説明

防火戸用自動閉鎖装置

【課題】ラッチの係合保持力の調節の状態を容易に把握することができる調節機構を備えた防火戸用自動閉鎖装置を提供する。
【解決手段】保持力調節機構部8が、スプリング8cと、調節ネジ8dとを含み、調節ネジ8dを回動させてスプリング8cの弾力を変化させることで、ラッチ3の係合保持力を調節するものであり、また、保持力調節機構部8が、調節ネジ8dの頭部外周壁面にその周方向に所定の間隔で複数形成された凹凸部8fに当接する弾性を有する当接部材8gをさらに含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、常時は防火戸を開放状態に保持し、火災発生時等は防火戸を自動的に閉鎖させる防火戸用自動閉鎖装置に関する。
【背景技術】
【0002】
防火戸用自動閉鎖装置は、一般に、防火戸の係合部材と係合する係合部を有するラッチを備えており、常時は、ラッチの係合部と防火戸の係合部材との係合を保持して、防火戸を開放状態に保持し、火災発生時は、ソレノイド等の起動手段の動作に連動して、ラッチの係合部と防火戸の係合部材との係合の保持状態を解除し、防火戸をその自重により自動的に閉鎖させることができるようになっている。
【0003】
この種の自動閉鎖装置は、自動的に防火戸を閉鎖させることができない場合に備え、防火戸を閉鎖方向に引っ張ることで、ラッチの係合の保持状態を解除することができるようにもなっており、即ち、手動で防火戸を閉鎖させることができるようにもなっており、そして、その手動でラッチの係合の保持状態を解除するのに要する力、即ち、ラッチの係合保持力を必要に応じて調節することができるようになっており、そのための調節機構を備えているものとなっている。
【0004】
従来の自動閉鎖装置におけるラッチの係合保持力の調節機構は、その調節用のネジを回動させて、ラッチの係合部の解除方向への移動に対抗する力として作用するスプリングの弾力を変化させ、それによりラッチの係合保持力を調節するものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平3−19350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の自動閉鎖装置におけるラッチの係合保持力の調節機構は、前記のように、調節に際し、ネジを回動させるものであるが、そのネジは自動閉鎖装置のケース内に収納されており、ネジの回動の様子を目視することができず、即ち、係合保持力の調節の状態を把握するのが困難であった。
【0007】
この発明は、前記の事情に鑑み、ラッチの係合保持力の調節の状態を容易に把握することができる調節機構を備えた防火戸用自動閉鎖装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、防火戸の係合部材と係合する係合部を有するラッチを含むラッチ機構部と、該ラッチ機構部と協働し、該ラッチの係合部と該防火戸の係合部材との係合を保持するラッチ固定機構部と、該ラッチの係合部と該防火戸の係合部材との係合の保持状態を手動で解除する際の該ラッチの係合保持力を調節する保持力調節機構部とを備えた防火戸用自動閉鎖装置であって、該保持力調節機構部が、スプリングと、調節ネジとを含み、該調節ネジを回動させて該スプリングの弾力を変化させることで、該ラッチの係合保持力を調節するものであり、また、該保持力調節機構部が、該調節ネジの頭部外周壁面にその周方向に所定の間隔で複数形成された凹凸部に当接する弾性を有する当接部材をさらに含むことを特徴とする防火戸用自動閉鎖装置である。
【0009】
また、この発明は、該当接部材が面接触で該凹凸部の凹面に当接する当接面を有し、該当接面が該凹面と対応する面形状のものであることを特徴とする防火戸用自動閉鎖装置である。
【0010】
また、この発明は、該当接面が湾曲面であることを特徴とする防火戸用自動閉鎖装置である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、保持力調節機構部の調節ネジを回動操作する際、操作者は、当接部材が調節ネジ頭部の凹凸部に当接することによるクリック感を感じ、その数をカウントすることにより、調節ネジの回動の状態を用意に把握することができる。
【0012】
従って、この発明によれば、ラッチの係合保持力の調節の状態を容易に把握することができる調節機構を備えた防火戸用自動閉鎖装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の防火戸用自動閉鎖装置の実施形態の一例を示し、(a)及び(b)何れもケース上側を外した状態のものであり、(a)が平面図、(b)が正面図である。
【図2】図1(b)の要部拡大図である。
【図3】同上を示し、(a)乃至(c)何れもケース上側と中間シャーシを外した状態における平面図であり、自動でラッチ機構部を係合保持状態からそれを解除して防火戸のフックを解放する場合の変化の様子を示したものであり、(a)がラッチ機構部が係合保持状態にあるときのもの、(b)がソレノイドの起動によりラッチ機構部の係合保持状態が解除されようとしているときのもの、(c)がラッチ機構部の係合保持状態が解除され、ラッチ機構部から防火戸のフックが解放されたときのものである。
【図4】同上を示し、(a)乃至(d)何れもケース上側と中間シャーシを外した状態における平面図であり、手動でラッチ機構部を係合保持状態からそれを解除して防火戸のフックを解放する場合の変化の様子を示したものであり、(a)がラッチ機構部が係合保持状態にあるときのもの、(b)がラッチ機構部の手動解除用のレバーがラッチ固定機構部の手動解除用のトリガレバーに当接されたときのもの、(c)及び(d)がラッチ機構部の手動解除用のレバーがラッチ固定機構部の手動解除用のトリガレバーを押動し、ラッチ固定機構部が解除状態に変化し、ラッチ機構部の係合保持状態が解除され、ラッチ機構部から防火戸のフックが解放されたときのものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の防火戸用自動閉鎖装置の一実施形態を図1乃至4に基づき説明する。
【0015】
防火戸用自動閉鎖装置1は、ケース2内にラッチ機構部3、ラッチ固定機構部4、ソレノイド5、ラッチ解除機構部6、中間シャーシ7、保持力調節機構部8等を備えている。防火戸用自動閉鎖装置1において、ケース2は上下に2分割されている。このケース2には、図示しない防火戸の係合部材、例えばフックHを出入りさせるための開口部2aが形成されている。また、ケース2内においては、中間シャーシ7を境に上下に2分割されており、中間シャーシ7の下側にラッチ機構部3、ラッチ固定機構部4、ラッチ解除機構部6等が位置し、中間シャーシ7の上側にソレノイド5、保持力調節機構部8等が位置する配置構造となっている。
【0016】
防火戸用自動閉鎖装置1は、常時は、開口部2a内に位置する防火戸のフックHとのラッチ機構部3による係合を保持し、防火戸を開放状態に保持することができるものとなっており、火災時は、火災信号によるソレノイド5の起動に基づいて自動で、或いは、防火戸を閉鎖方向に引っ張って手動で、防火戸のフックHとのラッチ機構部3による係合の保持状態を解除し、フックHをラッチ機構部3から解放させて、防火戸を閉鎖させることができるものとなっている。
【0017】
この防火戸用自動閉鎖装置1は、手動で防火戸のフックHとのラッチ機構部3による係合の保持状態を解除する際のその解除に要する力、即ちラッチ機構部3の係合保持力を保持力調節機構部8により調節することができるようになっている。
【0018】
保持力調節機構部8は、ラッチ機構部3の係合部3eを有するラッチプレート3aと一体の移動側調節片8aと、ラッチ機構部3の係止プレート3bと一体の固定側調節片8bと、両調節片8a、8bを常時密着方向に付勢するコイルスプリング8cと、コイルスプリング8cを伸縮させ、その密着方向への付勢力を調節するネジ8dによる伸縮機構等からなり、手動で係合保持状態を解除する際、係合部3eを有するラッチプレート3aと共に移動側調節片8aが、コイルスプリング8cによって固定側調節片8bとの間8eに作用する密着方向への付勢力に打ち勝って、固定側調節片8bから離間することになるが(図4a乃至d)、その離間させるのに要する力、つまりは手動で係合保持状態を解除するのに要する力を、この保持力調節機構部8によって、移動側調節片8aと固定側調節片8bとの間8eに作用するコイルスプリング8cによる密着方向への付勢力をネジ8dを回動させて調節することができるようになっている。
【0019】
そして、保持力調節機構部8は、例えば弾性を有する板バネから形成されて、ネジ8dの頭部外周壁面にその周方向に所定の間隔で複数形成された凹凸部8fに当接する当接部材8gをさらに含むものとなっている。なお、この当接部材8gは移動側調節片8aにネジ8iにより固定されたものとなっている。
【0020】
ここで、保持力調節機構部8は、当接部材8gを含んでいることで、そのネジ8dを所定の角度だけ回動させれば、当接部材8gがネジ8d頭部の凹凸部8fに当接することによるクリック感を操作者に与えるものとなっており、操作者は、そのクリック感をカウントすることにより、ネジ8dの回動の状態を容易に把握することができるものとなっている。
【0021】
従って、防火戸用自動閉鎖装置1は、ラッチ機構部3の係合保持力の調節の状態を容易に把握することができるものとなっている。
【0022】
なお、本実施の形態において、当接部材8gに当接する凹凸部8fとして、ネジ8d頭部の外周壁面にその周方向に所定の間隔で複数形成され、ネジ8dの長さ方向に沿って延在する凹凸条を有するものとなっている。さらに、本実施形態において、当接部材8gは、当接面8hで面接触によりネジ8d頭部の凹凸部8fの凹面に当接するものとなっており、且つその当接面8hがその凹面と対応する面形状、具体的には湾曲面をなすものとなっている。即ち、保持力調節機構部8の当接部材8gは、ネジ8dの緩み止めの機能を果たすものとなっており、又、当接面8hが湾曲面であることで、ネジ8dの緩み止めの機能を果たすものでありながら、ネジ8dの回動の妨げにはならないようになっている。なお、凹凸部8fの大きさや数は適宜に設定される。
【0023】
最後に、ラッチ機構部3を係合保持状態からそれを解除して防火戸のフックを解放させる際の各構成の動作について、係合保持状態の解除を自動によりする場合と手動によりする場合とに分けて説明する。
【0024】
[自動解除]
図3(a)乃至(c)は、自動でラッチ機構部3を係合保持状態からそれを解除して防火戸のフックを解放する場合の各構成の変化の様子を示したものである。図3(a)に示すように、ラッチ機構部3が係合保持状態にあるとき、ラッチプレート3aはその係合部3eが防火戸のフックHと係合する位置(P1)にあるが、その状態が、係止プレート3bの係合凸部3fとラッチアーム3dの係合凹部3gとが係合し、ラッチアーム3dが連結されるトグルリンク機構4aが伸長状態にあることで保持されている。ソレノイド5が起動すると、プランジャ5aが図3(a)の伸長状態から縮長状態に変化するのに連動して、ラッチ解除機構部6が動作し、トグルリンク機構4aのトリガピン4fを矢印A1方向に移動させる。即ち、ソレノイド5が起動すると、図3(b)及び(c)に連続して示すように、トリガピン4fの矢印A1方向への移動によって、トグルリンク機構4が伸長状態から屈折状態へと変化すると共に、ラッチアーム3dがその係合凹部3gが係止プレート3bの係合凸部3fと係合しない位置(図面上の上方)へと回動し、その係合が外れることで係合保持状態が解除され、図示しないスプリングの付勢力によりラッチプレート3aが係止プレート3b及び解除レバー付プレート3cと共に解放方向(図面上の時計回り)へと回動して、その係合部3eが防火戸のフックHを解放させる位置(P2)に至り、防火戸のフックHがラッチ機構部3から解放されることとなる。
【0025】
[手動解除]
図4(a)乃至(d)は、手動でラッチ機構部3を係合保持状態からそれを解除して防火戸のフックHを解放する場合の各構成の変化の様子を示したものである。図4(a)に示すように、ラッチ機構部3が係合保持状態にあるとき、各構成は自動解除における場合と同様の状態にある。手動でラッチ機構部3の係合保持状態を解除するには、防火戸を引っ張って、そのフックHによりラッチプレート3aを係合部3eを介して解放方向(図面上の時計回り)へと引っ張ることになるが、そのようにすると、図4(b)乃至(d)に連続して示すように、ラッチプレート3aが解除レバー付プレート3cと共に解放方向(図面上の時計回り)へと回動して、手動解除プレート3cの解除レバー3iがトグルリンク機構4のトリガレバー4gを押動し、それによりトグルリンク機構4を伸長状態から屈折状態へと変化させ、後は自動解除における場合と同様の変化を経て、係合部3eが防火戸のフックHを解放させる位置(P2)に至り、防火戸のフックHがラッチ機構部3から解放されることとなる。
【符号の説明】
【0026】
1:防火戸用自動閉鎖装置 2:ケース 3:ラッチ機構部
3a:ラッチプレート 3b:係止プレート 3c:解除レバー付プレート
3d:ラッチアーム 3e:係合部 3f:係合凸部 3g:係合凹部
3i:解除レバー 4:ラッチ固定機構部 4a:トグルリンク機構
4f:トリガピン 4g:トリガレバー 5:ソレノイド
5a:プランジャ 6:ラッチ解除機構部 7:中間シャーシ
8:保持力調節機構部 8a:移動側調節片 8b:固定側調節片
8c:スプリング 8d:ネジ 8e:間 8f:凹凸部 8g:当接部材
8h:当接面 8i:ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防火戸の係合部材と係合する係合部を有するラッチを含むラッチ機構部と、該ラッチ機構部と協働し、該ラッチの係合部と該防火戸の係合部材との係合を保持するラッチ固定機構部と、該ラッチの係合部と該防火戸の係合部材との係合の保持状態を手動で解除する際の該ラッチの係合保持力を調節する保持力調節機構部とを備えた防火戸用自動閉鎖装置であって、
該保持力調節機構部が、スプリングと、調節ネジとを含み、該調節ネジを回動させて該スプリングの弾力を変化させることで、該ラッチの係合保持力を調節するものであり、また、該保持力調節機構部が、該調節ネジの頭部外周壁面にその周方向に所定の間隔で複数形成された凹凸部に当接する弾性を有する当接部材をさらに含むことを特徴とする防火戸用自動閉鎖装置である。
【請求項2】
該当接部材が面接触で該凹凸部の凹面に当接する当接面を有し、該当接面が該凹面と対応する面形状のものであることを特徴とする請求項1に記載の防火戸用自動閉鎖装置。
【請求項3】
該当接面が湾曲面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防火戸用自動閉鎖装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−87573(P2012−87573A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236674(P2010−236674)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】