説明

防災扉、防災扉閉鎖装置

【課題】防火性能などの防災性能や防音性能を発揮するために構造物の開口部を閉鎖可能な防災扉、および防災扉を閉鎖するための防災扉閉鎖装置において、利用者がハンドルレバーなどを操作しなくても防災扉を高気密で閉鎖すること。
【解決手段】扉本体20が閉鎖方向へ回動する際には、ロッド40が、トリガー装置60によって保持状態が解除されるとともに、グレモン錠70によって上方への移動を許容される。すると、ロッド40の先端部40aが圧縮コイルバネ42の付勢力によって受け具50の内部へテーパ面40cおよび当接面40eに案内されながら挿入される。この際、蝶番15,15を中心にして回動させた扉本体20がシール材16を圧接しながら開口部10を閉鎖し、防災扉1に求められる防火性能などの防災性能や防音性能が実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防火性能などの防災性能や防音性能を発揮するために構造物の開口部を閉鎖可能な防災扉、および防災扉を閉鎖するための防災扉閉鎖装置に関し、特に、利用者がハンドルレバーなどを操作しなくても高気密で閉鎖可能な防災扉および防災扉閉鎖装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の開口にドア枠を取付け、そのドア枠の内側の出入口をドアによって開閉するドアの開閉装置が知られている。
このようなドアの開閉装置においては、例えばビルの機械室などのドアのように防音性能および防火性能が要求されるドアには、ドアの閉鎖時に気密状態が必要となり、この気密状態を形成すべく、ドアの開閉装置においてグレモン錠を取付けるようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このグレモン錠は、ハンドルレバーを有し、そのハンドルレバーを手動で操作することによる揺動によって上下一対のロッドを軸方向に移動させ、各ロッドの先端部に設けたテーパ部が例えばドア枠の上枠および下枠に取付けたロッド受け具内のローラと接触するカム作用により、ドアをドア枠の内周に設けた戸当り枠側に移動させ、その戸当り枠の表面に設けたシール部材にドアを圧接させるようにしている。このことにより、必要な防音性能および防火性能を発揮させている。
【特許文献1】特開平9−41763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のようなドアの開閉装置においては、ドアを閉鎖する際には、弾性を有するシール部材を押しつぶしながら上述のロッドの先端部をドア枠のロッド受け具内に納めることでドアを閉鎖させるため、ロッドの先端部がドア枠のロッド受け具内に納まるまでの間、グレモン錠のハンドルレバーを利用者が操作する必要があった。
【0005】
本発明は、このような不具合に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、利用者がハンドルレバーなどを操作しなくても高気密で閉鎖可能な防災扉および防災扉閉鎖装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた請求項1に係る防災扉は、構造物の開口部を開閉可能に支持された扉本体と、前記扉本体が前記開口部を閉鎖方向へ回動する際に前記開口部における前記扉本体と対向する部分に取り付けられた弾性を有するシール材と、テーパ面が形成された先端部を有し、前記先端部が前記扉本体から突出可能な棒状のロッドと、前記扉本体によって閉鎖された前記開口部における前記ロッドの先端部と対向する部分に形成され、前記ロッドの先端部が挿入可能な受け具と、前記ロッドの先端部が前記扉本体から突出するのを付勢する付勢手段と、前記扉本体に回転可能に取り付けられたハンドルレバーと、前記付勢手段の付勢力による前記ロッドの移動を許容するとともに、前記ハンドルレバーの回転を伝達することによって前記ロッドを前記付勢手段の付勢力に抗して移動させることが可能な伝達機構と、前記扉本体が前記開口部を開放する際に前記ロッドをその先端部が前記受け具から離間する位置で保持可能な保持手段と、前記扉本体が前記閉鎖方向へ回動する際に、前記保持手段による保持状態を解除させることで、前記受け具から離間する位置にある前記ロッドの先端部が前記受け具の内部へと移動可能とする解除手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
このように構成された本発明の防災扉によれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、扉本体が閉鎖方向へ回動する際には、上述のロッドについては、解除手段によって保持手段による保持状態が解除されるとともに、伝達機構によって付勢手段の付勢力によるロッドの移動が許容される。そして、ロッドの先端部が、付勢手段の付勢力によって受け具の内部へテーパ面に案内されながら挿入される。この際、扉本体がシール材を圧接しながら開口部を閉鎖し、防災扉に求められる防火性能などの防災性能や防音性能が実現する。したがって、扉本体が開口部を閉鎖する際にハンドルレバーを利用者が操作しなくても扉本体を高気密で閉鎖することができる。
【0008】
また、このように構成された本発明の防災扉によれば、ロッドの先端部における扉本体の前面側にはテーパ面が形成されている。このことにより、ロッドの先端部が、付勢手段の付勢力によって受け具の内部に挿入されやすい。
【0009】
ところで、上述の伝達機構については、次のように構成してもよい。すなわち、請求項2のように、伝達機構については、その一部がロッドの後端部に取り付けられ、ロッドの移動可能な方向と同一の方向に移動可能な伝達部材と、ハンドルレバーの回転に伴ってロッドおよび伝達部材の移動可能な方向と同一の方向に移動可能なスライダー部材と、を備える。このうちスライダー部材は、ロッドの先端部が扉本体の側面から突出する際に移動する方向である突出方向に移動する場合に伝達部材と当接する第一の当接部と、ロッドの先端部が突出方向とは反対方向であって前記扉本体へ挿入される際に移動する方向である隠蔽方向に移動する場合に伝達部材と当接する第二の当接部と、を備える。一方、伝達部材は、突出方向に移動するスライダー部材の第一の当接部と当接する第一の被当接部と、隠蔽方向に移動するスライダー部材の第二の当接部と当接する第二の被当接部と、を備える。さらに、スライダー部材および伝達部材は、第一の当接部と第一の被当接部とが当接する場合に第二の当接部と第二の被当接部とが当接せず、第二の当接部と第二の被当接部とが当接する場合に第一の当接部と第一の被当接部とが当接しないよう構成されている。
【0010】
このように構成すれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、(イ)スライダー部材の第一の当接部と伝達部材の第一の被当接部とが当接する場合には、ハンドルレバーを回転させることで、スライダー部材、伝達部材およびロッドを突出方向へ移動させることができる。また、解除手段によって保持状態が解除される場合(閉扉)には、ハンドルレバーを回転させなくても、伝達部材およびロッドを、スライダー部材の第二の当接部と伝達部材の第二の被当接部とが当接するまでは、付勢手段の付勢力によって突出方向へ移動させることができる。(ロ)また、スライダー部材の第二の当接部と伝達部材の第二の被当接部とが当接する場合には、ハンドルレバーを回転させることで、スライダー部材、伝達部材およびロッドを隠蔽方向へ移動させることができる。
【0011】
また、上述の伝達機構については、さらに、次のように構成してもよい。すなわち、伝達機構については、ハンドルレバーの回転に伴って回転可能なピニオンギヤを備え、伝達機構のスライダー部材は、ピニオンギヤに噛み合うよう配されたラックを有し、ハンドルレバーの回転がピニオンギヤを介してラックに伝達されることでハンドルレバーの回転に伴って移動させることができる。
【0012】
このように構成すれば、簡素な構成で、ハンドルレバーの回転運動をロッドの直線運動へ変換することができる。また、このように構成することにより、ハンドルレバーに対する戻りばねを容易に設定することができるとともに、ロッドの先端部に設置する戻りばねを容易に設定することができる。
【0013】
ところで、上述の保持手段については、さらに、次のように構成してもよい。すなわち、請求項3のように、保持手段が、ロッド先端部に形成された被係止部と、被係止部に係合可能な係止部と、を備えることができる。この場合、解除手段が、扉本体が閉鎖方向へ回動する際に、係止部を被係止部から離間させることで保持手段による保持状態を解除する。このように構成すれば、簡素な保持手段とすることができる。
【0014】
また、保持手段の被係止部については、複数の被係止部を、ロッド先端部の摺動方向に沿って形成してもよい。このように構成すれば、ロッドを扉本体内部に引き込んだ位置で保持することができる。また、扉本体の外形寸法のばらつきで扉本体と枠との間の隙間が大きくなっても、ロッドの先端部を適切に引き込んだ状態で保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施形態を図面とともに説明する。
[第一実施形態]
図1は第一実施形態の防災扉1を示す説明図である。また、図2は防災扉閉鎖装置30のロッド40および受け具50を示す説明図であり、図3は防災扉閉鎖装置30を示す説明図である。
【0016】
なお、ここで以下説明する各方向は、設置された閉鎖状態の防災扉の前面20dを正面から見て定義される。したがって、開放動作に伴い位置関係に変動が生じるが、すべて本閉鎖状態の定義方向を基準として説明されるものである。
【0017】
以降、この防災扉1において、開口部10の下枠部材12に対して開口部10の上枠部材11が配されている側を「上側」とし、上枠部材11に対して下枠部材12が配されている側を「下側」とする。また、防災扉1において、開口部10の左枠部材14に対して開口部10の右枠部材13が配されている側を「右側」とし、右枠部材13に対して左枠部材14が配されている側を「左側」とする。また、防災扉1において、図1における手前側(開放側)を「前側」とし、図1における向こう側(閉鎖側)を「後側」とする。
【0018】
[防災扉1の構成の説明]
図1に示すように、防災扉1は、建物内に設置された壁などに設けられた構造物の開口部10を防災のために閉鎖可能な扉本体20と、二つの蝶番15と、シール材16と、防災扉閉鎖装置30と、を備えている。
【0019】
扉本体20は、金属材料で構成され、略方形に形成されている。
二つの蝶番15のうちの一方は、その一片が扉本体20の側部20aの上部に取り付けられるとともに、他片が開口部10の右枠部材13の上部に取り付けられ、また、二つの蝶番15のうちの他方は、その一片が扉本体20の側部20aの下部に取り付けられるとともに、他片が開口部10の右枠部材13の下部に取り付けられ、蝶番15,15を中心として扉本体20を前後方向(開閉方向)に回動可能に支持する。
【0020】
シール材16は、例えばゴム材などの弾性を有する材料で構成され、その内部が中空であるチューブ状に形成されている。このシール材16は、開口部10を構成する各枠部材(上枠部材11、下枠部材12、右枠部材13、左枠部材14)それぞれに形成される戸当たり枠に取り付けられている。この際、このシール材16は、各枠部材の全長にわたって設けられている。なお、図2には、上枠部材11に形成される戸当たり枠11aと、戸当たり枠11aに取り付けられたシール材16とが図示されている。つまり、シール材16は開口部10の周縁に取り付けられている。
【0021】
[防災扉閉鎖装置30の構成の説明]
図1に示すように、防災扉閉鎖装置30は、上下二本のロッド40と、二つの受け具50と、二つのトリガー装置60と、グレモン錠70と、扉本体20を閉扉方向に付勢するドアクローザー90と、を備えている。
【0022】
このうち二本のロッド40は、金属製の棒材によって構成される。これら二本のロッド40のうちの一方は、扉本体20の内部にて、その先端部40aが扉本体20の上部側に配されるとともに、その後端部40bがグレモン錠70側に配されている。そして、この上側のロッド40は、扉本体20の内部を上下方向(扉本体20の高さ方向)に移動可能となっており、その先端部40aが扉本体20の側面20cからその上方へ突出可能である。
【0023】
また、上側のロッド40の先端部40aにおける扉本体20の前面20d側にはテーパ面40cおよび当接面40eが形成されている(図2、図3(b)参照)。この当接面40eは、扉本体20の前面20dと平行となるよう形成された平面である。また、ロッド40の先端部40aにおける当接面40eが形成された部分については、その扉本体20の厚さ方向の寸法が、ロッド40の先端部40aにおける他の部分の同厚さ方向の寸法よりも小さく形成されている。さらに、この当接面40eは、扉本体20が開口部10を閉鎖した場合に突起部20bがシール16を圧接している際に、この当接面40eがローラ54に押圧された状態で、ロッド40がその軸方向に沿って移動可能に形成されている。
【0024】
また、上側のロッド40の先端部40aは、付勢手段としての圧縮コイルバネ42によって扉本体20からその上方へ突出する方向に付勢されている(図3(a)参照)。圧縮コイルバネ42はロッド40に外挿され、その一端がロッド40の先端部40aに当接するとともに、その他端が扉本体20の内部に固定されている。したがって、圧縮コイルバネ42は、ロッド40の先端部40aを、当該先端部40aが軸方向に沿って扉本体20から外部(高さ方向)へ突出する方向に付勢している。
【0025】
ところで、二つのトリガー装置60の一方は、扉本体20の内部における扉本体20上端部付近に位置するロッド40の先端部40a近傍に配されており、他方のトリガー装置60は、扉本体20の内部における扉本体20下端部付近に位置するロッド40の先端部40a近傍に配されている。
【0026】
また、ロッド40の先端部40aにおけるトリガー装置60と対向する部分には、三つの係止溝40dがロッド40の軸方向に沿って並べて形成されている。なお、本実施形態では、ロッド40の先端部40aにおけるトリガー装置60と対向する部分に三つの係止溝40dをロッド40の軸方向に沿って形成した例を示したが、これには限られず、例えば、二つの係止溝40dを軸方向に沿って形成してもよいし、四つ以上の係止溝40dを軸方向に沿って形成してもよい。
【0027】
一方、二本のロッド40のうちの他方は、扉本体20の内部にて、その先端部40aが扉本体20の下部側に配されるとともに、その後端部40bがグレモン錠70側に配されている。そして、この下側のロッド40は、扉本体20の内部を上下方向(扉本体20の高さ方向)に移動可能となっており、その先端部40aが扉本体20からその下方へ突出可能である。なお、下側のロッド40については、上側のロッド40と同じ構成であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0028】
図2に示すように、二つの受け具50は、ケース51と、ケース51の開口部51aを覆う取付板52と、取付板52に形成され、ロッド40の先端部40aが挿入可能な挿入孔53と、が設けられ、また、ケース51の内部にローラ54が回転自在に取り付けられている。
【0029】
また、これら二つの受け具50のうちの一方は、開口部10の上枠部材11における閉鎖時の扉本体20と対向する部分にビス55を用いて取り付けられている。このように構成された上側の受け具50は、上側のロッド40の先端部40aが挿入孔53から内部に挿入した際に、上側のロッド40の先端部40aに設けたテーパ面40cとローラ54との接触に同期して扉本体20を戸当り枠11a側に移動させて、扉本体20の突起部20bをシール材16に圧接させる機能を有する。このようにしてロッド40の突出完了後、当接面40eによってシール材16の圧接状態が保持される。
【0030】
一方、これら二つの受け具50のうちの他方は、開口部10の下枠部材12における閉鎖時の扉本体20と対向する部分にビス(図示省略)を用いて取り付けられている。なお、下側の受け具50については、上側の受け具50と同じ構成であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
【0031】
また、二つのトリガー装置60のうちの上側のトリガー装置60は、図3に示すように、扉本体20の前後方向(扉本体20の厚さ方向)に沿って扉本体20の内部に設けられた回転軸61を中心にして回転可能に支持された板状の中央アーム62と、中央アーム62の一端62aにその一端63aが回転可能に取り付けられた板状のロッド側アーム63と、中央アーム62の他端62bにその一端64aが回転可能に取り付けられた板状の突出側アーム64と、圧縮コイルバネ65と、を備える。圧縮コイルバネ65は、ロッド側アーム63の延長方向に、一端が中央アーム62の一端62aに形成された支持部62cと接触して支持され、トリガー装置60内に設置される。これにより中央アーム62は回転軸61を中心に、右回転方向に付勢される。また、ロッド側アーム63については、その他端63bがロッド40の先端部40aに形成された係止溝40dの内部に挿入されるよう配置され、一方、突出側アーム64については、その他端64bが扉本体20の側面20cから突出するよう配置されている(図4参照)。また、ロッド側アーム63の端末である係止溝40dとの対向面には、右下がりに傾斜する傾斜部63dとロッド側アーム63下面の水平部63eとにより画定される傾斜面63cが形成されている。一方、上述のロッド40の各係止溝40dは、より具体的には、ロッド40の先端部40aにおけるロッド側アーム63の傾斜面63cと対向する部分に、ロッド側アーム63の傾斜面63cに合わせた形状に形成されている。
【0032】
このことにより、ロッド側アーム63の他端63bは、ロッド40の先端部40aが下方へ移動する際にその係止溝40dと係合しやすくなるとともに、ロッド側アーム63の他端63bがロッド40の係止溝40dに挿入される場合にはロッド40の先端部40aが上方へ移動するのを規制する。また、ロッド側アーム63の他端63bは、圧縮コイルバネ65によってロッド40の先端部40aへ向けて挿入方向へ付勢される。なお、トリガー装置60の各部は、突出側アーム64の他端64bが扉本体20の側面20cから突出する際には、ロッド側アーム63の他端63bがロッド40の係止溝40dの内部に挿入されるよう構成されている。
【0033】
また、突出側アーム64の他端64bの先端部には、扉本体20の厚さ方向Hに回転可能なローラ64cが取り付けられており、突出側アーム64の他端64bが扉本体20から突出する際に、左枠部材14とスムーズに接触して回転摺動することができる。
【0034】
なお、下側のトリガー装置60については、上側のトリガー装置60と同じ構成であるので、ここではその詳細な説明は省略する。
このように構成された二つのトリガー装置60それぞれは、ロッド側アーム63の他端63bをロッド40の係止溝40dに挿入させることで、扉本体20が開口部10を開放する際にロッド40をその先端部40aが受け具50から離間する位置で保持する機能を有する。このとき、ロッド40の先端部40aは、扉本体20に対して挿入される際に移動する方向である隠蔽方向に移動している。また、トリガー装置60は、扉本体20が閉鎖方向へ回動する際に突出側アーム64の他端64bを扉本体20の内部へ押し込んだ場合に(図3参照)、中央アーム62を介してロッド側アーム63の他端63bをロッド40の係止溝40dから離間させることで、受け具50から離間する位置にあるロッド40の先端部40aが受け具50の内部へと移動可能とする機能を有する。ここで、ロッド40の先端部40aは、扉本体20に対して突出される際に移動する方向である突出方向に移動している。なお、本実施形態では、突出方向と隠蔽方向とは互いに反対向きの方向である。
【0035】
なお、トリガー装置60は保持手段および解除手段に該当する。
図3に示すように、グレモン錠70は、ケース71の内部に、前後方向(扉本体20の厚さ方向)に沿って設けられた回転軸72を中心にして回転可能に取り付けられたハンドルレバー73と、回転軸72と同軸上に取り付けられたピニオンギヤ74と、ピニオンギヤ74と噛み合うラック75a,76aをそれぞれ有し、上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能な二つのスライダー部材75,76と、上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能な二つの伝達部材77,78と、を備える構成を有する。
【0036】
ケース71の底板71aには、スライダー部材75の裏面に設けられた二つのピン75d,75dを上下方向(ケース71の長手方向)にそれぞれ案内するための二つの長孔71b,71b、およびスライダー部材76の裏面に設けられた二つのピン76d,76dを上下方向(ケース71の長手方向)にそれぞれ案内するための二つの長孔71c,71cが形成されている。また、ケース71の底板71aには、伝達部材77の裏面に設けられた二つのピン77e,77eを上下方向(ケース71の長手方向)にそれぞれ案内するための二つの長孔71d,71d、および伝達部材78に設けられた二つのピン78e,78eを上下方向(ケース71の長手方向)にそれぞれ案内するための二つの長孔71e,71eが形成されている。
【0037】
スライダー部材75は、略直方体に形成され、その長手方向が上下方向(ケース71の長手方向)に沿うように配置されている。そして、スライダー部材75の一面には上述のラック75aが形成されており、ラック75aがピニオンギヤ74と噛み合っている。スライダー部材75の裏面に設けられた二つのピン75d,75dは、ケース71の底板71aに形成された二つの長孔71b,71bの内部にそれぞれ挿入され、長孔71bの長手方向の長さ分だけ上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能である。
【0038】
一方、スライダー部材76は、同様に略直方体に形成され、その長手方向が上下方向(ケース71の長手方向)に沿うように配置されている。そして、スライダー部材76の一面には上述のラック76aが形成されており、このラック76aがピニオンギヤ74と噛み合っている。スライダー部材76の裏面に設けられた二つのピン76d,76dは、ケース71の底板71aに形成された二つの長孔71c,71cの内部にそれぞれ挿入され、長孔71cの長手方向の長さ分だけ上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能である。
【0039】
伝達部材77は、その一端77aがケース71の上部付近にて上側のロッド40の後端部40bと連結されるとともに、その他端77bがスライダー部材75の近傍に配置されるよう形成され、ケース71内部をロッド40とともに上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能である。また、伝達部材77には、スライダー部材75の先端部75bと対向する上側対向面77cと、スライダー部材75の後端部75cと対向する下側対向面77dとが形成されている。伝達部材77の裏面に設けられた二つのピン77e,77eは、ケース71の底板71aに形成された二つの長孔71d,71dの内部にそれぞれ挿入され、長孔71dの長手方向の長さ分だけ上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能である。
【0040】
なお、これら上側対向面77cと下側対向面77dとの間の距離寸法については、スライダー部材75の先端部75bと伝達部材77の上側対向面77cとが当接する場合にスライダー部材75の後端部75cと伝達部材77の下側対向面77dとが当接せず、一方、スライダー部材75の後端部75cと伝達部材77の下側対向面77dとが当接する場合に、スライダー部材75の先端部75bと伝達部材77の上側対向面77cとが当接しないよう設定されている。なお、スライダー部材75が移動によりその先端部75bまたは後端部75cが伝達部材77の上側対向面77cまたは下側対向面77dに当接する場合、スライダー部材75からの動きに応じて、伝達部材77は上方または下方に移動する。例えば、伝達部材77の上側対向面77cでスライダー部材75の先端部75bとの当接状態が維持される場合、扉本体20が閉鎖ロックされる方向にあたる。また、伝達部材77の下側対向面77dとスライダー部材75の後端部75cとの間に隙間がある場合には、その隙間にある範囲で両部材に当接状態が発生するまでの間、伝達部材77に加わるロッド40の先端部40aの戻りばね力(圧縮コイルバネ42の付勢力)に応じて伝達部材77が上方に移動可能となっている。
【0041】
一方、伝達部材78は、その一端78aがケース71の下部付近にて下側のロッド40の後端部40bと連結されるとともに、その他端78bがスライダー部材76の近傍に配置されるよう形成され、ケース71内部をロッド40とともに上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能である。また、伝達部材78には、スライダー部材76の先端部76bと対向する下側対向面78cと、スライダー部材76の後端部76cと対向する上側対向面78dとが形成されている。また、伝達部材78の裏面には、二つのピン78e,78eが形成されている。これらピン78e,78eは、ケース71の底板71aに形成された二つの長孔71e,71eの内部にそれぞれ挿入され、長孔71eの長手方向の長さ分だけ上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能である。
【0042】
なお、これら下側対向面78cと上側対向面78dとの間の距離寸法については、伝達部材77と同様に、スライダー部材76の先端部76bと伝達部材78の下側対向面78cとが当接する場合にスライダー部材76の後端部76cと伝達部材78の上側対向面78dとが当接せず、一方、スライダー部材76の後端部76cと伝達部材78の上側対向面78dとが当接する場合に、スライダー部材76の先端部76bと伝達部材78の下側対向面78cとが当接しないよう設定されている。なお、スライダー部材76が移動によりその先端部76bまたは後端部76cが伝達部材78の下側対向面78cまたは上側対向面78dに当接する場合、スライダー部材76からの動きに応じて、伝達部材78は上方または下方に移動する。また、伝達部材78の上側対向面78dとスライダー部材76の後端部76cとの間に隙間がある場合には、その隙間にある範囲で両部材に当接状態が発生するまでの間、伝達部材78に加わるロッド40の先端部40aの戻りばね力(圧縮コイルバネ42の付勢力)に応じて伝達部材78が下方に移動可能となっている。
【0043】
以上のように構成されたグレモン錠70は、圧縮コイルバネ42の付勢力による上側のロッド40の上方への移動を許容するとともに、ハンドルレバー73の回転をスライダー部材75および伝達部材77を介して上側のロッド40の後端部40bへ伝達することによって上側のロッド40を上方または下方へ移動させることが可能である。また、グレモン錠70は、同様に、圧縮コイルバネ42の付勢力による下側のロッド40の下方への移動を許容するとともに、ハンドルレバー73の回転をスライダー部材76および伝達部材78を介して下側のロッド40の後端部40bへ伝達することによって下側のロッド40を上方または下方へ移動させることが可能である。
【0044】
また、グレモン錠70のケース71の下部には、デッドボルト79が設置されている。このデッドボルト79は、略直方体に形成されており、その長手方向がケース71の幅方向に沿うように配置され、且つ幅方向に移動可能になっている。
【0045】
また、デッドボルト79における上面にはラック79bが形成されており、このラック79bとピニオンギヤ74との間には四つのギヤ81,82,83,84が互いに噛み合うとともに、ギヤ81がラック79bと噛み合い、ギヤ84がピニオンギヤ74に噛み合うよう配置されている。したがって、ハンドルレバー73の回転に伴ってピニオンギヤ74が回転する際には、このピニオンギヤ74の回転がギヤ81,82,83,84を介してデッドボルト79のラック79bに伝達され、デッドボルト79が左右方向(ケース71の幅方向)に移動することができる。ここでハンドルレバー73は閉鎖時の防災扉1を前側から見て、右回転方向が閉鎖ロックへの移行方向であり、左回転方向は開放操作方向となる。また、ハンドルレバー73に対する閉回転方向への付勢力については、圧縮コイルバネ80によって開扉から閉扉の間付与されている。なお、ギヤ82にはワンウェイタイプのダンパーが内蔵されており、ハンドルレバー73は、図3に示すハンドルレバー位置まで閉回転方向にゆっくりと移動することができる。
【0046】
なお、スライダー部材75の先端部75bおよび後端部75cは第一の当接部および第二の当接部をそれぞれ形成する。また、スライダー部材76の先端部76bおよび後端部76cは第一の当接部および第二の当接部をそれぞれ形成する。また、伝達部材77の上側対向面77cおよび下側対向面77dは第一の被当接部および第二の被当接部をそれぞれ形成する。また、伝達部材78の下側対向面78cおよび上側対向面78dは第一の被当接部および第二の被当接部をそれぞれ形成する。
【0047】
なお、ドアクローザー90の構成については公知技術に従っているのでここではその詳細な説明は省略する。また、防災扉閉鎖装置30のその他の構成については公知技術に従っているのでここではその詳細な説明は省略する。
【0048】
[防災扉1の動作の説明]
次に、防災扉1の動作を、図3〜図7を参照して説明する。なお、以下の説明においては、上側のロッド40、上側の受け具50、上側のトリガー装置60およびこれらに関係する機構の動作について説明し、下側のロッド40、下側の受け具50、下側のトリガー装置60およびこれらに関係する機構の動作については、上述の上側の構成と同様の動作を行うのでその詳細な説明は省略する。
【0049】
[初期状態(閉扉時)(A)]
まず、図3に示すように、扉本体20が開口部10を閉鎖している状態においては、グレモン錠70のハンドルレバー73を水平位置から約10度下方に回転させた位置にあり、ピニオンギヤ74がスライダー部材75のラック75aのほぼ中央部およびスライダー部材76のラック76aのほぼ中央部で噛み合っている。また、このように扉本体20が開口部10を閉鎖している状態においては、扉本体20の突起部20bがシール16を圧接しており、ロッド40が、その当接面40eがローラ54に押圧された状態で、その軸方向に沿って移動可能である。また、トリガー装置60については、突出側アーム64の他端64bが開口部10の左枠部材14に当接して扉本体20の内部へ押し込まれている。このことにより、ロッド側アーム63の他端63bがロッド40の係止溝40dから離間し、ロッド40の先端部40aが圧縮コイルバネ42の付勢力によって受け具50の内部へ挿入されている。また、ロッド40が上方へ移動していることに伴い、グレモン錠70の伝達部材77がケース71内部で上方へ移動しており、伝達部材77の下側対向面77dがスライダー部材75の後端部75cと当接している。さらに、デッドボルト79については、その先端部79aが扉本体20の内部に位置している。
【0050】
[開扉時(B)]
ここで、図4に示すように、グレモン錠70のハンドルレバー73を左回転方向に80度回転させると、ハンドルレバー73と同軸上に取り付けられたピニオンギヤ74と噛み合うラック75aを介してスライダー部材75が下方に移動する。なお、トリガー装置60については、扉本体20が前側(開放側)へ移動した場合には、突出側アーム64の他端64bが開口部10の左枠部材14から離間し、突出側アーム64の突出方向に付与された圧縮コイルバネ65の付勢力によって扉本体20から外部へ移動可能となる。スライダー部材75が下方に移動すると、スライダー部材75の後端部75cが、下側対向面77dと当接しながら伝達部材77を下方へ押し下げ、伝達部材77の一端77aに取り付けられたロッド40が伝達部材77の移動に伴い、圧縮コイルバネ42の付勢力に抗して下方へと移動する。この際、ロッド40の先端部40aが受け具50の挿入孔53から離間し、トリガー装置60のロッド側アーム63の他端63bが、傾斜面63cに案内されながら、圧縮コイルバネ65による挿入方向への付勢力によって、ロッド40の先端部40aの係止溝40dの内部へと挿入される。つまり、トリガー装置60が、ロッド40の先端部40aが受け具50から離間した位置でロッド40を保持することとなる(アンロック保持状態)。さらに、デッドボルト79については、ハンドルレバー73の左回転方向への回転に伴って、扉本体20の内部をケース71の幅方向右側へゆっくりと移動している。
【0051】
なお、作業者がハンドルレバー73から手を離すと、ハンドルレバー73が、デッドボルト79の圧縮コイルバネ80の作用によって、デッドボルト79のラック79bがケース71の幅方向左側に移動するとともに、ラック79bと噛み合うピニオンギヤ81を回転させ、ピニオンギヤ82,83,84を介してハンドルレバー73と同軸に取り付けられたピニオンギヤ74を回転させ、ピニオンギヤ74とラック75aを介して、スライダー部材75の先端部75bが伝達部材77の上側対向面77cに当接するまで右回転方向に回転し、図5に示す状態となる。同時に、デッドボルト79も、圧縮コイルバネ80の作用によって左方向へ移動する。
【0052】
[閉扉時(C)]
ところで、前記[開扉時(B)]のように開口部を開放した状態から、蝶番15,15を中心にして扉本体20を後側へ回動させると、トリガー装置60の突出側アーム64の他端64bのローラ64cが開口部10の左枠部材14に当接して扉本体20の内部へ押し込まれる。すると、トリガー装置60のロッド側アーム63の他端63bが、ロッド40の先端部40aの係止溝40dの内部から離間し、ロッド40が上方へ移動可能となる。このようにトリガー装置60によってロッド40の保持状態が解除されると、グレモン錠70においては、上述のように、スライダー部材75の先端部75bが伝達部材77の上側対向面77cに当接しているために伝達部材77が上方へ移動可能な状態であるため、ロッド40の先端部40aが圧縮コイルバネ42の付勢力によって受け具50の内部へテーパ面40cおよび当接面40eに案内されながら挿入され、蝶番15,15を中心にして回動させた扉本体20がシール材16を圧接しながら開口部10を閉鎖する。この場合、伝達部材77は、ロッド40の上方への移動に伴って上方に移動し、その下側対向面77dがスライダー部材75の後端部75cに当接し、図6に示す状態(初期状態:図3に示す状態)となる。
【0053】
[扉ロック時(D)]
ここで、図6に示す状態から、ハンドルレバー73を右回転方向に80度回転させると、スライダー部材75が上方へと移動し、その先端部75bが伝達部材77の上側対向面77cに当接し、図7に示す状態となる。なお、仮に、ロッド40の先端部40aが受け具50の内部へ充分に挿入されていなかった場合には、このスライダー部材75の上方への移動によって伝達部材77が上方へ押し上げられ、ロッド40の先端部40aが受け具50の内部へテーパ面40cおよび当接面40eに案内されながら挿入される。このとき、伝達部材77とスライダー部材75とは、ピニオンギヤ74を介して互いに移動不可能な状態となっており(メカニカルロック)、このことによってロッド40の先端部が移動できず、閉鎖ロック状態が維持される。また、デッドボルト79が、ハンドルレバー73の回転によって左方向へ移動して扉本体20から突出し、開口部10の左枠部材14の受け具の内部に挿入されて開口部10が扉本体20によって完全に閉鎖される。なお、ハンドルレバー73が閉扉から扉をロックする位置へと回転する間には、デッドボルト79に対して圧縮コイルバネ80による付勢力が作用しないように設定されている。
【0054】
また、扉本体20がロックされる状態からグレモン錠70のハンドルレバー73を左回転方向に80度回転させると、スライダー部材75が、その後端部75cが伝達部材77の下側対向面77dと当接するまで下方に移動する。また、デッドボルト79については、ハンドルレバー73における左回転方向への回転に伴って、扉本体20の内部を右方向へ位置する。そして、初期状態に戻る(図3参照)。
【0055】
[第一実施形態の効果]
(1)このように第一実施形態の防災扉1によれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、扉本体20が閉鎖方向へ回動する際には、ロッド40が、トリガー装置60によって保持状態が解除されるとともに、グレモン錠70によって上方への移動を許容される。すると、ロッド40の先端部40aが圧縮コイルバネ42の付勢力によって受け具50の内部へテーパ面40cおよび当接面40eに案内されながら挿入される。この際、蝶番15,15を中心にして回動させた扉本体20がシール材16を圧接しながら開口部10を閉鎖完了させ、防災扉1に求められる防火性能などの防災性能や防音性能が実現する。したがって、扉本体20が開口部10を閉鎖する際にハンドルレバー73を利用者が操作しなくても扉本体20を高気密で閉鎖することができる。
【0056】
(2)また、第一実施形態の防災扉1によれば、ロッド40の先端部40aにおける扉本体20の前面20d側にはテーパ面40cおよび当接面40eが形成されている。このことにより、ロッド40の先端部40aが、圧縮コイルバネ42の付勢力によって受け具50の内部に挿入されやすい。
【0057】
(3)また、第一実施形態の防災扉1によれば、伝達部材77における上側対向面77cと下側対向面77dとの間の距離寸法については、スライダー部材75の先端部75bと伝達部材77の上側対向面77cとが当接する場合にスライダー部材75の後端部75cと伝達部材77の下側対向面77dとが当接せず、一方、スライダー部材75の後端部75cと伝達部材77の下側対向面77dとが当接する場合に、スライダー部材75の先端部75bと伝達部材77の上側対向面77cとが当接しないよう設定されている。なお、伝達部材78についても同様である。
【0058】
このように構成すれば、次のような作用効果を奏する。すなわち、(イ)開扉時から閉扉時までにおいて、スライダー部材75の先端部75bと伝達部材77の上側対向面77cとが当接する方向に、ハンドルレバー73を回転させることで、スライダー部材75、伝達部材77およびロッド40を突出方向へ移動させることができる。また、この場合には、ハンドルレバー73を回転させなくても、伝達部材77およびロッド40を、スライダー部材75の後端部75cと伝達部材77の下側対向面77dとが当接するまでは、圧縮コイルバネ42の付勢力によって突出方向への状態を維持することができる。(ロ)また、閉扉時から開扉時までにおいて、スライダー部材75の後端部75cと伝達部材77の下側対向面77dとが当接する場合には、ハンドルレバー73を左回転方向に回転させることで、スライダー部材75、および伝達部材77を下方へ移動させてロッド40の先端部40aを隠蔽させることができる。
【0059】
(4)また、第一実施形態の防災扉1によれば、グレモン錠70が、ケース71の内部に、前後方向(扉本体20の厚さ方向)に沿って設けられた回転軸72を中心にして回転可能に取り付けられたハンドルレバー73と、回転軸72と同軸上に取り付けられたピニオンギヤ74と、ピニオンギヤ74と噛み合うラック75a,76aをそれぞれ有し、上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能な二つのスライダー部材75,76と、上下方向(ケース71の長手方向)に移動可能な二つの伝達部材77,78と、を備える構成を有しており、スライダー部材75の一面にはラック75aが形成され、そのラック75aがピニオンギヤ74と噛み合っている。なお、スライダー部材76についても同様である。
【0060】
このように構成すれば、簡素な構成で、ハンドルレバー73の回転運動をロッド40の直線運動へ変換することができる。また、ハンドルレバー73の回転と連動するギヤ81の動きから、デッドボルト79の直線運動を容易に構成することができる。このようにしてデッドボルト79に対する圧縮コイルバネ80や、ロッド40の先端部に対して上述の圧縮コイルバネ42のような戻りばねを容易に設定することができる。
【0061】
(5)また、第一実施形態の防災扉1によれば、トリガー装置60が、扉本体20の内部に前後方向(扉本体20の厚さ方向)に沿って設けられた回転軸61を中心にして回転可能に支持された板状の中央アーム62と、中央アーム62の一端62aにその一端63aが回転可能に取り付けられた板状のロッド側アーム63と、中央アーム62の他端62bにその一端64aが回転可能に取り付けられた板状の突出側アーム64と、を備える。そして、ロッド側アーム63については、その他端63bがロッド40の先端部40aに形成された係止溝40dの内部に挿入されるよう配置され、一方、突出側アーム64については、その他端64bが扉本体20の側面20cから突出するよう配置されている(図4参照)。そして、トリガー装置60の各部が、突出側アーム64の他端64bが扉本体20の側面20cから突出する際には、ロッド側アーム63の他端63bがロッド40の係止溝40dの内部に挿入されるよう構成されている。このことにより、簡素な構成でトリガー装置60を構成することができる。
【0062】
(6)また、第一実施形態の防災扉1によれば、ロッド40の先端部40aにおけるトリガー装置60と対向する部分に複数の係止溝40dが形成されている。このことにより、ロッド40を扉本体20内部に、当初設定位置より引き込んだ位置で保持することができる。また、扉本体20の外形寸法のばらつきで扉本体20と開口部10との間の隙間が大きくなっても、係止溝40dとロッド側アーム63の傾斜面63cとの係合位置をずらすことによりロッド側アーム63の突出完了までのストローク量を増加させることができ、ロッド40の先端部40aを適切に引き込んだ状態で保持することができる。
【0063】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のような様々な態様にて実施することが可能である。
【0064】
(1)上記実施形態では、圧縮コイルバネ80がハンドルレバー73を閉回転方向へ付勢するよう構成されているが、これには限られず、上述の圧縮コイルバネ80を備える代わりに、捻りコイルバネをハンドルレバーの回転軸上に設置し、この捻りコイルバネがハンドルレバー73を閉回転方向へ付勢するよう構成するようにしてもよい。
【0065】
(2)上記実施形態のロッド40においては、その先端部40aにおけるトリガー装置60と対向する部分に複数の係止溝40dが形成されているが、これには限られず、ロッド40の先端部40aにおけるトリガー装置60と対向する部分に、一つの係止溝40dを形成してもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、扉本体20をデッドボルト79にてロックすることが可能に構成されているが(「扉ロック時(D)」参照)、これには限られず、扉本体20をロックしないように構成してもよい。なおこの場合、上述のデッドボルト79およびギヤ81,82,83,84を廃止することが可能となる。
【0067】
(4)上記実施形態では、シール材16が各枠部材の全長にわたって設けられているが、これには限られず、シール材16を各枠部材の一部に対して必要に応じて省いて設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】第一実施形態の防災扉1および防災扉閉鎖装置30を示す説明図である。
【図2】防災扉閉鎖装置30のロッド40および受け具50を示す説明図である。
【図3】(a)は防災扉閉鎖装置30を示す説明図(1)であり、(b)は図3(a)中のA視図である。
【図4】防災扉閉鎖装置30を示す説明図(2)である。
【図5】防災扉閉鎖装置30を示す説明図(3)である。
【図6】防災扉閉鎖装置30を示す説明図(4)である。
【図7】防災扉閉鎖装置30を示す説明図(5)である。
【符号の説明】
【0069】
1…防災扉、10…開口部、11…上枠部材、11a…戸当たり枠、12…下枠部材、13…右枠部材、14…左枠部材、15…蝶番、16…シール材、20…扉本体、20a…扉本体の側部、20b…扉本体の突起部、20c…扉本体20の側面、20d…扉本体20の前面、30…防災扉閉鎖装置、40…ロッド、40a…ロッドの先端部、40b…ロッドの後端部、40c…テーパ面、40d…係止溝、40e…当接面、42…圧縮コイルバネ、50…受け具、51…ケース、51a…ケースの開口部、52…取付板、53…挿入孔、54…ローラ、55…ビス、60…トリガー装置、61…回転軸、62…中央アーム、62a…中央アームの一端、62b…中央アームの他端、62c…支持部、63…ロッド側アーム、63a…ロッド側アームの一端、63b…ロッド側アームの他端、63c…傾斜面、63d…傾斜部、63e…水平部、64…突出側アーム、64a…突出側アームの一端、64b…突出側アームの他端、64c…ローラ、65…圧縮コイルバネ、70…グレモン錠、71…ケース、71a…ケースの底板、71b,71c,71d,71e…長孔、72…回転軸、73…ハンドルレバー、74…ピニオンギヤ、75,76…スライダー部材、75a,76a…ラック、75b,76b…スライダー部材の先端部、75c,76c…スライダー部材の後端部、75d,76d…スライダー部材のピン、77,78…伝達部材、77a,78a…伝達部材の一端、77b,78b…伝達部材の他端、77c,78d…上側対向面、77d,78c…下側対向面、77e,78e…伝達部材のピン、79…デッドボルト、79a…デッドボルトの先端部、79b…デッドボルトのラック、80…圧縮コイルバネ、81,82,83,84…ギヤ、90…ドアクローザー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の開口部を開閉可能に支持された扉本体と、
前記扉本体が前記開口部を閉鎖方向へ回動する際に前記開口部における前記扉本体と対向する部分に取り付けられた弾性を有するシール材と、
テーパ面が形成された先端部を有し、前記先端部が前記扉本体から突出可能な棒状のロッドと、
前記扉本体によって閉鎖された前記開口部における前記ロッドの先端部と対向する部分に形成され、前記ロッドの先端部が挿入可能な受け具と、
前記ロッドの先端部が前記扉本体から突出するのを付勢する付勢手段と、
前記扉本体に回転可能に取り付けられたハンドルレバーと、
前記付勢手段の付勢力による前記ロッドの移動を許容するとともに、前記ハンドルレバーの回転を伝達することによって前記ロッドを前記付勢手段の付勢力に抗して移動させることが可能な伝達機構と、
前記扉本体が前記開口部を開放する際に前記ロッドをその先端部が前記受け具から離間する位置で保持可能な保持手段と、
前記扉本体が前記閉鎖方向へ回動する際に、前記保持手段による保持状態を解除させることで、前記受け具から離間する位置にある前記ロッドの先端部が前記受け具の内部へと移動可能とする解除手段と、
を備え、前記扉本体が前記閉鎖方向へ回動する際に、前記解除手段によって前記保持手段による保持状態が解除されるとともに前記伝達機構によって前記付勢手段の付勢力による移動を許容された前記ロッドの先端部が前記付勢手段の付勢力によって前記受け具の内部へ前記テーパ面に案内されながら挿入されることにより、前記扉本体が前記シール材を圧接しながら前記開口部を閉鎖することを特徴とする防災扉。
【請求項2】
請求項1に記載の防災扉において、
前記伝達機構は、
その一部が前記ロッドの後端部に取り付けられ、前記ロッドの移動可能な方向と同一の方向に移動可能な伝達部材と、
前記ハンドルレバーの回転に伴って前記ロッドおよび前記伝達部材の移動可能な方向と同一の方向に移動可能なスライダー部材と、を備え、
前記スライダー部材は、
前記ロッドの先端部が前記扉本体の側面から突出する際に移動する方向である突出方向に移動する場合に前記伝達部材と当接する第一の当接部と、
前記ロッドの先端部が前記突出方向とは反対方向であって前記扉本体へ挿入される際に移動する方向である隠蔽方向に移動する場合に前記伝達部材と当接する第二の当接部と、を備え、
一方、前記伝達部材は、
前記突出方向に移動する前記スライダー部材の前記第一の当接部と当接する第一の被当接部と、
前記隠蔽方向に移動する前記スライダー部材の前記第二の当接部と当接する第二の被当接部と、を備え、
さらに、前記スライダー部材および前記伝達部材は、前記第一の当接部と前記第一の被当接部とが当接する場合に前記第二の当接部と前記第二の被当接部とが当接せず、前記第二の当接部と前記第二の被当接部とが当接する場合に前記第一の当接部と前記第一の被当接部とが当接しないよう構成されていること
を特徴とする防災扉。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の防災扉において、
前記保持手段は、
前記ロッド先端部に形成された被係止部と、
前記被係止部に係合可能な係止部と、を備え、
前記解除手段は、前記扉本体が前記閉鎖方向へ回動する際に、前記係止部を前記被係止部から離間させることで前記保持手段による保持状態を解除すること
を特徴とする防災扉。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載の防災扉が備えるロッド、受け具、付勢手段、ハンドルレバー、伝達機構、保持手段および解除手段を備え、前記扉本体が前記閉鎖方向へ回動する際に、前記解除手段によって前記保持手段による保持状態が解除されるとともに前記伝達機構によって前記付勢手段の付勢力による前記ロッドの移動を許容された前記ロッドの先端部が前記付勢手段の付勢力によって前記受け具の内部へ前記テーパ面に案内されながら挿入されることにより、前記扉本体が前記シール材を圧接しながら前記開口部を閉鎖することを特徴とする防災扉閉鎖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−303689(P2008−303689A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154263(P2007−154263)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(592108089)株式会社日本設計 (7)
【出願人】(392036876)鐵矢工業株式会社 (4)
【出願人】(503428703)オイレスECO株式会社 (69)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【Fターム(参考)】