説明

防災用具及び非常用便座

【課題】持ち運びに便利な防災用具及び非常用便座を提供すること。さらには、各種の防災用品が収納可能で、普段は人目につく場所に置いておけるようにした防災用具を提供すること。
【解決手段】この発明の防災用具及は、略C字状の第1半体1と第2半体2とを結合して略ドーナツ形状となるようにしており、さらに、第1半体1と第2半体2をそれぞれ折り畳み可能とした非常用便座3と、上方に開口した容器4とを備え、前記非常用便座3は容器4の開口部に着脱可能であるとともに、第1半体1と第2半体2に分離し、折り畳んで他の防災用品とともに容器4内に収容可能にしたものとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、災害時等に使用できる防災用具及び非常用便座に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地震等の災害時に使用される防災用具としては、特許文献1に記載のような非常用トイレキットがある。この非常用トイレキットは、箱型のキットAに折り畳みトイレ椅子Dなどが格納されるようになっており、地面に設置した折り畳みトイレ椅子Dの上に多機能便座aを被せられるようにしたものである。
【0003】
この非常用トイレキットは、持ち運びが可能であり、災害時等において便利に使用できるが、前記多機能便座aは嵩張るものであり、キットAに収納することができないため、持ち運ぶには不便を強いられていた。
【0004】
また、キットAに収納されるのは、もっぱらトイレ用品のみであり、食料品、防寒具、その他各種の防災用品が収納されるようにしていないため、この非常用トイレキットのみでは、災害時の避難生活には対応できず、防災用具としては不十分であった。また、災害発生時にすぐに持ち出せるような、普段、人目につく場所に置いておけるように配慮されたものではなかった。
【特許文献1】特開2003−230503
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、持ち運びに便利な防災用具及び非常用便座を提供することを課題とする。さらには、各種の防災用品が収納可能で、普段は人目につく場所に置いておけるようにした防災用具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の防災用具及は、略C字状の第1半体1と第2半体2とを結合して略ドーナツ形状となるようにしており、さらに、第1半体1と第2半体2をそれぞれ折り畳み可能とした非常用便座3と、上方に開口した容器4とを備え、前記非常用便座3は容器4の開口部に着脱可能であるとともに、第1半体1と第2半体2に分離し、折り畳んで他の防災用品とともに容器4内に収容可能にしたものとしている。
【0007】
この防災用具及は、容器4の開口部に取り付けられる蓋9を備え、前記蓋9の上には造花10を設けており、さらに、造花10の茎、枝、葉又は花の部分に地震センサー11を取り付けたものとすることができる。
【0008】
また、非常用便座3の第1半体1と第2半体2の結合箇所は、一方に設けられた差込穴5に、他方に設けられた差込片6を差し込むことにより結合されるようにしたものとすることができる。
【0009】
さらに、第1半体1と第2半体2がそれぞれ中間で分割され、各分割された部分1a,1b,2a,2bが蝶番7により連結されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明の防災用具及び非常用便座3は、上述のような構成を有しており、非常用便座3を折り畳んでコンパクトにすることができ、そして、折り畳んだ非常用便座3を他の防災用品とともに容器4内に収容できるので、持ち運びに便利である。
【0011】
また、容器4の開口部に取り付けられる蓋9を備え、前記蓋9の上には造花10を設けており、さらに、造花10の茎、枝、葉又は花の部分に地震センサー11を取り付けたものとすれば、災害発生時にすぐに持ち出せるような、普段は人目につく場所に置いておくことができ、また、地震の発生を地震センサー11が感知することにより、非難行動に役立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、この発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1はこの発明の実施形態の防災用具の斜視図、図2は防災用品を収容した状態の容器4の斜視図、図3は折り畳んだ状態の非常用便座3の第1半体1と第2半体2の斜視図、図4は非常用便座3の第1半体1と第2半体2の斜視図、図5は非常用便座3(結合状態)の斜視図、図6は非常用便座3の裏面を上にした場合の斜視図、図7は非常用便座3を容器4に取り付けた場合の斜視図、図8は非常用便座3を容器4に取り付けた場合の断面図、図9は2つの容器4を上下に配置した場合の斜視図である。
【0014】
この防災用具は、略C字状の第1半体1と第2半体2とを結合して略ドーナツ形状となるようにしており、さらに、第1半体1と第2半体2をそれぞれ折り畳み可能とした非常用便座3と、上方に開口した容器4とを備え、前記非常用便座3は容器4の開口部に着脱可能であるとともに、第1半体1と第2半体2に分離し、折り畳んで他の防災用品とともに容器4内に収容可能なものとしている。
【0015】
非常用便座3は、木材、プラスチック、金属等適宜の素材からなるものとすることができる。非常用便座3の第1半体1と第2半体2は、それぞれドーナツ状の板を半分に分割したような形状であり、それらの結合箇所は、一方に設けられた差込穴5に、他方に設けられた差込片6を差し込むことにより結合されるようにしたものとしている。
【0016】
具体的には、図4等に表れているように、第1半体1の両端部に差込穴5を設け、第2半体2の両端部に差込片6を突出するように設けたものとすることができる。差込片6の形状は、しっかりと結合状態が維持されるように、差込穴5に嵌合する形状であって、さらに、安全に使用できるように、先端に丸みがある形状とするとよい。
【0017】
なお、第1半体1と第2半体2とは、同一ないし対称な形状とする必要はなく、また、それぞれ角張った形状であってもよい。
【0018】
第1半体1と第2半体2の各分割された部分1a,1b,2a,2bは、蝶番7により連結されたものとしている。第1半体1と第2半体2は、いずれも両端間の略中央で、周の半径方向に沿って分割されており、分割された各部分1a,1b,2a,2bがそれぞれ全体の4分の1程度の大きさとなる。そして、図3に表れているように、第1半体1と第2半体2は、それぞれ2つ折り状に折り畳むことにより、コンパクトにすることができる。
【0019】
また、非常用便座3には、容器4の開口部に固定するための固定部8が設けられている。固定部8は、非常用便座3の裏面に設けられた凸状部分であり、容器4の開口部の縁の外周に当接するようになっている。固定部8は、適宜間隔で複数個設けるとよい。例えば、図6に表れているように、第1半体1と第2半体2の分割された各部分1a,1b,2a,2bに、それぞれ少なくとも1つの固定部8が設けられたものとするとよい。
【0020】
容器4は、円形の底部と、上方に向かって拡径する略円筒状の周壁を有するものとしている。この容器4は、市販されているプラスチック製のバケツをそのまま利用することができる。
【0021】
容器4の内部には、図2に示したように、前記折り畳んだ状態にした非常用便座3の第1半体1と第2半体2の他、非常用の食品、飲料ボトル、ナイフ、ロープ、ブルーシート、粘着テープ、手袋、カイロ、懐中電灯、ろうそく、薬品、救急用具、筆記用具、水分吸収材等、様々な防災用品を収容することができる。
【0022】
また、この防災用具は、容器4の開口部に取り付けられる蓋9を備え、前記蓋9の上には造花10を設けており、前記蓋9の上方において造花10の茎、枝、葉又は花の部分に地震センサー11を取り付けたものとしている。この構成により、防災用具は、装飾品として利用できるので、普段は人目につく場所に置いておいても不自然さがなく、下駄箱の上や、居間、台所その他各種の部屋に自由に設置し、災害発生時にすぐに持ち出すことができる。
【0023】
蓋9は、容器4の開口部の内側面に嵌合するようにした円板状であり、対向する一対の切り欠け部12が縁部に設けられ、着脱する際に手で持ちやすくなっている。蓋9の上面には、造花10の茎の下端部が固定されており、また、導線を介して地震センサー11に接続された制御用電子回路や電源を内蔵したボックス13が取り付けられている。
【0024】
前記ボックス13は、地震センサー11が揺れを検知したときに警報音を発するようにしたスピーカーや、警報音を止めるためのスイッチを設けたものとすることができる。さらに、造花10の茎、枝、葉又は花の部分に発光ダイオード等の発光体を取り付け、地震センサー11が揺れを検知したときに発光させるようにしてもよい。このように、地震発生時に音や光を発せられるようにすれば、停電がおきて暗くなった場合でも、容易にこの防災用具を見つけることができる。
【0025】
造花10は、地震の際に比較的大きく揺れるため、地震センサー11は地震を敏感に感知することができる。そのため、この防災用具を設置しておくと、地震発生の初期の段階で地震が発生したことが周りの人にわかるため、迅速な避難行動が可能となる。造花10への人との接触等、地震以外の揺れを感知してしまうことを防止するためには、例えば、ボックス13に内蔵された制御用電子回路により、地震センサー11が5秒間以上の揺れを検知した場合にのみ、警報音や発光が発せられるようにするとよい。
【0026】
なお、造花10は、高い位置にある部分ほど揺れやすくなるので、地震の揺れを鋭敏に感知させるようにするには、地震センサー11を高い位置に取り付けるとよい。また、地震センサー11が外に露出して見栄えが悪いと感じられる場合には、造花10の花の内側や、葉に隠れる箇所に地震センサー11を設けるとよい。
【0027】
次に、この防災用具の非常用便座3の使用方法について説明する。
【0028】
非難時等に用を足したくなった場合、まず容器4の蓋9を取り外し、容器4に収容されている非常用便座3の第1半体1と第2半体2、及びその他の防災用品を取り出す。容器4の内部には、水分吸収剤14を適宜量入れておく。水分吸収剤14は、従来の非常用トイレやオムツ等に利用されている高分子吸収ポリマーとすることができる。また、脱臭剤や芳香剤を加えてもよい。
【0029】
そして、第1半体1と第2半体2とを結合して図5に示したような略ドーナツ形状の非常用便座3を完成させ、その裏面の固定部8を容器4の開口部の縁の外周に当接させて取り付ける。
【0030】
この状態において、使用者は、非常用便座3に腰をかけて容器4内に排泄することができる。排泄物は、水分吸収剤14により水分が吸収され、容易に処理することが可能となる。なお、非常用便座3の位置が低いために使用しづらい場合には、図9に示したように、容器4と同形状の別の容器4を、開口部を下にして置き、その上に非常用便座3を取り付けた容器4を載せて非常用便座3の位置を高くするとよい。下に置く容器4は、不使用時においては、上に載せる容器4をその内側に重ねた状態とすることにより、嵩高くならないようにすることができる。
【0031】
なお、この防災用具及び非常用便座3は、上述の実施形態の構成に限定されるものではなく、素材、形状、寸法等を適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施形態の防災用具の斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の防災用具の、防災用品を収容した状態の容器の斜視図である。
【図3】この発明の実施形態の折り畳んだ状態の非常用便座の第1半体と第2半体の斜視図である。
【図4】この発明の実施形態の非常用便座の第1半体と第2半体の斜視図である。
【図5】この発明の実施形態の非常用便座(結合状態)の斜視図である。
【図6】この発明の実施形態の非常用便座の裏面を上にした場合の斜視図である。
【図7】この発明の実施形態の防災用具の、非常用便座を容器に取り付けた場合の斜視図である。
【図8】この発明の実施形態の防災用具の、非常用便座を容器に取り付けた場合の断面図である。
【図9】この発明の実施形態の防災用具の、2つの容器を上下に配置した場合の斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 第1半体
1a,1b 第1半体の分割された部分
2 第2半体
2a,2b 第2半体の分割された部分
3 非常用便座
4 容器
5 差込穴
6 差込片
7 蝶番
9 蓋
10 造花
11 地震センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略C字状の第1半体(1)と第2半体(2)とを結合して略ドーナツ形状となるようにしており、さらに、第1半体(1)と第2半体(2)をそれぞれ折り畳み可能とした非常用便座(3)と、上方に開口した容器(4)とを備え、前記非常用便座(3)は容器(4)の開口部に着脱可能であるとともに、第1半体(1)と第2半体(2)に分離し、折り畳んで他の防災用品とともに容器(4)内に収容可能となっていることを特徴とする防災用具。
【請求項2】
容器(4)の開口部に取り付けられる蓋(9)を備え、前記蓋(9)の上には造花(10)を設けており、さらに、造花(10)の茎、枝、葉又は花の部分に地震センサー(11)を取り付けている請求項2記載の防災用具。
【請求項3】
略C字状の第1半体(1)と第2半体(2)とを結合して略ドーナツ形状となるようにしており、さらに、第1半体(1)と第2半体(2)をそれぞれ折り畳み可能としていることを特徴とする非常用便座。
【請求項4】
第1半体(1)と第2半体(2)の結合箇所は、一方に設けられた差込穴(5)に、他方に設けられた差込片(6)を差し込むことにより結合されるようにしたものである請求項3記載の非常用便座。
【請求項5】
第1半体(1)と第2半体(2)がそれぞれ中間で分割され、各分割された部分(1a)(1b)(2a)(2b)が蝶番(7)により連結されたものとしている請求項3又は4記載の非常用便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−289625(P2008−289625A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137347(P2007−137347)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(303067353)株式会社岩や (1)
【Fターム(参考)】