説明

防爆型推進工法の切羽換気装置

【課題】防爆型推進工法における障害物撤去で、泥水式掘進機内から安全で確実に障害物を切断・撤去できる切羽換気装置を提供する。
【解決手段】メタンガス等が存在し、推進路線の途中に障害物等の撤去が想定される泥水式推進施工で、掘進機1先端の切羽部分の地盤改良を行い、掘進機1内のチャンバ4内から障害物等を高圧ジェット切断機により切削し撤去するための防爆型推進工法の切羽換気装置であって、泥水式掘進機1前面に設置されたカッタ3とカッタ後方に設けた隔壁5によって構成される前記チャンバ4と、前記チャンバ内への出入りを行うために隔壁5の所定の位置に設けられたマンホ−ル扉6と、前記チャンバ内に連通するように隔壁5に1本または複数本で設置した排気管7と、前記各排気管に装備した圧力調整バルブ8と、所定の位置の推進管継手部または推進管列の最後端部に設置したロック室と、により構成される防爆型推進工法の切羽換気装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中にメタンガス等の可燃性ガスが存在する泥水式推進施工において、推進路線部に障害物等が想定される場合でも、安全で確実に障害物等を撤去できる防爆型推進工法の切羽換気装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
推進工法は、埋設する推進管の先端に装備した掘進機の掘削手段によって、発進立坑から地山を掘削しながら推進管を地中に埋設していく方法である。推進施工を行う地中には、有機物の腐敗、発酵により無色・無臭のメタンガス等の可燃性ガスが存在していることがある。可燃性ガスは、平地部では地下水中に溶存するか、遊離ガスとして賦存していることが多く、空気中の濃度が約5VOL%〜15VOL%で火源があると爆発する。可燃性ガスが存在している地層を掘進した場合、可燃性ガスは地下水圧等の圧力から解放されて、自由面(トンネル内)に向かって噴き出してくる。掘進機を完全に密閉型にし、掘削排土等もチャンバ内から流体輸送する泥水式掘進機を使用することで、掘進機内への可燃性ガスの侵入を防止することができる。しかし、従来技術である推進管継手部のゴム材である止水ゴムは、水密性に優れ止水には効果を発揮するが、可燃性ガス等の遮気性には優れておらず、止水リングを通して管内に侵入しやすいという問題があった。特に、推進工事に曲線を含む場合は、推進管継手部が屈曲して管外側の目地部分が絶えず稼働することとなり、比較的硬質の止水ゴムでは、止水リングと突出環、止水リングと接続筒の接触が弱くなったり、接触がなくなるときがあり、より可燃性ガスの侵入がしやすくなるという問題がある。
【0003】
前記した推進管継手部の遮気性を向上させるために、推進管の後端外周に嵌設された突出環の内周に管端面から後方に所定の長さをもって周方向に遮気性帯体を付着させる推進管の継手構造が開発されている。遮気性帯体は、強力な弾性力と復元性を有していることから瞬時に大きく変形したり復元して管接合部の隙間を完全に密封して可燃性ガスの侵入を防止することができるようになった。しかしながら、推進路線に鋼矢板や鋼材等の障害物がある場合には、地上からの障害物撤去は難しく掘進機内からの撤去が計画されている。障害物のある掘進機前面の地盤改良を行い、隔壁に設けたマンホ−ル扉から人がチャンバ内に入って障害物を切断撤去するという方法である。障害物の切断は、可燃性ガスが存在するため、ガス切断等は爆発の危険性が大きく、火源を使わない高圧ジェットによる切断が採用されている。この方法により、障害物等の切断撤去は可能となったが、隔壁のマンホ−ル扉を開けて人がチャンバ内に出入りするため、掘進機内への可燃性ガス浸入の可能性が大きくなり、掘進機内や推進管内でのガス爆発の危険性が増大するという問題があった。
【特許文献1】特開2005−258516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このため、発明が解決しようとする課題は、掘進機の隔壁に設けたマンホ−ル扉からチャンバ内に所定の圧力で送風し、チャンバ内に入ってくる可燃性ガスは、送風された圧縮空気とともに隔壁に設置した排気管を通して地上へと換気されるため、障害物等の切断、撤去が安全で確実に行える防爆型推進工法の切羽換気装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、地中にメタンガス等の可燃性ガスが存在し、推進路線の途中に障害物等の撤去が想定される泥水式推進施工で、泥水式掘進機先端の切羽部分の地盤改良を行い、泥水式掘進機内のカッタ−チャンバ内から目視しながら障害物等を高圧ジェット切断機により切削し撤去するための防爆型推進工法の切羽換気装置であって、
泥水式掘進機前面に設置されたカッタとカッタ後方に設けた隔壁によって構成される前記チャンバと、前記チャンバ内への出入りを行うために隔壁の所定の位置に設けられたマンホ−ル扉と、前記チャンバ内に連通するように隔壁に1本または複数本で設置した排気管と、前記各排気管に装備した圧力調整バルブと、所定の位置の推進管継手部または推進管列の最後端部に設置したロック室と、により構成される防爆型推進工法の切羽換気装置である。
【0006】
隔壁に設けられるマンホ−ル扉は、人の出入りできる大きさで製作され、チャンバ内の土圧や泥水圧にも耐えられるように強固に製作されている。マンホ−ル扉または隔壁の所定の位置には、チャンバ内に圧縮空気を入れて加圧するためのバルブが設置されている。バルブには、通常用いられているゲートバルブ、ボ−ルバルブ等が用いられる。
【0007】
チャンバ内に連通するように設置される排気管の本数は、管径が小さければ排気範囲が小さいことから1本でよく、管径が大きければ排気範囲が広くなることから、2本以上の本数を左右又は上下と対象位置に設置して効率の良い排気がおこなえるようにする。各排気管には圧力調整バルブと圧力計を設定して、チャンバ内の圧気圧が一定に保たれるように調整する。
【0008】
ロック室は、筒体の前後に仕切壁を装備して構成され、各仕切壁には、開閉扉が設置されている。ロック室は、圧気圧に対しても変形等が起きないように鋼材等により比較的強固に製作され、推進管継手部の端面に密接させて、ロック室前方の推進管や掘進機内に圧気圧を発生させることができる。前後の仕切壁には、人がロック室内の出入りをするために、ロック室内の空気の出し入れをするバルブが設けられている。
【0009】
ロック室の設置場所は、推進延長が比較的短く、管径も小さい場合は、発進立坑内の推進管列の最後端に設置する方法が作業性等で含めて有効である。推進延長が長く、管径が大きい場合には、発進立坑内に設置する方法では多くの風量を必要とするため、圧気設備が大規模となることから、推進管列の途中の継手部にフランジ等を挟み込み、予めロック室を設置しておく方法を用いる方が有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の防爆型推進工法の切羽換気装置は、通常は泥水式掘進機と流体輸送装置によって、掘進機部分から可燃性ガスの侵入を防止し、推進管列の継手部からの侵入は、継手部に貼付した遮気性帯体によって防止され、掘進機や推進管内には可燃性ガスが存在しない。地中の障害物に遭遇した場合は、掘進機先端の切羽部分の地盤改良を行い、推進管継手部にはロック室を接合させてロック室より前方に圧縮空気を送り、所定の圧力を発生させる。そして、隔壁またはマンホ−ル扉に設けたバルブを開放して、チャンバ内に圧縮空気を送り込むとともに、隔壁に設けた排気管から所定の圧力が維持できるように調整して圧縮空気を還流させ、チャンバ内や切羽部分の地下水を脱水して地山を自立させることができる。このため、人がチャンバ内に入って行う障害物等の切断や撤去作業時にも、常に圧縮空気が還流されており、仮にチャンバ内に可燃性ガスが浸入しても圧縮空気とともに排気管から地上に排出されるため、推進施工時の障害物の切断・撤去が安全で確実に行える。さらに、障害物の位置や形状等の確認も人が目視して行えるため、効率良く確実な切断・撤去が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
地中に可燃性ガスを含む防爆型推進時の障害物の切断・撤去作業において、掘進機のチャンバ内で行う切断・撤去作業を安全で確実に実施できるとともに、チャンバ内に入ってきた可燃性ガスを圧縮空気とともに排気管より地上へ排気することにより掘進機や推進管内への可燃性ガス侵入を防止することによって、安全で効率の良い防爆型推進を実現した。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の防爆型推進工法の切羽換気装置を説明する縦断面図である。筒状の泥水式掘進機1の外殻2の先端には、地山を切削するためのカッタ3が装備されている。カッタ3から後方へ所定の間隔をおいて隔壁5が外殻2に固定されてチャンバ4を構成している。隔壁5の所定の位置には、人が前記チャンバ4内に出入りできる大きさのマンホ−ル扉6が開閉可能に設置されている。マンホ−ル扉6には、推進管内に送られてくる圧縮空気をチャンバ4内に出し入れするためのバルブ(図示省略)が装着されている。さらに、隔壁5の上下部分には、チャンバ4内に連通するように排気管7が隔壁5に固設されている。上下2本の各排気管7には、チャンバ4内の圧力管理を行うための圧力計と圧力調整バルブ8が設置されている。発進立坑内の推進管列の最後端部には、筒状の前後に仕切壁を装備して構成されるロック室(図示省略)を嵌合して構成される切羽換気装置である。
【0013】
上下2本の排気管7は、隔壁5の後方で1本にまとめられ、推進管内を通して発進立坑から地上へと配管されている。排気管7の管径は、推進管径や圧縮空気の風量等によって事前に検討されて決定する。材質は、従来使用されている鋼管等が用いられる。本実施形態では、チャンバ4内での排気を効率良く行うために、上下2本の排気管7の設置を開示したが、推進管径が小さく排気する風量が少ないときは、1本の排気管7で計画すればよい。
【0014】
ロック室の先端部分は、ロック室を嵌合する推進管継手部の筒状の鋼製カラ−部分から圧縮空気が漏気しないように、推進管先頭部の差込口と同径で同形状に製作されている。ロック室の前後の仕切壁には、人がロック室内から推進管内に出入りできるように開閉扉が装備されている。また、前後の仕切壁には、人がロック室を通って推進管内に入ったり、推進管内からロック室を通って管外に出るために、ロック室内の圧縮空気の出し入れができるようにバルブが設置されている。また、推進管内に圧縮空気を送気するために、送気パイプ9が前後の仕切壁を貫通して設けられている。本実施例では、送気パイプ9は掘進機の後方まで延長されているが、ロック室の前部で止めておくことも可能である。
【0015】
ロック室の設置場所は、推進延長が比較的短く、管径も小さいときは、管内での作業スペ−スが狭いため、発進立坑内の推進管列の最後端に設置する方法が作業性等で含めて有効である。推進延長が長く、管径が大きい場合には、発進立坑内にロック室を設置する方法では、非常に多くの風量を必要し、圧気設備等が大規模となり、推進管列の途中の管継手部にフランジ等を挟み込み、そのフランジに予めロック室を取り付けておく方法を用いる方が有効である。
【0016】
次に、本発明の切羽換気装置を用いた障害物の切断・撤去方法について説明する。推進施工中、泥水式掘進機1が障害物に遭遇すると推進施工を一旦中止する。障害物の位置が地上から薬液注入等の作業が可能な場合は、地上から障害物のある泥水式掘進機1前方の切羽部分の地盤改良を実施する。地上からの注入が困難な場合は、発進立坑内の推進管端面にロック室を嵌合する。送気パイプ9により圧縮空気を管内に送り加圧する。次に、マンホ−ル扉6または隔壁5の所定の位置に設置したバルブを開き、チャンバ4内を加圧する。そして、隔壁5に設置した排気管7の圧力調整バルブ8を調整して設定圧力を維持しながら換気をおこなう。次に、マンホ−ル扉6を開放して泥水式掘進機1内の後方に装備した小型ドリル等を使用して、切羽部分の削孔・注入を行って地盤改良を実施する。障害物付近の地盤改良が完成すると、人がチャンバ4内に入って高圧ジェット切断機によって障害物を目視しながら的確に切断する。切断後は、人によって切断された障害物がチャンバ4内から隔壁5の外に搬出され、推進管内を通って坑外へと搬出される。
【0017】
障害物の撤去が完了すると、マンホ−ル扉6は閉じられ、チャンバ4内への圧縮空気を送っていたバルブ及び排気管7の圧力調整バルブ8も閉じられる。また、発進立坑内ではロック室を撤去し、元押ジャッキ等の推進準備が行われる。推進準備が完了すると送泥管によりチャンバ4内に泥水が送られ、チャンバ内に所定の泥水圧がかかると推進施工が再開される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
以上のように、本発明の切羽換気装置によって、メタンガス等の存在する推進施工で障害物等に遭遇しても、安全で効率良く切断・撤去が行える防爆型推進工事に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の防爆型推進工法の切羽換気装置を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 泥水式掘進機
2 外殻
3 カッタ
4 チャンバ
5 隔壁
6 マンホ−ル扉
7 排気管
8 圧力調整バルブ
9 送気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中にメタンガス等の可燃性ガスが存在し、推進路線の途中に障害物等の撤去が想定される泥水式推進施工で、泥水式掘進機先端の切羽部分の地盤改良を行い、泥水式掘進機内のカッタ−チャンバ内から目視しながら障害物等を高圧ジェット切断機により切削し撤去するための防爆型推進工法の切羽換気装置であって、
泥水式掘進機前面に設置されたカッタとカッタ後方に設けた隔壁によって構成される前記チャンバと、前記チャンバ内への出入りを行うために隔壁の所定の位置に設けられたマンホ−ル扉と、前記チャンバ内に連通するように隔壁に1本または複数本で設置した排気管と、前記各排気管に装備した圧力調整バルブと、所定の位置の推進管継手部または推進管列の最後端部に設置したロック室と、により構成されることを特徴とする防爆型推進工法の切羽換気装置。

【図1】
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