説明

防犯診断提案方法

【課題】 対象建物の開口部毎に侵入盗危険性を判定して、判定結果に従って侵入盗危険性ある開口部に対して有効且つ適切な防犯措置を提案し得るようにする。
【解決手段】 対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境の評価項目による建物総合定量評価と、その開口部毎の開口部環境の評価項目による開口部個別定量評価を行って、これらの点数を加算して対象建物の開口部毎に侵入盗危険性を判定し、その結果に従って侵入盗危険性ある開口部に防犯建物部品登録開口部材を推奨する。判定は、防犯環境設計に基づきウエイト付けを行った項目毎の点数によって行い、開口部個別定量評価は、接道又は隣地からの開口部視認性及び敷地内侵入経路上の侵入障害の有無を重視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建住宅、マンション等の建物及びその開口部の侵入盗危険性を判定し且つ侵入盗危険性ある開口部に防犯建物部品の設置を推奨するようにした防犯診断提案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防犯環境設計に基づく侵入盗危険性を定量評価する評価方法として、対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境の評価項目による定量評価により侵入盗危険性を判定する防犯評価方法が知られており、下記特許文献1は、自己の住宅地に対し隣地または隣家との関係を考慮して防犯上の安全度または危険度を評価するように、隣家を含む周辺環境に対する評価項目とその評価項目の安全度または危険度を示す点数を対応付けて格納した評価データベースと、前記点数の合計点数に対応して前記安全度または危険度のレベルを複数段階に区分して格納したレベルデータベースと、前記評価項目をはじめとする各種情報を表示する表示手段と、この表示手段に表示された評価項目に対して施主が入力を行うための入力手段と、この入力手段により施主によって入力された評価項目の点数に基づき、前記評価データベースを参照してその合計点数を計算するとともに、その合計点数に基づき、前記レベルデータベースを参照して安全度または危険度のレベルを決定し、そのレベルに対応した内容を前記表示手段に表示させる判定手段を備えたものとし、このとき、例えば、住宅の窓や面格子といった各種建物部品、即ち、フェンスや石垣、門扉といった各種外構部品、照明や検知センサ、カメラといった各種機器部品に防犯を考慮した点数を付与して格納した部品データベースと、前記評価結果に基づき、一定レベルの安全度を満たす点数となるように部品データベースから各種部品を抽出し組み合わせて建物の外観を構成して前記表示手段に表示するものとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4362608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の防犯評価は、対象建物を一括且つ全体的に評価して、その結果に基づいて部品データベースから施主の部品選択による建物外観を表示するものとされるから、施主の防犯乃至外観の志向や部品データベースの編成によっては、建物として危険レベルに応じた統一した建物部品を使用する結果となって、防犯評価によって使用する建物部品の経済的負担が増大する一方、経済的負担を軽減しようとすると、防犯評価の危険レベルに応じた防犯措置をなし得ないという問題点がある。
【0005】
即ち、侵入盗による建物侵入は、一般に、窓から6割強、ドア等の出入口から3割強であるとされるように、圧倒的に開口部からなされるところ、防犯環境設計、特にその侵入盗プロフィールに基づいて調査すると、これら開口部にあっても侵入盗が侵入する開口部は、特定の条件を備えた開口部に集中する傾向があるから、該開口部に対して、その余の開口部とは別に重点的な防犯措置を施すようにすれば、高度な確率で侵入盗の建物侵入を防止乃至減少することが可能となるとともに防犯措置に対する施主の経済的負担を減少することができる。
【0006】
更に、上記特許文献1の防犯評価は、建物外観を重視してこれを表示するものとされるところ、該建物外観の表示は、予め入力されている建物外観にデータベースから所定の部品を表示するものとされるから、新築に際して施主が防犯措置を施す場合に利用することができても、既築建物について防犯措置を施す部分改修においては適当ではなく、従ってこの場合、その防犯評価をなし得ないか、なし得たとしても、該既築建物の居住者にとっては違和感が残るものとなるという問題点がある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、その解決課題とするところは、可及的簡易な評価によって、対象建物の開口部毎に侵入盗危険性を判定して、判定結果に従って侵入盗危険性ある開口部に対して、新築、既築を問わずに、施主又は居住者に対して経済的負担を可及的に低減するとともに有効且つ適切な防犯措置を提案し得るようにした防犯診断提案方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に沿って本発明は、監視性の確保(周囲からの見通しの確保)、領域性の強化(コミュニティー形成の促進)、接近の制御(犯罪企図者の接近妨害)及び被害対象の強化(部材、設備等の破壊防止性)から防犯構成を行う防犯環境設計に基づく評価項目を設定して侵入盗危険性を定量評価するとともに該定量評価の評価項目を、対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境とする建物総合定量評価及び対象建物における開口部毎の開口部環境とする開口部個別定量評価の双方として、これらを加算することによって該対象建物における開口部毎の侵入盗危険性を個別に判定し、侵入盗危険性あると判定した開口部について、その侵入危険性を防止乃至減少し得るに適当な開口部材、特に防犯建物部品登録開口部材(「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が公表した「防犯性の高い建物部品目録」記載の建物部品の種別にいうドア、窓等に用いる開口部材を意味し、図面においてこれをCPと表記することがある。)を推奨することによって、新築、既築を問わずに、施主又は居住者に対して経済的負担を可及的に低減するとともに有効且つ適切な防犯措置を提案し得るようにしたものであって、即ち、請求項1に記載の発明を、防犯環境設計に基づく侵入盗危険性を定量評価する評価方法であって、対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境の評価項目による建物総合定量評価と、対象建物における開口部毎の開口部環境の評価項目による開口部個別定量評価を加算することにより対象建物の開口部毎に侵入盗危険性を判定する判定工程と、該判定結果に従って侵入盗危険性ある開口部に防犯建物部品登録開口部材の設置を推奨する推奨工程を備えることを特徴とする防犯診断提案方法としたものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、定量評価を可及的簡易にして侵入盗危険性を確実に判定し得るものとするように、これを、上記建物総合定量評価と開口部個別定量評価を、施主又は居住者からの聞き取り又は質問シート記入結果及び評価者の実見結果をそれぞれ点数化して行うことを特徴とする請求項1に記載の防犯診断提案方法としたものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、上記聞き取り又は質問シート記入結果及び評価者の実見結果の点数化とこれによる有効且つ適切な判定をなし得るものとするように、これを、上記点数化を、建物総合定量評価と開口部個別定量評価の項目毎に防犯環境設計に基づくウエイト付けを行った点数によって行うことを特徴とする請求項2に記載の防犯診断提案方法としたものである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記開口部毎に行う開口部個別定量評価で侵入盗危険性を確実に判定するものとし得るように、これを、上記開口部個別定量評価を、接道又は隣地からの開口部視認性及び敷地内侵入経路上の侵入障害の有無又はこれらを含めて行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の防犯診断提案方法としたものである。
【0012】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、施主又は居住者に対する評価結果及び防犯建物部材の推奨を、場所を問うことなく、可及的簡易且つ確実にして要領良く行うものとし得るように、これを、上記判定及び推奨を、建物総合定量評価による判定結果と、開口部個別定量評価による開口部毎の侵入盗危険性の判定結果を表示し且つ上記侵入盗危険性ある開口部について少なくともその推奨する防犯建物部品登録開口部材設置の見積金額を個別及び合計して表示した結果報告シートによって行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の防犯診断提案方法としたものである。
【0013】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、施主又は居住者に対する評価結果及び防犯建物部材の推奨を、同様に場所を問うことなく、可及的簡易且つ確実にして短時間に要領良く行うものとし得るように、これを、上記判定及び推奨を、パソコン内蔵若しくは記憶媒体搭載のデータベース又はパソコンのインターネット環境利用のデータベースによって行うことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の防犯診断提案方法としたものである。
【0014】
本発明はこれらをそれぞれ発明の要旨として上記課題解決の手段としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のとおりに構成したから、請求項1に記載の発明は、防犯環境設計に基づく評価項目を設定して侵入盗危険性を定量評価するとともに該定量評価の評価項目を、対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境とする建物総合定量評価及び対象建物における開口部毎の開口部環境とする開口部個別定量評価の双方として、これらを加算することによって該対象建物における開口部毎の侵入盗危険性を個別に判定し、侵入盗危険性あると判定した開口部について、その侵入危険性を防止乃至減少し得るに適当な防犯建物部品登録開口部材を推奨することによって、新築、既築を問わずに、施主又は居住者に対して経済的負担を可及的に低減するとともに有効且つ適切な防犯措置を提案し得るようにした防犯診断提案方法を提供できる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、上記に加えて、定量評価を可及的簡易にして侵入危険性を確実に判定し得るものとすることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、上記聞き取り又は質問シート記入結果及び評価者の実見結果の点数化とこれによる有効且つ適切な判定をなし得るものとすることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、同じく上記に加えて、上記開口部毎に行う開口部個別定量評価で侵入盗の危険性を確実に判定し得るものとすることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、同じく上記に加えて、施主又は居住者に対する評価結果及び防犯建物部材の推奨を、場所を問うことなく、可及的簡易且つ確実にして要領良く行うものとすることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、同じく上記に加えて、施主又は居住者に対する評価結果及び防犯建物部材の推奨を、同様に場所を問うことなく、可及的簡易且つ確実にして短時間に要領良く行うものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】既築建物の防犯提案方法を示す工程図である。
【図2】建物総合定量の評価地域、敷地、防犯環境についての質問シートである。
【図3】開口部個別定量評価についての評価シートである。
【図4】建物総合評価と開口部個別定量評価の加算シートである。
【図5】結果報告シートである。
【図6】建物の位置関係を示す平面図である。
【図7】建物の1階間取図である。
【図8】建物の2階間取図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下図面の例に従って本発明を更に具体的に説明すれば、図面は、例えば既築建物、特に住宅に本発明の防犯提案方法を適用した例を示すもので、該防犯提案方法は、防犯環境設計に基づく侵入盗危険性を定量評価する評価方法として、対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境の評価項目による建物総合定量評価と、対象建物における開口部毎の開口部環境の評価項目による開口部個別定量評価を加算することにより対象建物の開口部毎に侵入盗危険性を判定する判定工程と、該判定結果に従って侵入盗危険性ある開口部に防犯建物部品登録開口部材の設置を推奨する推奨工程を備えるものとしてあり、このとき本例の防犯提供方法は、その上記建物総合定量評価と開口部個別定量評価を、居住者からの聞き取り又は質問シート記入結果及び評価者の実見結果をそれぞれ点数化して行うものとしてある。
【0023】
本例にあって防犯提案方法における判定工程は、その建物総合定量評価を、図2に示す質問シートを用いて、これに居住者が各質問事項に回答を記入することによって、また、開口部個別定量評価を、図3に示す評価シートを用いて、これに評価者、例えば、改装業者や開口部品メーカーの社員が回答を記入することによってそれぞれ行い、これら評価結果を加算して対象建物、本例にあっては既築住宅の開口部毎にその侵入盗危険性を判定するものとしてある。
【0024】
居住者が記入する図2の質問シートは、対象建物の地域環境、敷地環境及び防犯環境についての質問を、評価者が記入する図3の評価者が記入する評価シートは、対象建物の開口部環境についての項目をそれぞれ記載してある。
【0025】
即ち、図2の質問シートの上記建物総合定量評価における地域環境は、「地域」への入りにくさに関する設問として、1.接道に街灯があり、夜間も明るい、2.近所付き合いが活発である、3.昼間に適度な人の目がある、4.自主防犯パトロール活動が行われている、の4項目の質問を、敷地環境は「敷地」への入りにくさに関する設問として、5.インターホン、郵便受けが敷地境界にあり、相手を敷地に入らせず応対できる、6.インターホンはカメラ付で来訪者を記録できる、7.窓ガラスが割れたときに近所に聞こえる(電車、幹線道路の騒音がない)、8.敷地内で夜間でも人の行動がわかる程度の明るさがある、9 敷地の周りに空き地、公園など犯罪者が下見のできる場所がない、の5項目の質問を、防犯環境は「住宅」への入りにくさに関する設問として、10.警備会社への自動通報機能がついているセキュリティーシステムがある、11.戸締り確認システムがついている、11.庭等に侵入の手助けとなるもの(脚立、バールなど)がない、12.不在時でも部屋の照明が自動で点灯するようにしている、の4項目の質問を、例えば、それぞれ適宜なイラスト入りで設定してあり、これら合計13項目の質問によって、上記建物総合定量評価を行うものとしてある。
【0026】
また、図3の評価シートの上記開口部個別定量評価は、これを、接道又は隣地からの開口部視認性及び敷地内侵入経路上の侵入障害の有無又はこれらを含めて行うものとしてあり、本例にあっては、14.接道からみえること、15.経路上に門扉や柵などの障害があることの2項目、即ち、上記接道又は隣地からの開口部視認性と敷地内侵入経路上の侵入障害の有無の2項目によって、該開口部個別定量評価を行うものとしてあり、このとき、該開口部個別定量評価は、下欄の桝目内に、例えば、1階、東側、小窓の如くに評価者が、全ての開口部について階数、方角、種類を個別に記入した上、該全ての開口部について、上記2項目の実見結果を記入して、該開口部個別定量評価を行うものとしてある。
【0027】
これら建物総合定量評価及び開口部個別定量評価は、居住者又は評価者が、YESかNOや○か×で2者択一的に記入したものを点数化して、その判定を行うものとしてあり、このとき、該点数化は、これを、建物総合定量評価と開口部個別定量評価の項目毎に防犯環境設計に基づくウエイト付けを行った点数によって行うものとしてある。即ち、上記2者択一のYESや○は所定の点数を得る一方、NOや×は0点とすることによって、上記13項目の建物総合定量評価及び各2項目の開口部個別定量評価の点数とするようにして、その判定を行うものとしてある。
【0028】
本例にあって該点数化は、総合防犯士会所属の防犯診断に多くの実績を有する多数の総合防犯設備士(日本防犯設備協会認定資格)による長時間の協議によって上記ウエイト付けと該ウエイト付けに基づく定量評価の項目毎に個別具体的に点数を定めて、これを行ったものとしてある。該点数化は、各評価項目について、例えば、それぞれ小数点以下1桁の数値として、該点数化を侵入盗乃至これに近い視点から精緻に構成して、判定結果に高い信頼性を得られるようにしてある。
【0029】
該点数化による各評価項目の点数は、例えば、評価者持参の図4に示す建物総合評価と開口部個別定量評価の加算シートに記入し又はパソコン内蔵若しくは記憶媒体の該データに入力することによって、評価者が評価現場でその加算と加算結果による侵入盗危険性を可及的簡易に判定し得るようにしてある。即ち、評価者は、上記質問シートの居住者の回答結果と評価シートの評価者実見の回答結果を該加算シート又はそのデータに記入乃至入力することによって加算するとともにこれらの加算結果の双方を、更に加算することによって、対象建物の開口部毎の合計点数を算出し、開口部毎の侵入盗危険性の判定を行うものとしてある。加算シートは、住宅環境の評価と各開口部環境の評価の欄を設け、それぞれ上記質問シート、評価シートの評価項目を記載し、該評価項目毎に居住者及び評価者による上記2者択一の結果とこれに基づく各小計の点数を記入するものとし、住宅環境の評価の欄にその評価項目の合計点の住宅評価点を記入する一方、各開口部環境の評価の欄には、開口部の数に応じた記入欄を設けるとともに開口部毎の評価項目の各点数及びこれらの合計点と上記住宅評価点とを更に加算した加算点を記入することによってその点数化を行うようにしてある。従って該加算シートを用いることによって上記住宅環境の評価について各評価項目毎の点数、その合計の住宅評価点、開口部毎の評価項目毎の点数及びこれらと上記住宅評価点と該開口部毎の合計点を算出し得るようにしてある。
【0030】
このとき、上記住宅評価点及びこれと開口部毎の合計点による判定は、予め設定した高位側の基準点以上を侵入盗危険性のない「安心」、下位側の基準点以下を侵入盗危険性のある「危険」、上記高位及び下位の基準点の間を侵入盗危険性が残る「やや危険」として区分し、上記加算シートによって加算した合計点がいずれの区分に位置するかによって、これを行うものとしてある。
【0031】
判定は、建物総合定量評価による判定結果と、開口部個別定量評価による開口部毎の侵入盗危険性の判定結果を表示した結果報告シートによって行うものとしてあり、該結果報告シートは、例えば、図5に示すように、「住宅環境の評価」の欄に、「あなたのご自宅の周辺環境から診断した防犯レベルは レベルです。」として、下線で示した空欄に判定結果の「安心」、「やや危険」、「危険」のいずれかを記入し、「各開口部環境の評価」の欄に「あなたのご自宅の開口部で相対的に危険と診断した場所は」として、階数、方角、開口部種類、防犯レベル、最重要箇所の桝目欄にそれぞれ同じく図5に示すように所定事項を記入するものとして、侵入盗の侵入危険性を、対象建物の全ての開口部について個別具体的に上記「安心」、「やや危険」、「危険」の3段階のレベルによって居住者が一見して判別し得る様にしてある。
【0032】
判定工程後に、侵入盗危険性あると判定した「やや危険」、「危険」の単一又は複数の開口部について、防犯建物部品登録開口部材の設置を推奨する推奨工程に至るものとしてあり、その推奨は、防犯建物部品として認定されたドア関係、窓関係、シャッター関係の各開口商品のうちから、当該開口部に該当する商品を抽出乃至選択して、その改修方法、改修金額、改修箇所を居住者に示すことによって、該居住者が侵入盗危険性を防止乃至可及的に減少するための開口部に好適な防犯措置と費用又は費用を認識し得るように、これを行うものとしてある。このとき該防犯建物登録開口部材推奨のための抽出乃至選定は、評価者持参のカタログによって又はパソコン内蔵若しくは記憶媒体のデータによって行うものとしてある。
【0033】
該推奨は、上記判定結果を表示した結果報告シートに、侵入盗危険性ある開口部について少なくともその推奨する防犯建物部品登録開口部材設置の見積金額を個別及び合計して表示して行うものとしてある。該結果報告シートは、同じく図5に示すように、「改修するための方法と金額は以下のとおりです。」として、その下の桝目欄に、開口部種類として「掃き出し窓」、「腰高窓」、「出窓」、「小窓」、「玄関ドア」、「勝手口」の一般的な開口部を示すとともにその横に「改修方法」、「改修金額(目安)」、「改修箇所」の桝目欄に所定事項を記入するものとしてあり、該桝目欄の記入は、該当の開口部について、例えば「改修方法」について面格子の設置、防犯ガラスの窓サッシへの交換の如くに行い、また、その「改修箇所」は2階北側のように階数、方角で特定するように行うものとしてあり、これによって、該推奨を、具体的な開口部と、侵入盗危険性を防止乃至減少するに相応しい防犯建物登録開口部材を、その改修の見積金額とともに居住者に可及的に分り易く表示して行うようにしてある。該該結果報告シートも、評価者が持参のシートに記入し又はパソコン内蔵若しくは記憶媒体搭載のデータベースに入力して行いこれをプリントアウトすることによって、その作成をなし得るようにしてある。
【0034】
判定工程及び推奨工程後に、評価者は、該結果報告書を対象建物の居住者に渡して、その侵入盗危険性の判定と防犯建物登録開口部材の推奨を終了するに至る。
【0035】
本例の防犯診断提案方法によれば、対象建物に付設されている窓サッシ、玄関ドア等の各開口部のそれぞれについて、その侵入盗危険性を個別に判定し、侵入盗の侵入危険性のある開口部に、該危険性を防止乃至減少するに適当な防犯建物部品登録開口部材を推奨することができ、従って対象建物の居住者は、個別の開口部毎に対策を採ることが可能となり、該居住者の経済的負担を軽減することができる。
【0036】
図示した例は以上のとおりとしたが、上記判定及び推奨を、パソコンのインターネット環境利用のデータベースによって行うようにすること、対象建物を設計図による新築住宅とすること、開口部個別定量評価を上記開口部視認性及び敷地内侵入経路上の侵入障害を含めて行うものとすること等を含めて、本発明の実施に当って、建物総合定量評価、その地域環境、敷地環境及び防犯設備環境の評価項目、開口部個別定量評価、その開口部毎の開口部環境の評価項目、これらの加算とその判定、防犯建物部品登録開口部材、その推奨、必要に応じて用いる施主又は居住者からの聞き取り又は質問シート記入結果及び評価者の実見結果、その点数化、そのウエイト付けの点数、開口部個別定量評価の接道又は隣地からの開口部視認性及び敷地内侵入経路上の侵入障害の有無、結果報告シート、その見積金額の表示、パソコン内蔵若しくは記憶媒体搭載又はインターネット環境利用のデータベース等の各具体的構成、評価方法、手順等は、上記発明の要旨に反しない限り様々な形態のものとすることができる。
【実施例1】
【0037】
過去に自宅留守中に侵入盗の侵入被害に遭遇した建物(開口部を侵入被害当時のままとして改修を行っていない)を対象建物として、その侵入盗危険性を判定した。判定は、評価者が、対象建物の居住者に対して図2の地域、敷地、防犯環境についての質問シートによる聞き取りを行い、また、評価者が、図3の評価シートを用いて対象建物の実見評価を行った。これら聞き取り及び実見評価の結果を、図4の図建物総合評価と開口部個別定量評価の加算シートに記入加算して建物総合定量評価と開口部個別定量評価を行った(結果報告シートの作成は省略した)。図6は対象建物の敷地周辺の平面図、図7は対象建物の1階の間取図、図8は同2階の間取図を示す。なお開口部個別定量評価は、図8の2階間取図のうち侵入が物理的に不可能と判断された5箇所の除外と表示した開口部については省略した。
【0038】
判定の結果、住宅環境の評価の合計点が不足する一方、これに加算した各開口部環境の評価による点数不足が、図4下段の1及び2の出窓、5の小窓、6の腰高窓について「危険」レベルと判定される一方、その余の開口部は「やや危険」レベルであり、上記住宅環境の評価の合計点が不足するために「安心」レベルの開口部はなかった。
【0039】
判定結果後に対象建物の居住者から、侵入盗の侵入被害を受けた開口部を聞いたところ、上記対象建物1階の1の出窓から侵入したことが判明し、現実の侵入盗の侵入箇所は「危険」レベル4箇所としたうちの1箇所であり、判定結果と現実の侵入箇所が一致した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防犯環境設計に基づく侵入盗危険性を定量評価する評価方法であって、対象建物における地域環境、敷地環境及び防犯設備環境の評価項目による建物総合定量評価と、対象建物における開口部毎の開口部環境の評価項目による開口部個別定量評価を加算することにより対象建物の開口部毎に侵入盗危険性を判定する判定工程と、該判定結果に従って侵入盗危険性ある開口部に防犯建物部品登録開口部材の設置を推奨する推奨工程を備えることを特徴とする防犯診断提案方法。
【請求項2】
上記建物総合定量評価と開口部個別定量評価を、施主又は居住者からの聞き取り又は質問シート記入結果及び評価者の実見結果をそれぞれ点数化して行うことを特徴とする請求項1に記載の防犯診断提案方法。
【請求項3】
上記点数化を、建物総合定量評価と開口部個別定量評価の項目毎に防犯環境設計に基づくウエイト付けを行った点数によって行うことを特徴とする請求項2に記載の防犯診断提案方法。
【請求項4】
上記開口部個別定量評価を、接道又は隣地からの開口部視認性及び敷地内侵入経路上の侵入障害の有無又はこれらを含めて行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載の防犯診断提案方法。
【請求項5】
上記判定及び推奨を、建物総合定量評価による判定結果と、開口部個別定量評価による開口部毎の侵入盗危険性の判定結果を表示し且つ上記侵入盗危険性ある開口部について少なくともその推奨する防犯建物部品登録開口部材設置の見積金額を個別及び合計して表示した結果報告シートによって行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の防犯診断提案方法。
【請求項6】
上記判定及び推奨を、パソコン内蔵若しくは記憶媒体搭載のデータベース又はパソコンのインターネット環境利用のデータベースによって行うことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の防犯診断提案方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−8902(P2012−8902A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145900(P2010−145900)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【出願人】(501267357)独立行政法人建築研究所 (28)
【Fターム(参考)】