説明

防火防水用充填材

【課題】充填姿勢の変化にかかわらず、所期の防火防水性能を確実に得ることのできる防火防水用充填材を提供する。
【解決手段】非通水性と耐熱性とを備える防火防水用充填材1であって、濡水時及び加熱時の双方において全体的に膨らむように、水膨潤性を有する成分と熱膨張性を有する成分が混在状態で含有されている。具体的には、防火防水用充填材1は、非通水性と耐熱性を有するEPDM等の合成ゴム(主成分の一例)に対して、ポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂や吸水性無機物(水膨潤性成分の一例)と、膨張黒鉛や未焼成バーミキュラント、アルカリ金属ケイ酸塩等の熱膨張無機物を(熱膨張性成分の一例)とを混合し、適度な粘性を有する半固形状に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や土木構造物の隙間や貫通孔などの防火処置や防水処置を施すのに使用される防火防水用充填材に関し、詳しくは、非通水性と耐熱性とを備える防火防水用充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の防火防水用充填材としては、非通水性と水膨潤性を有する素材からなる水膨潤材と、耐火性と熱膨張性とを有する素材からなる熱膨張材とを幅方向又は厚み方向に積層したものがある(下記特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2006−52536号公報
【特許文献2】特開2007−327196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の防火防水用充填材では、加熱時と水濡時において積層方向の一方側(すなわち、加熱時は熱膨張材側、濡水時は水膨潤材側)が部分的に膨れるため、充填姿勢の変化に伴って防火防水性能が大きく変化することになる。そのため、施工者の施工方法や設計者の設計方法によって所期の防火防水性能が得られなくなる重大な問題があった。
【0004】
本発明は、上述の実情に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、充填姿勢の変化にかかわらず、所期の防火防水性能を確実に得ることのできる防火防水用充填材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は防火防水用充填材に係り、その特徴は、
非通水性と耐熱性とを備える防火防水用充填材であって、
濡水時及び加熱時の双方において全体的に膨らむように、水膨潤性を有する成分と熱膨張性を有する成分が混在状態で含有されている点にある。
【0006】
上記構成によれば、混在状態で含有されている水膨潤性成分と熱膨張性成分によって濡水時及び加熱時の双方において全体的に膨らむから、如何なる充填姿勢でも防火防水性能発揮することができ、これにより、充填姿勢の変化にかかわらず所期の防火防水性能を確実に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は、防火防水用充填材1の製品出荷時の状態を示す。当該防火防水用充填材1は、可撓性を有する充填材収容袋2に収容された状態で出荷される。
【0008】
前記充填材収容袋2は、透光性を有するPE等の合成樹脂製のシート材を一端側が開口する袋状体に成形したのち、その袋状体の開口部2aから前記防火防水用充填材1を挿入した後、当該開口部2aを密封手段(本例では、熱融着部)で密封して構成されている。
【0009】
つまり、防火防水用充填材1は、施工現場において充填材収容袋2の外面を破断した上で充填材収容袋2から取り出して使用される。そのため、施工現場に到着する前に防火防水用充填材1に変態等の不具合が生じるのを確実に防止することができる。
【0010】
前記防火防水用充填材1には、濡水時及び加熱時の双方において全体的に膨らむように、水膨潤性を有する成分と熱膨張性を有する成分が混在状態で含有されている。
【0011】
具体的には、当該防火防水用充填材1は、非通水性と耐熱性を有するEPDM等の合成ゴム(主成分の一例)に対して、ポリアクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂や吸水性無機物(水膨潤性成分の一例)と、膨張黒鉛や未焼成バーミキュラント、アルカリ金属ケイ酸塩等の熱膨張無機物を(熱膨張性成分の一例)とを混合し、適度な粘性を有する半固形状に構成されている。
【0012】
(使用例1)
前記防火防水用充填材1は、例えば、図2に示すように、トンネルT(土木建造物の一例)を構築するコンクリート製のセグメント3とこれに隣接するセグメント3´の接合部の防火防止措置などに使用することができる。
【0013】
図2(b)に示すように、当該セグメント3、3´の接合端面3A、3A´の各々には、断面視台形状の内側シール溝3a、3a´とそれよりやや小形の断面視台形状の外側シール溝3b、3b´とがトンネル径方向に位置ズレする状態で形成されている。
【0014】
すなわち、セグメント3、3´どうしの接合部には、両接合端面3A、3A´間に内側シール溝3a、3a´を合せた断面視縦長六角形状の内側シール孔4と、外側シール溝3b、3b´どうしを合せた断面視縦長六角形状の外側シール孔5とが形成される。
【0015】
そして、当該内側シール孔4と外側シール孔5の各々には、前記防火防水用充填材1が充填されている。
【0016】
そのため、トンネルTの外部からセグメント3、3´の接合部に液体(例えば、雨水や地下水)が侵入した時には、防火防水用充填材1の水膨張によってトンネルTの内部に液体が流入するのを確実に防止することができる。
【0017】
また、トンネルTの外部又は内部で火災が発生した時には、防火防水用充填材1の熱膨張によってトンネルTの内外方向で火災時の火炎や熱が伝達されるのを確実に防止することができる。しかも、防火防水用充填材1には、熱膨張後であっても水膨張性成分が残るため、火災後に防水性能が低下する不具合も発生しない。
【0018】
なお、当該防火防水用充填材1を充填するには、図2(a)に示すように、一対のセグメント3、3´夫々の接合端面3A、3A´における内側シール溝3a、3a´、外側シール溝3b、3b´に防火防止用充填材1を盛り付けた状態でセグメント3、3´を接合すればよい。
【0019】
(使用例2)
また、前記防火防水用充填材1は、例えば、図3に示すように、建築物の床スラブY(区画体の一例)に形成された貫通孔Hの内周面とこれに挿通された束状の配管P(挿通体の一例)の外面との間の隙間Sの防火防水措置などにも使用することができる。
【0020】
図3(b)、(c)に示すように、当該防火防水用充填材1は、金属製の受け部材6に支持された固形状(本例では、帯状)の耐熱部材7に受け止め支持される状態で前記隙間Sに充填されている。
【0021】
なお、前記受け部材6は、貫通孔H内に挿入配置されるリング状の受け部6aと、貫通孔Hの周縁部に係合する状態でリング状受け部6aを貫通孔H内で支持するLの字状の複数の(本例では週方向の等間隔に分散配置された4本)の支持脚6bとから構成されている。
【0022】
当該受け部材6は、前記支持脚6bの屈折端部の各々に貫通形成された取り付け孔6eに固定手段の一例であるビス8を挿通させる状態でビス8床スラブYに固定することで、床スラブYに固定されている。
【0023】
また、耐熱部材7は、帯状の不燃材7aと帯状の耐火熱膨張材7bとを厚み方向に積層した状態で、透光性を有する樹脂製(例えば、PE製)のシート材を袋状に整形した長尺の細長い拘束袋7d(拘束手段の一例)に収容して分離不能な固形状に構成されている。
【0024】
前記耐火熱膨張材7bは、合成樹脂やゴム等の可撓性と耐熱性を有するベース材(非不燃性の素材の一例)に熱膨張基材を混成して構成されている。一方、前記不燃材7aは、可撓性と不燃性を有するフェルト状のロックウール(不燃性の素材の一例)から構成されている。
【0025】
当該耐熱部材1は、図3(a)に示すように、不燃材7aと耐火熱膨張材7bとの積層方向が貫通孔Hの径方向に沿う姿勢、具体的には、不燃材7aが内側となる姿勢で配管Pの外周面に巻き付けたのち、配管Pに沿って貫通孔Hの側に移動させることによって、受け部材6に受け止め支持される状態で隙間Sに備え付けられている。
【0026】
そして、前記防火防水用充填材1は、図3(a)〜(b)に示すように、前記耐熱部材7の上面を載置面とする状態で隙間Sに充填操作することによって、耐熱部材7に受け止め支持される状態で隙間Sにおける耐熱部材7の手前側に充填されている。
【0027】
そのため、建築物の内部に液体(例えば、雨水や水道水)が侵入した時には、防火防水用充填材1の水膨張によって前記隙間Sを通じて水濡れが広がることを効果的に防止することができる。また、建築物の内部に火災が発生した時には、防火防水用充填材1の熱膨張によって隙間Sを通じて火災が広がることを効果的に防止することができる。
【0028】
〔その他の実施形態〕
(1)前述の実施形態では、防火防水用充填材1が半固形状に構成されている場合を例に示したが、柔軟な(又は硬い)ブロック状や帯状などの固形状に構成されていてもよい。
【0029】
(2)前述の実施形態では、防火防水用充填材1が、非通水性と耐熱性を有する合成ゴムを主成分とする場合を例に示したが、非通水性と耐熱性を有するウレタン樹脂やアクリル樹脂等の合成樹脂を主成分とするもの、或いは、非通水性と耐熱性を有する炭酸カルシウムを主成分とするものなどであってもよい。
【0030】
(3)前述の実施形態では、防火防水用充填材1を充填材収容袋2から取り出した上で使用する場合を例に示したが、充填材収容袋2に収容された状態で使用してもよい。
【0031】
(4)前述の実施形態では、防火防水用充填材1の使用例として、トンネルTにおけるセグメントどうしの接合部に防火防水措置を施す場合、及び、建築物の区画体Yにおける挿通体Pの貫通部に防火防水措置を施す場合を例に示したが、例えば、区画体Yの一例である壁体と建築設備(例えば、キッチン、洗面化粧台、浴槽など)との隙間に防火防水措置を施す場合や土木建造物や建築物以外のもの(例えば、自動車や産業機械やなど)に対して防火措置や防水措置を施す場合にも使用できる。要するに、防火措置や防水措置を要する種々の部位に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】防火防水充填材の説明図
【図2】防火防水充填材の使用状態を示す説明図
【図3】防火防水充填材の使用状態を示す説明図
【符号の説明】
【0033】
1 防火防水用充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非通水性と耐熱性とを備える防火防水用充填材であって、
濡水時及び加熱時の双方において全体的に膨らむように、水膨潤性を有する成分と熱膨張性を有する成分が混在状態で含有されている防火防水用充填材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−243106(P2009−243106A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89643(P2008−89643)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000119830)因幡電機産業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】