説明

防爆形電気機器

【課題】装置の小型化及び軽量化を実現できるとともに、本安回路と本安関連回路との間の配線インダクタンス及びキャパシタンスを無視できる程度に低減して本安回路に十分な電力を供給できるようにする。
【解決手段】内部にLED基板11を収納した本安回路部1と、内部にケーブル25、電源21及び本安関連回路22を収納した樹脂充填防爆構造の本安関連回路部2と、を着脱自在にした。本安回路部1及び本安関連回路部2のそれぞれの着脱面に、第1の接続部15及び第2の接続部23を露出させた。第1の接続部15と第2の接続部23とを電気的に接続するとともに、本安回路部1と本安関連回路部2とを結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、防爆形照明機器のように、危険場所内に設置される防爆形電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学プラント等の爆発性ガス雰囲気の危険場所内でも、暗所での作業や夜間の作業時に照明が必要とされる場合がある。危険場所内で使用される防爆形照明機器の光源として蛍光ランプやHIDランプ等の放電ランプを用いると、スタータ、点火装置及び安定器等の装置が必要となって構成が大型化するとともに、大きな消費電力を必要とする。
【0003】
そこで、光源としてLEDを使用した防爆形照明機器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。LED光源及び電源導入用の分岐ケーブルは、耐圧防爆構造の容器に収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−093246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の防爆形照明機器では、LED光源や電源回路等を耐圧防爆構造の容器に収納すると、装置が大型化、重量化する問題がある。また、防爆構造として本質安全防爆構造を採用する場合、本安機器(回路の全てが本安回路(正常状態及び特定の故障状態において発生する火花又は熱が対象の爆発性ガス雰囲気に点火を生じない回路。)で構成された電気機器。)であるLED光源は危険場所内に設置することができるが、本安関連機器(本安関連回路(本安回路と非本安回路との両方を含む回路で、非本安回路が本安回路に悪影響を及ぼすおそれがないような回路)で構成された電気機器)は危険場所内に設置することができず、非危険場所内に設置する必要がある。したがって、LED光源(本安回路)と本安関連機器(本安関連回路)との間の配線インダクタンス及びキャパシタンスが大きくなり、本質安全防爆構造の条件から電流値が制限され、十分な光量を得ることができない問題がある。このような問題は、防爆形照明機器に限らず、本質安全防爆構造の防爆形電気機器に一般的な問題である。
【0006】
この発明の目的は、装置の小型化及び軽量化を実現できるとともに、本安回路と本安関連回路との間の配線インダクタンス及びキャパシタンスを無視できる程度に低減して本安回路に十分な電力を供給できる防爆形電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る防爆形電気機器は、本安回路部、本安関連回路部、結合部材を備えている。本安回路部は、本安回路を内部に収納し、本安回路に対する電源供給用の第1の接続部を備える。本安関連回路部は、第2の接続部が電気的に接続された本安関連回路であって前記第2の接続部及び前記第1の接続部を介して前記本安回路に電気的に接続される本安関連回路を内部に収納し、所定の防爆構造にされている。結合部材は、本安回路部の第1の面と本安関連回路部の第2の面とを対向させて、本安回路部と本安関連回路部とを着脱自在に結合する。
【0008】
この構成によれば、本安回路を収納した本安回路部と、本安関連回路を収納した所定の防爆構造の本安関連回路部と、が着脱自在にされる。
【0009】
この構成において、所定の防爆構造は、樹脂充填防爆構造、又は耐圧防爆構造とすることができる。また、所定の防爆構造を安全増防爆構造とし、本安関連回路を樹脂充填防爆構造とし、本安関連回路の非本安回路側に安全増防爆構造の端子台を設けた構造とすることもできる。
【0010】
また、本安関連回路部は、本安関連回路に接続される電源を備えることが好ましい。この場合に、電源を樹脂充填防爆構造にし、電源の入力側と出力側とに安全増防爆構造の端子台を設けることもできる。
【0011】
さらに、本安回路がLEDによって構成されている場合に、本安回路部は、第1の面に対向する面にLEDから照射された光を外部に配光する窓部を備えたものとすることができる。
【0012】
また、第1の接続部と第2の接続部とを電気的に接続する接続部材を備え、結合部材が、第1の面及び第2の面における第1の端部側で本安回路部と本安関連回路部とを互いに分離可能かつ回転自在に支持するヒンジと、第1の面及び第2の面における第2の端部側を互いに締結する締結部材と、で構成し、第1の接続部及び第2の接続部を第1の端部側に配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、装置の小型化及び軽量化を実現できるとともに、本安回路と本安関連回路との間の配線インダクタンス及びキャパシタンスを無視できる程度に低減して本安回路に十分な電力を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の実施形態に係る防爆形電気機器の一部破断斜視図である
【図2】同防爆形電気機器の本安関連回路のブロック図である。
【図3】(A)及び(B)は、同防爆形電気機器における本安回路部と本安関連回路部との着脱状態の例を示す図である。
【図4】(A)〜(C)は、この発明の実施形態に係る防爆形電気機器の接続部の例を示す図である。
【図5】(A)〜(C)は、この発明の実施形態に係る防爆形電気機器の連結状態の例を示すブロック図である。
【図6】(A)〜(C)は、この発明の別の実施形態に係る防爆形電気機器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、この発明の実施形態に係る防爆形電気機器について、防爆形照明機器を例にあげて、図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1に示すように、防爆形照明機器10は、本安回路部1及び本安関連回路部2からなる。本安回路部1は、略直方体形状を呈し、内部に一例として2つのLED基板11を収納している。各LED基板11は、一例として8個のLED12をレンズ13とともに長手方向に沿って2列に配置して実装している。
【0017】
上面1Aには、ガラス等の透光性板材によって構成された窓部14が設けられている。窓部14は、レンズ13に対向しており、LED12が照射した光を外部に配光する。底面1B側には、LED基板11に電気的に接続された第1の接続部15が露出している。
【0018】
本安回路部1は、内部に消費電力の小さいLED12を実装したLED基板11のみを収納しており、防爆規格上の耐衝撃性を要求されることがなく、小型に構成することができる。
【0019】
本安関連回路部2は、略直方体形状を呈し、内部にケーブル25、電源21及び本安関連回路22を電気的に接続した状態で収納している。本安関連回路部2の内部は、本安関連回路22に電気的に接続された第2の接続部23を上面2A側に露出させ、ケーブル25を上面2Aに直交する側面2Bから露出された状態で、ケーブル25、電源21及び本安関連回路22の周囲を覆うように樹脂24が充填され、樹脂充填防爆構造にされている。本安関連回路部2を樹脂充填防爆構造にすることにより、防爆形照明機器10をゾーン0(爆発性雰囲気が通常の状態において、連続して若しくは長時間にわたって、又は頻繁に存在する場所。)を含む全ての危険場所に設置することができる。樹脂24の上面と、本安関連回路部2の上面2Aとの間には間隙が設けられており、この間隙に第2の接続部23が露出している。ケーブル25は、本安関連回路部2内で電源21に電気的に接続されている。
【0020】
なお、第1の接続部15及び第2の接続部23は、一例としてコネクタで構成することができる。
【0021】
電源21は、一例として、入力側にAC電源(例えば、AC100V)が供給され、出力側からDC電源(例えば、DC24V)を出力する。防爆形照明機器10に外部電源からDC電源を供給することにより、電源21を省略することもできる。但し、外部電源としてはAC電源が一般的であり、電力消費量が同じであれば、電圧が高いほど消費電流が低くなるため、内部の電源21を用いる方が効率的である。
【0022】
本安回路部1及び本安関連回路部2は、平面形状を互いに同一にされており、本安回路部1の底面(第1の面)1Bと本安関連回路部2の上面(第2の面)2Aとが対向する状態で着脱自在に結合される。
【0023】
図2に示すように、本安関連回路22は、非本安回路(例えば、電源21)に接続される入力側から本安回路に接続される出力側に向かって定電圧制御回路222、ヒューズ221、電圧制限回路223及び電流制限回路228を備えている。
【0024】
電圧制限回路223は、本安回路に対する電源ラインの間に、分路電圧制限回路223B及び電圧検出回路223Cを出力短絡回路223Aに対してそれぞれ並列に接続して構成されている。出力短絡回路223Aは、例えばサイリスタ等の半導体によって構成され、分路電圧制限回路223Bと電圧検出回路223Cとの間に入力端子を接続しており、電圧検出回路223Cの検出電圧の入力を受ける。出力短絡回路223Aは、検出電圧が所定の動作電圧を超えた時に電源ライン間を短絡し、基準電圧を超える出力電圧の本安回路への出力を防止する。分路電圧制限回路223Bは、例えばツェナダイオードによって構成され、両端電圧を定電圧であるツェナ電圧に維持する。
【0025】
電源ライン間の電圧である出力電圧が変動すると電圧検出回路223Cの電圧が変動し、出力短絡回路223Aの入力端子に入力される検出電圧が変動する。即ち、出力短絡回路223Aに入力される検出電圧は、出力電圧からツェナ電圧(制限電圧)を差し引いた値となる。電圧検出回路223Cは、例えば抵抗によって構成され、出力電圧から制限電圧を差し引いた検出電圧として出力電圧を間接的に検出する。
【0026】
ヒューズ221は、電圧制限回路223に対する規格上の要求に基づいて設けられている。電流制限回路228は、例えば抵抗によって構成されており、本安回路に供給される出力電流値を規格によって定められている電流値以下に制限する。
【0027】
定電圧制御回路222は、電圧制御回路222A、フィードバック抵抗222B、基準電圧回路222C及び電圧誤差増幅回路222Dを含む。電圧制限回路223における電圧検出回路223Cの検出電圧は、フィードバック抵抗222Bを介して電圧誤差増幅回路222Dに入力される。電圧誤差増幅回路222Dは、フィードバック抵抗222Bを介して入力された検出電圧を基準電圧回路222Cが発生する基準電圧と比較し、両者の差を増幅した差分電圧信号を電圧制御回路222Aに供給する。電圧制御回路222Aは、電圧誤差増幅回路222Dからの差分電圧信号に基づいて出力電圧を制御する。電圧検出回路223Cが間接的に検出した出力電圧が、基準電圧に一致するようにフィードバック制御される。
【0028】
図3(A)に示すように、本安回路部1及び本安関連回路部2には、この発明の結合部材としての係止爪16及び係止溝26が、一例としてそれぞれ4箇所に形成されている。係止爪16を本安関連回路部2の上面2Aから内部に挿入した後、本安関連回路部2に対して本安回路部1を相対的に水平方向に移動させることにより、本安回路部1及び本安関連回路部2が着脱自在に結合される。
【0029】
本安関連回路部2内において、上面2Aと樹脂24との間には間隙が形成されており、この間隙内に第1の接続部15と第2の接続部23とを電気的に接続するケーブル5が収納される。ケーブル5が、この発明の接続部材に相当する。
【0030】
図3(B)に示すように、本安回路部1の底面1B及び本安関連回路部2の上面2Aのそれぞれの一方の端部側に配置したヒンジ3と、他方の端部側に配置した止めネジ4と、を介して本安回路部1と本安関連回路部2とを着脱自在に結合することもできる。ヒンジ3及び止めネジ4が、この発明の結合部材に相当する。
【0031】
ヒンジ3は、本安回路部1と本安関連回路部2とを互いに分離可能で且つ回転自在に支持する。ヒンジ3を介して本安回路部1と本安関連回路部2とを互いに回転自在に支持した後、第1の接続部15と第2の接続部23とをケーブル5を介して電気的に接続する。第1の接続部15及び第2の接続部23のそれぞれを底面1B及び上面2Aのそれぞれにおけるヒンジ3が配置されている端部側に近接させて配置することにより、ケーブル5を短くして配線インダクタンス及びキャパシタンスを低減できる。
【0032】
図4(A)に示すように、第1の接続部15及び第2の接続部23の一方をプラグ形状、他方をソケット形状としてもよい。また、図4(B)及び(C)に示すように、第1の接続部15及び第2の接続部23の一方を他方に圧接する弾性部材で構成してもよい。本安回路部1と本安関連回路部2とを結合させた際に、第1の接続部15と第2の接続部23とが機械的に接触することで互いに電気的に接続され、接続部材を省略することができる。
【0033】
図5に示すように、複数の防爆形照明機器を連結することで、照明光量を増加できる。ゾーン0を含む全ての危険場所で照明光量を増加する場合には、図5(A)に示すように、ネジ又はスライド機構等を用いて複数の防爆形照明機器10を連結し、各防爆形照明機器10のケーブル25のそれぞれを外部電源に接続する。
【0034】
ゾーン1(通常の状態において、爆発性雰囲気をしばしば生成する可能性がある場所)又はゾーン2(通常の状態において、爆発性雰囲気を生成する可能性が小さく、また生成した場合でも短時間しか持続しない場所)で照明光量を増加する場合には、図6(A)に示す構成の防爆形照明機器110を図5(B)に示すように連結することができる。防爆形照明機器110の本安関連回路部2は安全増防爆構造であり、本安関連回路部2内で電源21と本安関連回路22とを個別に樹脂充填防爆構造とし、ケーブル25、電源21及び本安関連回路22の接続を安全増防爆構造の端子台30〜32によって行う。なお、本安関連回路22の出力側(本安回路側)の端子台33は、安全増防爆構造である必要はない。
【0035】
また、同様にゾーン1、ゾーン2においては、図6(B)に示す防爆形照明機器120及び図6(C)に示す防爆形照明機器130を、図5(C)に示すように連結することもできる。なお、防爆形照明機器120と同様に、防爆形照明機器130の本安関連回路部2は安全増防爆構造であり、本安関連回路部2の内部の本安関連回路22は樹脂充填防爆構造であり、端子台32は安全増防爆構造の端子台である。
【0036】
防爆形照明機器110〜130では、各配線が端子台30〜33に着脱自在であるため、配線の自由度が向上する。
【0037】
なお、本安関連回路部2を耐圧防爆構造としてもよい。
【0038】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1−本安回路部
2−本安関連回路部
5−ケーブル(接続部材)
10−防爆形照明機器
11−LED基板(本安回路)
12−LED
15−第1の接続部
16−係止爪(結合部材)
21−電源
22−本安関連回路
23−第2の接続部
24−樹脂
26−係止溝(結合部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本安回路を内部に収納し、前記本安回路に対する電源供給用の第1の接続部を備えた本安回路部と、
第2の接続部が電気的に接続された本安関連回路であって前記第2の接続部及び前記第1の接続部を介して前記本安回路に電気的に接続される本安関連回路を内部に収納し、所定の防爆構造とした本安関連回路部と、
前記本安回路部の第1の面と前記本安関連回路部の第2の面とを対向させて、前記本安回路部と前記本安関連回路部とを着脱自在に結合する結合部材と、
を備えた防爆形電気機器。
【請求項2】
前記所定の防爆構造は、樹脂充填防爆構造である請求項1に記載の防爆形電気機器。
【請求項3】
前記所定の防爆構造は、耐圧防爆構造である請求項1に記載の防爆形電気機器。
【請求項4】
前記所定の防爆構造は、安全増防爆構造であり、前記本安関連回路を樹脂充填防爆構造とし、前記本安関連回路の非本安回路側に安全増防爆構造の端子台を設けた請求項1に記載の防爆形電気機器。
【請求項5】
前記本安関連回路部に、前記本安関連回路に接続される電源をさらに備えた請求項1乃至3の何れかに記載の防爆形電気機器。
【請求項6】
前記本安関連回路部に、前記本安関連回路に接続される電源をさらに備え、前記電源を樹脂充填防爆構造にし、前記電源の入力側と出力側とに安全増防爆構造の端子台を設けた請求項4に記載の防爆形電気機器。
【請求項7】
前記本安機器は、LEDによって構成されており、
前記本安回路部は、前記第1の面に対向する面に前記LEDから照射された光を外部に配光する窓部を備えた請求項1乃至6の何れかに記載の防爆形電気機器。
【請求項8】
前記第1の接続部と前記第2の接続部とを電気的に接続する接続部材をさらに備え、
前記結合部材は、前記第1の面及び前記第2の面における第1の端部側で前記本安回路部と前記本安関連回路部とを互いに分離可能かつ回転自在に支持するヒンジと、前記第1の面及び前記第2の面における第2の端部側を互いに締結する締結部材と、からなり、
前記第1の接続部及び前記第2の接続部は、前記第1の端部側に配置した請求項1乃至7の何れかに記載の防爆形電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−8551(P2013−8551A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140436(P2011−140436)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】