説明

防犯装置

【課題】本発明の課題は、長期間、電池を交換もしくは充電しないで動作させることのできる防犯装置を実現する。すなわち、振動、衝撃を検知していない状態では電池の電力消費を自己放電分のみにし、長期間、電池を交換もしくは充電しないで動作させることのできる防犯装置を提供する。
【解決手段】振動、衝撃を電気に変換する圧電素子を使用し、振動、衝撃が加わった際、この素子から出力される電圧をきっかけとして電池電源を制御回路へ供給することにより、このとき始めて電池電源が消費される。すなわち、本発明によれば、待機中の電池電源消費を無くすことが可能な防犯装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動機に用いられる防犯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動機に対する犯罪の防犯対策として、自動機に振動、衝撃等の攻撃が加わった場合には、スピーカやブザーなどの音声出力装置を鳴動することや、警備会社や管理者へ通報することを行っている。自動機が電源投入されている場合には、この電源を用いて防犯装置を駆動し、また、自動機が電源オフ状態である場合には、電池により防犯装置を駆動してこの方法を実現している。
【0003】
自動機の電源がオフ状態である場合に使用されるこの電池の容量については、自動機の電源オフ状態が継続される時間と防犯装置の消費電力量との関係により決まるため、防犯装置の機能が待機状態であるときの消費電力量を少なくしたものが提案されている(特許文献1参照)。この装置は、待機スイッチ回路を持ち、振動センサによって振動を検知していない状態の時には、音声出力制御回路への電源供給を遮断しておき、振動を検知した場合には、音声出力制御回路への電源供給を開始して警報を発し、所定時間が経過すると音声出力制御回路への電源供給を遮断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−278332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例によれば、防犯装置内に電池を有し、装置内の回路へ電池電源を供給して回路を駆動させ、振動を検知した場合には音声出力制御回路により警報を発することが可能である。しかし、常に防犯装置内の回路へ電池電源を供給しているため、電池の消費が早く、電池の交換、もしくは充電が定期的に発生するという課題が生じる。
【0006】
前記特許文献によれば、振動を検知していない状態では電池電源は遅延回路および電圧検出回路に供給されており、振動を検知するとマイコン、音声出力制御回路に対しても電源供給を始める。これにより電池の消費電力量を少なくしているが、振動を検知していない状態でも電池は回路で消費されており、電池容量が少なくなった場合には電池の交換もしくは充電が必要になるという課題が残る。
【0007】
本発明の目的は、振動、衝撃を検知していない状態では電池の電力消費を自己放電分のみにし、長期間、電池を交換もしくは充電しないで動作させることのできる防犯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するために、本発明は、振動、衝撃を電気に変換する圧電素子と、振動、衝撃の誤検知を防止する遅延回路部と、警報を発するための音声出力制御回路部と、圧電素子から出力された電気を元に電池電源を音声出力制御回路部へ供給する半導体スイッチ部と、遅延回路部と音声出力制御回路を駆動するための電池と、を備え、振動、衝撃を検知したときに始めて電池電源を音声制御回路部および遅延回路部へ供給するように構成したことにある。
【0009】
上述のような構成としたので、振動、衝撃を圧電素子が検知した場合、圧電素子は振動、衝撃を電気に変換し、その電気を元に半導体スイッチ部をオンし、これにより電池電源が遅延回路部と音声出力回路部に供給される。
【0010】
さらには、最初の振動、衝撃結果とその後に引き続き加わる振動、衝撃結果との論理積を取る遅延回路部を含む構成としたことにある。
【0011】
上述のような構成としたので、最初の振動、衝撃の後、新たに振動、衝撃が加わった場合、または、連続して振動、衝撃が続いた場合、遅延回路部にて最初の振動、衝撃結果と論理積を取り、いたずらや攻撃目的の振動、衝撃であると判断することを可能にしている。最初の振動、衝撃の後、所定の時間までに、新たに振動、衝撃が加わらなかった場合、または、連続して振動、衝撃が続かなかった場合、半導体スイッチをオフし、遅延回路部と音声出力回路部への電池電源の供給を遮断することにより、電池の消費を無くすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、待機中の電池電源消費を無くすことが可能な防犯装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による防犯装置の実施形態のブロック図である。
【図2】本発明による防犯装置の実施形態の動作フローチャートである。
【図3】本発明による防犯装置の実施形態の動作を説明する信号波形図である。
【図4】本発明による防犯装置の各種ケースの処理を説明する一覧表である。
【図5】本発明による防犯装置を搭載した具体例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、銀行システムなどの金融システムに採用される例えばATM(Automated Teller Machine)のような自動取引装置に関する。
【0015】
まず、図1は本実施形態に係るブロック図である。本実施形態の防犯装置は、電池1、メインスイッチ2、圧電素子3、遅延回路部4、半導体スイッチ部A5、半導体スイッチ部B6、音声出力制御回路部7、警報ブザー8を備える。
【0016】
メインスイッチ2は、本防犯装置を動作させるために使用する大元のスイッチである。
圧電素子3は、振動、衝撃を検知するセンサであり、振動、衝撃を検知するとこれを電圧に変換し、遅延回路部4に電圧を出力する。遅延回路部4では圧電素子3から供給された電圧を元に、半導体スイッチ部A5をオンするとともに、半導体スイッチ部A5をオンすることにより電池1より供給される電源を使用して、振動、衝撃があったことを記憶しておく。また、1回目の振動、衝撃から所定時間内に2回目の振動、衝撃を検知した場合に半導体スイッチ部B6をオンすることにより、音声出力制御回路部7へ電池1から電源を供給する。これにより、振動、衝撃の誤検知を防止することができる。音声出力制御回路部7は、電池1から電源を供給されると警報ブザー8へブザー鳴動信号を出力する。
【0017】
次に本防犯装置の動作フローについて、図2、図3を用いて説明する。図2は本防犯装置の動作開始から防犯ブザー鳴動までのフローを示す。また、図3は本防犯装置の動作開始から防犯ブザー鳴動までを説明する信号波形図である。まず、図2において、本防犯装置の動作を開始するため、メインスイッチ2をオンする(S2)。この状態では半導体スイッチ部A5および半導体スイッチ部B6の入力部に電池1の電圧が掛かるが、半導体スイッチ部A5および半導体スイッチ部B6がともにオフしているため、電流は流れない。
この状態が待機状態である。
【0018】
この状態にあるときに、振動、衝撃が圧電素子3に加わり、検知すると(S3)、遅延回路部4より半導体スイッチ部A5に対してオン信号が出力され、半導体スイッチ部A5はオンする(S4)。これにより、電池1が遅延回路部4に供給され、振動、衝撃があったことを一旦データ記憶する(S5)。最初の振動、衝撃を検知してから所定の時間(図3−T1)、半導体スイッチA5はオン状態が続き、この間、S5で記憶されたデータは保持される。所定時間(図3−T1)内に次の振動、衝撃を圧電素子3が検知しない場合(S6)には、半導体スイッチ部A5はオフされ(S7)、S5で保持していたデータはクリアされる(S8)。この場合、待機状態へと戻り、再び振動、衝撃が検知されるのを待つ。
【0019】
S6で所定時間(図3−T1)内に次の振動、衝撃を圧電素子3が検知した場合、遅延回路部4より半導体スイッチ部B6に対してオン信号が出力され、半導体スイッチ部B6はオンする(S9)。これにより、電池1が音声出力制御回路部7に供給され、ブザー鳴動信号が生成される(S10)。このブザー鳴動信号が警報ブザー8に出力されることにより、ブザーが鳴動する(S11)。
【0020】
警報ブザー8の鳴動を止めるには(S12)、メインスイッチ2をオフする(S13)。これにより、電池1の供給が止まり、遅延回路部4、半導体スイッチ部A5、半導体スイッチ部B6、音声出力制御回路部7への電源供給も止まる。この結果、警報ブザー8のブザー鳴動が止まる。
【0021】
ここでは警報ブザーで説明したが、スピーカを使用して、音声による警告文言を出力してもよい。
【0022】
電池の消費電流については、半導体スイッチ部A5がオンしている間は消費されるが、待機中は電池電源消費を無くすことができる。なお、従来技術によれば、メインスイッチをオンしている間は絶えず電池電源消費しているため、本発明により、電池の電力消費を抑えることができ、長期間、電池を交換もしくは充電しないで動作させることが可能である。
【0023】
次に本防犯装置への攻撃の各種ケースにおける処理について図4を用いて説明する。図4は攻撃の種類、連続性、大きさによる警報ブザー出力の有無を示す。ケース1は、振動、衝撃が単発、連続に係わらず、圧電素子が検知しないレベルの攻撃力であり、この場合、警報ブザー出力は行わない。
【0024】
ケース2は、2回連続で攻撃を受けた場合であるが、圧電素子が検知する、しないに係わらず、最初の攻撃と次の攻撃の時間間隔が所定時間以上であった場合であり、この場合、警報ブザー出力は行わない。ケース3および4は、所定時間内に2回連続で攻撃を受けた場合であるが、最初の攻撃もしくは次の攻撃力が圧電素子検知レベル以下であった場合である。この場合、警報ブザー出力は行わない。ケース5は所定時間内に2回連続で攻撃を受けた場合であり、最初の攻撃、次の攻撃ともに圧電素子検知レベル以上の大きさの攻撃であった場合であり、この場合には警報ブザー出力を行う。
【0025】
ケース6は、3回以上連続で攻撃を受けた場合で、かつ、圧電素子検知レベル以上の大きさの攻撃があってから、所定時間以上経過後に圧電素子検知レベル以上の大きさの攻撃があった場合である。この場合、警報ブザー出力は行わない。ケース7は、3回以上連続で攻撃を受けた場合で、圧電素子検知レベル以上の大きさの攻撃があってから、所定時間内に圧電素子検知レベル以下の大きさの攻撃があった場合である。この場合、警報ブザー出力は行わない。ケース8は、3回以上連続で攻撃を受けた場合であり、圧電素子検知レベル以上の大きさの攻撃があってから、所定時間内に再度圧電素子検知レベル以上の大きさの攻撃があった場合であり、この場合には警報ブザー出力を行う。
【0026】
次に本防犯装置を搭載した具体例について、図5を用いて説明する。図5は本防犯装置を搭載した現金自動取引装置である。現金自動取引装置F1には、本来の機能を実施するための現金の入出金機構部、カード読み取り機構部、通帳記帳機構部、明細書印字機構部、入力操作部、ホスト通信制御部のほかに、本実施形態の防犯装置を有する。防犯装置の制御回路部F11には、図1を用いて説明した電池1、メインスイッチ2、遅延回路部4、半導体スイッチ部A5、半導体スイッチ部B6、音声出力制御回路部7を備える。
【0027】
また、本具体例では、現金窃盗目的で発生する振動、衝撃を受ける可能性の高い現金自動取引装置F1の前面部および後面部にそれぞれ圧電素子F12および圧電素子F13を設ける。この位置は、現金自動取引装置F1の扉鍵の近くや取手の近くなどの現金窃盗目的で攻撃されやすい箇所が望ましい。
【0028】
さらに、周囲へ警報音を届きやすくするため、現金自動取引装置F1の前面上方部に警報ブザーF14を備える。
【0029】
また、現金自動取引装置F1には、係員が装置をメンテナンスする際に使用する係員用ディスプレイが後面扉もしくは前面扉に備わっている場合があり、この操作を行う場合には後面扉もしくは前面扉を開け閉めすることになる。扉を開けた後に、意図しない振動、衝撃により誤って警報ブザーF14が出力しないよう、圧電素子F12または圧電素子F13のどちらかの接続を切ることができるスイッチF15およびF16を備える。
【符号の説明】
【0030】
1…電池、2…メインスイッチ、3…圧電素子、4…遅延回路部、5…半導体スイッチ部A、6…半導体スイッチ部B、7…音声出力制御回路部、8…警報ブザー、F1…現金自動取引装置、F11…制御回路部、F12…圧電素子、F13…圧電素子、F14…警報ブザー、F15…スイッチ、F16…スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動、衝撃を検知し、電圧を出力する圧電素子と、制御回路および警報ブザー鳴動用に電源供給する電池と、圧電素子からの振動、衝撃検知情報を保持し、かつ、誤動作を防止する遅延回路部と、遅延回路部からの出力信号により電池電源を制御回路および警報ブザーに供給または遮断する半導体スイッチと、警報ブザーを鳴動するための信号を生成する音声出力制御回路部と、振動、衝撃を検知したことを音により警告を発する警報ブザーを備え、待機中の、振動、衝撃を検知していない状態では振動、衝撃を検知していない状態では電池の電力消費を自己放電分のみにし、長期間、電池を交換もしくは充電しないで動作させることを特徴とした防犯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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