説明

防犯システム及び防犯方法

【課題】 会員カードに防犯機能を付加することで、顧客の緊急時に防犯システムに通報するシステムを提供する。
【解決手段】 会員情報を記憶するための会員情報記憶部と、緊急入力部と、緊急入力部の状態を検出する緊急状態検出部と、緊急状態検出部の検出に基づき緊急信号を発生させる信号発生部と、電源部と、を備える会員カード、及び主防犯システムの端末であって、前記会員カードの発する前記緊急信号を受信をもって前記主防犯システムを起動させる端末、を備えてなる防犯システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は防犯システムに関し、特にカードを適用した防犯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
商店街やショッピングセンター等を訪れる顧客が誘拐や通り魔、盗難等の犯罪に巻き込まれないようにする防衛措置として、商店街周辺等に非常ボタンを設置し、緊急時には顧客がそれを押すことで、警報を鳴らしたり、防犯システムに通報する手段がある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−251502 しかし、緊急時にはすぐに非常ボタンのある場所を探すことが困難な場合もあり、緊急通報手段として有効に機能することができない場合がある。 一方、商店街等に訪れる顧客を定着させる方法として、会員カード等が発行されている。しかし、会員カードの特典である、ポイントサービス、割引サービス等のみでは他商店街との差別化を図りにくいという問題が生じている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、緊急時には確実に緊急通報することができ、さらに従来の会員カードの機能に加えて、緊急時に緊急信号を発する機能を付加することにより、他店の会員カードと差別化し、顧客を定着化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記目的を達成すべくなされたものである。すなわち、
会員情報を記憶するための会員情報記憶部と、緊急入力部と、緊急入力部の状態を検出する緊急状態検出部と、緊急状態検出部の検出に基づき緊急信号を発生させる信号発生部と、電源部と、を備える会員カード、及び主防犯システムの端末であって、前記会員カードの発する前記緊急信号を受信をもって前記主防犯システムを起動させる端末、を備えてなる防犯システムを提供する。
信号発生部は、音波を発し、防犯端末は該音波を受信して主防犯システムを起動させる。会員カードの電源部は充電可能な電源からなり、カードリーダー/ライターから電源部に充電させる手段が更に備えられる。会員カードは、入力解除部と、該入力解除部の信号により解除信号を発生させる信号発生部を備え、防犯端末は緊急信号を受信後、主防犯システムの起動を一時保留し、一定条件に基づき解除信号を受信すると、主防犯システムの起動を停止する防犯端末を備える。前記会員カードは、緊急信号の発生履歴を記憶する記憶部を有する。
会員カードの緊急入力部の状態を緊急状態検出部で検出するステップと、緊急状態検出部の検出に基づき信号発生部から緊急信号を発生させるステップと、防犯端末は会員カードの発する緊急信号の受信をもって主防犯システムを起動させるステップを実行する制御方法を有する。
【発明の効果】
【0005】
上記構成により、従来の会員カードのようにポイントサービスや割引サービスが行えたうえで、緊急時には会員カードから緊急信号を発し、主防犯システムを起動させることができる。そのため、会員カードを持つ顧客は、会員カードを発行する商店街等を通行するときに、会員カードの利便性を維持しつつ、さらに通行の安全性も確実に確保することができる。
また、このような防犯システムを備えた商店街等は通行の安全を確保できることから集客にも繋がる。すなわち、他商店街と異なる会員カードを発行することによって、他商店街との差別化を図り、顧客を定着させることが期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の各要素について説明する。
(会員情報記憶部)
会員情報記憶部は、会員カードに記憶される顧客個人の識別情報(ID情報)と、その顧客が購入した商品の購入履歴、購入金額に応じたポイント情報、割引サービス情報及びそれらの日時等の情報(取引情報)とを記憶する。
ID情報は会員カードの発行段階で書き込みされ、その後の取引においてはID情報の書き込みはできない。
取引情報は、商品等の購入時に読込み、書き込みし更新可能である。商品購入時には店舗内に設置されたカードリーダー/ライターにより取引情報を読み込むことが可能であり、顧客の商品購入履歴等を参照できる。また、顧客が商品を購入した際には、購入金額に応じたポイント情報等を書き込み、更新することもできる。
また、いたずらによる主防犯システムへの通報を抑制するため、緊急信号を発した履歴や発した日時を保存させることも可能である。
【0007】
(緊急入力部、緊急状態検出部)
緊急入力部は、盗難など緊急時に顧客が入力し、緊急信号を発生させるために使用される。緊急入力部の構成としては、押しボタン式、タッチボタン式、スライドスイッチ式等が用いられる。
緊急状態検出部は、顧客の緊急入力部への入力を検出した場合に、信号発生部から緊急信号を発生させるために使用される。
【0008】
(信号発生部)
顧客の緊急時に、会員カードのスイッチ(緊急入力部)を押下することにより緊急信号(警報音からなる音声信号を含む)を発生することができ、周囲に対して緊急状態を知らせる。また、発せられた緊急信号を店舗周辺に設置された防犯端末が受信して主防犯システムを起動させ、商店街事務所、警備会社及び/又は警察へ通報がなされる。また、防犯端末に内蔵されている警報機能(スピーカー、照明等)も作動し、周囲に対して緊急状態を知らせることとなる。
なお、会員カードから発せられる緊急信号は音声信号に限られず、電波、光波を使用することも可能である。
【0009】
(電源部)
会員カードは、その内部で会員情報の記憶、信号発生、スイッチ入力の検出等を行うため、電源を持たせる必要がある。電源としては、ボタン電池などの一次電池、スーパーキャパシタなどの蓄電素子やリチウムイオン電池などの二次電池を使用できる。蓄電素子や二次電池の充電方式は接触式又は非接触式により行うことができる。
充電は専用の充電装置を使用すれば家庭内でも可能であるが、商品購入時にカードリーダー/ライターにより充電させることも可能である(図2参照)。
【0010】
(防犯端末)
会員カードからの緊急信号を受信し、主防犯システムに緊急状態を通報する役割を果たす。また、防犯端末に警報機能(スピーカー、照明等)を持たせ、緊急時には防犯端末から警報機能を作動させることができる。
防犯端末は会員カードを発行する商店街の周辺に設置される。防犯端末と主防犯システムのホストとは、有線(LANなど)又は無線(無線LANなど)方式により通信可能となっており、設置場所の制限を受ける店舗が密集している商店街にも容易に設置することができる。
【実施例1】
【0011】
図1に本発明の実施例である防犯システム10の概略図を示す。防犯システム10は顧客に発行される会員カード20、店舗に設置され会員情報を読出し、書き込むためのカードリーダー/ライター30、会員カード20から発せられた信号を受信し、警報機能を作動したり、主防犯システムへ通報するための防犯端末50から構成される。
【0012】
会員カード20は、商品購入時に利用されるID情報記憶部26a、商品購入時に利用される取引情報記憶部26bからなる会員情報記憶部26と、顧客が緊急時に入力する緊急入力部23と、緊急入力部23から緊急状態を検出する緊急状態検出部24、信号発生部25と、信号発生部25が発生した信号を拡声するスピーカー27と、電源部22から構成され、それぞれはCPU21により制御される。
【0013】
ID情報記憶部26aは会員個人の識別情報(氏名、年齢、住所、カード発行番号等の情報)が記憶されている。ID情報は会員カード発行時に作成され、発行後は書き換えることができない。店舗は商品購入時に会員カード20からID情報を出力させることで本人確認を行うことができる。
取引情報記憶部26bは商品の購入履歴、ポイント情報等の取引データが記憶されている。顧客は商品を購入する際に会員カード20を提示し、店舗に設置されPOS端末等と接続されているカードリーダー/ライター30により取引情報が読み出される(図2参照)。次に、購入商品についての情報(購入商品、取引代金、ポイント情報、日時等)がカードリーダー/ライター30から取引情報記憶部26bに書き込まれ、取引情報を更新することとなる。
【0014】
電源部22は会員カード20の持つ各機能を動作させるために必要となる。電源として、乾電池などの一次電池や、スーパーキャパシタなどの蓄電素子、リチウムイオン等の二次電池を使用する。蓄電素子や二次電池の充電方法として不図示の蓄電器から端子を接触させて充電する接触充電や、充電器から充電用電波を発生させ会員カード20内の不図示のコイルを介して電荷を発生させて充電する非接触充電により充電する。充電器はカードリーダー/ライター30に備えて、会員カード20の読み込みや書き込み時に充電することも可能である。
【0015】
緊急状態検出部24は、緊急入力部23の応答に反応して、信号発生部25から緊急信号(警報音からなる音声信号、可聴周波数でなくても良い)を発生させる。防犯端末50はこの緊急信号を、不図示の、マイクなどの集音装置と増幅器、特定音域を取り出すフィルタ回路、フィルタ回路からの出力信号検出器等により検出し、主防犯システムは通報することとなる(図3参照)。
【0016】
防犯端末50は会員カード20を発行する商店街等の周辺、例えば外灯などに一つ以上設置される。会員カードから発せられた音声信号を受信し、緊急信号を主防犯システムへと通報する。この緊急信号を受けた主防犯システムは、警察、警備会社又は当該商店街へ連絡する。
【0017】
以上のように、会員カードに防犯機能を持たせることにより、顧客は安全に商店街を通行できることとなる。
【実施例2】
【0018】
図4に本発明の他の実施例である防犯システム100の概略図を示す。図1と同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
会員カード200に新たに入力解除部280を追加した。不図示のスイッチ等からなる入力解除により、入力解除部280は信号発生部25からの緊急信号の発生を中止する。これにより、会員カード200から解除信号(無信号)を発することが可能となり、誤って緊急入力された信号を一定条件(所定の時間内)のもとで解除することが可能となる。
防犯端末500には会員カード200から発せられる緊急信号を受信後、主防犯システムへの信号を一時保留し、解除信号を一定条件(所定の時間内)のもとで受信すると、警報音の発生や主防犯システムへの信号を、解除や停止させる機能を持たせている。
【0019】
防犯端末500は、会員カード200からの緊急信号を受信する信号受信部510、防犯端末500を点灯させ、警報音を発生させる照明及びスピーカー520、主防犯システムへ通報するかを判断するための緊急信号受信時にONし解除信号受信時にOFFするタイマー530、所定の時間を経過した段階でタイマー530からの信号を受信し、一時保留していた主防犯システムへの緊急信号を通報するための緊急信号通報部540から構成される。
【0020】
図5は緊急入力した後に、解除する場合のフローチャートを示す。顧客が緊急状態に陥った場合、会員カード200の緊急入力部23のスイッチを押下し(S1、S2)、緊急信号を発する(S3)。その緊急信号を防犯端末500が受信し、防犯端末500の照明及びスピーカー520を動作させる。それと同時にタイマー530もオンされ、カウントが始まる。タイマー530は所定の時間に設定することができ、その設定時間内であれば、誤入力を解除させることができる。設定時間経過した場合は、主防犯システムへと緊急信号を通報することとなる。
誤入力が生じた場合は、入力解除部280のスイッチを押し(S7)、会員カード200の信号発生部25から解除信号を送信する(S8)。解除信号を受信した防犯端末500はタイマー530の進行を停止させる(S9)。これにより、タイマー530から緊急信号通報部540への信号が停止されるため、主防犯システムへの通報も停止させることとなる。
一方、タイマー530が所定の設定時間を経過した後は主防犯システムへと緊急信号を通報することとなる(S6)。
また、会員カード200では、緊急信号の発生や解除信号の発生は、不図示の日時計によりその発生日時と共に、不図示の記憶部に記憶され、これらの履歴情報はカードリーダー/ライター30で読み出すことができるため、いたずらで使用したかがわかり、不正な使用を抑止することができる。
【0021】
以上のように、誤入力による緊急信号を送信した場合でも、一定条件のもとで解除することができる。そのため、主防犯システムへの無駄な通報を低減させることができ、円滑に防犯システムを運営することが可能となる。
【0022】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は実施例1で使用する防犯システムの概略図である。
【図2】図2は店舗内で会員カードを使用する際の図である。
【図3】図3は商店街周辺で会員カードから緊急信号を発する場合の図である。
【図4】図4は実施例2で使用する防犯システムの概略図である。
【図5】図5は実施例2において緊急信号を解除する場合のフローチャートである。
【符号の説明】
【0024】
10、100 防犯システム
20、200 会員カード
22 電源部
23 緊急入力部
24 緊急状態検出部
25 信号発生部
26 会員情報記憶部
30 カードリーダー/ライター
40 電源供給装置
50、500 防犯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
会員情報を記憶するための会員情報記憶部と、緊急入力部と、緊急入力部の状態を検出する緊急状態検出部と、緊急状態検出部の検出に基づき緊急信号を発生させる信号発生部と、電源部と、を備える会員カード、及び
主防犯システムの端末であって、前記会員カードの発する前記緊急信号の受信をもって前記主防犯システムを起動させる防犯端末、を備えてなる防犯システム。
【請求項2】
前記信号発生部は、音波を発し、前記防犯端末は該音波を受信して前記主防犯システムを起動させる、ことを特徴とする請求項1に記載の防犯システム。
【請求項3】
前記会員カードの前記電源部は充電可能な電池からなり、カードリーダー/ライターから前記電源部に充電させる手段が更に備えられる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の防犯システム。
【請求項4】
前記会員カードは、入力解除部と、該入力解除部の信号により解除信号を発生させる前記信号発生部を備え、前記防犯端末は前記緊急信号を受信後、前記主防犯システムの起動を一時保留し、一定条件に基づき前記解除信号を受信すると、前記主防犯システムの起動を停止する防犯端末を備える、ことを特徴とする請求項1または2に記載の防犯システム。
【請求項5】
前記会員カードは、前記緊急信号の発生履歴を記憶する記憶部を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の防犯システム。
【請求項6】
請求項1に記載の防犯システムを用いて、
前記会員カードの前記緊急入力部の状態を前記緊急状態検出部で検出するステップと、前記緊急状態検出部の検出に基づき前記信号発生部から前記緊急信号を発生させるステップと、前記防犯端末は前記会員カードの発する前記緊急信号の受信をもって前記主防犯システムを起動させるステップを実行する制御方法を有する、ことを特徴とする防犯方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−285776(P2006−285776A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−106598(P2005−106598)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】