説明

防犯砂利

【課題】連続空隙を有すると共に高い圧壊強度を有して踏まれてもつぶれにくく、防犯上有効な騒音発生能力を長期にわたって高く保持できる防犯砂利を提供する。
【解決手段】膨張頁岩及び/または膨張粘土を少なくとも原料として用い、1000℃〜1300℃の焼成温度で焼成して製造する無機発泡粒からなり、絶乾密度が0.6〜1.3g/cmであることを特徴とする。さらに、実積率が65%以下であること、粒径10mm未満の粒子が40質量%以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として建物の敷地内の地面、路面に敷設されて、侵入者がこれを踏むと大きな音を発生する防犯砂利に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天然石(特に砂岩)を焼成して、低融点成分を溶融しガラス質として、モース硬度が7以上となるようにすることにより、大きな騒音を発生しやすい防犯砂利を製造する方法が示されている。しかし、このように密実な砂利の場合は、砂利同士の表面の擦れで発生した騒音が、敷き詰められた砂利の層内を伝播する間に減衰する課題があった。
【0003】
一方、特許文献2や特許文献3には、ガラス発泡体からなり連続気泡を有する防犯砂利が示されている。連続気泡を有する防犯砂利では、砂利が擦れ合って発生した騒音が、連続気泡を透過して減衰せずに外部に放出される。しかし、これらのガラス発泡体からなる防犯砂利は、圧壊強度が低く、人が踏むと容易に破砕し、破砕した発泡体が防犯砂利の隙間を埋めるため、音の発生が低下するという課題があった。そのため、2〜3ヶ月で敷き直し、または敷き増しが必要であり、消費者に大きな経済的負担を強いるものとなっていた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−315254号公報
【特許文献2】特開2007−154518号公報
【特許文献3】特開2005−256318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、連続空隙を有すると共に高い圧壊強度を有して踏まれてもつぶれにくく、防犯上有効な騒音発生能力を長期にわたって高く保持できる防犯砂利を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成した。即ち、本発明は[1]膨張頁岩及び/または膨張粘土を少なくとも原料として用い、焼成して製造する無機発泡粒からなり、絶乾密度が0.6〜1.3g/cmであることを特徴とする防犯砂利を提供するものであり、さらに、[2]実積率が、65%以下であることを特徴とする防犯砂利を提供するものであり、[3]粒径10mm未満の粒子が40質量%以下であることを特徴とする防犯砂利を提供するものである。ここで絶乾密度の測定は、「JIS A 1135 構造用軽量粗骨材の密度及び吸水試験方法」に、実積率は、「JIS A 1104-1999 骨材の単位容積質量及び実積率の測定方法」によって測定した。
【0007】
家屋等の周辺に敷設する砂利が、体重65kg程度の平均的な体重の人が踏み歩くのに用いられる場合は、相当の圧壊強度を要する。密実な砂利では、圧壊強度は十分であるが、発生音の砂利内部での反響がなく、踏み歩きで発生する防犯上有効な騒音の発生は、小さい。内部空隙を持つ無機発泡粒は、その連続空隙の割合が大きいほど、すなわち絶乾密度が低いほど騒音発生能力が、高くなることがある。しかし、絶乾密度が低くなるほど、圧壊強度が小さくなる傾向も認められる。
【0008】
そこで、絶乾密度が低いにもかかわらず、十分な圧壊強度を持つ膨張頁岩及び/または膨張粘土を原料とした特定密度の無機発泡体が、防犯砂利とした場合に特に優れていることを見出した。このとき、絶乾密度は0.6g/cm以上であることが望ましい。これに満たない場合は、十分な圧壊強度が保持できない場合がある。絶乾密度は1.3g/cm以下、より好ましくは1.0g/cm以下である。絶乾密度が、小さくなるほど、内部空隙が大きくなり、騒音が反響する。絶乾密度が1.3g/cmを超えると十分に騒音が発生しない場合がある。
【0009】
本願発明の防犯砂利に用いる無機発泡体は、主に膨張頁岩及び/または膨張粘土からなる原料を1000℃〜1300℃の焼成温度で焼成して製造する。焼成装置としてはロータリーキルンを用いることが好ましい。原料には石炭灰、焼却灰、下水汚泥、建設汚泥、建設発生土等を副原料として加えても良い。また、焼成時に必要に応じて、珪砂、アルミナ、石灰石、石炭灰等を融着防止材としてキルン内に投入しても良い。
【0010】
さらに、実積率が65%以下、より好ましくは62%以下であるように、上記無機発泡体の粒度分布を調整することによって、さらに騒音発生効果を増すことができる。これは、より密な粒子充填がされると、人がこれを敷設した砂利層を踏んでも、粒子間の移動が少なくなり、粒子間摩擦が減少するからである。粒子間の空隙を大きくする、すなわち、実積率を低くするためには、上記無機発泡体または発泡体製造原料から、通常の篩い分け手段によって、例えば10mm未満の粒子を一部取り去り、粒径10mm未満の粒子が40質量%以下、より好ましくは10質量%以下であるように調整すれば良い。これによって、10mm未満の粒子が比較的大きな粒子の間に充填されて、より密な粒子充填がされることを抑えられる。
【0011】
詳述すると、従来の防犯砂利では、平均粒子径が重要視されていたが、騒音の発生には、平均粒子径よりも粒度の分布がシャープであることが重要である。特に、低粒径側にギャップのあることが望ましい。すなわち特定の閾値をもって、その値よりも粒径の小さな粒子の存在割合が鋭く減少することが望ましい。その閾値は凡そ10mmに設定することが望ましい。例えば、粒径10mm未満の粒子を40質量%以下とし、実積率を65%以下とすれば、従来の防犯砂利と同程度の騒音発生が可能となり、さらに好ましくは、粒径10mm未満の粒子を10質量%以下とし、実積率を62%以下とすればよい。粒径10mm未満の粒子が40質量%を超える場合は、粒径10mm以上の防犯砂利の間に粒径10mm未満の粒子が充填し、防犯砂利同士の擦れを妨げることにより、騒音の発生を抑える場合があるため好ましくない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐久性が高く、騒音発生能力を長期にわたって高く保持できる防犯砂利を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に記載する無機軽量材は、防犯上有効な騒音発生量が得られる連続空隙と適度な圧壊強度をバランス良く有する砂利を提供し得る。しかし、本発明品の製造は、この方法に限定されるものではない。
【0014】
現在、生産されている軽量骨材の大半は、膨張頁岩を所定の粒度に解砕、或いは粉砕し成形したものをロータリーキルンで加熱して発泡させたものである。膨張頁岩の主たる発泡メカニズムは、原料を解砕、粉砕成形品を加熱すると、表層部から温度が上昇し、徐々にガラスメルト相が生じ、最終的には酸素を透過しにくくなる層が表面に生じる。次いで、原料内部では、以下の反応が生じ、0或いは/及びC0等のガスが発生、これらが封じ込められ発泡軽量化が進行する。
【0015】
【化1】

【0016】
焼成温度は1000℃〜1300℃が好ましい。この温度以下であると、絶乾密度が1.3より大きくなり、また、1300℃以上では焼成物が溶融してしまい、ロータリーキルンでの製造が困難である。また、必要に応じて、融着防止材をキルン内に投入し、安定製造を行うことも可能である。融着防止材とは、原料頁岩よりも融点が高いもので特に規定するものではないが、珪砂、アルミナ、石灰石、石炭灰等が挙げられる。
【0017】
原料は、膨張頁岩及び/または膨張粘土を所定の粒度(5〜20mm、より好ましくは10〜20mm)に解砕したものが好ましい。小粒径(5mm以下)の膨張頁岩の解砕品や、膨張頁岩を粉砕成形したものの場合、先に述べた表層部のガラスメルト相によるガスの封じ込めが不十分となり、軽量化しにくいからである。20mmを超えると、十分な圧壊強度が得られないことがある。
【0018】
発泡促進剤として、炭化珪素、炭材及び酸化鉄から選ばれるいずれか1種以上を原料に添加することが望ましい。
【0019】
ロータリーキルンを使用する絶乾密度1.0以下の軽量材の製造は、原料温度が500℃から1000℃までに達する時間を10分以内、好ましくは5分以内、さらに1050℃以上での原料の滞留時間を2分以上とすることで、達成できる。原料温度が500℃に達してから1000℃に達するまでの滞留時間、即ち1000℃に達するまでの昇温速度を大きくし、1050℃以上での滞留時間を多くすることが好ましい。なお、原料温度が500℃〜1000℃までの滞留時間の下限は、原料全体の温度が上がる時間であればよく、焼成装置の特性にもよるが、通常は1分程度である。また、原料温度が1050℃以上での原料の滞留時間の上限は特にないが、焼成のコストを考えると通常は20分以内である。
【0020】
このような温度制御の手段としては、ロータリーキルンの回転速度を上げる、キルン傾斜度を上げる、キルン長さを短くすることが具体的な対策として挙げられる。また、従来のロータリーキルンとは逆に、原料供給手段をロータリーキルン内のバーナ配置側に設けてもよい。このようなロータリーキルンによる焼成では、原料の昇温時間を小さくすることができるので好ましい。
【0021】
前記軽量材である無機発泡粒からなり、絶乾密度が0.6〜1.0g/cmとしたもの、さらに、実積率が、65%以下としたもの、粒径10mm未満の粒子が40質量%以下としたものは、防犯砂利として特に好ましい。
【0022】
実施例1
兵庫県淡路島産の膨張頁岩をあらかじめ、ジョークラッシャーにより破砕し、次いで篩にて5〜20mmの粒子径の分画に分級した破砕品を原料とした。これを、内径0.46m、長さ8mのロータリーキルンで焼成した。焼成条件は原料送入量100kg/h、滞留時間40分、温度は1180℃であった。この様にしてえられた焼成物(実積率:63.7%)の絶乾密度は0.81g/cmであった。
【0023】
実施例2
実施例1と同様に、兵庫県淡路島産の膨張頁岩をあらかじめ、ジョークラッシャーにより破砕し、次いで篩にて10mm以上(実積率:60.5%)に分級したものを得た。絶乾密度は、0.79g/cmであった。
【0024】
比較例1
実施例1と同様に、兵庫県淡路島産の膨張頁岩をあらかじめ、ジョークラッシャーにより破砕し、次いで篩にて10mm以下(実積率:66.2%)に分級したものを得た。
【0025】
試験用砂利をパレットに、幅100X奥行き100×高さ10cmに敷き詰め、騒音測定器(デジタル騒音計MT−325マザーツール社製)を、敷き詰めた端部から、距離50cm、高さ50cmに置き、音量を測定した。平均的な男性(体重65kg)が砂利を踏みつけることにより発生する音量を測定した結果を表1に示す。軽量材等の砂利はすべて絶乾状態とした。なお、市販品は表乾密度が0.86g/cm3、絶乾密度が、0.42g/cm3、吸水率が106.9%であった。
【0026】
【表1】

【0027】
上記軽量材(絶乾密度0.81g/cm)の粒5mm以上20mm以下のもの(実積率が、63.7%)は、市販品と、ほぼ同等の騒音発生性能であった。
【0028】
粒径10mm以下の軽量材を篩で除去し、粒度分布を鋭くすることにより、最も大きな音量値となった。一方、市販品の最大軽量材寸法は約30mm程度であるが、原料がガラスリサイクル材のため、試験中の圧壊が顕著で騒音発生が急激に減衰した。実施例1に例示の軽量材では、0.5時間踏みしめた後でも、75±3dBの高い騒音発生能力を維持していた。
【0029】
なお、太平洋セメント社製:アサノライト(登録商標)は、絶乾密度が、1.25g/cm、24時間吸水率、9.7%である。アサノライトの騒音発生能力は、市販品と同等であった。しかし、市販品と比べて、圧壊による騒音発生の低下が著しく小さかった。
【0030】
耐久性を、圧壊強度であるBS破砕値、10%破砕値の測定で評価を行った。表2に測定結果を示す。試料は、実施例1の試料、比較例として、市販品を用いた。BS破砕値は、100%であり、市販品の70%より大きく、磨り減りに強い。10%破砕値は、10.8kNであり、市販品の40.5より小さく、破砕に強いことを示す。BS破砕値、10%破砕値の測定方法は、British Standard 812(英国規格812)に拠った。
【0031】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、耐久性が高く、騒音発生能力を長期にわたって高く保持できる防犯砂利を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張頁岩及び/または膨張粘土を、すくなくとも原料として用い、焼成して製造する無機発泡粒からなり、絶乾密度が0.6〜1.3g/cmであることを特徴とする防犯砂利。
【請求項2】
実積率が65%以下であることを特徴とする請求項1に記載の防犯砂利。
【請求項3】
粒径10mm未満の粒子が40質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の防犯砂利。

【公開番号】特開2010−95978(P2010−95978A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270187(P2008−270187)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】