説明

防爆エリア用バリア装置

【課題】外部装置と防爆エリア内の機器とを接続する信号線の電流・電流制限回路の後段で、電流・電圧制限回路によって波形の崩れた信号を外部装置から出力された状態に復元し、防爆エリア内の機器に高周波数の信号を正確に供給できるようにする。
【解決手段】防爆エリア外のロボットコントローラ30と防爆エリア内の教示用ペンダント20との間に設置される防爆エリア用バリア装置10に、電流・電圧制限回路11とともにコンパレータ回路12を備えた。電流・電圧制限回路11は、ロボットコントローラ30と教示用ペンダント20との間に接続される信号線401〜412のそれぞれの電流値及び電圧値を一定値以下に制限する。コンパレータ回路12は、電流・電圧制限回路11から出力される信号を基準値と比較して波形を整形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、防爆エリア内で使用される機器に防爆エリア外から信号を伝送する際に使用されるバリア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引火性ガス雰囲気等の危険区域である防爆エリア内で使用される本質安全防爆構造の機器に対して、防爆エリア外に設置された外部装置から信号を送信する際には、電流・電圧制限回路を備えたバリア装置が使用される(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
電流・電圧制限回路は、機器又は外部装置の故障時にも防爆エリア内の機器に供給される電流及び電圧を一定値以下に制限する。このため、電流・電圧制限回路は、防爆エリア内の機器と外部装置との間に接続される各信号線のそれぞれに、ツェナダイオード、ヒューズ及び抵抗を配置して構成される。
【特許文献1】特開平9−65441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バリア装置が備える電流・電圧制限回路にはインピーダンス(抵抗やヒューズの抵抗など)及びキャパシタンス(ツェナダイオードの静電容量など)が含まれる。このため、外部装置から送信された信号は、防爆エリア内の機器に達する前にバリア装置を通過する間に、波形が崩れてしまい、高周波数の信号を外部装置から防爆エリア内の機器に送信することができない問題がある。
【0005】
特に、防爆エリア内に設置されたロボット装置等に対する制御データを設定する際に使用される教示用ペンダントのように、液晶パネル等のディスプレイを備えた可搬型表示装置に、外部装置から表示データを含む信号を送信する場合に、大きな問題となる。
【0006】
この発明の目的は、外部装置と防爆エリア内の機器とを接続する信号線の電流・電流制限回路の後段で、電流・電圧制限回路によって波形の崩れた信号を外部装置から出力された状態に復元し、防爆エリア内の機器に高周波数の信号を正確に供給することができる防爆エリア用バリア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、この発明の防爆エリア用バリア装置は、防爆エリア外の外部装置と防爆エリア内の機器との間に設置される防爆エリア用バリア装置であって、電流・電圧制限回路及び波形復元回路を備えている。電流・電圧制限回路は、外部装置と防爆エリア内の機器との間に接続される信号線のそれぞれの電流値及び電圧値を一定値以下に制限する。波形復元回路は、電流・電圧制限回路から出力される信号の波形を復元する。
【0008】
この構成では、電流・電圧制限回路で崩れた信号の波形が、波形復元回路で復元されて防爆エリア内の機器に入力される。したがって、外部装置から出力された高周波数の信号も正確に防爆エリア内の機器に入力される。
【0009】
この構成において、波形復元回路として、電流・電圧制限回路から出力された信号を基準信号と比較した結果を出力する比較器を用いることができる。
【0010】
また、この構成は、信号線を介して機器が備える液晶ディスプレイに対する駆動用データを伝送する場合に好適である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、電流・電圧制限回路で崩れた信号の波形を、波形復元回路で外部装置から出力された状態に復元することができ、外部装置から出力された高周波数の信号も正確に防爆エリア内の機器に入力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、この発明の実施形態に係る防爆エリア用バリア装置10の使用状態の一例を示す図である。防爆エリア用バリア装置10は、一例として、教示用ペンダント20とロボットコントローラ30との間に、ケーブル40を介して配置される。ケーブル40は、複数の信号線で構成されている。
【0013】
教示用ペンダント20は、この発明の防爆エリア内の機器に相当し、引火性ガス雰囲気等の危険区域である防爆エリア100内に設置されているロボット装置101に対する制御データの設定操作を受け付ける。教示ペンダント20には、キースイッチ21とともに液晶ディスプレイ22が備えられている。液晶ディスプレイ22は、制御データの設定内容やロボット装置101の状態等を表示する。
【0014】
ロボットコントローラ30は、この発明の外部装置に相当し、防爆エリア100外に設置されており、教示用ペンダント20を介して設定された制御データに従ってロボット装置101を動作させる。ロボットコントローラ30は、液晶ディスプレイ22が表示すべき表示データを作成し、ケーブル40を介して教示用ペンダント20に供給する。
【0015】
図2は、防爆エリア用バリア装置10のブロック図である。防爆エリア用バリア装置10は、電流・電圧制限回路11、コンパレータ回路12及びパラレル/シリアル変換回路13を備えている。
【0016】
ロボットコントローラ30は、教示用ペンダント20が備える液晶ディスプレイ22に対するクロック信号や画像制御信号とともに、8ビットの表示用の画像データをパラレルに出力する。電流・電圧制限回路11は、教示用ペンダント20又はロボットコントローラ30の故障時等にも、信号線の電流値及び電圧値を本質安全防爆構造に要求される一定値以下に制限する。
【0017】
コンパレータ回路12は、この発明の波形復元回路であり、電流・電圧制限回路11の出力信号を予め設定された基準値と比較し、比較結果を出力する。パラレル/シリアル変換回路13は、コンパレータ回路12からパラレルに出力された8ビットの信号をシリアルデータに変換して教示用ペンダント20に出力する。
【0018】
図3は、防爆エリア用バリア装置10の要部の回路図である。ロボットコントローラ30からケーブル40内の12本の信号線401〜412を介して、クロック信号CP、制御信号C1〜C3、画像データD0〜D7が、防爆エリア用バリア装置10に入力される。
【0019】
信号線401〜412のそれぞれには、ヒューズ1、ツェナダイオード2、抵抗3、コンパレータ4が接続されている。ヒューズ1、ツェナダイオード2、抵抗3は、電流・電圧制限回路11を構成している。コンパレータ4は、コンパレータ回路12を構成している。
【0020】
ロボットコントローラ30から信号線401〜412のそれぞれを介して伝送されてきた信号は、抵抗3、ヒューズ1の抵抗、ツェナダイオード2の静電容量などによって波形が崩れ、信号の立ち上がり及び立ち下がりが鈍る。コンパレータ4は、波形が崩れた信号を基準値と比較し、立ち上がり及び立ち下がりが急峻な波形に整形した信号を比較結果として出力する。
【0021】
これによって、ロボットコントローラ30から出力される液晶ディスプレイ22用の画像データD0〜D7等の高周波の信号も、ロボットコントローラ30から出力された状態に略等しい波形で教示用ペンダント20に入力され、液晶ディスプレイ22に正確に画像が表示される。
【0022】
なお、この発明の防爆エリア内の機器は教示用ペンダント20に限るものではなく、外部装置はロボットコントローラ30に限るものではない。上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施形態に係る防爆エリア用バリア装置の使用状態の一例を示す図である。
【図2】防爆エリア用バリア装置のブロック図である。
【図3】防爆エリア用バリア装置の要部の回路図である。
【符号の説明】
【0024】
10 防爆エリア用バリア装置
11 電流・電圧制限回路
12 コンパレータ回路(波形復元回路)
20 教示用ペンダント(防爆エリア内の機器)
22 液晶ディスプレイ
30 ロボットコントローラ(外部装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防爆エリア外の外部装置と防爆エリア内の機器との間に設置される防爆エリア用バリア装置であって、
前記外部装置と前記機器との間に接続される信号線のそれぞれの電流値及び電圧値を一定値以下に制限する電流・電圧制限回路と、
前記電流・電圧制限回路から出力される信号の波形を復元する波形復元回路と、
を備えた防爆エリア用バリア装置。
【請求項2】
前記波形復元回路は、前記電流・電圧制限回路から出力された信号を基準信号と比較した結果を出力する比較器を含む請求項1に記載の防爆エリア用バリア装置。
【請求項3】
前記信号線は、前記機器が備える液晶ディスプレイに対する駆動用データを伝送する信号線である請求項1又は2に記載の防爆エリア用バリア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−130906(P2009−130906A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307228(P2007−307228)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】