説明

防犯システム、それに用いる携帯端末及び不審者報知用サーバ

【課題】不審者を検出して行動を監視すると共に、利用者に状況を報知することにより利用者が早めに対応できるようにし、さらに不審者の行動を控えさせる防犯システム、それに用いる携帯端末及び地域街頭放送用サーバを提供する。
【解決手段】携帯電話機10は、不審者の検出機能を有しており、不審者を検出した場合、その検出情報を基地局2とネットワーク3を介して、サーバ4に送る。サーバ4は、利用者の位置を確認し、そこに一番近い街頭放送機器6を選択して地域放送装置5を介して街頭放送により警告情報を流す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼吸や脈拍等の微少変位とその周波数パターンにより生体を検出して、その行動から不審者を特定し、地域街頭放送を用いて不審者を報知する防犯システム、それに用いる携帯端末及び不審者報知用サーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、女性に対するストーカ行為や子供を狙った犯罪が問題となっている。特に、交通の発達により、大人、子供を問わず、一般の人々の活動範囲や活動時間が広がっているため、犯罪を防止しにくくなっている。以前は都会より安全であるとされていた田舎にあっても、逆に人目が少ないことで危険が増している面もある。そこで、携帯電話機が子供から老人に至るまで普及していることに着目して防犯対策を講じるものが考えられている。
【0003】
特許文献1には、メール送信先とメール内容が予め記憶されており、利用者が特定キーを押すと、所定の送信先にメールが自動的に送信される携帯端末が記載されている。さらに、不審者が行動に出た場合の緊急時には、携帯電話機にブザー鳴動を生じさせて、不審者を混乱させて追い払う、あるいは隙を見て逃げるなどの対応をとることができる。
【特許文献1】特開2003−110752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の携帯端末において、メール送信機能は、利用者が不審者を察知した場合であり、利用者が不審者として認識できていない場合には、あまり役には立たない。特に、利用者にとって全く面識のない人物であったり、利用者が子供で周囲に十分な注意を払うことが難しい場合には全く役立たない。
【0005】
また、ブザー機能は不審者が何らかの行動に出た時に緊急に対処する場合の機能であるため、不審者が襲う体制に入ったことを察知できたとしても、それが襲われる直前で逃げ切れる状況になかったり、周囲に全く人がいなかったりする場合は、ブザー機能が十分な救助とはならず、結局役に立たないことになる。
【0006】
本発明の目的は、不審者を検出して行動を監視すると共に、利用者に状況を報知することにより利用者が早めに対応できるようにし、さらに不審者の行動を控えさせることができる防犯システム、それに用いる携帯端末及び地域街頭放送用サーバを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、不審者を検出する機能を有する携帯端末と、該携帯端末から不審者検出情報を受けた場合に利用者に地域街頭放送網を利用して不審者報知を行う不審者報知用サーバとを備えた防犯システムであって、前記携帯端末は、携帯端末の位置を求め、携帯端末の周囲に存在する生体を検出して、生体種類、生体までの距離、検出した方向を求めて、検出した生体が不審者であるかを判定し、検出生体が不審者と判定した場合に、不審者検出情報を前記不審者報知用サーバに送り、
前記不審者報知用サーバは、前記携帯端末から送られた不審者検出情報から携帯端末の位置に近い街頭放送機器を用いて、不審者の報知を行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、不審者を検出して利用者に地域街頭放送を利用して報知する携帯端末において、データを送受信する送受信部と、携帯端末の位置を検出する位置検出部と、周囲に存在する生体の種類、生体までの距離、検出した方向を探査する生体探査部と、検出した生体が不審者であるかを判定する不審者判定部と、不審者判定部が検出生体を不審者と判定した場合に、該携帯端末とネットワークを介して接続する地域街頭放送用サーバに不審者検出情報を送る報知制御部とを備えたことを特徴とする。
なお、生体は複数のものを同時に検出可能であり、不審者であるか否かを同時に判断が可能である。
【0009】
前記生体探査部は、ドップラーレーダを用いて生体種類及び生体までの距離を求め、さらに360度にわたる生体検出の相関値が大きい方向を生体検出方向とし、前記位置検出部の検出結果から求めた携帯端末の移動方向を加味して前記生体検出方向を補正し、実際の生体方向を求めることを特徴とする。
【0010】
また、前記生体探査部は、生体からの反射波から心拍と呼吸のうち少なくとも1つの周波数パターンを検出し、予め記憶しておいた生体種類毎の心拍または呼吸の周波数パターンと比較して生体を特定することを特徴とする。
【0011】
また、前記不審者判定部は、前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間であるかを確認する手段と、人間である場合に、同一人物であるかを確認する手段と、同一人物である場合、生体までの距離が所定値以下となる時間を積算する手段と、前記積算時間が基準値を超えた場合に不審者と判断する手段とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、前記不審者判定部は、前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間であるかを確認する手段と、人間である場合に、同一人物であるかを確認する手段と、同一人物である場合、生体までの距離が所定値以下のものを積算する手段と、前記積算距離が基準値を超えた場合に不審者と判断する手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、前記不審者判定部は、前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間でないことを確認して探査対象から外す手段を備えてもよい。
【0014】
また、本発明は、不審者を検出する機能を有する携帯端末から不審者検出の情報を得た場合に、地域街頭放送網を利用して利用者に不審者報知を行う不審者報知用サーバにおいて、前記携帯端末から受けた不審者検出情報を分析して不審者であることを確定する手段と、分析した結果、不審者であると確定した場合に、利用者の位置に最も近い街頭放送機器を特定する手段と、特定した街頭放送機器から不審者の報知を行う手段とを備えたことを特徴とする。
【0015】
また、前記分析手段は、不審者生体探査部が検出した心拍パターンや呼吸パターンから、心拍数や呼吸数を求め、単位時間当たりの心拍数や呼吸数が基準値を超えて上昇するかを判定し、前記報知手段は、基準値を超えて上昇した場合に、利用者に危険が迫っている警告を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、地域街頭放送を利用して、携帯端末の利用者に、携帯端末が検出した不審者の情報を報知することにより、利用者が早めに対応できるようにし、さらに不審者自身にもこの報知内容が伝わるため、不審者も自分が検出され外部の者にそのことが検出されていることが分かるため、行動を控える可能性が高い。こうして、犯罪を未然に防止することが可能となる。
【0017】
また、不審者が何らかの行動に移すことが検出できた場合、地域街頭放送の内容を緊急のものにすることにより、利用者にそのことを伝えるとともに、不審者にも同時に警告を与え、行動を抑えさせる効果がある。
【0018】
また、携帯端末の生体探査部は、ドップラーレーダを用いて生体種類及び生体までの距離を求め、さらに360度にわたる生体検出の相関値が大きい方向を生体検出方向とし、前記位置検出部の検出結果から求めた携帯端末の移動方向を加味して前記生体検出方向を補正するので、携帯端末が移動していても、生体の位置を正確に検出することができる。
【0019】
また、不審者の特定に、心拍と呼吸の周波数パターンを用いるので、検出生体種類や同一生体であるか等を検出することが可能となる。
【0020】
また、不審者判定部が、生体が同一人物である場合、生体までの距離が所定値以下の時間の積算値、又は生体までの距離が所定値以下の積算距離が基準値を超えた場合に不審者と判断することにより、不審者の可能性が高い人物を検出できる。
【0021】
さらに、前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間でないことを確認して探査対象から外すので、検出対象を絞り込み、精度の高い検出を行なうことができる。
【0022】
不審者報知用サーバが、不審者であると確定した場合に、利用者の位置に最も近い街頭放送機器を特定するので、利用者の耳に報知内容が届きやすく、利用者が不審者に素早く対応できる。
【0023】
また、単位時間当たりの心拍数や呼吸数が上昇率が基準を超えた場合に、警告を行うことにより、利用者が早めに対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明に係る防犯システムの一例を示す説明図である。
この防犯システムは、携帯電話機10、基地局2、ネットワーク3、サーバ4、地域放送装置5、街頭放送機器6とから構成される。携帯電話機10は、詳しくは後述するが、不審者の検出機能を有しており、不審者を検出した場合、その検出情報を基地局2とネットワーク3を介して、サーバ4に送る。サーバ4は、利用者の位置を確認し、そこに一番近い街頭放送機器6を選択して地域放送装置5を介して街頭放送により警告情報を流す。
なお、携帯端末の一例として携帯電話機を取り上げたが、これに限るものではなく、持ち運びが可能で、外部と無線等により通信可能な機能を有するものであれば良い。例えば、携帯用パソコンでも良いし、PDA(Personal Digital Assistants)でも良い。
【0026】
図2は、本発明に係る不審者検出機能付き携帯電話機の一例を示すブロック図である。
この携帯電話機10は、基地局との通信を行うための通信用アンテナ11、信号を受信する受信部12、信号を送信する送信部13、各部を制御する制御部14、映像データを表示できるように処理する表示処理部15、液晶からなる表示部16、受信あるいは送信する音声データを処理する音声処理部17、マイク18、スピーカ19、データを記憶する記憶部20、ユーザが操作入力を行う入力キー21、ブザー22、生体検出用の電磁波を送受信する生体検出用アンテナ23、生体を検出する生体探査部24、GPS(Global Positioning System)用アンテナ25、携帯電話機の位置を検出する電話機位置検出部26、生体情報と位置情報から不審者であるかを判定する不審者判定部27を備えている。
【0027】
図3は、生体探査部24の一例を示すブロック図である。
生体探査部24は、生体種類、生体までの距離、生体の検出方向を探査する機能を有するものであり、方向性結合器31、周波数結合器32、発振部33、位相・振幅検出部34、位相変化検出部35、振幅変化検出部36、生体判定部37、距離・方向検出部38を備える。
【0028】
生体検出の技術は、近年開発されている生命体発見技術を用いている。この技術は、地震や土石流、雪崩、トンネル崩落事故などで生き埋めになった被災者を発見するために開発された技術であり、アンテナから高周波の電波を照射し、生命体からの反射波に含まれる生存者の呼吸や心拍を検出することによって生命体を検出するものである。
【0029】
携帯電話機10の生体探査部24は、生体検出用アンテナ23からマイクロ波あるいはミリ波を出し、その反射波を解析して微少変位と変位の周波数を求め、呼吸や心拍(脈拍)を検出する。この装置は一種のドップラーレーダである。ドップラーレーダとは、ドップラー効果による周波数の変移を観測することで、位置だけではなく観測対象の移動速度を観測することのできるレーダーである。これは生き埋めになった人を探査する生体検出装置に用いられているものと同様の技術であり、ミリ単位の変位(振幅)まで検出可能である。この呼吸や心拍の変位と周波数のパターンを記憶部20に予め記憶しておき、このパターンと比較することにより、生命体であるか、そして生体の種類を判定する。この呼吸パターンや心拍パターンは、生物固有のパターンが存在するため、検出生体が人間であるか、犬や猫等であるかを識別できる。さらに、同一種類でも呼吸パターンや心拍パターンに個体差があるので、検出した生体が同一のものであるか否かも識別が可能である。なお、携帯電話機10と検出生体は両方とも移動しているため、これを考慮して検出したデータを解析し生体の検出パターンを求める必要がある。
【0030】
次に、図3の生体探査部24の動作を説明する。この生体探査部24は、同時に複数の生体を検出して、生体種類を識別し、不審者か否かを判別する。
発振部33から発振された信号の一部は、方向性結合器31へ入り、生体検出用アンテナ23を介して高周波の電磁波を放射する。放射された電磁波は、生体へ照射される。照射された生体は呼吸による腹部と心拍による胸部の上下動により位相及び振幅が変化した反射波を放つ。反射波は、生体検出用アンテナへ入り、方向性結合器31を介して発振部33から発振された信号の一部と周波数結合器32にて混合される。混合された信号は、位相・振幅検出部34にて位相情報の信号と振幅情報の信号とに分けられる。位相情報の信号は、位相変化検出部35へ入り、発振部33から発振された信号と生体反射された信号の位相変化を検出する。また、振幅情報の信号は、振幅変化検出部36へ入り、発振部33から発振された信号と生体から反射された信号の振幅変化を検出する。
【0031】
呼吸・心拍は人間に限らず、犬や猫にも存在するが、生体の種類により、それぞれ位相と振幅の時間軸波形と周波数軸波形のパターンが異なるので、予め記憶部20にそれぞれの生体種類の周波数パターンを記憶しておく。これらの生体種類別の周波数パターンは、検出可能な生体の周波数パターンデータをできるだけ調査して記憶しておく必要がある。生体判定部37は、記憶部20に記憶されている生体種類の呼吸・心拍パターンと比較することにより生体種類を判別する。つまり、位相変化と振幅変化の実測データと、予め記憶しておいた比較データとの相互相関の比較によって生体種類を判別する。この検出結果は不審者判定部27に送られる。
【0032】
また、携帯電話機10の周囲360度にわたって電波を照射してサーチを行う。そして、距離・方向検出部38が検出生体の検出方向と距離を求める。しかしながら、携帯電話機自体が移動しているため、携帯電話機10により検出した方向が変化している。そこで距離・方向検出部38は、電話機位置検出部26の携帯電話機位置の移動方向情報に基づいて、緯度、経度に基づく生体の検出方向を求める。さらに、生体までの距離から生体の正確な位置を求める。
【0033】
図4は、電話機位置検出部26の一例を示すブロック図である。
この電話機位置検出部26は、GPS処理部41、地磁気センサ42、加速度センサ43、ジャイロ44、位置情報処理部45を備える。
【0034】
GPS処理部41はGPSアンテナを介してGPS衛星と通信を行って自分の位置データ(経度、緯度)であるGPSデータを得て、携帯電話機内で処理できるデータに変換処理する。地磁気センサ42、加速度センサ43及びジャイロ44は、電波状況が悪くGPSデータの取得が難しい場合に備えるものである。地磁気センサ42は、携帯電話機10の移動方向を検出し、加速度センサ43は、携帯電話機10の移動時の加速度を検出し、ジャイロは44は、携帯電話機10の移動各速度を検出する。
【0035】
位置情報処理部45は、GPSデータから正確な緯度と経度を得るが、GPSデータがGPS処理部41から送られてこない場合は、その時点から地磁気センサ42及び加速度センサ43による位置予測に切り替える。まず、加速度センサ43により歩行時の衝撃による歩数のカウントと歩幅の予測等により移動距離を求める。加速度センサ43の歩行時の周波数解析等を行い、GPSデータの取得時とのずれを自動解析し、学習して歩行距離の補正を行う機能を持っている。同時に、地磁気センサ42やジャイロ44の検出結果の移動方向から移動位置を推測する。こうして、携帯電話機10の現在位置を正確に求めることができる。このようにGPS、地磁気センサ42、加速度センサ43及びジャイロ44による位置検出においては、数mmの分解能が達成可能である(参考文献:安田明生,電子通信学会誌Vol.82 No.12pp.1207-1215「GPSの現状と展望」:第6頁「RTK−GPS」)。
【0036】
図5は、携帯電話機10の生体探査部24が生体への実際の方向を検出する概念図である。利用者Aが持っている携帯電話機10の生体探査部24がドップラーレーダを使って生体Sを検出するのであるが、図5に示すように、距離・方向検出部38での検出結果は、X,Y座標の原点に利用者Aがいて生体Sを検出している場合と同じである。
【0037】
まず生体探査部24の距離・方向検出部38は、ドップラーレーダにより、生体Sまでの距離(L+B)を検出する。但し、この検出値には、生体Sの呼吸変位Bが含まれている。呼吸変位Bは振幅変化検出部36の検出でその振幅は容易に検出されるので、生体Sまでの実距離Lは簡単に求めることができる。
【0038】
次に電話機位置検出部26の検出値によって、携帯電話機10の移動距離と移動方向が分かる。電話機位置検出部26は、検出値から移動距離と移動方向を示すベクトルδを求め、距離・方向検出部38に出力する。また、生体検出用アンテナ23からマイクロ波あるいはミリ波を360度にわたり出す。例えば、−180度〜180度まで、1秒間隔で1度毎に電波を照射し、その反射波した電波に基づいて位相・振幅検出部34が検出した検出値から距離・方向検出部38が相関値を求める。こうして、距離・方向検出部38が360個の相関値を蓄積し、最も大きい相関値の方向を検出方向とする。このときの方向を基準線に対する角度θとする。
【0039】
携帯電話機10は電話機位置検出部26の検出によりδだけ移動しており、これを加味して、生体Sの実際の検出方向を求めなければならない。ベクトルδの終点をC、生体Sの中心をS0とすると、図5に示すように、補正ベクトルδsは、利用者Aが移動したベクトルδの終点と生体Sを結び、生体Sまでの距離(L+B)は変化しないのであるから、S0からCまでの距離から、距離(L+B)引いたものである。利用者Aが実際に移動したベクトルは、図4の(ベクトルδ+ベクトルδs)である。
【0040】
次に携帯電話機10と不審者報知用サーバ4による不審者検出と報知処理の概略について説明する。
携帯電話機10の不審者判定部27は、生体探査部24から生体種類、検出方向、検出距離、検出位置が入力される。不審者判定部27は、検出された人間が所定の距離以内に所定の時間以上存在した場合、不審者と判定する。そして、その判定を制御部14に送る。
【0041】
制御部14は、不審者の検出情報を送信部13を通じて基地局2に無線でデータを送る。基地局2はネットワーク3を介してサーバ4に不審者の検出情報を送る。サーバ4は、不審者の検出情報に基づいて利用者のいる地域の割り出しを行い、そこに一番近い街頭放送機器6を特定する。
【0042】
特にその地区の危険度(閑静さ)と不審者の行動分析から放送内容を選択する。この放送は、利用者への不審者報知は当然として、不審者に利用者以外の第三者にもその行動が監視されていることを報知するとともに、その行動を控えさせる効果も狙ったものである。特に、ストーカ行為の場合、特定の利用者を同一不審者が追跡していることが基準回数を超えて発生している場合には、自動的に不審者情報を警察に報知する。
【0043】
図6は、携帯電話機の不審者検出における具体的処理の一例を示すフローチャートである。
【0044】
利用者が、例えば、入力キー21の不審者検出キーを押して携帯電話機10の不審者検出機能をONにすると(ステップS1)、生体探査部24と電話機位置検出部26が起動する。
【0045】
まず、電話機位置検出部26がその位置を検出する(ステップS2)。通常はGPS処理部41が衛星からアンテナ25を介してGPSデータを取得して、それに基づいて位置情報処理部45が位置データを取得する。一度、GPS処理部41がGPSデータを取得すれば、その後はGPSデータが電波状況が悪く取得できない場合でも、地磁気センサ42、加速度センサ43及びジャイロ44の検出データに基づいて、位置情報処理部45が携帯電話機10の位置を予測することができる。こうして検出した位置情報は、記憶部20に記憶される。
【0046】
次に、生体探査部24が電磁波により周囲360度をサーチして生体を検出する(ステップS3)。生体判定部37が、位相変化検出部35と振幅変化検出部36の検出パターンと記憶部20に記憶された生体種類のパターンを比較し、生体種類を検出する。同時に、距離/方向検出部38が生体を検出した距離と方向を検出する。こうして検出した生体種類、検出距離、検出方向は、記憶部20に記憶される。
【0047】
生体探査部24の検出結果を受けて、不審者判定部27は、検出した生体が不審者であるか否かを判定する。まず、生体種類が人間であるかを判定する(ステップS4)。ここでは、生体種類が人間でない場合には、検出対象から除外してもよい。これによって、検出対象を絞り込むことが可能となって、高精度の検出が可能となる。
【0048】
人間である場合に、同一人かを確認する(ステップS5)。これは、人間である場合には、記憶部20にその位相と振幅の周波数パターンを記憶し、その記憶したパターンと同一パターンであるか否かで判断する。
【0049】
同一人である場合、距離/方向検出部38の検出結果から所定距離(例えば30m)以内にいるかを判定する(ステップS6)。ここで、記憶部20に所定距離内にいる時間を記憶する。そして、所定距離以内にいる時間をカウントして積算し、所定時間以上になった場合に不審者判定部27は不審者と判定する(ステップS8)。そして、その結果を制御部14に送り、制御部14は、記憶部20に記憶されている不審者検出情報(携帯電話位置、検出生体種類、検出生体の距離と方向、所定距離内にいる時間等)を読み出して送信部13を介してサーバ4へ送信する(ステップS9)。ステップS4〜S7においてNOとなれば、検出生体は不審者ではなく、処理は終了する。
【0050】
不審者検出の基準として、一例を記載したがこれに限定されるものではない。例えば、ステップS7において、所定距離以内の時間ではなく、所定距離以内の間隔で追跡された積算距離が一定値を超えた場合に不審者とする。この場合には、不審者検出情報として不審者の追跡積算距離を含む。
【0051】
図7はサーバが地域街頭放送を利用して行う不審者報知処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
携帯電話機10を送信された不審者検出情報は、基地局2、ネットワーク3を介してサーバ4に入力される(ステップS11)。サーバ4は、不審者検出情報の分析を行い、本当に不審者の可能性があるかを確認する(ステップS12)。さらに、携帯電話機10の位置情報からそれが地図上でどの位置にあたるか、そして利用者の歩いている位置が現時刻で閑静な場所であるか、また、不審者の脈拍数や呼吸数からの不審者の状況を分析する。
【0053】
この分析に基づいて、利用者の位置(携帯電話機10の位置)に近い街頭放送機器6を選択する(ステップS13)。また、緊急性に合わせて報知文言を選択する(ステップS14)。そして、地域放送装置5を用いて選択した街頭放送機器6を用いて報知文言を放送する(ステップS15)。
【0054】
街頭放送機器6から放送する文言は、単に不審者の警告する場合、「お知らせします。現在、この地区に不審者がいる可能性があります。ご注意ください。」程度でよい。これだけで、不審者にも自分が検出されていることを報知することにより、行動を控えさせる効果がある。
【0055】
また、不審者の脈拍数や呼吸数からの不審者の状況を分析した結果、単位時間当たりの心拍数や呼吸数が基準値を超えて上昇する場合は、不審者が行動に移す状況にあると判断し、「現在、警察官がそちらに向かっております。不審者の行動に気をつけてください。」という文言を音量を上げて放送する。これで利用者に緊急性を報知するとともに、不審者にも警告を与え、行動を控えさせる効果がある。
【0056】
不審者報知用サーバ4は、分析したときに、場合によっては警察や警備会社に、分析情報を送信して早急な対応を促すこともできる。さらに、犯罪者リストにアクセスして、検出した不審者の犯罪履歴を抽出し、危険度が高ければ、その状況を警察や警備会社に緊急連絡することも可能である。この場合、サーバ4に犯罪者リストの自動検索させるのが問題であれば、警察等のサーバがサーバ4の自動分析結果に基づいて、犯罪者リストのデータベースから犯罪者情報を自動検索してもよい。この場合、不審者が凶悪な犯罪歴があれば、警察に緊急事態として自動的に通報がいくようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る防犯システムの一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る不審者検出機能付き携帯電話機の一例を示すブロック図である。
【図3】生体探査部の一例を示すブロック図である。
【図4】電話機位置検出部26の一例を示すブロック図である。
【図5】携帯電話機の生体探査部が生体への実際の方向を検出する概念図である。
【図6】携帯電話機の不審者検出における具体的処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】サーバが地域街頭放送を利用して行う不審者報知処理の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0058】
2 基地局
3 ネットワーク
4 不審者報知用サーバ
5 地域放送装置
6 街頭放送機器
10 携帯電話機
11 通信用アンテナ
12 受信部
13 送信部
14 制御部
15 表示処理部
16 表示部
17 音声処理部
18 マイク
19 スピーカ
20 記憶部
21 入力キー
22 ブザー
23 生体検出用アンテナ
24 生体探査部
25 GPS用アンテナ
26 電話機位置検出部
27 不審者判定部
31 方向性結合器
32 周波数結合器
33 発振部
34 位相・振幅検出部
35 位相変化検出部
36 振幅変化検出部
37 生体判定部
38 距離・方向検出部
41 GPS処理部
42 地磁気センサ
43 加速度センサ
44 位置情報処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不審者を検出する機能を有する携帯端末と、該携帯端末から不審者検出情報を受けた場合に利用者に地域街頭放送網を利用して不審者報知を行う不審者報知用サーバとを備えた防犯システムであって、
前記携帯端末は、
携帯端末の位置を求め、携帯端末の周囲に存在する生体を検出して、生体種類、生体までの距離、検出した方向を求めて、検出した生体が不審者であるかを判定し、検出生体が不審者と判定した場合に、不審者検出情報を前記不審者報知用サーバに送り、
前記不審者報知用サーバは、
前記携帯端末から送られた不審者検出情報から携帯端末の位置に近い街頭放送機器を用いて、不審者の報知を行うことを特徴とする防犯システム。
【請求項2】
不審者を検出して利用者に地域街頭放送を利用して報知する携帯端末において、
データを送受信する送受信部と、
携帯端末の位置を検出する位置検出部と、
周囲に存在する生体の種類、生体までの距離、検出した方向を探査する生体探査部と、
検出した生体が不審者であるかを判定する不審者判定部と、
不審者判定部が検出生体を不審者と判定した場合に、該携帯端末とネットワークを介して接続する地域街頭放送用サーバに不審者検出情報を送る報知制御部とを備えたことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
前記生体探査部は、
ドップラーレーダを用いて生体種類及び生体までの距離を求め、さらに360度にわたる生体検出の相関値が大きい方向を生体検出方向とし、前記位置検出部の検出結果から求めた携帯端末の移動方向を加味して前記生体検出方向を補正し、実際の生体方向を求めることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記生体探査部は、
生体からの反射波から心拍と呼吸のうち少なくとも1つの周波数パターンを検出し、予め記憶しておいた生体種類毎の心拍または呼吸の周波数パターンと比較して生体を特定することを特徴とする請求項2又は3に記載の不審者検出機能付き携帯端末。
【請求項5】
前記不審者判定部は、
前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間であるかを確認する手段と、
人間である場合に、同一人物であるかを確認する手段と、
同一人物である場合、生体までの距離が所定値以下の時間を積算する手段と、
前記積算時間が基準値を超えた場合に不審者と判断する手段とを備えたことを特徴とする請求項2、3又は4に記載の携帯端末。
【請求項6】
前記不審者判定部は、
前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間であるかを確認する手段と、
人間である場合に、同一人物であるかを確認する手段と、
同一人物である場合、生体までの距離が所定値以下のものを積算する手段と、
前記積算距離が基準値を超えた場合に不審者と判断する手段とを備えたことを特徴とする請求項2、3又は4に記載の携帯端末。
【請求項7】
前記不審者判定部は、
前記生体探査部の探査結果により生体の種類が人間でないことを確認して探査対象から外す手段を備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載の不審者検出機能付き携帯端末。
【請求項8】
不審者を検出する機能を有する携帯端末から不審者検出の情報を得た場合に、地域街頭放送網を利用して利用者に不審者報知を行う不審者報知用サーバにおいて、
前記携帯端末から受けた不審者検出情報を分析して不審者であることを確定する手段と、
分析した結果、不審者であると確定した場合に、利用者の位置に最も近い街頭放送機器を特定する手段と、
特定した街頭放送機器から不審者の報知を行う手段とを備えたことを特徴とする不審者報知用サーバ。
【請求項9】
前記分析手段は、
不審者生体探査部が検出した心拍パターンや呼吸パターンから、心拍数や呼吸数を求め、単位時間当たりの心拍数や呼吸数が基準値を超えて上昇するかを判定し、
前記報知手段は、
基準値を超えて上昇した場合に、利用者に危険が迫っている警告を行うことを特徴とする請求項8に記載の不審者報知用サーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−204221(P2008−204221A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40384(P2007−40384)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】