
本実施形態では、可燃性材料21の表面上において珪酸塩の濃度を不均一とすることによって、発泡したときに形成される気泡25を多数の小さな気泡25とすることができる。また珪酸塩の濃度が不均一であることから、局所的に多量の気体を発生させることができ、これによって、複数の気泡25のうち一部の気泡25が破れる。これによって、発生する気体を外気に放出させる経路を確保することができる。したがって、形成された気泡25内部において過剰に圧力が上昇することを防止することができる。
【0072】
技術的に最も重要となるのは、形成された後に剥離したり落下したりすることのない気泡25である。気泡25を形成する被膜の機械的強度は、高い方が好ましいけれども、塗布膜12の内部に発生した気体が放出されるための経路は、形成される必要があるので、局所的な破れが生じることは必要である。気体の発生量は、大量である方が好ましいけれども、発生する気体としては、気泡25の形成に寄与することが望まれ、結果的に形成される気泡25全体を含む体積が、大きいことの方が好ましい。
【0073】
可燃性材料21の表面上の広い領域において大きな気泡25が形成されることを防止することと、気泡25内部での圧力上昇を抑制することとによって、大きな気泡25を規定する塗布膜12が一括して剥がれ落ちることを防止する。したがって、火種の近接または接触などによって塗布膜12に対する加熱が継続されても、可燃性材料21において形成された気泡25を維持することができ、塗布膜12による断熱性を継続させることができる。したがって、火種による加熱が継続されても断熱性能が低下することを防止することができる。
【0074】
第1実施形態によれば、防火塗料10において砂状物質14の各粒子内には、空隙17が形成され、空隙17の少なくとも一部に、ゼオライト化した珪酸塩18を収容する。液体材料16は、珪酸塩が溶解し、砂状物質14を分散可能に調製される。液体材料16は、砂状物質14が分散した状態で可燃性材料21の表面に塗布される。これによって、珪酸塩の発泡による気泡形成が開始される温度を350℃よりも低く設定することができる。
【0075】
仮に、珪酸塩をゼオライト化せずに塗布した場合には、300℃以下では、発泡しても気泡25は安定に形成されず、形成直後の泡は破れて消失してしまう。ゼオライト化されていない珪酸塩が安定な気泡25を形成するには、およそ350℃以上の温度条件が必要となる。これに対し本実施形態では、砂状物質14には、ゼオライト化した珪酸塩18を収容するので、珪酸塩の気泡25の形成が開始される温度を、珪酸塩がゼオライト化されない場合に比べて低く設定することができる。具体的には、珪酸塩の気泡形成が開始される温度を、150℃以上200℃以下とすることができる。
【0076】
したがって、可燃性材料21が防火塗料10の塗布された表面側から加熱されることによって温度上昇する場合に、可燃性材料21が熱分解する温度に達するよりも早く、珪酸塩の発泡およびこれによる気泡25の形成を開始させることができる。これによって、可燃性材料21が熱分解を開始する温度よりも低い温度において、可燃性材料21の表面上に断熱層を形成することができる。したがって、砂状物質14が収容した珪酸塩がゼオライト化されていない場合に比べて、可燃性材料21の熱分解を遅延させることができる。また防火塗料10が塗布されない場合に比べて、可燃性材料21の引火を遅延させることができる。
【0077】
また第1実施形態によれば、ゼオライト化した珪酸塩18は、砂状物質14の空隙17において、液体材料16中の珪酸塩の濃度よりも高濃度に設定され、これに比べて液体材料16中の珪酸塩の濃度は、低濃度に設定される。具体的には、砂状物質14に収容される珪酸塩の物質量は、この珪酸塩を溶解させたときの溶液の全体積を前記空隙17の体積と同じに調製したならば、溶液における珪酸塩の濃度が、液体材料16に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くなる物質量に設定される。
【0078】
これによって砂状物質14に収容される珪酸塩の濃度を、液体材料16に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くすることができる。したがって、乾固することによって可燃性材料21の表面上に形成される塗布膜12において、珪酸塩の濃度にムラを生じさせることができる。これによって、塗布膜12において珪酸塩の濃度が一様に分布する場合に比べて、発泡によって発生する気体の発生量を、可燃性材料21の表面上の位置によって異ならせることができる。したがって、発泡によって形成される各気泡25が面方向に大きく広がった気泡となるよりも前に、局所的な気体の発生によって気泡に破れを生じさせることができる。これによって、発生する気体の一部が大気に放出されるための経路が形成される。したがって、各気泡が面方向に大きく広がった気泡となることを防止することができる。
【0079】
仮に、各気泡25が面方向に大きく広がると、塗布膜12が破れることによって、1つの気泡25が面方向に広がった全ての範囲で気泡25を構成する塗布膜12が一括して剥がれ落ちる可能性が高くなる。これに対し、各気泡25が面方向に大きく広がることが防止されるので、複数の気泡25のうち一部の気泡25に破れが生じた場合であっても、塗布膜12が一括して剥がれ落ちることを防止することができる。したがって、各気泡25が面方向に広がる場合に比べて、発生した気泡25による断熱効果を長く維持することができる。
【0080】
また第1実施形態によれば、砂状物質14の空隙17には、アルミノ珪酸塩がさらに収容される。これによって、アルミノ珪酸塩を含んで形成されるゼオライトによって、350℃未満における気泡形成の効果を向上させることができ、防火性能の高い防火塗料10を実現することができる。この防火塗料10は、アルミン酸塩の添加による珪酸塩のゼオライト化によって、実現することができる。
【0081】
また第1実施形態によれば、砂状物質14は、シラスバルーン24を含む。これによって、砂状物質14の各粒子には、外方に開口する空隙17が形成されるので、外部から空隙17に珪酸塩を収容させることができる。またシラスバルーン24は、火山灰の一部として採取されるので、安価に入手することができる。
【0082】
また第1実施形態によれば、防火塗膜11は、可燃性材料21の表面上に層状に形成され、塗布膜12を含んで構成される。塗布膜は、液体材料16が塗布され乾固することによって形成される。これによって、濃度にムラの生じた塗布膜12を形成することができる。したがって、塗布膜12において珪酸塩の濃度が一様に分布する場合に比べて、発泡によって発生する気体の発生量を、可燃性材料21の表面上の位置によって異ならせることができる。これによって、発泡によって発生する各気泡25が、面方向に大きく広がった気泡となるよりも前に、局所的な気体の発生によって気泡に破れを生じさせることができる。これによって、発生する気体の一部が大気に放出されるための経路を確保することができる。したがって、各気泡が面方向に大きく広がった気泡となることを防止することができる。
【0083】
仮に、気体の発生量が面方向に一様であると、各気泡25が面方向に大きく広がった気泡となる可能性が高くなる。各気泡が大きくなると、塗布膜12が破れることによって、1つの気泡25が面方向に広がった全ての範囲で気泡25を構成する塗布膜12が一括して剥がれ落ちる可能性が高くなる。これに対し、各気泡25が面方向に一様に広がることが防止されるので、複数の気泡25のうち一部の気泡25に破れが生じた場合であっても、塗布膜12が一括して剥がれ落ちることを防止することができる。したがって、各気泡25が面方向に大きく広がる場合に比べて、発生した気泡25による断熱効果を長く維持する防火塗膜11を実現することができる。また、温度上昇によって発生した気体が塗布膜12よりも可燃性材料21側に溜まり、塗布膜12が面方向に広い範囲で一括して剥離することを防止することができる。
【0084】
また第1実施形態によれば、可燃性材料21の少なくとも表面部は、エポキシ樹脂26、ポリ塩化ビニル樹脂、および木材などのいずれかの材料である。また可燃性材料21は、これらいずれかの材料から成る複合材であってもよい。基材28をエポキシ樹脂26とした場合、およびポリ塩化ビニル樹脂とした場合には、防火塗膜11を介して基材28とは反対側の環境気体の温度を800℃〜1000℃にした場合であっても、2分間、基材28が引火することは防止された。
【0085】
さらに第1実施形態によれば、各塗布膜12は、0.1ミリメートル(millimeters, 略号「mm」)以上0.2mm以下の厚みに形成される。塗布膜12を、0.2mm以下とすることによって、コテによって塗布する必要がなく、ハケによって塗布することが可能となる。したがって、熟練した特殊な技量を必要とせず、容易に一様の厚みに塗布膜12を形成することができる。また塗布膜12を0.1mm以上とすることによって、気泡25の機械的強度を、指で強く押さなければ破損しない程度の機械的強度とすることができ、生じた気泡25が自重によって剥がれ落ちたり周囲の空気の流れによって剥がれ落ちたりすることを防止することができる。
【0086】
図4は、本発明の第1実施形態に係る建材の修復方法の工程を表すフローチャートである。図5は、本発明の第1実施形態に係る建材の修復方法において、防火塗料10が塗布された状態を表す断面図である。可燃性材料21は、樹脂製材料であり、建材の修復方法は、前駆体配置工程と、塗料塗布工程と、乾固工程とを含んで構成される。前駆体配置工程では、樹脂製材料の前駆体を配置する。塗料塗布工程では、前駆体配置工程の後、前記防火塗料10を塗布する。乾固工程では、塗布膜12工程によって塗布された防火塗料10を乾固させる。
【0087】
第1実施形態において樹脂製材料の前駆体は、エポキシ樹脂26の前駆体である。他の実施形態において、樹脂製材料の前駆体は、エポキシ樹脂の前駆体でなくてもよい。たとえば塩化ビニル樹脂の前駆体であってもよい。第1実施形態において樹脂製材料の前駆体には、粒子状固体物質32が分散する。粒子状固体物質32は、粒子状に形成される。また粒子状固体物質32は、珪酸塩を収容しない。建材の修復方法は、維持工程をさらに含んで構成される。維持工程では、前駆体配置工程において樹脂製材料の前駆体が配置された状態を、塗料塗布工程よりも前に、30分以上維持する。エポキシ樹脂26の前駆体は、油中水滴型のエポキシ樹脂前駆体である。本実施形態における建材の修復方法は、樹脂製の建材を修復の対象とする。維持工程において、樹脂製材料の前駆体が配置された状態を維持する時間は、30分以上であればよく、60分程度で充分である。
【0088】
建材の修復方法は、たとえばひび割れ、水漏れなどの、建材の部分的な不具合を修復する方法であり、また防火塗料10を用いて修復箇所に防火性能を付与する方法である。本処理に先立って、修復の必要な箇所では、仮に不具合のある箇所の表面上にロックウールなどの断熱材が配置される場合であっても、断熱材を除去し、不具合箇所を露出させる。また修復に使用する材料としてエポキシ樹脂26の前駆体を準備する。
【0089】
エポキシ樹脂26の前駆体には、粒子状固体物質32を混合する。粒子固体状物質は、具体的にはシラスバルーン24およびイースファボール29のうちの少なくともいずれか一方を含む粒子状の固体物質であり、内部に空間が形成されていることによって、断熱性を有する。エポキシ樹脂26の前駆体に混合する粒子状固体物質32には、珪酸塩を収容させることはせず、単に環境気体である空気か、またはエポキシ樹脂26の前駆体が内部を占めている。
【0090】
本処理開始後、ステップa1の前駆体配置工程に移行し、エポキシ樹脂26の前駆体を、修復の必要な箇所に配置する。エポキシ樹脂26の前駆体は、主剤と硬化剤との2つの液体から成り、これらを混合させることによって、乾固を開始させる。乾固は、エポキシドを含む主剤に、ジアミン、トリアミン、ポリアミンまたはポリアミドなどのいずれか1種類以上を含む硬化剤を反応させることによって実現され、この反応は、以下の式(1)および式(2)のような反応式で表される。
【0091】
【化1】

【0092】
本実施形態において、式(1)および式(2)に示したRおよびRはアルキル基とし、Rは水素(H)とした。ただし、R,RおよびRは、これらに限定されるものではない。主剤および硬化剤の2液を混合し、まだ固化していない状態の混合物についても、本実施形態では「エポキシ樹脂(26)の前駆体」と称する。このエポキシ樹脂26の前駆体には粒子状固体物質32が分散している。この粒子状固体物質32が分散したエポキシ樹脂26の前駆体は、パテ(putty)としてコテで塗布し成形してもよいけれども、修復のために充分であると判断されるときには、ハケで塗布することによって配置してもよい。
【0093】
主剤と硬化剤とは、建材の修復などの作業現場において予め定める混合割合で混合され、混合された後、常温常圧において式(1)および式(2)に示す重合反応が進行する。これによって、乾固が進行する。主剤および硬化剤は、それぞれ単体では反応が進行することはない。したがって、主剤及び硬化剤は、混合を避けて保存され、建材の修復などの作業時に、それぞれ必要量の主剤および硬化剤が、互いに混合されて用いられる。
【0094】
エポキシ樹脂26の層は、0.2mm以下の膜として形成しても建材の修復が可能である場合には、ハケで塗布することが可能である。エポキシ樹脂26の層は、50μm以上0.2mm以下の膜厚の層として形成されることが好ましい。ハケで塗布することによって、熟練した技術を必要とせず、均一にエポキシ樹脂26の前駆体を配置することができる。ハケで塗布することができるので、熟練した技術がなくても、粒子状固体物質32が分散したエポキシ樹脂26の前駆体を、0.1mm以下の膜として形成することも容易である。
【0095】
次に、ステップa2の維持工程に移行し、前駆体で配置されたエポキシ樹脂26の前駆体を30分以上放置する。これによって、エポキシ樹脂26の前駆体は、乾固し始めるとともに、エポキシ樹脂26の前駆体中に分散していた粒子状固体物質32は、配置したエポキシ樹脂26の前駆体の表面部に多く集まり、粒子状固体物質32の一部はエポキシ樹脂26の前駆体の表面部から露出する。維持工程において、60分を超えて、完全に乾固したエポキシ樹脂26としてから塗料塗布工程に移行するよりも、維持工程を60分以内とした方が、エポキシ樹脂26と塗布膜12との接着を強固にすることができる。
【0096】
次にステップa3の塗料塗布工程に移行し、防火塗料10を塗布する。防火塗料10は、ゼオライト化した珪酸塩18を収容した砂状物質14が液体材料16中に分散した状態で塗布され、エポキシ樹脂26の前駆体の表面と、エポキシ樹脂26の前駆体の表面上に露出した粒子状固体物質32との両方に接触して配置される。図5に示すように、エポキシ樹脂26の前駆体の表面から粒子状固体物質32の一部を露出させることによって、乾固した後のエポキシ樹脂26と防火塗膜11とを機械的に係合させることができ、エポキシ樹脂26と防火塗膜11との固着強度を、粒子状固体物質32を用いない場合に比べて上昇させることができる。
【0097】
次にステップa4の乾固工程に移行し、エポキシ樹脂26の前駆体および防火塗料10を乾固させる。これは、1日以上、理想的には4日〜5日程度の期間、放置することによって、乾固が終了する。その後、本処理は終了する。当然のことながら、建材の修復箇所に物体が接触するおそれがないと判断できるときには、ステップa3の塗料塗布工程が終了することによって、建材を修復する積極的な作業は終了することができる。
【0098】
エポキシ樹脂26の前駆体には、油中水滴型と水中油滴型とがある。たとえば建材が、水路の一部を形成するような場合には、木材などの親水性の材料よりも、樹脂等の疎水性の材料が建材に用いられている場合が多い。したがって、水漏れを防止するための建材の修復を行うときには、樹脂から成る建材を対象として修復する場合が多い。この場合には、エポキシ樹脂26の前駆体として、油中水滴型を選択的に用いる。仮に水中油滴型の懸濁液を健在の表面上に配置すると、懸濁液に含まれる油滴よりも水分の方が、建材の表面に大きな面積で接触する。これに対し本実施形態では、油中水滴型の懸濁液を建材の表面上に配置すると、懸濁液に含まれる水滴よりも油分の方が、建材の表面に大きな面積で接触する。
【0099】
したがって、建材の表面が水漏れなどによって水に濡れている場合であっても、エポキシ樹脂26の前駆体は、より広い面積で建材の表面に接触し、さらには建材の表面上の水分をエポキシ樹脂26の前駆体中に水滴として取込むことも可能となる。これによって、建材の表面が水濡れしている場合であっても、建材を確実に修復することができる。
【0100】
本実施形態によれば、可燃性材料21の少なくとも表面部は、樹脂製材料が接着可能である。前駆体配置工程では、樹脂製材料の前駆体を可燃性材料21の表面部に接触させて配置し、塗料塗布工程では、前駆体配置工程の後、前記防火塗料10を塗布する。乾固工程では、塗布膜12工程によって塗布された防火塗料10を乾固させる。これによって、塗料塗布工程において塗布される防火塗料10は、少なくとも一部がゼオライト化した珪酸塩18を収容する砂状物質14が含まれるので、珪酸塩の気泡形成が開始される温度を、樹脂製材料の熱分解が開始する温度よりも低い温度に設定することができる。
【0101】
したがって、樹脂製材料が防火塗料10の塗布された表面側から加熱されることによって温度上昇する場合に、樹脂製材料が熱分解する温度に達するよりも早く、珪酸塩の気泡25の形成を開始させることができる。これによって、樹脂製材料が熱分解を開始する温度よりも低い温度において、樹脂製材料の表面上に断熱層を形成することができる。したがって、砂状物質14が収容した珪酸塩がゼオライト化されていない場合に比べて、樹脂製材料の熱分解を遅延させることができる。また防火塗料10が塗布されない場合に比べて、樹脂製材料の引火を遅延させることができる。
【0102】
また本実施形態によれば、樹脂製材料の前駆体は、エポキシ樹脂26の前駆体である。樹脂製材料の前駆体には、粒子状固体物質32が分散する。粒子状固体物質32は、粒子状に形成される。また粒子状固体物質32は、珪酸塩を収容しない。建材の修復方法は、維持工程をさらに含んで構成される。維持工程では、前駆体配置工程において樹脂製材料の前駆体が配置された状態を、塗料塗布工程よりも前に、30分以上維持する。
【0103】
これによって、維持工程において、エポキシ樹脂26の前駆体をある程度乾固させることができる。樹脂製材料の前駆体はエポキシ樹脂26の前駆体であるので、その表面部が固くなり始めるまでに30分以上かかる。エポキシ樹脂26の前駆体には、粒子状固体物質32が分散するので、エポキシ樹脂26の前駆体の表面部が固くなり始めるまでに、粒子状固体物質32が、エポキシ樹脂26の前駆体の表面部に集まり、内部よりも表面部において多く分布する。したがって、塗料塗布工程の開始を樹脂製材料の前駆体が配置されてから30分以上とすることによって、維持工程を行わない場合に比べて、塗料塗布工程において塗布される防火塗料10と、エポキシ樹脂26の前駆体内の粒子固体状物質との接触面積を、大きくすることができる。また粒子状固体物質32は珪酸塩を収容しないので、修復された建材が加熱されて温度上昇した場合であっても、樹脂製材料と塗布膜12との間に気泡25が発生することはない。これによって、塗布膜12が樹脂製材料から剥がれ落ちることを防止することができる。
【0104】
さらに本実施形態によれば、エポキシ樹脂26の前駆体は、油中水滴型のエポキシ樹脂前駆体である。建材の修復方法は、樹脂製の建材を修復の対象とする。これによって、樹脂製の建材に対する防火塗膜11の密着を強固にすることができる。油中水滴型のエポキシ樹脂前駆体は、水中油滴型のエポキシ樹脂26の前駆体に比べて、修復の対象となる建材に対して疎水性の表面によって多く接触することができる。建材が樹脂製であれば、疎水性の表面で多く接触する方が、親水性の表面で多く接触するよりも、建材に対する密着を強固にすることができる。したがって、建材の表面に水分が付着している場合であっても、建材を容易に修復することができる。これによって、建材の修復方法を、水漏れ箇所および雨漏れ箇所の修復に適用することができる。
【0105】
天井、床面、柱、壁などの建材のうち、非可燃性の耐火性部材が表面部を成している領域では、火種が接触しても引火までの時間が、火種の鎮火するまでの時間よりも長ければ長いほど、火種から火災に発展する可能性は低くなる。火種が生じた場合であっても火災に発展する可能性を低減するには、天井、床面、柱、壁などの全ての建材の表面部において、非可燃性の耐火性部材が表面部を成していることが好ましい。建材を修復するための材料としてエポキシ樹脂26などの樹脂は、施工が簡便で有用であるけれども、エポキシ樹脂26自体は、耐火性部材ではない。エポキシ樹脂26に防火塗料10を塗布することによって、火種によって加熱された場合であっても、生じる気泡25の断熱性によって防火性能を発揮することができる。
【0106】
またエポキシ樹脂26の前駆体に分散させる粒子状固体物質32には、珪酸塩を収容させないことによって、温度が上昇した場合であっても、エポキシ樹脂26と塗布膜12との間に、気体が介在することを防止する。珪酸塩は塗布膜12には含まれるけれども、エポキシ樹脂26には含まれないので、塗布膜12とエポキシ樹脂26との間が珪酸塩から発生する気体によって剥離することを防止することができる。
【0107】
第1実施形態では、基材28となる樹脂の表面上に防火塗料10は1度塗布するものとしたけれども、防火塗料10が乾固して塗布膜12が形成された後に再度、防火塗料10を塗布し、塗布膜12を複数層とすることも可能である。これによって、気泡25が発生する層の厚みを厚くすることができ、断熱性および耐火性を、塗布膜12を1層とする場合に比べて向上させることができる。防火塗膜11が複数層の塗布膜12を含む場合には、防火塗料10の塗布を複数回とすればよく、エポキシ樹脂26の前駆体の配置を複数回行う必要はない。局所的に高い濃度の珪酸塩を含む塗布膜12は、温度が上昇した場合に、多数の箇所において気泡25が破れ、気泡25内の気体が効率よく散逸するための経路が確保されるので、塗布膜12が複数配置された場合にも、層を成す塗布膜12が広い範囲で一括して剥がれることは、防止される。
【0108】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る防火塗膜11および建材の修復方法は、第1実施形態に係る防火塗膜11および建材の修復方法に類似しており、以下、第1実施形態に対する第2実施形態の相違点を中心に説明する。液体材料16は、ホウ素をさらに含む。第2実施形態において防火塗膜11は、複数の塗布膜12を含む。ホウ素は、元素として含まれていればよく、第2実施形態においてホウ素は、イオンとして含まれる。
【0109】
液体材料16が、ホウ素を含むことによって、ホウ素が含まれない場合に比べて、加熱によって発煙の生じにくい防火塗膜11を実現することができる。ホウ素は、液体材料16にホウ酸(硼酸,HBO)を溶解させることによって、添加される。添加されるホウ酸の量は、1リットルの水溶液に対して数グラムでよい。アルミン酸ソーダの添加によって珪酸ソーダをゼオライト化すると、形成されるアルミノ珪酸ソーダによって、溶液はアルカリ性を示す(pH11〜13)。ホウ酸の添加によって、アルミノ珪酸ソーダを含む溶液の一部を中和し、アルカリ性を緩和することができる。
また第2実施形態において、防火塗膜11は、複数の塗布膜12を含み、これによって、防火塗膜11が1つの塗布膜12として形成される場合に比べて、断熱効果を向上させることができる。
【0110】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る防火塗膜11および建材の修復方法は、第1実施形態に係る防火塗膜11および建材の修復方法に類似しており、以下、第1実施形態に対する第3実施形態の相違点を中心に説明する。防火塗料10は、エポキシ樹脂の前駆体をさらに含んで構成される。エポキシ樹脂の前駆体は、液体材料16とは混合されずに提供される。防火塗料10の使用者は、エポキシ樹脂の前駆体を可燃性材料21に塗布する場合と、エポキシ樹脂の前駆体を塗布しない場合とを、任意に選択することができる。
【0111】
液体材料16の塗布および乾固によって形成される塗布膜12に対して接着強度が充分でない可燃性材料21は、エポキシ樹脂26との接着強度が十分に大きい場合が多い。これに対し、エポキシ樹脂26との接着強度が充分でない可燃性材料21は、液体材料16の塗布および乾固によって形成される塗布膜12に対して、接着強度が充分に大きい場合が多い。
【0112】
可燃性材料21がエポキシ樹脂に対して高い親和性を示す材料である場合には、エポキシ樹脂の前駆体を、液体材料16の塗布に先立って塗布し、この状態を30分以上60分以下維持し、その後、液体材料16の塗布を行う。これによって形成される防火塗膜11は、液体材料16の乾固によって形成された塗布膜12と、可燃性材料21と液体材料16との間に、介在して配置されるエポキシ樹脂26と、塗布膜12に分散した状態で固定される砂状物質14を含む。
【0113】
これによって、エポキシ樹脂26と塗布膜12とを、充分な接着強度をもって接着させることができる。防火塗料10の一部にエポキシ樹脂の前駆体が含まれることによって、エポキシ樹脂26を介在させるか否かを選択することができる。これによって、汎用性の高い防火塗料10を実現することができる。
【0114】
エポキシ樹脂26に対する親和性が小さく、珪酸ソーダを含む塗布膜12に対する親和性が大きい材料としては、アルミニウムおよびステンレスなどの、表面に不動態を形成する金属材料、および硬質ガラスなどを挙げることができる。珪酸ソーダを含む塗布膜12との親和性が小さく、エポキシ樹脂26との親和性が大きい材料としては、アクリル樹脂を除く樹脂、シリコンゴムを除くゴム、などを挙げることができる。
【0115】
珪酸ソーダを含む塗布膜12とエポキシ樹脂との両方に対して親和性の大きい材料としては、木材、表面に不動態を形成しない金属材料、硬質ガラス以外のガラスなどを挙げることができる。ベニヤ板などの合板は、木材に準じる。
【0116】
建材として利用される材料の表面部と、防火塗膜11との親和性の大小は、1平方センチメートル当たり100キログラム重(kgw)の接着強度を基準として判断する。たとえば文房具として使用される粘着性テープの接着強度は1平方センチメートル当たり数グラムであり、これらに比べて、建材として利用される材料における接着強度は、非常に大きい強度が要求されるものである。
【0117】
したがって、たとえば天井裏など、防火塗料11として大きな接着強度が要求されない場所で使用される場合においては、たとえばアクリル樹脂に対して防火塗膜11が形成されてもよい。
【0118】
さらに、第3実施形態において、防火塗料10は、固体のミョウバンをさらに含む。ミョウバンの添加によって、液体材料16の塗布および乾固によって形成される塗布膜12の耐水性を向上させる。ミョウバンは、「MI2SOIII2(SO・24HO」および「MI2SOIII2(SO・12HO」のいずれか一方の組成または両方の組成で表される物質の混合物である。
【0119】
ミョウバンにおいて、「MI」は1価の金属を、「MIII」は3価の金属元素を表す。MIは、たとえばTl,Cs,Rb,K,Na,Li,Agなどのいずれであってもよい。MIIIは、たとえばAl3+,Ti3+,V3+,Cr3+,Mn3+,Fe3+,Co3+,Ga3+,In3+,Ir3+,Rh3+などのいずれかである。また「MI」および「MIII」の組合せは、これらのいずれの組合せであってもよい。
【0120】
固体のミョウバンは、水に対してゆっくりと溶解するので、防火塗料の液体材料16に含まれる珪酸塩とミョウバンとの反応においては、ミョウバンの液体材料に対する溶解が、律速段階となる。したがって、固体のミョウバンを液体材料に分散させて液体材料を塗布することによって、液体材料が塗布されてから乾固するまでの時間に匹敵する程度に時間をかけて、ミョウバンと珪酸塩との反応をゆっくりと進行する。ミョウバンの反応を簡単化するために、ミョウバンを「MI2SO」であるものとして表すと、ミョウバンの硫酸イオンと珪酸とのイオン反応は、以下の式(3)ように表すことができる。
NaO・nSiO+MI2SO+mHO→nSiO・mHO・MIO・NaSO …(3)
【0121】
これらのうちで、第3実施形態において用いたミョウバンは、硫酸カリウムアルミニウム(K2SOAl2(SO・12HO)であるものとした。
【0122】
これによって、液体材料が塗布されてから乾固するまでに、可燃性材料の表面部と珪酸塩との密着、またはエポキシ樹脂と珪酸塩との密着に関して、充分に親和性の高い密着を実現することができる。また液体材料の塗布および乾固によって形成される塗布膜の耐水性を、十分に高く設定することができる。したがって、充分に高い接着強度と、塗布膜の耐水性とを両立させることができる。これによって、汎用性の高い防火塗料を実現することができる。
【0123】
珪酸ソーダは、一般に、珪素(Si)とナトリウム(Na)との化合物であるので、その水溶液は、アルカリ性を示す。珪酸ソーダを含む水溶液に硫酸を添加して酸性とすれば、珪酸ソーダを含む塗料の耐水性を向上できる。しかし、珪酸ソーダを塗料塗布工程よりも前の段階で不溶化すれば、塗料として塗布したときの基材に対する接着力を失うことになる。また珪酸ソーダ水溶液に含まれる珪酸ソーダの耐水性を、硫酸の添加によって向上させるには、珪酸ソーダの物質量に匹敵する物質量の硫酸の添加が必要となる。実際に水溶液に対してこの物質量の硫酸を添加することは、危険で実用的ではない。
【0124】
これに対し、ミョウバンは、水溶液に対してゆっくりとしか溶解しない。したがって、ミョウバンと珪酸ソーダとの反応においては、ミョウバンの溶解の段階が、律速段階となるので、ゆっくりとした反応を実現することができる。これによって、珪酸ソーダを塗布してから乾固するまでにかかる時間にミョウバンとの反応が進行し、接着力の確保と、乾固した後の塗布膜12の耐水性の向上とを、両立することができる。
【0125】
ミョウバンは、液体材料16に対して、塗布の直前に添加し、ミョウバンが固体の状態で液体材料16中に分散している状態で、液体材料16を塗布する。固体のミョウバンは、粒子状であることが好ましく、また各粒子は微細である方が、分散が容易となるので好ましい。
【0126】
ミョウバンの添加によって、塗布膜12の耐水性を向上することができるので、防火塗料10およびその乾固によって形成される防火塗膜11の適用範囲は広がり、汎用性を向上することができる。
【0127】
(実施例)
図6〜図8は、本発明の第1実施形態に係る防火塗膜11の防火性能を検証するために、2種類の方法で試料を加熱する実験を行ったときの、実験結果を表す図である。第1の試料33は、オーブン内に配置して加熱し、第2の試料34は、バーナ36の炎38を直接吹付けて加熱した。図6は、本発明の第1実施形態に係る防火塗膜11の防火性能を検証するために用いた第1の試料33の断面図である。第1の試料33は、内部に温度計を設置したオーブン内に配置し、1000ワット(watt, 略号「W」)のヒータで加熱を行った。第1の試料33は、断熱ボード39と、建材を成す材料42、基材28と、防火塗膜11と、断熱パテ44とを含む。これらのうち、断熱ボード39と、建材を成す材料42と、基材28と、防火塗膜11とは、平板状、矩形の形状とし、厚み方向Xに重ねて配置した。二酸化チタンについては、混合しない防火塗料10を用いた。
【0128】
断熱ボード39は、基材28に対して環境気体から伝達される熱移動の経路を、防火塗膜11が位置する側からの経路に限定するために配置した。したがって、建材を成す材料42および基材28に関して断熱ボード39は、防火塗膜11とは反対側であって、厚み方向Xに垂直な表面を覆って配置される。建材を成す材料42は、本実施例ではセメント製のスレートとした。厚みは5mmのものを使用した。基材28は、建材の修復に用いる樹脂を用い、本実施例ではエポキシ樹脂26を用いた。エポキシ樹脂26の厚みは0.3mmとした。エポキシ樹脂26に関して顕在とは反対側の表面上に防火塗料10を塗布し、乾固の後0.2mm程度の厚みの防火塗膜11とした。塗布した防火塗料10の量的な誤差によって防火塗膜11の厚みに誤差が生じても、各塗布膜12の層厚は、0.1mm以上0.3mm以下の範囲である。
【0129】
断熱パテ44は、第1の試料33を厚み方向Xに見たときの外周部、すなわち「こば」が、熱移動の経路となることを防止するために、第1試料のこばを覆い防火塗膜11から断熱ボード39までを密閉する。これによって断熱パテ44は、第1試料のこばが環境気体に接触することを阻止する。オーブン内における温度計としては、環境気体の温度を測定するための環境気体温度計と、第1の試料33の防火塗膜11側の表面温度を測定するための表面温度計との2つを配置した。またオーブンについては、500℃以上になるとヒータに供給される電力が遮断される機構を有していたけれども、この機構を解除し、500℃以上でもヒータへの電力供給が解除されない条件で検証を行った。
【0130】
塗布膜12、または塗布膜12を含む防火塗膜11を形成するときの乾固は、常温において放置することによって行い、試料を作成して検証を行った。建材に対して使用されるときには、乾固は、ほとんどの場合に常温において放置される中で、行われる。実験条件が建材の修復に係る条件と異なることは望ましくないので、この検証実験において、防火塗料は、いわゆる自然乾燥によって乾固した。
【0131】
図7は、本発明の第1実施形態における第1の試料33を加熱したときの、検証結果を表す図である。図7において横軸は、図6に示した第1の試料33をオーブン内に配置して1000Wのヒータで加熱したときの加熱時間を表す。図7において縦軸は、第1の試料33の防火塗膜11側の表面温度を測定するための表面温度計による測定結果の温度を表している。図7において検証結果として示した実線は、温度上昇曲線45であり、第1試料をオーブン内で加熱した加熱時間に対する温度変化を表す曲線である。
【0132】
図7に示すように、加熱から10分経っても建材を成す材料42の表面の基材28が200℃に達することを阻止することができた。さらに300℃に達するまでには加熱開始後20分以上、400℃に達するまでには加熱開始後40分以上を要し、500℃に達するには加熱開始後90分〜100分の時間を要するという結果が得られた。したがって、基材28である樹脂が仮に200℃で熱分解を開始するとすれば、加熱開始から10分以上、正確には12分程度の時間、基材28の熱分解を阻止することができる。基材28をエポキシ樹脂とした場合には、基材28の表面温度が230℃以下の条件下では、基材28の黒変は見られなかった。
【0133】
図8は、本発明の第1実施形態に係る防火塗膜11の防火性能を検証するために用いた第2の試料34およびバーナ36の写真である。第1実施形態に係る防火塗膜11の防火性能を検証する2種類の方法のうち、第2の方法では、第2の試料34をバーナ36の炎38を直接吹付けて加熱し、表面形状の変化および色の変化を観察した。二酸化チタンについては、混合しない防火塗料10を用いた。
【0134】
第2の試料34は、ボードと、ボードの表面上に塗布し乾固させたエポキシ樹脂26と、エポキシ樹脂26の表面上に塗布し乾固させた防火塗膜11とを含む。ボードは、第1および第2実施形態における建材に相当し、第1の試料33における建材を成す材料42に相当する。このボードは、厚み寸法が7mmのベニヤ板とした。これらは、バーナ36の炎38によって加熱される範囲よりも広い面積に形成した。炎38の温度は、800℃〜1000℃の温度であった。第2の試料34をバーナ36の炎38で加熱した場合にも、2分以内で引火することはなく、この時間的範囲内では、基材28である樹脂にも、発煙は見られなかった。
【0135】
さらに防火塗膜11の防火性能を検証する実験では、防火塗料10の重ね塗りを施した試料についても図6および図8で説明した方法によって検証を行った。図6で説明した方法で検証した結果では、2回の重ね塗りを施した場合には、表面温度350℃程度まで、3回の重ね塗りを施した場合には、表面温度400℃程度まで、基材28であるエポキシ樹脂26が黒変することはなかった。
【0136】
重ね塗りを施すことによって、防火塗膜11を複数の塗布膜12とすることによって、防火効果を向上させることができる。接着強度および乾燥収縮による形状変形などを考慮しても、少なくとも4回までの範囲で、重ね塗りの回数が多ければ多いほど防火性能が高くなり、好適であることを確認することができた。換言すれば、防火塗膜11に含まれる塗布膜12は、少なくとも4層までの範囲で、積層される層の枚数が多くなれば多くなるほど防火性能は高くなり、好適である。
【0137】
第1および第2実施形態と、検証のために行った実施例では、防火塗料10を塗布する対象となる基材28は、エポキシ樹脂26、ポリ塩化ビニル樹脂、木材のいずれか1つであるものとしたけれども、他の実施形態では、段ボールであってもよい。基材28を段ボールとすることによって、接着性がよく、層間剥離の生じにくい防火塗膜11を形成することができ、また複数の塗布膜12としたときの塗布膜12間の剥離も、基材28が樹脂であるときと同様に、生じにくい。
【符号の説明】
【0138】
10 防火塗料
11 防火塗膜
12 塗布膜
14 砂状物質
16 液体材料
17 空隙
18 ゼオライト化した珪酸塩
21 可燃性材料
24 シラスバルーン
25 気泡
26 エポキシ樹脂
28 基材
32 粒子状固体物質
33 第1の試料
34 第2の試料
36 バーナ
38 炎
39 断熱ボード
42 建材を成す材料
44 断熱パテ
45 温度上昇曲線
X 厚み方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状に形成された砂状物質であって、各粒子内に空隙が形成され、前記空隙の少なくとも一部に、ゼオライト化した珪酸塩を収容した砂状物質と、
珪酸塩が溶解した液体材料であって、前記砂状物質を分散可能に調製され、前記砂状物質が分散した状態で可燃性材料の表面に臨んで塗布される液体材料とを含むことを特徴とする防火塗料。
【請求項2】
前記砂状物質に収容される珪酸塩の物質量は、この珪酸塩を溶解させたときの溶液の全体積を前記空隙の体積と同じに調製したならば、前記溶液における珪酸塩の濃度が、前記液体材料に溶解した珪酸塩の濃度よりも高くなる物質量に設定されることを特徴とする請求項1に記載の防火塗料。
【請求項3】
前記砂状物質の前記空隙には、アルミノ珪酸塩がさらに収容されることを特徴とする請求項1または2に記載の防火塗料。
【請求項4】
前記砂状物質は、シラスバルーンを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の防火塗料。
【請求項5】
固体のミョウバンをさらに含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の防火塗料。
【請求項6】
前記液体材料とは混合されずに提供される、エポキシ樹脂の前駆体をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の防火塗料。
【請求項7】
前記液体材料は、ホウ素をさらに含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の防火塗料。
【請求項8】
可燃性材料の表面に臨み、層状に形成される防火塗膜であって、請求項1〜7のいずれか1つに記載の防火塗料が塗布され、前記液体材料が乾固することによって形成される塗布膜を含むことを特徴とする防火塗膜。
【請求項9】
複数の前記塗布膜を含むことを特徴とする請求項8に記載の防火塗膜。
【請求項10】
前記液体材料が乾固することによって形成され、前記可燃性材料の表面に臨んで配置される塗布膜と、
前記可燃性材料と前記塗布膜との間に形成される、エポキシ樹脂とを含むことを特徴とする請求項8または9に記載の防火塗膜。
【請求項11】
前記可燃性材料の少なくとも表面部は、エポキシ樹脂が接着可能であり、
前記エポキシ樹脂の前駆体を前記可燃性材料の前記表面部に接触させて配置する前駆体配置工程と、
前記前駆体配置工程の後、請求項1〜7のいずれか1つに記載の防火塗料を塗布する塗料塗布工程と、
前記塗料塗布工程によって塗布された防火塗料を乾固させることによって塗布膜を形成する乾固工程とを含むことを特徴とする建材の修復方法。
【請求項12】
前記前駆体配置工程において配置されるエポキシ樹脂の前駆体には、粒子状に形成され、珪酸塩を収容しない粒子状固体物質が分散し、
前記前駆体配置工程において前記エポキシ樹脂の前駆体が配置された状態を、前記塗料塗布工程よりも前に、30分以上維持する維持工程をさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の建材の修復方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−148961(P2011−148961A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13604(P2010−13604)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(500118861)
【Fターム(参考)】